(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】混合ポリオキシアルキレンの側鎖を有する、低範囲ないし中範囲の減水性ポリマー
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20230322BHJP
C04B 24/06 20060101ALI20230322BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20230322BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20230322BHJP
C08F 220/26 20060101ALN20230322BHJP
C04B 103/30 20060101ALN20230322BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/06 A
C04B24/12 A
C04B24/26 B
C04B24/26 D
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C08F220/26
C04B103:30
(21)【出願番号】P 2018557778
(86)(22)【出願日】2017-05-02
(86)【国際出願番号】 US2017030532
(87)【国際公開番号】W WO2017192507
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-03-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-18
(32)【優先日】2016-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515150265
【氏名又は名称】ジーシーピー・アプライド・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クオ,ローレンス・エル
【合議体】
【審判長】井上 猛
【審判官】佐藤 陽一
【審判官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-101265号公報
【文献】特開2003-286058号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00- 32/02
C08F220/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和可能なセメント質組成物中で低範囲ないし中範囲の減水を達成する方法であって、水及びセメントを混合し、水対セメント(w/c)比が少なくとも0.44、そして0.80以下である、水和可能なセメント質混合物を形成する工程、
さらに、前記水及びセメントと、以下のモノマー成分(A)、(B)、(C)、および場合により(D)から形成される少なくとも1つの櫛形カルボキシレートコポリマーを混合する工程、
を含む方法:
(A)構造式
【化1】
[式中、R
1およびR
2は個々に水素原子またはメチル基を表わし、R
3は水素または-COOM基を表わし、Mは水素原子またはアルカリ金属を表わし、AOは2ないし4個の炭素原子を有するオキシアルキレン基またはそれらの混合物を表わし、「m」は0ないし2の整数を表わし、「n]は0または1の整数を表わし、「o」は0ないし4の整数を表わし、「p」はオキシアルキレン基の平均数を表わし、かつ、8ないし25の整数であり、並びにR
4は水素原子またはC
1ないしC
4アルキル基を表わす]により表わされる第1のポリオキシアルキレンモノマーと、
(B)構造式
【化2】
[式中、R
1およびR
2は個々に水素原子またはメチル基を表わし、R
3は水素または-COOM基を表わし、Mは水素原子またはアルカリ金属を表わし、AOは2ないし4個の炭素原子を有するオキシアルキレン基またはそれらの混合物を表わし、「m」は0ないし2の整数を表わし、「n]は0または1の整数を表わし、「o」は0ないし4の整数を表わし、「q」はオキシアルキレン基の平均数を表わし、かつ、20ないし100の整数であり、並びにR
4は水素原子またはC
1ないしC
4アルキル基を表わす]により表わされる第2のポリオキシアルキレンモノマーと、
(C)構造式
【化3】
[式中、R
5およびR
6は個々に水素原子またはメチル基を表わし、R
7は水素原子、C(O)OR
8またはC(O)NHR
8を表わし、R
8はC
1ないしC
4アルキル基を表わし、そしてMは水素原子またはアルカリ金属を表わす]により表わされる不飽和カルボン酸モノマーと、場合により
(D)構造式
【化4】
[式中、R
9、R
10およびR
11はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基またはC(O)OHを表わし、XはC(O)NH
2、C(O)NHR
12、C(O)NR
13R
14、O-R
15、SO
3H、C
6H
4SO
3HまたはC(O)NHC(CH
3)
2CH
2SO
3
Hを表わし、R
12、R
13、R
14、およびR
15は、それぞれ独立して、C
1ないしC
5アルキル基を表わす]により表わされる不飽和の、水溶性モノマーと
から形成され、
ただし、成分(A)の成分(B)に対するモル比は15:85ないし85:15であり、そして更に成分(C)の、成分(A)および成分(B)の和に対するモル比は90:10ないし50:50であり、
成分(B)の第2のポリオキシアルキレンモノマー中の「q」と、成分(A)の第1のポリオキシアルキレンモノマー中の「p」との間の差は、少なくとも8の整数であり、
前記方法によって調製される、コンクリート中の水含有量は12重量%未満減少され、その一方前記ポリマーで処理しないコンクリート混合物と比較して同じスランプを達成する。
【請求項2】
成分(A)または成分(B)中の「m」、「n」および「o」は、それぞれ、0、1および0の整数である、請求項1の方法。
【請求項3】
成分(A)の第1のポリオキシアルキレンモノマー中の「p」と、成分(B)の第2のポリオキシアルキレンモノマー中の「q」との和は120以下である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つのカルボキシレートコポリマーは、更に、成分(D)モノマーを使用する重合から誘導される構成基を含み、そして成分(D)から誘導される構成基の、成分(A)、成分(B)および成分(C)から誘導される構成基の和に対するモル比は、1:99ないし20:80である、請求項1の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の櫛形カルボキシレートコポリマーは10,000ないし40,000の重量平均分子量を有する、請求項1の方法。
【請求項6】
前記櫛形カルボキシレートコポリマーの有効量は、セメントの0.04ないし0.14重量%である、請求項1の方法。
【請求項7】
前記セメントおよび水に、グルコン酸またはその塩、アルカノールアミン、脱気剤、空気連行剤およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を添加する工程を更に含む、請求項1の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水和可能なセメント質組成物の改良、そしてより具体的には、低範囲ないし中範囲の減水用途における効果的改良を可能にするために、ポリオキシアルキレン含有側基内に、2つの異なる、しかし特定のサイズ範囲を含むポリカルボキシレート含有櫛形ポリマーを使用する、特定の、水/セメント比範囲を有するコンクリートまたはモルタルの減水軟練化(water-reducing plasticization)に関する。
【背景技術】
【0002】
減水性化学添加剤は、コンクリートが未処理のコンクリートに比較して一定のスランプに到達するために、より少ない水分を必要とするように、前記コンクリートのミックスを軟練化するために使用される水量を減少させることが知られている。水対セメント比(w/c)がより低いと、前記セメントの量を増加せずに、より高い強度のコンクリートをもたらす場合がある。
【0003】
更に、ポリカルボキシレート(「PC」)タイプのセメント分散剤は、含水量が、未処理のコンクリートに比較して12ないし30パーセント減少する高範囲の減水(「HRWR」)用途のために広く使用されることも知られている。HRWR軟練化剤は「超軟練化剤(superplasticizers)」と呼ばれ、コンクリートが高度に流動性であり、かつ、ほとんどもしくは全く圧縮固化努力を伴わずに現場に早急に配置されることを可能にする。
【0004】
例えば、Tanaka等の特許文献1は、HRWR分散剤として作用し、そして(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルタイプのモノマーおよび(メタ)アクリル酸タイプのモノマーから製造されたPCコポリマーを開示し、そして彼らは、HRWR分散剤が理想的な減水能力を達成するためには、大型分子サイズが必要であることを強調した(特許文献1参照)。
【0005】
別の例において、Hirata等の特許文献2は、HRWR分散剤として働き、そしてポリアルキレングリコールエーテル基剤のモノマーおよびマレイン酸基剤のモノマーから製造されるPCコポリマーを開示した(特許文献2参照)。Tanaka等と同様に、Hirata等は、100,000までにも及ぶ分子サイズ範囲を開示し、そして多数のアルキレンオキシド基を使用することが好ましいと力説した。
【0006】
特許文献3および4において、Lorenz等は、不飽和ジカルボン酸、1ないし25オキシアルキレン単位を有する不飽和アルケニルエーテル、26ないし300オキシアルキレン単位を有する不飽和アルケニルエーテルおよび加水分解可能な部分を含む不飽和モノマー、のうちの4成分を含むPCコポリマーを開示した(特許文献3、4参照)。この参考文献は、前記コポリマーは当初はセメント粒子との比較的低い結合親和性を示し、そして最初にセメント質組成物中に過剰投入されて、施工軟度(workability)を得ることができたことを示す。やがて、前記の加水分解可能な部分は鹸化されて、前記セメント質組成物中に施工軟度の保持をもたらす。
【0007】
本発明者は、大量の水を補う(replace)ことが必要でも望ましくもない場合がある、特定のコンクリートまたはモルタルミックスにおける低範囲ないし中範囲の用途に対し、前記の先行技術の参考文献中に教示されるPCコポリマーは、前記コンクリートま
たはモルタルミックスに対して十分な初期の施工軟度を与えない、と考える。
【0008】
セメント分散剤の用途のためのPCコポリマーの分野における大部分の先行技術は、前記セメント質組成物が、水対セメント比が低いように、大量の減水を達成するHRWRの目的を意図すると思われる。もう一つの例として、特許文献5において、Yamashita等は、1ないし100個のオキシアルキレン基を有するアルケニルエーテル、11ないし300個のオキシアルキレン基を有するアルケニルエーテルおよび一つの不飽和カルボン酸を含むPCコポリマーを開示した(特許文献5参照)。またYamashita等は、前記セメント質組成物において、非常に大量の減水が達成される超軟練化の(すなわち、HRWR)の用途を明らかに好んだことが読み取られ、そして事実、本参考文献は、低範囲ないし中範囲の減水用途に比較してずっと低いと考えられる、非常に低い水対セメント比(例えば、0.25ないし0.30w/c)を教示することが、実施例中に認められる場合がある。
【0009】
これらの典型的な当該技術分野の参考文献に教示される広大なポリカルボキシレートポリマーのサイズおよび重量範囲に比較して、コンクリート産業は、主として低範囲ないし中範囲の用途のためのリグニンタイプの軟練化剤のような非PCのセメント分散剤を使用しながら、HRWRの用途のために、より高価なポリカルボキシレート(PC)タイプのコポリマーを使用することに慣れてきたので、PCコポリマーは、低範囲ないし中範囲の軟練化のためには十分に追求されてこなかった、と本発明者は考える。従って、コンクリート産業において、PCタイプのコポリマーは通例、高範囲の減水(HRWR)の用途のために、すなわち、水和水(hydration water)中12ないし30パーセントの減水を達成するために保持されるように見える。
【0010】
本発明者は、近年、この傾向に抵抗することを試みてきた。例えば、特許文献6(本発明の共同譲受人により所有される)において、Kuo等は、その方法がポリオキシアルキレンモノマー、不飽和カルボン酸モノマーおよび、場合により、不飽和水溶性の親水性モノマーから製造される1種以上のPCコポリマーを使用する工程を含む、0.40ないし0.80の、水/セメント比を有する水和可能なセメント質組成物において低範囲ないし中範囲の減水を達成する方法を開示した(特許文献6参照)。
【0011】
典型的には高範囲の減水(HRWR)用途に使用される、リグニンタイプの減水剤および従来の(例えば、より大型の、市販規模の)ポリカルボキシレートタイプのポリマーに比較して、比較的低い減水(すなわち、12パーセント未満の減水)において添加剤の用量効率(dosage efficiency)を達成するポリカルボキシレートの櫛形ポリマーを使用することにより、リグニンタイプの減水剤に対する代替物を提供し、そして特許文献6中のKuo等に対する、代替的な、低範囲および中範囲の減水的アプローチを提供することが本発明の目的である(特許文献6参照)。
【文献】米国特許第6,187,841号明細書
【文献】欧州特許第0 850 894号明細書
【文献】米国特許出願第2011/0166261号明細書
【文献】米国特許出願第2012/0046392号明細書
【文献】特開2001/302305号公報
【文献】米国特許出願第2016/0090323号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
セメント質組成物中の高範囲の減水(HRWR)のために大型ポリカルボキシレート(PC)の櫛形コポリマーを使用する業界の傾向に対抗するために、本発明者は、これを使用せず、水対セメント(w/c)比が低い組成物中に使用される従来の超軟練化剤に比較
されると、劣ったHRWR性能を達成するにもかかわらず、該ポリオキシアルキレン含有側基内に2つの異なるが特定のサイズ範囲を有するPCコポリマーを使用する工程は、本発明が、低範囲ないし中範囲の減水用途(LRWR、MRWR)に使用されるときに、リグニンおよび別の非PCタイプの分散剤に対する満足な代替物を提供するようにW/Cが増加される場合に、驚くべきことには、そして予期されなかったことには、優れた性能を提供すると考える。
【0013】
本発明は、先行技術のPCタイプの「超軟練化剤」またはHRWRセメント分散剤ポリマーに対する性能の改善を提供する工程において、特定のサイズをもつPCコポリマー成分を使用して、コンクリートまたはモルタルのミックス中の低範囲ないし中範囲の減水を達成する方法を説明する。
【0014】
本発明はまた、本発明により教示されるPCコポリマーを従来のHRWR用途に使用される市販の対照PCポリマーと比較するとき、特定の、高い、水-セメント(w/c)比における添加剤の用量効率に関して、予期されなかった、また驚くべき改善を示す。
【0015】
従って、櫛形カルボキシレートコポリマーを使用する水和可能なセメント質組成物の低範囲ないし中範囲の減水を達成するための本発明の典型的な方法は、
以下のモノマー成分(A)、(B)、(C)、および場合により(D):
(A)構造式
【0016】
【0017】
[式中、R1およびR2は個々に水素原子またはメチル基を表わし、R3は水素または-COOM基を表わし、Mは水素原子またはアルカリ金属を表わし、AOは2ないし4個の炭素原子(好ましくは2個の炭素原子)を有するオキシアルキレン基またはそれらの混合物を表わし、「m」は0ないし2の整数を表わし、「n]は0または1の整数を表わし、「o」は0ないし4の整数を表わし、「p」はオキシアルキレン基の平均数を表わしそして5ないし35の整数であり、並びにR4は水素原子またはC1ないしC4アルキル基を表わす]により表わされる第1のポリオキシアルキレンモノマー、
(B)構造式
【0018】
【0019】
[式中、R1およびR2は個々に水素原子またはメチル基を表わし、R3は水素または-COOM基を表わし、Mは水素原子またはアルカリ金属を表わし、AOは2ないし4個の炭素原子(好ましくは2個の炭素原子)を有するオキシアルキレン基またはそれらの混合物を表わし、「m」は0ないし2の整数を表わし、「n]は0または1の整数を表わし、「o」は0ないし4の整数を表わし、「q」はオキシアルキレン基の平均数を表わしそして20ないし200の整数であり、並びにR4は水素原子またはC1ないしC4アルキル
基を表わす]により表わされる第2のポリオキシアルキレンモノマー、
(C)構造式
【0020】
【0021】
[式中、R5およびR6は個々に水素原子またはメチル基を表わし、R7は水素原子、C(O)OR8またはC(O)NHR8を表わし、R8はC1ないしC4アルキル基を表わし、そしてMは水素原子またはアルカリ金属を表わす]により表わされる不飽和カルボン酸モノマー、並びに、場合により
(D)構造式
【0022】
【0023】
[式中、R9、R10およびR11はそれぞれ独立して水素原子、メチル基またはC(O)OHを表わし、XはC(O)NH2、C(O)NHR12、C(O)NR13R14、O-R15、SO3H、C6H4SO3HまたはC(O)NHC(CH3)2CH2SO3Hまたはそれらの混合物を表わし、R12、R13、R14、およびR15はそれぞれ独立してC1ないしC5アルキル基を表わす]により表わされる不飽和水溶性モノマー、から形成され、並びに
成分(A)の成分(B)に対するモル比は15:85ないし85:15であり、そして更に成分(C)の、成分(A)および成分(B)の和に対するのモル比は90:10ないし50:50である、少なくとも1つの櫛形カルボキシレートコポリマーを、水および水和可能なセメントと混合して、少なくとも0.44の、そしてより好ましくは少なくとも0.51の、水/セメント(w/c)比を有し、かつ、該w/c比は0.80以下で、そしてより好ましくは0.75以下である、水和可能な混合物を形成する工程、
を含む。
【0024】
好ましい実施態様において、成分(A)、B)、(C)、および場合により(D)から形成される前記コポリマーは、ゲル透過クロマトグラフィー(標準液としてポリエチレングリコールを使用し、そして以下に更に詳細に説明される条件を使用する)により測定される、8,000ないし50,000、より好ましくは10,000ないし40,000、そしてもっとも好ましくは12,000ないし30,000の重量平均分子量を有する。本発明は更に、前記の典型的方法に従って製造されるコンクリートおよびモルタルを含むセメント質組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の更なる利点および特徴は以下に更に詳細に考察される。
【0026】
前記に要約されたとおり、本発明は、櫛形カルボキシレートポリマー構造内に特定の構造および数値範囲を使用して、低範囲ないし中範囲の減水が達成される方法およびセメン
ト質組成物を提供する。
【0027】
用語「セメント質(cementitious)」は、ポートランドセメントを含む材料か、言い換えれば(otherwise)微細な砂利(例えば、砂)、粗い砂利(例えば、粉砕小石)またはそれらの混合物を一緒にまとめる(hold together)ための結合剤として働く材料かを表わす。用語「セメント」は、水硬性ケイ酸カルシウムおよび、相互に粉砕された(interground)添加剤としての硫酸カルシウムの1種以上の形態(例えば、石膏)からなるクリンカーを微粉砕することにより製造されるポートランドセメントのような水硬性結合材を表わす。典型的には、ポートランドセメントは細粒炭(fly ash)、顆粒化爆破粉炭(granulated blast furnace slag)、石灰、天然のポゾラン、またはそれらの混合物のような1種以上の補助的セメント質材料と混合され、そして組成物(blend)として提供される。
【0028】
本明細書で使用される用語「水和可能な(hydratable)」は、水との化学反応により硬化されるセメントおよび/またはセメント質材料を表わす。ポートランドセメントのクリンカーは、主として水和可能なケイ酸カルシウムからなる、一部融解された塊である。前記ケイ酸カルシウムは本質的には、ケイ酸三カルシウム(セメント化学の表記では3CaO・SiO2、“C3S”)およびケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO2、“C2S”)の混合物であり、前者が主要形態であり、比較的少量のアルミン酸三カルシウム(3CaO・Al2O3、“C3A”)およびテトラカルシウムアルミノフェライト(4CaO・Al2O3・Fe2O3、“C4AF”)を伴う。例えば、Dodson,Vance H.,Concrete Admixtures(Van Nostrand Reinhold,New York NY 1990)、1頁を参照されたい。
【0029】
本明細書に使用される用語「コンクリート」は一般に、水、セメント、砂、粗い砂利(粉砕小石または石のような)および1種以上の任意的な化学添加剤を含む、水和可能なセメント質混合物を表わす。
【0030】
本明細書で使用される用語「コポリマー」または「ポリマー」は、本発明の典型的な方法と、本発明の方法により製造されるセメント質組成物とにおいて説明されるとおり、3種の異なるモノマー成分(成分「A」、「B」および「C」と指定)の使用から、そして場合により、4種の異なるモノマー成分(すなわち、「D」と指定される少なくとも1種の任意的モノマーを更に含む)の使用から、誘導または形成される成分を含む化合物を表わす。
【0031】
従って、本発明の典型的な方法は、以下のモノマー成分:
(A)構造式:
【0032】
【0033】
[式中、R1およびR2は個々に水素原子またはメチル基を表わし、R3は水素または-COOM基を表わし、Mは水素原子またはアルカリ金属であり、AOは2ないし4個の炭素原子(好ましくは2個の炭素原子)を有するオキシアルキレン基またはそれらの混合物を表わし、「m」は0ないし2の整数を表わし、「n]は0または1の整数を表わし、「
o」は0ないし4の整数を表わし、「p」はオキシアルキレン基の平均数を表わしそして5ないし35の整数であり、並びにR4は水素原子またはC1ないしC4アルキル基を表わす]により表わされる第1のポリオキシアルキレンモノマー、
(B)構造式:
【0034】
【0035】
[式中、R1およびR2は個々に水素原子またはメチル基を表わし、R3は水素または-COOM基を表わし、Mは水素原子またはアルカリ金属であり、AOは2ないし4個の炭素原子(好ましくは2個の炭素原子)を有するオキシアルキレン基またはそれらの混合物を表わし、「m」は0ないし2の整数を表わし、「n]は0または1の整数を表わし、「o」は0ないし4の整数を表わし、「q」はオキシアルキレン基の平均数を表わしそして20ないし200の整数であり、並びにR4は水素原子またはC1ないしC4アルキル基を表わす]により表わされる第2のポリオキシアルキレンモノマー、
(C)構造式:
【0036】
【0037】
[式中、R5およびR6は個々に水素原子またはメチル基を表わし、R7は水素原子、C(O)OR8またはC(O)NHR8を表わし,R8はC1ないしC4アルキル基であり、そしてMは水素原子またはアルカリ金属である]により表わされる不飽和カルボン酸モノマー、並びに、場合により
(D)構造式:
【0038】
【0039】
[式中、R9、R10およびR11はそれぞれ独立して水素原子、メチル基またはC(O)OHを表わし、XはC(O)NH2、C(O)NHR12、C(O)NR13R14、O-R15、SO3H、C6H4SO3HまたはC(O)NHC(CH3)2CH2SO3Hまたはそれらの混合物を表わし、R12、R13、R14、およびR15はそれぞれ独立してC1ないしC5アルキル基を表わす]により表わされる不飽和の水溶性モノマー、を有し、並びに
成分(A)の成分(B)に対するモル比は15:85ないし85:15であり、そして更に成分(C)の、成分(A)および成分(B)の和に対するモル比は90:10ないし50:50である、少なくとも1つの櫛形カルボキシレートコポリマーを、水および水和
可能なセメントと混合して、少なくとも0.44、そしてより好ましくは少なくとも0.51の、水/セメント(w/c)比を有し、並びに前記w/c比は0.80以下、そしてより好ましくは0.75以下である、水和可能な混合物を形成する工程:を含む。
【0040】
本発明の典型的な方法において、前記水和可能なセメント質混合物は、前記セメントのコンクリートに対する比が240ないし340kg/m3である、低範囲ないし中範囲の減水用途のためにデザインされたコンクリート(典型的には、砂のような微細な砂利および、石または粉砕小石のような粗い砂利の両方を含む)である。以下のモノマー成分(A)、(B)、(C)、および場合により(D):
(A)構造式:
【0041】
【0042】
[式中、R1およびR2は個々に水素原子またはメチル基を表わし、R3は水素または-COOM基を表わし、Mは水素原子またはアルカリ金属を表わし、AOは2ないし4個の炭素原子(好ましくは2個の炭素原子)を有するオキシアルキレン基またはそれらの混合物を表わし、「m」は0ないし2の整数を表わし、「n]は0または1の整数を表わし、「o」は0ないし4の整数を表わし、「p」はオキシアルキレン基の平均数を表わしそして5ないし35の整数であり、並びにR4は水素原子またはC1ないしC4アルキル基を表わす]により表わされる第1のポリオキシアルキレンモノマー、
(B)構造式:
【0043】
【0044】
[式中、R1およびR2は個々に水素原子またはメチル基を表わし、R3は水素または-COOM基を表わし、Mは水素原子またはアルカリ金属を表わし、AOは2ないし4個の炭素原子(好ましくは2個の炭素原子)を有するオキシアルキレン基またはそれらの混合物を表わし、「m」は0ないし2の整数を表わし、「n]は0または1の整数を表わし、「o」は0ないし4の整数を表わし、「q」はオキシアルキレン基の平均数を表わしそして20ないし200の整数であり、並びにR4は水素原子またはC1ないしC4アルキル基を表わす]により表わされる第2のポリオキシアルキレンモノマー、
(C)構造式:
【0045】
【0046】
[式中、R5およびR6は個々に水素原子またはメチル基を表わし、R7は水素原子、C(O)OR8またはC(O)NHR8を表わし,R8はC1ないしC4アルキル基を表わし、そしてMは水素原子またはアルカリ金属を表わす]により表わされる不飽和カルボン酸モノマー、並びに、場合により
(D)構造式:
【0047】
【0048】
[式中、R9、R10およびR11はそれぞれ独立して水素原子、メチル基またはC(O)OHを表わし、XはC(O)NH2、C(O)NHR12、C(O)NR13R14、O-R15、SO3H、C6H4SO3HまたはC(O)NHC(CH3)2CH2SO3Hまたはそれらの混合物を表わし、R12、R13、R14、およびR15はそれぞれ独立してC1ないしC5アルキル基を表わす]により表わされる不飽和の、水溶性モノマー、
から形成され、並びに、
成分(A)の成分(B)に対するモル比が15:85ないし85:15であり、そして更に成分(C)の、成分(A)および成分(B)の和に対するモル比が90:10ないし50:50である、この化合物は、前記セメントのコンクリートに対する比が通常少なくとも350である、典型的には、高範囲の減水(HRWR)を目的とされる超軟練化剤とともに使用されるコンクリートと対比される。
【0049】
更に典型的な実施態様において、成分(A)の成分(B)に対するモル比は好ましくは、15:85ないし85:15、より好ましくは、20:80ないし75:25、そしてもっとも好ましくは25:75ないし65:35である。
【0050】
別の典型的な実施態様において、モノマー成分(A)または(B)中の文字「m」、「n」および「o」はそれぞれ、0、1および0の整数である。
【0051】
更に典型的な実施態様において、成分(C)の、成分(A)および成分(B)の和に対するモル比は90:10ないし50:50、より好ましくは80:20ないし60:40、そしてもっとも好ましくは、75:25ないし65:35である。成分(D)が存在するときは、成分(D)の、成分(A)、成分(B)および成分(C)の和に対するモル比は、1:99ないし20:80の範囲内にあり、そしてより好ましくは、3:97ないし10:90の範囲内にある。
【0052】
更に典型的な実施態様において、成分(A)中のオキシアルキレン反復単位の数「p」および成分(B)中のオキシアルキレン反復単位の数「q」の合計は120以下、好ましくは80以下である。
【0053】
更に典型的な実施態様において、成分(B)中のオキシアルキレン反復単位の数「q」と成分(A)中のオキシアルキレン反復単位の数「p」との差は8以上、好ましくは10以上である。
【0054】
ポリカルボキシレートコポリマーの重量平均分子量は、標準液としてポリエチレングリコール(PEG)を使用し、以下の実施例1に記載されるGPC条件に従うゲル透過クロ
マトグラフィー(GPC)により測定される、8,000ないし50,000である。より好ましくは、前記ポリカルボキシレートコポリマーの重量平均分子量は10,000ないし40,000、そしてもっとも好ましくは12,000ないし30,000である。前記分子量は以下の実施例1に記載される条件下のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定される場合がある。
【0055】
前記モノマー成分を説明するために使用されるときの用語「含む(comprises)」は、前記櫛形カルボキシレートコポリマーは、モノマー成分(A)、(B)、(C)、および場合により(D)から形成され、そしてモノマー(A)、(B)、(C)、および場合により(D)に対して説明されてきたものとは別の、異なる構造または基を有する更なるモノマー(すなわち、それに加えた)から形成される場合がある。それに対して「本質的にそれから成る(consists essentially of)」は、文脈に応じて、前記ポリカルボキシレートコポリマーの成分は、モノマー成分(A)、(B)および(C)のみを使用することから、または、モノマー成分(A)、(B)、(C)、および(D)のみ、を使用することから形成されることを意味する。従って、本発明の更なる典型的な方法において、前記櫛形カルボキシレートコポリマーはモノマー成分(A)、(B)および(C)のみを使用して形成される場合がある。
【0056】
成分(A)のモノマーの例は、限定はされないが、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルマレエートモノエステル、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルフマレートモノエステル、N-ポリ(エチレングリコール)アクリルアミド、N-ポリ(エチレングリコール)メタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)ビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)アリルエーテル、ポリ(エチレングリコール)メタリルエーテル、ポリ(エチレングリコール)イソプレニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ビニルオキシブチレンエーテル、を含み、オキシアルキレン反復単位の数は5ないし35の範囲内、より好ましくは8ないし30の範囲内、そしてもっとも好ましくは10ないし25の範囲内にある。
【0057】
成分(B)のモノマーの例は、限定はされないが、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルマレエートモノエステル、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルフマレートモノエステル、N-ポリ(エチレングリコール)アクリルアミド、N-ポリ(エチレングリコール)メタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)ビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)アリルエーテル、ポリ(エチレングリコール)メタリルエーテル、ポリ(エチレングリコール)イソプレニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ビニルオキシブチレンエーテルを含み、オキシアルキレン反復単位の数は、20ないし200の範囲内、より好ましくは25ないし150の範囲内、そしてもっとも好ましくは30ないし100の範囲内にある。成分(B)中のオキシアルキレン反復単位の数は、成分(A)中のオキシアルキレン反復単位の数より少なくとも10多い。
【0058】
モノマー成分(C)の例は、限定はされないが、アクリル酸、メタクリル酸、C1-C4アルキルマレイン酸モノエステル、N-(C1-C4)アルキルマレイン酸モノアミド、C1-C4アルキルフマル酸モノエステル、N-(C1-C4)アルキルフマル酸モノアミド、またはそれらの混合物を含む。
【0059】
任意的モノマー成分(D)の不飽和の水溶性モノマーの例は、限定はされないが、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-アルキルアクリルアミド、N-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジアルキルアクリルアミド、N,N-ジアルキルメタクリルアミド、ビ
ニルアルキルエーテル、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、3-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、これらの酸の塩、またはそれらの混合物を含む。
【0060】
本発明の更なる典型的な方法において、モノマー成分(A)、(B)、(C)、および、場合により(D)から構成される、前記櫛形カルボキシレートコポリマーの有効量は、セメント重量に基づいて、前記セメントの0.04ないし0.14重量パーセント、そしてより好ましくは0.05ないし0.11重量パーセント(重量%)の量でセメントと混合される。
【0061】
本発明のまだ更なる典型的な方法において、前記櫛形カルボキシレートコポリマーに加えて、少なくとも1種の更なる添加剤を前記の水およびセメントに添加される場合がある。このような添加剤はグルコン酸またはその塩、アルカノールアミン、脱気剤、空気連行剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される場合がある。別の典型的な方法において、前記の少なくとも1種の更なる添加剤は、前記セメントおよび水と混合される前に前記カルボキシレートコポリマーと混合される。
【0062】
従来の脱気剤(消泡剤)は本発明内に想定されるとおりの前記ポリカルボキシレートコポリマーと組み合わせて使用される場合があり、添加剤配合装置またはアプリケーターにより、必要と思われる量、または所望される量で使用される場合がある。
【0063】
本発明中に使用される場合がある脱気剤(消泡剤)の更なる例として、Gartnerの欧州特許第0 415 799号明細書は、ホスフェート(例えば、トリブチルホスフェート)、フタレート(例えば、ジイソデシルフタレート)およびポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン・ブロックコポリマー(超軟練化剤であるとは判断されない)を含む脱気性非イオン界面活性剤を教示した(欧州特許第0 415 799号明細書の6ページ、II、40-53を参照されたい)。別の例として、Gartnerの米国特許第5,156,679号明細書は、消泡剤としてアルキレートアルカノールアミン塩(例えば、N-アルキルアルカノールアミン)およびジブチルアミノ-w-ブタノールの使用を教示した。Darwin等の米国特許第6,139,623号明細書は、消泡性を有する、ホスフェートエステル(例えば、ジブチルホスフェート、トリブチルホスフェート)、ボレートエステル、シリコーン誘導体(例えば、ポリアルキルシロキサン)およびポリオキシアルキレンから選択される消泡剤を開示した。Zhang等の米国特許第6,858,661号明細書は、安定な添加剤組成物を調製するための100ないし1500の平均分子量を有する第三アミンの消泡剤を開示した。まだ更に別の例として、Kuo等の米国特許第8,187,376号明細書は、ポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン消泡剤の使用を開示した。本発明の共同譲受人により所有される前記の参考文献はすべて、引用することにより本明細書に取り込まれたものとする。
【0064】
本発明に使用される場合がある脱気剤の別の例として、Buchner等の米国特許第6,545,067号明細書(BASF)は、セメントミックスの気孔(air pore)の含量を低下させるためのブトキシル化ポリアルキレンポリアミンを開示した。Gopolkrishnan等の米国特許第6,803,396号明細書(BASF)は、脱気剤として、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド単位を含むと説明される低分子量のブロックポリエーテルポリマーを開示した。更に、Shendy等の米国特許第6,569,924号明細書(MBT Holding AG)は、非水溶性消泡剤を可溶化するための可溶化剤の使用を開示した。
【0065】
このように、従来の脱気(消泡剤)組成物は、本明細書に記載される櫛形PCポリマーとともに使用される場合があり、従って本発明の更なる典型的な方法および組成物は更に
、1種以上の脱気剤を含むと考えられる。
【0066】
本発明の更なる組成物および方法は、更に、(i)グルコン酸およびその塩のような非高範囲減水剤(非HRWR)、(ii)トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエチルイソプロパノールアミンのようなアルカノールアミンまたはそれらの混合物、(iii)使用される第1の消泡剤と、化学構造に関して異なる第2の消泡剤、(iv)トリイソプロパノールアミンまたはジエチルイソプロパノールアミンのような高次(higher)トリアルカノールアミン、リグノスルホネート、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、オキシアルキレン含有非HRWR軟練化剤、オキシアルキレン含有収縮抑制剤(HRWR添加剤として働かない)のような空気連行剤(air-entraining agent)、またはそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の別の薬剤の使用を含む(comprise or include)場合がある。
【0067】
本発明はまた、(成分A、B、C、および場合によりDから製造される)前記櫛形カルボキシレートポリマーおよび上記で説明されたばかりの任意の更なる化学添加剤を混合することにより製造される水和可能なセメント質組成物に関する。
【0068】
本発明は限定数の実施態様を使用して本明細書に説明されているが、これらの特定の実施態様は、本明細書の別の場所に説明され、請求の範囲に記載されるとおりに本発明の範囲を限定することは意図されていない。説明された実施態様からの変更およびバリエーションが存在する。より具体的には、以下の実施例は、請求される発明の実施態様の具体的な説明として与えられる。本発明は、該実施例中に示される具体的な詳細に限定されないことは理解されなければならない。実施例並びに明細書の残りの部分中のすべての部および百分率は、別記されない限り、重量または重量百分率に基づく。
【0069】
更に、特性の具体的なセット、指標の単位、条件、物理的状態または百分率を表わすもののような、本明細書または請求項中に列挙された数値のあらゆる範囲は、引用またはその他により本明細書に明白に、文字とおり取り込むことが意図され、このような範囲内に入るあらゆる数値はそのように列挙されたあらゆる範囲内の数のあらゆるサブセットを含む。例えば、下限値RLおよび上限値RUを有する一つの数値範囲が開示される場合は、常に、前記範囲内に入るあらゆる数Rが具体的に開示される。とりわけ、前記範囲内の以下の数値Rが具体的に開示される:R=RL+k*(RU-RL)、ここでkは1%の増加を伴う1%ないし100%の範囲内の変数であり、例えばkは、1%、2%、3%、4%、5%、…50%、51%、52%、…95%、96%、97%、98%、99%または100%である。更に、前記に計算されるとおりに、Rのあらゆる2個の値により表わされるあらゆる数値範囲もまた、具体的に開示される。
【実施例1】
【0070】
本項は、本発明に従う低範囲ないし中範囲の減水用途のための櫛形カルボキシレートコポリマーを製造するための典型的な方法を説明する。三首丸底フラスコに、マントルヒーター、温度調節器に接続された熱電対(thermocouple)および機械的撹拌装置を装着した。反応器に、規定量の脱イオン水を充填し、アルゴンガスでパージし、次に65°Cに加熱した。規定量の、異なる分子量を有する2種のポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(MPEGMA)、アクリル酸(AA)、3-メルカプトプロピオン酸および脱イオン水を含む溶液を前以て調製した。別に、脱イオン水中の過硫酸アンモニウムの水溶液を調製した。前記反応器の温度が65°Cに達した後に、両溶液を、撹拌しながら5.0時間にわたり滴下添加した。前記添加完了後、前記反応を68ないし70°Cで更に1.0時間継続し、次に周囲温度まで冷却することにより停止した。
【0071】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)の条件
生成されるポリマーの重量平均分子量は、標準液としてのポリエチレングリコール(PEG)および次の分離カラム:ULTRAHYDROGEL(商標) 1000、ULTRAHYDROGEL(商標) 250およびULTRAHYDROGEL(商標) 120カラムを使用するゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用することにより測定される場合がある。GPC処理条件は以下:溶離液として1%硝酸カリウム水溶液、0.6mL/分の流量、80μLの注入量、35°Cのカラム温度および屈折率検出のとおりである。
【0072】
表1は本発明のカルボキシレートポリマーのサンプル並びに対照サンプルの結果を要約する。対照1は同様な工程により合成され、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレートを含み、他方、対照2はイソプレニルポリ(エチレングリコール)エーテルおよびアクリル酸を含む市販のポリカルボキシレートである。
【0073】
【実施例2】
【0074】
本実施例は、コンクリートのスランプを測定することにより本発明の櫛形カルボン酸コポリマーの減水効果を示す。コンクリートミックスは表2に示される3種の異なる混合割合を使用して製造された。水の量は、セメントの種類および量に応じて、そして水対セメントの重量比(w/c)に応じて変動した。以下の表3に示される結果は、Holcim
Theodore プラント(Alabama,US)から供給されたセメントに基づき、スランプは、セメントに対する有効ポリマーの用量の百分率の関数として測定された[%s/c]。
【0075】
【0076】
【0077】
表3に示されるとおり、サンプル1およびサンプル2は、等しいポリマー用量においても、0.53および0.60の水対セメント比において両方の対照サンプルより高いスランプを示した。これらの結果は、これらの水対セメント比において、より低い分子量のポリ(エチレングリコール)単位を有するカルボキシレートポリマーの、より大きい減水効率を示す。
【実施例3】
【0078】
本実施例において、本発明の櫛形コポリマーの性能は、Holcim’s Ste.Genevieveプラント(Missouri,US)から供給された異なるセメントにおいて評価された。実施例2に記載された試験手順が使用され、結果は表4に要約される。
【0079】
【0080】
表4の結果は、水対セメント比が増加すると、2つの異なるポリアルキレン側鎖を有する前記櫛形コポリマーは前記対照のポリマーより優れた性能を示したことを示す。
【実施例4】
【0081】
本実施例において、本発明の櫛形コポリマーの性能は、LaFarge’sRavenaプラント(New York,US)から供給された第3のセメントにおいて評価された。実施例2に記載の試験手順が使用され、結果は表5に要約される。
【0082】
【0083】
本実施例でも、本表の結果は、水対セメント比が増加するときに、本発明のサンプル1およびサンプル3は、従来の超軟練化剤(対照1および対照2)より優れた性能を示すことを確認した。
【実施例5】
【0084】
本実施例は対照のポリマーに対する櫛形コポリマーのスランプ保持性能を比較する。該スランプを10分、30分、および45分または50分の時点で測定したことを除いて、実施例2に記載された試験手順を使用した。結果は表6、7および8に、前記の3種の異なるセメント(例えば、それぞれHolcim’s Theodore、Holcim’s Ste.GenevieveおよびLaFarge’s Ravenaから供給された)に対して示される。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
これらの表から、本発明のサンプル1およびサンプル2は,両方とも、優れた施工軟度およびスランプ保持性能を示すことが明白である。
【0089】
本発明の原則、好ましい実施態様および操作モードは、以上の明細書に説明されてきた。しかし、これらは制約的であるよりむしろ説明的であると見なすことができるので、本明細書において保護されることが意図される本発明は、開示された特定の形態に限定されるものと解釈されるべきではない。熟練当業者は、本発明の精神から逸脱せずに本明細書に基づいてバリエーションおよび変更を製造する場合がある。