(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】オレフィン含量が低く、かつオクタン価が高いガソリンを多く生成する接触分解方法
(51)【国際特許分類】
C10G 69/04 20060101AFI20230322BHJP
C10G 11/18 20060101ALI20230322BHJP
C10G 45/38 20060101ALI20230322BHJP
B01J 29/076 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C10G69/04
C10G11/18
C10G45/38
B01J29/076 M
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018178598
(22)【出願日】2018-09-25
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】201710883617.6
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201710884528.3
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】▲キョウ▼剣洪
(72)【発明者】
【氏名】李澤坤
(72)【発明者】
【氏名】唐津蓮
(72)【発明者】
【氏名】毛安国
(72)【発明者】
【氏名】張久順
(72)【発明者】
【氏名】張毓螢
(72)【発明者】
【氏名】龍軍
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-531243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0042700(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104560167(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程、
i)重質原料油を接触分解反応に供し、接触分解反応生成物を得る工程、
ii)前記接触分解反応生成物を分離し、接触分解ガソリンおよび接触分解軽質サイクル油を得る工程、
iii)前記接触分解ガソリンを分割し、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分、および重質ガソリン留分を得る工程、
iv)前記接触分解軽質サイクル油を水素付加に供し、水素付加軽質サイクル油を得る工程、
v)前記軽質ガソリン留分の一部を前記水素付加軽質サイクル油の少なくとも一部と混合し、混合留分を得る工程、
vi)前記混合留分を接触分解反応に供する工程、および
vii)前記中質ガソリン留分の一部を接触分解反応に供する工程、
を含む、接触分解方法であって、
前記工程i)は、第1のノズルを介して前記重質原料油をライザー反応器へ噴霧し、当該ライザー反応器内で前記重質原料油を接触分解反応に供し、接触分解反応生成物を得る工程を含み、
前記工程ii)は、前記接触分解反応生成物を分離し、接触分解ガソリンおよび接触分解軽質サイクル油を得る工程を含み、
前記工程iii)は、工程ii)にて得られた前記接触分解ガソリンおよび任意で外部供給源からの接触分解ガソリンを分割し、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分、および重質ガソリン留分を得る工程を含み、
前記工程iv)は、工程ii)にて得られた前記接触分解軽質サイクル油、および任意で外部供給源からの接触分解軽質サイクル油を水素処理に供し、水素付加軽質サイクル油を得る工程を含み、
前記工程v)は、工程iii)にて得られた前記軽質ガソリン留分の一部を、工程iv)にて得られた前記水素付加軽質サイクル油の少なくとも一部と混合し、混合留分を得る工程を含み、
前記工程vi)は、第2のノズルを介して、工程v)にて得られた前記混合留分をライザー反応器の中に噴霧し、当該ライザー反応器中にて前記混合留分を接触分解反応に供する工程を含み、並びに
前記工程vii)は、第3のノズルを介して、工程iii)にて得られた前記中質ガソリン留分の一部をライザー反応器の中に噴霧し、当該ライザー反応器中にて前記中質ガソリン留分の一部を接触分解反応に供する工程、を含み、
前記工程i)、vi)、およびvii)において、前記重質原料油、前記混合留分、および前記中質ガソリン留分はそれぞれ、第1、第2、および第3のノズルを介して、単一のライザー反応器の中に噴霧されて、接触分解反応が行われ
、前記第1のノズルは、前記ライザー反応器の高さ方向において、前記第2および第3のノズルの上に配置され
、前記第2のノズルは、前記第3のノズルの上に配置されており、
前記軽質ガソリン留分と前記中質ガソリン留分との間の留分境界点は、約60℃と約80℃との間であり、かつ、前記中質ガソリン留分と前記重質ガソリン留分との間の留分境界点は、約120℃と約130℃との間である、接触分解方法。
【請求項2】
次の工程、
i)重質原料油を接触分解反応に供し、接触分解反応生成物を得る工程、
ii)前記接触分解反応生成物を分離し、接触分解ガソリンおよび接触分解軽質サイクル油を得る工程、
iii)前記接触分解ガソリンを分割し、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分、および重質ガソリン留分を得る工程、
iv)前記接触分解軽質サイクル油を水素付加に供し、水素付加軽質サイクル油を得る工程、
v)前記軽質ガソリン留分の一部を前記水素付加軽質サイクル油の少なくとも一部と混合し、混合留分を得る工程、
vi)前記混合留分を接触分解反応に供する工程、および
vii)前記中質ガソリン留分の一部を接触分解反応に供する工程、
を含む、接触分解方法であって、
前記工程i)は、第1のノズルを介して前記重質原料油をライザー反応器へ噴霧し、当該ライザー反応器内で前記重質原料油を接触分解反応に供し、接触分解反応生成物を得る工程を含み、
前記工程ii)は、前記接触分解反応生成物を分離し、接触分解ガソリンおよび接触分解軽質サイクル油を得る工程を含み、
前記工程iii)は、工程ii)にて得られた前記接触分解ガソリンおよび任意で外部供給源からの接触分解ガソリンを分割し、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分、および重質ガソリン留分を得る工程を含み、
前記工程iv)は、工程ii)にて得られた前記接触分解軽質サイクル油、および任意で外部供給源からの接触分解軽質サイクル油を水素処理に供し、水素付加軽質サイクル油を得る工程を含み、
前記工程v)は、工程iii)にて得られた前記軽質ガソリン留分の一部を、工程iv)にて得られた前記水素付加軽質サイクル油の少なくとも一部と混合し、混合留分を得る工程を含み、
前記工程vi)は、第2のノズルを介して、工程v)にて得られた前記混合留分をライザー反応器の中に噴霧し、当該ライザー反応器中にて前記混合留分を接触分解反応に供する工程を含み、並びに
前記工程vii)は、第3のノズルを介して、工程iii)にて得られた前記中質ガソリン留分の一部をライザー反応器の中に噴霧し、当該ライザー反応器中にて前記中質ガソリン留分の一部を接触分解反応に供する工程、を含み、
前記工程i)にて、前記重質原料油は、接触分解反応を行うために、前記第1のノズルを介して第1のライザー反応器の中に噴霧され、かつ、工程vi)および工程vii)にて、前記混合留分および前記中質ガソリン留分はそれぞれ、接触分解反応を行うために、前記第2および第3のノズルを介して、第2のライザー反応器の中に噴霧され
、前記第2のノズルは、前記第2のライザー反応器の高さ方向において、前記第3のノズルの上に配置されており、
前記軽質ガソリン留分と前記中質ガソリン留分との間の留分境界点は、約60℃と約80℃との間であり、かつ、前記中質ガソリン留分と前記重質ガソリン留分との間の留分境界点は、約120℃と約130℃との間である、接触分解方法。
【請求項3】
前記第2のノズルと前記第1のノズルとの間の前記ライザー反応器部分における反応時間は、約0.01秒間と約3秒間との間、好ましくは約0.05秒間と約2秒間との間の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ライザー反応器における反応条件は、
反応温度が、約480℃から約650℃まで、好ましくは490℃から550℃までの範囲である、
前記重質原料油に対する接触分解触媒の重量比が、約2から約100まで、好ましくは約4から約50までの範囲である、
前記重質原料油の反応時間が、約1秒間から約10秒間まで、好ましくは約2秒間から約8秒間までの範囲である、
反応圧が、約0.15MPaから約0.4MPaまでの範囲である、
前記重質原料油に対する蒸気の重量比が、約0.01から約0.5まで、好ましくは約0.02から約0.2までの範囲である、および
接触分解触媒のマイクロ活性(MAT)が、約55以上、好ましくは60以上である、請求項1または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のライザー反応器における反応条件は、
反応温度が、約480℃から約650℃まで、好ましくは約490℃から600℃までの範囲である、
オイルに対する触媒の比率が、約2から約100まで、好ましくは約4から約50までの範囲である、
反応時間が、約1秒間から約10秒間まで、好ましくは約2秒間から約8秒間までの範囲である、
反応圧が、約0.15MPaから約0.4MPaまでの範囲である、
前記重質原料油に対する蒸気の重量比が、約0.01から約0.5まで、好ましくは約0.02から約0.2までの範囲である、および
接触分解触媒のマイクロ活性(MAT)が、約55以上、好ましくは60以上であり、
前記第2のライザー反応器における反応条件は、
反応温度が、約400℃から約650℃まで、好ましくは約420℃から約550℃までの範囲である、
オイルに対する触媒の比率が、約5から約100まで、好ましくは約8から約80までの範囲である、
反応時間が、約0.01秒間から10秒間まで、好ましくは約0.05秒間から5秒間までの範囲である、
反応圧が、約0.15MPaから約0.4MPaまでの範囲である、
前記重質原料油の総量に対する蒸気の重量比が、約0.01から約0.5まで、好ましくは約0.02から約0.2までの範囲である、および
接触分解触媒のマイクロ活性(MAT)が、約55以上、好ましくは60以上である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第3のノズルと前記第2のノズルとの間の前記ライザー反応器部分における反応時間は、約0.01秒間と約2秒間との間、好ましくは約0.05秒間と約1秒間との間の範囲である、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程vii)では、蒸留範囲が約90℃から130℃までの範囲内である中質ガソリン留分を接触分解反応に供する、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程vii)では、約2重量%から約90重量%まで、好ましくは約10重量%から約80重量%までの前記中質ガソリン留分を接触分解反応に供する、請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程v)では、約2重量%から約90重量%まで、好ましくは約10重量%から70重量%までの前記軽質ガソリン留分を、約10重量%から約100重量%まで、好ましくは約30重量%から約100重量%までの前記水素付加軽質サイクル油と混合し、前記混合留分を得る、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
水素付加する前記工程iv)は、担体および当該担体に支持される活性成分を含む活性水素付加触媒の存在下で行い、
前記活性成分は、第6B族金属、第8族非貴金属、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記第6B族金属は、好ましくは、モリブテンおよび/またはタングステンであり、前記第8族非貴金属は、好ましくは、ニッケルおよび/またはコバルトであり、前記活性成分は、好ましくは、ニッケル-タングステン、ニッケル-タングステン-コバルト、ニッケル-モリブテン、または、コバルト-モリブテンであり、
前記担体は、アルミナ、シリカ、アモルファスシリカ-アルミナ、および、これらの組み合わせからなる群から選択され、
好ましくは、前記水素付加触媒は、約70重量%から約85重量%までの前記担体と、約15重量%から約30重量%までの前記活性成分と、を含む、請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程iv)の前記水素付加は、以下の条件下
反応温度が、約330℃から約450℃まで、好ましくは約340℃から約380℃までの範囲である、
水素の分圧が、約6MPaから約25MPaまで、好ましくは約10MPaから約22MPaまでの範囲である、
体積空間速度が、約0.1h
-1から約20h
-1まで、好ましくは約0.1h
-1から約3.0h
-1までの範囲である、および
油に対する水素の体積比が、約1000Nm
3/m
3から約2000Nm
3/m
3まで、好ましくは約350Nm
3/m
3から約2000Nm
3/m
3までの範囲である、
で行う、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
水素付加する前記工程iv)は、結果として得られる前記水素付加軽質サイクル油について、二環式芳香族化合物の含量が、約20重量%以下、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約8重量%以下であり、水素の含量が約11重量%以上、好ましくは約14重量%以上であり、初留点が約165℃よりも大きく、好ましくは約175℃よりも大きい範囲で行う、請求項1~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ライザー反応器は、流動床反応器を有するか若しくは有さない等直径のライザー反応器、または、流動床反応器を有するか若しくは有さない可変直径のライザー反応器である、請求項1~12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程i)、vi)、およびvii)の接触分解反応は、接触分解触媒の存在下で行われ、工程i)、vi)、およびvii)で使用される前記接触分解触媒はそれぞれ、独立して、無水ベースで、当該接触分解触媒に対して、約10重量%から約50重量%までのゼオライト、約5重量%から約90重量%までの無機酸化物、および約0重量%から約70重量%までの粘土を含み、前記ゼオライトは、希土類元素を有する、あるいは有さないY型ゼオライト、希土類元素を有する、あるいは有さないHY型ゼオライト、希土類元素を有する、あるいは有さないUSY型ゼオライト、希土類元素を有する、あるいは有さないβゼオライト、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記無機酸化物は、シリカ、アルミナ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、前記粘土は、カオリンおよび/またはハロサイトから選択される、請求項1~13の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本発明は、2017年9月26日に中国特許庁に出願された中国特許出願201710883617.6号「オレフィン含量が低く、かつオクタン価が高いガソリンを多く生成する接触分解方法」、および2017年9月26日に中国特許庁に出願された中国特許出願201710884528.3号「ガソリンに対するディーゼルの比率が低減した接触分解方法」への優先権を主張する。これら特許出願の開示は、全範囲において参照することにより、本明細書中に援用される。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、接触分解の分野に関連し、特に、オレフィン含量が低く、かつオクタン価が高いガソリンを多く生成する接触分解方法に関連する。
【0003】
〔背景技術〕
重質原油の利用増加および軽油生成物の需要の急速な伸びに伴い、重質油を軽油に変換する接触分解技術が急速に発展した。しかし、接触分解したディーゼル(軽質サイクル油(LCO)とも称する)は、通常、品質が比較的乏しく、密度が高く、芳香族化合物の含量が高く、セタン価が低いという事実に直面しなければいけない。従って、たとえディーゼル水素付加処理技術であっても、ますます厳格化するディーゼルの規格を満たすことは困難である。一方では、経済の鈍化により、ディーゼル燃料の構造的な余剰に直面する。他方では、ガソリンを燃料とする自家用車がますます多くなり、ハイオクタンガソリンに対する要求も高くなる。しかし、環境規制がますます厳しくなるのに伴って、完成したガソリンに対する基準もより厳しくなり、ガソリン中のオレフィン含量のさらなる低減(15%未満に低減)が要求される。それゆえ、ガソリンに対するディーゼルの比率を著しく低減させることは、石油精製企業にとって価値があることであり、軽質サイクル油の生成物が低減する、あるいは無くなることなく、オレフィン含量が低く、かつオクタン価が高いクリーンガソリンを製造することは、前記企業の接触分解装置にとって価値があることである。
【0004】
米国特許4,585,545号には、全範囲で接触分解した軽質サイクル油を水素付加処理し水素付加軽質サイクル油を得、次いで、接触分解し単環芳香族化合物が豊富なガソリンを生成する触媒変成方法が開示されている。
【0005】
中国特許出願公報1422327号には、接触分解した軽質サイクル油の改善方法が開示されており、当該方法では、重質油を原料として用いて第1接触分解装置によって生成された軽質サイクル油を高度水素付加し、次いで、前記水素付加軽質サイクル油を第2接触分解装置に通過させる。この方法を元に開発したものとして、中国特許出願公報1423689号では、さらに、軽質オレフィンの収率を選択的に増加させるために、前記第2接触分解装置にて使用される触媒が形状選択性ゼオライトを50~95%、約0.7nm以上の細孔直径を有する大細孔ゼオライトを約5~50%含むことが強調されている。
【0006】
中国特許出願公報1466619号には、接触分解した軽質サイクル油の変成方法が開示されており、当該方法では、接触分解ライザー反応器は、二つの反応域、すなわち、上流反応域および下流反応域に区画されており、前記下流反応域には重質油が噴霧され、接触分解軽質サイクル油の結果生成物が水素付加され、水素付加軽質サイクル油が得られ、前記上流反応域には、前記水素付加軽質サイクル油が噴霧される。この方法を元に開発したものとして、中国特許出願公報1425054号では、さらに、前記上流反応域のフィードへナフサを添加している。
【0007】
しかし、既存の方法では、オレフィン含量が低く、かつオクタン価が高いガソリンの生成を増加させる間に、重質油の接触分解方法中に軽質サイクル油の生成を最大限低減できない。
【0008】
〔発明の概要〕
前記従来技術に存在する問題点を鑑みて、本発明の目的は、軽質サイクル油の生成を低減させかつ接触分解ガソリンの生成を増加させる一方で、接触分解ガソリンのオレフィン含量を低減させオクタン価を増加させることが可能な、新規の接触分解方法を提供することにある。
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、以下の工程、
i)重質原料油を接触分解反応に供し、接触分解反応生成物を得る工程、
ii)前記接触分解反応生成物を分離し、接触分解ガソリンおよび接触分解軽質サイクル油を得る工程、
iii)前記接触分解ガソリンを分割し(splitting)、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分、および重質ガソリン留分を得る工程、
iv)前記接触分解軽質サイクル油を水素付加に供し、水素付加軽質サイクル油を得る工程、
v)前記軽質ガソリン留分の一部を前記水素付加軽質サイクル油の少なくとも一部と混合し、混合留分を得る工程、
vi)前記混合留分を接触分解反応に供する工程、および
vii)前記中質ガソリン留分の一部を接触分解反応に供する工程、を含む接触分解方法を提供する。
【0010】
好ましい実施形態では、本発明の接触分解方法は、以下の工程、
i)第1のノズルを介して前記重質原料油をライザー反応器の中に噴霧し、当該ライザー反応器中にて前記重質原料油を接触分解反応に供し、接触分解反応生成物を得る工程、
ii)前記接触分解反応生成物を分離し、接触分解ガソリンおよび接触分解軽質サイクル油を得る工程、
iii)工程ii)にて得られた前記接触分解ガソリンおよび任意で外部供給源からの接触分解ガソリンを分割し、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分、および重質ガソリン留分を得る工程、
iv)工程ii)にて得られた前記接触分解軽質サイクル油、および任意で外部供給源からの接触分解軽質サイクル油を水素処理に供し、水素付加軽質サイクル油を得る工程、
v)工程iii)にて得られた前記軽質ガソリン留分の一部を、工程iv)にて得られた前記水素付加軽質サイクル油の少なくとも一部と混合し、混合留分を得る工程、
vi)第2のノズルを介して、工程v)にて得られた前記混合留分をライザー反応器の中に噴霧し、当該ライザー反応器中にて前記混合留分を接触分解反応に供する工程、並びに
vii)第3のノズルを介して、工程iii)にて得られた前記中質ガソリン留分の一部をライザー反応器の中に噴霧し、当該ライザー反応器中にて前記中質ガソリン留分の一部を接触分解反応に供する工程、を含む。
【0011】
いくつかのさらなる好ましい実施形態において、工程i)、vi)、およびvii)では、前記重質原料油、前記混合留分、および前記中質ガソリン留分はそれぞれ、第1、第2、および第3のノズルを介して、単一のライザー反応器の中に噴霧されて、接触分解反応が行われる。
【0012】
さらに好ましい実施形態では、前記ライザー反応器の高さ方向において、前記第1のノズルは、前記第2および第3のノズルの上に配置されている。特に好ましくは、前記第2のノズルは、前記第3のノズルの上に配置されている。
【0013】
いくつかのさらなる好ましい実施形態では、工程i)にて、前記重質原料油は、接触分解反応を行うために、前記第1のノズルを介して第1のライザー反応器の中に噴霧され、工程vi)および工程vii)にて、前記混合留分および前記中質ガソリン留分はそれぞれ、接触分解反応を行うために、前記第2および第3のノズルを介して、第2のライザー反応器の中に噴霧される。
【0014】
さらに好ましい実施形態では、前記第2のノズルは、前記第2のライザー反応器の高さ方向において、前記第3のノズルの上に配置されている。
【0015】
他のさらなる好ましい実施形態では、前記第2のノズルは、前記第2のライザー反応器の高さ方向において、前記第3のノズルの下に配置されている。
【0016】
本発明の方法は、以下の一つ以上の利点が生じる:
1.前記接触分解ガソリンを分割することにより得られた留分の一部を、前記水素付加軽質サイクル油とともに前記ライザー反応器へ再循環し、前記接触分解反応を継続することによって、本発明は、ガソリンに対するディーゼルの比率(すなわち、ガソリン生成物に対するディーゼル生成物の比率)が最大限低減し、オレフィン含量が低くかつオクタン価が高いクリーンな接触分解ガソリンの生成が増加する、
2.前記水素付加軽質サイクル油および前記軽質ガソリン留分を第2のノズルを介してライザー反応器または分離した第2のライザー反応器の底部の中に噴霧することによって、本発明では、より効率的な条件下で接触時間が短い反応を実現し、これにより、前記水素付加軽質サイクル油および前記軽質ガソリン留分の効率的な変換を容易にする、
3.オレフィンリッチな軽質ガソリン留分および前記水素付加軽質サイクル油を前記ライザー反応器内で混合し再循環することによって、本発明では、水素供与体として軽質サイクル油に存在する水素付加された芳香族化合物の作用が、前記軽質ガソリン留分に存在するオレフィンと前記水素供与体との間の水素転移反応を緩やかに促進するのに利用され得、これにより、オレフィン含量が非常に低減し得、それと同時に、前記水素付加軽質サイクル油に存在する前記水素付加された芳香族化合物の開環分解反応も促進され、これにより、前記水素付加軽質サイクル油の変換およびガソリンに対する選択性が改善される、および、
4.低い位置に配置された第3のノズルを介して前記中質ガソリン留分をライザー反応器の底部へ噴霧することによって、本発明では、より厳格な条件下で接触時間が短い反応を実現し、これにより、前記ガソリン留分のオクタン価が実質的に増加する。
【0017】
本発明の他の特徴および利点は、後述の〔詳細な説明〕の項にて詳細に記載されている。
【0018】
〔図面の簡単な説明〕
本説明の一部を形成する図面は、本発明の理解を助けるために提供されるものであり、これに限定されるべきではない。本発明は、後述の詳細な説明と組み合わせて、図面を参照して解釈され得る。
【0019】
図1は、本発明に係る方法の好ましい実施形態の概略的なフロー図である。
【0020】
図2は、本発明に係る方法の好ましい他の実施形態の概略的なフロー図である。
【0021】
〔符号の説明〕
1 第1のライザー反応器
2 第1の解放器
3 再生器
4 主要分留塔
5 水素付加ユニット
6 ガソリン分留塔
7 第1の使用済み触媒傾斜管
8 使用済み触媒スライド弁
9 第1の再生触媒傾斜管
10 再生触媒スライド弁
11 第1のノズル
12 水素付加軽質サイクル油パイプライン
13 ガソリンパイプライン
14 軽質サイクル油パイプライン
15 軽質ガソリン留分パイプライン
16 中質ガソリン留分パイプライン
17 重質ガソリン留分パイプライン
18 軽質ガソリン留分産出パイプライン
19 軽質ガソリン留分再循環パイプライン
20 中質ガソリン留分産出パイプライン
21 中質ガソリン留分再循環パイプライン
22 第2のノズル
23 第3のノズル
24 接触分解生成物パイプライン
25 残留留分パイプライン
26 第1生成物パイプライン
27 第2のライザー反応器
28 第2の解放器
29 第2の生成物パイプライン
30 第2の使用済み触媒傾斜管
31 第2の再生触媒傾斜管
32 触媒冷却器。
【0022】
〔発明の詳細な説明〕
以下、特定の実施形態および添付する図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明の特定の実施形態は、単に例示する目的で提供され、いかなる方法であっても限定することを目的としない。
【0023】
本願明細書に記載された、数値範囲の終点を含む任意の特定の数値は、その正確な値に制限されず、さらに前記正確な値に近い全ての値を包含すると解釈すべきである。また、本願明細書に記載された任意の数値範囲について、当該範囲の終点間、各終点と当該範囲内の任意の特定値との間、または当該範囲内の任意の二つの特定値間で任意に組み合わせ得、一つ以上の新たな数値範囲を供する。前記新たな数値範囲もまた、本発明にて特定して記載されているとみなす。
【0024】
特に明記しない限り、本明細書に使用される用語は、当業者によって共通に理解されているものと同様の意味を有する。本明細書にて用語が定義され当該用語の定義が当該技術分野で通常理解されているものと異なる場合、本明細書に供された定義を優先する。
【0025】
本発明の内容において、明記された事項に加え、記述されていない任意の事項は、全く変更することなく、当該技術分野で知られたものと同じであるとみなされる。また、本明細書に記載されたいずれの実施形態も、本明細書に記載された他の一つ以上の実施形態と自由に組み合わせ得、これによって得られる技術的解決または技術思想は、本願の当初の開示または当初の記載の一部であるとみなし、組み合わせが明らかに妥当でないことが当業者にとって明確である場合を除いては、本明細書に記載されていない、あるいは予期されない新規事項であるとみなされない。
【0026】
本発明の内容において、接触分解触媒のマイクロ活性(MAT)は、標準法RIPP92-90に従って決定される(「Petrochemical Analysis Method (RIPP Test Method)」, edited by Cuiding Yang, et. al., Science Press, Sep. 1990, First Version, pages 263-268 参照)。
【0027】
教科書および雑誌の論文に限らず、本明細書にて参照された特許文献および非特許文献の全ては、全範囲において参照することにより、本明細書中に援用される。
【0028】
上述したように、先行技術に存在している問題を克服するために、本発明は、以下の工程を含んでいる接触分解方法を提供する:
i)重質原料油を接触分解反応に供し、接触分解反応生成物を得る工程、
ii)前記接触分解反応生成物を分離し、接触分解ガソリンおよび接触分解軽質サイクル油(light cycle oil)を得る工程、
iii)前記接触分解ガソリンを分割し、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分および重質ガソリン留分を得る工程、
iv)前記接触分解軽質サイクル油を水素付加に供し、水素付加軽質サイクル油を得る工程、
v)前記軽質ガソリン留分の一部を、前記水素付加軽質サイクル油の少なくとも一部と混合し、混合留分を得る工程、
vi)前記混合留分を接触分解反応に供する工程、および
vii)前記中質ガソリン留分の一部を接触分解反応に供する工程。
【0029】
好ましい実施形態において、本願の接触分解方法は、以下の工程を含む:
i)重質原料油を第1のノズルを介してライザー反応器の中に噴霧し、当該ライザー反応器中にて前記重質原料油を接触分解反応に供し、接触分解反応生成物を得る工程、
ii)前記接触分解反応生成物を分離し、接触分解ガソリンおよび接触分解軽質サイクル油を得る工程、
iii)工程ii)にて得られた前記接触分解ガソリン、および任意で外部供給源からの接触分解ガソリンを分割し、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分、および重質ガソリン留分を得る工程、
iv)工程ii)にて得られた前記接触分解軽質サイクル油、および任意で外部供給源からの接触分解軽質サイクル油を水素処理に供し、水素付加軽質サイクル油を得る工程、
v)工程iii)にて得られた前記軽質ガソリン留分の一部を、工程iv)にて得られた前記水素付加軽質サイクル油の少なくとも一部と混合し、混合留分を得る工程、
vi)第2のノズルを介して、工程v)にて得られた前記混合留分をライザー反応器の中に噴霧し、当該ライザー反応器中にて前記混合留分を接触分解反応に供する工程、並びに
vii)第3のノズルを介して、工程iii)にて得られた前記中質ガソリン留分の一部をライザー反応器の中に噴霧し、当該ライザー反応器中にて前記中質ガソリン留分の一部を接触分解反応に供する工程。
【0030】
いくつかのさらなる好ましい実施形態において、工程i)、vi)、およびvii)では、前記重質原料油、前記混合留分、および前記中質ガソリン留分はそれぞれ、第1、第2および第3のノズルを介して、単一のライザー反応器の中に噴霧されて、接触分解反応が行われる。
【0031】
そのような好ましい実施形態において、第1、第2、および第3のノズルは、任意の相対的な位置関係において配置され得る。前記任意の相対的な位置関係は、上方-中央-下方、上方-下方-中央、下方-中央-上方、下方-上方-中央、中央-上方-下方および中央-下方-上方を含むが、これらに限定されない。好ましくは、ライザー反応器の高さ方向において、前記第1のノズルは、前記第2および第3のノズルの上に配置され、より好ましくは、前記第2のノズルは前記第3のノズルの上に配置される。
【0032】
なおさらに好ましい実施形態において、第2のノズルと第1のノズルとの間のライザー反応器部分における反応時間は、約0.01秒間から約3秒間までの範囲内であり、好ましくは約0.05秒間から約2秒間までの範囲内であり、かつ/または、第3のノズルと第2のノズルとの間のライザー反応器部分における反応時間は、約0.01秒間から約2秒間までの範囲内であり、好ましくは約0.05秒間から約1秒間までの範囲内である。
【0033】
いくつかのさらに好ましい実施形態において、工程i)にて、重質原料油は、接触分解反応を行うために、第1のノズルを介して第1のライザー反応器の中に噴霧され、かつ、工程vi)およびvii)にて、混合留分および中質ガソリン留分はそれぞれ、接触分解反応を行うために、第2のノズルおよび第3のノズルを介して、第2のライザー反応器の中に噴霧される。
【0034】
そのような好ましい実施形態において、第2のノズルおよび第3のノズルは、例えば、上方-下方、下方-上方などのような、任意の相対的な位置関係において配置され得る。好ましくは、第2のノズルは、第2のライザー反応器の高さ方向において、第3のノズルの上に配置される。
【0035】
なお、さらに好ましい実施形態において、第3のノズルと第2のノズルとの間のライザー反応器部分における反応時間は、約0.01秒間から約2秒間までの範囲内であり、好ましくは約0.05秒間から約1秒間までの範囲内である。
【0036】
本発明によれば、接触分解ガソリンの分割は、当業者に既知の様式で実行され得る。例えば、接触分解ガソリンの分割は、分留塔において実行され得、当該分留塔の上部、側部および下部から留分が得られ得る。好ましくは、軽質ガソリン留分と中質ガソリン留分との間の留分境界点は、約60℃と約80℃との間であり、かつ、中質ガソリン留分と重質ガソリン留分との間の留分境界点は、約120℃と約130℃との間である。
【0037】
好ましい実施形態において、工程vii)では、蒸留範囲が約90℃から130℃までの範囲内である中質ガソリン留分が接触分解反応に供される。
【0038】
本発明において、ガソリン留分の一部は、ライザー反応器に再循環されて、接触分解反応が実施され、かつ、残留ガソリン留分はガソリン成分としてガソリン貯留池に送られる。これにより、ガソリン貯留池におけるガソリンの、オクタン価およびオレフィン含有量などの性質が調整され得る。
【0039】
好ましい実施形態において、工程vii)では、約2重量%から約90重量%まで、より好ましくは約10重量%から約80重量%までの中質ガソリン留分が接触分解反応に供される。
【0040】
好ましい実施形態において、工程v)では、約2重量%から約90重量%まで、好ましくは約10重量%から約70重量%までの軽質ガソリン留分が、約10重量%から約100重量%まで、好ましくは約30重量%から約100重量%までの水素付加軽質サイクル油と混合されて、混合留分が得られる。
【0041】
好ましい実施形態において、前記方法は、以下の工程をさらに含むことが可能である:軽質ガソリン留分の一部、ガソリン留分の一部、および重質ガソリン留分の全てを、後段の吸収-安定化装置に移動させる工程。例えば、軽質ガソリン留分と中質ガソリン留分との残留部分、および重質ガソリン留分の全ては、後段の吸収-安定化装置に送られる。
【0042】
本発明によれば、水素処理は、当業者に既知の様式で実行され得る。例えば、水素付加する前記工程iv)は、水素付加触媒の存在下で行われ得る。前記水素付加触媒は、担体と、当該担体上にて担持された活性成分とを含む。前記活性成分は、第6B族金属、第8族非貴金属およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得る。前記第6B族金属は、好ましくはモリブデンおよび/またはタングステンである。前記第8族非貴金属は、好ましくはニッケルおよび/またはコバルトである。前記活性成分は、好ましくはニッケル-タングステン、ニッケル-タングステン-コバルト、ニッケル-モリブデンまたはコバルト-モリブデンである。また、前記担体は、アルミナ、シリカ、非晶質のシリカ-アルミナ、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得る。好ましくは、水素付加触媒は、約70重量%~約85重量%の担体と、約15重量%~約30重量%の活性成分と、を含む。
【0043】
好ましい実施形態において、前記工程iv)の水素付加は、以下の条件下で実行される:反応温度が約330℃から約450℃まで、好ましくは約340℃から約380℃までの範囲、水素の分圧が約6MPaから約25MPaまで、好ましくは約10MPaから約22MPaまでの範囲、体積空間速度が約0.1h-1から約20h-1まで、好ましくは約0.1h-1から約3.0h-1までの範囲、および、油に対する水素の体積比(hydrogen-to-oil volume ratio)が約1000Nm3/m3から約2000Nm3/m3まで、好ましくは約350Nm3/m3から約2000Nm3/m3までの範囲である。
【0044】
いくつかの実施形態において、接触分解軽質サイクル油の水素処理の間、いくらかのガスおよびガソリン留分が製造されてもよく、かつ、それに従って、約165℃よりも大きい初留点を有する水素付加軽質サイクル油を供給するために、得られた生成物の分離が必要とされてもよい。
【0045】
好ましい実施形態において、水素付加する前記工程iv)は、結果として得られる水素付加軽質サイクル油について、二環式芳香族化合物の含量が、約20重量%以下、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約8重量%以下であり、水素の含量が、約11重量%以上、好ましくは少なくと約14重量%以上であり、初留点が約165℃よりも大きく、好ましくは約175℃よりも大きい範囲で行われる。
【0046】
本発明によれば、接触分解反応は、当業者に既知の設備を用いて、例えばライザー反応器において、実行され得る。ライザー反応器は当業者に既知である。また、ライザー反応器は、例えば、流動床反応器を有するか若しくは有さない等直径のライザー反応器であり得るか、または、流動床反応器を有するか若しくは有さない可変直径のライザー反応器であり得る。
【0047】
本発明によれば、接触分解反応は当業者に既知の様式で実行され得る。いくつかの好ましい実施形態において、接触分解反応の工程i)、vi)およびvii)は、単一のライザー反応器にて実行され、当該ライザー反応器における反応条件は以下の通りである:反応温度が約480℃から約650℃まで、好ましくは約490℃から約550℃までの範囲である、重質原料油に対する接触分解触媒の重量比が約2から約100まで、好ましくは約4から約50までの範囲である、重質原料油の反応時間が約1秒間から約10秒間まで、好ましくは約2秒間から約8秒間までの範囲である、反応圧(絶対圧力)が約0.15MPaから約0.4MPaまでの範囲である、重質原料油に対する蒸気の重量比が約0.01から約0.5まで、好ましくは約0.02から約0.2までの範囲である、および、平衡触媒のマイクロ活性を測定するための接触分解分野におけるRIPP92-90の試験方法によって測定したとき、接触分解触媒のマイクロ活性(MAT)が、約55以上、好ましくは約60以上である。
【0048】
さらに好ましい実施形態において、接触分解反応の工程i)、vi)およびvii)は、接触分解触媒の存在下において実行される。前記接触分解触媒は、無水ベースにおいて、接触分解触媒の重量を基準として、約10重量%から約50重量%までのゼオライト、約5重量%から約90重量%までの無機酸化物および約0重量%から約70重量%までの粘土を含み、前記ゼオライトは、希土類元素を含むかまたは含まないYゼオライト、希土類元素を含むかまたは含まないHYゼオライト、希土類元素を含むかまたは含まないUSYゼオライト、希土類元素を含むかまたは含まないベータゼオライト、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され、前記無機酸化物は、シリカ、アルミナ、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され、前記粘土は、カオリンおよび/またはハロイサイトから選択される。
【0049】
いくつかの好ましい実施形態において、接触分解反応の工程i)は、第1のライザー反応器において実行され、当該第1のライザー反応器における反応条件は、以下の通りである:反応温度が約480℃から約650℃まで、好ましくは約490℃から約600℃までの範囲である、油に対する触媒の比が約2から約100まで、好ましくは約4から約50までの範囲である、反応時間が約1秒間から約10秒間まで、好ましくは約2秒間から約8秒間までの範囲である、反応圧力(絶対圧力)が約0.15MPaから約0.4MPaまでの範囲である、並びに、重質原料油に対する蒸気の重量比が約0.01から約0.5まで、好ましくは約0.02から約0.2までの範囲である、接触分解触媒のマイクロ活性(MAT)が約55以上、好ましくは約60以上である。また、接触分解反応の工程vi)および(vii)は、第2のライザー反応器において実行され、当該第2のライザー反応器における反応条件は、以下の通りである:反応温度が約400℃から約650℃まで、好ましくは約420℃から約550℃までの範囲である、(原料油の総量を基準とした)油に対する解触媒の比が約5から約100まで、好ましくは約8から約80までの範囲である、反応時間(最上部のノズルからの計時)が約0.01秒間から約10秒間まで、好ましくは約0.05秒間から約5秒間までの範囲である、反応圧(絶対圧力)が約0.15MPaから約0.4MPaまでの範囲である、原料油の総量に対する蒸気の重量比が約0.01から約0.5まで、好ましくは約0.02から約0.2までの範囲である、並びに、接触分解触媒のマイクロ活性(MAT)が約55以上、好ましくは約60以上である。
【0050】
さらに好ましい実施形態において、接触分解反応の工程i)は、第1の接触分解触媒の存在下において実行される。前記第1の接触分解触媒は、無水ベースにおいて、第1の接触分解触媒の重量を基準として、約10重量%から約50重量%までのゼオライト、約5重量%から約90重量%までの無機酸化物および約0重量%から約70重量%までの粘土を含む。また、接触分解反応の工程vi)およびvii)は、第2の接触分解触媒の存在下において実行される。前記第2の接触分解触媒は、無水ベースにおいて、第2の接触分解触媒の重量を基準として、約10重量%から約50重量%までのゼオライト、約5重量%から約90重量%までの無機酸化物および約0重量%から約70重量%までの粘土を含み、前記ゼオライトは、希土類元素を含むかまたは含まないYゼオライト、希土類元素を含むかまたは含まないHYゼオライト、希土類元素を含むかまたは含まないUSYゼオライト、希土類元素を含むかまたは含まないベータゼオライト、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され、前記無機酸化物は、シリカ、アルミナ、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され、前記粘土は、カオリンおよび/またはハロイサイトから選択される。特定の実施形態において、第1の接触分解触媒および第2の接触分解触媒は、同一であり得るか、または異なり得る。
【0051】
本願のいくつかの実施形態において、接触分解反応後、使用済み触媒(第1の接触分解触媒に対応する第1の使用済み触媒と第2の接触分解触媒に対応する第2の使用済み触媒とを含んでいる)は、コークスを燃焼することによって再生機において再生され、再生触媒が得られる。得られた再生触媒は、その後、第1の接触分解触媒および第2の接触分解触媒として、ライザー反応器に再循環される。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態において、約500℃と約680℃との間、好ましくは約550℃と約650℃との間の温度に冷却された再生触媒は、第2の接触分解触媒として、ライザー反応器に再循環される。前記冷却は、触媒冷却機または外部の冷却機において実行され得る。
【0053】
特定の実施形態の第1の種類において、本発明は、低オレフィン含有量および高オクタン価を有するガソリンの生産を増加させるための接触分解方法を提供する。当該接触分解方法は、以下の工程を含む:
i)第1のノズルを介して重質原料油をライザー反応器の中に噴霧し、接触分解触媒と接触させ、さらに、当該重質原料油を接触分解反応に供し、接触分解反応生成物を得る工程、
ii)前記接触分解反応生成物を分離し、少なくとも接触分解ガソリンおよび接触分解軽質サイクル油を得る工程、
iii)結果として得られた接触分解ガソリンを分割し、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分および重質ガソリン留分を得る工程、
iv)結果として得られた接触分解軽質サイクル油を水素処理装置において水素付加触媒との接触に至らせ、さらに、当該接触分解軽質サイクル油を水素処理に供し、水素付加軽質サイクル油を得る工程、
v)前記軽質ガソリン留分の一部を前記水素付加軽質サイクル油の少なくとも一部と混合し、混合留分を得る工程、
vi)前記混合留分を第2のノズルを介してライザー反応器の中に噴霧し、当該混合留分を接触分解反応に供する工程、および
vii)前記中質ガソリン留分の一部を第3のノズルを介して前記ライザー反応器の中に噴霧し、当該中質ガソリン留分の一部を接触分解反応に供する工程。
【0054】
任意で、前記方法は、さらに以下を含むことが可能である:工程iii)において、外部の接触分解装置によって製造されたガソリンを接触分解ガソリンとして分割する工程、および/または、工程iv)において、外部の接触分解装置によって製造された軽質サイクル油を接触分解軽質サイクル油として水素処理に供する工程。これによって、軽質サイクル油および接触分解ガソリンの利用率はさらに改良され得る。
【0055】
好ましくは、軽質ガソリン留分と中質ガソリン留分との間の留分境界点は、約60℃と約80℃との間であり、中質ガソリン留分と重質ガソリン留分との間の留分境界点は、約120℃と約130℃との間である。
【0056】
好ましくは、約90℃から約130℃までの範囲内の蒸留範囲を有する中質ガソリン留分は、ライザー反応器の中に噴霧され、工程vii)における接触分解反応に供される。
【0057】
好ましくは、約2重量%~約90重量%、より好ましくは約10重量%~約80重量%の中質ガソリン留分は、ライザー反応器の中に噴霧され、工程vii)における接触分解反応に供される。
【0058】
好ましくは、約2重量%~約90重量%、より好ましくは約10重量%~約70重量%の軽質ガソリン留分は、工程v)において、約10重量%~約100重量%、より好ましくは約30重量%~約100重量%の水素付加軽質サイクル油と混合されて、混合留分が得られる。
【0059】
好ましくは、前記方法は、以下の工程をさらに含むことが可能である:軽質ガソリン留分と中質ガソリン留分との残留部分、および重質ガソリン留分の全てを、後段の吸収-安定化装置に移動させる工程。
【0060】
好ましくは、水素処理は、以下の条件下で実行される:約330℃から約450℃まで、好ましくは約340℃から約380℃までの範囲である反応温度、約6MPaから約25MPaまで、好ましくは約10MPaから約22MPaまでの範囲である水素分圧、約0.1h-1から約20h-1まで、好ましくは約0.1h-1から約3.0h-1までの範囲である体積空間速度、および、約1000Nm3/m3から約2000Nm3/m3まで、好ましくは約350Nm3/m3から約2000Nm3/m3までの範囲である、油に対する水素の体積比。
【0061】
好ましくは、水素付加触媒は、キャリア(carrier)と当該キャリア上にて担持された活性成分とを含む。前記活性成分は、第6B族金属、第8族非貴金属およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得る。前記第6B族金属は、好ましくは、モリブデンおよび/またはタングステンである。前記第8族非貴金属は、好ましくは、ニッケルおよび/またはコバルトである。また、前記活性成分は、好ましくは、ニッケル-タングステン、ニッケル-タングステン-コバルト、ニッケル-モリブデンまたはコバルト-モリブデンである。また、前記担体は、アルミナ、シリカ、非晶質のシリカ-アルミナ、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択される。より好ましくは、水素付加触媒は、約70重量%から約85重量%までの担体と、約15重量%から約30重量%までの活性成分とを含む。
【0062】
好ましくは、水素付加する前記工程iv)は、結果として得られる水素付加軽質サイクル油について、二環式芳香族化合物の含量が約20重量%以下、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約8重量%以下であり、水素の含量が約11重量%以上、好ましくは約14重量%以上であり、初留点が約165℃よりも大きく、好ましくは約175℃よりも大きい範囲で、実行される。
【0063】
いくつかの特定の実施形態において、ライザー反応器は、流動床反応器を有するか若しくは有さない等直径のライザー反応器であるか、または、流動床反応器を有するか若しくは有さない可変直径のライザー反応器であり得る。
【0064】
好ましくは、第1、第2、および第3のノズルは、上から下まで、互いに離間している。より好ましくは、第3のノズルと第2のノズルとの間のライザー反応器の部分における反応時間は、約0.01秒間から約2秒間までの範囲内であり、第2のノズルと第1のノズルとの間のライザー反応器の部分における反応時間は、約0.01秒間から約3秒間までの範囲内である。さらに好ましくは、第3のノズルと第2のノズルとの間のライザー反応器の部分における反応時間は、約0.05秒間から約1秒間までの範囲内であり、第2のノズルと第1のノズルとの間のライザー反応器の部分における反応時間は、約0.05秒間から約2秒間までの範囲内である。
【0065】
好ましくは、ライザー反応器における反応条件は以下の通りである:反応温度が約480℃から約650℃まで、好ましくは約490℃から約550℃までの範囲である、重質原料油に対する接触分解触媒の重量比が約2から約100まで、好ましくは約4から約50までの範囲である、重質原料油の反応時間が約1秒間から約10秒間まで、好ましくは約2秒間から約8秒間までの範囲である、反応圧(絶対圧力)が約0.15MPaから約0.4MPaまでの範囲である、重質原料油に対する蒸気の重量比が約0.01から約0.5まで、好ましくは約0.02から約0.2までの範囲である、および、平衡触媒のマイクロ活性を測定するための接触分解分野におけるRIPP92-90の試験方法によって測定したとき、接触分解触媒のマイクロ活性(MAT)が約55以上、好ましくは約60以上である。
【0066】
好ましくは、接触分解触媒は、無水ベースにおいて、接触分解触媒の重量を基準として、約10重量%から約50重量%までのゼオライト、約5重量%から約90重量%までの無機酸化物および約0重量%から約70重量%までの粘土を含み、前記ゼオライトは、希土類元素を含むかまたは含まないYゼオライト、希土類元素を含むかまたは含まないHYゼオライト、希土類元素を含むかまたは含まないUSYゼオライト、希土類元素を含むかまたは含まないベータゼオライト、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され、前記無機酸化物は、シリカ、アルミナ、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され、前記粘土は、カオリンおよび/またはハロイサイトから選択される。
【0067】
本発明の特定の実施形態のそのような種類は、以下の一つ以上の利点が生じる:
1.接触分解ガソリンを分割することにより得られた留分の一部を、水素付加軽質サイクル油とともに、ライザー反応器へ再循環し、前記接触分解反応を継続することによって、本発明は、実質的に、ガソリンに対するディーゼルの比率を低減する可能性があり、かつ、オレフィン含量が低くかつオクタン価が高いクリーンな接触分解ガソリンの生成を増加させ得る、
2.中質ガソリン留分を、下方の位置に配置された第3のノズルを通して、ライザー反応器の底部の中に噴霧することによって、本発明では、より厳格な条件下で短い接触時間を伴う反応を実現し得、これにより、実質的に前記ガソリン留分のオクタン価を増加させ得る、
3.オレフィンリッチな軽質ガソリン留分および水素付加軽質サイクル油を混合し、中央の位置に配置された別個の第2のノズルを介してライザー反応器に再循環させることによって、本発明では、短い接触時間を伴う反応が、本願において相対的に厳しい条件下でライザー反応器の下部にて実現される可能性があり、水素供与体として水素付加軽質サイクル油に存在する水素付加された芳香族化合物の作用が、軽質ガソリン留分中に存在するオレフィンと水素供与体との間の水素転移反応を穏やかに促進するのに利用され得、これにより、オレフィン含量が非常に低減し得、それと同時に、前記水素付加軽質サイクル油に存在する前記水素付加された芳香族化合物の開環分解反応も促進され得、これにより、前記水素付加軽質サイクル油の転換およびガソリンに対する選択性が改善され得る、および、
4.下方の位置における第3のノズルと中央の位置における第2のノズルとの間のライザー反応器の部分における反応時間、およびライザー反応器の排出口の温度を最適化することにより、上方の位置における第1のノズルを通して噴霧される重質原料油の転換に対して悪影響が無く、その替わりに、重質油の転換能力は、油に対する触媒の比が上昇することにより改善され得る。
【0068】
本願の特定の実施形態の前記第1の種類は、添付の図面を参照して、さらに以下に記載されるが、本願を限定することを意図するものではない。
【0069】
図1に示すように、新たな重質原料油は、第1のノズル11を介して第1のライザー反応器1の中に噴霧され、接触分解反応に供されて、接触分解生成物と使用済み触媒とが得られ、得られた接触分解生成物および使用済み触媒は、沈殿法による分離のために第1の解放器2に送られる。
【0070】
第1の解放器2における分離の後、接触分解生成物は、分別蒸留のために接触分解生成物パイプライン24を介して主要分留塔4に送られ、接触分解ガソリンと接触分解軽質サイクル油とが得られる。分離された後、使用済み触媒は、コークスを燃焼することによる再生のために第1の使用済み触媒傾斜管7および使用済み触媒スライド弁8を通して再生器3に送られ、再生触媒が得られる。主要分留塔4からの接触分解ガソリンは、分割のためにガソリンパイプライン13を通してガソリン分留塔6に送られる。結果として得られた軽質ガソリン留分は、軽質ガソリン留分パイプライン15を通して回収される。結果として得られた中質ガソリン留分は、中質ガソリン留分パイプライン16を通して回収され、かつ、結果として得られた重質ガソリン留分は、重質ガソリン留分パイプライン17を通して回収され、後段の吸収-安定化装置(不図示)へ送られる。軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分および重質ガソリン留分以外のガソリン留分は、残留留分パイプライン25から回収され、当該ガソリン留分もまた、後段の吸収-安定化装置へ送られる。軽質ガソリン留分パイプライン15からの軽質ガソリン留分の一部分は、軽質ガソリン留分産出パイプライン18を通して取り出され、後段の吸収-安定化装置へ送られ、かつ、他の部分は、軽質ガソリン留分再循環パイプライン19を介して第1のライザー反応器1に再循環される。中質ガソリン留分パイプライン16からの中質ガソリン留分の一部分は、中質ガソリン留分産出パイプライン20を通して取り出され、後段の吸収-安定化装置へ送られ、かつ、他の部分は、中質ガソリン留分再循環パイプライン21を通して再循環され、第3のノズル23を介して第1のライザー反応器1の中に噴霧される。接触分解軽質サイクル油は、軽質サイクル油パイプライン14を通して主要分留塔4から回収され、水素処理装置5に送られる。そして、結果として得られた水素付加軽質サイクル油は、水素付加軽質サイクル油パイプライン12を通して回収され、軽質ガソリン留分再循環パイプライン19からの軽質ガソリン留分と混合され、その後、第2のノズル22を通して第1のライザー反応器1の中に噴霧される。第1のノズル11、第2のノズル22、および第3のノズル23は、第1のライザー反応器1の高さ方向において、上方-中央-下方の相対的な位置関係に配置される。第1のライザー反応器1において、中質ガソリン留分、軽質ガソリン留分、水素付加軽質サイクル油、および重質原料油は、第1の再生触媒傾斜管9および再生触媒スライド弁10を通して再生器3から来る再生触媒と接触させられ、励起されて、接触分解反応が行われ、接触分解生成物と使用済み触媒とが製造される。製造された接触分解生成物および使用済み触媒は、沈殿法による分離のために第1の解放器2に送られる。
【0071】
特定の実施形態の第2の種類において、本発明は、ディーゼル/ガソリン比(diesel-to-gasoline ratio)が減少した接触分解方法を提供する。当該接触分解方法は、以下の工程を含む:
i)重質原料油を第1のノズルを介して第1のライザー反応器の中に噴霧し、第1の接触分解触媒と接触させ、さらに、当該重質原料油を接触分解反応に供し、第1の反応生成物を得る工程、
ii)前記第1の反応生成物を分離し、少なくとも第1の接触分解ガソリンおよび第1の接触分解軽質サイクル油を得る工程、
iii)結果として得られた第1の接触分解ガソリンを分割し、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分および重質ガソリン留分を得る工程、
iv)結果として得られた第1の接触分解軽質サイクル油を水素処理装置において水素付加触媒との接触に至らせ、さらに、当該第1の接触分解軽質サイクル油を水素処理に供し、水素付加軽質サイクル油を得る工程、
v)前記軽質ガソリン留分の一部分を前記水素付加軽質サイクル油の少なくとも一部分と混合し、混合留分を得る工程、
vi)前記混合留分を第2のノズルを介して第2のライザー反応器の中に噴霧し、第2の接触分解触媒と接触させ、さらに、当該混合留分を接触分解反応に供する工程;および
vii)前記中質ガソリン留分の一部分を第3のノズルを介して前記第2のライザー反応器の中に噴霧し、第2の接触分解触媒と接触させ、さらに、当該中質ガソリン留分の一部分を接触分解反応に供する工程。
【0072】
いくつかの好ましい実施形態において、第2のライザー反応器から得られた第2の反応生成物は、第1のライザー反応器からの第1の反応生成物とともに、工程ii)において分離される。
【0073】
いくつかの他の好ましい実施形態において、第2のライザー反応器から得られた第2の反応生成物は、第1の反応生成物から独立して分離され、第2の接触分解ガソリンおよび第2の接触分解軽質サイクル油が得られる。
【0074】
任意で、前記方法はさらに以下を含むことが可能である:外部の接触分解装置によって製造されたガソリン、および/または、工程iii)における第2の接触分解ガソリンを、第1の接触分解ガソリンと一緒に分割する工程、および/または、外部の接触分解装置によって製造された軽質サイクル油、および/または、第2の接触分解軽質サイクル油を、第1の接触分解軽質サイクル油と一緒に、工程iv)における水素処理に供する工程。これによって、軽質サイクル油の利用率はさらに改良され得、ガソリンのオクタン価は増加し得、かつ、ガソリンのオレフィン含有量は減少し得る。
【0075】
好ましくは、軽質ガソリン留分と中質ガソリン留分との間の留分境界点は、約60℃と約80℃との間であり、中質ガソリン留分と重質ガソリン留分との間の留分境界点は、約120℃と約130℃との間である。
【0076】
好ましくは、約90℃から約130℃までの範囲内の蒸留範囲を有する中質ガソリン留分は、第2のライザー反応器の中に噴霧され、工程vii)における接触分解反応に供される。
【0077】
好ましくは約2重量%から約90重量%まで、より好ましくは約10重量%から約80重量%までの中質ガソリン留分が、第2のライザー反応器内へ噴霧されて、Vii)の工程にて、接触分解反応に供される。
【0078】
好ましくは約2重量%から約90重量%まで、より好ましくは約10重量%から70重量%までの軽質ガソリン留分が、v)の工程にて、約10重量%から約100重量%まで、より好ましくは約30重量%から約100重量%までの水素付加軽質サイクル油と混合されて、混合留分が得られる。
【0079】
好ましくは、前記プロセスは、更に、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分、および、全ての重質ガソリン留分の残存部分を、後段の吸収-安定化装置を通過させる工程を有し得る。
【0080】
好ましくは、以下の条件下にて、水素付加が行われる。つまり、反応温度は、約330℃から約450℃までであり、好ましくは340℃から380℃までである。水素の分圧は、約6MPaから約25MPaであり、好ましくは約10MPaから約22MPaである。体積空間速度は、約0.1h-1から約20h-1であり、好ましくは約0.1h-1から3.0h-1である。オイルに対する水素の体積比は、約1000Nm3/m3から約2000Nm3/m3であり、好ましくは約350Nm3/m3から約2000Nm3/m3である。
【0081】
好ましくは、水素付加触媒は、担体と、当該担体上に担持されている活性成分とを有している。前記活性成分は、第6B族金属、第8族非貴金属、および、これらの組み合わせからなる群から選択され得る。前記第6B族金属は、好ましくは、モリブデンおよび/またはタングステンである。前記第8族非貴金属は、好ましくは、ニッケルおよび/またはコバルトである。前記活性成分は、好ましくは、ニッケル-タングステン、ニッケル-タングステン-コバルト、ニッケル-モリブデン、または、コバルト-モリブデンである。前記担体は、アルミナ、シリカ、非晶質のシリカ-アルミナ、および、これらの組み合わせからなる群から選択される。より好ましくは、水素付加触媒は、約70重量%から約85重量%の担体と、約15重量%から約30重量%の活性成分とを有している。
【0082】
好ましくは、水素付加する工程iv)は、生成された水素付加軽質サイクル油について、二環式芳香族の含量が、約20重量%以下、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約8重量%以下であり、水素の含量が、約11重量%以上、好ましくは約14重量%以上であり、初留点が、約165℃よりも高く、好ましくは約175℃よりも高い範囲にて行われる。
【0083】
幾つかの特定の実施形態では、第1のライザー反応器、および、第2のライザー反応器は、各々独立して、流動床反応器を有する若しくは有さない等直径のライザー反応器、または、流動床反応器を有する若しくは有さない可変直径のライザー反応器である。第1のライザー反応器、および、第2のライザー反応器は、二つに分離された接触分解ユニットであるライザー反応器であってもよく、単一の接触分解ユニット内のパラレルな二つのライザー反応器であってもよい。
【0084】
好ましくは、第2のノズル、および、第3のノズルが、上下に互いに離れて配置され、第3のノズルは、第2のノズルの下に配置される。より好ましくは、第3のノズルと第2のノズルとの間のライザー反応器部分での反応時間は、約0.01秒間から約2秒間であり、より好ましくは約0.05秒間から約1秒間である。
【0085】
好ましくは、第1のライザー反応器内の反応条件は、以下の通りである。反応温度は、約480℃から約650℃であり、好ましくは約490℃から600℃である。油に対する触媒の比(catalyst-to-oil ratio)は、約2から約100までであり、好ましくは約4から約50までである。反応時間は、約1秒間から約10秒間までであり、好ましくは約2秒間から約8秒間までである。反応圧(絶対圧力)は、約0.15MPaから約0.4MPaまでである。重質原料油に対する蒸気の重量比は、約0.01から約0.5までであり、好ましくは約0.02から約0.2までである。接触分解触媒のマイクロ活性(MAT)は、約55以上であり、好ましくは約60以上である。当該マイクロ活性(MAT)は、平衡触媒(equilibrium catalysts)のマイクロ活性の決定のための、接触分解の分野におけるRIPP92-90の試験方法によって測定される。好ましくは、第2のライザー反応器内の反応条件は、以下の通りである。反応温度は、約400℃から約650℃までであり、好ましくは約420℃から約550℃までである。油に対する触媒の比(catalyst-to-oil ratio)は、約5から約100までであり、好ましくは約8から約80までである。反応時間(最も上のノズルからのタイミング)は、約0.01秒間から10秒間までであり、好ましくは約0.05秒間から5秒間までである。反応圧力(絶対圧力)は、約0.15MPaから約0.4MPaまでである。原料油の総量に対する蒸気の重量比は、約0.01から約0.5までであり、好ましくは約0.02から約0.2までである。接触分解触媒のマイクロ活性(MAT)は、約55以上であり、好ましくは約60以上である。
【0086】
好ましくは、第1の接触分解触媒は、乾燥重量を基準にして、第1の接触分解触媒の重量に基づいて、約10重量%から約50重量%までのゼオライト、約5重量%から約90重量%までの無機酸化物、および、約0重量%から約70重量%までの粘土(clay)を含んでいる。好ましくは、第2の接触分解触媒は、乾燥重量を基準にして、第2の接触分解触媒の重量に基づいて、約10重量%から約50重量%までのゼオライト、約5重量%から約90重量%までの無機酸化物、および、約0重量%から約70重量%までの粘土を含んでいる。前記ゼオライトは、希土類元素を有する、あるいは有さないY型ゼオライト、希土類元素を有する、あるいは有さないHY型ゼオライト、希土類元素を有する、あるいは有さないUSY型ゼオライト、希土類元素を有する、あるいは有さないβゼオライト、および、これらの組み合わせ、からなる群から選択される。前記無機酸化物は、シリカ、アルミナ、および、これらの組み合わせ、からなる群から選択される。前記粘土は、カオリン、および/または、ハロサイトから選択される。特定の実施形態では、第1の接触分解触媒、および、第2の接触分解触媒は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0087】
幾つかの実施形態では、再生器にて再生された触媒が、各々、第1の接触分解触媒および第2の接触分解触媒として、第1のライザー反応器および第2のライザー反応器へ、直接再循環される。
【0088】
幾つかの好ましい実施形態では、再生器にて再生された触媒は、約500℃から約680℃まで、好ましくは約550℃から650℃までに冷却された後、第2の接触分解触媒として、第2のライザー反応器へ再循環される。上述した冷却は、触媒冷却器、または、外部冷却器の中で行われ得る。
【0089】
このような本発明の特定の実施形態は、以下に示す利点の中の一つ以上をもたらし得る:
1.接触分解ガソリンを分割することによって得られた留分の一部を、水素付加軽質サイクル油と共に第2のライザー反応器へ再循環して、接触分解反応を継続することによって、本発明は、ガソリンに対するディーゼルの割合を大幅に低減することができ、および、オレフィンの含量が少なく、かつ、オクタン価が高いクリーンな接触分解ガソリンの生産を大幅に増加させることができる、
2.離れた第2のライザー反応器の中へ、水素付加軽質サイクル油およびガソリン留分の一部を噴霧することによって、接触分解反応が、最適化された反応条件下にて行われ得、これによって、水素付加軽質サイクル油およびガソリン留分の効率的な変換が容易になる、
3.より下の位置に配置されている第3のノズルを介して、中質ガソリン留分を第2のライザー反応器の下部に噴霧することによって、本発明では、より厳格な条件下で接触時間が短い反応が実現され得、これによって、ガソリン留分のオクタン価が実質的に増加する、および、
4.分離した第2のノズルを介して、オレフィンリッチな軽質ガソリン留分、および、水素付加軽質サイクル油を、第2のライザー反応器内に再循環および混合することによって、本発明では、第2のライザー反応器の下部にて、相対的に厳格な条件下で接触時間が短い反応が実現され得る。水素供与体として軽質サイクル油に存在する水素付加芳香族の作用が、軽質ガソリン留分に存在するオレフィンと水素供与体との間の水素移行反応を中程度に促進するのに利用され得る。これによって、オレフィン含量が非常に低減する。それと同時に、水素付加軽質サイクル油中に存在する水素付加芳香族の開環分解反応も促進され得、これによって、水素付加軽質サイクル油の変換、および、ガソリンに対する選択性が改善される。
【0090】
添付されている図面を参照しながら、本発明の第2の特定の実施形態について、以下にて更に説明する。しかしながら、本発明は、これらに限定されない。
【0091】
図2に示すように、重質原料油は、第1のノズル11を介して第1のライザー反応器1の中に噴霧され、第1の再生触媒傾斜管9に由来する、相対的に温度が高い再生触媒と接触し、接触分解反応を生じさせるために活性化(upraised)され、第1の反応生成物、および、第1の使用済み触媒が生成され、当該第1の反応生成物、および、第1の使用済み触媒は、沈殿による分離のために、第1の解放器2へ送られる。第1の解放器2内における分離の後、第1の反応生成物は、第1の生成物パイプライン26を介して回収される。一方、第1の使用済み触媒は、ストリップ処理(stripped)された後、再生のために、第1の使用済み触媒傾斜管7を介して、再生器3へ送られる。再生された触媒は、再利用のために、第1の再生触媒傾斜管9を介して、第1のライザー反応器1へ再循環される。第1の生成物パイプライン26に由来する第1の反応生成物は、分留のために、接触分解生成物パイプライン24を介して主要分留塔4へ送られ、接触分解ガソリン、および、接触分解軽質サイクル油が得られる。主要分留塔4に由来する接触分解ガソリンは、分割(splitting)のために、ガソリンパイプライン13を介して、ガソリン分留塔6へ送られる。生成された軽質ガソリン留分は、軽質ガソリン留分パイプライン15を介して回収され、生成された中質ガソリン留分は、中質ガソリン留分パイプライン16を介して回収され、生成された重質ガソリン留分は、重質ガソリン留分パイプライン17を介して回収され、後段の吸収-安定化装置(図示せず)へ送られる。軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分および重質ガソリン留分以外のガソリン留分は、残留留分パイプライン25を介して回収され、当該ガソリン留分も、後段の吸収-安定化装置へ送られる。軽質ガソリン留分パイプライン15に由来する軽質ガソリン留分の一部分は、軽質ガソリン留分産出パイプライン18を介して取り出されて、後段の吸収-安定化装置へ送られ、他の部分は、軽質ガソリン留分再循環パイプライン19を介して、第2のライザー反応器27へ再循環される。中質ガソリン留分パイプライン16に由来する中質ガソリン留分の一部分は、中質ガソリン留分産出パイプライン20を介して取り出されて、後段の吸収-安定化装置へ送られ、他の部分は、中質ガソリン留分再循環パイプライン21を介して再循環されて、第3のノズル23を介して、第2のライザー反応器27の中に噴霧される。接触分解軽質サイクル油は、軽質サイクル油パイプライン14を介して主要分留塔4から回収されて、水素付加ユニット5へ送られる。生成された水素付加軽質サイクル油は、水素付加軽質サイクル油パイプライン12を介して回収されて、軽質ガソリン留分再循環パイプライン19に由来する軽質ガソリン留分と混合され、その後、第2のノズル22を介して、第2のライザー反応器27内へ噴霧される。第2のノズル22、および、第3のノズル23は、第2のライザー反応器27の高さ方向に沿って、相対的に上下の位置関係になるように配置される。第2のライザー反応器27内にて、中質ガソリン留分、軽質ガソリン留分、および、水素付加軽質サイクル油が、再生触媒と接触し、接触分解反応を生じさせるために活性化(upraised)され、第2の反応生成物、および、第2の使用済み触媒が生成され、当該第2の反応生成物、および、第2の使用済み触媒は、沈殿による分離のために、第2の解放器28へ送られる。なお、当該再生触媒は、第2の再生触媒傾斜管31を介して再生器3から由来するものであって、触媒冷却器32内にて、相対的に低い温度にまで冷却されたものである。第2の解放器28内における分離の後、第2の反応生成物は、第2の生成物パイプライン29を介して回収される。一方、第2の使用済み触媒は、ストリップ処理(stripped)された後、再生のために、第2の使用済み触媒傾斜管30を介して、再生器3へ送られる。再生された触媒は、再利用のために、第2の再生触媒傾斜管31を介して触媒冷却器32へと送られ、冷却された後に、第2のライザー反応器27へ再循環される。第2の生成物パイプライン29に由来する第2の反応生成物は、第1の生成物パイプライン26に由来する反応生成物と混合されて、接触分解生成物パイプライン24を介して、主要分留塔4へ送られる。主要分留塔4に由来する、接触分解ガソリンおよび接触分解軽質サイクル油は、各々、ガソリンパイプライン13および軽質サイクル油パイプライン14を介して、再循環される。
【0092】
幾つかの好ましい実施形態では、本発明は、以下のような技術的解決法を提供する。
【0093】
A1:オレフィンの含量が少なく、かつ、オクタン価が高いガソリンの生産を増加させるための接触分解方法であって、
重質原料油を、第1のノズルを介してライザー反応器内へ噴霧して、下部に注入されている接触分解触媒と接触させ、下部から上部へ移動している間に、当該重質原料油を、接触分解反応に供し、接触分解反応生成物および使用済み触媒を得る工程と、
前記接触分解反応生成物を分離して、少なくとも、接触分解ガソリンおよび接触分解軽質サイクル油を得、前記使用済み触媒を、コークスを燃焼させることによって再生させる再生器へ送り、および、再生された触媒を、前記接触分解触媒として前記ライザー反応器へ再循環する工程と、
前記生成された接触分解ガソリンを分割(splitting)して、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分、および、重質ガソリン留分を得る工程と、
前記生成された接触分解軽質サイクル油を、水素付加ユニット内にて水素付加触媒と接触させて、当該接触分解軽質サイクル油を水素付加して、水素付加軽質サイクル油を得る工程と、
前記軽質ガソリン留分の一部分と、少なくとも前記水素付加軽質サイクル油の一部分とを混合して、混合留分を得る工程と、
前記混合留分、および、前記中質ガソリン留分の一部分を、各々、第2のノズルおよび第3のノズルを介して前記ライザー反応器内へ噴霧して、当該混合留分および中質ガソリン留分を、接触分解反応に供する工程と、を有する、接触分解方法。
【0094】
A2:更に、前記接触分解ガソリンの分割(splitting)を、外部の接触分解ユニット(external catalytic cracking unit)によって前記接触分解ガソリンとして製造されたガソリンを用いて行う工程、および/または、
前記接触分解軽質サイクル油の水素付加を、外部の接触分解ユニットによって前記接触分解軽質サイクル油として製造された軽質サイクル油を用いて行う工程、を有する、A1に記載の接触分解方法。
【0095】
A3:前記軽質ガソリン留分と前記中質ガソリン留分との間の留分境界点は、約60℃と約80℃との間であり、前記中質ガソリン留分と前記重質ガソリン留分との間の留分境界点は、約120℃と約130℃との間である、A1に記載の接触分解方法。
【0096】
A4:蒸留範囲が約90℃から130℃の範囲内である中質ガソリン留分を前記ライザー反応器内へ噴霧して接触分解反応させる、A3に記載の接触分解方法。
【0097】
A5:更に、前記軽質ガソリン留分の一部分、前記ガソリン留分の一部分、および、前記重質ガソリン留分の全てを、後段の吸収-安定化装置を通過させる工程を有する、A1に記載の接触分解方法。
【0098】
A6:約2重量%から約90重量%の前記中質ガソリン留分が前記ライザー反応器内へ噴霧される、A1に記載の接触分解方法。
【0099】
A7:約2重量%から約90重量%の前記軽質ガソリン留分と約10重量%から約100重量%の前記水素付加軽質サイクル油とを混合して得られる混合留分が、前記ライザー反応器内へ噴霧される、A1に記載の接触分解方法。
【0100】
A8:前記水素付加の処理が、反応温度の範囲が約330℃から約450℃の範囲、水素の分圧が約6MPaから約25MPaの範囲、体積空間速度が約0.1h-1から約2h-1の範囲、および、オイルに対する水素の体積比が約1000Nm3/m3から約2000Nm3/m3の範囲である条件下において行われる、A1に記載の接触分解方法。
【0101】
A9:前記水素付加触媒は、担体と、当該担体上に担持されている活性成分とを有しており、前記活性成分は、第6B族金属、および、第8族非貴金属からなる群から選択される少なくとも一つのものであり、前記担体は、アルミナ、シリカ、および、アモルファスシリカ-アルミナからなる群から選択される少なくとも一つのものである、A1に記載の接触分解方法。
【0102】
A10:前記水素付加軽質サイクル油は、二環式芳香族の含量が約10重量%以下であり、かつ、初留点(initial boiling point)が約165℃よりも高いものである、A1に記載の接触分解方法。
【0103】
A11:前記ライザー反応器は、流動床反応器を有する若しくは有さない等直径のライザー反応器、または、流動床反応器を有する若しくは有さない可変直径のライザー反応器である、A1に記載の接触分解方法。
【0104】
A12:前記第1のノズル、前記第2のノズル、および、前記第3のノズルは、上下に互いに離れて配置されているものである、A1に記載の接触分解方法。
【0105】
A13:前記第3のノズルと前記第2のノズルとの間の前記ライザー反応器部分での反応時間は、約0.01秒間と約2秒間との間であり、前記第2のノズルと前記第1のノズルとの間の前記ライザー反応器部分での反応時間は、約0.01秒間と約3秒間との間である、A12に記載の接触分解方法。
【0106】
A14:前記第3のノズルと前記第2のノズルとの間の前記ライザー反応器部分での反応時間は、約0.05秒間と約1秒間との間であり、前記第2のノズルと前記第1のノズルとの間の前記ライザー反応器部分での反応時間は、約0.05秒間と約2秒間との間である、A12に記載の接触分解方法。
【0107】
A15:前記接触分解反応の反応条件は、反応温度が約480℃から約650℃の範囲、前記重質原料油に対する接触分解触媒の重量比が約2から100の範囲、前記重質原料油の反応時間が約1秒間から約10秒間の範囲、反応圧が約0.15MPaから約0.4MPaの範囲、前記重質原料油に対する蒸気の重量比が約0.01から約0.5の範囲、および、接触分解触媒のマイクロ活性が約55以上である(当該マイクロ活性は、平衡触媒(equilibrium catalysts)のマイクロ活性の決定のための、接触分解の分野におけるRIPP92-90の試験方法によって測定されるものである)、ことを包含する、A1に記載の接触分解方法。
【0108】
A16:前記接触分解触媒は、当該接触分解触媒の重量を基準にして、無水ベース(dry basis)で、約10重量%から約50重量%のゼオライト、約5重量%から約90重量%の無機酸化物、および、約0重量%から約70重量%の粘土を含むものであり、前記ゼオライトは、希土類元素を有する、あるいは有さないY型ゼオライト、希土類元素を有する、あるいは有さないHY型ゼオライト、希土類元素を有する、あるいは有さないUSY型ゼオライト、および、希土類元素を有する、あるいは有さないβゼオライト、からなる群から選択される少なくとも一つのゼオライトである、A1に記載の接触分解方法。
【0109】
B1:ガソリンに対するディーゼルの比率の低減を伴う、接触分解方法であって、
重質原料油を、第1のライザー反応器内へ噴霧して、第1の接触分解触媒と接触させ、当該重質原料油を、接触分解反応に供し、第1の反応生成物および第1の使用済み触媒を得る工程と、
前記第1の反応生成物を分離して、少なくとも、第1の接触分解ガソリン、および、第1の接触分解軽質サイクル油を得る工程と、
前記生成された第1の接触分解ガソリンを分割(splitting)して、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分、および、重質ガソリン留分を得る工程と、
前記生成された第1の接触分解軽質サイクル油を、水素付加ユニット内にて水素付加触媒と接触させて、当該第1の接触分解軽質サイクル油を水素付加して、水素付加軽質サイクル油を得る工程と、
前記軽質ガソリン留分の一部分と、少なくとも前記水素付加軽質サイクル油の一部分とを混合して、混合留分を得る工程と、
前記混合留分、および、前記中質ガソリン留分の一部分を、各々、第1のノズルおよび第2のノズルを介して第2のライザー反応器内へ噴霧して、当該混合留分および中質ガソリン留分を、下部に注入されている第2の接触分解触媒と接触させ、下部から上部へ移動している間に、当該混合留分および中質ガソリン留分を、第2の接触分解反応に供し、第2の反応生成物および第2の使用済み触媒を得る工程と、
前記第2の反応生成物を分離して、少なくとも、第2の接触分解ガソリン、および、第2の接触分解軽質サイクル油を得る工程と、
前記第1の使用済み触媒および前記第2の使用済み触媒を再生することによって得られた再生化触媒を、各々、前記第1の接触分解触媒および前記第2の接触分解触媒として、前記第1のライザー反応器および前記第2のライザー反応器へ再循環する工程と、を有する、接触分解方法。
【0110】
B2:更に、前記第1の接触分解ガソリンを、外部の接触分解ユニットによって製造されたガソリン、および/または、前記第2の接触分解ガソリン、と共に分割(splitting)する工程、および/または、
前記第1の接触分解軽質サイクル油を、外部の接触分解ユニットによって製造された軽質サイクル油、および/または、前記第2の接触分解軽質サイクル油、と共に水素付加する工程、を有する、B1に記載の接触分解方法。
【0111】
B3:前記軽質ガソリン留分と前記中質ガソリン留分との間の留分境界点は、約60℃と約80℃との間であり、前記中質ガソリン留分と前記重質ガソリン留分との間の留分境界点は、約120℃と約130℃との間である、B1に記載の接触分解方法。
【0112】
B4:蒸留範囲が約90℃から約130℃の範囲内である中質ガソリン留分を前記ライザー反応器内へ噴霧して、当該中質ガソリン留分を前記第2の接触分解反応に供する、B3に記載の接触分解方法。
【0113】
B5:更に、前記軽質ガソリン留分の一部分、前記ガソリン留分の一部分、および、前記重質ガソリン留分の全てを、後段の吸収-安定化装置を通過させる工程を有する、B1に記載の接触分解方法。
【0114】
B6:約0重量%から約90重量%の前記中質ガソリン留分が前記第2のライザー反応器内へ噴霧される、B1に記載の接触分解方法。
【0115】
B7:約0重量%から約90重量%の前記軽質ガソリン留分と約10重量%から約100重量%の前記水素付加軽質サイクル油とを混合して得られる混合留分が、前記第2のライザー反応器内へ噴霧される、B1に記載の接触分解方法。
【0116】
B8:前記水素付加の処理が、反応温度の範囲が約330℃から約450℃の範囲、水素の分圧が約6MPaから約25MPaの範囲、体積空間速度が約0.1h-1から約2h-1の範囲、および、オイルに対する水素の体積比が約1000Nm3/m3から約2000Nm3/m3の範囲である条件下において行われる、B1に記載の接触分解方法。
【0117】
B9:前記水素付加触媒は、担体と、当該担体上に担持されている活性成分とを有しており、前記活性成分は、第6B族金属、および、第8族非貴金属からなる群から選択される少なくとも一つのものであり、前記担体は、アルミナ、シリカ、および、アモルファスシリカ-アルミナからなる群から選択される少なくとも一つのものである、B1に記載の接触分解方法。
【0118】
B10:前記水素付加軽質サイクル油は、二環式芳香族の含量が約10重量%以下であり、かつ、初留点(initial boiling point)が約165℃よりも高いものである、B1に記載の接触分解方法。
【0119】
B11:前記第1のライザー反応器、および、前記第2のライザー反応器は、各々独立して、流動床反応器を有する若しくは有さない等直径のライザー反応器、または、流動床反応器を有する若しくは有さない可変直径のライザー反応器である、B1に記載の接触分解方法。
【0120】
B12:前記再生化触媒は、約500℃から約680℃の範囲に冷却されて、前記第2のライザー反応器へ送られる、B1に記載の接触分解方法。
【0121】
B13:前記第1のノズル、および、前記第2のノズルは、上下に互いに離れて配置されているものであり、前記第2のノズルは、前記第1のノズルよりも下に配置されており、前記第2のノズルと前記第1のノズルとの間の前記ライザー反応器部分での反応時間は、約0.01秒間と約2秒間との間である、B1に記載の接触分解方法。
【0122】
B14:前記第2のノズルと前記第1のノズルとの間の前記ライザー反応器部分での反応時間は、約0.05秒間と約1秒間との間である、B13に記載の接触分解方法。
【0123】
B15:前記第1の接触分解反応の反応条件は、反応温度が約480℃から約650℃の範囲、油に対する触媒の比が約2から約100の範囲、反応時間が約1秒間から約10秒間の範囲、反応圧が約0.15MPaから約0.4MPaの範囲、油に対する蒸気の重量比(換言すれば、前記重質原料油に対する蒸気の重量比)が約0.01から約0.5の範囲、および、第1の接触分解触媒のマイクロ活性が約55以上である(当該マイクロ活性は、平衡触媒(equilibrium catalysts)のマイクロ活性の決定のための、接触分解の分野におけるRIPP92-90の試験方法によって測定されるものである)、ことを包含し、
前記第2の接触分解反応の反応条件は、反応温度が約400℃から約650℃の範囲、油に対する触媒の比が約5から約100の範囲、反応時間が約0.01秒間から約10秒間の範囲、反応圧が約0.15MPaから約0.4MPaの範囲、油に対する蒸気の重量比(換言すれば、前記原料油の全量に対する蒸気の重量比)が約0.01から約0.5の範囲、および、第2の接触分解触媒のマイクロ活性が約55以上である、ことを包含する、B1に記載の接触分解方法。
【0124】
B16:前記第1の接触分解触媒は、当該第1の接触分解触媒の重量を基準にして、無水ベース(dry basis)で、約10重量%から約50重量%のゼオライト、約5重量%から約90重量%の無機酸化物、および、約0重量%から約70重量%の粘土を含むものであり、
前記第2の接触分解触媒は、当該第2の接触分解触媒の重量を基準にして、無水ベース(dry basis)で、約10重量%から約50重量%のゼオライト、約5重量%から約90重量%の無機酸化物、および、約0重量%から約70重量%の粘土を含むものであり、
前記ゼオライトは、希土類元素を有する、あるいは有さないY型ゼオライト、希土類元素を有する、あるいは有さないHY型ゼオライト、希土類元素を有する、あるいは有さないUSY型ゼオライト、および、希土類元素を有する、あるいは有さないβゼオライト、からなる群から選択される少なくとも一つのゼオライトである、B1に記載の接触分解方法。
【実施例】
【0125】
本発明について、以下の実施例を参照しながら、更に説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0126】
<初発原料、および、試薬>
以下の実施例および比較例では、水素付加ユニット内に充填される、商品名がRN-32Vである水素付加触媒、および、商品名がRG-1である保護剤として、共に、シノペック カタリスト ブランチ(Sinopec Catalyst Branch)製のものを用いた。前記水素付加触媒および前記保護剤を、95:5の体積比にて、充填した。
【0127】
以下の実施例および比較例では、商品名CC20-DVである接触分解触媒(シノペック カタリスト ブランチ製)を、ライザー反応器内に用いた。表1に、当該接触分解触媒の物理化学的な特性を示す。
【0128】
【0129】
以下の実施例および比較例に用いられる重質原料油の特性を、表2に示す。
【0130】
【0131】
<パラメーターの算出>
(軽質サイクル油(Light cycle oil:LCO)の再利用率)=(水素付加および精製された軽質サイクル油の重量)/(重質原料油の重量);
(水素消費量)=(水素付加ユニット内にて消費されるフレッシュな水素の量)/(水素付加ユニットへ供給されるフレッシュな水素の量)。
【0132】
<測定方法>
ガソリン生成物のリサーチ・オクタン価(research octane number:RON)は、GB/T 5487-2015の方法にしたがって測定した。ガソリン生成物のモーター・オクタン価(motor octane number:MON)は、GB/T 503-2016の方法にしたがって測定した。
【0133】
再生触媒のマイクロ活性(micro-activity:MAT)は、RIPP 92-90の標準的な方法にしたがって決定した(Petrochemical Analysis Method(RIPP Test Method)、Cuiding Yang等編纂、Science Press、1990年9月、第1版、263-268頁を参照)。具体的には、以下の条件にしたがった。触媒 5.0g(20~40メッシュ);油の取り入れ 1.56グラム;反応時間 70秒間;反応温度 460℃;触媒/油 3:2;空間速度 16h-1。
【0134】
クラッキングガスの炭化水素組成は、RIPP 77-90の標準的な方法にしたがって決定した(Petrochemical Analysis Method(RIPP Test Method)、Cuiding Yang等編纂、Science Press、1990年9月、第1版、208-211頁を参照)。具体的には、以下の条件にしたがった。バルブチャンバー温度 65℃(18分間)、1分間当たり5℃の昇温速度にて120℃にまで昇温(20分間);FID 200℃;TCD 150℃。
【0135】
ガソリンの炭化水素組成は、RIPP 85-90の標準的な方法にしたがって決定した(Petrochemical Analysis Method(RIPP Test Method)、Cuiding Yang等編纂、Science Press、1990年9月、第1版、443-445頁を参照)。具体的には、以下の条件にしたがった。インジェクションシステム温度 200℃;電子エネルギー 70eV;放出電流 300μA;イオン化チャンバー温度 200℃;解像度 300超;走査モード 指数スイープ(exponential sweep)。
【0136】
〔実施例1〕
本実施例は、
図1に示すプロセスフローに従って実施された。前記ライザー反応器内部に、第1のノズルを介して、前記重質原料油を噴霧し、接触分解反応を行った。前記ライザー反応器における反応条件は、以下の通りであった:反応温度が515℃であり、前記重質原料油の重量に対する接触分解触媒の重量の割合が6であり、前記重質原料油に対する反応時間が3.2秒間であり、反応圧力(絶対圧力)が0.32であり、前記重質原料油の重量に対する蒸気の重量の割合が0.06であり、前記再生触媒のマイクロ活性(MAT)が62であった。前記ライザー反応器に由来する接触分解生成物を主要分留塔にて分留し、接触分解ガソリンおよび接触分解軽質サイクル油を生成した。
【0137】
前記生成された接触分解ガソリンを蒸留範囲に従ってガソリン分留塔にて分流し、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分および重質ガソリン留分を生成した。それぞれの留分における蒸留範囲は、以下の通りであった:前記軽質ガソリン留分の蒸留範囲は、≦60℃であり、前記中質ガソリン留分の蒸留範囲は、90℃~120℃であり、前記重質ガソリン留分の蒸留範囲は、≧120℃であった。本実施例において、前記軽質ガソリン留分の30重量%および前記中質ガソリン留分の50重量%を、前記ライザー反応器へ再循環し、そして、残りのガソリン留分を、後段の吸収-安定化装置に送った。
【0138】
前記生成された接触分解軽質サイクル油を水素処理装置に送り、初留点が180℃であり、二環式芳香族化合物の含量が15重量%であり、かつ、水素の含量が11重量%である、水素付加された軽質サイクル油を生成した。前記水素処理の反応条件は、以下の通りであった:水素分圧が10.0MPaであり、平均床反応温度(average bed reaction temperature)が354℃であり、体積空間速度が0.5h-1であり、水素/油の体積比が1400Nm3/m3であった。本実施例において、前記水素付加された軽質サイクル油の100重量%を前記ライザー反応器へ再循環した。
【0139】
前記中質ガソリン留分を、第3のノズルを介して、前記ライザー反応器内部に噴霧し、その後、前記軽質ガソリン留分および前記水素付加された軽質サイクル油からなる混合留分を、第2のノズルを介して前記ライザー反応器の中に噴霧した。前記ライザー反応器における、前記第3のノズルと前記第2のノズルとの間の部分における反応時間は、0.2秒間であり、前記ライザー反応器における、前記第2のノズルと前記第1のノズルとの間の部分における反応時間は、0.3秒間であった。前述の反応の結果を表3に示す。
【0140】
〔比較例1〕
分留によって得られた、前記接触分解ガソリンおよび前記接触分解軽質サイクル油を前記ライザー反応器へ再循環することなく、替わりに、前記接触分解ガソリンを後段の吸収-安定化装置に直接送り、前記接触分解軽質サイクル油を直接生成物としたこと以外は、実施例1に記載の方法にて実験を行った。前述の反応の結果を表3に示す。
【0141】
〔比較例2〕
前記接触分解ガソリンに対して分流工程を行うことなく、替わりに、前記接触分解ガソリンの30重量%を、第3のノズルを介して、前記ライザー反応器内部に直接噴霧し、残りの前記接触分解ガソリンを、後段の吸収-安定化装置に送り、前記水素付加された軽質サイクル油の100重量%を、前記第2のノズルを介して、前記ライザー反応器内へ噴霧したこと以外は、実施例1に記載の方法にて実験を行った。前述の反応の結果を表3に示す。
【0142】
〔比較例3〕
前記中質ガソリン留分を再循環することなく、前記軽質ガソリン留分の50重量%および前記水素付加された軽質サイクル油の100重量%からなる混合留分を、第2のノズルを介して前記ライザー反応器内部に噴霧し、残りの前記ガソリン留分を後段の吸収-安定化装置に送ったこと以外は、実施例1に記載の方法にて実験を行った。前述の反応の結果を表3に示す。
【0143】
〔比較例4〕
分留によって得られた、前記接触分解ガソリンを、前記ライザー反応器へ再循環するのではなく、後段の吸収-安定化装置に直接送り、前記水素付加された軽質サイクル油の100重量%が、第2のノズルを介して、前記ライザー反応器内部へ噴霧したこと以外は、実施例1に記載の方法にて実験を行った。前述の反応の結果を表3に示す。
【0144】
〔比較例5〕
前記軽質ガソリン留分を再循環することなく、前記水素付加された軽質サイクル油の100重量%を、第2のノズルを介して前記ライザー反応器内部に噴霧し、中質ガソリン留分の50重量%を、第3のノズルを介して前記ライザー反応器内部に噴霧し、そして、残りのガソリン留分を、後段の吸収-安定化装置に送ったこと以外は、実施例1に記載の方法にて実験を行った。前述の反応の結果を表3に示す。
【0145】
【0146】
比較例1において、従来の接触分解のプロセスが実施され、前記接触分解ガソリンおよび前記接触分解軽質サイクル油は双方ともに、再精製されなかった。比較例2において、前記軽質サイクル油が水素付加され、再精製され、同時に、前記接触分解ガソリンの一部が直接再精製された。比較例3において、前記軽質サイクル油は、水素付加され、その後、前記軽質ガソリン留分の一部と共に、再精製された。比較例4において、前記軽質サイクル油のみは、水素付加され、再精製された一方、前記接触分解ガソリンは再精製されなかった。比較例5において、前記軽質サイクル油は、水素付加され、再精製され、同時に、前記中質ガソリン留分の一部が再精製された。
【0147】
比較例2においては、比較例1と比較して、前記軽質サイクル油が変換され、ガソリンの収量は増大している。しかしながら、前記ガソリンのオレフィン含有量を減少させるために、比較例2においては、前記接触触媒ガソリンの30重量%を再精製した。そのことは、前記ガソリンの収量の減少を意味している。一方、前記ガソリンの再精製によって、追加の軽質サイクル油が生成し、その結果、軽質サイクル油の再利用率がより増大した。前記ガソリンのオレフィン含有量は著しく減少するものの、オクタン価は低いままである。
【0148】
比較例3においては、比較例1と比較して、前記ガソリンの生成量が増大し、前記ガソリンのオレフィン含有量が著しく減少している。しかし、前記ガソリンのオクタン価もまた、著しく減少している。
【0149】
比較例4においては、比較例1と比較して、前記ガソリンの生成量が増大し、前記ガソリンのオレフィン含有量が減少している。しかし、前記ガソリンのオクタン価は、まだ低いレベルのままである。
【0150】
比較例5においては、比較例1と比較して、前記ガソリンの生成量が増大し、前記ガソリンのオレフィン含有量が著しく減少している。しかし、前記ガソリンのオクタン価はまだ低い。
【0151】
実施例1においては、比較例1と比較して、前記軽質サイクル油が変換されるのみならず、前記ガソリンの生成量が大幅に増大しており、前記ガソリン生成物のオレフィン含有量がより小さく、前記ガソリン生成物のオクタン価がより高い。実施例1においては、比較例2と比較して、軽質サイクル油の再循環率が低下し、水素消費量が減少し、そして、ガソリンの収量が増大している。前記ガソリン生成物は、オレフィン含有量が小さく、オクタン価が高い。実施例1においては、比較例3と比較して、軽質サイクル油の再利用率が低下し、水素消費量が減少し、ガソリンの収量が増大しており、前記ガソリン生成物のオレフィン含有量が類似しており、前記ガソリン生成物のオクタン価がより高い。実施例1においては、比較例4と比較して、前記軽質ガソリン留分および中質ガソリン留分に再精製により、前記軽質サイクル油が変換されるのみならず、前記ガソリンの収量が増大しており、前記ガソリン生成物のオレフィン含有量が類似しており、前記ガソリン生成物のオクタン価がより高い。実施例1においては、比較例5と比較して、前記水素付加された軽質サイクル油と前記軽質ガソリン留分との混合物における前記軽質ガソリン留分の最精製によって、水素付加された軽質サイクル油の前記分解を促進するだけでなく、ガソリンの収量が増大しており、前記ガソリン生成物のオレフィン含有量がより低くなっており、前記ガソリン生成物のオクタン価がより高い。
【0152】
〔実施例2〕
本実施例は、
図2に示すプロセスフローに従って実施された。前記第1のライザー反応器内部に、第1のノズルを介して、前記重質原料油を噴霧し、接触分解反応を行った。前記第1のライザー反応器における反応条件は、以下の通りであった:反応温度が515℃であり、オイルに対する触媒の比率が6であり、反応時間が3.2秒間であり、反応圧(絶対圧力)が0.32MPaであり、前記重質原料に対する蒸気の重量の割合が0.06であり、前記再生触媒のマイクロ活性(MAT)が62であった。前記第1のライザー反応器に由来する第1反応生成物を、分留のために、第2のライザー反応器に由来する第2反応生成物とともに主要分留塔へ送り、接触分解ガソリンおよび接触分解軽質サイクル油を生成した。
【0153】
前記生成された接触分解ガソリンを蒸留範囲に従ってガソリン分留塔にて分流し、軽質ガソリン留分、中質ガソリン留分および重質ガソリン留分を生成した。それぞれの留分における蒸留範囲は、以下の通りであった:前記軽質ガソリン留分の蒸留範囲は、≦60℃であり、前記中質ガソリン留分の蒸留範囲は、90℃~120℃であり、前記重質ガソリン留分の蒸留範囲は、≧120℃であった。本実施例において、前記軽質ガソリン留分の20重量%および前記中質ガソリン留分の50重量%を、前記第2のライザー反応器へ再循環し、残りのガソリン留分を、後段の吸収-安定化装置に送った。
【0154】
前記生成された接触分解軽質サイクル油を水素処理装置に送り、初留点が180℃であり、二環式芳香族化合物の含量が15重量%であり、かつ、水素の含量が11重量%である、水素付加された軽質サイクル油を生成した。前記水素処理の反応条件は、以下の通りであった:水素分圧が10.0MPaであり、平均床反応温度が354℃であり、体積空間速度が0.5h-1であり、水素/油の体積比が1400Nm3/m3であった。本実施例において、前記水素付加された軽質サイクル油の100重量%を前記第2のライザー反応器へ再循環した。
【0155】
前記中質ガソリン留分を、第3のノズルを介して、前記第2のライザー反応器内部に噴霧し、前記軽質ガソリン留分および前記水素付加された軽質サイクル油からなる混合留分を、第2のノズルを介して前記第2のライザー反応器の中に噴霧した。前記ライザー反応器における、前記第2のノズルと前記第3のノズルとの間の部分における反応時間は、0.2秒間であった。
【0156】
前記第2のライザー反応器における反応条件は、以下の通りであった:反応温度が485℃であり、オイルに対する触媒の比率(前記原料油の総量を基準とした)が20であり、反応時間(本実施例では、第3のノズルを介して噴霧された前記原料油の反応時間を参考にした)が0.8秒間であり、反応圧(絶対圧力)が0.32MPaであり、前記原料油の総量に対する蒸気の重量の割合が0.02であり、前記再生触媒のマイクロ活性(MAT)が62であった。前記第2のライザー反応器へ入れる前に、前記再生触媒を、前記触媒冷却器により620℃の温度に冷却した。前記第2のライザー反応器に由来する第2反応生成物を、分留のために、第1のライザー反応器に由来する第1反応生成物とともに主要分留塔へ送った。反応結果を表4に示す。
【0157】
〔実施例3〕
前記第2のライザー反応器へ再循環される前記再生触媒が冷却されないことを除いて、実施例2に記載のように実験を行った。反応結果を表4に示す。
【0158】
〔比較例6〕
次のことを除いて、実施例2に記載のように実験を行った。前記接触分解ガソリンが分割処理に供されない替わりに、前記第3のノズルを介して前記第2のライザー反応器の中に30重量%の前記接触分解ガソリンが直接噴霧され、前記接触分解ガソリンの残りの部分が後段の吸収-安定化装置へ送られた。前記第2のノズルを介して100重量%の水素付加軽質サイクル油が前記第2のライザー反応器の中に噴霧された。前記第2のライザー反応器へ再循環される前記再生触媒が冷却されなかった。反応結果を表4に示す。
【0159】
〔比較例7〕
次のことを除いて、実施例2に記載のように実験を行った。前記中質ガソリン留分が循環されなかった。50重量%の前記軽質ガソリン留分と100重量%の水素付加軽質サイクル油との混合留分が、前記第2のノズルを介して、前記第2のライザー反応器の中に噴霧された。残りのガソリン留分が後段の吸収-安定化装置へ送られた。前記第2のライザー反応器へ再循環される前記再生触媒が冷却されなかった。反応結果を表4に示す。
【0160】
〔比較例8〕
次のことを除いて、実施例2に記載のように実験を行った。分留(fractional distillation)により得られた前記接触分解ガソリンが前記ライザー反応器へ循環されず、後段の吸収-安定化装置へ直接送られた。100重量%の水素付加軽質サイクル油が、前記第2のノズルを介して、前記第2のライザー反応器の中に噴霧された。前記第2のライザー反応器へ再循環される前記再生触媒が冷却されなかった。反応結果を表4に示す。
【0161】
〔比較例9〕
次のことを除いて、実施例2に記載のように実験を行った。前記軽質ガソリン留分が循環されなかった。100重量%の水素付加軽質サイクル油が、前記第2のノズルを介して、前記第2のライザー反応器の中に噴霧された。50重量%の前記中質ガソリン留分が、前記第3のノズルを介して、前記第2のライザー反応器の中に噴霧され、残りのガソリン留分は、後段の吸収-安定化装置へ送られた。前記第2のライザー反応器へ再循環される前記再生触媒が冷却されなかった。反応結果を表4に示す。
【0162】
【0163】
比較例6では、前記軽質サイクル油は、水素付加され再精製された。それと同時に、前記接触分解ガソリンの一部が直接再精製された。比較例7では、前記軽質サイクル油は、水素付加され、次いで、前記軽質ガソリン留分の一部とともに再精製された。比較例8では、前記軽質サイクル油のみが水素付加され再精製され、前記接触分解ガソリンは再精製されなかった。比較例9では、前記軽質サイクル油は、水素付加され再精製された。それと同時に、前記中質ガソリン留分の一部が再精製された。
【0164】
従来の接触分解方法を採用した比較例1と比較して、比較例6では、軽質サイクル油が変換し、ガソリンの収率が増加した。しかし、接触分解ガソリンの再精製の結果、ガソリン収率が損失した。その一方で、ガソリンの再精製により軽質サイクル油が付加的に生成された結果、軽質サイクル油の再利用率が高くなった。ガソリンのオレフィン含量が顕著に減少したが、オクタン価は低いままであった。
【0165】
比較例1と比較して、比較例7では、ガソリンの生成量が増加し、ガソリンのオレフィン含量が顕著に減少した。しかし、ガソリンのオクタン価も顕著に減少した。
【0166】
比較例1と比較して、比較例8では、ガソリンの生成量が増加し、ガソリンのオレフィン含量が減少した。しかし、ガソリンのオクタン価は、低いレベルのままであった。
【0167】
比較例1と比較して、比較例9では、ガソリンの生成量が増加し、ガソリンのオレフィン含量が顕著に減少した。しかし、ガソリンのオクタン価は、低いままであった。
【0168】
比較例1と比較して、実施例2および3では、軽質サイクル油の変換だけでなく、ガソリンの生成量も非常に増加するとともに、ガソリン生成物は、低いオレフィン含量および高いオクタン価を示した。比較例6と比較して、実施例2および3では、軽質サイクル油の再利用率が減少し、水素消費量が減少し、ガソリンの収率が増加するとともに、ガソリン生成物は、低いオレフィン含量および高いオクタン価を示した。比較例7と比較して、実施例2および3では、軽質サイクル油の再利用率が減少し、水素消費量が減少し、ガソリンの収率が増加するとともに、ガソリン生成物は、低いオレフィン含量および高いオクタン価を示した。比較例8と比較して、実施例2および3では、軽質サイクル油の変換だけでなく、ガソリンの生成量も増加するとともに、軽質ガソリン留分および中質ガソリン留分の再精製により、ガソリン生成物は、低いオレフィン含量および高いオクタン価を示した。比較例9と比較して、実施例2および3では、水素付加軽質サイクル油の分解が促進されるだけでなくガソリンの収率が増加するとともに、水素付加軽質サイクル油との混合物における軽質ガソリン留分の再精製により、ガソリン生成物は、低いオレフィン含量および高いオクタン価を示した。
【0169】
実施例3と比較して、実施例2では、前記第2のライザー反応器に入る前記再生触媒の温度が低いことにより、生成物の分布がさらに改善され、乾燥ガスおよびコークスの収率が減少し、ガソリンの収率が増加するとともに、ガソリン生成物は、低いオレフィン含量および高いオクタン価を示した。
【0170】
上述の説明において、本発明の概念は、特定の実施形態を参照して記載されている。しかし、添付された特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱しない限り、種々の改変および変更が可能であると認められる。従って、明細書および図面は、限定的な意味よりむしろ、例示的な意味とされ、そのような改変および変更も本発明の範囲内に含まれることを意図する。
【0171】
本明細書において明確にするため別個の実施形態内に記載された種々の特徴も、単一の実施形態に組み合わせて提供されるであろう。一方、単一の実施形態内に省略して記載された種々の特徴も、別個に、または任意の組み合わせで提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0172】
【
図1】本発明に係る方法の好ましい実施形態の概略的なフロー図である。
【
図2】本発明に係る方法の好ましい他の実施形態の概略的なフロー図である。