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  • 特許-基板処理装置のスピンチャック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】基板処理装置のスピンチャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20230322BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H01L21/68 P
H01L21/30 564C
H01L21/30 569C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019051027
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020155519
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】徐 飛
(72)【発明者】
【氏名】西山 耕二
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-150097(JP,A)
【文献】特開2015-170617(JP,A)
【文献】米国特許第07470344(US,B1)
【文献】特開2017-027974(JP,A)
【文献】特開2014-195016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を吸着保持して回転させる基板処理装置のスピンチャックであって、
保持する基板の径の3分の2以上前記基板の径未満の直径を有する円板形状の基板保持部を備え、
前記基板保持部の上面は平面であるとともに、前記上面に複数の吸着孔が設けられ
前記複数の吸着孔は、前記基板保持部の前記上面に同心円状に設けられ、
前記複数の吸着孔は、前記基板保持部の径方向に沿って前記基板保持部の端縁部に近付くほど配設間隔が小さくなるように設けられることを特徴とする基板処理装置のスピンチャック。
【請求項2】
請求項1記載の基板処理装置のスピンチャックにおいて、
前記複数の吸着孔の開口率は0.05%以上0.1%以下であることを特徴とする基板処理装置のスピンチャック。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の基板処理装置のスピンチャックにおいて、
前記基板保持部の径方向に沿って前記上面と平行に横穴が設けられ、
前記複数の吸着孔は前記横穴に連通接続され、
前記横穴よりも前記複数の吸着孔の径の方が小さいことを特徴とする基板処理装置のスピンチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)を吸着保持して回転させる基板処理装置のスピンチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、円形の半導体ウェハーを回転させつつ当該半導体ウェハーに対して塗布処理や洗浄処理等を行う基板処理装置が広く用いられている(例えば、スピンコータ、スピンスクラバ、スピンデベロッパ等)。これらの基板処理装置では、スピンチャックによって半導体ウェハーを水平姿勢に保持しつつ、鉛直方向に沿った中心軸周りで半導体ウェハーを回転させて所定の処理を行う。スピンチャックとしては、半導体ウェハーの端縁部を機械的に把持するものや半導体ウェハーの下面中心部を吸着保持するものが用いられている。
【0003】
特許文献1には、半導体ウェハーの下面を真空吸着保持するスピンチャックが開示されている。特許文献1に開示のスピンチャックにおいては、基板保持部と半導体ウェハーとの接触面積をなるべく少なくするべく、基板保持部の周縁部に円環状に凸状部を設けるとともに、その内側に複数の微小突起を設けている。半導体ウェハーの下面に基板保持部を当接させた状態で周縁部の内側を真空吸引することによって半導体ウェハーをスピンチャックに吸着保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-150097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
典型的には、半導体ウェハーの厚さは規格によって0.775mmとされている。ところが、それよりも顕著に厚さの薄い、例えば厚さ0.3mmの半導体ウェハーも使用されている。このような薄型の半導体ウェハーを特許文献1に開示されるようなスピンチャックに吸着保持して高速回転させると、半導体ウェハーのエッジ部分がばたついて大きく揺れ動くという問題が生じる。例えば、スピンコータにて回転中の半導体ウェハーのエッジ部分が大きく揺れ動くと塗布品質が悪化することとなる。
【0006】
また、特許文献1に開示されるような接触面積の少ないスピンチャックによって上記薄型の半導体ウェハーを吸着保持すると、吸着部分が凹状にへこんで変形するという問題も生じる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、薄い基板であっても回転時の基板の振動を抑制することができるスピンチャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板を吸着保持して回転させる基板処理装置のスピンチャックにおいて、保持する基板の径の3分の2以上前記基板の径未満の直径を有する円板形状の基板保持部を備え、前記基板保持部の上面は平面であるとともに、前記上面に複数の吸着孔が設けられ、前記複数の吸着孔は、前記基板保持部の前記上面に同心円状に設けられ、前記複数の吸着孔は、前記基板保持部の径方向に沿って前記基板保持部の端縁部に近付くほど配設間隔が小さくなるように設けられることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板処理装置のスピンチャックにおいて、前記複数の吸着孔の開口率は0.05%以上0.1%以下であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る基板処理装置のスピンチャックにおいて、前記基板保持部の径方向に沿って前記上面と平行に横穴が設けられ、前記複数の吸着孔は前記横穴に連通接続され、前記横穴よりも前記複数の吸着孔の径の方が小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1から請求項3の発明によれば、保持する基板の径の3分の2以上当該基板の径未満の直径を有する円板形状の基板保持部の上面は平面であるとともに、当該上面に複数の吸着孔が設けられるため、薄い基板であっても安定して基板を吸着保持することができ、回転時の基板の振動を抑制することができる。また、複数の吸着孔は、基板保持部の径方向に沿って基板保持部の端縁部に近付くほど配設間隔が小さくなるように設けられるため、基板の全面を良好なバランスにて吸着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る基板処理装置のスピンチャックの構成を示す縦断面図である。
図2図1のスピンチャックの端部を拡大した縦断面図である。
図3図1のスピンチャックの平面図である。
図4図1のスピンチャックによる保持対象となる半導体ウェハーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る基板処理装置のスピンチャック1の構成を示す縦断面図である。図2は、図1のスピンチャック1の端部を拡大した縦断面図である。また、図3は、図1のスピンチャック1の平面図である。
【0016】
このスピンチャック1は、例えばスピンコータ等の半導体ウェハーWを回転させつつ所定の基板処理を行う回転式基板処理装置に用いられる。スピンチャック1は、基板保持部2と嵌合部3とを備えて構成される。基板保持部2および嵌合部3は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によって形成される。基板保持部2の下面中央に嵌合部3が突設される。嵌合部3は、図示を省略する基板処理装置のモータの回転軸5に嵌合される。当該モータの回転駆動によって、回転軸5とともに嵌合部3および基板保持部2を含むスピンチャック1の全体が鉛直方向に沿った軸J周りで回転する。なお、基板保持部2と嵌合部3とは一体に成型されても良い。
【0017】
基板保持部2は、円板形状の部材である。円板形状の基板保持部2の直径は、スピンチャック1によって保持される対象となる半導体ウェハーWの直径の3分の2以上であり、かつ、当該半導体ウェハーWの直径未満である。例えば、保持される半導体ウェハーWの径がφ300mmであれば、基板保持部2の直径は200mm以上300mm未満である。本実施形態では、基板保持部2の直径は294mmであり、半導体ウェハーWの径よりも若干小さい。
【0018】
基板保持部2の内部には、円板形状の径方向に沿って上面と平行に複数の横穴10が形設されている。図3に示すように、本実施形態では、15°間隔で12本の横穴10が基板保持部2に形設されている。なお、図3では、図示の便宜上、横穴10を点線にて示している。
【0019】
横穴10は、基板保持部2の径方向に沿って形設された円筒状の貫通穴である。よって、各横穴10の長さは基板保持部2の直径と等しい。また、横穴10の径は、例えば2mmである。12本の横穴10の中心部は、回転軸5および嵌合部3の内部に鉛直方向に沿って延設された吸引管15に連通接続されている。吸引管15の基端部は真空吸引源8に連通接続されている。真空吸引源8は、真空ポンプ等を備える。
【0020】
また、横穴10の両端は丸棒11によって封止されている。12本の横穴10のそれぞれの両端に丸棒11が嵌合されているため、合計24個の丸棒11によって12本の横穴10が封止されることとなる。
【0021】
基板保持部2の上面2aは平坦な円形の平面である。基板保持部2の上面2aには、複数の吸着孔20が穿設されている。複数の吸着孔20のそれぞれは、基板保持部2の上面2aと垂直に設けられた小孔である。各吸着孔20の径は、例えば0.5mmである。複数の吸着孔20のそれぞれは、いずれかの横穴10に連通接続されている。
【0022】
横穴10は基板保持部2の径方向に沿って設けられているため、図3に示すように、複数の吸着孔20も基板保持部2の径方向に沿って配設されることとなる。また、図1および図3に示すように、複数の吸着孔20は、円板形状の基板保持部2の径方向に沿って基板保持部2の端縁部に近付くほど配設間隔(ピッチ)が小さくなるように設けられている。従って、基板保持部2の径方向においては、基板保持部2の端縁部に近付くほど吸着孔20の配設密度が高くなる。また、12本の横穴10の相互間では、同じ配設間隔にて吸着孔20が設けられている。従って、図3に示すように、複数の吸着孔20は基板保持部2の上面2aに同心円状に配設されることとなる。
【0023】
図2に示すように、本実施形態の基板保持部2においては、平坦な平面である上面2aの一部に吸着孔20が設けられることとなる。複数の吸着孔20の開孔率(基板保持部2の上面2a全体の面積に対する複数の吸着孔20の開孔部分の合計面積の比率)は0.07%以下であり、好ましくは0.05%以上0.1%以下である。
【0024】
図4は、本実施形態のスピンチャック1による保持対象となる半導体ウェハーWの断面図である。本実施形態においては、一般的な規格(厚さ0.775mm)よりも厚さの薄い半導体ウェハーWがスピンチャック1によって吸着保持される。図4の半導体ウェハーWの直径は、典型的なウェハーサイズと同じφ300mmである。半導体ウェハーWの厚さは一定値ではない。半導体ウェハーWの端縁部から幅3mmの円環状領域の厚さt1は0.8mmである。一方、その円環状領域よりも内側の領域の厚さt2は0.3mmである。従来、多数のデバイスを積層させて使用する場合、デバイスの裏側を研削することによって各デバイスの厚さを薄くすることにより、全体の厚さが過大にならないようにすることがあった。図4のような薄型の半導体ウェハーWからデバイスを製造すれば、研削を行わなくても各デバイスの厚さを薄くすることが可能である。すなわち、図4のような半導体ウェハーWは、薄いデバイスを製造する際に好適である。
【0025】
図4のような薄型の半導体ウェハーWを本実施形態のスピンチャック1に載置し、半導体ウェハーWの裏面を基板保持部2の上面2aに接触させた状態にて真空吸引源8を作動させると、吸引管15および横穴10の内部が吸引され、複数の吸着孔20のそれぞれに負圧が作用する。横穴10は貫通穴ではあるものの、横穴10の両端は丸棒11によって封止されているため、横穴10の両端から空気が流入して吸着孔20に負圧が作用しなくなることは防がれる。半導体ウェハーWの裏面が基板保持部2の上面2aに接触した状態で複数の吸着孔20のそれぞれに負圧が作用することにより、当該半導体ウェハーWが基板保持部2の上面2aに吸着保持される。
【0026】
半導体ウェハーWを吸着保持したスピンチャック1が鉛直方向に沿った軸J(図1)周りで回転することにより、当該半導体ウェハーWも水平面内で回転する。例えば、スピンコータにて回転する半導体ウェハーWの表面中心に図示省略の吐出ノズルからレジスト液を吐出することにより、着液したレジスト液が遠心力によって半導体ウェハーWの表面に薄く拡布されてレジスト膜が形成されることとなる。また、例えば、スピンスクラバにて回転する半導体ウェハーWの表面に図示省略の洗浄ブラシを当接させて当該洗浄ブラシを揺動させることにより、半導体ウェハーWのスクラブ洗浄を行うことができる。
【0027】
本実施形態においては、スピンチャック1の基板保持部2の直径を半導体ウェハーWの直径の3分の2以上、かつ、半導体ウェハーWの直径未満としている。すなわち、基板保持部2のサイズを典型的なスピンチャックよりも比較的大きくして半導体ウェハーWよりも若干小さなものとしている。そして、比較的大きな基板保持部2の上面2aを平坦な平面とし、その上面2aの一部に複数の吸着孔20を設けている。このような基板保持部2によって半導体ウェハーWを吸着保持すれば、半導体ウェハーWと上面2aとの接触面積が大きくなり、図4に示すような薄型の半導体ウェハーWであっても安定して吸着保持することができる。その結果、図4に示すような薄型の半導体ウェハーWをスピンチャック1に吸着保持して高速回転させたとしても、回転時の半導体ウェハーWの振動を抑制することができる。例えば、スピンコータにおいて、回転時の半導体ウェハーWの振動を抑制することができれば、塗布品質の劣化を防止することができる。
【0028】
また、平坦な上面2aの一部に複数の吸着孔20を設けた基板保持部2によって薄型の半導体ウェハーWを吸着保持しても、半導体ウェハーWと上面2aとの接触面積が大きいため、吸着部分が凹状にへこむような半導体ウェハーWの変形を防止することができる。これにより、半導体ウェハーWの表面平坦度を維持することができる。例えば、スピンコータにおいて、半導体ウェハーWの表面平坦度を維持することができれば、塗布品質の劣化を防止することができる。
【0029】
また、円板形状の基板保持部2の径方向に沿って基板保持部2の端縁部に近付くほど配設間隔が小さくなるように複数の吸着孔20が設けられているため、半導体ウェハーWの全面を良好なバランスにて吸着することができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、図4に示すような周縁部を厚くした半導体ウェハーWをスピンチャック1に吸着保持していたが、全面が厚さ0.3mm程度の薄型の半導体ウェハーWをスピンチャック1に吸着保持するようにしても良い。図4に示すような半導体ウェハーWであれば、厚い周縁部によっても回転時の半導体ウェハーWの振動が幾分抑制されるが、全面が厚さ0.3mm程度の薄型の半導体ウェハーWの場合、回転時に半導体ウェハーWの周縁部がより振動しやすくなる。このような全面が厚さ0.3mm程度の薄型の半導体ウェハーWであっても、上記実施形態のスピンチャック1によってその半導体ウェハーWを吸着保持すれば、回転時の半導体ウェハーWの振動を抑制することができる。
【0031】
また、一般的な規格の厚さの半導体ウェハーWをスピンチャック1に吸着保持するようにしても良い。この場合にも、回転時の半導体ウェハーWの振動を抑制することができる。もっとも、上記実施形態のような薄型の半導体ウェハーWをスピンチャック1によって吸着保持するようにした方が回転時の半導体ウェハーWの振動を抑制する効果をより顕著に得ることができる。
【0032】
また、上記実施形態においては、基板保持部2に12本の横穴10を形設していたが、横穴10の本数は12本に限定されるものではなく適宜の数とすることができる。また、基板保持部2の上面2aに設ける吸着孔20の個数も適宜の数とすることができる。
【0033】
また、横穴10および吸着孔20の径もそれぞれ2mmおよび0.5mmに限定されるものではなく、適宜の値とすることができる。但し、吸着孔20の径は横穴10の径よりは小さい。
【0034】
また、スピンチャック1の材質はポリテトラフルオロエチレンに限定されるものではなく、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る技術は、特に薄い半導体ウェハーを吸着保持して高速回転させる基板処理装置のスピンチャックに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 スピンチャック
2 基板保持部
2a 上面
3 嵌合部
10 横穴
11 丸棒
20 吸着孔
W 半導体ウェハー
図1
図2
図3
図4