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  • 特許-筐体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】筐体
(51)【国際特許分類】
   G01D 11/24 20060101AFI20230322BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
G01D11/24 B
G08C17/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019030983
(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公開番号】P2020134412
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】庭野 資士
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-331375(JP,A)
【文献】特開2008-226001(JP,A)
【文献】特開2001-194205(JP,A)
【文献】特開2008-224513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/00-13/28
G08C 13/00-25/04
G01F 1/00-1/30,1/34-1/54
3/00-9/02,
15/00-15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも側部を有し開口部が上方へ向けて開口された筐体本体と、この筐体本体の開口部を開閉可能な蓋体とを備え、前記筐体本体内に水道の使用量を送信可能な無線通信手段が設置される筐体において、
記筐体本体は、少なくとも下側が開口し空気溜まりを形成する空間を有しかつ前記無線通信手段を保持可能な保持部を有し、
前記筐体本体における側部には、その側部から中央側へのびる上縁部と、この上縁部から下方へのびる壁部とが設けられ、
前記保持部は、前記筐体本体の側部の一部と、前記上縁部と、前記壁部とによって構成される
ことを特徴とする筐体。
【請求項2】
少なくとも側部を有し開口部が上方へ向けて開口された筐体本体と、この筐体本体の開口部を開閉可能な蓋体とを備え、前記筐体本体内に水道の使用量を送信可能な無線通信手段が設置される筐体において、
前記蓋体の下面には、下方へのびるリブが複数設けられ、隣り合うリブの間には空気溜まりを形成する空間を有し、
複数の前記リブによって前記無線通信手段を保持可能な保持部を構成した
ことを特徴とする筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水量メータとその値を送信可能な無線通信手段とが内部に設置される筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物における水道の使用量を示す水量メータは、その周囲を筐体によって覆った状態で建築物近傍の敷地床に埋設されており、その設置場所は様々である。
【0003】
例えば、建築物とフェンスとの間のように比較的に狭小な場所や、寒冷地のように埋設深度が比較的深い場所等に設置された水量メータは、検針員にとって目視検針が困難となる。
【0004】
そのような検針が困難な場所での検針を容易にするために、例えば特許文献1に示すように、水量メータの値を無線通信機を用いて検針する技術の開発が進められている。
【0005】
特許文献1の検針装置は、水量メータの使用水量を示す水量データ信号を、子局送受信機から蓋の空洞内に配置したアンテナを介して親局送信機に電波として送信することによって、所定の表示装置に使用水量を表示させる構成である。
【0006】
この特許文献1のような構成では、多量の雨が降った際に、敷地床に埋設された筐体は内部が水浸しになって無線通信機が水没し、機器の故障や配線トラブルが生じる等、正常に電波を送信できなくなる可能性があった。
【0007】
そこで、無線通信機の水没を防止できる構成として、特許文献2では、無線回路、制御回路、電池およびアンテナを備えた無線通信手段を防水カバーによって密封被覆し、かつ、水より比重を軽くしている。
【0008】
そして、特許文献2では、防水カバーによって無線通信手段を防水するとともに、筐体内に浸水した場合には水面に浮遊した状態で、無線通信手段から電波が送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平11-86173号公報
【文献】特開2004-341680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の特許文献2の構成では、筐体内が浸水した場合には、防水カバーに被覆された状態の無線通信手段が浮遊し、筐体内を移動する。
【0011】
そのため、無線通信手段におけるアンテナが所定の位置に留まらず、電波を安定して送信できない可能性がある。
【0012】
したがって、筐体内に浸水した場合であっても無線通信手段が水に接触することを防止でき、かつ、無線通信手段が安定して通信できる技術が求められていた。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、無線通信手段が水に接触することを防止でき、かつ、無線通信手段が安定して通信できる筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る筐体は、少なくとも側部を有し開口部が上方へ向けて開口された筐体本体と、この筐体本体の開口部を開閉可能な蓋体とを備え、前記筐体本体内に水道の使用量を送信可能な無線通信手段が設置される筐体において、前記蓋体および前記筐体本体の少なくとも一方は、少なくとも下側が開口し空気溜まりを構成する空間を有しかつ前記無線通信手段を保持可能な保持部を有するものである。
【0015】
また、本発明に係る筐体において、筐体本体における側部には、その側部から中央側へのびる上縁部と、この上縁部から下方へのびる壁部とが設けられ、保持部は、前記筐体本体の側部の一部と、前記上縁部と、前記壁部とによって構成されるものでもよい。
【0016】
また、本発明に係る筐体において、保持部は、筐体本体の側部に設けられ、平面視にて開口部より中央側へ突出しないように配置されているものでもよい。
【0017】
また、本発明に係る筐体において、蓋体は、開口部に対応した形状の蓋体本体と、この蓋体本体の下面から下方へのびる壁部とを有し、保持部は、前記蓋体本体の一部と、前記壁部とによって構成されるものでもよい。
【0018】
また、本発明に係る筐体において、開口部が蓋体で閉塞された状態では前記開口部と前記蓋体との間に間隙があり、無線通信手段は、電波の送信方向が前記間隙へ向くように設置されているものでもよい。
【0019】
また、本発明に係る筐体において、無線通信手段は、保持部に対応したカバー体を有し、前記カバー体は、前記保持部に設置された状態で、その保持部の空気溜まりと通気可能な通気手段を有するものでもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、蓋体および筐体本体の少なくとも一方が、下側が開口し空気溜まりを形成する空間を有しかつ無線通信手段を保持可能な保持部を有するため、無線通信手段が水に接触することを防止でき、かつ、無線通信手段が安定して通信できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態に係る筐体の構成を示す断面図である。
図2】同上筐体における筐体本体の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1において、1は筐体であり、この筐体1は、建築物における水道の使用量を計測する図示しない水量メータが内部に設置された状態で、建物近傍の敷地床等の地中に埋設される。すなわち、筐体1は、地中において水量メータ等の収容物を保護するものである。
【0024】
このような筐体1は、地中に埋設される箱状の筐体本体2を備え、この筐体本体2には、開口部3を開閉する蓋体4が取り付けられている。
【0025】
筐体本体2は、底板5と、この底板5の上側に設けられた矩形筒状の枠体6とで構成されている。このように構成された筐体本体2は、底部7および前後左右の4方向に配置された側部8を有し、平面視で矩形状で開口部3が上方へ向けて開口された箱状である。
【0026】
そして、箱状の筐体本体2内部には図示しない水量メータが設置される。また、枠体6には、対向する一対の側部8には、それぞれ挿通口9が設けられており、筐体本体2内に設置された水量メータに接続される図示しない水道管が挿通口9から筐体1外へ導出される。
【0027】
筐体本体2は、上縁部11が側部8の上端部から中央側である内側へのびるように一体に設けられている。また、上縁部11における内側端部には、下方へのび側部8と対向するように配置された壁部としての第1のリブ12が一体に設けられている。
【0028】
上縁部11および第1のリブ12は、枠体6の上端部の内周面の略全周にわたって設けられている。そして、これら上縁部11および第1のリブ12によって開口部3が構成されている。
【0029】
また、第1のリブ12は、上縁部11に接続され側部8に略平行で略鉛直状に設けられた鉛直部13と、この鉛直部13の下端部に接続され筐体本体2における中央側である内側へ向けて傾斜状に設けられた傾斜部14とを有している。
【0030】
側部8には、その側部8と略垂直に筐体本体2の中央側へ突出し、上縁部11および第1のリブ12に一体に接続された壁部としての複数の第2のリブ15が設けられている。これら各第2のリブ15は、枠体6の内周面に所定の間隔で互いに離間して配置されている。
【0031】
そして、側部8の一部と上縁部11と第1のリブ12と第2のリブ15とによってポケット状の保持部16が構成される。すなわち、保持部16は、下側が開口し側部および上部が閉塞された空間を有している。
【0032】
なお、上縁部11、第1のリブ12および第2のリブ15としては、既存の筐体において設けられている既設の縁や補強用等のリブを利用してもよい。
【0033】
保持部16には、無線通信手段17が下側から挿入するようにして固定される。すなわち、無線通信手段17は、保持部16に下側から挿入するようにして、隣り合う2つの第2のリブ15間で挟持されるように内嵌されることで、筐体本体2に対して固定された状態が保持される。
【0034】
また、2つの第2のリブ15に挟持されるように内嵌された無線通信手段17は、保持部16内においては第2のリブ15のみに接触し、側部8、上縁部11および第1のリブ12とは接触していない。すなわち、保持部16に保持された無線通信手段17と側部8、上縁部11および第1のリブ12それぞれとには隙間が生じている。
【0035】
このように保持部16に保持された無線通信手段17と側部8、上縁部11および第1のリブ12それぞれとには隙間を有することで、衝撃等のように外部から圧力が作用した場合に、その圧力が無線通信手段17に直接作用せず、保持部16内に保持した状態を保持しやすい。
【0036】
なお、隙間を生じさせない場合であっても同様に衝撃干渉作用を奏するには、例えば保持部16を構成する部材自体の剛性をより向上させた構成や、スポンジ等のように衝撃干渉作用を有する部材を保持部16と無線通信手段17との間に設けた構成にしてもよい。
【0037】
保持部16は、図2に示すように、保持部16に保持された無線通信手段17および保持部16自体が、平面視にて、開口部3より中央側へ突出しないように配置されている。
【0038】
無線通信手段17は、筐体1内の水量メータの値に対応した信号を電波として送信可能な図示しない通信機、その通信機の電波を増幅させる図示しない増幅器、および、電源等の一般的に無線通信に必要なものを有する通信モジュールを備え、この通信モジュールは、液不透過性の材料にて保持部16の内部形状に対応するように形成されたカバー体18で被覆されている。すなわち、無線通信手段17は、保持部16に嵌合可能な形状に形成されたカバー体18内に通信モジュールが収容されている。
【0039】
また、カバー体18は、保持部16に保持された状態にて、その保持部16の空気溜まりと通気可能な図示しないスリットやフィルタ等の通気手段を有する構成が好ましい。
【0040】
蓋体4は、筐体本体2の開口部3に対応した平面視で矩形状の蓋体本体21を有している。
【0041】
この蓋体本体21は、長手方向の両端部で短手方向の一端部となる両角部近傍に、図示しない軸支部が設けられ、その軸支部にて筐体本体2に回動自在に軸支されている。
【0042】
また、蓋体本体21は、短手方向の他端部における中心部に、略矩形に切り欠かれた取っ手部20が設けられている。
【0043】
そして、蓋体4が筐体本体2に対して軸支部を中心に一方向、すなわち取っ手部20が筐体本体2側へ接近する方向に回動することで、蓋体4が第1のリブ12の傾斜部14上に載置されるようにして開口部3が閉塞される。一方、蓋体4が筐体本体2に対して他方向、すなわち軸支部を中心に取っ手部20を引き上げるように筐体本体2から離間する方向に回動することで、蓋体4が第1のリブ12の傾斜部14から離間して開口部3が開口する。
【0044】
蓋体本体21において開口部3を閉塞した状態で下側となる下面には、略垂直に下方へのびる壁部としての複数の第3のリブ22が一体に設けられている。
【0045】
これら第3のリブ22は互いに離間して配置されており、蓋体本体21とこれら第3のリブ22とによって、下側が開口した空間を有する保持部23が構成される。
【0046】
なお、各第3のリブ22は、互いに略平行に設けられているだけでなく、交差方向にも設けられていわゆる格子状に配設された構成にしてもよい。
【0047】
また、第3のリブ22としては、既存の筐体に設けられている既設の補強用等のリブを利用してもよい。
【0048】
保持部23は、図1において二点鎖線で示すように、蓋体本体21に対して無線通信手段17を保持可能である。
【0049】
すなわち、無線通信手段17は、筐体本体2の保持部16または蓋体4の保持部23のいずれかに選択的に固定して保持可能である。
【0050】
なお、保持部23では、無線通信手段17を保持した状態を、固定手段としてのビス24によって固定可能である。すなわち、無線通信手段17は、第3のリブ22間に挿入するように配置させた状態にて、その無線通信手段17の一部と第3のリブ22の先端部分とをビス24によって固定可能である。
【0051】
また、保持部16は、蓋体本体21における取っ手部20に対応して配置された構成が好ましく、その保持部16に保持された状態の無線通信手段17は、電波の送信方向が保持部16と蓋体4との間で、特に取っ手部20を構成する隙間を向くように設置される構成がより好ましい。
【0052】
次に、上記一実施の形態の効果を説明する。
【0053】
上記筐体1によれば、蓋体4および筐体本体2が、無線通信手段17を保持可能な保持部16,23を有することにより、その保持部16および保持部23のいずれかで無線通信手段17を保持でき、無線通信手段17を所定の位置に固定できる。そのため、無線通信手段17は外部の受信装置と安定して通信できる。
【0054】
また、無線通信手段17を保持する保持部16,23は、下側が開口しているため、筐体1内に浸水してその水位が上昇してきた場合には、保持部16,23内の空間が空気溜まりとして作用する。そのため、空気溜まりとなる保持部16,23内には水が流入せず、保持部16,23内の無線通信手段17が水に接触することを効果的に防止できる。
【0055】
このように筐体1は、下側が開口した空間を有しかつ無線通信手段17を保持可能な保持部16,23を有するため、無線通信手段17が水に接触することを防止でき、かつ、無線通信手段17が安定して通信できる。
【0056】
保持部16は、蓋体本体21における取っ手部20に対応して配置され、保持部16に保持された無線通信手段17は、電波の送信方向が保持部16と蓋体4との間で、特に取っ手部20を構成する隙間を向くように配置されることで、筐体1内において無線通信手段17から発せられた電波が、外部の受信装置に伝わるまでに透過する箇所を最小限にでき、物体を透過することによる電波の減衰を抑えることができる。
【0057】
また、保持部16,23は、開口された下側以外が水密な構成であることにより、より確実に空気溜まりとして作用しやすく、無線通信手段17と水との接触をより確実に防止できる。
【0058】
一方、保持部16,23が外気と通気可能な通気手段を有する構成の場合には、保持部16内や無線通信手段17での結露の発生を防止できる。
【0059】
また、保持部16は、保持している無線通信手段17が側部8、上縁部11および第1のリブ12から離間していることで、例えば筐体1に衝撃が作用した場合であっても、その隙間が緩衝作用を奏するため、衝撃が無線通信手段17に直接的に伝わらず保持された状態を維持しやすい。
【0060】
保持部16は、開口部3より中央側に突出しないように配置されることで、例えば水量メータのメンテナンスや交換の際に、開口部3からの作業の妨げになりにくい。
【0061】
なお、上記一実施の形態では、筐体本体2および蓋体4の両方に保持部16が設けられた構成としたが、保持部16は、筐体本体2および蓋体4の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0062】
また、保持部16は、筐体本体2の側部8の一部と上縁部11と第1のリブ12と第2のリブ15とで形成された構成、および、蓋体本体21と第3のリブ22とで形成された構成としたが、これらのような構成には限定されず、少なくとも下側が開口した空間を有しかつ無線通信手段17を保持可能な構成であればよい。
【0063】
さらに、筐体本体2に設けられた保持部16は、平面視にて開口部3より中央側へ突出しない構成としたが、このような構成には限定されず、筐体本体2内における保持部16の配置状態は適宜変更できる。
【0064】
保持部23に無線通信手段17を保持した状態を固定するための固定手段は、ビス24である構成には限定されず、無線通信手段17が保持された状態を固定して維持できる構成であればよい。このような固定手段は、例えば面ファスナや着脱可能な取付機構のように取外可能な構成であると、無線通信手段17における電池交換等のメンテナンスの際に作業しやすいので好ましい。
【符号の説明】
【0065】
1 筐体
2 筐体本体
3 開口部
4 蓋体
8 側部
11 上縁部
12 壁部としての第1のリブ
15 壁部としての第2のリブ
16 保持部
17 無線通信手段
18 カバー体
21 蓋体本体
22 壁部としての第3のリブ
23 保持部
図1
図2