IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホーチキ株式会社の特許一覧

特許7248448火災報知システム、火災報知方法、及びプログラム
<>
  • 特許-火災報知システム、火災報知方法、及びプログラム 図1
  • 特許-火災報知システム、火災報知方法、及びプログラム 図2
  • 特許-火災報知システム、火災報知方法、及びプログラム 図3
  • 特許-火災報知システム、火災報知方法、及びプログラム 図4
  • 特許-火災報知システム、火災報知方法、及びプログラム 図5
  • 特許-火災報知システム、火災報知方法、及びプログラム 図6
  • 特許-火災報知システム、火災報知方法、及びプログラム 図7
  • 特許-火災報知システム、火災報知方法、及びプログラム 図8
  • 特許-火災報知システム、火災報知方法、及びプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】火災報知システム、火災報知方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B17/00 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019027979
(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公開番号】P2020135409
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100171446
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-223361(JP,A)
【文献】特開平5-284169(JP,A)
【文献】特開2009-245070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00
23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機と、前記受信機に第1伝送路を介して接続する中継器と、前記中継器に前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介して接続する端末装置とを備え、前記端末装置は、当該端末装置が設けられた場所における火災に関する信号を前記中継器に送信し、前記中継器は、前記端末装置と前記受信機との間の通信を中継する火災報知システムにおいて、
前記受信機は、
前記中継器から受信した内容に基づいて、前記端末装置により送信された火災に関する信号が所定の状態を示している場合、前記受信機の通信先に付与可能なアドレスのうち、前記中継器に付与される通常アドレスとは異なるイベント用アドレスを、当該端末装置に付与するアドレス付与部
を有する
火災報知システム。
【請求項2】
前記アドレス付与部は、前記端末装置により送信された火災に関する信号が所定の状態を示している場合、前記端末装置が接続された中継器を示す通常アドレスと、当該中継器における当該端末装置を識別する識別情報と、前記イベント用アドレスと、を含むイベント用アドレス設定信号を前記中継器に送信し、
前記中継器は、前記イベント用アドレス設定信号を受信した場合、前記イベント用アドレスと、前記通常アドレスを対応付けて記憶する
請求項1に記載の火災報知システム。
【請求項3】
前記中継器は、前記イベント用アドレス設定信号に含まれる前記通常アドレスと前記中継器における前記通常アドレスが一致する場合、前記イベント用アドレス設定信号に含まれる前記識別情報から前記イベント用アドレスに対応する前記端末装置を特定して記憶する
請求項2に記載の火災報知システム。
【請求項4】
前記中継器は、
前記受信機から前記イベント用アドレスを指定した信号を受信した場合、前記イベント用アドレスが自身の通常アドレスと対応付けられているか判定を行い、前記イベント用アドレスが自身の通常アドレスと対応付けられている場合は、前記イベント用アドレスと対応付けられた前記端末装置から受信した内容に、当該イベント用アドレスを対応させた第1応答信号を生成する応答信号生成部を有する
請求項3に記載の火災報知システム。
【請求項5】
前記応答信号生成部は、前記イベント用アドレスが付与されていない前記端末装置から受信した内容に前記中継器に付与された前記通常アドレス及び前記端末装置を識別する識別情報を対応させた第2応答信号よりも小さい電文長である前記第1応答信号を生成する
請求項4に記載の火災報知システム。
【請求項6】
前記アドレス付与部は、前記端末装置に前記イベント用アドレスを付与した後、前記受信機により警報の解除を行うと判定された場合、前記端末装置に付与した前記イベント用アドレスを、前記端末装置に付与する前の状態に戻す
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の火災報知システム。
【請求項7】
受信機と、前記受信機に第1伝送路を介して接続する中継器と、前記中継器に前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介して接続する端末装置とを備え、前記端末装置は、当該端末装置が設けられた場所における火災に関する信号を前記中継器に送信し、前記中継器は、前記端末装置と前記受信機との間の通信を中継する火災報知システムにおける火災報知方法であって、
前記受信機は、
アドレス付与部が、前記中継器から受信した内容に基づいて、前記端末装置により送信された火災に関する信号が所定の状態を示している場合、前記受信機の通信先に付与可能なアドレスのうち、前記中継器に付与される通常アドレスとは異なるイベント用アドレスを、当該端末装置に付与するアドレス付与工程
を有する
火災報知方法。
【請求項8】
受信機と、前記受信機に第1伝送路を介して接続する中継器と、前記中継器に前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介して接続する端末装置とを備え、前記端末装置は、当該端末装置が設けられた場所における火災に関する信号を前記中継器に送信し、前記中継器は、前記端末装置と前記受信機との間の通信を中継する火災報知システムに用いられる前記受信機のコンピュータに、
前記中継器から受信した内容に基づいて、前記端末装置により送信された火災に関する信号が所定の状態を示している場合、前記受信機の通信先に付与可能なアドレスのうち、前記中継器に付与される通常アドレスとは異なるイベント用アドレスを、当該端末装置に付与するアドレス付与手段
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災報知システム、火災報知方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、R型として知られた火災報知システムでは、受信機と、受信機に接続される個別のアドレスが付与された中継器との間で、当該システムが設けられた区域を監視するための信号伝送が行われる。この信号伝送は、例えば、受信機によりアドレスを順次指定して中継器を呼び出す呼出コマンドが送信されると、指定されたアドレスに対応する中継器が応答することで行われる。
【0003】
また、R型の火災報知システムでは、中継器に複数の回線が接続され、各々の回線に、一つ又は複数の感知器を接続させる場合がある。中継器は、中継器に接続された感知器から火災を感知したことを示す発報がなされたとき、受信機に対して中継器自身のアドレスと、中継器に接続されたいずれの回線で発報したかを示す回線情報とを送信する。一つの回線に、複数の感知器を接続させる代わりに、中継器に接続可能な回線数を増やして、一つの回線に一つの感知器を接続するようにすれば、中継器が示す回線情報により、受信機は何れの感知器が発報したか特定することができる。或いは、中継器に接続可能な回線数を増やすことで、より多くの感知器を接続させることができるため、一つの中継器で警戒可能な範囲を広げることが可能である。例えば、特許文献1には、中継器の複数の回線に複数の感知器を接続させた場合に、発報した感知器がどの回線内の何れの感知器であるかを特定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3788711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、中継器に接続可能な回線数を増やすと、「いずれの回線情報か」を示す電文長(中継器アドレス+回線情報)が長くなってしまう。
【0006】
火災報知システムにおいては、所定の時間(例えば、1分間)以内で全ての中継器に接続する全ての感知器における発報の有無を監視する必要がある。例えば、伝送レートが9600bpsであり、一回あたりの通信に用いられる電文長が2400bitである場合、一回あたりの通信に要する時間は、(2400bit/9600bps=)0.25sである。システムに接続する中継器の数が256個であれば、全ての中継器と通信を行うために要する時間(以下、監視時間)は、(0.25×256=)64sとなり、約1分程度かかる。
【0007】
この監視時間を短縮するために、一回あたりの通信に用いられる電文長を短くすることが考えられる。しかし、感知器を含めた種々の環境情報をより多く取得して火災予防に努めたいとする要求があり、環境情報など実質的な情報を削減してしまうことは適切でない。また、監視時間を短縮するために中継器の数を減らすことが考えられるが、より多くの感知器を接続させて、発報した感知器を詳細に特定したり警戒可能な範囲を広げたりしようとする観点から適切でない。また、監視時間を短縮するために伝送レートを大きくして単位時間当たりに伝送するデータ量を増やすことが考えられるが、伝送レートを大きくすれば、ノイズの影響を受けやすくなり通信品質を維持することが困難となるため適切でない。
【0008】
特に、発報後においては、発報した感知器と受信機との間の通信頻度が増加する。発報した感知器と通信するには、受信機は、送信する信号に(中継器アドレス+回線情報)を示さなければならないため、一回あたりの通信に用いられる電文長が長くなる。このため、発報後に一回あたりの通信に用いられる電文長が長い通信が増加してしまい、所定の時間内に所定の監視することが困難となるという問題があった。
また、中継器に接続された感知器がアドレス設定可能な感知器であり、中継器内において識別可能なアドレスを有するようなシステムを構成しようとする場合がある。この場合においても中継器を介して、受信機と発報した感知器とが通信する場合に当該感知器を特定するための電文長(中継器アドレス+中継器内感知器アドレス)が長くなってしまう。このため、発報後に一回あたりの通信に用いられる電文長が増加してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、発報後の電文長を、発報前の電文長に維持することができる火災報知システム、火災報知方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態は、受信機と、前記受信機に第1伝送路を介して接続する中継器と、前記中継器に前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介して接続する端末装置とを備え、前記端末装置は、当該端末装置が設けられた場所における火災に関する信号を前記中継器に送信し、前記中継器は、前記端末装置と前記受信機との間の通信を中継する火災報知システムにおいて、前記受信機は、前記中継器から受信した内容に基づいて、前記端末装置により送信された火災に関する信号が所定の状態を示している場合、前記受信機の通信先に付与可能なアドレスのうち、前記中継器に付与される通常アドレスとは異なるイベント用アドレスを、当該端末装置に付与するアドレス付与部を有する火災報知システムである。
【0011】
また、本発明の一実施形態の火災報知システムでは、前記端末装置は、火災に関する感知結果を示す信号を前記中継器に送信し、前記アドレス付与部は、前記端末装置の感知結果が所定の状態を示している場合、当該端末装置に前記イベント用アドレスを付与する。
【0012】
また、本発明の一実施形態の火災報知システムでは、前記アドレス付与部は、前記中継器から受信した内容に含まれる当該端末装置を識別する識別情報に当該端末装置に付与するアドレス情報を対応させた付与コマンドを前記中継器に送信することにより、当該端末装置に前記イベント用アドレスを付与する。
【0013】
また、本発明の一実施形態の火災報知システムでは、前記アドレス付与部は、前記端末装置に前記イベント用アドレスを付与した後、当該イベント用アドレスを付与した前記端末装置との通信を要求する監視コマンドを前記中継器に送信する。
【0014】
また、本発明の一実施形態の火災報知システムでは、前記受信機は、前記受信機に対する操作を示す操作信号が入力される入力部を更に備え、前記アドレス付与部は、前記端末装置に前記イベント用アドレスを付与した後、前記入力部から、警報の解除を示す解除信号が入力された場合、前記端末装置に付与した前記イベント用アドレスを、前記端末装置に付与する前の状態に戻す。
【0015】
また、本発明の一実施形態の火災報知システムでは、前記中継器は、前記受信機からの要求に応じて、前記イベント用アドレスが付与された前記端末装置から受信した内容に、当該イベント用アドレスを対応させた第1応答信号を生成する応答信号生成部を有する。
【0016】
また、本発明の一実施形態の火災報知システムでは、前記応答信号生成部は、前記イベント用アドレスが付与されていない前記端末装置から受信した内容に前記中継器に付与された前記通常アドレス及び前記端末装置を識別する識別情報を対応させた第2応答信号よりも小さい電文長である前記第1応答信号を生成する。
【0017】
また、本発明の一実施形態は、受信機と、前記受信機に第1伝送路を介して接続する中継器と、前記中継器に前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介して接続する端末装置とを備え、前記端末装置は、当該端末装置が設けられた場所における火災に関する信号を前記中継器に送信し、前記中継器は、前記端末装置と前記受信機との間の通信を中継する火災報知システムにおける火災報知方法であって、前記受信機は、アドレス付与部が、前記中継器から受信した内容に基づいて、前記端末装置により送信された火災に関する信号が所定の状態を示している場合、前記受信機の通信先に付与可能なアドレスのうち、前記中継器に付与される通常アドレスとは異なるイベント用アドレスを、当該端末装置に付与するアドレス付与工程を有する火災報知方法である。
【0018】
また、本発明の一実施形態は、受信機と、前記受信機に第1伝送路を介して接続する中継器と、前記中継器に前記第1伝送路とは異なる第2伝送路を介して接続する端末装置とを備え、前記端末装置は、当該端末装置が設けられた場所における火災に関する信号を前記中継器に送信し、前記中継器は、前記端末装置と前記受信機との間の通信を中継する火災報知システムに用いられる前記受信機のコンピュータに、前記中継器から受信した内容に基づいて、前記端末装置により送信された火災に関する信号が所定の状態を示している場合、前記受信機の通信先に付与可能なアドレスのうち、前記中継器に付与される通常アドレスとは異なるイベント用アドレスを、当該端末装置に付与するアドレス付与手段として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、この発明によれば、端末装置が所定の条件を充足する場合、その端末装置にイベント用アドレスを付与することにより、発報後の電文長を、発報前の電文長に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態の火災報知システム1の構成例を示すブロック図である。
図2】実施形態の受信機10の構成例を示すブロック図である。
図3】実施形態のアドレス情報記憶部107に記憶されるアドレス情報の構成例を示す図である。
図4】実施形態の中継器20の構成例を示すブロック図である。
図5】実施形態の火災報知システム1で用いられる電文の構成例を示す図である。
図6】実施形態の火災報知システム1で用いられる電文の構成例を示す図である。
図7】実施形態の火災報知システム1で用いられる電文の構成例を示す図である。
図8】実施形態の火災報知システム1で用いられる電文の構成例を示す図である。
図9】実施形態の火災報知システム1の動作例を示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(実施形態)
まず、実施形態について説明する。
図1は、実施形態の火災報知システム1の構成例を示すブロック図である。火災報知システム1は、例えば、受信機10、中継器20(中継器20-1、20-2、…)及び感知器30(感知器30-1~30-6)を備える。火災報知システム1において、受信機10と中継器20とは、伝送路Dを介して接続される。中継器20と感知器30とは、回線K(回線K1~K6)を介して接続される。
ここで、感知器30は「端末装置」の一例である。また、伝送路Dは「第1伝送路」、回線Kは「第2伝送路」の一例である。
【0023】
本実施形態では、伝送路Dを介して受信機10と接続する中継器20の各々に個別のアドレスが付与される。受信機10が付与可能なアドレスの上限は、受信機10の通信先として設定可能な装置の数の上限と等しい。受信機10は、例えば、火災報知システム1が設けられる施設の規模などに応じて、一系統あたり最大255個のアドレスを単位として、1~16系統を備える。
【0024】
また、本実施形態では、伝送路Dを介して受信機10と接続する中継器20の数は、受信機10が付与可能なアドレスの上限よりも少ない数であることを前提とする。例えば、受信機10が付与可能なアドレスの上限が255個である場合、火災報知システム1において、伝送路Dを介して受信機10と接続する中継器20等の数は、255個よりも少ない数(例えば、240個)である。ここで、中継器20等とは、中継器20、及び各種の感知器、発信機、ガス漏れ警報器、防火扉及び防煙ダンパー等の、監視装置や制御装置を含めた、受信機10と接続し得る各種の装置や機器を示している。
【0025】
本実施形態では、伝送路Dを介して受信機10と接続する中継器20等の数を、受信機10が付与可能なアドレスの上限よりも少ない数とすることで、何れの中継器20にも付与されていないアドレスを残しておく。例えば、受信機10が付与可能なアドレスの上限が255個であり、伝送路Dを介して受信機10と接続する中継器20等の数が240個である場合、伝送路Dを介して受信機10と接続する中継器20等の何れにも付与されていないアドレスは、(255-240=)15個である。
【0026】
そして、本実施形態では、受信機10が、この伝送路Dを介して受信機10と接続する中継器20等の何れにも付与されていないアドレスを、状況に応じて、一時的に、他の装置に付与する。ここでの他の装置とは、伝送路Dを介して受信機10と接続する中継器20等と異なる装置であり、例えば、中継器20の回線の各々に接続される感知器30である。以下の説明では、伝送路Dを介して受信機10と接続する中継器20等に付与されるアドレスを、「通常アドレス」と称する。また、伝送路Dを介して受信機10と接続する中継器20等の何れにも付与されていないアドレスを、「イベント用アドレス」と称する。
【0027】
受信機10は、中継器20と伝送路Dを介して接続し、中継器20から火災に関する各種信号を受信する。そして、受信機10は、受信した信号に基づく警報や表示等を行う。
受信機10は、通常アドレスを順次指定して、当該通常アドレスが付与された中継器20を呼び出す呼出コマンドを一定の間隔で送信する。この呼出コマンドは、例えば、中継器20に対し、その中継器20に接続された感知器30からの発報の有無の通知を要求するコマンドである。この呼出コマンドは、伝送路Dを介して接続する全ての中継器20に送信される。呼出コマンドを受信した中継器20は、呼出コマンドに指定された通常アドレスが、自身の通常アドレスと一致する場合、応答信号により応答する。この応答信号には、応答した中継器20の通常アドレス、発報の有無、発報が有った場合には発報した感知器30を特定する情報が含まれる。ここで、呼出コマンドに対する応答信号は、「第2応答信号」の一例である。
【0028】
また、受信機10は、中継器20からの応答信号の内容に応じて、その中継器20に特定の感知器30にイベント用アドレスを付与する付与コマンドを送信する。この付与コマンドは、例えば、発報した感知器30にイベント用アドレスを付与するコマンドである。付与コマンドには、通知先の中継器20の通常アドレス、イベント用アドレスを付与する対象である感知器30を特定する情報、及び付与するイベント用アドレスが含まれる。
【0029】
受信機10は、特定の感知器30にイベント用アドレスを付与した場合、イベント用アドレスを指定して、当該イベント用アドレスが付与された感知器30を継続して監視する監視コマンドを送信する。この監視コマンドは、例えば、発報した感知器30に対し、その後の感知結果の通知を要求するコマンドである。この監視コマンドは、呼出コマンドと同様に、伝送路Dを介して接続する全ての中継器20に送信される。監視コマンドを受信した中継器20は、監視コマンドに指定されたイベント用アドレスが、自身に接続する感知器30に付与されたイベント用アドレスと一致する場合、応答信号により応答する。
【0030】
この場合、実際に応答信号を送信しているのは中継器20であるが、あたかも感知器30から応答信号が送信されたかのようにして(以下、ミラーリング、とも称する)応答がなされる。具体的に、この応答信号には、応答した中継器20の通常アドレスは含まれていない。この応答信号には、感知器30に付与されたイベント用アドレス、及び発報状況(発報後の感知結果等)を示す情報のみが含まれる。ここで、監視コマンドに対する応答信号は、「第1応答信号」の一例である。
【0031】
なお、受信機10は、上述した呼出コマンド、及び付与コマンドの他に、必要に応じたコマンドを中継器20に送信してよい。必要に応じたコマンドとは、例えば、発報時の電子錠の開放や防火扉の制御を指示するコマンドや、受信機10や中継器20などの試験の開始や終了を通知するコマンドである。また、全てのコマンドに対して中継器20からの応答信号を行う必要はなく、応答信号を行うか否かは、各種コマンドの内容に応じて任意に定められてよい。
【0032】
中継器20は、感知器30と、一又は複数の回線を介して接続し、感知器30により感知された火災に関する各種の情報を受信機10に送信する。
図1では、中継器20-1に二つの回線K1、K2、中継器20-2に四つの回線K3~K6が接続される例を示しており、中継器20-1の回線K1に感知器30-1が、回線K2に感知器30-2がそれぞれ接続されている。中継器20-2の回線K3に感知器30-3が、回線K4に感知器30-4が、回線K5に感知器30-5が、回線K6に感知器30-6がそれぞれ接続されている。
【0033】
感知器30は、煙や熱、炎の何れかの発生の有無に基づいて火災を感知し、火災を感知した場合に発報信号を中継器20に通知する。感知器30は、例えば、煙濃度、温度等のアナログ値(連続値)を通知するアナログ式感知器である。或いは、感知器30は、火災を感知すると回線を短絡させることにより発報信号を中継器20に出力するオンオフ式の火災感知器であってもよい。
【0034】
なお、図1の例では、受信機10に複数の中継器20が接続される場合を示したが、これに限定されない。受信機10には、各種の感知器、発信機、ガス漏れ警報器、防火扉及び防煙ダンパー等の、監視装置や制御装置が接続されてよい。各種の感知器は、アナログ式の感知器であってもよいし、オンオフ式の火災感知器であってもよい。また、ここでの発信機は、ボタンを押下する等の人の操作により火災信号を受信機10に発信する装置である。受信機10と接続する各種の感知器、発信機等は、アドレスが付与され、受信機10と信号伝送を行う機能を有する。以下、本実施形態では、感知器30がオンオフ式の火災感知器である場合を例に説明する。つまり、本実施形態では、感知器30は、火災感知の有り無し(オンオフ)を示す信号を出力する。
【0035】
また、受信機10に接続する中継器20の数は、図1の例に限定されない。受信機10に一つの中継器20のみが接続されていてもよい。
また、中継器20に接続する回線の数は、図1の例に限定されない。中継器20に接続する回線の数は、一回線のみであってもよいし、三回線であってもよいし、四回線以上(例えば八回線)であってもよい。
また、中継器20に接続する回線に発信機が接続されてもよい。また、中継器20に接続する回線に、1又は複数の中継器が更に接続されてもよい。
【0036】
図2は、実施形態の受信機10の構成例を示すブロック図である。受信機10は、例えば、通信部101、アドレス付与部102、制御部103、表示部104、入力部105、出力部106及びアドレス情報記憶部107を備える。
【0037】
通信部101は、伝送路Dを介して接続する複数の中継器20と信号伝送を行う。通信部101は、各種コマンド(ここでは、呼出コマンド、付与コマンド及び監視コマンド)を中継器20に送信する。また、通信部101は、各種コマンドに対する応答信号を中継器20から受信する。
【0038】
アドレス付与部102は、感知器30が所定の条件を充足する場合、イベント用アドレスを、その所定の条件を充足する感知器30に付与する。ここでの、所定の条件は、例えば、感知器30により発報信号が出力された場合など、受信機10がその感知器30からの情報を継続して取得する必要があると判断される場合である。この所定の条件は、火災報知システム1が設けられる施設の規模、感知器30の種類や性能、及び、イベント用アドレスの数などに応じて、任意に設定されてよい。
【0039】
アドレス付与部102は、例えば、中継器20から受信した内容に基づいて、感知器30の感知結果が所定の状態を示しているか否かを判定し、感知器30の感知結果が所定の状態を示している場合、その感知器30にイベント用アドレスを付与する。ここでの所定の状態とは、例えば、感知器30により発報されたこと、或いは、発信機が押下された場合など、受信機10がその感知器30からの情報を継続して取得する必要があると判断される場合である。
【0040】
表示部104は、中継器20から受信した内容に基づいて、火災警報、及び火災に関する表示を行う。表示部104は、例えば、火災の発生を示す表示と共に、発報信号を出力した(以下、単に、発報したとも称する)感知器30の設置場所を、火災が発生した場所として表示する。
入力部105は、例えば、受信機10に設けられた操作パネルや操作ボタンである。入力部105には、建物管理者や守衛、警備員等により操作入力される信号が入力される。建物管理者による操作入力される信号とは、例えば、避難指示や避難誘導及び警報解除、或いは訓練等を通知する信号である。
出力部106は、中継器20から受信した内容に基づいて、火災警報を出力する。また、出力部106は、入力部105に入力された内容に応じたアナウンスを出力する。
【0041】
制御部103は、受信機10を統括的に制御する。制御部103は、例えば、通信部101により取得された中継器20から受信した内容を、アドレス付与部102、表示部104、出力部106に出力させる。また、制御部103は、入力部105に入力された内容を、その内容に応じて、出力部106に出力させたり、通信部101を介して中継器20に送信させたりする。
【0042】
アドレス情報記憶部107は、アドレス情報を記憶する。アドレス情報は、受信機10が付与可能なアドレスの一覧が示された情報である。以下、アドレス情報について、図3を用いて説明する。
【0043】
図3は、実施形態のアドレス情報記憶部107に記憶されるアドレス情報の構成例を示す図である。
図3に示すように、アドレス情報は、例えば、アドレス番号、アドレス種別、装置、回線数、回線接続装置、設置場所の項目を有する。
アドレス番号には、受信機10が付与可能なアドレスの番号が示される。アドレス種別には、アドレス番号が通常アドレスかイベント用アドレスかが示される。装置にはアドレス番号を付与された中継器20が示される。回線数には中継器20が接続する回線の数が示される。回線接続装置には、中継器20の回線の各々に接続する感知器30がしめされる。設置場所には、感知器30の設置場所が示される。この例では、受信機10が付与可能なアドレスは、アドレス番号001から255までであり、アドレス番号001から240までが通常アドレス、アドレス番号241から255までがイベント用アドレスである。また、アドレス番号001は中継器20-1に付与され、中継器20-1に接続する回線の数は二回線であり、一回線目に感知器30-1、二回線目に感知器30-2がそれぞれ接続される。そして、感知器30-1の設置場所は、本館南1階の共用部エレベータ前である。
【0044】
図4は、実施形態の中継器20の構成例を示すブロック図である。中継器20は、例えば、通信部201、応答信号生成部202、制御部203、回線通信部204及び記憶部205を備える。
通信部201は、受信機10と信号伝送を行う。通信部201は、各種コマンドを受信機10から受信する。また、通信部201は、各種コマンドに対する応答信号を受信機10に送信する。
回線通信部204は、中継器20が回線を介して接続する感知器30による感知結果を受信する。回線通信部204は、例えば、回線単位に感知器30からの信号を受信する。
制御部203は、中継器20を統括的に制御する。制御部203は、例えば、回線通信部204により受信された各種コマンドを応答信号生成部202に出力させる。また、制御部203は、回線通信部204により受信された感知結果を応答信号生成部202に出力させる。制御部203は、応答信号生成部202により生成された応答信号を、通信部201に出力させる。
記憶部205は、中継器20が回線を介して接続する感知器30に関する情報を記憶する。感知器30に関する情報は、例えば、中継器20の何れの回線に何れの感知器30が接続されているかを示す情報である。
【0045】
応答信号生成部202は、各種コマンドに対する応答信号を生成する。以下、応答信号生成部202が生成する応答信号について、図5から図8を用いて説明する。
図5から図8は、受信機10と中継器20との間でやり取りされる各種コマンドと応答信号のフォーマットの例を示す図である。図5は呼出コマンド及び監視コマンド、図6は呼出コマンドに対する応答信号、図7は付与コマンド、図8は監視コマンドに対する応答信号の例を示している。
また、図5から図8のフォーマットにおいて、斜線で示された部分は制御情報が埋め込まれる部分を示している。制御情報は、信号に埋め込まれた情報を制御するために用いられる情報であり、例えば、情報の開始を示すスタートビット、終了を示すストップビット、情報の誤り検出に用いられるパリティビット等により構成される。
【0046】
図5に示すように、呼出コマンド及び監視コマンドは、通常アドレス、コマンド種別及び制御情報により構成される。通常アドレスには呼出し先の中継器20の通常アドレスが埋め込まれる。コマンド種別には、呼出コマンド又は監視コマンドの別を示す情報が埋め込まれる。この例では、通常アドレスがA1[bit]、コマンド種別がA2[bit]である場合を示している。
【0047】
図6に示すように、呼出コマンドに対する応答信号は、通常アドレス、識別情報、発報情報及び制御情報により構成される。通常アドレスには応答する中継器20の通常アドレスが埋め込まれる。識別情報には発報した感知器30が接続する回線の識別情報が埋め込まれる。発報情報には発報の状況として発報の有無や煙濃度等を示す情報が埋め込まれる。この例では、通常アドレスがA1[bit]、識別情報がA3[bit]、発報情報がA4[bit]である場合を示している。
【0048】
図7に示すように、付与コマンドは、通常アドレス、コマンド種別、識別情報、イベント用アドレス及び制御情報により構成される。通常アドレスには呼出し先の中継器20の通常アドレスが埋め込まれる。コマンド種別には、付与コマンドを示す情報が埋め込まれる。識別情報にはイベント用アドレスを付与する感知器30が接続する回線の識別情報が埋め込まれる。イベント用アドレスには、感知器30に付与するイベント用アドレスが埋め込まれる。この例では、通常アドレスがA1[bit]、コマンド種別がA2[bit]識別情報がA3[bit]、イベント用アドレスがA1[bit]である場合を示している。
【0049】
図8に示すように、監視コマンドに対する応答信号は、イベント用アドレス、発報情報及び制御情報により構成される。イベント用アドレスには、感知器30に付与されたイベント用アドレスが埋め込まれる。発報情報には発報の状況として煙濃度等を示す情報が埋め込まれる。この例では、イベント用アドレスがA1[bit]、発報情報がA4[bit]である場合を示している。
【0050】
応答信号生成部202は、呼出コマンドに対して、例えば、図6に示すフォーマットの応答信号を生成する。この応答信号は、A1+A3+A4[bit]に相当する電文長である。
一方、応答信号生成部202は、監視コマンドに対して、例えば、図8に示すフォーマットの応答信号を生成する。この応答信号は、A1+A4[bit]に相当する電文長である。つまり、応答信号生成部202は、呼出コマンドに対する応答信号よりも、少なくとも、A3[bit]少ない電文長となる監視コマンドに対する応答信号を生成する。
【0051】
図9は、実施形態の火災報知システム1の動作例を示すシーケンスチャートである。このシーケンスチャートにおいて、ステップS112~S115に示す処理は、ステップS101~S104に示す処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0052】
受信機10は、通常アドレス001の中継器20-1に呼出コマンドを送信する(ステップS101)。これに対し、中継器20-1は、自身に接続する感知器30-1、30-2から発報信号を受信していない場合、発報が無い旨を示す応答信号を受信機10に送信する(ステップS102)。
【0053】
受信機10は、通常アドレス002の中継器20-2についても同様に、呼出コマンドを送信する(ステップS103)。これに対し、中継器20-2は、自身に接続する感知器30-3~30-6から発報信号を受信していない場合、発報が無い旨を示す応答信号を受信機10に送信する(ステップS104)。同様にして、受信機10は、通常アドレスを順次指定して、通常アドレスが付された中継器20に呼出コマンドを送付し、全ての中継器20からの応答信号を受信する。
【0054】
一方、中継器20-1に接続する感知器30-1に煙等が感知されると、感知器30-1は、中継器20-1に発報信号を出力し、中継器20-1は、感知器30-1から、発報信号を受信する(ステップS105)。
中継器20-1は、受信機10により自身の通常アドレス001が指定された呼出コマンドを受信(ステップS106)した際、図6に示すような、発報された旨を示す応答信号を受信機10に送信する(ステップS107)。
【0055】
受信機10は、発報が有った旨を示す応答信号を受信すると、発報した感知器30-1にイベント用アドレス241を付与する付与コマンドを、中継器20-1に送信する(ステップS108)。この場合、受信機10のアドレス付与部102は、端末装置により送信された火災に関する信号が所定の状態を示している場合、端末装置が接続された中継器20-1を示す通常アドレスと、中継器20-1における端末装置(感知器30-1、又は30-2)を識別する識別情報と、イベント用アドレスと、を含むイベント用アドレス設定信号(例えば、図7に示す付与コマンドに対する応答信号)を中継器20-1に送信する。そして、中継器20-1は、イベント用アドレス設定信号を受信した場合、イベント用アドレスと、通常アドレスを対応付けて記憶部205に記憶する。そして、中継器20-1は、イベント用アドレス設定信号に含まれる通常アドレスと中継器20-1における通常アドレスが一致する場合、イベント用アドレス設定信号に含まれる識別情報からイベント用アドレスに対応する端末装置(感知器30-1、又は30-2)を特定して記憶部205に記憶する。
そして、受信機10は、イベント用アドレス241の感知器30-1を指定した監視コマンドを送信する(ステップS109)。この監視コマンドは、中継器20-1に受信される。
中継器20-1は、感知器30-1から感知結果を受信し(ステップS110)、受信した感知結果を、図8に示すような、感知器30-1に付与されたイベント用アドレスに対応させた応答信号を受信機10に送信する(図9では、ミラーリング応答と記載)(ステップS111)。例えば、中継器20-1の応答信号生成部202は、受信機10からイベント用アドレスを指定した信号(例えば、イベント用アドレス241の感知器30-1を指定した監視コマンド)を受信した場合、イベント用アドレスが自身の通常アドレスと対応付けられているか判定を行い、イベント用アドレスが自身の通常アドレス(001)と対応付けられている場合は、イベント用アドレスと対応付けられた端末装置(例えば、感知器30-1)から受信した内容(感知結果)に、当該イベント用アドレスを対応させた監視コマンドに対する応答信号を生成する。ここで、監視コマンドに対する応答信号は、「第1応答信号」の一例である。
【0056】
また、受信機10は、他の発報していない感知器30の状況についても、順次、中継器20に呼出コマンドを送信することにより確認を行う(ステップS112~S115)。
【0057】
なお、上記ステップS111の後に、受信機10は、応答信号に含まれる感知結果の内容に応じて、引き続き感知器30-1を監視するか否かを判断するようにしてもよい。受信機10は、引き続き感知器30-1を監視すると判断した場合、ステップS109に示す処理を行う。
また、上述したフローチャートでは、感知器30により煙等が感知された場合に発報信号を送信する場合(例えば、ステップS105)を例示したが、これに限定されない。感知器30は、定期的に、中継器20に感知結果を送信してもよい。
【0058】
また、受信機10は、監視コマンドに対する応答信号の内容から感知器30-1を継続して監視しないと判断した場合であっても、直ちに、感知器30-1に付与したイベント用アドレスを、感知器30-1に付与する前の状態に戻す必要はない。受信機10は、例えば、警報が解除され、受信機10の復旧がなされるまで、感知器30-1にイベント用アドレスを付与した状態を継続させる。警報が解除されるまでに、再び火災の危険が高まる場合があり得る。火災の危険が高まり、感知器30-1から高い煙濃度が感知された場合に、再度付与コマンドをやり取りすることは、通信負荷を増大させ、非常時に必要な通信が阻害される恐れがあるためである。具体的には、例えば、受信機10は、入力部105から、警報の解除を示す解除信号が入力された場合、感知器30-1に付与したイベント用アドレスを、感知器30-1に前の状態に戻す解除コマンドを中継器20に送信する。この解除コマンドは、例えば、図7に示すフォーマットにおけるコマンド種別に、当該解除コマンドを示す情報が埋め込まれた信号である。つまり、アドレス付与部102は、感知器30-1などの端末装置に前記イベント用アドレスを付与した後、受信機10により警報の解除を行うと判定された場合、端末装置に付与したイベント用アドレスを、端末装置に付与する前の状態に戻す。
また、いずれの感知器30でも火災を検出していない状態において、所定時間経過した場合、受信機10の復旧がなされるようにしても良い。
【0059】
以上説明した通り、実施形態の火災報知システム1は、受信機10は、中継器20から受信した内容に基づいて、感知器30又は発信機(以下、感知器30等という)により送信された火災に関する信号が所定の状態(例えば、感知器30により発報されたこと、或いは、発信機が押下されたこと)を示している場合、受信機10の通信先に付与可能なアドレスのうち、中継器20に付与される通常アドレスとは異なるイベント用アドレスを、感知器30等に付与するアドレス付与部102を有する。
これにより、実施形態の火災報知システム1は、感知器30の状況に応じてイベント用アドレスを付与することができ、特定の感知器30と、イベント用アドレスを介して、受信機10と感知器30の間に介在する中継器20のアドレスを示すことなく、イベント用アドレスのみで特定の感知器30と通信を行うことができる。つまり、感知器30が、一又は複数の中継器20と接続されており、(中継器20のアドレス+回線の識別情報)を示さなければ特定できない場合であっても、イベント用アドレスを付与後は、(中継器20のアドレス+回線の識別情報)を示す代わりに、当該(イベント用アドレス)のみで感知器30を特定することができる。このため、発報後に受信機10と感知器30との間の通信が増加した場合であっても、一回あたりの通信に用いられる信号の電文長を、発報前の電文長と同じ長さに維持することができる。
【0060】
つまり、本実施形態において、感知器30にイベント用アドレスを付与することで、発報した感知器30と受信機10との間の初回の通信における電文長は長くなるが、次回以降の通信については、従来の発報前の電文長を維持できる。このため、中継器20に接続させる回線数を増加させた場合であっても、受信機10と特定の感知器30との通信に用いられる電文長を、受信機10と中継器20との通信に用いられる電文長と同等に維持することができ、発報した感知器30と通信を行いつつ、所定の時間内に、所定の監視を行うことが可能となる。
【0061】
また、本実施形態において、受信機10と感知器30と間に複数個(例えばN個、Nは任意の整数)の中継器20が接続されている構成においても、感知器30にイベント用アドレスを付与することで、(接続する第1の中継器20のアドレス+…+接続する第Nの中継器20のアドレス+回線の識別情報)を示す代わりに、当該(イベント用アドレス)のみで感知器30を特定することができ、受信機10と特定の感知器30との通信に用いられる電文長を、受信機10と中継器20との通信に用いられる電文長と同等に維持することが可能である。
【0062】
また、実施形態の火災報知システム1では、感知器30は、火災に関する感知結果を示す信号を中継器20に送信し、アドレス付与部102は、感知器30の感知結果が所定の状態(例えば、煙濃度3%以上)を示している場合、感知器30に前記イベント用アドレスを付与する。これにより、実施形態の火災報知システム1では、感知器30により感知された感知結果に応じて、引き続き監視する必要がある場合にイベント用アドレスを付与することができ、受信機10と特定の感知器30との通信に用いられる電文長を、受信機10と中継器20との通信に用いられる電文長と同等に維持しつつ、特定の感知器30を監視することが可能となる。
また、実施形態の火災報知システム1では、アドレス付与部102は、付与コマンドを中継器20に送信することにより、感知器30にイベント用アドレスを付与する。これにより、実施形態の火災報知システム1では、既存の通信網(アドレスを介した通信)を利用して、イベント用アドレスを付与する旨の要求を行うことができ、容易にイベント用アドレスを付与することが可能となる。
また、実施形態の火災報知システム1では、アドレス付与部102は、感知器30にイベント用アドレスを付与した後、そのイベント用アドレスを付与した感知器30との通信を要求する監視コマンドを中継器20に送信する。これにより、実施形態の火災報知システム1では、既存の通信網を利用して、今まで既存の通信網の外にいた特定の感知器30と、容易に通信することが可能となる。
また、実施形態の火災報知システム1では、受信機10に対する操作を示す操作信号が入力される入力部105を更に備え、アドレス付与部102は、感知器30にイベント用アドレスを付与した後、入力部105から、警報の解除を示す解除信号が入力された場合、感知器30に付与したイベント用アドレスを、感知器30に付与する前の状態に戻す。これにより、実施形態の火災報知システム1では、監視が必要ないと判断された感知器30により再び火災の可能性が感知された場合であっても、イベント用アドレスを付与するための電文長の長い通信(付与コマンド)のやり取りが頻発することを抑制することができる。
【0063】
また、実施形態の火災報知システム1では、中継器20は、受信機10からの要求に応じて、イベント用アドレスが付与された感知器30から受信した内容に、当該イベント用アドレスを対応させた応答信号(監視コマンドに対する応答信号)を生成する応答信号生成部202を有する。これにより、実施形態の火災報知システム1では、中継器20により、あたかも感知器30が直接に受信機10に応答したかのような応答信号を生成することができ、中継器20が(中継器20のアドレス+回線の識別情報)を含む信号を生成することなく、(イベント用アドレス)を示す応答信号を生成でき、感知器30との通信に用いる信号の電文長を増加させることなく、感知器30による感知結果を受信機10に送信できる。
また、実施形態の火災報知システム1では、応答信号生成部202は、呼出コマンドに対応する応答信号よりも小さい電文長である監視コマンドに対する応答信号を生成する。これにより、実施形態の火災報知システム1では、既存の通信網を利用でき、上述した効果を容易に奏することが可能となる。
【0064】
また、実施形態の火災報知システム1では受信機10のアドレス付与部102は、端末装置により送信された火災に関する信号が所定の状態を示している場合、ベント用アドレス設定信号(例えば、図7に示す付与コマンドに対する応答信号)を中継器20送信し、中継器20は、イベント用アドレス設定信号を受信した場合、イベント用アドレスと、通常アドレスを対応付けて記憶部205に記憶する。ここで、イベント用アドレス設定信号は、中継器20(例えば中継器20-1)を示す通常アドレスと、中継器20における端末装置(例えば、感知器30-1、又は30-2)を識別する識別情報と、イベント用アドレスと、を含む。これにより、中継器20は、自身が接続する端末装置にイベント用アドレスが付与されたことを認識して、端末装置からの情報を送信(ミラーリング)するためにその対応関係を記憶することができる。
【0065】
また、実施形態の火災報知システム1では、中継器20は、イベント用アドレス設定信号に含まれる通常アドレスと(自身の)中継器20における通常アドレスが一致する場合、イベント用アドレス設定信号に含まれる識別情報からイベント用アドレスに対応する端末装置(例えば、感知器30-1、又は30-2)を特定して記憶部205に記憶する。これにより、複数の中継器20等に対してアドレスを指定した一斉通知が行なわれる場合であっても、中継器20は、自身に対して通知された内容を認識して自身が接続する端末装置からの情報を送信(ミラーリング)するために対応することができる。
【0066】
(実施形態の変形例1)
次に、実施形態の変形例1について説明する。
本変形例では、中継器20と接続する感知器30が識別番号の設定が可能(アドレッサブル)なものである点において、上述した実施形態と異なる。
本変形例では、受信機10のアドレス情報記憶部107には、「回線接続装置」の項目に示された感知器30毎に、その感知器30の識別番号が記憶される。
中継器20の回線通信部204は、中継器20が接続する感知器30から、識別番号が含まれる発報信号を受信する。
中継器20の応答信号生成部202は、発報した感知器30が有る場合、図6の識別情報に、感知器30の番号を埋め込んだ応答信号を生成する。
受信機10のアドレス付与部102は、図7の識別情報に、感知器30の番号を埋め込んだ付与コマンドを中継器20に送信する。
【0067】
以上説明したように、実施形態の変形例1の火災報知システム1では、中継器20と接続する感知器30が識別番号を有する。このため、実施形態の変形例1の火災報知システム1では、(中継器20のアドレス+感知器30の識別情報)を示して感知器30を特定する代わりに、イベント用アドレスを付与することで、当該(イベント用アドレス)のみで感知器30を特定して通信を行うことができ、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
(実施形態の変形例2)
次に、実施形態の変形例2について説明する。
本変形例では、感知器30により定期的に中継器20に感知結果が送信され、受信機10は中継器20を介して、監視する全ての感知器30の感知結果を取得する。この際、受信機10は、同一の頻度で感知結果を取得するのではなく、感知器30毎に感知結果を取得する頻度の重みづけを行い、感知結果を取得する頻度を変更させる点において、上述した実施形態と異なる。
【0069】
例えば、受信機10は、比較的狭い空間に可燃物が多く貯蔵されており火災の危険性が高い場所に設置されている感知器30からは、頻繁に感知結果を取得する。一方で、受信機10は、比較的広い空間であって可燃物がほとんどなく、火災の危険性がさほど高くない場所に設置されている感知器30からは、頻繁に感知結果を取得せずに、火災の危険性が高い場所に設置されている感知器30よりも低い頻度で感知結果を取得する。
【0070】
本変形例では、受信機10のアドレス情報記憶部107には、「回線接続装置」の項目に示された感知器30毎に、その感知器30の感知結果を取得する頻度の重みづけを示す情報が記憶される。この重みづけを示す情報は、例えば、0~1の間の任意の定数であり、感知結果を取得する頻度に応じて、より頻度を高くする感知器30を1に近い定数(例えば、1.0)とし、さほど頻度を高くしない感知器30を0に近い定数(例えば、0.5)とする。
【0071】
受信機10は、例えば、起動時や、感知器30に対する感知結果を取得する頻度を変更する場合に、感知器30を接続する中継器20に、設定コマンドを送信する。
設定コマンドは、例えば、図7に示すフォーマットの、コマンド種別に設定コマンドを示す情報が埋め込まれ、識別情報に頻度を変更する感知器30が接続する回線の識別情報(又は、感知器30の中継器20内のアドレス)が埋め込まれる。イベント用アドレスには、イベント用アドレスに代えて、感知結果を取得する頻度の重みづけを示す情報が埋め込まれる。
【0072】
中継器20は、呼出コマンドに対し、設定コマンドに示された頻度に応じて、感知器30から受信した感知結果を通知する応答信号を受信機10に送信する。例えば、中継器20は、感知結果を取得する頻度の重みづけが(1.0)に設定された感知器30の感知結果を、毎回の呼出コマンドに対する応答信号により通知する。一方、中継器20は、感知結果を取得する頻度の重みづけが(0.5)に設定された感知器30の感知結果については、二回の呼出コマンドに一回の割合で通知する。
【0073】
或いは、感知器30が感知結果を中継器20に通知する頻度を設定可能な構成である場合には、中継器20は、設定コマンドに示された感知結果を取得する頻度の重みづけに基づいて、感知結果を通知する頻度を感知器30に通知するようにしてよい。この場合、感知器30は、中継器20から指定された頻度で感知結果を中継器20に送信する。そして、中継器20は、呼出コマンドに対し、通知された感知結果を送信する。
【0074】
以上説明したように、実施形態の変形例2の火災報知システム1では、感知器30の感知結果を通知する頻度について重みづけを行うことができる。このため、実施形態の変形例2の火災報知システム1では、感知器30が設けられた場所における火災の危険性の高さに応じて頻繁に感知器30から感知結果を取得したり、頻度を低下させて取得したりすることができ、火災の危険性に応じた監視を行うことが可能となる。
【0075】
次に、実施形態の変形例3について説明する。
本変形例では、中継器20と接続する感知器30が煙濃度などのアナログ値を送信し、受信機がアナログ値を元に、火災や火災の予兆を検出する点において、上述した実施形態と異なる。
本変形例では、感知器30は火災の感知を行わず、常にアナログ値を通知する。感知器30は、例えば、煙濃度、温度等のアナログ値を感知し、感知結果(アナログ値)を受信機10通知する。受信機10は、感知器30毎に、感知器30のアナログ値が所定の条件を満たしたときに火災の予兆(以下、火災予兆)と判定するか、火災と判定するかの情報が記憶される。例えば、アナログ値が所定の条件を満たすとは、感知器30から出力されるアナログ値が、予め記憶された所定の閾値以上であることを示す。
そして、受信機10は、感知器30からのアナログ値に基づいて、当該感知器30が設けられた場所において火災予兆がある、又は火災が発生したとの判定を行ったとき、当該感知器30に対してイベント用アドレスを付与する。受信機10は、以降の処理として、上述した実施形態のステップS108以降と同様の処理を行う。
【0076】
以上説明したように、実施形態の変形例3の火災報知システム1では、感知器30の感知結果としてアナログ値が通知される。受信機10は、中継器20を介して感知器30から通知されたアナログ値に基づいて、アナログ値が所定の条件を満たす場合に、感知器30にイベント用アドレスを付与する。これにより、実施形態の変形例3の火災報知システム1では、感知器30が感知した煙濃度等のアナログ値に基づいて、特定の感知器30にイベント用アドレスを付与することができ、火災予兆や火災が判定された特定の感知器30からのアナログ値を継続して頻繁に取得することができ、火災の帰趨や状況を監視することが可能となる。
【0077】
上述した実施形態における受信機10及び中継器20の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0078】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1…火災報知システム
10…受信機
101…通信部
102…アドレス付与部
103…制御部
104…表示部
105…入力部
106…出力部
107…アドレス情報記憶部
20…中継器
201…通信部
202…応答信号生成部
203…制御部
204…回線通信部
205…記憶部
30…感知器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9