(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】粘着体送出装置及び粘着体送出方法
(51)【国際特許分類】
B65H 49/26 20060101AFI20230322BHJP
B43M 11/06 20060101ALI20230322BHJP
B43L 19/00 20060101ALI20230322BHJP
B65H 37/02 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
B65H49/26
B43M11/06
B43L19/00 H
B65H37/02
(21)【出願番号】P 2018247647
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】水原 銀次
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 淳
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-044463(JP,A)
【文献】特開平03-119083(JP,A)
【文献】特開2009-143065(JP,A)
【文献】特開2010-260675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 49/26
B65H 35/00-35/10
B65H 37/00-37/06
B43L 19/00
B43M 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸形状を呈する本体と、
前記本体
の一端に対して、第1の旋回軸を中心として相対的に旋回可能に取り付けられた旋回部と、
前記旋回部に所定の取付位置において取り付けられるとともに、当該旋回部と連動して旋回可能であって、所定の送出位置において粘着体を送出し、対象物に圧着しつつ貼付する圧着部と、を備え、
前記旋回部の前記第1の旋回軸と前記取付位置との間に所定の距離が確保され、
前記圧着部は、
前記所定の送出位置に対して、前記取付位置を通過するとともに前記第1の旋回軸に平行な第2の旋回軸を中心として旋回する、
粘着体送出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着体送出装置であって、
前記粘着体が前記本体の内部に画定された空間を通過して前記圧着部に供給される、
粘着体送出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粘着体送出装置であって、
前記粘着体を誘導する誘導部材が、前記旋回部に設けられる、
粘着体送出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の粘着体送出装置であって、
前記粘着体が前記本体の外部の位置から、前記誘導部材に供給される、
粘着体送出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の粘着体送出装置であって、
前記圧着部が前記旋回部とは独立して、前記取付位置に一致する回転軸を中心に回転可能なローラーであり、
前記粘着体が前記ローラーの回転に伴い当該ローラーの外周を通過して送出され、
前記回転軸と前記第1の旋回軸との間に前記所定の距離が確保される、
粘着体送出装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の粘着体送出装置であって、
前記粘着体は粘着剤層の少なくとも一部を被覆するセパレータを備え、
前記圧着部において、前記セパレータを前記粘着剤層から剥離して前記粘着体を前記対象物に貼付する、
粘着体送出装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の粘着体送出装置であって、
前記粘着体は糸状である粘着体送出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の粘着体送出装置であって、
前記粘着体は感圧型粘着体である粘着体送出装置。
【請求項9】
軸形状を呈する本体と、前記本体
の一端に対して、第1の旋回軸を中心として相対的に旋回可能に取り付けられた旋回部と、前記旋回部に所定の取付位置において取り付けられるとともに、当該旋回部と連動して旋回可能であって、所定の送出位置において粘着体を送出し、対象物に圧着しつつ貼付する圧着部と、を備え、前記旋回部の前記第1の旋回軸と前記取付位置との間に所定の距離が確保され、前記圧着部は、
前記所定の送出位置に対して、前記取付位置を通過するとともに前記第1の旋回軸に平行な第2の旋回軸を中心として旋回する粘着体送出装置を用いて、前記粘着体を前記対象物に貼付する、粘着体送出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着体を送出するための粘着体送出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートや粘着テープの如き粘着体が、金属、ガラス、木材、紙、ダンボール、プラスチック材料等の各種被着体の接着などに用いられている。例えば、ロール状の粘着テープのような巻回された形態の場合には、巻き戻しを容易にするため、粘着面が接触する背面に剥離処理を施した基材が用いられている。
【0003】
特許文献1は、長尺でその途中に屈曲部を有する被着体に粘着テープを貼付する貼付治具を開示している。貼付治具は、貼付治具を被着体に沿って移動させる第1の治具ガイドと、粘着テープを被着体に圧着するテープ貼付ヘッド及び被着体を挟んで第1の治具ガイドとは反対の側に、被着体からの距離を変更可能に配置された、被着体の形状の変化に応じて貼付治具を姿勢制御することが可能な第2の治具ガイドとを支持部材で支承しているように構成されている。
【0004】
特許文献2は、軸心を転写対象面に対して直立又は転写進行方向に傾斜させて把持可能な把持部材と、この把持部材に保持されて前記軸心回りに回転可能な回転体と、その軸心に対し転写端が反転写方向に偏位した状態で前記回転体に保持された転写ヘッドとを具備してなる転写具を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-097636号公報
【文献】特許第6075038号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の貼付治具は、緩やかな曲線の動きには粘着テープが追従して対応し得るが、より細かな又は急な曲線の動きに粘着テープを追従させることは困難である。特許文献2の転写具は、いわゆる基材上に転写材が載せられた転写テープを転写ヘッドに供給することを前提としており、しかも直接手を用いて転写具を押さえつけることを念頭に置いている。この転写具は糸状の粘着剤の様に、容易に曲がりやすく装置の動きに追従しにくい素材について考慮しているものではない。
【0007】
本発明は、粘着体を自由に送出し、貼付することを可能とする粘着体送出装置及び粘着体送出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の粘着体送出装置は、本体と、前記本体に対して、第1の旋回軸を中心として相対的に旋回可能に取り付けられた旋回部と、前記旋回部に所定の取付位置において取り付けられるとともに、当該旋回部と連動して旋回可能であって、所定の送出位置において粘着体を送出し、対象物に圧着しつつ貼付する圧着部と、を備え、前記旋回部の前記第1の旋回軸と前記取付位置との間に所定の距離が確保され、前記圧着部は、前記取付位置を通過するとともに前記第1の回転軸に平行な第2の旋回軸を中心として旋回する。
【0009】
本発明の粘着体送出装置として、例えば、前記粘着体が前記本体の内部に画定された空間を通過して前記圧着部に供給される。
【0010】
本発明の粘着体送出装置として、例えば、前記粘着体を誘導する誘導部材が、前記旋回部に設けられる。
【0011】
本発明の粘着体送出装置として、例えば、前記粘着体が前記本体の外部の位置から、前記誘導部材に供給される。
【0012】
本発明の粘着体送出装置として、例えば、前記圧着部が前記旋回部とは独立して、前記取付位置に一致する回転軸を中心に回転可能なローラーであり、前記粘着体が前記ローラーの回転に伴い当該ローラーの外周を通過して送出され、前記回転軸と前記第1の旋回軸との間に前記所定の距離が確保される。
【0013】
本発明の粘着体送出装置として、例えば、前記粘着体は粘着剤層の少なくとも一部を被覆するセパレータを備え、前記圧着部において、前記セパレータを前記粘着剤層から剥離して前記粘着体を前記対象物に貼付する。
【0014】
本発明の粘着体送出装置として、例えば、前記粘着体は糸状である。
【0015】
本発明の粘着体送出装置として、例えば、前記粘着体は感圧型粘着体である。
【0016】
本発明の粘着体送出方法は、本体と、前記本体に対して、第1の旋回軸を中心として相対的に旋回可能に取り付けられた旋回部と、前記旋回部に所定の取付位置において取り付けられるとともに、当該旋回部と連動して旋回可能であって、所定の送出位置において粘着体を送出し、対象物に圧着しつつ貼付する圧着部と、を備え、前記旋回部の前記第1の旋回軸と前記取付位置との間に所定の距離が確保され、前記圧着部は、前記取付位置を通過するとともに前記第1の回転軸に平行な第2の旋回軸を中心として旋回する粘着体送出装置を用いて、前記粘着体を前記対象物に貼付する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、本体に対して旋回可能な旋回部の旋回軸と圧着部の取付位置との間に所定の距離が確保されるため、粘着体を自由に送出し、対象物に貼付することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態の粘着体送出装置の要部を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図。
【
図2】粘着体送出装置のローラーが移動する態様を示す概念図。
【
図3】第2実施形態の粘着体送出装置の要部の斜視図。
【
図4】第3実施形態の粘着体送出装置の要部を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図、(c)誘導部材の具体例である誘導リングを示す図。
【
図5】第4実施形態の粘着体送出装置の要部を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図、(c)誘導部材の具体例である誘導リングを示す図。
【
図6】第5実施形態の粘着体送出装置の使用状態における側面図。
【
図7】粘着体送出装置において使用される粘着体の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る粘着体送出装置の好適な実施形態を、
図1~
図7に基づいて詳述する。
【0020】
図1は第1実施形態の粘着体送出装置100の要部を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図を示している。
図1に示す様に、粘着体送出装置100は、軸形状を呈する本体1と、その第1端に回転可能に取り付けられた先端部4とを備えている。
図1においては、本体1は先端部4に接続された部分の近傍のみを示している。
【0021】
本例の粘着体送出装置100は比較的大型の装置を想定し、別の場所に設置された糸状の粘着体2の供給源(ボビン等の如き粘着性物品)が粘着体2を送り出して粘着体送出装置100に供給する。粘着体2を供給された粘着体送出装置100が、その先端部4を粘着体の被着体である対象物に押し付け、矢印Z方向に移動することにより、粘着体2を送出し、対象物に貼り付け可能となっている。予めプログラミングなどにより動作、軌跡を設定することにより、粘着体送出装置100の本体1が設定した軌跡に従って移動し、先端部4から送出した粘着体2を対象物に貼付することができる。粘着体2は、長尺状の粘着体であれば特に限定されないが、本実施形態においては線状を呈する。粘着体2の詳細は後述する。
【0022】
本体1は一軸方向に延びた軸形状を呈するとともに、本体1の第1端(先端)には、先端部4が本体1に対して回転(旋回)可能に取り付けられている。先端部4は、本体1に対して相対的に旋回可能(回転可能)に取り付けられた旋回部11と、二股に分かれて断面コの字状を呈する支持部(フォーク)13と、支持部13の先端に設けられた回転軸15によって、支持部13に対して矢印R方向(及びその逆方向)に回転可能に取り付けられたローラー(圧着部)7を備えている。本体1は、先端部4、特にその旋回部11を旋回可能に支持しつつ、先端部4を移動させることを主たる機能としている。ローラー7は旋回部11とは独立して回転軸15を中心に回転可能なローラーである。本実施形態では粘着体2を送出する圧着部はローラー7より構成されているが、圧着部の形状は特に限定すされず、ハケ、ブラシ等によって構成してもよい。また、ローラー7の表面に溝を形成してもよい。
【0023】
旋回部11は本体1の第1端において、本体1から独立して矢印Q方向に旋回可能である。支持部13は旋回部11に対して一体的に取り付けられており、旋回部11が矢印Q方向に旋回すると支持部13も旋回部11に連動して旋回する。よって、本体1がZ方向に移動すると、ローラー7が矢印R方向に回転して粘着体2を送出する。粘着体2はローラー7の回転に伴いローラー7の外周を通過して送出される。ローラー7は、外部から粘着体送出装置100の制約を受けずに到来した粘着体2を、対象物と接する所定の送出位置Pにおいて送出し、直接的に対象物に圧着しつつ貼付する圧着部として機能する。ローラー7の幅Wは、例えば粘着体送出装置100の径の2~3倍に設定されるが、特に限定はされない。
【0024】
回転する機能を有していれば旋回部11の形状、機構等は特に限定されないが、キャスターのようなベアリング方式でもよいし、相対的に回転可能な二つの部材を互いに嵌め合わせたものでもよい。また、旋回部11とローラー7(圧着部)はオフセットの関係であれば必ずしも隣接している必要はない(後述する
図6の実施形態を参照)。
【0025】
また、旋回部11の旋回の中心軸であって、本実施形態では本体1の長手方向の軸と平行な軸を第1の旋回軸A1と定義し、ローラー7の中心であって、旋回部11への取付位置T(本実施形態ではローラー7の回転軸15に一致)を通過しつつ第1の旋回軸A1に平行な軸を第2の旋回軸A2と定義する。すなわち、旋回部11は、本体1に対して、第1の旋回軸A1を中心として相対的に旋回可能に取り付けられている。また、圧着部であるローラー7は、旋回部11に所定の取付位置Tにおいて取り付けられるとともに旋回部11と連動して旋回可能である。
【0026】
この場合、第1の旋回軸A1と取付位置Tとの間には所定の距離(オフセット)Dが確保される。また、第1の旋回軸A1と第2の旋回軸A2との間にも所定の距離Dが確保され、回転軸15と第1の旋回軸A1との間にも所定の距離Dが確保される。すなわち、ローラー7は、取付位置Tを通過するとともに第1の旋回軸A1に平行な第2の旋回軸A2を中心として旋回する。
【0027】
このような構成によれば、旋回部11とローラー7は、それらの二つの旋回軸が所定の距離Dをもって離れた状態で連動して旋回可能である。この所定の距離Dを大きくすることにより先端部4の旋回性能が向上し、所定の距離Dを小さくすることにより先端部4の直進安定性が向上するため、粘着体送出装置100に求められる性能を考慮して、所定の距離Dを適宜設定することができる。
【0028】
図2は粘着体送出装置100、特にそのローラー7が移動する態様を示す概念図である。粘着体送出装置100が矢印Xで示すように直進する場合又は直進に準じた移動をする場合、粘着体2が圧着部であるローラー7から外れることを抑制しつつ想定通りに送出され、対象物に貼付される。
【0029】
また、粘着体送出装置100が矢印Yで示すように曲線上を移動する場合、本体1とは独立して旋回部11が第1の旋回軸A1を中心として矢印Q方向に旋回し、さらに旋回部11と連動して圧着部であるローラー7も第2の旋回軸A2を中心として矢印Q方向に旋回する。これにより、粘着体2はローラー7により圧着されながら曲線上に貼付される。
【0030】
しかしながら、矢印Yで示す曲線の曲りが非常に(急角度で)大きい場合、粘着体送出装置100から独立した粘着体2がローラー7の動きに追従できず、粘着体2がローラー7の幅Wの範囲で大きくずれることや、ローラー7から外れてしまうといった事態が想定される。このような事態が発生すると、曲線に追随する様に円滑に粘着体2を送出することは難しくなる。そこで、粘着体送出装置100が矢印Yで示すような動作をする場合も、粘着体2が粘着体送出装置100に追従し、ローラー7から外れることを抑制しつつローラー7から円滑に送出されることが求められる。特に粘着体送出装置100が大型装置の先端に取り付けられるような場合、粘着体送出装置100を押圧するなどして粘着体2の動きを直接的に制御することは難しくなるため、このような要求の重要度が増すことになる。
【0031】
図3は第2実施形態の粘着体送出装置100の要部を示す斜視図である。本実施形態では、粘着体2は本体1の内部に画定された内部空間S1を通過して先端部4に到着し、ローラー7に供給されて送出される。粘着体2の可動な範囲は内部空間S1によって制約されるため、本体1の動きに追従して粘着体2の少なくとも内部空間S1に存在する部分は動くことになる。すなわち、粘着体2は本体1、ひいては粘着体送出装置100の動作に追従しやすくなる。このような形態によれば、粘着体送出装置100が
図2の矢印Yで示す様に動作しても、粘着体2がローラー7から外れてしまう事態を抑制することができる。
【0032】
図4は第3実施形態の粘着体送出装置100の要部を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図である。本実施形態では、旋回する旋回部11の動きに追従して粘着体2を誘導可能な誘導部材6が、旋回部11の外側に設けられている。誘導部材6が旋回部11に取り付けられているため、誘導部材6を通過する粘着体2は、旋回部11の動きに追従しやすくなり、粘着体送出装置100が
図2の矢印Yで示す様に動作しても、粘着体2がローラー7から外れてしまう事態を抑制することができる。尚、誘導部材6は旋回部11よりも下の位置に設けることにより、粘着体2は、旋回部11の動きにより追従しやすくなる。
図4(c)は誘導部材6の具体例である誘導リング62を示し、誘導リング62は棒状の支持部材63によって旋回部11に固定されている。
【0033】
図5は第4実施形態の粘着体送出装置100の要部を示す図であり、(a)正面図、(b)側面図である。本実施形態では第2実施形態と同様に、粘着体2は本体1の内部空間S1を通過して先端部4に到着し、直線的に延びて先端部4の内部空間S2を通過した後にローラー7で圧着されながら送出される。また、旋回する旋回部11の動きに追従して粘着体2を誘導可能な誘導部材6が、旋回部11の内側に設けられている。誘導部材6が旋回部11に取り付けられているため、誘導部材6を通過する粘着体2は、旋回部11の動きに追従しやすくなり、粘着体送出装置100が
図2の矢印Yで示す様に動作しても、粘着体2がローラー7から外れてしまう事態を抑制することができる。尚、誘導部材6は旋回部11よりも下の位置に設けることにより、粘着体2は、旋回部11の動きにより追従しやすくなる。
図5(c)は誘導部材6の具体例である誘導リング62を示し、誘導リング62は棒状の支持部材63によって旋回部11に固定されている。
【0034】
ただし、第2実施形態と同様に、粘着体2の可動な範囲は内部空間S1によって制約されるため、本体1の動きに追従して粘着体2の少なくとも内部空間S1に存在する部分は動くことになる。すなわち、粘着体2は本体1、ひいては粘着体送出装置100の動作に追従しやすくなるため、誘導部材6は必須ではない。
【0035】
図1~
図5の実施形態においては、粘着体2が本体1の外部の任意の位置から、例えば旋回部11に設けられた誘導部材6に供給されており、粘着体送出装置と粘着体2の供給源が別に設けられている状況を想定している。一方、
図6に示した第5実施形態の粘着体送出装置は、粘着体送出装置と粘着体2の供給源が一体的に設けられた状況を想定している。
図6に示す様に、本実施形態の粘着体送出装置100は、軸形状を呈する外部ケースを形成する本体1と、本体1の内部に画定された軸形状の内部空間S1に一部が収められた内部本体20を有する。本体1には、樹脂等により構成されたグリップを設けることもできる。
【0036】
作業者が本体1のグリップの部分等において粘着体送出装置100を把持し、先端部4を粘着体2の被着体である対象物に押し付け、矢印Z方向に移動させることにより、粘着体2が送り出し可能となっている。すなわち、作業者は軸形状の細長い本体1を把持しつつ、ペンの様な筆記具を操作する感覚や修正テープ器具を操作する感覚で、粘着体送出装置100を使用することができる。例えば作業者は、障害物の多い狭い場所等でも思い通りに粘着体送出装置100を操作し、多様な作業を効率よく実施することが可能となる。
【0037】
本体1の内部空間S1には、内部本体20が固定される。内部本体20の第1端(先端)の先端部4は、内部空間S1から突出した支持部13と、支持部13に対して回転可能に取り付けられたローラー7を備えている。内部本体20は内部空間S1に収められた巻取体(ボビン)5を更に有している。
【0038】
内部本体20の第2端(後端)は、筒状のキャップ8が取り付けられている。例えばキャップ8の内側には、内部本体20の第2端に設けられた旋回部11と係合する係合部(溝など)が設けられている。旋回部11は、支持部13(ローラー7)、巻取体5と連結しており、旋回可能である。一方、キャップ8は外側において本体1に対し相対的に回転可能な状態で本体1に取り付けられている。
【0039】
作業者が粘着体送出装置100を把持し、先端部4を粘着体2の被着体である対象物に押し付け、矢印Z方向に移動させることにより、粘着体2が送り出される。作業者が、粘着体送出装置100を
図2の矢印Yで示すように大きく(急角度で)曲がった曲線
上を移動させる場合、本体1を操作して移動させる。この動きに追従して支持部13(ローラー7)、巻取体5、旋回部11、キャップ8が、本体1とは独立して旋回する。これにより、粘着体2がローラー7から外れることを抑制しつつローラー7から送出される。本形態では、圧着部としてのローラー7と旋回部11が隣接していない。
【0040】
図7は、本実施形態の粘着体送出装置100において使用される粘着体2の模式図を示す。本実施形態の粘着体2は、線状の芯材2aと、芯材2aの長手方向の表面を被覆する粘着剤層2bからなる線状の粘着体によって構成される。
【0041】
粘着体2は、長尺状の粘着体であれば特に限定されないが、本実施形態においては線状を呈する。ここにいう線状とは、直線状、曲線状、折れ線状等の他にも、糸のように多様な方向、角度に曲げられうる状態(以下、糸状ともいう)をも包含する概念である。また、本明細書における粘着剤層は、線状のものも包含する。
【0042】
なお、本構成例の粘着体の断面の形状は円形であるが、本実施形態はこれに限定されず、その断面の形状としては、円形の他にも、楕円形、四角形等の矩形等をとりうる。
【0043】
粘着剤層2bは粘着剤組成物により形成される粘着剤を含む。粘着剤としては、上記ゲル分率、及びゲル分率の変化量を満たすものであれば特に限定されず、公知の粘着剤を用いることが可能である。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられる。中でも、接着性の点から、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、又はポリエステル系粘着剤が好ましく、特にアクリル系粘着剤が好ましい。なお、粘着剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本実施形態における粘着剤は、常温で粘着性を有し、粘着剤の表面と被着体の表面との接触時に生じる圧力によって、被着体をその表面に貼付できる感圧型粘着剤であることが好ましい。感圧型粘着剤であれば、加熱を要さず、熱に弱い被着体にも適用可能である。
【0044】
なお、粘着剤としては、溶剤型の粘着剤と水分散型の粘着剤のいずれのタイプも使用することができ、粘着剤組成物の乾燥(溶媒揮発)により架橋が進行し、乾燥後に架橋が速やかに完了するものが好ましい。粘着剤層の表面が互いに接触した後に新たな架橋を増加させないためである。ここで、高速塗工が可能であり、環境にやさしく、溶剤による基材や芯材への影響(膨潤、溶解)が少ない面から、水分散型粘着剤が好ましく、水分散型のアクリル系粘着剤がより好ましい。
【0045】
ここで、芯材を有する粘着体において、粘着剤層は芯材表面(長手方向の表面)の全部を被覆していてもよいが、芯材表面の少なくとも一部のみを被覆していてもよい。また、粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されてもよい。なお、芯材の端面は粘着剤層によって被覆されていてもいなくともよい。例えば、粘着体が製造過程や使用時に切断されるような場合には、芯材の端面は粘着剤層によって被覆されないことがありうる。
【0046】
粘着体に用いられる芯材としては、例えば、樹脂、ゴム、発泡体、無機繊維、これらの複合体等を用いることができる。樹脂の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;塩化ビニル樹脂;酢酸ビニル樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミド樹脂;フッ素樹脂等が挙げられる。ゴムの例としては、天然ゴム、ウレタンゴム等の合成ゴム等が挙げられる。発泡体の例としては、発泡ポリウレタン、発泡ポリクロロプレンゴム等が挙げられる。繊維の例としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、化学繊維(再生繊維、半合成繊維、合成繊維等)、天然繊維(植物繊維、動物繊維、その他)等があげられる。また、芯材の断面形状は特に限定されないが、通常、粘着体の断面形状に応じた断面形状を有する。
【0047】
また、糸状の粘着体に用いられうる糸状の芯材の材質としては、レーヨン、キュプラ、アセテート、プロミックス、ナイロン、アラミド、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリクラール、ポリ乳酸等の各種高分子材料、ガラス、炭素繊維、天然ゴムやポリウレタン等の合成ゴム等の各種ゴム、綿、ウール等の天然材料、金属等が使用できる。また、糸状の芯材の形態としては、例えば、モノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、あるいはこれらを撚り合わせる等して組み合わせた糸が使用できる。また、断面形状も、円形だけでなく、四角形状や星型等の短形状の糸や楕円形状、中空等でありうる。
【0048】
なお、芯材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤など)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料など)等の各種添加剤が配合されていてもよい。芯材の表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。
【0049】
芯材の断面のサイズは特に限定されず、目的に応じて適宜選択できるが、例えば円形の断面形状である場合、ハンドリング性(屈曲性、、切れにくさ)の観点からは、その直径は好ましくは1μm~2000μmであり、より好ましくは10μm~1000μmである。
【0050】
粘着剤層の厚みは特に限定されないが、粘着性の観点からは、例えば1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、厚みムラ、乾燥性の観点からは、例えば200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。さらに、積層することで用途に応じて厚くすることもできる。
【0051】
特に粘着体2は、粘着剤層2bを形成する粘着剤が常温で粘着性を有し、粘着剤の表面と被着体の表面との接触時に生じる圧力によって、被着体をその表面に貼付できる感圧型粘着体であることが好ましい。感圧型粘着体であれば、加熱を要さず、熱に弱い被着体にも適用可能である。
【0052】
上記のとおり、粘着体2の形状は特に限定はされないが、粘着体2の断面形状における短軸(断面の重心を通る軸の内最も短い軸)の長さに対する長軸(断面の重心を通る軸の内最も長い軸)の長さの割合(長軸/短軸)が大きいほど粘着体2は扁平な形状となる。一方、当該割合が小さいほど粘着体の断面形状は円形に近づき、当該割合は断面の形状が円形である場合に最小値である1となる。最小値1の場合には、三角形、星形等のような特殊な形状も含まれる。
【0053】
粘着体が扁平な形状となる典型例は粘着テープであり、芯材の片面または両面に粘着剤層が設けられる。粘着テープは粘着剤層の少なくとも一部を被覆するセパレータを備えることが好ましい。セパレータを有する粘着体を使用する場合は、圧着部7においてセパレータを粘着剤層から剥離して粘着体を対象物に貼付する。
図6の実施形態では、このような粘着テープに類似した修正テープが粘着体2に用いられる。ローラー7から送出された粘着体2は、セパレータに相当する基材テープの部分のみが巻取体5に巻き取られ、粘着剤層に相当する修正材が対象物に貼付される。
【0054】
粘着体の実施形態および使用方法は、おおよそ以下の4つのパターンに分類される。ここでの非粘着層は、粘着体の表面(長手方向の表面)を被覆する層であり、例えば延伸前の初期状態では粘着体を被覆するが、粘着体を延伸することで破断され、粘着体の粘着性が発現するようなものが含まれる。しかしながら、非粘着層の種類、素材などは特に限定されない。
【0055】
1)非粘着層がない粘着体をそのまま圧着
2)非粘着層がない粘着体+セパレータ(セパレータは圧着前に剥離される)
3)非粘着層により被覆された粘着体
4)非粘着層により被覆された粘着体+セパレータ(セパレータは圧着前に剥離される)
【0056】
さらに、本実施形態の粘着体は、可曲性を有することが好ましく、糸のように多様な方向、角度に曲げられうる糸状であることが特に好ましい。可曲性を有する粘着体、特に糸状である粘着体によれば、上記した効果に加えて、曲線や曲面、凹凸などの複雑な形状にも適用させやすいという利点を有する。
【0057】
例えば、曲線や曲面、凹凸などの複雑な形状の部分を有する被着体に粘着テープを貼り付けようとすると、かかる部分において粘着テープにしわや重なりが生じてしまい、はみ出しを抑えて綺麗に貼り付けることは困難であり、また、しわや重なりの生じた部分は粘着力が低下する要因ともなるおそれがある。また、しわや重なりを生じないようにしながら粘着テープを貼り付けるには、粘着テープを細かく切断しながら貼り付けることも考えられるが、作業性が大幅に悪化することとなる。一方、可曲性を有する粘着体、特に糸状である粘着体であれば、曲線や曲面、凹凸などの複雑な形状の部分に貼り付ける際にも、しわや重なりを生じることなく強固に貼り付けることができる。さらに、かかる粘着体は、貼り付けたい部分に、一度に、すなわち一工程で貼り付け可能であることから、作業性にも優れ、自動化ラインにも適用可能である。
【0058】
糸状の粘着体の具体的な用途の一例としては、例えば、電線や光ファイバー等のケーブル、LEDファイバーライト、FBG(Fiber Bragg Gratings、ファイバブラッググレーティング)等の光ファイバセンサ、糸、紐、ワイヤ等の各種線材(線状部材)や、細幅の部材を、所望の形態で固定する用途が挙げられる。たとえば、線材や細幅の部材を複雑な形状で他の部材に固定するような場合においても、糸状の粘着体であれば、線材や細幅の部材の有すべき複雑な形状にあわせて、はみ出しやしわ、重なりを抑えながら、優れた作業性で強固に固定することができる。なお、線材や細幅の部材を他の部材に固定する場合においては、他の部材の表面における線材や細幅の部材が固定されるべき形態にあわせて糸状の粘着体を予め貼り付けた後に、他の部材表面に貼付された粘着体にあわせて線材や細幅の部材を貼り合わせて固定することができる。あるいは、糸状の粘着体を線材や細幅の部材に貼り付けた後に、線材や細幅の部材を所望の形態で他の部材に固定してもよい。
【0059】
また、糸状の粘着体は、一の物品を他の物品の表面に仮固定(仮止め)するための、物品の仮固定(仮止め)用途にも好適に用いることができる。より具体的には、糸状の粘着体は、例えば、衣服、靴、鞄、帽子等の繊維製品や皮革製品等を製造する際の仮固定(仮止め)用途に、特に好適に用いられる。ただし、その用途はこれに限定されるものではなく、仮固定(仮止め)が所望される各種用途に好適に用いられる。
【0060】
例えば、一の物品を他の物品の表面に固定する際に、該一の物品を該他の物品の表面に糸状の粘着体を用いて予め仮固定させて位置決めした後に、両物品を熱圧着や縫製等の固定方法により固定(本固定)する。この場合において、糸状の粘着体であれば、両物品間に設けられる固定部を避けて仮固定することが容易である。例えば、繊維製品や皮革製品を縫製する場合において、糸状の粘着体により仮固定を行えば、縫製部分を避けて仮固定することが容易であり、粘着剤の針への付着を容易に防止できる。
【0061】
また、糸状の粘着体であれば、上述したように、両物品の形状が曲線や曲面、凹凸などの複雑な形状であっても、はみ出しやしわ、重なりを抑えながら良好に貼り付けでき、しかも一工程で貼り付け可能であり、作業性が良好である。
【0062】
また、例えば、繊維製品ないし皮革製品を構成する生地、布、皮革等といった変形しやすい部材であっても、糸状の粘着体による仮固定を行うことにより、引張による部材の変形が抑制ないし防止でき、固定(本固定)後の意匠性が良好となる。
【0063】
さらには、糸状の粘着体であれば、両物品の固定(本固定)後に、必要に応じて固定(本固定)された両物品間から糸状の粘着体を抜き取り除去することも容易である。このようにすれば、粘着剤のはみ出しが防止でき、残存する粘着剤の経時的な変色に由来する意匠性の劣化を良好に防止できる。
【0064】
また、糸状の粘着体であれば、粘着体を他の材質からなる糸と撚り合わせて組み合わせた糸としたり、他の材質からなる糸や布(不織布、シートを含む)と編み込んだりすることで、機能の複合化を図ることもできる。
【0065】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の粘着体送出装置によれば、粘着体を自由に送出し、対象物に貼付することが可能となる。粘着体を種々の曲線に沿って円滑に送出することができるため、種々の分野での接着作業に適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 本体
2 粘着体
4 先端部
5 巻取体
6 誘導部材
7 ローラー(圧着部)
8 キャップ
11 旋回部
13 支持部
15 回転軸
62 誘導リング
100 粘着体送出装置