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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】小型微小共振器周波数コム
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20230322BHJP
   G01S 17/34 20200101ALI20230322BHJP
【FI】
G02F1/01 F
G01S17/34
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021519708
(86)(22)【出願日】2019-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 US2019044992
(87)【国際公開番号】W WO2020076402
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】62/744,862
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/769,700
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/824,040
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593185670
【氏名又は名称】イムラ アメリカ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クセ,ナオヤ
(72)【発明者】
【氏名】ファーマン,マーティン・イー
(72)【発明者】
【氏名】テツモト,トモヒロ
(72)【発明者】
【氏名】ロラン,アントワーヌ・ジャン・ジルベール
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-516227(JP,A)
【文献】特開2015-005601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0264977(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0048113(US,A1)
【文献】特開2015-225328(JP,A)
【文献】特表2014-523002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0087186(US,A1)
【文献】特開2009-025245(JP,A)
【文献】Stone et al.,Thermal and Nonlinear Dissipative-Soliton Dynamics in Kerr-Microresonator Frequency Combs,Physical Review Letters,米国,American Physical Society,2018年08月08日,Vol. 121, B, No. 6,pp. 063902-1~063902-6
【文献】Satyan et al.,Precise control of broadband frequency chirps using optoelectronic feedback,Optics Express,OSA,2009年08月31日,Vol. 17, No. 18,pp.15991-15999
【文献】Phare et al.,Graphene electro-optic modulator with 30 GHz bandwidth,Nature Photonics,2015年07月13日,Vol. 9,pp.511-514
【文献】Wu et al.,RF Photonics: An Optical Microcombs' Perspective,IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics,IEEE,2018年02月13日,Vol. 24, No.4,pp.1-20,DOI: 10.1109/JSTQE.2018.2805814
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子クロックであって、
一次微小共振器コムであって、前記微小共振器コムは、繰り返し率、キャリアエンベロープオフセット周波数を有し、前記繰り返し率によって分離された個々のコムラインの形態の出力を生成する、一次微小共振器コムと、
周波数差によって分離された2つの低位相雑音連続波(cw)レーザにロックされている、前記微小共振器繰り返し率であって、前記周波数差が、前記微小共振器コムの前記繰り返し率に対応する周波数よりも大きい、前記微小共振器繰り返し率と、
前記個々のコムラインのうちの2つから得られる光ビート信号であって、前記ビート信号は
50GHz~50THzの周波数範囲の分子吸収線にロックされて、前記ビート信号の周波数を安定化させる、光ビート信号とを備える、分子クロック。
【請求項2】
前記周波数差をマイクロ波領域にダウンコンバートするように構成された二次微小共振器コムをさらに備える、請求項1に記載の分子クロック。
【請求項3】
分子クロックであって、
微小共振器コムであって、前記微小共振器コムは、繰り返し率、キャリアエンベロープオフセット周波数を有し、前記繰り返し率によって分離された個々のコムラインの形態の出力を生成するように構成される、微小共振器コムと、
第1および第2の連続波(cw)基準レーザであって、
前記微小共振器繰り返し率は、前記第1のcw基準レーザと前記第2のcw基準レーザとの間の周波数差にロックされる、第1および第2の連続波(cw)基準レーザと、
前記個々のコムラインのうちの2つから得られる光ビート信号をミリメートル波(mm波)信号に変換するように構成された一次フォトダイオードと、
前記個々のコムラインのうちの2つから得られる前記光ビート信号の周波数を変調するように構成された少なくとも1つの変調器と、
前記周波数を変調した前記光ビート信号を、ミリメートル波領域の中心周波数を中心とする周波数変調ミリメートル波(mm波)信号に変換するようにさらに構成された前記一次フォトダイオードであって、
前記周波数変調ミリメートル波信号が、ガスセルに含まれる分子ガスの基準吸収線によって変調される、前記一次フォトダイオードと、
前記ガスセルによって送信される前記周波数変調ミリメートル波信号を復調し、復調信号を生成するように構成された復調器とを備え、
誤差信号を生成する前記復調信号は局部発振器信号とともに誤差信号を生成し、
前記誤差信号は、比例積分微分(PID)コントローラを介して電圧制御発振器(VCO)を駆動し、前記VCOは、別の変調器を駆動し、別の変調器は、前記ガスセルの内部の吸収線に対してmm波中心周波数を安定させる、分子クロック。
【請求項4】
前記復調器がショットキーバリアダイオードを備える、請求項3に記載の分子クロック。
【請求項5】
前記一次フォトダイオードは、単一走行キャリア(UTC)ダイオードを備える、請求項3または請求項4に記載の分子クロック。
【請求項6】
前記変調mm波周波数が、前記吸収線の帯域幅付近の周波数において位相変調器によって変調される、請求項3~5のいずれか1項に記載の分子クロック。
【請求項7】
前記変調周波数mm波信号は、1秒内で10-12未満の安定性を有する、請求項3~6のいずれか1項に記載の分子クロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月12日に出願された米国特許出願第62/744,862号、2018年11月20日に出願された米国特許出願第62/769,700号、および2019年3月26日に出願された米国特許出願第62/824,040号に対する優先権の利益を主張し、それらのすべては、COMPACT MICRORESONATOR FREQUENCY COMBと題され、それらのすべては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
背景
分野
本開示は、超低雑音フォトニクス微小共振器周波数コムの構築および制御ならびにそれらの応用形態に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
微小共振器(MR)ベースの周波数コムは、例えば広帯域無線および光通信、レーダ、試験および測定機器、分光法、または感知を含む、電磁信号の生成および処理を必要とする任意の用途においてますます多くの使用が見出されている。例えば、MR周波数コムの制御のためのシステムおよび方法が本明細書に開示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
精密微小共振器周波数コムは、コム間隔、キャリアエンベロープオフセット周波数、共振オフセット周波数、または振幅雑音などのコムパラメータ、ならびにコヒーレント状態の開始の制御を含むことができる。一部の用途では、コムパラメータの高帯域幅変調も提供される。
【0005】
微小共振器(MR)ベースの周波数コムの精密制御のためのシステムおよび方法の様々な実施例が開示される。最適化されたMRアクチュエータおよびMR変調器を実装することによって、MRのキャリアエンベロープオフセット周波数、繰り返し率、または共振オフセット周波数のいずれか、すべて、または任意のサブセットの長期ロックを制御することができる。加えて、変調器は振幅雑音制御にも使用することができる。様々なMRパラメータは、連続波レーザまたはマイクロ波基準などの外部基準周波数にロックすることができる。様々なMRパラメータは互いに結合されるが、最適化されたMRパラメータの選択を介して、MRパラメータ間のクロストークを低減または最小化することができ、長期ロックを容易にする。MRは、低雑音マイクロ波生成のために外部の2波長遅延自己ヘテロダイン干渉計にロックすることもできる。MRベースの周波数コムは、自由スペクトル範囲(FSR)の実質的な割合によって、およびさらにはフィードバック制御システムの適用を介して2つ以上のFSRによって調整、走査、または変調することができる。走査型MR周波数コムは、例えば、無不感帯分光法および多波長LIDARに適用することができる。任意のコムベースのLIDARシステムの解像度は、個々のコムラインのコヒーレントスティッチングによって大幅に向上させることができる。MRベースのコムは、周波数分割および分子基準の利用を介して、高精度光クロックおよび低位相雑音マイクロ波源においても利用することができる。
【0006】
例示的な実施形態では、コム間隔およびコムMRのキャリアエンベロープオフセット周波数の両方を制御するために、単側波帯変調器が使用される。
【0007】
別の例示的な実施形態では、MRの迅速な制御のために少なくとも1つのグラフェン変調器が使用される。
【0008】
さらに別の例では、ヒータとダイオードポンプ電流変調との組み合わせがMR制御に使用される。
【0009】
本明細書に記載の主題の1つまたは複数の実施態様の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。他の特徴、態様、および利点は、本明細書、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。この概要も以下の詳細な説明も、本発明の主題の範囲を定義または限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1(a)】微小共振器(MR)を制御するための方式の一実施形態の概略図である。
図1(b)】微小共振器(MR)を制御するための方式の一実施形態の概略図である。
図1(c)】微小共振器(MR)を制御するための方式の一実施形態の概略図である。
図1(d)】微小共振器(MR)を制御するための方式の一実施形態の概略図である。
図2a】MRコムからの出力スペクトルの例示的な測定値を示す図である。
図2b】ファイバコムにロックされたときのMRコムモードの周波数安定性の例示的な測定値を示す図である。
図3】グラフェン変調器を用いたMRの制御方式の一実施形態の概略図である。
図4】MR制御にグラフェン変調器を用いた場合の好ましいグラフェンバイアス点の一例の概略図である。
図5】マイクロヒータと共に半導体レーザを使用する微小共振器の制御方式の一実施形態の概略図である。
図6】マイクロヒータと共に半導体レーザを使用する微小共振器の精密な波長走査のためのシステムの一実施形態の概略図である。
図7】微小共振器波長走査に関与し得る様々な周波数の概略図である。
図8】波長走査の実施形態から得られるコムモード周波数対温度の変化の一例の概略図である。
図9】波長走査微小共振器を使用する分光測定のためのシステムの一実施形態の概略図である。
図10】波長走査微小共振器を用いたLIDAR検出システムの一例の概略図である。
図11】波長走査微小共振器を用いた別のLIDAR検出システムの一例の概略図である。
図12】コヒーレントにスティッチングされたコムベースの周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムの一例の概略図である。
図13a】コヒーレントスティッチング前のコムベースのFMCW LIDARシステムの隣接するコムモードの周波数展開の一例の概略図である。
図13b】コヒーレントスティッチング後のコムベースのFMCW LIDARシステムの隣接するコムモードの周波数展開の一例の概略図である。
図14a】コヒーレントスティッチング前のコムベースのFMCW LIDARシステムの隣接するコムモードに関連するビート信号の時間展開の一例の概略図である。
図14b】コヒーレントスティッチング後のコムベースのFMCW LIDARシステムの隣接するコムモードに関連するビート信号の時間展開の一例の概略図である。
図15】3つのコムモードからの信号のコヒーレントスティッチングに基づく、時間領域における実際に測定されたコヒーレントスティッチングFMCW LIDAR信号の図である。
図16a】コヒーレントスティッチングを用いて、および、用いずに得られた空間分解能(例えば、単一のターゲットへのラウンドトリップ時間遅延によって表される)の図である。
図16b】コヒーレントスティッチングを用いて、および、用いずに得られた空間分解能(例えば、二重ターゲットへのラウンドトリップ時間遅延によって表される)を表し、この例では、コヒーレントスティッチングのみで2つのターゲットを区別することができる、図である。
図17a】コム間隔が異なる2つの値の間で切り替わるときの微小共振器のコムモードのスペクトルの変更の例の概略図であって、2つの値のコムモードスペクトルが実線および点線で表されている、図である。
図17b】コムモード数の関数としてのサイクル時間Tcycleの変化を概略的に示す、時間的再スケーリングの実施前の走査微小共振器コムの個々のコムモードに関連するFMCW信号の時間的信号展開の一例の概略図である。
図18】時間的再スケーリングの実施後の走査微小共振器コムの個々のコムモードに関連するFMCW信号の時間的信号展開の一例の概略図である。
図19】微小共振器ベースの低位相雑音ミリメートル(mm)波発振器の構成の一例の概略図である。
図20】ミリ波信号をマイクロ波信号に変換する微小共振器ベースの周波数ダウンコンバータの構成の一例の概略図である。
図21】微小共振器ベースの光分子クロックの構成の一例の概略図である。
図22a】微小共振器ベースの光分子クロックに関連するコムベースのミリ波源および2つの連続波(cw)基準レーザの周波数スペクトルの一例の概略図である。
図22b】微小共振器ベースの光分子クロックに関連するコムベースのミリ波-マイクロ波ダウンコンバータおよび2つのcw基準レーザの周波数スペクトルの一例の概略図である。
図23】ポンプおよび冷却レーザの両方を備える微小共振器の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面は、例示の目的で本開示の様々な実施形態を示しており、限定することを意図するものではない。実践可能な場合はいつでも、類似または同様の参照番号または参照ラベルが図で使用され得、類似または同様の機能を示すことができる。
【0012】
詳細な説明
概説
微小共振器(MR)ベースの周波数コムは、例えば広帯域無線および光通信、レーダ、試験および測定機器、分光法、および感知を含む、電磁信号の生成および処理を必要とする任意の用途においてますます多くの使用が見出されている。これらの用途の多くは、繰り返し率frep、キャリアエンベロープオフセット周波数fceo、および/または振幅雑音の制御を可能にする周波数コムの利用可能性から大きい恩恵を受け、明確に定義された光周波数をもたらす。
【0013】
MRベースの周波数コムの最近の進歩により、それらの精密な制御がますます重要になっている。実際、MR設計は非常に普及しているが、実際の用途に対するそれらの有用性は制限され得る。真の大量適用について、例えばB.Stern他「Battery operated integrated frequency comb generation」(Nature(2018))に開示されているように、チップスケールの可能性がある設計のためのCMOS互換技術に基づくMRが好ましい。しかしながら、MRコムパラメータの完全な制御およびMRコムパラメータの変調を可能にする、チップスケール設計と互換性のある設計アーキテクチャに基づくMR周波数コムが依然として必要とされている。
【0014】
特に興味深いのは、ソリトンコムを放出するチップスケール周波数コムである。変調不安定性ベースのコム(カオティックコム)とは対照的に、ソリトンコムはモードロック状態にあり、高コヒーレント、超短パルス、および低雑音コムを生成する。様々な可能なコムMRプラットフォームの中でも、チップスケール設計を可能にするCMOS互換性製造プロセスを可能にするプラットフォームが特に重要である。CMOS互換性製造プロセスの例には、例えば、窒化ケイ素(SiN)、ハイデックス、およびアモルファスシリコンが含まれるが、他の例も可能である。
【0015】
安定したソリトンコムを生成することは、一般に、カオティックコムからソリトンコムに移行するときに熱光学的に誘発されるキャビティの変化が速いために困難である。この課題を克服するために、例えば、H.Guo他「Universal dynamics and deterministic switching of dissipative Kerr solitons in optical microresonators」(Nature physics,vol.13,pp.94(2017))に示されているように、二重並列マッハツェンダ干渉計変調器(DP-MZM)から構成される単側波帯変調器(SSBM)による高速周波数走査および前後ポンプ周波数走査を含むいくつかの方法が実証されている。SSBMを介した高速走査は、高い忠実度を有する単一のソリトンコムの生成を可能にし、ポンプレーザ変調を必要としないため、特に魅力的である。
【0016】
光周波数コムの場合、fceoおよびfrepは、一般に、それぞれポンプ周波数およびポンプパワー制御によって決定される。SSBMによる安定したソリトンコムの生成後、SSBMは、J.R.Stone他「Thermal and Nonlinear Dissipative-Soliton Dynamics in Kerr-Microresonator Frequency Combs」(Phys.Rev.Lett.,vol.121,pp.063902(2018))に開示されているように、Pound Drever Hall(PDH)ロックの使用を介して共振オフセット周波数ROF(ROFはポンプレーザ周波数とキャビティ共振周波数との間の差である)を制御するために使用することもできる。SSBMはまた、fceoおよびfrep制御のために容易に実施することができる。fceoおよびfrep制御には一般に2自由度が必要であるため、音響光学変調器(AOM)が、典型的には、ポンプパワーを調整することを可能にするMRの直前に挿入される。しかしながら、AOMの使用は、一般に、チップスケールMRの実現と互換性がない。さらに、ソリトンコム開始、frepおよびfceoまたはROF制御のために異なる構成要素を使用すると、そのようなデバイスのコストが増加し、大規模用途には実用的ではない。
【0017】
部品数を制限し、チップスケール設計と完全に互換性がある完全マイクロコム制御の様々な代替形態が本明細書に開示されている。第1の代替形態として、ソリトンコム生成のためだけでなく、fceoおよびfrep制御の両方のためにSSBMを使用することもできる。この手法では、マイクロコムのポンプパワーは、SSBMのバイアス電圧の1つを変更することによって光学側波帯と残留キャリアとの間のパワー分布を変調することによって制御される。側波帯周波数の変調はさらに、コム開始ならびに完全fceoおよびfrep制御のための注入光周波数の迅速な走査を可能にする。付加的または代替的に、外部参照を一切使用せずにソリトンコムのコム繰り返し率frepの雑音を低減するために、ROFはPDHロックを使用して固定することができる。このために、ポンプ周波数はSSBMによって制御される。
【0018】
第2の代替形態では、MR上に堆積されたグラフェン変調器が完全MRコム制御に使用される。
【0019】
第3の代替形態では、ポンプ電流変調によるポンプレーザの出力パワーの変調、ならびに完全frepおよびfceo制御のためのMRの迅速な熱変調を使用することができる。
【0020】
例示的な動作原理および例示的な第1の実施形態のシステム
第1の代替形態の動作原理を図1に示す。図1(a)は、ポンプ周波数およびパワーが制御されるDP-MZMを通って導かれる連続波(cw)レーザを概略的に示す。基本的に、DP-MZMはキャリア抑制単側波帯モードで動作する。このモードでは、ネストされた上側および下側の両方のマッハツェンダ干渉計(MZI)が、電圧Vbias1およびVbias2を印加することによって適切にバイアスされ、それによって光キャリアが排除され、2つの側波帯が残る。ここで、2つのMZIは、(電圧制御発振器(VCO)からの)同じ無線周波数(RF)周波数によって変調されるが、(90度ハイブリッドスプリッタを使用して)90度の位相差を有する。次に、メインMZIに適切なバイアス電圧Vbias3を印加することによって、赤色側または青色側のいずれかの側波帯が抑制され、単一の側波帯のみが残る。次いで、単一の残りの側波帯は、MRのためのポンプとして使用される。まず、安定した単一のソリトンコムにアクセスするために、VCOにDC電圧(VDC,scan)を印加することによってVCO周波数が迅速に調整され、その結果、図1(b)に示すように、ポンプ波長が青色から赤色へと迅速に走査される。安定した単一のソリトンコムが得られると、ポンプ周波数およびパワーは、特定の変調電圧(ポンプ周波数のためのVm1およびパワーのためのVm2)を印加することによってさらに制御することができる。ポンプ周波数制御の場合、Vm1がVDC,scanに追加され、VCOに印加され、図1(c)に示すようにVCO周波数変化を介したポンプ周波数制御を可能にする。パワー制御のために、Vbias1にVm2が加えられる。なお、Vbias1は、Vm2の合理的な電圧変化によって、図1(d)に示すように、サイドモードと残留キャリアとの間のパワー分布を変化させることができるように、最適キャリア抑制点から意図的に不首尾に調整されている。側波帯と残留キャリアとの間のパワー比は、光増幅後でも同じままであり、これは、単一キャリアのパワーが光増幅器の前に変調される場合とは対照的であり得ることに留意されたい。この場合、利得飽和は典型的には、マイクロコムの可能なポンプパワー変調を制限し、より実質的なパワー変調のために音響光学変調器(AOM)を使用することができる。
【0021】
より具体的には、安定した単一のソリトンコムを生成するために、SSB変調器は、いくつかのパラメトリックコムモードが観測される周波数に設定される。次いで、VCO周波数が迅速に走査されて、共振線幅の数倍~10倍だけMR共振の赤色側にシフトしたポンプ周波数を生成する。このシフトは、好ましくは、DC電圧(図1(a)のVDC,scan)を印加することにより、数ns~数十nsの時間内に実行される。ソリトンコムによって得られた生成光スペクトルの一例を図2aに示す。
【0022】
長期fceoおよびfrepロックを実証するために、MRはファイバ周波数コムにロックされる。このロック方式では、1つのMRコムモードのビート周波数は、ファイバ周波数コムから次の隣接するコムモードを介して干渉され、結果得られるビート周波数は、標準PIDフィードバックループを介してマイクロ波基準に安定化される。次いで、PIDループからの結果得られる誤差信号が、MRにおけるポンプパワーまたはポンプ周波数制御のいずれかに印加される。別のMRコムモードについても同じ手順が繰り返される。このロック方式は2自由度を有するため、共振器の同時fceoおよびfrepロックと同等である。2つのPIDループが、ここで使用されるポンプパワーおよびポンプ周波数などのMRにおける2つの異なる制御機構に対して作動するために使用されることに留意されたい。2点ロック方式は、cwレーザまたはマイクロ波基準などの他の周波数基準とともに使用することもできる。いくつかの用途では、MRコムを1つの外部基準のみにロックすれば十分であり得る。
【0023】
長期周波数ロックの場合、上述したように、ポンプ周波数は、典型的には、MRの赤色波長側における微小共振器の共振の線幅の数倍~10倍の範囲に離調される。安定したソリトンが生成されると、広い範囲のROFでfceoおよびfrepロックが可能である。DP-MZMによって提供される2つの制御メカニズムにより、ファイバコムに対するMRの長期ロックが容易に実証される。一例として、ロック状態下で周波数カウンタを用いて測定される時間の関数としてのMRの中心周波数(fpump)を図2bに示す。
【0024】
一部のMRコム用途はまた、例えば外部基準が利用できない場合、またはfceoもしくはfrepを容易に測定できない場合に、ROFの制御を必要とする。そのような場合、少なくともROFを安定化し、必要に応じて振幅雑音を最小化することにより、自走ソリトンコムと比較して、より低雑音のソリトンコムを生成することができる。ROF安定化のために、ポンプ周波数をキャビティの共振周波数にロックするためにPDHロックを使用することができる。PDHロックを可能にするために、追加のEO位相変調器をDP-MZIと共振器との間に挿入して誤差信号を生成することができる。次いで、誤差信号は、例えばDP-MZMを介してポンプ周波数を制御するアクチュエータに作用することができる。あるいは、PDHロックの場合、ポンプ周波数は、上記で説明したようにその2自由度を利用して、ただ1つのDP-MZMによって変調および制御することができる。MRがソリトン領域に留まることを確実にするために、DP-MZMが、図1のVCOを介して正しい周波数シフトに設定されると同時に、cwレーザに位相変調を適用する必要がある。これは、1つのトーン信号の代わりに2つのトーンRF信号をVCOに印加することによって保証することができる。次いで、DP-MZMにおけるバイアス制御を、電圧Vm2を介したROFのロックに使用することができる。
【0025】
振幅雑音抑制のために、ソリトンコムの振幅雑音が光検出器によって測定され、DC信号と比較されて誤差信号が生成される。次いで、誤差信号は、PD-MZMまたはポンプパワー制御のためのポンプレーザ電流などのアクチュエータにフィードバックされる。
【0026】
図2aに示すように、本MR共振器コムはオクターブの帯域幅をカバーせず、したがって実際のfceo信号へのアクセスを得ることができないことに留意されたい。しかしながら、MRの分散を最適化することによって、オクターブに近い、さらにはオクターブにまたがる周波数コムを生成することができる。そのようなMRコムを用いて、fceo信号には、例えば、標準的なf-2f干渉計を用いてアクセスすることができる。MRにおいて発生するパルスのピークパワーが十分でない場合には、cwレーザを転送発振器として用いることができる。このために、2つの光学ビートが測定される。第1のビートfbeat1(fbeat1=(nfrep+fceo)-fcw)は、MRモードとcwレーザとの間で選択され、位相ロックされる(単純にするためにゼロ周波数にあると仮定する)。第2のビートfbeat2(fbeat2=(mfrep+fceo)-2fcw)は、MRモードと周波数2倍cwレーザとの間で選択され、これはMRのfceoに等しい(fbeat2=(mfrep+fceo)-2fcw=(mfrep+fceo)-2*(nfrep+fceo)=-fceo)。上記の2つの方法のいずれかによってfceoが検出されると、fceoは、ポンプ周波数またはパワーのいずれかを変調することによって制御することができる。
【0027】
例示的な第2の実施形態のシステム
第2の代替形態の動作原理は、図3に関して示されている。ここでは、MRへの入力アームおよびMR自体に堆積された2つのグラフェン変調器が、完全MR制御のために使用される。MRは、例えば、SiN、ポリブチレンテレフタレート(例えば、ハイデックス)、アモルファスシリコン、ダイヤモンド、ニオブ酸リチウム、または高Q共振器の構築を可能にする他の材料に基づくことができ、高Qは10より大きいQを意味する。グラフェン変調器#1(GM1)はMRへのポンプパワーの制御または変調に用いることができ、グラフェン変調器#2(GM2)はMRの共振周波数の制御に用いることができる。ポンプパワーの使用される変調深さは、約数パーセントであり得、共振周波数制御の使用される範囲は、最大数GHzであり得る。
【0028】
変調は、例えば、グラフェン層の上に誘電体膜およびゲート電極を形成し、ゲートとグラフェンとの間に電界を発生させることによって、グラフェン層中のフェルミレベルを制御することを通じて行うことができる。グラフェンの電子バンド構造の変化は、屈折率の虚数部に相当するグラフェンの光吸収をもたらし、強度制御を可能にする。例えば、グラフェンのフェルミレベルが光子エネルギー0.8eVに近づくと、波長1.55μm、光子エネルギー0.8eVの光の吸収が漸進的に抑制される。他方、屈折率の実部は、屈折率の実部と虚数部との間のKramers-Kronig関係によって同時に変調される。その関係を概略的に図4に示す。GM1による効率的なポンプパワー変調を可能にするために、GM1のフェルミレベルは、好ましくは、虚数屈折率変調がいかなる印加電圧変動にも相対的に影響されない点、典型的には約1.55μmの波長を有する光に対して約0.5eVのフェルミレベル付近でバイアスされる。GM2による微小共振器の共振周波数の効率的な制御は、屈折率の実部の変化が比較的大きく、一方で屈折率の虚数部の変化が小さい強度変調よりもわずかに大きいフェルミレベルで実行される。動作範囲の例を図4に双頭矢印によって示す。ROFをロックするために、誤差信号を生成するために追加のEO位相変調器を共振器の上流に挿入することができる。追加のEO変調器はまた、グラフェン電気光学変調器に基づくことができるが、任意の他の形態の電気変調も実施することができる。実際のROFロックのために、前述のように、PDHロック方式を実施することができ、誤差信号は、キャビティ内グラフェン変調器、あるいはキャビティに結合されるcwレーザの周波数に対して作動することができる。
【0029】
グラフェン変調器をMRに取り付けるために、いくつかの方法を使用することができる。例えば、C.T.Phare他「Graphene electro-optic modulator with 30 GHz bandwidth」(Nature Photonics,vol.9,pp511-514(2015))には、MRへのグラフェン膜の湿式転写を使用することが開示されている。
【0030】
SiN微小共振器上に堆積されたグラフェン変調器により、30GHz以上の変調周波数が達成可能である。このような高い変調帯域幅は、上述したようなMRにおけるソリトンコムの制御だけでなく、クロギコムの生成にも利用することができる。クロギコムとしてのMRの適応では、MRに注入されるcw光に対する側波帯が、グラフェン変調器を介したMRにおける繰り返し位相変調を介して繰り返し生成される。この結果として、変調周波数においてコム間隔を有するコム様スペクトルが形成される。クロギコムの生成は、MRのFSRおよび適用される変調周波数とが同一である場合に強化される。
【0031】
例示的な第3の実施形態のシステム
第3の代替形態の動作原理は以下の通りであり、図5に概略的に示されている。ここで、好ましくは半導体ダイオードレーザまたは増幅器に基づくポンプレーザが、結合要素C 1を介して微小共振器(MR)に結合される。結合要素C1は、例えば、結合効率を最適化するためのマイクロ光学レンズまたは導波路テーパを含むことができる。MRはまた、キャビティ長の急速加熱のためにMR上に堆積された少なくとも1つのマイクロヒータも備える。例えば、マイクロヒータは、約200オームの抵抗を有するPtおよびAlに基づく抵抗マイクロヒータとすることができる。そのようなマイクロヒータは、リフトオフプロセスなどの標準的な製造技術を使用して堆積させることができる。良好に設計されたヒータは、100kHzを超える変調帯域幅による10-4を超える部分キャビティ長変化によるMRキャビティ長の変調を可能にする。
【0032】
次いで、マイクロヒータを、図1に関して説明した方法と同様のソリトン状態の開始に使用することができる。しかしながら、図1では、ポンプ周波数が急速に変調されたのに対して、ここではキャビティ長が急速に変調される。次いで、図1に関しても説明したように、マイクロヒータはポンプ電流変調と併せて、MRのfceoおよびfrepを完全に制御するためにも使用される。
【0033】
ポンプ電流の変調を介したポンプレーザの制御は、ポンプ周波数およびポンプパワーの両方を変調する。他方、マイクロヒータは、主にポンプ周波数変調と同等のROFの変調を引き起こす。このため、マイクロヒータを介したMR共振からのROFの適切な選択は、ポンプ電流変調とマイクロヒータ変調との間のクロストークを最小限に抑えることができる。
【0034】
例えば、適切なROF(ROFopt)において、ポンプ周波数変調はfceoに最小限の変化をもたらすことができるが、MRにおいてn×frepにはるかに大きい変化を引き起こし、一方で、ROFoptにおけるポンプパワー変調はfceoおよびn×frepに同様の大きさの変化をもたらす。ここで、n×frepは、注入されるcwレーザの周波数と同様の、光領域におけるMRの放射周波数に対応する。ポンプレーザにおける電流変化は、典型的には、ROFoptにおいて一次へのポンプ周波数およびパワーの両方の変調を生成するため、ポンプ電流変調誘導周波数変調から生じるfceo変化は無視することができ、ポンプ電流誘導パワー変調から生じるfceo変化のみを残す。同時に、ポンプ電流誘導パワーおよび周波数変調の両方からのn×frepのポンプ電流変調誘導変調が残る。したがって、ROFopt付近のMRの完全制御が好ましく、ヒータ変調は主にn×frepを制御し、ポンプ電流変調はn×frepとのクロストークを最小限に抑えてfceoを制御する。
【0035】
一般に、最適な場合でさえ、独立したfrepおよびfceo制御は不可能であるが、特定の作動パラメータに対するfrepまたはfceoの感度が異なる限り、長期frepおよびfceoロックを依然として達成することができる。さらに、2つの変調器の2つの制御信号の線形重ね合わせに基づく適切な電子設計は、ポンプ電流およびヒータ変調の間のクロストークを最小限に抑えることを可能にする。
【0036】
他の2つの代替形態に関して説明したように、ROFのPDHロックを実施することもできる。PDHロックを可能にするために、マイクロヒータを介してROFを制御することができ、cwレーザのポンプ周波数を直接変調することができる。しかしながら、代替形態1および2に関して説明したように、追加の変調器またはキャビティ長コントローラも使用することができる。
【0037】
付加的または代替的に、例えば、N.Kuse他に対する米国特許出願公開第2018/0180655号「Ultra-low noise photonic phase noise measurement system for microwave signals」(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているような、2波長遅延自己ヘテロダイン干渉計を使用して、frepの位相雑音を抑制することができる。同様に、本明細書に記載の任意の変調器およびアクチュエータを使用して、MRのfrepを2波長遅延自己ヘテロダイン干渉計にロックするときにfrepを制御することができる。さらに、frepの位相雑音を低減または最小化するための2波長遅延自己ヘテロダイン干渉計の使用は、任意のMRとともに使用することができる。
【0038】
代替形態1および2に関して説明したように、ここで説明したポンプ周波数/パワー変調は、コムMRの強度雑音抑制にも使用することができる。この場合、PIループフィルタからの誤差信号は、所望の振幅雑音抑制のためにポンプ周波数またはパワーのいずれかを制御するためのフィードバックとすることができる。振幅雑音抑制は、例えば、MRにおいて生成されるパルスのタイミングジッタを抑制するのに有用であり得る。
【0039】
図5に示すシステムに十分な加熱電流を印加すると、部分キャビティ長調整範囲は10-3を超えて達することができる。そのような大きい部分キャビティ長の変化は、2つ以上の自由スペクトル範囲(FSR)による光領域内のコムラインのシフトに対応することができる。しかしながら、いくつかの用途では、FSRの50%のみ、またはFSRの10%のみ、またはFSRの5%のみの部分キャビティ長調整範囲を使用することができる。様々な構成において、MRに適用される変調メカニズム(例えば、MR加熱など)は、20GHz未満、100GHz未満、300GHz未満、および、さらには1THz未満の共振器繰り返し周波数に対して2つ以上のFSRによるコムラインの周波数シフトを生成することができ、一連の新規な用途を開く。しかしながら、一般に、そのような大きい繰り返し率の変化を適用する場合、共振器内のソリトンコムの振動を維持することは困難であり得る。例えば、M.Yu他は、「Gas-phase MR-based comb spectroscopy without an external pump laser」(arXiv:1806.01348v1)において、約1つのFSRによる195GHz MRのコムラインの同調を実証したが、ソリトンコムの振動は達成できなかった。むしろ、約5.2MHzのFSRを有する外部ファイバ共振器にMRを結合するときでさえ、MRコムの線幅と同様の広い線幅を有するカオティックコムが観察された。
【0040】
この課題は、例えば、MRのFSRおよびポンプ周波数を同時に走査することによって対処することができる。図1図5を参照して説明した上記の3つの例示的な実施形態のシステムに関して説明したように、ROFを安定させ、cwポンプレーザをMRにロックするためにPDHロックを実施することができる。PDHロックが作動されると、ポンプレーザはROF周波数にロックされたままであり、したがって、ポンプレーザは、マイクロヒータを用いてMRの温度をランピング(または任意選択的に変調)するときにキャビティモードの変動に追従することができる。付加的または代替的に、システムは、cwポンプレーザのランプ(または任意選択的に変調)が適用されるときにヒータがROFのロックを可能にするように構成することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ソリトンコムを生成するためにPDH方法を適用するとき、ポンプ周波数はMR共振の赤色側に固定され、例えば、PDHロックに使用される位相変調器からの側波帯は共振に固定される。しかしながら、いくつかの実施態様では、ポンプ周波数は、MR共振の青色側にあってもよい。
【0042】
PDHロックを使用する例示的なMR走査システム
PDHロックを使用する高速MR走査システムの実施態様の概略ブロック図を図6に示す。MRのPDHロックを可能にするために、第1の位相変調器(PM)がcw MRポンプレーザ(任意選択の変調器を有する)とMRとの間に挿入される。第1の位相変調器は、例えば、電気光学(EO)PMに基づくことができる。第1のPMは、RF発振器からのRF周波数によって駆動することができ、これは、ポンプと最も近い共振周波数との間の離調とまったく同じであり得る(しかし、そうである必要はない)。第1のPMは、ポンプレーザの両側に側波帯を生成し、ポンプレーザ周波数の青側の側波帯は、PDHロックによって最も近い共振周波数にロックすることができる。
【0043】
説明のために、走査プロセスに含まれる周波数を図7を参照してさらに説明する。この例では、cwレーザ周波数は、キャビティ共振の赤色側n*FSRに位置する。二重側波帯が、PDHロックのために第1の位相変調器によって生成される。青側側波帯、PDH側波帯#1は、PDHロックによってキャビティ共振において固定される。キャビティのFSRは、ソリトンコムモード間隔frepにほぼ等しい。ROFは、周波数空間におけるcwレーザとPDH側波帯#1との間の分離に対応する。
【0044】
図6に戻って参照すると、MRによって伝送される信号は、光検出器PDによって光検出される。PDからの信号は、RFミキサおよび移相器を介して、復調目的で第1のPM(図6に示すRF発振器からの)に印加されるRF変調周波数と混合されて、誤差信号が生成される。誤差信号は、比例積分微分(PID)コントローラを介して第2の変調器(例えば、EO変調器)にフィードバックされ、第2の変調器は、例えば、図1に示すように、DP-MZMのためのポンプレーザまたはVm1を含むことができる。MRの共振周波数が例えばマイクロヒータによって走査される場合、PIDコントローラによるフィードバックループが起動されると、ポンプ周波数は固定ROFによってMRに追従する。この実施態様では、PIDコントローラは、第2のEO変調器がcwレーザ周波数を、ROFが本質的に固定されたままであるのに適切な量だけシフトさせることを保証する。
【0045】
代替的な構成(別個には図示せず)では、cwポンプ周波数が走査されると、誤差信号を例えばマイクロヒータにフィードバックすることによって、MR共振周波数はポンプ周波数に追従し、したがってROFを固定する。どちらの場合も、10kHz超、100kHz超、またはさらには数百kHz超のフィードバック帯域幅を達成することができ、マイクロヒータの熱応答時間またはポンプレーザ応答時間によって制限される可能性がある。図3を参照して説明したグラフェン変調器などのより高速な変調器の実装により、さらに高いフィードバック帯域幅を達成することができる。
【0046】
光領域におけるソリトンコムモードの周波数ランプ、例えば単位時間当たりのcwポンプ周波数の変化は、正確に制御することができる。さらに、周波数ランプは、ソリトンコムスペクトル全体にわたってほぼ同じであるが、frepの変化は比較的小さい。ROFがROFoptの近くで選択される場合、走査動作中のfceoの変化を低減または最小化することができる。
【0047】
MRの加熱によって可能になる波長掃引の例示的な測定値を図8に示す。ここで、MRの温度が変更され、PDHロックが起動される。図8において、-3次(破線)および0次(実線)のソリトンコムモードの周波数の変化が示されており、実際に、単位温度変化当たりの周波数変化が、ソリトンコムスペクトルにわたって非常に類似していることを実証している。この例における全波長掃引は約7GHzである。小さい不一致は、使用される異なるモード数から生じると考えられる。
【0048】
適切なマイクロヒータ(例えば、図5を参照して説明したような)を用いて、上記で説明した方法は、2つ以上のFSRによるソリトンコムモードの走査を可能にし、多くの新規な用途を可能にする。いくつかの用途は、高線形周波数ランプまたは任意に選択可能な周波数ランプの適用を必要とする。そのような周波数ランプは、例えば、外部周波数コムを使用した周波数ランプの外部較正を介して適用することができる。初期較正後、外部周波数コムを除去することができ、周波数ランプがマイクロヒータによって決定される高い精度に起因して所望の周波数ランプが保持される。あるいは、fceoおよびfrepのリアルタイム監視により、高線形周波数ランプまたは任意の選択可能な周波数ランプを得ることができる。
【0049】
周波数ランプのリアルタイム制御が所望される場合、追加の不平衡マッハツェンダ干渉計(別個には図示せず)を図6に示すcwレーザと第1PMとの間に挿入することができ、cwレーザ信号とその時間遅延バージョンとの間のビート信号を、外部基準信号との混合を介してcwレーザにフィードバックすることができる。そのような方式は、例えば、N.Satyan他「Precise control of broadband frequency chirps using optoelectronic feedback」(Opt.Expr.,17,15991(2009))に論じられており、ここではこれ以上説明しない。
【0050】
以下では、いくつかの用途を詳細に説明するが、広帯域幅MR掃引(WIMS)と呼ぶことができる上記の変調方式は、これらの用途に限定されず、多くのスペクトル線の同時変調が有用であるときはいつでも適用できることが理解される。
【0051】
無不感帯分光法へのWIMSの適用例
第1の実施例では、無不感帯分光法へのWIMSの適用について、図9を参照して説明する。無不感帯分光法では、被試験サンプルが走査MRの下流に挿入され、サンプルの下流に、各ソリトンコムモードを分離するための波長分割マルチプレクサ(WDM)が後続する。MRは、FSRの大部分、FSR、またはさらにはMRのFSRを超える量によっても走査され得る。分離ソリトンコムモードは、光検出器アレイPD1~PDN(Nは1、2、3、またはそれ以上であり得る)によって光検出することができる。そのような光検出器アレイはまた、電荷結合素子(CCD)を含むことができる。アレイ内の各PDから得られた信号をスティッチングすることによって、ソリトンコムの全スペクトル帯域幅にわたるサンプルの全スペクトル情報を得ることができる。絶対周波数軸を追加するために、自己参照ソリトンコムを使用することができ、リアルタイムでカウンタを用いてfceoおよびfrepを読み出すことができる。付加的または代替的に、周波数較正の目的で既知の周波数基準(例えば、別個に示されていないアセチレン吸収線など)を使用することができる。コムモード走査は高速であり得、必要な走査範囲は1つのFSRのみであり得るため、cwレーザのみを使用してスペクトル範囲全体をカバーしようとする場合とは異なり、迅速な信号取得を得ることができる。さらに、周波数分解能は単に取得時間によって決定されてもよく、これは従来の光スペクトルアナライザ(例えば、約4GHz)で可能であるよりもはるかに高くなり得る。さらに、感度を高めるために、変調分光法を実施することができ、コムモードはcwレーザに適用された変調周波数を介して走査され、各検出器からの検出信号はミキサおよびローパスフィルタを介して同じ変調周波数で復調されて、信号対雑音比が増加する。WIMSを変調分光法に使用する利点は、広いスペクトル範囲を同時にカバーできることである。さらに、WIMSは、中赤外(mid-IR)スペクトル範囲内で動作する適切なソリトンコムの使用を介して、mid-IRにおいても使用することができる。
【0052】
WIMSのLIDARへの応用例
第2の例示的な用途では、図10を参照して説明されているように、WIMSは、多波長LIDARまたは多波長周波数変調連続波(FMCW)LIDARのための多波長レーザ源として使用することができる。従来、FMCW LIDARは距離測定に使用され、単一のcwレーザまたは独立したcwレーザのアレイが使用される。cwレーザに鋸歯状周波数変調を適用すると、変調されたローカル信号と戻り信号との間のビートを測定することによって、対象物の距離および速度を抽出することができる。WIMSを使用する場合、各コムモードの周波数をほぼ等しく同時に走査することができるため、ソリトンコムの各コムモードをFMCW LIDARのcwレーザとして使用することができる。
【0053】
WIMSベースのFMCWコムLIDARの一般概念を、図10を参照してさらに説明する。ソリトンコムの出力は光結合器1によって2つの経路に沿って分割され、第1の経路に沿って導かれるコムモードは局部発振器として使用され、第2の経路に沿って導かれるコムモードは信号として使用される。信号コムモードは、第1のWDMシステムによっていくつかのチャネルに分離され、その後、送信機および受信機を含むことができるビームステアリングシステムに向けられる。後述する図11は、ビームステアリング装置の一例を示す。送信機および受信機は、例えば、格子結合器、フェーズドアレイ、ガルバノメータ走査デバイスまたは微小電気機械半導体(MEMS)システムなどの機械的走査デバイスであってもよい。
【0054】
送信機によって放出される信号は、ターゲットにおいて反射され、受信機によって収集される。受信信号モードおよび局部発振器モードは、最初に第2のWDMシステムを介して干渉され、個々のチャネルは第3のWDMシステムによって分離される。個々のチャネルは、光検出器のアレイ(PD1...PDN)によって検出される。個々のチャネルは、例えば、第1のWDMによって決定されるのと同じチャネル割り当てを有するように選択することができる。いくつかの実施態様では、第2のWDMシステムおよび第3のWDMシステムを1つのシステムに組み合わせることができる。あるいは、第2のWDMシステムを光結合器に置き換えることもできる。PDにおける検出されたビート信号は、異なる周波数を有する各信号モードから得られるターゲットの距離および速度情報を含む。各コムモードは、周波数に応じて放射方向を(例えば、ビームステアリングシステムを介して)変更することにより、ターゲットの異なる点における距離情報を提供することができる。
【0055】
図11を参照して、コム走査システムの一実施形態をさらに説明する。ソリトンコムの出力は1×2光結合器によって2つの経路に沿って分割され、第1の経路に沿って導かれるコムモードは局部発振器として使用され、第2の経路に沿って導かれるコムモードは信号として使用される。信号コムモードは、アレイ導波路回折格子(AWG)に基づくことができる第1のWDMデマルチプレクサによっていくつかのチャネルに分離され、続いて格子結合器を備えるビームステアリングシステムに向けられ、格子結合器は、一次元周期的誘電体構造から構成することができ、結合器が垂直に(図11に示すように)光を放射するように設計することができる。このような垂直放射格子結合器およびAWGは、シリコンフォトニクス製造技法に基づいてチップ上に集積することができる。格子結合器は、ターゲットに向かって垂直に(図11に示すように)信号光を放射し、ここで、デバイスを加熱することによって放射の方向を制御することができる。
【0056】
放出された信号は、ターゲットにおいて反射され、垂直方向(図11に示すように)から入来する光を収集するように設計された受信格子結合器によって収集される。受信信号モードおよび局部発振器モードは最初に第1のWDMマルチプレクサを介して干渉され、個々のチャネルは第2のWDMデマルチプレクサによって分離され、マルチプレクサとデマルチプレクサの両方はAWGから構成することができる。個々のチャネルは、光検出器のアレイ(PD1、PD2,...)によって検出される。個々のチャネルは、第1のデマルチプレクサによって決定されるものと同じチャネル割り当てを有することができる。PDにおける検出されたビート信号は、異なる周波数を有する各信号モードから得られるターゲットの距離および速度情報を含む。
【0057】
鋸歯状周波数変調を、測定中にWIMSによってソリトンコムに連続的に適用することができ、典型的な変調深さは1~100GHzの範囲で選択することができる。いくつかの実施形態では、最大10個のチャネルをそのように利用することができる。いくつかの用途では、チャネル数は100を超える可能性があり、個々のチャネル間隔は10~100GHzの間で選択できる。他のチャネル間隔およびさらに多数のチャネルも実装することができる。さらに、例えばシリコンフォトニクスにおける、マルチプレクサおよびデマルチプレクサならびに光検出器のチップスケールMRコムおよびチップスケールアセンブリと併せて、WIMSを利用して超小型チップスケールLIDARシステムを実現することができる。
【0058】
MRにおけるソリトン動作を失うことなく実質的な周波数範囲にわたって多くのコムモードを同時に走査することは、分光法またはLIDARに有用であるだけでなく、任意の他の用途にも実施することができる。上述したように、MRのFSRおよびポンプ周波数の同時制御は、広帯域幅MR掃引中にソリトン動作を維持するために実施することができ、FSRおよびポンプ周波数の任意の形態の同時制御を利用することができる。FSRの5%超、FSRの10%超、FSRの50%超、さらにはFSRの100%超によるFSR走査を実施することができる。例えば、そのようなシステムは、ヒータがFSRの変調を可能にし、同時にcwポンプレーザ出力または周波数の変調が実施されるように構成することができる。そのようなシステムがソリトンモードで動作し続けることを保証するために、適切なフィードバックループを実装することができる。例えば、上記でも述べたように、フィードバックループは、ポンプレーザ出力または周波数において動作することができる。このとき、ポンプレーザは、マイクロヒータを用いてMRの温度をランピング(または任意選択的に変調)するときにキャビティモードの変動に追従することができる。別の例として、システムは、ヒータがMRのFSRの変調を可能にし、同時にcwポンプレーザ周波数の変調が適用されるように構成することができる。このとき、走査プロセス中にMRの出力パワーを安定化させるためにフィードバックループを使用することができる。MR走査システムのそのような配列は、ここでは別個に示されていない。あるいは、分光法またはLIDARにおける応用は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるM.E.Fermann他への国際公開第2016/164263号「Systems and methods for low noise frequency multiplication,division,and synchronization」に開示されているように、電気光学コム(EOコム)の走査と互換性がある。そのようなEOコムはまた、実質的な周波数範囲にわたって多くのコムモードの同時走査を可能にする。走査MRコムおよび電気光学コムの他の用途も可能である。
【0059】
高解像度LIDARへのWIMSの応用例
WIMSは、図8に示す例から明らかなように、aw MRの個々のコムライン間に相関の高い周波数走査を生成する。この高い相関度は、個々のコムラインの周波数走査をコヒーレントにスティッチングすることによってLIDARシステムの空間分解能を大幅に拡張するために利用することができる。これについて以下でさらに説明する。
【0060】
個々のコムモードのチャープ率および瞬時周波数を得るために、既知の遅延を有する基準干渉計を使用することができる。干渉計は、コヒーレントスティッチングのためだけでなく、非線形周波数走査の補正のためにも実装することができる。コヒーレントにスティッチングされたコムLIDARを実現する例示的なシステムを図12に示す。システムは、例えば、周波数走査cwレーザ(垂直線1200として示されるνの中心周波数を有する)によって生成される制御信号によって開始し、これは2つの経路に沿って分割される。1つの経路は基準干渉計を含み、これについては本明細書でさらに詳細に説明する。他方の経路は、Δのコム間隔を有する周波数コム1204(例えば、図1図9に関して記載されているMRコム、または、その全体が参照により本明細書に組み込まれるM.E.Fermann他に対する国際公開第2016/164263号「Systems and methods for low noise frequency multiplication,division,and synchronization」に開示されているような電気光学(EO)コム)を生成するために使用される。個々のコムライン1204a,1204b,1204c,および1204dの例を図12に示す。
【0061】
周波数コム1204はターゲットに向けられており、ターゲットは、ここでは単純にするためにターゲット干渉計(例えば、マッハツェンダ干渉計)として示されている。ターゲット干渉計は、短い経路(SP)および長い経路(LP)に沿ってビームを分割する第1のビームスプリッタ(BS1)を備える。長い経路は、図12に示すターゲットをさらに含むことができ、これは、例えば、わずかに異なる距離に(可能な分解能を評価するために)配置された2つの反射器(または一般的なサンプルの任意の数の散乱物体またはターゲット)を含むことができる。短い経路および長い経路に沿って伝播する信号は、波長分割マルチプレクサ(WDM)に導かれる前に第2のビームスプリッタ(BS2)において再結合される。WDMは、個々のコムライン1204a~1204dに対応する信号を分離するために使用される。例えば、WDMのK番目のチャネルは、ν+(K-1)Δとν+KΔとの間の光周波数を有する光を通過させる。分離されたコムモードを含む分離されたWDMチャネルは、個々の光検出器によって光検出され、信号処理のためにアナログデジタル変換器(ADC)によってデジタル化され得る。基準干渉計からの信号は、基準検出器(例えば、図12に示す基準干渉計の下流の光検出器)によって光検出され、以下でさらに説明するように信号処理に使用することができる。
【0062】
図13aは、周波数走査を伴うコムモードの瞬時周波数1302a,1302b,1302c,1302d,および1302eの一例を示している。ここでは、単純にするために、周波数コムのコム間隔Δが固定され、キャリアエンベロープオフセット周波数が走査されると仮定するが、これはEOコムに対して実施することができる。また、単純にするために、周波数走査が純粋に線形である、すなわち、単位時間当たりの周波数変化が一定であると仮定する。ここで、実線は、MRにおいて測定される個々のコムラインの周波数の展開を表す。破線は、ターゲットからの反射後の周波数展開を表す(単純にするために、1つのターゲットのみが仮定される)。FMCW LIDARに関するビート信号は、実線と破線との間に観測される。
【0063】
好ましくは、コムモードは、コム間隔をわずかに超えて走査され、K番目のチャネルにおいて(K-1)番目のコムモードと(K-2)番目のコムモードとの間に周波数重複を生じる。図13aの破線の垂直線は、例えば時間εにわたるコム間隔を超える走査を示す。
【0064】
コム走査がコム間隔に達するのにかかる時間が既知である場合、図13bに概略的に示すように、すべてのコムモードをコヒーレントにスティッチングすることができる。図14aおよび図14bは、時間領域におけるFMCW LIDAR信号1402a、1402b、1402c、1402d、および1402eを使用した動作原理を示している。各WDMチャネルの周辺部での周波数重複が小さいため、K番目のチャネルは、短い時間期間ε(好ましくは、サイクル時間Tcycleと比較して小さくなるように選択される)中に、走査範囲の終わりにおいて走査の開始時と同じ信号を想定し、具体的には、K番目のチャネルは、時間=0+tおよび時間=Tcycle+t(0<=t<ε)において同じ信号を想定する。様々な実施形態において、時間期間εは、約0.1 Tcycle未満、約0.05 Tcycle未満、約0.01 Tcycle未満、または他の何らかの値であってもよい。
【0065】
N×Tcycleの長さを有するFMCW LIDAR信号は、以下のようにFMCW LIDAR信号をコヒーレントにスティッチングすることによって取得することができる。すなわち、第1のチャネルは0~Tcycleの時間をカバーし、第2のチャネルはTcycle~2 Tcycleの時間をカバーし...、第Nのチャネルは(N-1)Tcycle~NTcycleの時間をカバーする。N個のコムモードによって周波数コムをコヒーレントにスティッチングすることによって、1つのコム間隔Δ付近のみのcwレーザの実際の走査範囲にもかかわらず、N倍大きい有効周波数走査を得ることができ、LIDARシステムの得られる分解能はN倍向上する。したがって、例えば分散フィードバック(DFB)ベースのcwレーザをそのようなLIDARシステムの周波数コムと組み合わせて使用するときに、高分解能と大きいコヒーレンス長の両方を得ることができる。さらに、標準的な周波数変調LIDARシステムと比較して、同じ走査範囲をN倍短い走査時間で得ることができる。
【0066】
図12に戻って参照して、基準干渉計の機能についてより詳細に説明する。基準干渉計は、例えば、既知の遅延τrefを有するマッハツェンダ干渉計を備えることができる。さらに、基準干渉計を使用して、基準検出器上のビート信号の観測によって時間の関数として周波数走査を正確に監視することもできる。例えば、時間の関数としての基準検出器上の観測可能なビート音周波数は、近似的にfbeat(t)=dξ(t)/dt*τrefによって与えられ、ここで、dξ(t)/dtは、コムモードの周波数の時間変動である。ビート音周波数fbeat(t)は、基準干渉計からの信号のゼロ交差間の距離を記録し、ゼロクロス時にターゲット干渉計を再サンプリングすることによって、好都合に監視することができる。ゼロ交差間の補間も、より高い分解能のために使用することができる。そのようなリサンプリング方法は、例えば、T.Zhang他「Nonlinear error correction for FMCW LADAR by the amplitude modulation method」(Opt.Expr.,vol.26,pp.11510(2018))に記載されている。時変周波数走査によってFMCW LIDARの精度を向上させるために、2つ以上の基準干渉計を使用することができる。そのような実施態様は別個に示されていない。
【0067】
あるいは、基準周波数によって観測されるビート信号は、レーザ電流にフィードバックすることによって局部発振器周波数基準に位相ロックすることによって安定化することができ、それによってcwレーザパルスチャープを能動的に線形化することができる。そのような方法の例は、T.Zhang他によって論じられている。
【0068】
基準干渉計における既知の遅延τrefにより、サイクル時間Tcycleは、以下のように得ることができる。
【0069】
【数1】
【0070】
ここで、fbeat,refは、線形走査を想定した基準干渉計のFMCW LIDAR信号の補正周波数である。標準的な実験室条件下で、または温度安定化を伴って、ファイバ干渉計から構成された基準干渉計は、シリカファイバの熱膨張係数が約10-5/Kであるため、遅延(τref)に対して6桁の正確度(10-6)を生成することができる。
【0071】
正しいコヒーレントスティッチングを保証するのに役立つパラメータは、時刻tにおける(ターゲットによって生成される)ビート信号の位相φ(t)と、時刻t+Tcycle(0<=t<ε)におけるビート信号の位相φ(t+Tcycle)との間の位相不整合である。理想的には、φ(t)-φ(t+Tcycle)<+/-πであり、これにより、信号処理による正しいコヒーレントなスティッチングが可能になる。位相不整合C=φ(t)-φ(t+Tcycle)が+/-π以内であることが分かると、φk(t)がφk(t+Tcycle)とまったく同じであることを保証するために小さい補正をCに加えることができる。
【0072】
一例として、遅延の6桁の精度および許容可能な+/-π位相不整合を伴うΔ=100GHzのコム間隔を仮定すると、ターゲット干渉計における1μsを超える遅延(τtarget<(許容可能な位相不整合)/(2π×正確度×Δ))を測定することができ、正確度は、基準干渉計を用いて得られるτrefの測定の正確度を指す。正確度が高いほど、測定できる範囲が長くなる。正確度を最大化するために、基準干渉計の精密な温度安定化を実施することができる。また、システム全体のフットプリントを最小限に抑えるために、螺旋状に巻かれた導波路に基づく基準干渉計を実装することができる。螺旋状に巻かれた導波路は、例えば、M.E.Fermann他「SYSTEMS AND METHODS FOR LOW NOISE FREQUENCY MULTIPLICATION,DIVISION,AND SYNCHRONIZATION」、米国特許出願公開第2018/0048113号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。基準干渉計における分散補償も実施することができる。
【0073】
3つのチャネルを有する図12に示すシステムを使用した、コヒーレントスティッチングLIDAR信号の例を図15に示す。信号(任意単位)は、時間の関数として示されている。全体的な信号は、10msの時間期間にわたってほぼ等しい振幅を有し、各信号セクションの周縁で振幅が減少する3つの信号セクションI、II、およびIIIを含む。周縁部における振幅の減少は、WDMフィルタの制限から生じる。無限に急峻なカットオンおよびカットオフフィルタ機能を有するフィルタは、原則として、信号セクションの周縁部における振幅の減少を排除することができる。実際には、フィルタエッジは無限に急ではなく、観測される振幅変調をもたらす。セクションIとセクションIIとの間およびセクションIIとセクションIIIとの間の破線間の時間は、隣接する検出チャネルに信号重複がある時間を表す。
【0074】
図15に示すLIDAR信号のフーリエ変換から得られる実際の目標測定値の例を図16aおよび図16bに示す。図16aは、単一のターゲットに対して得られる解像度の向上を示し、図16bは、ただ1つまたは3つの(コヒーレントスティッチング)WDMチャネルを使用する場合の二重ターゲットに対して得られる解像度の向上を示す。ここで、より広い曲線1604は、ただ1つのチャネルによって得られる目標解像度を表し、より狭い曲線1608は、3つのコヒーレントスティッチングチャネルによって得られる解像度を表す。実際、LIDAR解像度は、スティッチングされたWDMチャネルの数に反比例して増加する。
【0075】
図12に関して説明したシステムは、EOコムまたは任意の形態の走査MRコムと互換性がある。MRコムを使用する場合、追加の問題に対処することができる。図8に示すように、MRコムを走査すると、繰り返し周波数が、キャリアエンベロープオフセット(CEO)周波数の変化に加えて変化する。いくつかの実施態様では、典型的には反復率ではなくCEO周波数のみを走査するEOコムの走査の間、および、CEO周波数と反復率の両方が変化しているMRコムの走査の間に差があり得る。MRコムを走査するとき、コム間隔は、図17aに示すように、アコーディオンのように変化し得る。ここで、実線は走査前のコムモードスペクトルを示し、破線はコムモード間隔が変更された後のコムモードスペクトルを示す。このため、コム間隔走査が含まれる場合、図17bに示されるように、コムモードが初期コム間隔(Δrep0)だけ走査される時間(サイクルタイムと呼ばれる)は、コムモード数に依存する。コヒーレントスティッチングを進める前に、追加の信号処理を利用することができる。
【0076】
追加の信号処理は、図18に示すように、すべてのコムモードについて時間軸を再スケーリングすることによって、サイクルタイムを強化して同じにすることができる。既知のコムモード数によってコム間隔を常に測定することにより、正確な再スケーリング係数を得ることができる。サイクルタイムが整列されると、図14に関して説明したのと同じ方法ですべてのコムモードをコヒーレントにスティッチングすることができる。
【0077】
k番目のコムモードに関連するFMCW信号の再スケーリングされた時間軸に対応する再スケーリングされた時間tの数式は、以下のように得ることができる。
【0078】
【数2】
【0079】
式中、Kはチャネル数であり、Δrep0およびδrepはそれぞれ走査前のコム間隔および走査中のコム間隔変化である。
【0080】
時間再スケーリングの場合、周波数コムの繰り返し周波数は、RF領域において常に測定することができる。時間再スケーリングの後、例えば、CEO周波数のみが走査されるときと同じ方法で、すべてのコムモードをコヒーレントにスティッチングすることができる。
【0081】
光クロックのMRおよび低位相雑音mm波生成
本明細書で説明するように、微小共振器は、低位相雑音マイクロ波生成にも使用することができる。例えば、微小共振器をファイバ遅延線にロックすることができる。いくつかの実施態様は、低位相雑音マイクロ波生成のために光周波数分割を使用する。光周波数分割は、例えばA.Rolland他「Non-linear optoelectronic phase-locked loop for stabilization of opto-millimeter waves:towards a narrow linewidth tunable THz source」(Opt.Expr.,vol.19,pp.17944(2011))に記載されているような、マイクロ波領域の信号を光領域の信号にコヒーレントに連結するために使用される、周波数多重化の逆である。周波数分割は、例えば、T.M.Fortier他「Generation of ultrastable microwaves via optical frequency division」(Nature Photonics,vol.5,pp.425(2011))に記載されているような、自己参照光周波数コムを介してマイクロ波領域に光信号の安定性を伝達するための技術であり、これは(最適な場合には)マイクロ波領域の位相雑音を1/N倍低減することができ、ここでNは、光周波数とマイクロ波周波数との間の周波数比である。
【0082】
本明細書では、高繰り返し率MRソリトンコムの使用による、低位相雑音を有するミリ波(本明細書ではmm波またはmmwと呼ばれることもある)信号の生成への周波数分割技法の拡張について説明する。いくつかのMRコムは、パルスごとに比較的低いエネルギーを生成することができる。パルス当たりのより高いエネルギーを提供するために、いくつかのシステムは、図19に示す例示的なmm波発振器システムに示すように、数THzだけ分離された2つの超低位相雑音cwレーザを使用して、ソリトンコムの繰り返し率およびキャリアエンベロープオフセット周波数をロックすることができる。
【0083】
図19では、光ファイバが様々な構成要素を接続しているが、これはmm波発振器システムの要件ではない。ビームスプリッタ結合器BS1は、(例えば300GHzの繰り返し周波数で動作する)ソリトン微小共振器コムMR1の出力を2つの経路に分割する。ビームスプリッタ結合器BS2は、これらのビーム経路のうちの1つをさらに2つに分割する。結合器1(C1)は、ソリトンコムからの出力を第1のcwレーザ基準(光基準1)の出力と結合し、結合器2(C2)は、ソリトンコムからの出力を第2のcwレーザ基準(光基準2)の出力と結合する。図19に示すシステムでは、光基準1の出力は約1530nmであり、光基準2の出力は約1565nmである。他の実施形態では、他の出力波長を使用することができる。
【0084】
MR1およびcwレーザ周波数の関連するコムモードの例が図22aに示されており、これについては下記にさらに説明する。結合器C1およびC2からの2つの結合出力は、フォトダイオードD1およびD2に向けられて、ソリトンコムの次の隣接するモードを有する2つのビート信号を生成する。ミキサm1は、2つのビート信号を結合し、ソリトンコムのキャリアエンベロープオフセット周波数とは無関係の二次ビート信号を生成する。次いで、二次ビート信号をミキサm2において局部発振器(LO)と混合することによって誤差信号を生成し、PIDコントローラを介して誤差信号をソリトンコムの繰り返し率を制御するためのアクチュエータに導くことによって、ソリトンコム繰り返し率を安定化することができる。そのようなアクチュエータは、例えば、図5に関して説明したように、例えばMR1に取り付けられた加熱要素を含むことができる。
【0085】
この方式では、ソリトンコム繰り返し率の位相雑音が周波数分割によって低減され、その結果、例えば、以下のように、繰り返し率位相雑音φ(frep1)が、2つのcwレーザ間の差分位相雑音φ(ν-ν)を、それらの周波数分離ν-νとソリトンコム繰り返し率frepとの比の二乗で除算した値に低減される最適な場合がもたらされる。
【0086】
φ(frep1)=φ(ν-ν)/[(ν-ν)/frep1,(C1)
これは図22aにも示されている。2つのcwレーザの周波数分離が4.5THzであり、繰り返し周波数が300GHz(ここでは、300GHzは一例としてのみ使用され、50GHz~50THzの範囲の他の周波数も使用することができる)であると仮定すると、これは23.3dBの分割係数に相当する。小型またはチップスケールのcwレーザは、100kHzのオフセット周波数(例えば、OEwaves HI-Q 1.5 Micron Laser)において1Hz/Hzの周波数雑音に達し得、このオフセット周波数は、300GHzにおいて-132.3dBc/Hzの単側波帯位相雑音をもたらす。このレベルは、オーブン制御水晶発振器から増倍された現行技術水準のミリ波源の位相雑音よりも40dBだけ性能が優れている。ミリメートル波繰り返し率ソリトンコムの選択は、コムモードあたりの高パワーを可能にし、原理的には、ショット雑音限界によって支配されるミリ波位相雑音で光からミリメートル波への変換を達成することができる。
【0087】
結合器C3はMR1の出力を分割し、光バンドパスフィルタ(OBPF)は、その周波数差がこれら2つの光コムモードの波長差によって決定される2つの個々のMRコムモードをフィルタリング除外する。EO変調器(EO)は、2つのコムモードのうちの1つを周波数変調する。結合器C4は2つのコムモードを再結合し、結合器C5は光パワーの一部を経路Aおよび経路Bに沿って分割する。単一走行キャリアフォトダイオード(UTC-PD)を使用して、経路Bに沿って伝播する2つの光波長を、その周波数が光線の波長差によって決定されるミリメートル波およびTHz領域の単一トーンに変換することができる。ミリメートル波源を調整するために、図19に示すように、一方の波長(または両方の波長)の光路上に音響光学変調器(または音響光学周波数シフタ)AOを導入することができる。ミリメートル波源の微調整が可能であることは、外部基準に対する長期の周波数ドリフトを安定させるために有利であり得る。結合器C5からの出力(図19の経路Aに沿った)は、例えば、図20を参照して説明される下方変換システムをもたらすことができる。
【0088】
図20は、ミリ波信号をマイクロ波信号に変換する微小共振器ベースの周波数ダウンコンバータの構成の一例を概略的に示す。ミリメートル波のビート音をRF領域にダウンコンバートするために、図19のソリトンコムよりも低い繰り返し周波数にある、図20においてMR2として示される第2の周波数コム、例えばMRコムを使用することができる。ダウンコンバータへの入力は、経路A(図19に示す)に沿った結合器C5出力から得ることができ、所望の周波数間隔によって分離された2つのcwレーザ波長を含む。好都合には、10GHzの周波数で振動するMRソリトンコムを使用することができるが、1~30GHzの範囲内、さらにはより高いまたはより低いMR周波数を使用することもできる。小さいサイズが必要でない場合、モデルロック固体レーザ、モデルロックファイバもしくはダイオードレーザ、またはEOコムも下方変換に使用することができる。第2の周波数コムMR2は、図19に示した300GHzのソリトンコムと同様に安定化されてよい。例えば、検出器Dは、MR2からの最近傍コムラインを用いて2つのcwレーザの2つのビートを検出する。関連するコムラインおよびcwレーザ周波数は、図22bに別個に示されている。
【0089】
図20に戻ると、2つのビートは2つのRFバンドパスフィルタ(RFBP)によってRF領域内でフィルタリングされる。2つのビートは、その後、図示のミキサMによって混合され、二次ビート信号を生成する。ミキサMは、二次ビート信号からMR2のキャリアエンベロープオフセット周波数を低減または除去する。次いで、二次ビート信号は、局部発振器LO(例えば、10MHzの周波数にある)と混合され、PIDコントローラを介して誤差信号を生成し、これはMR2内の繰り返し率コントローラ、例えば図5に関して説明したような加熱要素にフィードバックされる。次いで、MR2からのモード間ビート周波数が、検出器DBによって検出され、MR2の繰り返し率において超安定出力を生成する。
【0090】
このようにして、300GHzによって分離された2つのcwレーザからの2つの波長は、MR2の繰り返し率を安定化するために使用される。したがって、10GHzにおける繰り返し率は、300GHzの周波数分離を有する2つのcwレーザの差分位相雑音を運ぶ。言い換えれば、10GHz信号の周波数安定性は、300GHzにおける周波数差の安定性と同じ(またはほぼ同じ)である。
【0091】
さらに、この10GHz信号は、生成されたmm波をMASER、オーブン制御水晶発振器(OCXO)などの外部基準にロックするために使用することができ、それによって長期安定性を保証する。あるいは、以下に説明するように、光クロック出力信号として10GHz自体を使用する場合、MASER、OCXOなどの他の精度の周波数基準を本10GHz信号にロックすることができる。
【0092】
分子の回転スペクトルにおけるミリメートル波遷移は、チップスケール原子クロックを開発するために使用することができるタイミング基準を提供することができる。例えば、C.Wang他「An on-chip fully electronic molecular clock based on sub-terahertz molecular spectroscopy」(Nature Electronics(2018))に記載されているように、CMOS技術に基づいて完全電子THzクロックが実証されている。そのような電子分子クロックは、分子遷移において局部発振器の位相雑音および安定性によって制限される。MRソリトンコム手法は、チップスケールでの構築を可能にしながら、この制限を活用することができる。
【0093】
そのような光学分子クロックの実施態様の一例を図21に示す。システムは、図19に関して説明したように、MR1にロックされた2つのcwレーザに基づく局部発振器と、例えば図20に関して説明したように、サブTHz範囲のクロック周波数をマイクロ波領域の計数可能な周波数にダウンコンバートするためにMR2を使用する下方変換ユニットとを備える。これらのシステムは、例えばNTT Electronics Corp.から入手可能なIOD-PMJ-13001などの導波路結合UTCフォトダイオード、例えば硫化カルボニル(OCS)ガスセルに基づくガスセル、および、例えばVirginia Diodes,Inc.から入手可能なWR3.4ZBDなどのショットキーバリアダイオード(SBD)の組み合わせによって増強される。図21では、OCS分子ガスを含むガスセルを示しているが、適切な吸収スペクトルを有する他のガスを使用することもできる。好ましくは、ガスセルは、吸収ラインの圧力広がりを低減または最小にするために、減圧された大気圧にあるガス(例えば、OCS)を含む。UTC-PDは、frep1によって分離された2つの光学フィルタリングされたcwレーザ(MR1の個々のソリトンコムモードにロックされている)をミリメートル波トーンに変換する。この信号は、ミリメートル波トーンの導波路として機能するように設計されたガスセルに結合され、長い相互作用長を保証する。ガスセルを通じて送信された信号は、SBDによって検出される。
【0094】
ミリ波の周波数を安定化させるために、図21に示すAO周波数シフタを利用することができ、これはcwレーザのうちの1つの波長を周波数シフトさせることができる。frep1によって分離された2つの光トーンの下方変換は、光検出器D2によって直接光検出されるマイクロ波周波数である繰り返し周波数frep2で動作する第2のソリトンMRコムを介して実現される。frep2は、OCSガスセルの雑音変動を担持する。
【0095】
mmwトーンをガスセルにロックするための例示的な実施態様も図21に示す。従来のチップスケール原子クロック(CSAC)と同様に、分子クロックは、示されたVCOを介してAOに対して閉ループ動的周波数補正を実行する。OCSガスセル内の選択された基準吸収線のmmwトーンfmmwとスペクトル線中心fOCSとの間の周波数誤差を検出するために、周波数シフトキーイング(FSK)を実施することができる。FSKでは、ガスセルに衝突するmmwトーンが、好ましくは遷移線幅の約1/10の周波数fにおいて変調される。約1~30Paの好ましい圧力のOCSガスセルの場合、変調周波数は約100kHzであり得る。変調周波数は、例えば、図21に示す電気光学変調器EOを介して適用することができ、これは、2つのcw波長のうちの一方を変調する。
【0096】
周波数変調の結果として、プローブ信号の瞬時周波数は、fmmw+fとfmmw-fとの間で周期的に切り替えられる。fmmwが吸収線の中心にない場合、ガス吸収は2つのハーフデューティサイクル間で異なる。ショットキーダイオードは変調信号を測定し、変調信号はその後、PIDを介して図21に示すVCOの周波数を制御する誤差信号に変換される。fmmwが吸収線の中心にあるとき、誤差信号は0である。
【0097】
説明のために、mm波光クロックにおける周波数が図22aおよび図22bに表示されている。図22aは、ソリトンMRコムMR1に関するコムスペクトルを示している。MR1は、2つの次の隣接するMR1コムラインの位相ロックを介して、周波数ν、νにおいて2つのcwレーザにロックされる。一般性のために、2つの次の隣接コムラインは、繰り返し率およびキャリアエンベロープオフセット周波数の両方に作用するアクチュエータを介してロックすることができることが示されている。(図19に関して説明したように)cwレーザと次の隣接するコムラインとの間の2つのビート信号を混合するためにミキサが使用される場合、キャリアエンベロープオフセット周波数に対するアクチュエータを省略することができる。次いで、ガスセル(例えば、図21を参照して説明される)内の選択された分子吸収線を調べる概略的に示されたフィードバックループによって、繰り返し率frep1が安定化される。繰り返し周波数frep1が安定すると、周波数frep1で発生するmm波も安定する。
【0098】
rep1からfrep2への下方変換を図22bに概略的に示す。ここで、MR2はまた、2つのcwレーザ線に位相ロックされ、これによって、周波数カウンタによって計数することができるfrep2におけるMR2の繰り返し率が安定する。ここでもミキサを使用すると、MR2を2つのcwレーザ線にロックするために必要なアクチュエータは1つだけである。MR2が安定化されると、繰り返し率frep2の位相雑音は以下のように書くことができる(図22b参照)。
【0099】
【数3】
【0100】
例えば、frep2における位相雑音は、周波数比(frep1/frep2だけ低減される。
【0101】
rep2における光検出信号は、OCSガスセルの変動に依存するfrep1の分別安定性を担持するため、THz分子クロックの直接読み出しである。
【0102】
式(C1)に関して説明したのと同様に、式(C2)は、周波数分割によって位相雑音低減を得ることができることを示す。式(C1)および式(C2)を組み合わせると、周波数frep2における位相雑音は以下のように求められる。
【0103】
φ(frep2)=φ(ν-ν)/[(ν-ν)/frep2,(C3)
例えば、システムの全体的な分割係数は、[(ν-ν)/frep2によって与えられる。したがって、光検出器Dからの出力は、低位相雑音マイクロ波放射の非常にコンパクトな供給源でもあり得る。cwレーザと、10GHzのfrep2との間の4.5THzの周波数分離の場合、位相雑音低減係数は53dBである。分子クロックの実施形態からのマイクロ波信号は、1秒で10-12未満の安定性を有することができる。
【0104】
一般的に低位相雑音マイクロ波またはミリ波の生成、ならびに分子クロックの最高の周波数安定性のために、本明細書に記載の微小共振器を光学的に冷却することがさらに有用であり得る。光冷却は、例えば、T.E.Drake「Thermal decoherence and laser cooling of Kerr microresonator solitons」(https://arxiv.org/pdf/1903.00431.pdf)で論じられているように、MRポンプレーザに反対方向に冷却レーザを注入することによって得ることができる。微小共振器と組み合わせた冷却レーザの実施態様の概略的な実施例を図23に示す。この例では、MRポンプレーザは時計回りに伝播している(曲線2302として示されている)。冷却レーザは、反時計回りに伝播している(曲線2304として示されている)。短いソリトンパルスがポンプレーザによって生成され、図23の下部において曲線2308として表されている。
【0105】
低雑音ソリトンMRコムでは、サブTHz繰り返し率を有するMRコムを排除することができ、分子光クロックは、3~30GHzの中程度の繰り返し率で動作するただ1つのソリトンMRコムによって構成することができ、別個の下方変換ユニットの必要性を排除する。あるいは、適切な周波数拡大段を有する固体またはファイバレーザを使用することもできる。中程度の繰り返し率において動作するこのようなソリトンMRコムは、図19に関して説明したのと同じ方法で、2つのcwレーザに安定化することができる。
【0106】
次に、UTC-PDは、分子ガス吸収線の遷移周波数付近のMRコム繰り返し率の倍数を検出する。吸収セルの支援を受けて生成されるフィードバック信号は、図21に関して前述したように、AO変調器を介してcwレーザのうちの1つの周波数を変調するために使用することができる。次いで、コムライン間の変調間ビート信号および所望の計数可能なクロック信号であるMRコムの対応する繰り返し率を検出するために、図20の検出器Dと同様の機能において、MRソリトンコムの出力の一部を別の検出器に向けることができる。したがって、このような構成では、別個の周波数下方変換ユニットおよび第2のMRソリトンコムは必要とされない。
【0107】
さらなる態様
1.微小共振器ベースの周波数コムであって、
連続波(cw)ポンプレーザと、前記cwレーザを受け取るように構成された微小共振器と、
前記cwレーザの周波数および振幅変調のために構成された単側波帯(SSB)マッハツェンダ変調器とを備え、前記SSB変調器は、前記微小共振器内にコヒーレントなソリトン状態を誘起するように構成されており、前記SSB変調器は、前記微小共振器のキャリアエンベロープオフセット周波数fceoおよび繰り返し率frepのロックを長期安定化させるようにさらに構成されている、微小共振器ベースの周波数コム。
【0108】
2.微小共振器ベースの周波数コムであって、
連続波(cw)ポンプレーザと、前記cwレーザからの出力を受け取るように構成された微小共振器と、前記微小共振器のキャビティ長を変調するように構成されている、前記微小共振器上に堆積された少なくとも1つのグラフェン変調器とを備え、前記グラフェン変調器は、前記微小共振器のキャリアエンベロープオフセット周波数fceo、繰り返し率frep、または共振オフセット周波数ROFのうちの1つまたは複数を長期ロックするようにさらに構成される、微小共振器ベースの周波数コム。
【0109】
3.微小共振器ベースの周波数コムであって、
ポンプ電流を受け取る連続波(cw)半導体ポンプレーザと、前記cwレーザを受け取るように構成された微小共振器MRと、加熱電流を受け取り、前記微小共振器のキャビティ長を変調するようにさらに構成された少なくとも1つのマイクロヒータとを備え、前記MRは、前記ポンプおよび加熱電流の制御を介してキャリアエンベロープオフセット周波数fceoおよび繰り返し率frepのロックを長期安定化させ、前記長期安定化fceoおよびfrepロックは、前記微小共振器共振オフセット周波数ROFを、MRキャビティ共振の赤色側のMRキャビティ線幅の1~10倍の範囲内の動作点に調整することによって促進される、微小共振器ベースの周波数コム。
【0110】
4.前記ROFは、ポンプ電流変調誘導周波数変調から生じるfceoの変化が、ポンプ電流誘導パワー変調から生じるfceoの変化と比較して小さい点に調整される、態様3に記載の微小共振器ベースの周波数コム。
【0111】
5.周波数走査ソリトン微小共振器周波数コムであって、ポンプ電流を受け取り、ポンプ周波数において光を放出するように構成された、連続波(cw)半導体ポンプレーザと、自由スペクトル範囲(FSR)を有する微小共振器MRであって、前記MRが前記cwレーザから前記光を受信するように構成され、前記MRがほぼ前記FSRによって周波数空間において分離されたコムモードを放出するように構成される、微小共振器MRと、前記MRにおけるソリトン動作を維持しながら、前記FSRの実質的な割合によって前記コムモードを走査するように構成された少なくとも1つの変調器であって、前記実質的な割合が前記FSRの5%超に対応する、少なくとも1つの変調器とを備える、周波数走査ソリトン微小共振器周波数コム。
【0112】
6.前記実質的な割合が、前記FSRの10%超、50%超、または100%超に対応する、態様5に記載の周波数走査ソリトン微小共振器周波数コム。
【0113】
7.周波数走査ソリトン微小共振器周波数コムであって、ポンプ電流を受け取り、ポンプ周波数において光を放出するように構成された、連続波(cw)半導体ポンプレーザと、前記cwレーザから前記光を受け取るように構成され、共振周波数を有する微小共振器MRと、前記ポンプ周波数および前記MR共振周波数を同時に走査するように構成された少なくとも1つの変調器とを備える、周波数走査ソリトン微小共振器周波数コム。
【0114】
8.無不感帯分光法のためにさらに構成されており、前記コムは、
前記周波数走査微小共振器周波数コムの出力を受け取るように構成された被試験サンプルと、
前記被試験サンプルからの出力を光検出器のアレイ上に分割するように構成された波長分割多重化システムとをさらに備える、態様5~7のいずれかに記載の周波数走査ソリトン微小共振器周波数コム。
【0115】
9.多波長LIDARのためにさらに構成された、態様5~7のいずれか1つに記載の周波数走査ソリトン微小共振器周波数コム。
【0116】
10.多波長周波数変調cw(FMCW)LIDARのためにさらに構成された、態様5~7のいずれか1つに記載の周波数走査微小共振器周波数コム。
【0117】
11.多波長周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムの少なくとも2つのチャネルをコヒーレントにスティッチングするようにさらに構成された、態様5~7、9、または10のいずれか1つに記載の周波数走査ソリトン微小共振器周波数コム。
【0118】
12.前記MR共振周波数または前記ポンプ周波数に作用するように構成されたフィードバックループをさらに備える、態様5~11のいずれか1つに記載の周波数走査ソリトン微小共振器周波数コム。
【0119】
13.前記微小共振器の共振オフセット周波数(ROF)を安定させるように構成されたフィードバックループをさらに備える、態様5~12のいずれか1つに記載の周波数走査ソリトン微小共振器周波数コム。
【0120】
14.前記MRの出力パワーに作用するように構成されたフィードバックループをさらに備える、態様5~13のいずれか1つに記載の周波数走査ソリトン微小共振器周波数コム。
【0121】
15.周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムであって、FMCWレーザ源であって、前記FMCWレーザ源は、周波数コム源をポンピングするように構成され、前記コム源は、個々の周波数変調コムラインを有する周波数コムを含み、前記コムラインは、周波数間隔によって分離されており、前記コム源は、ターゲット干渉計を介してターゲットに向けられる、前記FMCWレーザ源と、波長分割多重化(WDM)システムであって、前記WDMシステムは、前記ターゲット干渉計からの光出力を受け取るように構成され、前記WDMシステムは、前記ターゲット干渉計の前記光出力を、前記個々のコムラインの周波数間隔と同等の周波数間隔を有する個々の周波数チャネルに光学的に分離するようにさらに構成される、WDMシステムと、前記周波数チャネルから前記信号を受信するように構成された検出器アレイと、少なくとも2つの隣接する周波数チャネルの信号をコヒーレントにともにスティッチングして、前記LIDARシステムの空間分解能を増大させるように構成されているデジタル信号処理ユニットとを備える、FMCW LIDARシステム。
【0122】
16.前記周波数コムは電気光学コムを含む、態様15に記載のFMCW LIDARシステム。
【0123】
17.前記周波数コムが微小共振器コムを備える、態様15または態様16に記載のFMCW LIDARシステム。
【0124】
18.前記WDMシステムは、隣接するチャネル間の何らかのスペクトル重複を提供するようにさらに構成される、態様15~17のいずれか1つに記載のFMCW LIDARシステム。
【0125】
19.基準干渉計をさらに含み、前記基準干渉計は、前記FMCWレーザ源の周波数変調を追跡または制御するように構成される、態様15~18のいずれか1つに記載のFMCW LIDARシステム。
【0126】
20.前記基準干渉計は、フィードバックループを介して前記周波数変調cwレーザ源の単位時間当たりの周波数の変化を線形化するように構成される、態様19に記載のFMCW LIDARシステム。
【0127】
21.前記基準干渉計は、前記ターゲット干渉計から出現する前記光出力をサンプリングするためのサンプリング格子を提供するように構成される、態様19または態様20に記載のFMCW LIDARシステム。
【0128】
22.分子クロックであって、一次微小共振器コムであって、前記微小共振器コムは、繰り返し率、キャリアエンベロープオフセット周波数を有し、前記繰り返し率によって分離された個々のコムラインの形態の出力を生成する、一次微小共振器コムと、周波数差によって分離された2つの低位相雑音連続波(cw)レーザにロックされている、少なくとも前記微小共振器繰り返し率であって、前記周波数差が、前記微小共振器コムの前記繰り返し率に対応する周波数よりも大きい、少なくとも前記微小共振器繰り返し率と、前記個々のコムラインのうちの2つから得られる光ビート信号であって、前記ビート信号は、50GHz~50THzの周波数範囲の分子吸収線にロックされて、前記ビート信号の周波数を安定化させる、光ビート信号とを備える、分子クロック。
【0129】
23.前記周波数差をマイクロ波領域にダウンコンバートするように構成された二次微小共振器コムをさらに備える、態様22に記載の分子クロック。
【0130】
24.分子クロックであって、微小共振器コムであって、前記微小共振器コムは、繰り返し率、キャリアエンベロープオフセット周波数を有し、前記繰り返し率によって分離された個々のコムラインの形態の出力を生成するように構成される、微小共振器コムと、第1および第2の連続波(cw)基準レーザであって、前記微小共振器の繰り返し率は、前記第1のcw基準レーザと前記第2のcw基準レーザとの間の周波数差にロックされる、第1および第2の連続波(cw)基準レーザと、前記個々のコムラインのうちの2つから得られる光ビート信号と、前記ビート信号の周波数を変調するように構成された少なくとも1つの変調器と、前記変調ビート信号を、ミリメートル波領域の中心周波数を中心とする変調ミリメートル波(mm波)周波数に変換するように構成された一次フォトダイオードであって、前記変調ミリメートル波信号が、ガスセルに含まれる分子ガスの基準吸収線を調べる、一次フォトダイオードと、前記ガスセルによって送信される前記変調ミリメートル波信号を復調し、復調信号を生成するように構成された復調器とを備え、前記復調信号は局部発振器信号とともに誤差信号を生成し、前記誤差信号は、PIDコントローラを介して電圧制御発振器(VCO)を駆動し、前記VCOは、別の変調器を駆動し、別の変調器は、前記ガスセルの内部の吸収線に対してmm波中心周波数を安定させる、分子クロック。
【0131】
25.前記復調器がショットキーバリアダイオードを備える、態様24に記載の分子クロック。
【0132】
26.前記一次フォトダイオードは、単一走行キャリア(UTC)ダイオードを備える、態様24または態様25に記載の分子クロック。
【0133】
27.前記変調mm波周波数が、前記吸収線の帯域幅付近の周波数において位相変調器によって変調される、態様24~26のいずれか1つに記載の分子クロック。
【0134】
28.低位相雑音マイクロ波信号を生成するようにさらに構成されている、態様22~27のいずれか1つに記載の分子クロック。
【0135】
29.1秒内で10-12未満の安定性を有するマイクロ波信号を生成するようにさらに構成されている、態様22~28のいずれか1つに記載の分子クロック。
【0136】
追加情報
例えば、本明細書に記載のシステムおよび方法の様々な実施形態によって達成可能な結果を示すために、非限定的な実験データが本明細書に含まれる。図に示されているかまたは本明細書に記載されているすべてのデータ範囲およびそのようなデータ範囲内のすべての値は、本開示に明確に含まれる。本明細書に記載の例示的な実験、実験データ、表、グラフ、プロット、図、ならびに処理および/または動作パラメータ(例えば、値および/または範囲)は、開示されたシステムおよび方法の動作条件を例示することを意図しており、本明細書に開示された方法およびシステムの様々な実施形態の動作条件の範囲を限定することを意図していない。さらに、本明細書に開示される実験、実験データ、計算データ、表、グラフ、プロット、図、および他のデータは、開示されるシステムおよび方法の実施形態が1つまたは複数の所望の結果を生成するために効果的に動作することができる様々なレジームを実証する。そのような動作レジームおよび所望の結果は、例えば表、グラフ、プロット、または図に示される動作パラメータ、条件、または結果の特定の値のみに限定されるのではなく、これらの特定の値を含む、またはそれらにまたがる適切な範囲も含む。したがって、本明細書に開示される値は、表、グラフ、プロット、図などに列挙または示される値のいずれかの間の値の範囲を含む。さらに、本明細書に開示される値は、表、グラフ、プロット、図などに列挙または示される他の値によって実証され得るように、表、グラフ、プロット、図などに列挙または示される値のいずれかの上または下の値の範囲を含む。また、本明細書に開示されるデータは、特定の実施形態について1つまたは複数の有効動作範囲および/または1つまたは複数の所望の結果を確立することができるが、すべての実施形態がそのような各動作範囲内で動作可能である必要はなく、またはそのような各所望の結果を生成する必要はないことを理解されたい。さらに、開示されたシステムおよび方法の他の実施形態は、他の動作レジームで動作し、および/または本明細書の例示的な実験、実験データ、表、グラフ、プロット、図、および他のデータを参照して示され、説明された以外の他の結果を生成することができる。
【0137】
したがって、本発明は、いくつかの非限定的な実施形態において説明されている。実施形態は相互に排他的ではなく、1つの実施形態に関連して説明された要素は、所望の設計目的を達成するために適切な方法で他の実施形態と組み合わされ、再構成され、または削除されてもよいことを理解されたい。各実施形態について単一の特徴または特徴のグループは必須または必要ではない。要素のすべての可能な組み合わせおよび部分的な組み合わせは、本開示の範囲内に含まれる。
【0138】
本発明を要約する目的で、本発明の特定の態様、利点および新規の特徴が本明細書に記載されている。しかしながら、必ずしもそのような利点のすべてが、任意の特定の実施形態に従って達成され得るとは限らないことを理解されたい。したがって、本発明は、本明細書で教示または示唆され得るような他の利点を必ずしも達成することなく、1つまたは複数の利点を達成するように具体化または実施することができる。
【0139】
本明細書で使用される場合、「1つの実施形態」または「いくつかの実施形態」または「一実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の要素、特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書の様々な箇所における「1つの実施形態では」という句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。とりわけ、「~できる」、「~し得る」、「~する場合がある」、「してもよい」、「例えば」などの本明細書で使用される条件付きの文言は、特に別途明記しない限り、または使用される文脈内で他の意味で理解されない限り、一般に、特定の実施形態が特定の特徴、要素、および/またはステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝えることを意図している。さらに、本出願および添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」もしくは「an」または「the」は、特に指定されない限り、「1つまたは複数」または「少なくとも1つ」を意味すると解釈されるべきである。
【0140】
本明細書で使用される場合、「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語またはそれらの任意の他の変形は、非限定的な用語であり、非排他的な包含を網羅することを意図している。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明示的に列挙されていない、またはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含むことができる。さらに、そうではないと明示的に述べられていない限り、「または」は論理和を指し、排他的論理和を指すのではない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満たされる。Aが真(または存在する)かつBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)かつBが真(または存在する)、またはAとBの両方が真(または存在する)である。本明細書で使用される場合、項目のリストの「少なくとも1つ」を参照する語句は、単一の部材を含む、それらの項目の任意の組み合わせを指す。一例として、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」は、A、B、C、AおよびB、AおよびC、BおよびC、ならびにA、BおよびCを包含するように意図されている。語句「X、YおよびZのうちの少なくとも1つ、」などの接続語は、特に別途明記しない限り、項目、用語などがX、Y、またはZの少なくとも1つであり得ることを伝えるために一般に使用される文脈で他の意味に理解される。したがって、そのような接続語は、一般に、特定の実施形態が、各々が存在するためにXのうちの少なくとも1つ、Yのうちの少なくとも1つ、およびZのうちの少なくとも1つを必要とすることを意味することを意図するものではない。
【0141】
したがって、本明細書では特定の実施形態のみを具体的に説明してきたが、本発明の思想および範囲から逸脱することなく、多数の修正を行うことができることは明らかであろう。さらに、頭字語は、単に明細書および特許請求の範囲の可読性を高めるために使用される。これらの頭字語は、使用される用語の一般性を減じることを意図するものではなく、特許請求の範囲をそこに記載された実施形態に限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14a
図14b
図15
図16a
図16b
図17a
図17b
図18
図19
図20
図21
図22a
図22b
図23