(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】内視鏡システム、プロセッサ
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20230322BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
A61B1/00 735
A61B1/00 640
G02B23/24 B
(21)【出願番号】P 2018227499
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】西原 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 翔
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/015877(WO,A1)
【文献】特開2009-142586(JP,A)
【文献】国際公開第2012/017735(WO,A1)
【文献】特開2011-087910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡と、前記内視鏡が接続されるプロセッサと、を備える内視鏡システムであって、
前記内視鏡は、
移動可能な光学素子を含む、被検体の光学像を結像するための対物光学系と、
前記光学素子を移動するアクチュエータと、
前記光学素子の位置に応じた位置検出信号を出力する位置センサと、
前記位置センサから出力される前記位置検出信号を増幅するセンサ増幅回路と、を備え、
前記プロセッサは、
前記アクチュエータを駆動するドライバ回路と、
前記位置センサに電流を供給するセンサ駆動回路と、
前記センサ増幅回路に基準電圧値の信号を供給する基準電圧回路と、
前記プロセッサの個体ばらつきに起因する前記位置検出信号のずれを補正するための
0次補正係数C0pおよび1次補正係数C1pを含むプロセッサ個体補正データを記憶するプロセッサメモリ回路と、
前記内視鏡から受信したアナログの前記位置検出信号をデジタルの前記位置検出信号に変換するA/D変換器と、
前記プロセッサ個体補正データに基づいて、
前記A/D変換器により変換されたデジタルの前記位置検出信号のずれを
、前記0次補正係数C0pおよび前記1次補正係数C1pを用いて1次式により補正する第1補正部と、
前記光学素子の目標位置と、前記第1補正部により補正された前記位置検出信号とに基づいて、前記光学素子の位置が前記目標位置になるように前記ドライバ回路を制御するコントローラと、を備え
、
前記0次補正係数C0pおよび前記1次補正係数C1pは、前記センサ駆動回路が供給する電流の電流値a1′と、前記電流値の目標値a1と、前記基準電圧値b3′と、前記基準電圧値の目標値b3と、前記A/D変換器のゲインa4′と、前記ゲインの目標値a4と、前記A/D変換器のオフセットb4′と、に基づき、
C1p=a1×a4/(a1′×a4′)
C0p=a4×b3
-a1×a4/(a1′×a4′)×(a4′×b3′+b4′)
として算出されたものであることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記内視鏡は、
前記内視鏡の個体ばらつきに起因する前記位置検出信号のずれを補正するための内視鏡個体補正データを記憶する内視鏡メモリ回路をさらに備え、
前記プロセッサは、
前記内視鏡個体補正データを取得して、前記内視鏡個体補正データに基づいて、前記位置検出信号のずれを補正する第2補正部をさらに備え、
前記コントローラは、前記第1補正部および前記第2補正部により補正された前記位置検出信号に基づいて、前記ドライバ回路を制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記第2補正部は、前記第1補正部の後段に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記第2補正部は、前記第1補正部から受信した前記位置検出信号を、0次補正係数C0sおよび1次補正係数C1sを用いて1次式により補正するものであり、
前記内視鏡個体補正データは、前記0次補正係数C0sおよび前記1次補正係数C1sを含むことを特徴とする請求項3に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記内視鏡は、前記光学素子と一体的に移動するように構成された磁石をさらに備え、
前記位置センサは、前記内視鏡内に固定されたホール素子を含み、
前記磁石から前記ホール素子に印加される磁束密度が、前記光学素子および前記磁石の移動に応じて変化することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記センサ駆動回路は、前記ホール素子に一定の電流値の電流を供給する定電流回路であることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記センサ増幅回路は、印加される磁束密度に応じて前記ホール素子に生じる電圧を増幅する差動増幅回路であることを特徴とする請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記光学素子は、前記対物光学系のフォーカス位置またはズーム位置を調整するための可動レンズであり、
前記アクチュエータは、前記可動レンズを前記対物光学系の光軸方向に移動し、
前記位置センサは、前記可動レンズの前記光軸方向の位置に応じた前記位置検出信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
対物光学系に含まれる光学素子をアクチュエータにより移動して位置センサにより前記光学素子の位置に応じた位置検出信号を出力する内視鏡を接続して、前記内視鏡を制御するプロセッサであって、
前記アクチュエータを駆動するドライバ回路と、
前記位置センサに電流を供給するセンサ駆動回路と、
前記内視鏡に設けられた前記位置検出信号を増幅するセンサ増幅回路に、基準電圧値の信号を供給する基準電圧回路と、
前記プロセッサの個体ばらつきに起因する前記位置検出信号のずれを補正するための0次補正係数C0pおよび1次補正係数C1pを含むプロセッサ個体補正データを記憶するプロセッサメモリ回路と、
前記内視鏡から受信したアナログの前記位置検出信号をデジタルの前記位置検出信号に変換するA/D変換器と、
前記プロセッサ個体補正データに基づいて、前記A/D変換器により変換されたデジタルの前記位置検出信号のずれを、前記0次補正係数C0pおよび前記1次補正係数C1pを用いて1次式により補正する第1補正部と、
前記光学素子の目標位置と、前記第1補正部により補正された前記位置検出信号とに基づいて、前記光学素子の位置が前記目標位置になるように前記ドライバ回路を制御するコントローラと、
を備え、
前記0次補正係数C0pおよび前記1次補正係数C1pは、前記センサ駆動回路が供給する電流の電流値a1′と、前記電流値の目標値a1と、前記基準電圧値b3′と、前記基準電圧値の目標値b3と、前記A/D変換器のゲインa4′と、前記ゲインの目標値a4と、前記A/D変換器のオフセットb4′と、に基づき、
C1p=a1×a4/(a1′×a4′)
C0p=a4×b3
-a1×a4/(a1′×a4′)×(a4′×b3′+b4′)
として算出されたものであることを特徴とするプロセッサ。
【請求項10】
前記内視鏡の内視鏡メモリ回路から前記内視鏡の個体ばらつきに起因する前記位置検出信号のずれを補正するための内視鏡個体補正データを取得して、前記内視鏡個体補正データに基づいて、前記位置検出信号のずれを補正する第2補正部をさらに備え、
前記コントローラは、前記第1補正部および前記第2補正部により補正された前記位置検出信号に基づいて、前記ドライバ回路を制御するものであることを特徴とする請求項9に記載のプロセッサ。
【請求項11】
前記第2補正部は、前記第1補正部の後段に配置されていることを特徴とする請求項10に記載のプロセッサ。
【請求項12】
前記第2補正部は、前記第1補正部から受信した前記位置検出信号を、前記内視鏡個体補正データに含まれる0次補正係数C0sおよび1次補正係数C1sを用いて1次式により補正するものであることを特徴とする請求項10に記載のプロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡とプロセッサとが接続される内視鏡システム、内視鏡を制御するプロセッサに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡システムは、例えば、被検体を観察するための内視鏡と、内視鏡を制御するためのプロセッサと、を備えている。このような内視鏡システムにおいて、被検体を観察するための対物光学系の結像状態(例えば、フォーカス位置、ズーム位置)を調節可能とする構成が提案されている。
【0003】
内視鏡の焦点調節制御に関連する技術として、例えば特開2013-128663号公報に記載の内視鏡システムが挙げられる。該公報に記載の内視鏡システムは、形状記憶素子を有し、対物光学系を移動させるための移動部材を駆動するアクチュエータと、アクチュエータを駆動するアクチュエータ駆動部と、移動部材の位置を検出するために形状記憶素子の抵抗値を検出する抵抗値検出部と、対物光学系の動作指示を入力する指示入力部と、指示入力部に入力された指示と、抵抗値検出部により検出された抵抗値に対応する移動部材の位置に基づいて、アクチュエータ駆動部への駆動信号を出力する制御部と、制御部に接続された記憶部と、を備えている。そして、制御部は、キャリブレーションが指示された時、所定の開始電流値から所定の最大電流値まで所定の割合で単調増加する電流をアクチュエータへ供給するための駆動信号を、アクチュエータ駆動部へ出力すると共に、抵抗値検出部により検出された形状記憶素子の抵抗値の二次微分値の絶対値が所定の閾値以上となった抵抗値を記憶部に記憶することが記載されている。このような構成により、対物光学系を、例えば遠点フォーカス位置と近点フォーカス位置とへ移動するようになっている。
【0004】
ところで、焦点調節を正確に行うためには、対物光学系内において移動するレンズ(フォーカスレンズなど)の位置を正確に検出することが必要となる。
【0005】
レンズ位置を検出する技術の一例として、特開2009-47951号公報には、撮像レンズと、撮像レンズ内に設けられ光軸に対して可動する補正レンズと、補正レンズと一体に保持されたホール素子と、補正レンズを駆動する駆動コイルと、駆動コイルに相対して保持されたマグネットと、ホール素子に電流を供給する電流供給回路と、ホール素子の一方の出力が基準電圧と同一になるようにホール素子の電源電圧を制御する第1の差動増幅器と、ホール素子の出力を増幅する電圧増幅回路と、電圧増幅回路の入力電圧にオフセットを与える電圧補正回路と、を備えるレンズ位置検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-128663号公報
【文献】特開2009-47951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特開2009-47951号公報に記載の技術では、位置検出信号の調整を行うための複数のスイッチや複数の抵抗を備える専用の回路構成が必要となるために、回路基板の大型化や部品コストの増大などを招いてしまう。該公報において想定しているのはデジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラであるために、幾らかの大型化は許容されるかもしれないが、内視鏡は特に小型化が要求される分野であるために、該公報に記載の技術をそのまま適用することは適切でない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、装置の大型化を抑制しながら高精度の位置検出を行うことが可能な内視鏡システム、プロセッサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による内視鏡システムは、内視鏡と、前記内視鏡が接続されるプロセッサと、を備える内視鏡システムであって、前記内視鏡は、移動可能な光学素子を含む、被検体の光学像を結像するための対物光学系と、前記光学素子を移動するアクチュエータと、前記光学素子の位置に応じた位置検出信号を出力する位置センサと、前記位置センサから出力される前記位置検出信号を増幅するセンサ増幅回路と、を備え、前記プロセッサは、前記アクチュエータを駆動するドライバ回路と、前記位置センサに電流を供給するセンサ駆動回路と、前記センサ増幅回路に基準電圧値の信号を供給する基準電圧回路と、前記プロセッサの個体ばらつきに起因する前記位置検出信号のずれを補正するための0次補正係数C0pおよび1次補正係数C1pを含むプロセッサ個体補正データを記憶するプロセッサメモリ回路と、前記内視鏡から受信したアナログの前記位置検出信号をデジタルの前記位置検出信号に変換するA/D変換器と、前記プロセッサ個体補正データに基づいて、前記A/D変換器により変換されたデジタルの前記位置検出信号のずれを、前記0次補正係数C0pおよび前記1次補正係数C1pを用いて1次式により補正する第1補正部と、前記光学素子の目標位置と、前記第1補正部により補正された前記位置検出信号とに基づいて、前記光学素子の位置が前記目標位置になるように前記ドライバ回路を制御するコントローラと、を備え、前記0次補正係数C0pおよび前記1次補正係数C1pは、前記センサ駆動回路が供給する電流の電流値a1′と、前記電流値の目標値a1と、前記基準電圧値b3′と、前記基準電圧値の目標値b3と、前記A/D変換器のゲインa4′と、前記ゲインの目標値a4と、前記A/D変換器のオフセットb4′と、に基づき、
C1p=a1×a4/(a1′×a4′)
C0p=a4×b3
-a1×a4/(a1′×a4′)×(a4′×b3′+b4′)
として算出されたものである。
【0010】
本発明の他の態様によるプロセッサは、対物光学系に含まれる光学素子をアクチュエータにより移動して位置センサにより前記光学素子の位置に応じた位置検出信号を出力する内視鏡を接続して、前記内視鏡を制御するプロセッサであって、前記アクチュエータを駆動するドライバ回路と、前記位置センサに電流を供給するセンサ駆動回路と、前記内視鏡に設けられた前記位置検出信号を増幅するセンサ増幅回路に、基準電圧値の信号を供給する基準電圧回路と、前記プロセッサの個体ばらつきに起因する前記位置検出信号のずれを補正するための0次補正係数C0pおよび1次補正係数C1pを含むプロセッサ個体補正データを記憶するプロセッサメモリ回路と、前記内視鏡から受信したアナログの前記位置検出信号をデジタルの前記位置検出信号に変換するA/D変換器と、前記プロセッサ個体補正データに基づいて、前記A/D変換器により変換されたデジタルの前記位置検出信号のずれを、前記0次補正係数C0pおよび前記1次補正係数C1pを用いて1次式により補正する第1補正部と、前記光学素子の目標位置と、前記第1補正部により補正された前記位置検出信号とに基づいて、前記光学素子の位置が前記目標位置になるように前記ドライバ回路を制御するコントローラと、を備え、前記0次補正係数C0pおよび前記1次補正係数C1pは、前記センサ駆動回路が供給する電流の電流値a1′と、前記電流値の目標値a1と、前記基準電圧値b3′と、前記基準電圧値の目標値b3と、前記A/D変換器のゲインa4′と、前記ゲインの目標値a4と、前記A/D変換器のオフセットb4′と、に基づき、
C1p=a1×a4/(a1′×a4′)
C0p=a4×b3
-a1×a4/(a1′×a4′)×(a4′×b3′+b4′)
として算出されたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の内視鏡システム、プロセッサによれば、装置の大型化を抑制しながら高精度の位置検出を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1における、内視鏡とプロセッサとが着脱可能に接続された内視鏡システムの構成を示す図。
【
図2】上記実施形態1において、対物光学系の駆動に関連する、内視鏡およびプロセッサの電気的および光学的な構成の要部を示す図。
【
図3】上記実施形態1において、可動レンズの位置を検出するための位置検出回路の構成例を示す図。
【
図4】上記実施形態1の情報伝達経路上における位置情報を担う信号等の分類を示す図表。
【
図5】上記実施形態1の情報伝達経路上において位置情報が変化する際のパラメータを示す図表。
【
図6】上記実施形態1において、プロセッサにより行われる位置検出信号の補正処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[実施形態1]
【0015】
図1から
図6は本発明の実施形態1を示したものであり、
図1は内視鏡2とプロセッサ3とが着脱可能に接続された内視鏡システム1の構成を示す図である。
【0016】
本実施形態における撮像装置としての内視鏡システム1は、例えば、被検体の光学像を撮像して撮像信号を出力する電子内視鏡システムとして構成されている。ここに、内視鏡システム1は、医療用、工業用、学術等のその他用の、何れでも構わない。
【0017】
内視鏡システム1は、内視鏡2と、内視鏡2とは別体に構成されたプロセッサ3と、を備えている。プロセッサ3は、照明光を発光する光源装置4と、内視鏡2からの撮像信号を処理するビデオプロセッサ5と、ビデオプロセッサ5から出力される映像信号に基づき内視鏡画像を表示するモニタ6と、を備えている。なお、モニタ6は、プロセッサ3に含まれるに限るものではなく、別途の外付けモニタをプロセッサ3に接続して用いても構わない。また、光源装置4は、ビデオプロセッサ5と一体に構成されていても構わない。
【0018】
内視鏡2は、被検体内に挿入される細長の挿入部11と、挿入部11の基端側に設けられた操作部12と、操作部12の例えば側部から延出されたユニバーサルコード13と、を備え、後述するように電子内視鏡として構成されている。ただし、内視鏡2は、後述するようなアクチュエータ23(
図2参照)により対物光学系21(
図2参照)を駆動する構成であれば、電子内視鏡に限定されるものではなく光学内視鏡であっても構わない。
【0019】
挿入部11は、先端側から基端側に向かって順に、先端部11aと、湾曲部11bと、可撓管部11cと、を備えている。なお、ここでは内視鏡2が軟性鏡である場合を例に挙げるが、硬性鏡であっても構わない。
【0020】
先端部11aの内部には、対物光学系21、撮像素子22(
図2参照)、アクチュエータ23、磁石24(
図2参照)、位置センサ25(
図2、
図3等参照)などが配設されている。
【0021】
操作部12は、鉗子口12aと、グリップ部12bと、ユーザ操作部12cと、を備えている。
【0022】
鉗子口12aは、挿入部11内に設けられた鉗子チャンネルの基端側の開口部である。一方、鉗子チャンネルの先端側の開口部は、先端部11aに配置されている。そして、鉗子口12aから鉗子などの処置具を挿入して先端部11aから突出させることで、処置具により被検体に対する各種の処置を行うことができるようになっている。
【0023】
グリップ部12bは、内視鏡2を操作する術者が手で把持する部位である。
【0024】
ユーザ操作部12cは、内視鏡2を含む内視鏡システム1に対する各種の操作を術者が行うための部位である。
【0025】
ユーザ操作部12cは、2つの湾曲操作部14と、送気送水ボタン15と、吸引ボタン16と、スイッチ部17と、を備えている。
【0026】
2つの湾曲操作部14の内の、一方は湾曲部11bを上下方向に湾曲操作するためのもの、他方は湾曲部11bを左右方向に湾曲操作するためのとなっている。そして、上下の湾曲と左右の湾曲とを組み合わせることで、湾曲部11bを所望の方向に湾曲操作することが可能となっている。
【0027】
送気送水ボタン15は、例えば上述した鉗子チャンネルを経由して、先端部11a側へ送気/送水するための操作ボタンである。
【0028】
吸引ボタン16は、例えば上述した鉗子チャンネルを経由して、先端部11a側から吸引を行うための操作ボタンである。
【0029】
スイッチ部17は、複数のスイッチ17aを備えて構成されており、主に撮像に関連する操作が行われる。例えば、あるスイッチ17aは静止画像を撮像するためのレリーズボタンとして機能し、他のあるスイッチ17aはモニタ6により観察中の映像を静止するためのフリーズボタンとして機能し、さらに他のあるスイッチ17aは対物光学系21のフォーカス位置を調整するためのフォーカスボタン(または、ズーム位置を調整するためのズームボタンでも構わない)として機能するようになっている。
【0030】
ユニバーサルコード13は、ライトガイドバンドルおよび信号線を内蔵している。ここに、ライトガイドバンドルは、光源装置4で発生した照明光を、先端部11aの照明窓から被検体へ照射するために伝送するものである。また、信号線は、撮像素子22の撮像に関連する各種の信号、アクチュエータ23の駆動や位置検出に関連する各種の信号、および内視鏡情報の伝達などに用いられるものである。
【0031】
ユニバーサルコード13の基端には、光源装置4に着脱自在に接続するためのスコープコネクタ13aが設けられている。そして、スコープコネクタ13aを光源装置4に接続することで、ライトガイドバンドルの基端に照明光が供給され得る状態となる。
【0032】
また、スコープコネクタ13aの例えば側部から、上述した信号線を内蔵するスコープケーブル13bが延出されている。スコープケーブル13bの基端には、ビデオプロセッサ5に着脱自在に接続するための電気コネクタ13cが設けられている。そして、電気コネクタ13cをビデオプロセッサ5のコネクタ受け5aに接続することで、信号線を経由して、内視鏡2の電気回路とビデオプロセッサ5の電気回路とが接続される。なお、スコープケーブル13bは、スコープコネクタ13aに対して着脱可能であっても構わないし、ユニバーサルコード13およびスコープケーブル13bと一体に構成されていてもよい。
【0033】
ビデオプロセッサ5は、内視鏡2へ電力を供給して、内視鏡2の電気的な構成を制御するものである。また、ビデオプロセッサ5は、内視鏡2の撮像素子22から得られた撮像信号を処理して映像信号を生成する。
【0034】
モニタ6は、例えばカラーモニタとして構成されており、ビデオプロセッサ5に接続されている。そして、モニタ6は、ビデオプロセッサ5により処理された映像信号を受けて、内視鏡画像を表示する。さらに、モニタ6には、内視鏡システム1に係る各種の情報なども表示することができるようになっている。
【0035】
次に、
図2は、対物光学系21の駆動に関連する、内視鏡2およびプロセッサ3の電気的および光学的な構成の要部を示す図である。なお、
図2において、細線の矢印はデジタル信号の流れを示し、通常の太さの矢印はアナログ信号の流れを示している(ただし、
図2に示すのは、デジタル信号とアナログ信号との区分けを示す単なる一例である)。
【0036】
内視鏡2は、上述したように、対物光学系21、撮像素子22、アクチュエータ23、磁石24、位置センサ25、およびユーザ操作部12cを備えると共に、さらにセンサ増幅回路26、および内視鏡メモリ27を備えている。
【0037】
対物光学系21は、被検体の光学像(被検体像)を撮像素子22の撮像面に結像する。対物光学系21は可動レンズ21aを備えており、可動レンズ21aは、対物光学系21の光軸Oの方向に移動可能な光学素子である。可動レンズ21aが光軸Oの方向に移動すると、対物光学系21の結像状態が調整され、例えばフォーカス位置(または、ズーム位置でも構わない)が変更される。従って、可動レンズ21aは、例えばフォーカスレンズ(またはズームレンズ)として機能する。なお、ここでは移動可能な光学素子として可動レンズ21aを例に挙げているが、レンズに限定されるものではなく、光学フィルタ、光学絞り、ミラーなどのその他の光学素子であっても構わない。
【0038】
撮像素子22は、撮像面に複数の画素が配列されており、対物光学系21により結像された被検体像を各画素で光電変換することにより、複数の画素信号で構成される撮像信号を生成する。なお、対物光学系21および撮像素子22を含んで撮像装置の撮像系が構成されている。
【0039】
アクチュエータ23は、可動レンズ21aを光軸O方向に移動するものであり、例えば電磁力によって駆動力を発生させるボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)として構成されている(ただし、ボイスコイルモータに限定されるものではない)。
【0040】
また、磁石24は、永久磁石等で構成されていて、可動レンズ21aと光軸O方向に一体的に移動するように配置されている。磁石24が発生する磁場は、位置センサ25が、磁石24と一体的に移動する可動レンズ21aの位置を検出するために用いられる。ここに、アクチュエータ23として例えばボイスコイルモータを用いる場合には、磁石24はボイスコイルモータの一部を兼ねることができる(先端部11aの小型化を達成する観点からは、この構成を採用するとよい)。
【0041】
具体的に、例えば、可動レンズ21aを保持する可動枠などの可動部には磁石24が固定されており、可動枠を光軸O方向に移動可能に保持する固定枠などの固定部にはアクチュエータ23のコイルが取り付けられている。そして、磁石24が発生する磁界中にあるコイルに電流を印加することにより、コイルにローレンツ力が発生し、固定枠が固定されているために、ローレンツ力の反作用により可動部が光軸O方向に移動する。
【0042】
なお、ここでムービングマグネット型のボイスコイルモータを採用したのは、可動部側に電流を印加する構成よりも、固定部側に電流を印加する構成の方がアクチュエータ23を容易に小型化できるため(位置が移動する可動部側に電流を印加するには、例えばフレキシブルプリント基板を用いる等が必要となるため)である。従って、ムービングコイル型のボイスコイルモータの採用を禁止するものではない。
【0043】
位置センサ25は、磁石24に対向するように固定部側に固定して配置されており、可動レンズ21aの光軸O方向の位置を検出して位置検出信号を出力する位置センサである。本実施形態における位置センサ25は、例えば、磁石24が発生する磁界の磁束密度に応じた位置検出信号(ホール検出信号)を出力するホール素子等の磁気センサを用いるものとするが、ホール素子に限定されるものではない。
【0044】
センサ増幅回路26は、位置センサ25から出力されたアナログの位置検出信号を増幅するものである。本実施形態におけるセンサ増幅回路26は、例えば、磁界中にあるホール素子に印加される磁束密度に応じて生じるホール電圧を増幅する差動増幅回路を用いるものとするが、これに限定されるものではない。
【0045】
なお、位置センサ25およびセンサ増幅回路26の具体的な構成例については、後で
図3を参照して説明する。
【0046】
内視鏡メモリ27は、内視鏡個体補正データを記憶する不揮発性のメモリ回路(内視鏡メモリ回路)である。位置検出信号のずれは、内視鏡2側で生じる場合と、プロセッサ3側で生じる場合と、がある。そこで、内視鏡メモリ27は、内視鏡2側で生じる位置検出信号のずれを補正するための内視鏡個体補正データを記憶する。
【0047】
データ名「内視鏡個体補正データ」が示すように、位置検出信号のずれは、内視鏡2の機種に応じて異なるだけでなく、同一機種であっても内視鏡2の個体毎に異なる。そこで、内視鏡個体補正データは、内視鏡2の個体ばらつき(本実施形態の構成においては、可動レンズ21aに対する磁石24の取り付け位置のばらつき、磁石24に対する位置センサ25の取り付け位置のばらつき、磁石24の磁化のばらつき、位置センサ25の電気的特性のばらつき、センサ増幅回路26の電気的特性のばらつき等)に起因して生じる位置検出信号のずれを適切に補正するためのデータとなっている。
【0048】
また、内視鏡メモリ27には、内視鏡2の機種情報(型番など)や製造番号、その他の内視鏡2に関連する各種の情報などがさらに記憶されている。
【0049】
ユーザ操作部12cは、上述したように、対物光学系21の結像状態(フォーカス位置、ズーム位置など)を調整するためのスイッチ17aを備えている。すなわち、ユーザがユーザ操作部12cを操作することにより、可動レンズ21aの目標位置を示す指示信号がユーザ操作部12cからプロセッサ3側へ送信される。一例を挙げれば、ユーザ操作部12cにより、可動レンズ21aの目標位置を、遠点フォーカス位置と近点フォーカス位置との何れにするかが設定される(ただし、遠点と近点との2点フォーカスに限定されるものではなく、連続的にフォーカス位置(または、ズーム位置)を変更するようにしても構わないことは勿論である)。
【0050】
なお、ここでは、ユーザ操作部12cからの設定による手動フォーカスを説明したが、これに限定されるものではなく、撮像素子22から得られた撮像信号に基づくオートフォーカス等を行っても構わない。
【0051】
上述したように、内視鏡2は、スコープコネクタ13aを光源装置4に着脱可能に接続し、電気コネクタ13cをビデオプロセッサ5のコネクタ受け5aに着脱可能に接続することで、プロセッサ3と着脱可能となっている。
【0052】
内視鏡2とプロセッサ3とが、電気コネクタ13cおよびコネクタ受け5aを経由して送受信する信号は、例えば以下のようになっている。
【0053】
内視鏡2は、ユーザ操作部12cからの指示信号と、センサ増幅回路26からの位置検出信号と、内視鏡メモリ27のデータとを、プロセッサ3へ送信する。また、内視鏡2は、アクチュエータ23への駆動信号と、センサ増幅回路26への電源供給信号および基準電圧信号と、位置センサ25へのホール素子電流信号と、基準となるグランド信号(GND)とを、プロセッサ3から受信する(後述する
図3も参照)。
【0054】
プロセッサ3は、内視鏡システム1を制御して、光源装置4により照明光を発光し、内視鏡2から撮像信号を取得する。そして、ビデオプロセッサ5は、撮像信号を処理して映像信号を生成し、映像信号をモニタ6へ出力して内視鏡画像等をモニタ6に表示させる。プロセッサ3に係る照明および映像信号処理に関連する構成や作用は、公知技術を適宜利用することができるために、詳細な説明を省略する。
【0055】
そして、プロセッサ3は、対物光学系21の駆動に関連する構成として、ドライバ回路31と、電流検出回路32と、ADC33と、ADC34と、センサ駆動回路35と、基準電圧回路36と、プロセッサメモリ37と、駆動制御回路38と、を備えている。
【0056】
ドライバ回路31は、駆動制御回路38の制御に基づいて、アクチュエータ23へ駆動信号を出力し、アクチュエータ23を駆動する。具体的に、ドライバ回路31が、所定の電流値の駆動信号をアクチュエータ23のコイルへ印加することで、可動レンズ21aおよび磁石24を含む可動部が電磁力で移動される。
【0057】
電流検出回路32は、ドライバ回路31からアクチュエータ23へ供給される駆動信号の電流値を検出して、アナログの電流検出信号を出力する。
【0058】
ADC33は、電流検出回路32から出力されたアナログの電流検出信号を、デジタルの電流検出信号に変換するアナログ・デジタル・コンバータ(A/D変換器)である。
【0059】
ADC34は、位置センサ25から出力されセンサ増幅回路26により増幅されたアナログの位置検出信号を、デジタルの位置検出信号に変換するアナログ・デジタル・コンバータ(A/D変換器)である。
【0060】
センサ駆動回路35は、例えばホール素子として構成された位置センサ25に、一定の電流値の電流(定電流)であるホール素子電流を供給する定電流回路である。
【0061】
基準電圧回路36は、例えば差動増幅回路として構成されたセンサ増幅回路26に、基準電圧となるオフセット電圧の信号を供給する。
【0062】
プロセッサメモリ37は、プロセッサ個体補正データを記憶する不揮発性のメモリ回路(プロセッサメモリ回路)である。上述した内視鏡個体補正データが、内視鏡2の個体ばらつきに起因して生じる位置検出信号のずれを適切に補正するためのデータであるのに対して、プロセッサ個体補正データは、プロセッサ3の個体ばらつき(本実施形態の構成においては、基準電圧回路36の電気的特性のばらつき、センサ駆動回路35の電気的特性のばらつき、およびADC34の電気的特性のばらつき等)に起因して生じる位置検出信号のずれを適切に補正するためのデータである。
【0063】
また、プロセッサメモリ37には、内視鏡2の機種情報や製造番号に応じて予め分かっているアクチュエータ23、位置センサ25、センサ増幅回路26などの情報が、データベースとして記憶されている。
【0064】
さらに、プロセッサメモリ37には、プロセッサ3の機種情報(型番など)や製造番号、プロセッサ3において実行される処理プログラム、プロセッサ3内で使用される各種のパラメータ、ユーザにより内視鏡システム1に対して設定された設定値、その他のプロセッサ3に関連する各種の情報などがさらに記憶されている。
【0065】
駆動制御回路38は、例えばCPUなどの演算処理回路を含んで構成され、各処理部としての機能を果たすようになっている。そして、駆動制御回路38は、位置検出信号が示す可動レンズ21aの位置が、ユーザ操作部12cからの指示信号が示す目標位置に一致するように、ドライバ回路31を制御するコントローラ(制御回路)である。
【0066】
具体的に、駆動制御回路38は、補正部である第1補正部41および第2補正部42と、フィードバックコントローラ43と、定電流制御部44と、を含んでいる。
【0067】
第1補正部41は、プロセッサメモリ37からプロセッサ個体補正データを取得して、取得したプロセッサ個体補正データに基づき、ADC34から出力されるデジタルの位置検出信号に、上述したようなプロセッサ3個体に起因するばらつきの補正を行う。
【0068】
第2補正部42は、例えば第1補正部41の後段に配置されていて、内視鏡メモリ27から内視鏡個体補正データを取得して、取得した内視鏡個体補正データに基づき、第1補正部41により補正された位置検出信号に、上述したような内視鏡2の個体に起因するばらつきの補正を行う。
【0069】
フィードバックコントローラ43は、第2補正部42から出力された位置検出信号(従って、第1補正部41および第2補正部42により補正された位置検出信号)が示す可動レンズ21aの現在の位置と、ユーザ操作部12cからの指示信号が示す可動レンズ21aの目標位置と、の差分に基づいて、差分が0になるような(つまり、可動レンズ21aの位置が目標位置になるような)電流値を定電流制御部44へ指示する。
【0070】
定電流制御部44は、電流検出回路32により検出されADC33によりデジタル化された電流検出信号が示す電流値に基づいて、フィードバックコントローラ43により指示された電流値の電流が出力されるように、ドライバ回路31を制御する。これによりドライバ回路31が、指示された電流値の電流をアクチュエータ23へ供給する。
【0071】
こうして、コントローラ(制御回路)を構成するフィードバックコントローラ43および定電流制御部44は、可動レンズ21aが目標位置に到達するようにフィードバック制御を行っている。
【0072】
なお、本実施形態では、電流検出回路32およびADC33により電流検知を行った結果に基づいて、アクチュエータ23へ供給する電流を定電流制御部44が制御するようにしていたが、これに限定されるものではなく電流検知を行わない構成であっても構わない。
【0073】
例えば、予め抵抗値がわかっているアクチュエータ23に対して、PWM(パルス幅変調:Pulse Width Modulation)などの電圧制御を行った電流を印加するようなドライバ回路31を用いる構成であってもよい。この場合に、
図2に示す構成において、電流検出回路32、ADC33、および定電流制御部44を削除し、フィードバックコントローラ43の出力に基づき、ドライバ回路31からアクチュエータ23へ供給する信号の電圧を制御する電圧制御部を駆動制御回路38に設ければよい。
【0074】
またさらに、ドライバ回路31からアクチュエータ23へ供給する信号は、電流制御と電圧制御との両方を行ったものであっても構わない。
【0075】
次に、
図3は、可動レンズ21aの位置を検出するための位置検出回路の構成例を示す図である。
【0076】
上述したように、位置センサ25は例えばホール素子として構成され、センサ増幅回路26は例えば差動増幅回路として構成されていて、
図3はこのような構成例の回路を具体的に示している。
【0077】
ホール素子は、磁束密度の大きさに応じた検出信号を出力する素子である。すなわち、ホール素子に印加したホール素子電流(定電流)に対して、電流方向に垂直な方向に磁場をかけると、キャリア(電子、正孔など)が、電流方向(i方向とする)と磁場方向(B方向とする)との両方に垂直な方向(i×B方向とする)のローレンツ力を受ける。これにより、ホール素子のi×B方向の両端面におけるキャリアの分布密度に差異が生じ、電圧(ホール電圧)が表れる。このホール電圧に応じた信号を検出することで、ホール素子が受けている磁束密度の大きさを測定することができる。
【0078】
従って、可動レンズ21aと一体に移動する磁石24が発生する磁束密度をホール素子として構成された位置センサ25で測定することで、磁石24の位置、ひいては可動レンズ21aの位置を測定することができるようになっている。このような理由から、位置センサ25から出力されるホール電圧に応じた信号を、位置検出信号と呼んでいる。
【0079】
プロセッサ3のセンサ駆動回路35は、位置センサ25のIN+端子とIN-端子との間に、上述したホール素子電流を印加する。また、上述したホール素子のi×B方向の両端面には、OUT+端子およびOUT-端子が設けられている。
【0080】
センサ増幅回路26は、例えば、OPアンプなどで構成される差動増幅器26aと、抵抗26b,26c,26d,26eと、を含む差動増幅回路として構成されている。
【0081】
位置センサ25のOUT+端子は、抵抗26cを経由して差動増幅器26aの+端子に接続され、位置センサ25のOUT-端子は、抵抗26bを経由して差動増幅器26aの-端子に接続されている。
【0082】
差動増幅器26aの+端子は、抵抗26eを経由して基準電圧回路36の差動増幅基準電圧電源36bに接続されている。差動増幅器26aの-端子は、抵抗26dを経由して差動増幅器26aの出力端子に接続されている。さらに、差動増幅器26aには、基準電圧回路36の電源36aから駆動電流が供給されるようになっている。そして、差動増幅器26aの出力端子は、プロセッサ3のADC34に接続されている。ADC34は、上述したように、駆動制御回路38の第1補正部41へ接続されている。
【0083】
続いて、
図2から
図5を参照して、可動レンズ21aの位置情報が、駆動制御回路38のフィードバックコントローラ43に入力されるまでの情報伝達経路上における、情報の変化について説明する。ここに、
図4は情報伝達経路上における位置情報を担う信号等の分類を示す図表、
図5は情報伝達経路上において位置情報が変化する際のパラメータを示す図表である。
【0084】
図4および
図2に示すように、情報伝達経路上における位置情報を担う信号等を以下のような記号を用いて表すこととする。
【0085】
まず、内視鏡2内の各部に関して、可動レンズ21aの位置をx(mm)、磁石24が位置センサ25に印加する磁束密度をy0(mT)、位置センサ25からの出力の電圧値(ホール電圧値)をy1(mV)、センサ増幅回路26からの出力の電圧値をy2(mV)によりそれぞれ表すものとする。
【0086】
さらに、プロセッサ3内の各部に関して、ADC34が出力する信号値をy3(LSB)、第1補正部41が出力する信号値をy4(LSB)、第2補正部42が出力する信号値をy5(LSB)によりそれぞれ表すものとする。
【0087】
このとき内視鏡2内において、磁束密度y0が担う可動レンズ21aの位置xの情報は、磁石24の磁化のばらつき、可動レンズ21aに対する磁石24の取り付け位置ばらつきなどにより、実際の位置xからずれが生じる。同様に、電圧値y1が担う可動レンズ21aの位置xの情報、および電圧値y2が担う可動レンズ21aの位置xの情報にも、アナログ信号の波形の変化等により、ずれが生じる。
【0088】
そこで、内視鏡2からの電圧値y2が担う可動レンズ21aの位置がx′に変化していたとすると、内視鏡2内における位置情報の変化を示す関数C1を用いて、次の数式1に示すように表現できる。
[数1]
x′=C1(x)
【0089】
同様に、プロセッサ3内において、信号値y3が担う可動レンズ21aの位置xの情報も、AD変換時の変換誤差等により、ずれが生じる。そこで、ADC34が、位置x′の情報を担う電圧値y2を受け取ったときに、信号値y3が担う可動レンズ21aの位置がx″に変化していたとすると、プロセッサ3内における位置情報の変化を示す関数C2を用いて、次の数式2に示すように表現できる。
[数2]
x″=C2(x′)
【0090】
従って、駆動制御回路38が受け取る位置x″の情報は、関数C1と関数C2との合成関数C2・C1を用いて、次のように表現される。
x″=C2(C1(x))=C2・C1(x)
【0091】
ところで一般に、関数C1と関数C2とは非可換である。
C2・C1(x)≠C1・C2(x)
【0092】
このために、位置x″の情報から、ずれの影響を除去した位置xの情報を得るには、関数C1の逆関数C1^-1と関数C2の逆関数C2^-1とを用いて、位置x″に次の数式3に示すような演算を行うことになる。
[数3]
x=C1^-1{C2^-1(x″)}
【0093】
すなわち、情報伝達経路上において生じた位置情報のずれを補正するためには、まず、プロセッサ3内において生じたずれを補正し、その後に内視鏡2内において生じたずれを補正する手順となる。
【0094】
このために、ADC34が出力する信号値y3をまずプロセッサ個体補正データを用いて第1補正部41により補正し、その後に内視鏡個体補正データを用いて第2補正部42により補正するように構成している。
【0095】
なお、関数C1と関数C2とが可換であり、
C2・C1(x)=C1・C2(x)
が成立する場合(または処理が複雑になっても構わない場合)には、第1補正部41と第2補正部42との処理順序を入れ替えても構わない。
【0096】
また、第1補正部41と第2補正部42とを1つにまとめた補正部として構成して、数式3に示すようなずれ補正を1つの補正部により行うようにしても構わない。
【0097】
図2に示すような構成において、第1補正部41は、ADC34の信号値y3に第1補正f1(上述した位置x″の情報を担う信号値y3から、位置x′の情報を担う信号値y4を求めるための補正)を行って、信号値y4を次の数式4に示すように算出する。
[数4]
y4=f1(y3)
【0098】
ここに、f1は上述した逆関数C2^-1に対応するが、C2^-1は位置x″を位置x′へ変換するものであるのに対して、f1は信号値y3を信号値y4へ変換するものであるために、f1とC2^-1とは一般に異なる。
【0099】
また、第2補正部42は、信号値y4に第2補正f2(上述した位置x′の情報を担う信号値y4から、位置xの情報を担う信号値y5を求めるための補正)を行って、信号値y5を次の数式5に示すように算出する。
[数5]
y5=f2(y4)
【0100】
同様に、f2は上述した逆関数C1^-1に対応するが、C1^-1は位置x′を位置xへ変換するものであるのに対して、f2は信号値y4を信号値y5へ変換するものであるために、f2とC1^-1とは一般に異なる。
【0101】
上述した第1補正f1および第2補正f2は、内視鏡2およびプロセッサ3の実機に応じた一般的な関数となるが、ここでは特に、位置xと磁束密度y0との線形性なども考慮して、1次式により比較的精度の高い補正を行うことができる場合を考える。
【0102】
このときには、プロセッサ3における、信号値y3に対する0次補正係数をC0p、信号値y3に対する1次補正係数をC1pとすると、数式4は、次の数式6に示すように表される。
[数6]
y4=C1p×y3+C0p
【0103】
また、内視鏡2における、信号値y4に対する0次補正係数をC0s、信号値y4に対する1次補正係数をC1sとすると、数式5は、次の数式7に示すように表される。
[数7]
y5=C1s×y4+C0s
【0104】
こうして、内視鏡メモリ27には内視鏡個体補正データとして例えばC0sおよびC1sが記憶され、プロセッサメモリ37にはプロセッサ個体補正データとして例えばC0pおよびC1pが記憶されている。内視鏡メモリ27への記憶は、例えば内視鏡2の工場からの出荷検査時に行われ、また、プロセッサメモリ37への記憶は、例えばプロセッサ3の工場からの出荷検査時に行われる。
【0105】
なお、ここでは1次式を用いて補正したが、より高い精度が必要であれば2次式を用いて補正しても良いし、その他の、より複雑な補正式を用いて補正しても構わない。
【0106】
内視鏡個体補正データである補正係数C0s,C1sと、プロセッサ個体補正データであるである補正係数C0p,C1pとは、実機を試験することによってそれぞれ求めてもよいが、例えば補正係数C0p,C1pに関しては、各回路の構成に基づくパラメータを与えることで導出することもできる。
【0107】
そこで、情報伝達経路上の各部における位置情報の変化を1次式で精度よく記述することができる場合の補正係数C0p,C1pの具体例を説明する。
【0108】
上述したように、磁石24は、可動レンズ21aと一体的に移動するように構成されている。従って、可動レンズ21aが移動して位置xが変化すると、磁石24も移動して位置が変化し、磁石24から位置センサ25に入射される磁束密度y0が変化する。
【0109】
可動レンズ21aの位置x(mm)に対する磁束密度y0(mT)の変化率(検出ゲインとも呼ばれる)をa0(mT/mm)とし、印加磁界オフセットをb0(mT)とすると、1次近似における位置xとy0との関係は、次の数式8に示すように記載される。
[数8]
y0=a0×x+b0
【0110】
次に、位置センサ25のホール素子駆動電流値をa1(mA)、ホール出力感度をa2(mV/mT/mA)、ホール不平衡電圧値をb1(mV)とすると、磁束密度y0(mT)を受けた位置センサ25が出力する信号の電圧値y1(mV)は、次の数式9に示すように記載される。
[数9]
y1=a1×a2×y0+b1
【0111】
続いて、センサ増幅回路26のゲインをa3(無次元量)、不平衡電圧値をb2(mV)、基準電圧値をb3(mV)とすると、位置センサ25からの電圧値y1(mV)を受けたセンサ増幅回路26が出力する信号の電圧値y2(mV)は、次の数式10に示すように記載される。
[数10]
y2=a3×y1+b2+b3
【0112】
さらに、ADC34のゲインをa4(LSB/mV)、オフセットをb4(LSB)とすると、センサ増幅回路26からの電圧値y2(mV)の信号を受けたADC34が出力するデジタルの信号値y3(LSB)は、次の数式11に示すように記載される。
[数11]
y3=a4×y2+b4
【0113】
数式8~11を用いれば、ADC34が出力する信号値y3は可動レンズ21aの位置xの係数A,Bを用いた1次関数として、次の数式12に示すように記載される。
[数12]
y3=A×x+B
A=a4×a3×a2×a1×a0
B=a4×a3×a2×a1×b0+a4×a3×b1
+a4×(b2+b3)+b4
=a4×b3
【0114】
なお、係数Bの最後の等式では、印加磁界オフセットb0、ホール不平衡電圧値b1、センサ増幅回路26の不平衡電圧値b2、およびADC34のオフセットb4を、設計中心値が「0」になるように設計することができることを用いている(
図5参照)。
【0115】
数式12は設計中心値(目標値)での関係式を示しているが、実際の製品ではプロセッサ3の個体毎に各値a1,b3,a4,b4にばらつき誤差をもっている。
【0116】
プロセッサ3のばらつき誤差を含めた値を′(プライム)をつけて表記すると、値a1′,b3′,a4′,b4′をもつプロセッサ3個体のADC34の出力の信号値y3′と可動レンズ21aの位置xとの関係式は、次の数式13に示すように記載される。
[数13]
y3′=A′×x+B′
A′=a4′×a3×a2×a1′×a0
B′=a4′×b3′+b4′
【0117】
数式13に示す信号値y3′が、数式12に示す設計中心値に基づく信号値y3と一致するように第1補正部41が補正すれば、プロセッサ3の個体ばらつきをキャンセルすることができる。
【0118】
従って、第1補正部41による補正式である数式6のy4に設計中心値に基づく信号値y3を代入し、数式6のy3に実際の信号値y3′を代入すれば、次の数式14が得られる。
[数14]
y3=C1p×y3′+C0p
【0119】
数式14に数式12および数式13を代入すれば、1次補正係数C1pおよび0次補正係数C0pは、次の数式15に示すように求められる。
[数15]
C1p=A/A′
=a1×a4/(a1′×a4′)
C0p=B-(A/A′)×B′
=a4×b3
-a1×a4/(a1′×a4′)×(a4′×b3′+b4′)
【0120】
従って、プロセッサメモリ37に記憶されるプロセッサ個体補正データである補正係数C0p,C1pは、プロセッサ3の設計中心値(目標値)に基づく値a1,b3,a4と、プロセッサ3の個体毎の値a1′,b3′,a4′,b4′と、に基づき算出される。ここに、プロセッサ3の個体毎の値a1′,b3′,a4′,b4′は、プロセッサ3の調整工程において、例えば基準となる内視鏡2をプロセッサ3に接続した状態で実測等を行うことにより取得される。
【0121】
これらの値は、センサ駆動回路35から出力されるホール素子駆動電流値a1,a1′、基準電圧回路36から出力される信号の基準電圧値b3,b3′、ADC34のゲインa4,a4′、およびADC34のオフセットb4′であり、何れもプロセッサ側の値である。従って、プロセッサ個体補正データである補正係数C0p,C1pを算出するに当たっては、内視鏡2側の値(
図5の区分「内視鏡」に示す値a0,b0,a2,b1,a3,b2)を用いる必要がない。こうして、補正係数C0p,C1pを、プロセッサ3に固有の情報としてプロセッサメモリ37に記憶することができる。
【0122】
ただし、例えば、センサ駆動回路35から出力すべきホール素子駆動電流値a1(目標値)は内視鏡2に搭載されている位置センサ25の型番等に応じて異なるし、基準電圧回路36から出力すべき基準電圧値b3(目標値)も内視鏡2に搭載されているセンサ増幅回路26の回路構成に応じて異なるし、ADC34に設定すべきゲインa4(目標値)およびオフセットb4(目標値)も内視鏡2からの出力信号に応じて異なることがある。そして、内視鏡2に搭載されている回路部の構成は、内視鏡2の型番に応じて異なるだけでなく、製品のロット等によっても異なることがある。
【0123】
こうして、プロセッサメモリ37には、例えば、内視鏡2の型番や製造番号に応じたプロセッサ個体補正データ(補正係数C0p,C1p)がデータベースとして記憶されていて、プロセッサ3と内視鏡2とが接続された際に、プロセッサメモリ37から内視鏡2の型番や製造番号に応じたプロセッサ個体補正データ(補正係数C0p,C1p)を取得して、第1補正部41の補正に用いるようになっている。
【0124】
なお、プロセッサ個体補正データのデータベースは、プロセッサ3の保守を行う際などに最新のデータベースに適宜更新することができ、最新の型番や最新の製造番号の内視鏡2にも対応することが可能となっている。
【0125】
次に、
図6は、プロセッサ3により行われる位置検出信号の補正処理を示すフローチャートである。
【0126】
プロセッサ3の電源がオンになるとこの処理が開始され、まず、プロセッサ3に内視鏡2が接続されたか否かを判定する(ステップS1)。
【0127】
ここで、接続されたと判定された場合には、駆動制御回路38が内視鏡メモリ27から内視鏡2の型番や製造番号などの機種情報を取得する(ステップS2)。
【0128】
そして、駆動制御回路38は、取得した機種情報に基づき、プロセッサ3に接続されている内視鏡2の機種が、位置検出信号を補正する対象の機種であるか否かを判定する(ステップS3)。この判定は、例えば、取得した機種情報が、プロセッサメモリ37のデータベースに記憶されている機種情報に一致するか否かに基づき行われる。
【0129】
ここで対象機種でないと判定された場合には、例えば位置検出信号を補正することなくそのまま使用して内視鏡観察を行う等の、その他の処理へ進む。
【0130】
また、ステップS3において対象機種であると判定された場合には、取得した機種情報に基づいて、プロセッサ3が、センサ駆動回路35から出力するホール素子駆動電流値a1、および基準電圧回路36から出力する基準電圧値b3を設定すると共に、必要に応じてADC34のゲインa4等も設定する(ステップS4)。
【0131】
なお、このステップS4において設定する各値は、ステップS2において内視鏡2の内視鏡メモリ27から読み取っても良いし、プロセッサメモリ37のデータベースに予め記憶されている場合にはその値を用いても構わない。
【0132】
さらに、駆動制御回路38は、プロセッサメモリ37からプロセッサ個体補正データを読み出して、第1補正部41に設定する(ステップS5)。
【0133】
また、駆動制御回路38は、内視鏡メモリ27から内視鏡個体補正データを取得して(ステップS6)、第2補正部42に設定する(ステップS7)。
【0134】
その後、内視鏡観察が開始されて、対物光学系21のフォーカス位置(または、ズーム位置)を変更する指示信号がユーザ操作部12cから入力されたか否かを、フィードバックコントローラ43が判定する(ステップS8)。
【0135】
ここで、指示信号が入力されないと判定された場合には、指示信号が入力されるまで待機する。
【0136】
こうして、ステップS8において指示信号が入力されたと判定された場合には、フィードバックコントローラ43が、指示信号が示す目標位置と位置検出信号が示す現在位置とに基づいて定電流制御部44をフィードバック制御する。これにより、定電流制御部44がドライバ回路31を経由してアクチュエータ23を駆動する。
【0137】
そして、駆動制御回路38は、位置センサ25で生成され、センサ増幅回路26およびADC34を経由して入力される位置検出信号の信号値y3を取得する(ステップS9)。
【0138】
すると、第1補正部41が、例えば、プロセッサメモリ37から読み出した補正係数C0p,C1pを用いた数式6に基づいて、位置検出信号を補正する(ステップS10)。これにより、プロセッサ3の個体ばらつきが補正されて高精度な位置検出を行うことが可能となる。このとき、数式6は1次式であるために、位置検出信号の補正を、低負荷の演算で高速に行うことができる。
【0139】
続いて、第2補正部42が、内視鏡メモリ27から読み出した補正係数C0s,C1sを用いた数式7に基づいて、第1補正部41により補正された位置検出信号の信号値y4をさらに補正する(ステップS11)。これにより、内視鏡2の個体ばらつきが補正され、より一層高精度な位置検出を行うことが可能となる。このとき、数式7は1次式であるために、位置検出信号の補正を、低負荷の演算で高速に行うことができる。こうして、ステップS10およびステップS11の補正処理が高速に行われるために、位置検出のリアルタイム性も高まる。
【0140】
フィードバックコントローラ43は、第2補正部42から補正された位置検出信号を取得して、位置検出信号が示す可動レンズ21aの位置が、ユーザ操作部12cから入力された目標位置に到達したか否かに基づいて、可動レンズ21aの位置の制御を停止するか否かを判定する(ステップS12)。なお、位置制御の停止判定は、ユーザ操作部12cから停止操作が行われたか否か等に基づき行っても構わない。
【0141】
ここで制御を停止しないと判定された場合にはステップS9へ戻って、上述したような処理を繰り返して行う。ステップS9~S12に示したような、フィードバックコントローラ43による位置検出信号を確認しながらの可動レンズ21aの位置制御は、制御サンプリング時間毎に繰り返しループ動作するフィードバック制御として行われる。
【0142】
また、ステップS12において制御を停止すると判定された場合には、プロセッサ3から内視鏡2が取り外されたか否かを判定する(ステップS13)。
【0143】
ここで取り外されていないと判定された場合には、ユーザ操作部12cから新たな指示信号が入力されるのを待機するために、上述したステップS8の処理へ移行する。
【0144】
一方、ステップS13において、内視鏡2が取り外されたと判定された場合には、同一の内視鏡2の再度の接続、または他の内視鏡2の新たな接続を待機するために、上述したステップS1の処理へ移行する。
【0145】
ステップS1において、内視鏡2が接続されていないと判定された場合には、プロセッサ3の電源をオフにする操作が行われたか否かを判定する(ステップS14)。
【0146】
ここで、電源オフ操作が行われていないと判定された場合には、上述したステップS1の処理へ移行する。
【0147】
また、ステップS14において電源オフ操作が行われたと判定された場合には、この処理を終了する。
【0148】
このような実施形態1によれば、プロセッサメモリ37にプロセッサ個体補正データを記憶して、位置検出信号のずれをプロセッサ個体補正データに基づき補正するようにしたために、プロセッサ3の個体ばらつきに依ることなく、可動レンズ21aの位置を正確に検出することが可能となる。これにより、可動レンズ21aを目標位置に正確に移動することができる。
【0149】
こうして、位置検出信号の調整を行うための複数のスイッチや複数の抵抗などを備える専用の電気回路が不要となるために、コストの増大および装置の大型化を抑制しながら、高精度の位置検出を行うことが可能となる。
【0150】
また、第1補正部41が、内視鏡2から受信した位置検出信号を、0次補正係数C0pおよび1次補正係数C1pを用いて1次式により補正するようにしたために、演算負荷を軽減し、演算時間を短縮して、位置検出のリアルタイム性を高めることができる。
【0151】
さらに、数式15に基づき0次補正係数C0pおよび1次補正係数C1pを算出するようにしたために、内視鏡2に依存しないプロセッサ3単体の情報として、プロセッサ個体補正データを算出することが可能となる。さらに、演算式は加減乗除で行うことができるために、比較的簡単な計算で、プロセッサ3の設計中心値(目標値)に整合する位置検出信号を得ることができる。
【0152】
そして、内視鏡メモリ27に内視鏡個体補正データをさらに記憶して、位置検出信号のずれを内視鏡個体補正データに基づき補正するようにしたために、内視鏡2の個体ばらつきに依ることなく、可動レンズ21aの位置をより一層正確に検出することが可能となる。これにより、可動レンズ21aを目標位置に正確に移動することができる。
【0153】
このとき、プロセッサメモリ37がプロセッサ個体補正データを記憶し、内視鏡メモリ27が内視鏡個体補正データを記憶しているために、内視鏡2とプロセッサ3とがどのような機種同士かつどのような個体同士の組み合わせで接続されても、位置検出信号を適切に補正して、高精度の位置検出を行うことが可能となる。こうして、可動レンズ21aを目標位置により一層正確に移動することができる。
【0154】
加えて、第2補正部42を第1補正部41の後段に配置したために、位置検出信号がずれるプロセスを逆にたどって補正を行うことができ、補正演算を複雑にすることなく処理することができる。
【0155】
また、第2補正部42が、第1補正部41から受信した位置検出信号を、0次補正係数C0sおよび1次補正係数C1sを用いて1次式により補正するようにしたために、内視鏡2の個体ばらつきを補正する場合にも、演算負荷を軽減し、演算時間を短縮して、位置検出のリアルタイム性を高めることができる。
【0156】
さらに、可動レンズ21aに磁石24を配置して、ホール素子を含む位置センサ25で可動レンズ21aの位置を検出するようにしたために、位置検出の構成を小型化することができ、小型細径化が求められる内視鏡2に好適となる。このとき、位置センサ25を固定部側に固定したために、位置センサ25への配線も容易となる。
【0157】
そして、センサ駆動回路35を定電流回路としたために、位置センサ25を駆動する際に電流値が変化せず、電流値に応じた複数の補正係数C0p,C1pを記憶する必要がないために、プロセッサメモリ37の記憶容量を節約することができる。
【0158】
加えて、センサ増幅回路26を差動増幅回路としたために、ホール素子から出力される信号の電圧を有効に増幅することができる。位置センサ25は内視鏡2の先端部11aに配置されるために、位置センサ25から出力される位置検出信号は、プロセッサ3に至るまでにある程度の距離を伝達されることになるが、差動増幅回路で増幅したことにより、内視鏡2からプロセッサ3へ送信される位置検出信号のS/Nを高めることができ、正確な位置検出を行うことができる。
【0159】
また、可動レンズ21aを対物光学系21のフォーカス位置またはズーム位置を調整するためのものとした場合には、正確なフォーカス位置への移動、または正確なズーム位置への移動を行うことが可能となる。
【0160】
なお、上述した各部の処理は、ハードウェアとして構成された1つ以上のプロセッサが行うようにしてもよい。例えば、各部は、それぞれが電子回路として構成されたプロセッサであっても構わないし、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路で構成されたプロセッサにおける各回路部であってもよい。または、1つ以上のCPUで構成されるプロセッサが、記録媒体に記録された処理プログラムを読み込んで実行することにより、各部としての機能を実行するようにしても構わない。
【0161】
また、上述では主として内視鏡システム、プロセッサ、内視鏡について説明したが、内視鏡システム、プロセッサ、内視鏡を上述したように作動させる作動方法であってもよいし、コンピュータに内視鏡システム、プロセッサ、内視鏡と同様の処理を行わせるための処理プログラム、該処理プログラムを記録するコンピュータにより読み取り可能な一時的でない記録媒体、等であっても構わない。
【0162】
さらに、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明の態様を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0163】
1…内視鏡システム
2…内視鏡
3…プロセッサ
4…光源装置
5…ビデオプロセッサ
5a…コネクタ受け
6…モニタ
11…挿入部
11a…先端部
11b…湾曲部
11c…可撓管部
12…操作部
12a…鉗子口
12b…グリップ部
12c…ユーザ操作部
13…ユニバーサルコード
13a…スコープコネクタ
13b…スコープケーブル
13c…電気コネクタ
14…湾曲操作部
15…送気送水ボタン
16…吸引ボタン
17…スイッチ部
17a…スイッチ
21…対物光学系
21a…可動レンズ
22…撮像素子
23…アクチュエータ
24…磁石
25…位置センサ
26…センサ増幅回路
26a…差動増幅器
26b,26c,26d,26e…抵抗
27…内視鏡メモリ
31…ドライバ回路
32…電流検出回路
33…ADC
34…ADC
35…センサ駆動回路
36…基準電圧回路
36a…電源
36b…差動増幅基準電圧電源
37…プロセッサメモリ
38…駆動制御回路
41…第1補正部
42…第2補正部
43…フィードバックコントローラ
44…定電流制御部