(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】油絵の制作方法
(51)【国際特許分類】
B44D 3/08 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
B44D3/08
(21)【出願番号】P 2022185470
(22)【出願日】2022-11-21
【審査請求日】2023-01-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522454541
【氏名又は名称】▲高▼野 元孝
(74)【代理人】
【識別番号】100160990
【氏名又は名称】亀崎 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 元孝
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-053559(JP,A)
【文献】特開2020-032683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44B 1/00-11/04
B44C 1/00-1/14,1/18-7/08
B44D 2/00-7/00
B44F 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油絵具に対し、リンシードオイル、及び石油系溶剤であるブラシクリーナーを調合して調合済み油絵具とする絵具調合工程と、
前記調合済み油絵具を平筆の毛束に含ませてから、前記平筆の毛束における穂幅方向及び穂丈方向の面を指爪の面で叩いて、イーゼルに立てかけられたカンバスに向けて前記調合済み油絵具を飛ばすことで、前記カンバスに雪が降る様子を描く描写工程と、を備え
、
前記調合済み油絵具において、リンシードオイル及びブラシクリーナーの全体におけるブラシクリーナーの配合比率は、体積比で、80%以上95%以下であることを特徴とする
油絵の制作方法。
【請求項2】
前記平筆の毛束及び前記カンバスの距離は、8cm以上15cm以下であることを特徴とする
請求項1
に記載の油絵の制作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油絵の制作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絵画には、油絵、アクリル画、及び水彩画等がある(例えば、特許文献1参照)。油絵に用いる画材及び道具は、アクリル画及び水彩画の場合と比較して、高価で数も多い。また、油絵に用いる油絵具は、アクリル画に用いるアクリル絵具、及び水彩画に用いる水彩絵具と比較して、乾燥に時間を要する。このような理由があることから、油絵を始めるには、初心者には敷居が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、YouTube(登録商標)等の動画共有サイトの普及によって、動画共有サイトには、たくさんの絵画の制作方法が紹介されている。しかしながら、雪が降る様子を描いた油絵の制作方法は、見当たらない。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、雪が降る様子を、時間をかけずに描くことが可能な油絵の制作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、油絵具に対し、リンシードオイル、及び石油系溶剤であるブラシクリーナーを調合して調合済み油絵具とする絵具調合工程と、前記調合済み油絵具を平筆の毛束に含ませてから、前記平筆の毛束における穂幅方向及び穂丈方向の面を指爪の面で叩いて、イーゼルに立てかけられたカンバスに向けて前記調合済み油絵具を飛ばすことで、前記カンバスに雪が降る様子を描く描写工程と、を備え、前記調合済み油絵具において、リンシードオイル及びブラシクリーナーの全体におけるブラシクリーナーの配合比率は、体積比で、80%以上95%以下であることを特徴とする油絵の制作方法である。
【0008】
(2)本発明はまた、前記平筆の毛束及び前記カンバスの距離は、8cm以上15cm以下であることを特徴とする上記(1)に記載の油絵の制作方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、雪が降る様子を、時間をかけずに描くことが可能な油絵の制作方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る油絵の制作方法を説明するフローチャートである。
【
図2】(A)は平筆の正面図であり、(B)は平筆の側面図である。
【
図3】描写工程の様子を写す写真であり、(A)は平筆の毛束を叩く前の状態を示し、(B)は平筆の毛束を叩いた後の状態を示す。
【
図4】油絵の制作方法によって制作された油絵を写した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る油絵の制作方法について詳細に説明する。
【0012】
まず、
図1~
図4を用いて、油絵の制作方法について説明する。
図1は、油絵の制作方法を説明するフローチャートである。
図2(A)は、平筆1の正面図である。
図2(B)は、平筆1の側面図である。
図3は、描写工程S2の様子を写す写真である。
図3(A)は、平筆1の毛束3を叩く前の状態を示す。
図3(B)は、平筆1の毛束3を叩いた後の状態を示す。
図4は、油絵の制作方法によって制作された油絵を写した写真である。
【0013】
図1に示す油絵具の制作方法は、油絵の制作の最終段階において、雪が降る様子を描くための方法である。この油絵の制作方法は、絵具調合工程S1と、描写工程S2と、を備えている。
【0014】
絵具調合工程S1は、油絵具に対し、リンシードオイル、及び石油系溶剤であるブラシクリーナーを調合して調合済み油絵具とする工程である。この絵具調合工程S1は、パレットの上で行われる。油絵具は、チューブからパレットに搾り出される。リンシードオイル及びブラシクリーナーは、それぞれ、平筆1(
図2(A)及び
図2(B)参照)の毛束3(
図2(A)及び
図2(B)参照)に含ませることによって、収容されている容器からパレットに移される。
【0015】
油絵具は、雪の色を表現するためのものであり、白色の油絵具及び灰色の油絵具を配合したものが用いられる。調合済み油絵具の全体における油絵具の配合比率は、表現する雪の色の濃さに応じて適宜決定されるものであり、体積比で、30%以上70%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましく、50%であることが最も好ましい。油絵具の全体における白色の油絵具の配合比率は、表現する雪の色に応じて適宜決定されるものであり、体積比で80%以上90%以下であることが好ましい。すなわち、油絵具の全体における灰色の油絵具の配合比率は、体積比で10%以上20%以下であることが好ましい。白色の油絵具としては、例えば、ホルベイン工業株式会社(大阪府大阪市中央区)が市販する油絵具ホワイト(チタニウムホワイト)が採用される。灰色の油絵具としては、例えば、ホルベイン工業株式会社(大阪府大阪市中央区)が市販する油絵具(グレイオブグレイ)が採用される。
【0016】
リンシードオイルは、油絵具の練りを調整する油の一種である。油絵具の練りを調整する油は、油絵の制作に際し、油絵具に必ず調合される。このような油絵具の練りを調整する油は、大別して、調合溶き油(ペインティングオイル)と、揮発性油(薄め液)と、乾性油と、に分類される。調合溶き油には、ペインティングオイル、ルソルバン等がある。揮発性油には、ターペンタイン(テレピン)、ペトロール等がある。乾性油には、リンシードオイル、ポピーオイル、サフラーオイル等がある。リンシードオイル等の乾性油は、糊の役割を果たす。リンシードオイルとしては、例えば、ホルベイン工業株式会社(大阪府大阪市中央区)が市販するスタンドリンシードオイル(加熱重合油)が採用される。
【0017】
石油系溶剤であるブラシクリーナーは、本来、油絵具が付着した筆を洗うための筆洗い液である。このブラシクリーナーは、本実施形態においては、調合済み油絵具の粘度を調整するために配合される。調合済み油絵具において、リンシードオイル及びブラシクリーナーの全体におけるブラシクリーナーの配合比率は、体積比で、80%以上95%以下であることが好ましく、90%であることがより好ましい。すなわち、調合済み油絵具において、リンシードオイル及びブラシクリーナーの全体におけるリンシードオイルの配合比率は、体積比で、5%以上20%以下であることが好ましく、10%であることがより好ましい。ブラシクリーナーとしては、例えば、株式会社クサカベ(埼玉県朝霞市)が市販するブラッシクリーナー(定番ブラッシクリーナー)が採用される。
【0018】
描写工程S2は、調合済み油絵具を平筆1(
図2(A)及び
図2(B)参照)の毛束3(
図2(A)及び
図2(B)参照)に含ませてから、平筆1の毛束3における穂幅方向D
W(
図2参照)及び穂丈方向D
L(
図2参照)の面4(
図2参照)を指爪の面で叩いて、イーゼルに立てかけられたカンバスに向けて調合済み油絵具を飛ばすことで、カンバスに雪が降る様子を描く工程である(
図3(A)→
図3(B)参照)。この描写工程S2は、調合済み油絵具を毛束3に含ませた平筆1を、イーゼルに立てかけられたカンバスから離した状態で行われる。また、描写工程S2は、素手で行っても良いが、調合済み油絵具が手に付着することを防ぐために、使い捨て手袋を着用した手で行うことが好ましい。この描写工程S2において、平筆1の毛束3及びカンバスの距離、すなわち、調合済み油絵具を飛ばす距離は、8cm以上15cm以下であることが好ましく、8cm以上12cm以下であることがより好ましく、10cmであることが最も好ましい。
【0019】
図2(A)及び
図2(B)に示すように、平筆1は、柄2の先端に毛束3を有している。毛束3は、豚、牛、羊、鹿、タヌキ、イタチ、セーブル等の動物の毛で構成されていることが好ましい。毛束3の長さ(穂丈)Lは、20mm以上30mm以下であることが好ましく、24mmであることがより好ましい。毛束3の幅(穂幅)Wは、10mm以上15mm以下であることが好ましく、12mmであることがより好ましい。毛束3の厚みTは、3mm以上8mm以下であることが好ましく、5mmであることがより好ましい。平筆1としては、例えば、株式会社名村大成堂(東京都豊島区)が市販する平筆(ナムラOXA(牛耳毛)平12号)が採用される。
【0020】
図3(A)に示すように、描写工程S2では、親指の腹に他のいずれかの指(図では、中指)の爪を引っ掛けるように、親指と他のいずれかの指(図では、中指)で輪を作る。その後、
図3(B)に示すように、親指と輪を作っている指(図では、中指)を真っ直ぐに伸ばすことで、当該指(図では、中指)の爪の面で平筆1(
図2(A)及び
図2(B)参照)の毛束3(
図2(A)及び
図2(B)参照)を叩く。なお、この動作は、対峙した相手の額を中指で弾くいわゆるデコピンと同様の動作である。
【0021】
図4に示すように、絵具調合工程S1及び描写工程S2を経ることで、雪が降る様子が描かれる。
【0022】
このような油絵の制作方法によれば、雪が降る様子を、時間をかけずに描くことができる。
【0023】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 平筆
2 柄
3 毛束
4 面
DW 穂幅方向
DL 穂丈方向
L 長さ
W 幅
T 厚み
S1 絵具調合工程
S2 描写工程