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特許7248427色素沈着減少冷却処置のための医療システム、方法及びデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】色素沈着減少冷却処置のための医療システム、方法及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/10 20060101AFI20230322BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
A61F7/10 351
A61B17/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018531301
(86)(22)【出願日】2016-09-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 US2016050244
(87)【国際公開番号】W WO2017041022
(87)【国際公開日】2017-03-09
【審査請求日】2019-08-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】62/214,446
(32)【優先日】2015-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518072944
【氏名又は名称】アールツー・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・オニール
(72)【発明者】
【氏名】ジェシー・ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・スプリンガー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン・タツタニ
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】栗山 卓也
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0223975(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0216720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮膚の色素沈着を変化させるためのシステムであって、
患者の皮膚の処置領域を、前記処置領域に存在する、液体及び前記液体の粘度を増加させる濃化剤を含む結合流体に接触させるための接触表面を含む冷却処置プローブを含み、
前記接触表面が、冷却処置中に、前記結合流体を冷却して前記結合流体内に氷の結晶形成を促進するように構成された粗い面を有し、前記結合流体内の氷の結晶形成が、冷却処置中に熱伝導によって前記患者の皮膚内に伝搬するように構成され、
前記結合流体が、水または0℃近傍で凍結する流体を含み、前記冷却処置中に、前記皮膚の過冷却を制限するように構成され、
前記処置領域に適用し、結合流体を前記処置領域に保持するための流体キャリアをさらに含む、
システム。
【請求項2】
前記冷却処置プローブが、氷の形成を容易にするために前記冷却処置プローブの前記接触表面を振動させるための振動部を含み、前記粗い面が1.6μm以上の表面粗さRaを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記振動部が超音波トランスデューサを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記結合流体が、前記患者の皮膚の処置領域への適用のために氷核形成剤を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記氷核形成剤が、細菌、真菌、煤または塵を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記氷核形成剤が、たんぱく質、リポたんぱく質、または長鎖脂肪族アルコールもしくはアミノ酸を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記流体キャリアが均一な厚さを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記流体キャリアが布地材料を含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
患者の皮膚の色素沈着を変化させるためのシステムであって、
皮膚の処置領域に適用されるように構成され、結合流体に浸されるように構成され、前記皮膚の処置領域に前記結合流体を保持するように構成され、前記結合流体が、液体及び前記液体の粘度を増加させる濃化剤を含む、流体キャリアと、
前記流体キャリアを接触させるための接触表面を含む冷却処置プローブと、を含み、
前記冷却処置プローブの前記接触表面が、前記流体キャリア内に保持される前記結合流体内に、氷の結晶形成を促進するように構成され、
前記結合流体が、水または0℃近傍で凍結する流体を含み、前記冷却処置中の前記皮膚の過冷却を制限するように構成された、システム。
【請求項10】
前記流体キャリアが均一な厚さを有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記流体キャリアが布地材料を含み、前記冷却処置プローブが、表面粗さRaが1.6μm以上であり、前記流体キャリア内に保持される前記結合流体内に氷の結晶形成を促進するように構成された粗い面を含む、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
患者の皮膚の色素沈着を変化させるためのシステムであって、
皮膚に冷却処置を適用するために、患者の皮膚の処置領域を前記皮膚の前記処置領域に存在する結合流体に接触させるための接触表面を含む冷却処置プローブであって、前記結合流体が、液体及び前記液体の粘度を増加させる濃化剤を含む、冷却処置プローブと、
冷却処置の適用中に、前記冷却処置プローブの前記接触表面を振動させるための振動部と、を含み、
前記結合流体が、水または0℃近傍で凍結する流体を含み、処置中に前記皮膚の過冷却を制限するように構成され、
前記処置領域に適用し、結合流体を前記処置領域に保持するための流体キャリアをさらに含む、
システム。
【請求項13】
前記振動部が超音波トランスデューサを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記超音波トランスデューサが、20から100kHzの範囲で、ある音響エネルギーで超音波パルスを伝達するように構成された、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記振動部が音響トランスデューサを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記振動部が、モーターの駆動シャフトに不均衡な質量を有するモーターを含み、前記冷却処置プローブの前記接触表面が、前記結合流体内に氷の結晶形成を促進するように構成された、表面粗さRaが1.6μm以上である粗い面を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記結合流体が、前記患者の皮膚の処置領域に適用するために前記結合流体内に氷の結晶形成を促進するように構成された氷核形成剤を含む、請求項9から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記氷核形成剤が、細菌、真菌、煤または塵を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記氷核形成剤がたんぱく質、リポたんぱく質、または長鎖脂肪族アルコールもしくはアミノ酸を含む、請求項17に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年9月4日に出願された米国仮特許出願第62/214446号の利益及び優先権を主張し、その内容の全体が全ての目的のために本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明の実施形態は、一般に患者の皮膚の色素沈着を減少させるための方法、デバイスおよびシステムに関する。より具体的には、本実施形態は、一般に皮膚の凍結(水の相変化)の可能性を増大させるための方法、デバイスおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚組織などの生体組織の制御された凍結は、様々な効果を生じうる。従来の冷凍プローブなどの特定の組織凍結手順及びデバイスは、組織を強く凍結させ、細胞に損傷を発生させうる。適度な凍結は、皮膚の色素沈着の表出に影響を与えるなどの特定の効果を発生させうることが観察されている。
【0004】
皮膚の外観を明るくし、または皮膚の色素沈着に制御可能な影響を与えることができる美容製品に対する需要が存在する。例えば、美容上の理由のために全体的な外観に変化を与えるために肌の色全体または皮膚のある領域の色を明るくすることが望ましい場合がありうる。また、皮膚内の色素の局所量が過剰であることに起因しうる大きな染み、カフェオレ状スポット、黒皮症、または目の下のくまなどの皮膚の特定の色素過剰領域を明るくすることも、美容上の理由から望ましい場合がありうる。色素過剰は、UV露光、加齢、ストレス、外傷、炎症などの様々な要因に起因しうる。そのような要因は、メラニン形成細胞による皮膚内のメラニンの過剰生成またはメラニン形成をもたらす可能性があり、これらは色素過剰領域の形成をもたらしうる。そのような色素過剰領域は、典型的には表皮内の過剰なメラニンに関連するが、これらは真皮内に沈着した過剰なメラニンに起因することもありうる。
【0005】
皮膚組織の色素沈着減少は、低温外科手術などで生じうるような、皮膚の一時的な冷却または凍結に対する副作用として観察されてきた。皮膚の冷却または凍結後の色素沈着の喪失は、メラニン生成の減少、メラノソーム生成の減少、メラニン形成細胞の破壊または表皮層の下部領域におけるケラチン細胞内へのメラノソームの移送の抑制に起因しうる。結果的に得られる色素沈着減少は長期間持続し、または永続的でありうる。しかし、これらの凍結処置のいくらかは、皮膚組織の色素過剰領域を発生させうることが観察されている。色素沈着の増加または減少の程度は、冷却処置の温度や組織が凍結条件にさらされる時間の長さを含む冷却または凍結条件の特定の態様に依存しうる。
【0006】
いくつかの色素沈着減少処置、デバイスおよびシステムがこれまでに開発されてきたが、さらなる改善が望まれうる。この目的のために、皮膚凍結の一貫性及び皮膚凍結の持続時間の一貫性を改善することが望まれうる。そのような改善は、全体的な色素沈着減少の一貫性を改善するのに望ましい場合がありうる。例えば、いくつかの冷却処置において、皮膚は冷却処置の開始時に凍結する場合がありえ、またはある期間の間凝固点以下の温度(例えば0から‐5℃)まで冷却し、その後凍結する場合がありうる。いくつかの冷却処置では、皮膚は過冷却状態(凝固点より低い温度まで冷却される)になりえ、冷却処置の間全く凍結しない場合がありうる。皮膚凍結(すなわち皮膚内の水分の氷の形成)のそのようなばらつきは、最適な処置をもたらさない場合がありうる。
【0007】
上記に照らして、色素沈着減少処置、特に皮膚凍結によって行われる色素沈着減少処置の一貫性または再現性を改善することが望ましい場合がありうる。本発明の少なくともいくつかの実施形態は、凍結の発生に対して追加的な制御を行い、冷却処置の間、過冷却を制限し、またはそうでなければ皮膚の凍結を行いうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2011/0313411号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0303696号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0303697号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0223975号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は一般に、改善された冷却処置プローブ、冷却処置方法及びシステムをもたらす例示的な実施形態を有する改善された医療装置、システム及び方法に関する。いくつかの実施形態において、皮膚の凍結は、患者の皮膚の色素沈着減少の効果に対して望ましいものでありうる。一般に、本実施形態は冷却処置の間、患者の皮膚の過冷却を制限し、またはそうでなければ凍結を行いうる。いくつかの実施形態において、結合流体が冷却処置プローブと患者の皮膚との間の熱接触抵抗を低減して冷却処置を改善するために提供される。任意選択的に、流体キャリアが、治療位置における結合流体の保持を補助するために提供される。いくつかの実施形態において、結合流体は冷却処置の間、結合流体内の氷の結晶形成を促進させるために氷核形成剤を含みうる。結合流体内の氷の結晶形成は、皮膚内に伝搬し、処置中の皮膚内の過冷却の制限を行い、またはそうでなければ皮膚の凍結を促進しうる。
【0010】
本発明のいくつかの態様は、患者の皮膚の色素沈着及び/またはメラニンを変化させる方法を提供しうる。例えば、いくつかの実施形態は、患者の皮膚を明るくしうる(すなわち、色素沈着減少)。本方法は、患者の皮膚の処置領域に結合流体を適用する段階を含みうる。結合流体は、結合流体中に氷の形成を促進するように構成された氷核形成剤を含みうる。冷却処置は、適用された冷却流体が存在する処置領域に適用されうる。冷却処置及び氷核形成剤は、結合流体中の氷の結晶形成を促進しうる。結合流体中の氷の結晶形成は、患者の皮膚内に伝搬して、冷却処置中の患者の皮膚の過冷却を制限し、またはそうでなければ皮膚の凍結を促進しうる。
【0011】
氷核形成剤は有機または無機物質でありうる。任意選択的に、氷核形成剤は煤、塵、微小粒子(微粒子、ナノ粒子など)またはヨウ化銀、酸化銀もしくはアルミナの結晶などの無機物質である。結合流体に追加されうるその他の氷核形成材料は、たんぱく質、リポたんぱく質、細菌または真菌などの有機物質でありうる。長鎖脂肪族アルコールやlアスパラギン酸などのアミノ酸もまた結合流体(例えば水)に追加されうる。いくつかの実施形態において、結合流体は0℃に近い凝固点を有し、組織内の過冷却の可能性の低減を補助し、または可能性を制限しうる。
【0012】
いくつかの実施形態において、本方法は、冷却処置を適用する前に処置領域を剥離または穿孔する段階をさらに含みうる。処置領域の剥離または穿孔は、微小表皮剥離ローラーまたはレーザーを用いて、処置領域を剥離または穿孔することによって実施されうる。処置領域の剥離または穿孔は、患者の皮膚内の氷結晶の形成または伝搬を容易にしうる。
【0013】
任意選択的に、結合流体は、皮膚の処置領域に流体キャリアを適用することによって、患者の皮膚の処置領域に適用されうる。流体キャリアは事前に流体に浸され、結合流体を処置領域に保持するように構成されうる。いくつかの実施形態において、流体キャリアは均一な厚さを有する。流体キャリアは、織られた、または不繊性の布地材料でありうる。いくつかの実施形態において、結合流体は、液体の粘度を増加させる濃化剤を含む液体でありうる。濃化剤は、結合流体を処置の場所に保持することを補助しうる。
【0014】
冷却処置は、冷却プローブの処置表面を、処置の場所の結合流体に接触させることによって適用されうる。任意選択的に、冷却プローブは、皮膚の処置領域に振動を印加することによって、氷の形成を開始させ、またはそうでなければ容易にするための振動部を含みうる。振動部は、例えば音響トランスデューサ、超音波トランスデューサ、または偏心錘を有するモーターでありうる。いくつかの実施形態において、冷却処置は、冷却プローブの処置表面を処置の場所の結合流体に接触することによって適用され、この場合、冷却プローブの処置表面は、氷の結晶を保持するように構成された凹部領域を有する凹凸面または粗い表面(例えばこぶ状の表面など)を含む。表面は32から256μin(マイクロインチ)の粗さを有しうる。いくつかの実施形態において、表面は代替的に1000から2000μinまたはそれ以上の粗さを有しうる。表面粗さまたはRa(平均表面粗さ)は、典型的なパートコールアウト(part call-out)であり、表面に沿って引っ張られ、表面の局所的な高さの変動を測定するスタイラスを有するプロファイル測定器を用いた標準的な測定技術によって測定可能である。
【0015】
本発明のさらなる態様において、患者の皮膚上の処置領域に流体キャリアを適用する段階と、流体キャリアを結合流体に浸す段階と、を含みうる患者の皮膚の色素を変化させる方法が提供されうる。次いで、冷却処置は、流体キャリアによって保持された結合流体内に氷の結晶形成を促進するために、皮膚の処置領域に適用されうる。結合流体内の氷の結晶形成は、患者の皮膚内へ伝搬し、冷却処置中に患者の皮膚の過冷却を制限し、またはそうでなければ凍結を促進しうる。任意選択的に、皮膚は、冷却処置を適用する前に剥離され、または穿孔されうる。流体キャリアは均一な厚さを有しうる。流体キャリアは布地材料(例えばガーゼなど)でありうる。
【0016】
本発明のさらに他の態様において、目的領域を画定する皮膚の表皮層を剥離または穿孔する段階と、患者の皮膚の目的領域に結合流体を適用する段階と、を含みうる、患者の皮膚の目的領域の色素沈着を変化させる方法が提供されうる。冷却処置は、適用された結合流体が存在する状態で処置領域に適用されうる。冷却処置は、結合流体内の氷の結晶形成を促進し、結合流体内の氷の結晶形成は、患者の皮膚内へ伝搬し、冷却処置中に患者の皮膚の過冷却を制限し、またはそうでなければ凍結を促進しうる。
【0017】
さらなる態様において、患者の皮膚の色素沈着を変化させる方法が提供されうる。本方法は、接触表面に液体を霧吹きすることによって、冷却処置プローブの接触表面を事前処理する段階を含みうる。冷却処置プローブの接触表面は、液体の凝固点未満の温度でありうる。したがって、霧吹きされた液体は、冷却処置プローブの接触表面上に氷の結晶を形成しうる。流体キャリアは、患者の皮膚上の処置領域に適用されうる。次いで、氷の結晶を有する冷却処置プローブの事前処置された接触表面は、処置の場所の結合流体と接触されうる。事前処置によって形成される氷の結晶に加えて、冷却処置プローブは結合流体中の氷の結晶形成を促進しうる。結合流体中の氷の結晶形成は、患者の皮膚内に伝搬し、冷却処置中の皮膚の過冷却を制限し、またはそうでなければ皮膚の凍結を促進しうる。
【0018】
本発明の追加的な実施形態は、患者の皮膚の色素沈着を変化させるためのシステムを提供しうる。本システムは冷却処置プローブを含みうる。冷却処置プローブは、処置領域に結合流体を存在させつつ、患者の皮膚の処置領域に接触するための接触表面を含みうる。接触表面は、冷却処置中に結合流体内の氷の結晶形成を促進するように構成された凹部領域を有する凹凸表面を有しうる。結合流体中の氷の結晶形成は、患者の皮膚内に伝搬して、冷却処置中に患者の皮膚の過冷却を制限し、またはそうでなければ患者の皮膚の凍結を促進するように構成されうる。
【0019】
いくつかの実施形態において、冷却処置プローブは、冷却処置プローブの接触表面を振動させて氷の形成を開始させ、またはそうでなければ促進するための振動部を含みうる。振動部は、超音波トランスデューサなどでありうる。
【0020】
システムは結合流体を含みうる。結合流体は、患者の皮膚の処置領域に適用するための氷核形成剤を含みうる。氷核形成剤は細菌、真菌、煤、塵、たんぱく質、リポたんぱく質または長鎖脂肪族アルコールもしくはアミノ酸などでありうる。処置領域に適用され、結合流体を処置領域に保持するための流体キャリアが提供されうる。流体キャリアは均一な厚さを有しうる。流体キャリアは布地材料(例えばガーゼ、布など)でありうる。
【0021】
追加的な態様において、皮膚の処置領域に適用されるように構成された流体キャリアを含む、患者の皮膚の色素沈着を変化させるためのシステムが提供されうる。流体キャリアは、結合流体に浸され、皮膚の処置領域に結合流体を保持するように構成されうる。流体キャリアを接触させるための接触表面を含む冷却処置プローブが提供されうる。冷却処置プローブの接触表面は、流体キャリア内に保持された結合流体内に、氷の結晶形成を促進するように構成される。任意選択的に、流体キャリアは均一な厚さを有し、布地材料からなりうる。
【0022】
さらなる態様において、患者の皮膚の処置領域を処置領域に存在する結合流体と接触させるための接触表面を含む冷却処置プローブを含む、患者の皮膚の色素沈着を変化させるためのシステムが提供されうる。冷却処置中に結合流体内に氷の形成を開始させ、またはそうでなければ容易にするために冷却処置プローブの接触表面を振動させるために、振動部が設けられうる。結合流体内の氷の結晶形成は、患者の皮膚内に伝搬し、冷却処置中に患者の皮膚の過冷却を制限し、またはそうでなければ凍結を促進するように構成されうる。少なくともいくつかの実施形態において、振動部は超音波トランスデューサでありうる。
【0023】
本特許の範囲内にある発明の実施形態は、以下の特許請求の範囲によって定義されるものであり、この発明の概要によるものではない。この発明の概要は、本発明の様々な態様の上位の概略であり、以下の発明の詳細な説明においてさらに説明される概念のいくつかを紹介するものである。この発明の概要は、特許請求の範囲の対象の主要部または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲の対象の範囲を決定するために別個に用いられることを意図するものでもない。本出願の対象は、本特許の明細書全体の適切な部分、図面のいずれかまたは全て、及び各特許請求の範囲を参照することによって理解されるべきである。
【0024】
本発明は、以下の説明を読み、添付の図面を参照することによってより理解されるであろう。これらの特徴は例示の目的のみのために提供されるものであり、本発明にいかなる限定を課すものでもない。
【0025】
本発明のさらなる詳細、態様及び実施形態は、図面の参照とともに、例としてのみ説明されるものである。図面において、同様の参照符号は同様の、または機能的に類似の要素を識別するために使用される。図面内の要素は単純化及び明確化のために図示されており、必ずしもスケール通りに描かれてはいない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のいくつかの実施形態に従う例示的な方法を示す。
図2A】本発明の例示的な実施形態に従う皮膚組織内に色素沈着減少を発生させるために使用可能な例示的な装置の例示的な断面側面図である。
図2B】いくつかの実施形態に従う図2Aの装置の接触要素の例示的な構成の底面図である。
図2C】いくつかの実施形態に従う図2Aの装置の接触要素の例示的な構成の底面図である。
図2D】いくつかの実施形態に従う図2Aの装置の接触要素の例示的な構成の底面図である。
図2E】いくつかの実施形態に従う図2Aの装置の接触要素の例示的な構成の底面図である。
図2F】いくつかの実施形態に従う図2Aの装置の接触要素の例示的な構成の底面図である。
図2G】いくつかの実施形態に従う図2Aの装置の接触要素の例示的な構成の底面図である。
図2H】いくつかの実施形態に従う図2Aの装置の接触要素の例示的な構成の底面図である。
図2I】いくつかの実施形態に従う図2Aの装置の接触要素の例示的な構成の底面図である。
図2J】いくつかの実施形態に従う図2Aの装置の接触要素の例示的な構成の底面図である。
図2K】いくつかの実施形態に従う図2Aの装置の接触要素の例示的な構成の底面図である。
図3】本発明のいくつかの実施形態に従う患者の皮膚の処置領域への流体キャリアの適用を示す。
図4】本発明のいくつかの実施形態に従う処置領域への氷核形成剤または濃化剤を有する結合流体の適用を示す。
図5】本発明のいくつかの実施形態に従う、皮膚の処置領域の少なくとも一部を凍結されるために例示的な冷却処置プローブによって適用される冷却処置を示す。
図6】本発明のいくつかの実施形態に従う皮膚最上層のメラニン及び/またはメラニン形成細胞の減少を示す。
図7】本発明のいくつかの実施形態に従う、処置前の患者の皮膚の目的領域の例示的な剥離または穿孔を示す。
図8】本発明のいくつかの実施形態に従う、皮膚の処置領域への(氷核形成剤及び/または濃化剤を有する、または有しない)結合流体の適用を示す。
図9】本発明のいくつかの実施形態に従う、患者の皮膚の処置領域の少なくとも一部を凍結させるために例示的な冷却処置プローブによって適用される冷却処置を示す。
図10】本発明のいくつかの実施形態に従う、皮膚の最上層のメラニン及び/またはメラニン形成細胞の減少を示す。
図11】本発明のいくつかの実施形態に従う、皮膚組織内の色素沈着減少を発生させるために使用可能な例示的な冷却処置装置の断面側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
前述のように、本発明のいくつかの実施形態は、患者のメラニン形成細胞に影響を及ぼす技術に関しうる。例えば、いくつかの実施形態は患者の皮膚を冷却することにより、皮膚の色素沈着を低減するための方法及びシステムに関しうる。いくつかの実施形態において、皮膚を凍結することが利益をもたらしうる。さらに、皮膚をより制御可能かつ一貫した方法で凍結させることが有利でありうる。凍結事象は、必ずしも必要とはされないが、色素沈着の減少という望ましい結果だけでなく、表皮の壊死という短期間の副作用及びいくつかの場合には長期の紅斑及び色素過剰沈着も有することが示されている。以前の研究では、皮膚凍結のタイミングは一貫しないことが分かった。同じ処置パラメータの反復が行われた場合に、異なる結果(凍結までの時間、または凍結の不足)が見られた。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、患者の皮膚内の凍結の発生に対する制御の増大を提供し、皮膚内の過冷却を制限し、またはそうでなければ皮膚の凍結を促進しうる。本明細書で説明される方法及びシステムは、患者の皮膚内の凍結の可能性、予測可能性及び/または一貫性(例えば、特定の温度及び/または冷却速度における凍結の再現性)を向上させ、それによって処置中の皮膚の凍結の継続時間にわたって追加的な制御を提供しうる。いくつかの実施形態は、冷却処置中に患者の皮膚の過冷却を制限し、またはそうでなければ皮膚の凍結を促進することに関しうる。皮膚の過冷却は、皮膚内に水の凝固または結晶化を生じることなく水の凝固点以下まで皮膚を冷却することでありうる。
【0028】
皮膚の色素沈着を明るくするための様々な冷却システムが開発されている(例えば特許文献1から3)。一般に、これらのシステムは皮膚組織(典型的には皮膚の真皮/表皮接合部までの皮膚の表面層)に接触し、凍結させるように構成された冷却接触表面を提供する。皮膚組織の凍結は、メラニンの生成を減少させ、メラノソームの生成を減少させ、メラニン形成細胞を破壊し、及び/または表皮層の下部領域内のケラチン形成細胞内へのメラノソームの移送を阻害し、それによってある一定期間または永続的に皮膚を明るくさせる(すなわち色素沈着減少)。
【0029】
いくつかの治療は、0℃から‐20℃の範囲の温度まで、比較的短い時間枠、例えば15秒またはそれ以下、及び最大2分以上で比較的穏やかな皮膚冷却を使用しうる。いくつかの実施形態において、皮膚冷却は、アルミニウムプレート(例えば冷却部)の温度を制御し、冷却部を皮膚に直接適用し、それによって皮膚から冷却部への熱伝導を通して皮膚を冷却することによって実施されうる。いくつかの例において、冷却処置(例えば‐5から‐10℃)は、皮膚の局所的な過冷却を発生させ、そこでは組織が凍結しない場合がありうることが観察されている。組織の過冷却は、それのみでは色素沈着減少を引き起こすには十分ではなく、処置を長くする場合がありうる。したがって、本発明の実施形態は、色素沈着減少のための冷却処置の間、組織の過冷却の発生の低減または制限を補助する。
【0030】
いくつかの実施形態において、処置システムの接触表面と皮膚との間に結合流体が提供されうる。結合流体は、水または0℃近傍で凍結する別の流体でありうる。流体は、組織の過冷却を低減し、凍結を促進するための氷核形成剤(ice nucleating agents、INAs)を含みうる。氷核形成剤は、有機(例えばたんぱく質、リポたんぱく質、細菌、真菌など)または無機(例えば塵、煤、ヨウ化銀など)でありうる。いくつかの実施形態において、結合流体は、長鎖脂肪族アルコールまたはアミノ酸(Lアスパラギン酸など)を含みうる。いくつかの態様において、皮膚は冷却処置前に、または処置中に穿孔され、または剥離されうる。穿孔または剥離は、表皮に小さな穴を形成し、氷の結晶の結合流体から皮膚の最上層内への伝搬を容易にしうる。いくつかの実施形態において、流体は、均一な層が一貫して適用されうるように、粘性を増加させる濃化剤を含む。他の実施形態において、流体は、界面において流体の均一な層を保持するために、織られた、または不繊性の布などのキャリア内にロードされる。流体のロードは、処置の際に行われ、またはキャリアが使用のためにロードされ、あらかじめパッケージされうる。
【0031】
図1は、本発明のいくつかの実施形態に従う、患者の皮膚内のメラニン量またはメラニン形成細胞を変化させるための例示的な処置方法100を示している。102において、患者の皮膚の処置領域が識別されうる。104において、処置領域は剥離され、または穿孔されうる。106において、流体キャリアが処置領域に適用されうる。108において、結合流体が流体キャリアに適用され、流体キャリアは結合流体の少なくとも一部を処置領域108に保持しうる。110において、冷却処置プローブの接触表面が、種結晶で事前処置されうる。112において、処置領域における皮膚を冷却し、及び/または凍結するための結合流体が処置領域に存在する状態で冷却処置プローブの接触表面が処置領域と接触される。114において、冷却処置中に振動が処置領域に印加され、結合流体及び/または患者の皮膚内の氷の結晶形成を促進しうる。
【0032】
いくつかの実施形態において、患者の皮膚の処置領域は、皮膚の色素が沈着した染みでありうる。色素が沈着した染みは、色素過剰沈着、そばかす、母斑、肝斑、加齢斑、カフェオレ状スポット、黒皮症などの色素が沈着した染みを含みうる。いくつかの実施形態において、色素が沈着した染みは、表面上の染みや、例えば肝斑、母斑、そばかすなどの表皮中の染みでありうる。さらなる実施形態において、色素が沈着した染みは、真皮中の染み、例えば黒皮症などの強く色素が沈着した染みでありえ、または含みうる。任意選択的に、処置領域は、患者が皮膚の色を全体的に明るくしたいと考える皮膚領域でありうる。
【0033】
いくつかの実施形態において、識別された処置領域の皮膚表面は、剥離され、または穿孔されうる(104)。冷却処置中に、氷が冷却処置プローブの界面において形成され始めうる。皮膚を凍結することができるように、氷は冷却プローブ界面から皮膚内へ伝搬する必要がありうる。しかし、障壁を超えて水分の流動を制御するように特別に設計された汗腺などの特別な領域が存在するにもかかわらず、表皮は一般に水を通さない。しかし、氷の伝搬は、皮膚が冷却されるにつれて表皮にわたって制限され、これは組織の過冷却につながりうる。これを制限するために、小さな穴が表皮に形成され、氷が自由にこの障壁を横切って伝搬することができるようにされうる。穴は、粗い布、ブラシ、ヘチマもしくはスポンジで剥離することによって、表皮剥離もしくは微小表皮剥離ローラーもしくはシステムを使用して、レーザー、電気穿孔を使用して、または複数の追加的な技術もしくはそれらの組み合わせを使用して開始されうる。例えば、いくつかの実施形態において、0.5mmの針を有する表皮ローラーが、手動で表皮を穿孔するために使用されうる。任意選択的に、ロールではなく真皮内に穴を開ける約0.5mmの深さの設定のダーマペン(dermapen)が使用されうる。いくつかの実施形態において、表皮が穿孔されうる。いくつかの実施形態において、真皮が最小限に穿孔されうる。任意選択的に、いくつかの実施形態において、皮膚の剥離または穿孔の様々な組み合わせが実行されうる。皮膚の剥離または皮膚の穿孔がいくつかの実施形態では望ましいが、これらの段階は本発明の他の実施形態ではなくてもよく、または避けられうることは理解すべきである。
【0034】
いくつかの実施形態において、凍結は冷却処置アプリケータと皮膚との間の界面に流体を規定し、保持することによってより信頼性良く引き起こされうる。例えば、いくつかの実施形態において、水が、冷却プローブアプリケータと皮膚との間の熱接触抵抗を低減し、それによって冷却を改善するために使用されうる結合流体でありうる。いくつかの実施形態において、結合流体は溶液、懸濁液、乳液、コロイドなどでありうる。例えば、いくつかの実施形態において、結合流体は粘性を増加させるための濃化剤を含みうる。濃化剤は、処置の場所に結合流体を維持するのに役立ちうる。
【0035】
しかし、水のような何らかの結合流体は、特定の条件下では典型的な凝固点より低い温度で過冷却しうる。したがって、いくつかの実施形態において、過冷却の可能性を制限もしくは低減し、またはそうでなければ凍結を促進するために、何らかの物質が結合流体と混合されうる。過冷却の発生を制限し、またはそうでなければ凍結を促進しうるそのような物質のいくつかは、煤、塵、微粒子またはヨウ化銀結晶などの無機物質を含む。結合流体に追加可能な他の物質は、たんぱく質、リポたんぱく質、細菌または真菌などの有機物質である。例えば、いくつかの実施形態ではシュードモナス・シリンガエが含まれ、氷核形成剤としてふるまいうる。任意選択的に、長鎖脂肪族アルコールやlアスパラギン酸などのアミノ酸も水、または0℃近くの凝固点を有するその他の流体に添加され、組織内の過冷却の可能性を低減しうる。いくつかの実施形態において、添加物は結合流体の凝固点を顕著に下げないことが好適でありうる。例えば水はほぼ0℃の凝固点を有し、これは皮膚組織の凝固点と非常に近い。
【0036】
凍結は、追加的には界面にキャリアを適用することによって促進されうる。流体キャリアは、結合流体を処置領域に保持するための補助となりうる。流体キャリアは、結合流体に浸された一片のガーゼまたは、その他の織られた、もしくは不繊性の材料でありうる。キャリアは、何らかの体積を占有しうるが、キャリアを横切って結合流体を自由に移動させうる。このキャリアは、皮膚の凍結を容易に行いうる所望の体積の水またはその他の流体が界面に確実に存在する補助となりうる。いくつかの実施形態において、流体キャリアが均一な厚さであることが好適でありうる。任意選択的に、流体キャリアは処置プローブと結合されうる。しかし、多くの実施形態において、流体キャリア及び流体は、個別にパッケージされ、使い捨ての部材として提供されうる。いくつかの実施形態において、流体キャリアが、予備冷却されたアプリケータに適用され、流体キャリアを結合流体の少なくとも部分的な凍結を通してアプリケータの表面に一時的に取り付けうる。流体キャリアの使用は任意選択的であることは理解されるべきである。本発明のいくつかの実施形態において、患者の皮膚の、制御され、予測可能な凍結は、例えば結合流体単独の利用を通して提供されうる。
【0037】
冷却プローブは、任意選択的には特許文献1、特許文献2、特許文献3または特許文献4に記載の冷却処置装置でありえ、これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。例えば、図2Aは、本発明のいくつかの実施形態に従う、皮膚組織に色素沈着減少を生じさせるために使用されうる例示的な装置10の側面断面図を示している。例示的な装置10は、冷却構成部12と熱的に連通して提供された接触要素11を含みうる。特定の例示的な実施形態において、接触要素11及び冷却構成部12は、単一の材料から少なくとも部分的に形成されうる。制御構成部15が任意選択的に提供され、冷却構成部12の特定の態様、例えば温度、時間による停止などを制御するために使用されうる。冷却構成部12、制御構成部15及び/または接触要素11は、任意選択的に、例えば装置10の取り扱い及び位置決定を容易にするために、図2Aに示されるように、筐体またはハンドピース13内に、またはこれらに取り付けられて提供されうる。図2Aに示された例示的な装置10は、必ずしもスケール通りに描かれていない。例えば、冷却構成部12及び接触要素11の相対的な寸法は、図2Aに示された比率に限定されない。本開示のさらなる例示的な実施形態において、接触要素11は、冷却構成部12の寸法と比較して、幅または断面積が、より大きく、またはより小さい場合がありうる。
【0038】
接触要素11は、皮膚表面に接触するように構成された遠位端(接触表面14)を含みうる。遠位端表面14は、実質的に平坦でありうる。本開示のさらなる例示的な実施形態において、遠位端表面14は、装置10が処置される皮膚の領域に配置されたときに、処置される皮膚組織の局所的な形状に良好に適合し、及び/または皮膚表面との良好な熱的接触を提供するために凸面または凹面でありうる。本開示のまたさらなる例示的な実施形態において、接触要素11は、例えば、本明細書で説明されるような異なる大きさ、形状及び/または表面形状を有する複数の接触要素11が、単一の冷却要素12と共に使用されうるように、冷却構成部12から取り外し可能でありうる。
【0039】
遠位端接触表面14は、皮膚の広い領域の処置を容易にするように、皮膚のある領域の表面と接触するように構成された大きな幅及び直径、例えば、約3から10cmよりも大きな、または約5cmよりも大きな直径または幅を有しうる。さらなる実施形態において、遠位端表面14の幅は小さく、例えば1から2cm程度またはそれ以下でありえ、これは、温度制御の改善及び/または皮膚上の特定の形状の処置を容易にしうる。
【0040】
接触要素11は、金属もしくは金属合金、または高い熱拡散率を有するその他の材料から形成可能であり、例えば、これらの熱物理的特性の値は、皮膚組織の対応する値よりも大きい。熱拡散率εは、材料の熱伝導性と体積熱容量の積の平方根に等しい。熱拡散率は、周囲と熱を交換し、そうする場合には一定の温度を維持する材料の能力の測定値である。例えば、温度がそれぞれT1、T2である2つの半無限材料が接触された場合の界面温度Tは、それらの相対熱拡散率ε1及びε2に依存し、Ti=T1+(T2-T1)*[ε2/(ε2+ε1)]である。したがって、例えばε2>>ε1の場合、2つの材料が接触する界面の温度は、熱が一方から他方に流れるにしたがってT2に近い状態を保ちうる。このように、第2の材料が第1の表面と接触した時、第1の材料の表面は、ずっと高い熱拡散率を有する第2の材料の温度近くまで冷却されることとなる。
【0041】
例えば、接触表面11が、少なくとも部分的に、または全体的に、真鍮、銅、銀、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、黒鉛、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、従来の接触冷却プローブに使用されるその他の材料、またはそれらの組み合わせからなりうる。例えば、接触要素11は、全体的にまたは少なくとも部分的に、皮膚組織よりもずっと高い熱伝導率を有する材料から形成可能であり、接触要素11の遠位端表面14と接触する組織の部分からの熱の取り出しを容易にするために使用されうる。さらに、皮膚組織よりもずっと高い熱拡散率、例えば皮膚の熱拡散率の約10倍である熱拡散率を有する材料は、より容易に低温に維持されうる。そのような高い熱拡散率の材料は、それによって熱を接触要素11と接触した組織の部分から、より低い熱拡散率を有する材料よりも効率的に引き出し、接触界面における組織の温度のより良好な制御を容易にしうる。
【0042】
本開示のある例示的な実施形態において、接触表面11の遠位端接触表面14は、冷却構成部12と接触する接触要素11の近位端よりも小さな面積を有しうる。そのような幾何形状は、特定の利点を提供しうる。例えば、接触要素11のより細い、またはテーパー形状の遠位端は、例えば、筐体13によって視覚が妨げられるのを低減しつつ、冷却される皮膚表面の特定の位置における遠位端表面14のより正確な配置を容易にすることができる。さらに、接触表面11の比較的大きな近位端は、冷却構成部12によって直接冷却されうる、より大きな領域を提供することができ、より小さな遠位端接触表面14からの熱の引出しを容易に増加させる。ある実施形態において、接触構成部の遠位端接触表面14の近位端の面積は、遠位端接触表面14の面積の少なくとも2倍、例えば3から5倍の大きさでありうる。
【0043】
接触要素11の遠位端表面14は、図2Aの断面側面図に示されるように、接触要素11の接触表面14に形成された複数のくぼみ21、例えば刻み目またはポケットを有して提供されうる。そのようなくぼみ21は、実質的に円形であり、約0.3mmから約3mmの間、約0.5mmから2mmの間、または任意選択的に約1mmの直径または幅を有しうる。くぼみの深さは約0.3mmから約2mmの間、約0.5mmから約1.5mmの間、または任意選択的には約1mmでありうる。遠位端表面14の縁は、図2Aに示されるように丸められ、または面取りされ、これは装置10が処置のために皮膚表面に対して配置されたときにいかなる鋭い、または険しい縁または角との接触も避けつつ、遠位端表面14の皮膚表面との連続的な接触を容易にすることができる。
【0044】
くぼみ21を有する接触表面14の例示的な底面図が、図2Bに示されている。接触表面14のくぼみ21の面積の割合は、例えば約0.05から約0.50の間、任意選択的には約0.10から約0.30の間、または約0.20でありうる。そのようなカバー面積の割合の例示的な範囲及び値は、接触表面14によって直接皮膚と接触するのに十分な面積を提供しつつ、色素沈着減少効果を生じさせるために局所的な冷却及び/または凍結効率を改善するように、くぼみ21の十分な面積密度も提供することができる。
【0045】
図2A及び2Bに示された例示的なくぼみの大きさ及び深さは実質的に均一であるが、単一の接触要素11に関する個別のくぼみの大きさ及び/または深さは、本開示のさらなる実施形態において、本明細書で説明された範囲内で変動しうる。
【0046】
接触表面14のくぼみ21の例示的な配列は、図2Bに示されるように実質的にランダムとすることができる。本開示のさらなる例示的な実施形態において、図2Cに示されるように、くぼみ21は径方向に配列されて提供されうる。そのような例示的な配列/構成は、くぼみ21の密度をより低くすることができ(例えば、隣接するくぼみ21の間の平均間隔をより幅広くする)、これは接触表面14の周辺部近傍のくぼみ21を低減する効果をもたらしうる。またさらなる実施形態において、くぼみ21は、例えば図2Dに示されるように六角形配列、または正方形配列などの規則的な配列に提供されうる。
【0047】
本開示のさらなる例示的な実施形態において、くぼみ21は、図2Eの例示的な構成に示されるように、細長い形状を有することができる。そのような細長いくぼみ21は、約0.5mmから約3mmの間、または任意選択的に約1mmである、より小さな寸法(例えば、幅)を有することができる。そのような細長いくぼみ21の長い方の寸法(例えば長さ)は、幅よりも大きく、例えば幅の2倍またはそれよりも長くされうる。例えば、図2Eに示される例示的なくぼみ21は、幅よりも約5倍長い長さを有する。他の例示的な幅に対する長さの比は、本開示のさらなる例示的な実施形態で提供されうる。細長いくぼみ21の深さは、約0.3mmから約2mmの間、約0.5mmから約1.5mmの間、または任意選択的には約1mmでありうる。図2Aに示されるように、これらのくぼみ21が接触表面14と出会う遠位端表面14の縁は、丸められ、及び/または面取りされうる。
【0048】
図2Eに示された例示的な細長いくぼみ21の長軸または寸法は、実質的に互いに対して平行でありうる。本開示のまたさらなる例示的な実施形態において、いくつかの細長いくぼみ21の長軸は、例えば図2Fに示されるように、他のものにたいして実質的に垂直でありうる。本開示のまたさらなる例示的な実施形態において、細長いくぼみ21の長軸は、接触表面14上で互いに様々な角度で提供されうる。細長いくぼみ21は、図2E及び2Fに示されるように、規則的な配列またはパターンで提供されうる。代替的に、または追加的に、細長いくぼみ21は、例えば図2Gに示されるように、不均一またはランダムな配列で提供されうる。
【0049】
本開示のさらなる例示的な実施形態において、単一の遠位端接触表面14上に提供されるくぼみ21のそれぞれは、異なる大きさ、形状及び/または配向を有しうる。例えば、細長いくぼみ21のそれぞれは、例えば図2Hに示されるように、同じ幅(小さい寸法)及び異なるアスペクト比(例えば幅に対する長さの比)を有しうる。本開示のさらなる例示的な実施形態において、くぼみ21のそれぞれは、例えば図2Iに示されるように、互いに異なる幅及び/または異なる長さを有しうる。本開示のまたさらなる例示的な実施形態において、接触表面14は、例えば図2Jに示されるように、円形のくぼみ21及び細長いくぼみ21の両方を含みうる。一般に、様々なくぼみ21の幅(または直径)及び深さは、本明細書で説明された大きさの範囲内にあることが好ましい場合がありうる。本開示のさらに別の例示的な実施形態において、細長いくぼみ21は、例えば図2Kに示されるように複数の実質的に平行な溝として提供されうる。そのようなくぼみ21の端は、図2Kの例示的な構成に示されるように、接触表面14の周辺部に存在しうる。代替的に、細長いくぼみ21は、接触表面21の周辺部を通って延在することができ、くぼみ21の少なくともいくつかは、接触表面14の長さ全体にわたる連続的な溝を形成する。
【0050】
くぼみ21の内面はプロファイルが円形とされ、円筒形とされ、もしくは正方形とされ、または他の形状を有しうる。例えば、円形のくぼみ21の内面は円筒形でありえ、または球もしくは楕円の一部の形状を有しうる。細長いくぼみ21の内面は、円形もしくは楕円円筒形の一部などのように丸められた形状を有してもよく、または例えば正方形の溝など、内角を有して提供されうる。
【0051】
一般に、接触表面においてくぼみ21の隣接するものの間の最も近い距離は、少なくともくぼみ21の幅と同じ長さとすることができる。隣接するくぼみ21の間のこの例示的な距離は、例えば図2Bから2Kに示されるように、それらの幅よりも大きくてもよい。そのような間隔は、くぼみ21それぞれの近傍から十分な熱除去を容易にし、くぼみ21の間の接触表面14の十分な面積を提供することができ、それによって接触表面14は皮膚表面に従って配置されうる。
【0052】
図2Bから2Kに示された例示的な接触表面14の形状は、実質的に円形である。本開示のさらなる例示的な実施形態において、接触表面14は、実質的に正方形、長方形または六角形である形状を有して提供可能である。そのような形状は、複数の処置領域の顕著な重複を低減し、または防止しつつ、それらの隣接領域を接触表面14と連続的に接触させることによって、皮膚のより大きな領域の処置を容易にすることができる。さらなる実施形態において、接触表面14は、さらに異なる形状を有することができる。
【0053】
接触表面の形状のアスペクト比は、様々な例示的な実施形態において変化されうる。例えば、正方形、長方形または六角形の接触表面14は、皮膚組織の隣接する領域に装置10を連続的に配置することによって、皮膚組織のより大きな面積を均一に覆うことを容易にすることができ、実質的に皮膚の所望の処置領域のすべてが、そのような処置領域の重複がほとんどなく、または全くなく、装置10によって冷却される。例えば、加齢斑などの処置すべき特定の皮膚の領域に合致し、または特定の皮膚の部分の形状に合致する、その他の例示的な形状及び/または大きさのプレートも提供されうる。
【0054】
例示的なくぼみの形状、寸法、くぼみパターン、接触表面の大きさ、形状など、またはそれらの組み合わせの任意の1つまたはそれ以上は、本開示の例示的な実施形態及び特徴のいずれとも使用可能である。例えば、単一の接触表面14は、複数のくぼみの形状(例えば円形、細長いものなど)、空間配列などを含むことができ、単一の接触表面14に設けられたそのような特定の様々なくぼみ21は、1つまたは複数の特徴的な直径、幅及び/または深さを、本明細書に説明されたように有することができる。
【0055】
図示されていないが、他の実施形態において、接触要素11の遠位端表面は平滑な表面でありうる(例えばくぼみがなく、突起が存在しない)ことを理解すべきである。接触要素11の平滑な遠位端表面は、粗い面であってもなくてもよい。いくつかの実施形態において、平滑な遠位端表面は、(さらに詳細に説明するように)清浄化及び/または事前処置を含む、処置の間、氷の結晶を捕らえ、保持するのを補助することができるように、凹凸面とされたり、粗い面とされたりしうる。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態において、冷却処置プローブの接触表面は、種結晶で事前処置されうる。前述のように、過冷却の発生は、凝固点またはそのすぐ下の温度で冷却結合流体のための核形成源として働く氷核形成剤の存在によって制限され、または低減されうる。いくつかの実施形態において、種結晶は凍結した水または氷(もしくは凍結した結合流体)でありうる。アプリケータ表面が皮膚の冷却直前にアルコールで清浄化されると、過冷却がより発生しやすいことが観察されている。アルコールはアプリケータ表面上の氷核形成を減速させ、または排除し、それによってアプリケータ表面上への利用可能な氷の結晶を低減し、または排除すると考えられる。したがって、いくつかの実施形態において、冷却処置の接触表面は水またはその他の液体の霧でスプレーされてもよく、それらは処置前に接触表面上で凍結し、確実にアプリケータが氷の結晶を有することとなる。いくつかの実施形態において、空気からの水を確実に接触表面上で凍結させるために、処置の前に所定の時間、アプリケータ表面を凍結するよりも低い温度に保持することができることが有用でありうる。いくつかの実施形態において、保持時間は0.5から3分、好適には典型的な環境で1から2分でありうる。保持時間は、部分的には雰囲気の湿度に依存する場合があり、この場合、より乾燥した環境ではより長い保持時間が好ましくなりうる。
【0057】
さらなる実施形態において、接触表面は、アルコールまたはその他の清浄剤で清浄化された後であっても、氷の結晶を保持するための溝または凹部を含むように凹凸を有するものとされうる。任意選択的に、接触表面は氷の結晶を留めうるか、または氷の種結晶形成を補助しうる粗い凹凸を含みうる。いくつかの実施形態において、接触表面は64μinまたはそれより大きなR(例えば、64から128μinまたはそれ以上)、さらなる実施形態においては1000から2000μinのRを有しうる。ある実施形態において、接触表面はこぶ形状とされうる。こぶを有する表面は、0.1から0.8mmの深さの溝を有しうる。さらに、これらの凹部領域は、最初に温かい皮膚に接したときに氷が融解するのを防ぐ。
【0058】
冷却処置プローブの接触表面は、結合流体が処置領域112にある間、処置領域と接触されうる。冷却処置は、結合流体内への氷の結晶形成を促進しうる。次いで、結合流体内の氷の結晶形成は、皮膚を凍結させるために患者の皮膚内へ伝搬しうる。前述のように、皮膚の剥離もしくは穿孔など、氷核形成剤を有するもしくは有しない結合流体、流体キャリアの使用、冷却処置プローブの接触表面の事前処置、及び/または凹凸のある、もしくは粗い接触表面を有する処置プローブの利用は、冷却処置の間、患者の皮膚の過冷却を制限し、またはそうでなければ凍結を促進し、それによってより一貫した皮膚凍結処置を提供しうる。
【0059】
特許文献1から4に説明された処置装置は本発明の実施形態と共に使用されうるが、本発明のさらなる実施形態において、冷却処置プローブは、冷却処置プローブの接触表面を振動させるための1つまたは複数の振動部を含みうる。振動または、冷却処置プローブによって引き起こされるその他の種類の機械的摂動は、流体媒質中及び/または患者の皮膚内の氷核形成を開始させ、またはそうでなければ容易にし、もしくは促進する補助となりうる。いくつかの実施形態において、音響トランスデューサまたは超音波が、核形成事象の制御を補助するためにシステム設計に組み込まれうる。したがって、いくつかの実施形態において、振動部は1つまたは複数の音響または超音波トランスデューサ(圧電素子など)を含みうる。超音波トランスデューサは、20から100kHzの範囲の音響エネルギーを伝達しうる。任意選択的に、振動部は駆動シャフトに不均衡な質量を有する電気モータでありうる。一体化された振動部または超音波トランスデューサを有する冷却処置プローブが、いくつかの実施形態では利益を有するが、他の実施形態では振動部を有しない冷却処置プローブが使用されうることは理解すべきである。
【0060】
特定の本方法100が前述されたが、いくつかの段階は任意選択的であり、本発明の他の実施形態では取り除かれうることは理解すべきである。例えば、氷核形成剤及び/もしくは濃化剤を有するかまたは有しない結合流体がいくつかの実施形態では望ましい場合がありうるが、冷却処置の他の実施形態は、結合流体を使用せずに実施されうる。さらに、前述の段階の順序は、いかなる方法によっても限定的でない。処置方法の別の実施形態は、所望のように異なる順序および組み合わせで段階を実施しうる。
【0061】
図3から6は、患者の皮膚202の処置領域200の処置を示している。処置領域200は、そばかす、母斑、肝斑、加齢斑、カフェオレ状スポットまたは黒皮症などの色素が沈着した染みなどでありうる。皮膚202は、真皮層204及び表皮層206を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で説明される方法及びシステムは、真皮/表皮接合部208まで皮膚組織の凍結をもたらす。皮膚組織の凍結は、メラノソームの生成を低減し、メラニン生成細胞を破壊し、及び/または表皮層の下部領域内のケラチン生成細胞へのメラノソームの移動を阻害し、それによって肌を明るくしうる。
【0062】
図3は、本発明のいくつかの実施形態に従う患者の皮膚202の流体キャリア210の適用を示している。流体キャリア210は、前述のように一片のガーゼまたはその他の織られた、もしくは不繊性の材料でありうる。流体キャリア210は、ある量の結合流体を処置領域200に保持することを補助しうる。
【0063】
図4は、本発明のいくつかの実施形態に従う氷核形成剤または濃化剤214を有する結合流体212の適用を示している。任意選択的に、結合流体212は、いくつかの実施形態ではシリンジまたは点滴用カニューレ216を用いて領域に適用されうる。結合流体は水またはその他の流体でありうる。氷核形成剤は、有機(例えば細菌、真菌、たんぱく質など)または無機(例えば塵、煤、ヨウ化銀など)でありうる。濃化剤は、処置領域200から結合流体212が流出する量を制限するために、結合流体212の粘性を増加させるために使用されうる(例えばでんぷんなど)。
【0064】
図5は、本発明のいくつかの実施形態に従う、皮膚202の少なくとも一部を凍結させるために例示的な冷却処置プローブ218によって適用された冷却処置を示している。冷却処置プローブ218は、冷却接触表面220を含む。冷却接触表面220は、処置温度(例えば-20から0℃、-10から-2℃)まで冷却されうる。任意選択的に、冷却接触表面220は、接触表面220を処置領域200に適用する前に、空気中の水分が接触表面220上に種結晶を形成するように、処置前に閾時間(例えば20秒から2分)の間、処置温度まで冷却されることによって事前処置されうる。湿度の低い状況では、冷却接触表面220は、流体への適用が接触表面220に氷の結晶を形成するように、接触表面220上に流体を霧吹きするか、そうでなければ適用することによって、事前処置されうる。いくつかの実施形態において、冷却接触表面220は、凹凸または粗い面を有しうる。接触表面220の凹凸面または粗い面は、患者の皮膚202の過冷却の量を制限しうる。いくつかの実施形態において、冷却処置プローブ218はさらに、1つまたは複数の振動部222を含みうる。1つまたは複数の振動部222は、超音波トランスデューサなどであってもよく、患者の皮膚202の過冷却を制限し、またはそうでなければ凍結を促進するために、冷却処置プローブ218の接触表面220を振動させ、または機械的に動揺させうる。いくつかの実施形態において、接触表面220は、接触表面220の凹凸面、結合流体212、氷核形成剤214及び/または振動部222の補助を受けて、患者の皮膚202内への氷の結晶の形成224を促進する。例えば、接触表面220は、結合流体212内(及び流体キャリア210)内への氷の結晶の形成226を促進しうる。次いで、結合流体212内の氷の結晶形成226は、表皮層206内の氷の結晶形成224を促進するために、皮膚202を通して進行しうる。
【0065】
図6は、本発明のいくつかの実施形態に従う表皮層206内の氷の結晶形成224後の皮膚202の表皮層206内のメラニンの減少を示している。
【0066】
図7から10は、患者の皮膚302の処置領域300の処置を示している。処置領域3300は、そばかす、母斑、肝斑、加齢斑、カフェオレ状スポットまたは黒皮症などの色素が沈着した染み等でありうる。皮膚302は、真皮層304及び表皮層306を含む。いくつかの実施形態において、本明細書で説明される方法及びシステムは、真皮/表皮接合部308まで皮膚組織の凍結をもたらす。皮膚組織の凍結は、メラニン生成を低減し、メラノソーム生成を低減し、メラニン形成細胞を破壊し、及び/または表皮層の下部領域内のケラチン生成細胞内へのメラノソームの移動を抑制し、それによって、皮膚を明るくしうる。
【0067】
図7は、本明細書のいくつかの実施形態に従う、処置前の患者の皮膚302の例示的な剥離または穿孔を示している。穴309は、粗い布もしくはブラシを用いて、微小表皮剥離ローラーもしくはシステムを用いて、レーザーを用いて、または複数の追加的な技術(例えばサンドペーパーなど)を用いて剥離することによって生成されうる。図8は、本発明のいくつかの実施形態に従う皮膚302の処置領域300への結合流体312の適用を示している。本質的ではないが、いくつかの実施形態では、氷核形成剤または濃化剤が、結合流体312へ追加されうる。図示されるように、結合流体312は、処置前の皮膚302の剥離/穿孔によって、患者の皮膚302の表皮層306内へある深さだけ浸透しうる。
【0068】
図9は、本発明のいくつかの実施形態に従う皮膚302の少なくとも一部を凍結させるために、例示的な冷却処置プローブ318によって適用される冷却処置を示している。冷却処置プローブ318は、冷却処置プローブ218に類似しうる。凹凸を有する接触表面及び/または振動部は、患者の皮膚302内への氷の形成を促進するのに有益でありうるが、前述のように参照により組み込まれた特許文献1から4に示されるようなその他の冷却処置プローブも使用されうる。
【0069】
冷却処置プローブ318は、結合流体312内への氷の結晶形成326を促進しうる。その後、氷の結晶形成326は、皮膚302内に生成された穴309を通って表皮層306内へ進行しうる。表皮層内の氷の結晶形成は、図10に示されるように患者の皮膚の表皮層06内のメラニン及び/またはメラニン形成細胞の低減につながりうる。
【0070】
図11は、本発明のいくつかの実施形態に従う皮膚組織内の色素沈着減少を生じさせるのに使用されうる例示的な冷却処置装置400の例示的な断面側面図を示す。例示的な装置400は、熱電冷却部412と熱的に連通して設けられた冷却アプリケータ411を含みうる。熱交換器416は、冷却アプリケータ411とは反対側で熱電冷却部412と熱的に結合しうる。ある例示的な実施形態において、冷却アプリケータ411及び冷却構成部412は、単一の材料から少なくとも部分的に形成可能である。前述のように、振動部418(例えば音響トランスデューサ、超音波トランスデューサなど)が提供されうる。いくつかの実施形態において、超音波トランスデューサ418は、超音波トランスデューサ18が熱電冷却部に対して熱交換器416の反対側にあるように、熱交換器416の遠位側と結合されうる。制御部415が設けられ、熱電冷却部412の特定の態様、例えば温度などを制御するのに使用されうる。追加的に、制御部415は、超音波トランスデューサ418からの超音波の送達を制御する(例えば、タイミング、出力、周波数など)ために、超音波トランスデューサ418と結合されうる。熱電冷却部412、制御部415、超音波トランスデューサ418及び/または冷却アプリケータ411は、例えば装置400の取り扱い及び位置決定を容易にするために、図11に示されるように、任意選択的に筐体またはハンドピース413内に設けられ、またはこれらに取り付けられうる。図11に示された例示的な装置400は必ずしもスケール通りに描かれていない。
【0071】
例えば、熱電冷却部412及び冷却アプリケータ411の相対的な寸法は、図11に示された比率に限定されない。本開示のさらなる例示的な実施形態において、冷却アプリケータ411は、熱電冷却部412の寸法と比較して、幅または断面積がより大きく、またはより小さくされうる。
【0072】
冷却アプリケータ411は、皮膚表面と接触するように構成された遠位端(接触)表面14を含むことができる。遠位端表面414は、実質的に平坦であることができる。本開示のさらなる例示的な実施形態において、遠位端表面414は、装置400が処置される皮膚の領域におかれたときに、処置される皮膚表面の局所的な形状により良好に整合し、及び/または皮膚表面と良好な熱的接触をもたらすために、凸面または凹面とすることができる。本開示のまたさらなる例示的な実施形態において、冷却アプリケータ411は、例えば、本明細書に記載されたような異なる大きさ、形状及び/または表面の特徴を有する複数の冷却アプリケータ411が、単一の熱電冷却部412と共に使用可能であるように、熱電冷却部412から取り外し可能でありうる。
【0073】
遠位端接触表面414は、皮膚の大きな面積の処置を容易にするように、皮膚の領域の表面と接触するように構成された大きな幅または直径、例えば、約3から10cmよりも大きく、または約5cmよりも大きい直径または幅を有することができる。さらなる実施形態において、遠位端表面414の幅は、皮膚上の温度制御の改善及び/または特定の特徴部の処置を容易にしうる、小さな、例えば1から2cm程度またはそれ未満でありうる。
【0074】
本開示の対象が特定の例とともに本明細書において説明されたが、主張される対象は、その他の方法で実施されてもよく、異なる要素または段階を含んでもよく、他の既存のまたは将来の技術と組み合わせて使用されてもよい。
【0075】
この説明は、個別の段階の順序または要素の構成が明示的に説明されている場合を除いて、様々な段階または要素の中に、または間に、任意の特定の順序または構成を暗示しているとして解釈されるべきではない。図面で示され、または上述された構成要素の異なる構成は、図示されておらず、説明されていない構成要素および段階とともに可能である。同様に、いくつかの特徴及び下位の組み合わせは有用であり、その他の特徴及び下位の組み合わせを参照することなく用いられうる。本発明の実施形態は、限定的な目的ではなく例示的な目的のために説明されたのであり、代替的な実施形態は、本特許を読めば明らかであろう。したがって、本発明は前述の実施形態または図面に示された実施形態に限定されるのではなく、様々な実施形態及び改良が、以下の特許請求の範囲から逸脱することなくなされうる。
【符号の説明】
【0076】
100 処置方法
10 冷却処理装置
11 接触要素
12 冷却構成部
13 筐体またはハンドピース
14 遠位端表面
15 制御構成部
21 くぼみ
200 処置領域
202 皮膚
204 真皮層
206 表皮層
210 流体キャリア
212 結合流体
214 氷核形成剤または濃化剤
216 シリンジまたは点滴用カニューレ
218 冷却処置プローブ
220 冷却接触表面
222 振動部
224 氷の結晶形成
226 氷の結晶形成
300 処置領域
302 皮膚
304 真皮層
306 表皮層
308 真皮/表皮接合部
312 結合流体
318 冷却装置プローブ
326 氷の結晶形成
400 冷却処置装置
411 冷却アプリケータ
412 熱電冷却部
413 筐体またはハンドピース
414 遠位端表面
415 制御部
416 熱交換器
418 振動部
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11