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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】遮音システム
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/17 20060101AFI20230322BHJP
   E06B 9/13 20060101ALI20230322BHJP
   E06B 9/70 20060101ALI20230322BHJP
   E05F 15/71 20150101ALI20230322BHJP
【FI】
E06B9/17 Q
E06B9/13 A
E06B9/70
E05F15/71
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019060126
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159076
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秋甫
(72)【発明者】
【氏名】玄 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 弘之
【審査官】素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-214068(JP,A)
【文献】実開平03-040496(JP,U)
【文献】特開平09-203281(JP,A)
【文献】実開昭54-116952(JP,U)
【文献】特開平04-136393(JP,A)
【文献】特開平08-042015(JP,A)
【文献】実開昭48-092221(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00 - 9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のスクリーン、及び、前記第一のスクリーンが巻き掛けられた第一の巻取り軸を具備する第一ロールスクリーンと、
第二のスクリーン、及び、前記第一の巻取り軸の側方に配置され、前記第二のスクリーンの巻き掛け方を変更することで、前記第一のスクリーンに対する前記第二のスクリーンの位置が変更可能となるように当該第二のスクリーンが巻き掛けられた第二の巻取り軸を具備する第二ロールスクリーンと、
を具備し、
前記第二ロールスクリーンは、
前記第二のスクリーンの下端部に設けられるウェイトバーを具備し、
前記ウェイトバーは、
接地した際に前記第二のスクリーンのたるみの発生を抑制する抑制機構を具備し、
前記第二ロールスクリーンは、
前記ウェイトバーを接地させた状態で前記第二の巻取り軸を回転させることで、前記第二のスクリーンを鉛直方向に対して傾斜させることが可能である
遮音システム。
【請求項2】
第一のスクリーン、及び、前記第一のスクリーンが巻き掛けられた第一の巻取り軸を具備する第一ロールスクリーンと、
第二のスクリーン、及び、前記第一の巻取り軸の側方に配置され、前記第二のスクリーンの巻き掛け方を変更することで、前記第一のスクリーンに対する前記第二のスクリーンの位置が変更可能となるように当該第二のスクリーンが巻き掛けられた第二の巻取り軸を具備する第二ロールスクリーンと、
前記第二の巻取り軸を回転駆動させるアクチュエータと、
前記アクチュエータの動作を制御可能な制御部と、
周囲音を検出する検出部と、
を具備し、
前記制御部は、
前記検出部により検出される周囲音に基づいて前記アクチュエータの動作を制御する、
音システム。
【請求項3】
前記第二ロールスクリーンは、
前記第二のスクリーンの下端部に設けられるウェイトバーを具備し、
前記ウェイトバーは、
接地した際に前記第二のスクリーンのたるみの発生を抑制する抑制機構を具備する、
請求項2に記載の遮音システム。
【請求項4】
前記抑制機構は、
前記第二のスクリーンの下端部に固定される固定部と、
前記固定部が上下に移動可能となるように当該固定部を収容する収容部と、
を具備する、
請求項1又は請求項3に記載の遮音システム。
【請求項5】
前記第二の巻取り軸を回転駆動させるアクチュエータと、
前記アクチュエータの動作を制御可能な制御部と、
をさらに具備する、
請求項1に記載の遮音システム。
【請求項6】
周囲音を検出する検出部をさらに具備し、
前記制御部は、
前記検出部により検出される周囲音に基づいて前記アクチュエータの動作を制御する、
請求項5に記載の遮音システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールスクリーンを用いた遮音システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転自在な支軸と、支軸に巻き掛けられたスクリーンと、を具備するロールスクリーンの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、互いに異なる方向に巻きぐせのついた一対のスクリーンを一体的に引き出して使用する構成としている。このような構成により、一対のスクリーンが引き出された状態(展開状態)では、当該一対のスクリーンが互いの巻きぐせを打ち消しあうことになる。これによって、平面性のあるスクリーンを得ることができる。
【0004】
このようなロールスクリーンは、遮光や遮蔽だけではなく、遮音を目的として使用される場合がある。しかしながら、ロールスクリーンの遮音性能はスクリーンの素材や重量等に左右されるため、特定の音域において共鳴が発生するなど、十分な遮音効果が得られない場合がある。また、遮音の対象となる周囲音(特に騒音)は、発生源に応じて様々な音域に亘ることが想定される。このため、騒音に応じて遮音性能を任意に変更することが可能な遮音システムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭61-194090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、遮音性能を変更することが可能な遮音システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、第一のスクリーン、及び、前記第一のスクリーンが巻き掛けられた第一の巻取り軸を具備する第一ロールスクリーンと、第二のスクリーン、及び、前記第一の巻取り軸の側方に配置され、前記第二のスクリーンの巻き掛け方を変更することで、前記第一のスクリーンに対する前記第二のスクリーンの位置が変更可能となるように当該第二のスクリーンが巻き掛けられた第二の巻取り軸を具備する第二ロールスクリーンと、を具備し、前記第二ロールスクリーンは、前記第二のスクリーンの下端部に設けられるウェイトバーを具備し、前記ウェイトバーは、接地した際に前記第二のスクリーンのたるみの発生を抑制する抑制機構を具備し、前記第二ロールスクリーンは、前記ウェイトバーを接地させた状態で前記第二の巻取り軸を回転させることで、前記第二のスクリーンを鉛直方向に対して傾斜させることが可能であるものである。
【0009】
請求項2においては、第一のスクリーン、及び、前記第一のスクリーンが巻き掛けられた第一の巻取り軸を具備する第一ロールスクリーンと、第二のスクリーン、及び、前記第一の巻取り軸の側方に配置され、前記第二のスクリーンの巻き掛け方を変更することで、前記第一のスクリーンに対する前記第二のスクリーンの位置が変更可能となるように当該第二のスクリーンが巻き掛けられた第二の巻取り軸を具備する第二ロールスクリーンと、前記第二の巻取り軸を回転駆動させるアクチュエータと、前記アクチュエータの動作を制御可能な制御部と、周囲音を検出する検出部と、を具備し、前記制御部は、前記検出部により検出される周囲音に基づいて前記アクチュエータの動作を制御するものである。
【0010】
請求項3においては、前記第二ロールスクリーンは、前記第二のスクリーンの下端部に設けられるウェイトバーを具備し、前記ウェイトバーは、接地した際に前記第二のスクリーンのたるみの発生を抑制する抑制機構を具備するものである。
【0011】
請求項4においては、前記抑制機構は、前記第二のスクリーンの下端部に固定される固定部と、前記固定部が上下に移動可能となるように当該固定部を収容する収容部と、を具備するものである。
【0012】
請求項5においては、前記第二の巻取り軸を回転駆動させるアクチュエータと、前記アクチュエータの動作を制御可能な制御部と、をさらに具備するものである。
【0013】
請求項6においては、周囲音を検出する検出部をさらに具備し、前記制御部は、前記検出部により検出される周囲音に基づいて前記アクチュエータの動作を制御するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、遮音性能を変更することができる。また、第二のスクリーンのたるみの発生を抑制することができる。また、スクリーン間の幅を高さに応じて変化させることができ、共鳴の発生を効果的に抑制することができる。
【0016】
請求項2においては、遮音性能を変更することができる。また、自動的に遮音性能を変更することができる。また、周囲音に応じて遮音性能を変更することができる。
【0017】
請求項3においては、第二のスクリーンのたるみの発生を抑制することができる。
【0018】
請求項4においては、抑制機構を簡素な構成とすることができる。
【0019】
請求項5においては、自動的に遮音性能を変更することができる。
【0020】
請求項6においては、周囲音に応じて遮音性能を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第一実施形態に係る遮音システムの構成を示した斜視図。
図2】同じく、側面概略図及び一部拡大断面図。
図3】スクリーンの位置を変更する様子を示した側面概略図。
図4】抑制機構の動作を示した側面概略図及び一部拡大断面図。
図5】空気層の幅を変更した例を示した側面概略図。
図6】スクリーンを傾斜させて使用した状態を示した側面概略図。
図7】第二実施形態に係る遮音システムの構成を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の説明では、便宜上、図中に示した矢印に従って、上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義する。
【0023】
まず、図1及び図2を用いて、本発明の第一実施形態に係る遮音システム1の構成について説明する。遮音システム1は、周囲音(特に、人の健康や生活環境に影響を及ぼすような騒音)を遮る(遮音する)ためのものである。遮音システム1は、主として第一ロールスクリーン10及び第二ロールスクリーン20を具備する。
【0024】
なお、本実施形態において、第一ロールスクリーン10と第二ロールスクリーン20は、略同一の構成を有している。従って以下では、第一ロールスクリーン10の構成について具体的に説明し、第二ロールスクリーン20の構成についての説明は省略する。
【0025】
第一ロールスクリーン10は、主として巻取り軸11、支持部12、スクリーン13、ウェイトバー14及びチェーン15を具備する。
【0026】
巻取り軸11は、後述するスクリーン13が巻き掛けられる軸である。巻取り軸11は、略円柱状に形成される。巻取り軸11は、長手方向を略水平(本実施形態では、左右)に向けて配置される。
【0027】
支持部12は、巻取り軸11を回転可能に支持するものである。支持部12は、巻取り軸11の両端部に配置される。支持部12は、適宜の箇所(本実施形態では、後述する天井4)に固定される。
【0028】
スクリーン13は、空間を適宜仕切るためのシート状の部材である。スクリーン13は、適宜の生地を用いて形成される。スクリーン13は、略矩形状に形成される。スクリーン13の一端部(上端部)は、巻取り軸11の外周面の所定の位置(固定位置P)に固定される(図3参照)。
【0029】
ウェイトバー14は、自重によりスクリーン13を引き伸ばすものである。ウェイトバー14は、スクリーン13の下端部に設けられる。ウェイトバー14は、主として固定部14a及び収容部14bを具備する。
【0030】
固定部14aは、スクリーン13の下端部に固定されるものである。固定部14aは、スクリーン13の下端部に沿って略水平に延びる長手状に形成される。固定部14aは、側面視矩形状に形成される。固定部14aは、後述する収容部14b内において、スクリーン13の下端部に固定される。
【0031】
収容部14bは、固定部14aを収容するものである。収容部14bは、スクリーン13の下端部に沿って略水平に延びる長手状に形成される。収容部14bは、中空状(箱状)に形成される。収容部14bの内部(中空部分)の上下幅は、固定部14aの上下幅と比べて大きくなるように形成される。
【0032】
収容部14bの上面にはスリット14cが形成される。スクリーン13の下端部は、スリット14cを介して収容部14b内へと挿入される。収容部14b内において、スクリーン13の下端部に固定部14aが固定される。スリット14cの幅は、固定部14aよりも小さく形成されている。このため、収容部14bがスクリーン13の下端部から脱落することはない。
【0033】
チェーン15は、巻取り軸11を回転させるための操作具である。チェーン15は、巻取り軸11の一端部において、巻取り軸11と連結される。チェーン15は巻取り軸11から所定の高さまで垂れ下がるように設けられる。利用者は、チェーン15を回転させることで、巻取り軸11を任意の方向に回転させることができる。
【0034】
上述の如く、第二ロールスクリーン20の構成は、第一ロールスクリーン10の構成と略同一である。第二ロールスクリーン20の各構成部材には、対応する第一ロールスクリーン10の構成部材と同じ符号を付して図示している。
【0035】
第一ロールスクリーン10及び第二ロールスクリーン20は、窓2と隣接するように配置される。具体的には、図2に示すように、窓2の室内側(図2においては、後方)に隣接するように第二ロールスクリーン20が配置される。また第二ロールスクリーン20の側方に(さらに室内側に隣接するように)、第一ロールスクリーン10が配置される。この際、第一ロールスクリーン10の巻取り軸11と、第二ロールスクリーン20の巻取り軸11は、同じ高さに、かつ平行に配置される。
【0036】
なお、本実施形態で例示する窓2は、便宜上、床3から天井4近くまで形成されるもの(いわゆる、掃き出し窓)とするが、本発明はこれに限るものではなく、その他の種々の窓(腰高窓、出窓等)であってもよい。
【0037】
このように構成された第一ロールスクリーン10及び第二ロールスクリーン20は、スクリーン13の巻取り方向を変更することで、当該スクリーン13の位置(具体的には、前後方向における位置)を変更することができる。以下、第一ロールスクリーン10を例に挙げて具体的に説明する。
【0038】
例えば、図3(a)に示すように、左側面視においてスクリーン13の下端部(ウェイトバー14)が巻取り軸11の前側から垂れ下がっている状態(スクリーン13が巻取り軸11に対して時計回りに巻き取られている状態)から、巻取り軸11を左側面視反時計回りに回転させると、スクリーン13が徐々に下方に引き出され(図3(b))、ウェイトバー14が床3に接地(接触)する(図3(c))。さらに巻取り軸11を反時計回りに回転させ、固定位置Pが後方へと移動すると、それに伴ってスクリーン13も後方へと移動する(図3(d)~(f))。
【0039】
このように、第一ロールスクリーン10は、スクリーン13の巻き掛け方(巻き掛け方向や、巻き掛け量)を変更することで、スクリーン13の位置(前後方向位置)を変更することができる。具体的には、巻取り軸11を左側面時計回り、又は反時計回りに回転させることで、巻取り軸11の幅(前後幅)内において、スクリーン13の位置を任意に変更することができる(図3参照)。
【0040】
ここで、図3(c)に示すように、ウェイトバー14が床3に接地(接触)した状態から、さらに巻取り軸11を反時計回りに回転させると、スクリーン13が下がる(スクリーン13の上端(固定位置P)が下方に移動する)ため、巻取り軸11と床3との間でスクリーン13がたるむおそれがある。しかしながら、本実施形態においては、ウェイトバー14にたるみを抑制する抑制機構(固定部14a及び収容部14b)を設けることで、当該たるみの発生を抑制している。以下、当該抑制機構について具体的に説明する。
【0041】
図4(a)に示すように、ウェイトバー14が床3に接地するまでは、スクリーン13の下端部に固定された固定部14aに収容部14bが引っかかるようにして、収容部14bがスクリーン13に吊り下げられている。
【0042】
図4(b)に示すように、ウェイトバー14(収容部14b)が床3に接地した状態でさらにスクリーン13を下げると、スクリーン13が下がった分だけ、固定部14aが収容部14b内を下方に移動する。このように、収容部14bの内部における固定部14aの移動が許容されているため、巻取り軸11と床3との間でのスクリーン13のたるみの発生を抑制することができる。
【0043】
このようなたるみを可能な限り抑制するため、ウェイトバー14が接地した状態から、スクリーン13が最も下がった状態になるまでの当該スクリーン13(固定位置P)の下降距離Lだけ、固定部14aの移動が許容されるように、当該固定部14a及び収容部14bの形状(特に、固定部14aの上下幅と、収容部14bの内部の上下幅)を適宜設定することが望ましい。すなわち、固定部14aが収容部14b内を下降距離L以上移動可能となるように、当該収容部14b等の寸法を設定することが望ましい。
【0044】
以上、第一ロールスクリーン10を用いて、スクリーン13の位置を変更する様子を説明したが、第二ロールスクリーン20についても同様にして、スクリーン13の位置を変更することができる。
【0045】
以下では、上述の如く構成された遮音システム1の使用方法について説明する。
【0046】
図2に示すように、遮音システム1は、第一ロールスクリーン10と第二ロールスクリーン20のスクリーン13を下げることで、当該スクリーン13の間に空気による層(空気層A)を形成することができる。このように、スクリーン13の間に空気層Aを形成することで、窓2の外からの騒音を遮る(遮音する)効果が期待できる。
【0047】
ここで、一般的に、本実施形態のような空気層A(中空層)を有する構造においては、特定の周波数において当該空気層Aの空気をバネにして共鳴が生じ、遮音性が低下することが分かっている。またこのような共鳴(共鳴透過現象)が起こる周波数は、空気層A(中空層)の幅dに応じて変化することが分かっている。
【0048】
具体的には、幅dが大きくなるほど共鳴透過現象が起こる周波数は低くなるため、低音によって共鳴が生じやすくなる。換言すれば、幅dを大きくすれば、高音の騒音を効果的に遮ることができる。
【0049】
また、幅dが小さくなるほど共鳴透過現象が起こる周波数は高くなるため、高音によって共鳴が生じやすくなる。換言すれば、幅dを小さくすれば、低音の騒音を効果的に遮ることができる。
【0050】
そこで本実施形態では、上述のようにスクリーン13の位置を変更可能とすることで、空気層Aの幅dを変更し、遮音システム1の遮音性能を変更することができるように構成している。騒音の種類に応じて当該空気層Aの幅dを変更することで、騒音を効果的に遮ることができる。
【0051】
図5には、スクリーン13の位置を変更することで、空気層Aの幅dを変更した例を示している。
【0052】
例えば図5(a)に示した例では、第一ロールスクリーン10のスクリーン13を最も後方に移動させ、第二ロールスクリーン20のスクリーン13を最も前方に移動させた例を示している。この状態では、空気層Aの幅dは最大(dmax)となる。
【0053】
また図5(b)に示した例では、第一ロールスクリーン10のスクリーン13を最も前方に移動させ、第二ロールスクリーン20のスクリーン13を最も後方に移動させた例を示している。この状態では、空気層Aの幅dは最小(dmin)となる。
【0054】
また図2図5(c)に示した例では、第一ロールスクリーン10及び第二ロールスクリーン20のスクリーン13を最も前方(図2)又は最も後方(図5(c))に移動させた例を示している。図2及び図5(c)に示した状態における空気層Aの幅dは同じであり、中程度(dmax<d<dmin)となる。
【0055】
このように、スクリーン13の位置を変更することで、空気層Aの幅dを任意に変更することができる。発生している騒音の種類に応じて幅dを適宜変更することで、遮音システム1による遮音性能を変更し、効果的に騒音を遮ることができる。例えば、子供の声など比較的高音が騒音になり易い昼間の時間帯には、幅dを大きくすることで、高音域の騒音を効果的に遮ることができる。また、車の走行する音など比較的低音が騒音になり易い夜間の時間帯には、幅dを小さくすることで、低音域の騒音を効果的に遮ることができる。
【0056】
なお、本実施形態のように、遮音システム1を窓2の近傍に設けることで、遮音を目的とした使用だけではなく、一般的なロールスクリーンのように遮光を目的とした使用も可能となる。また、本実施形態のようにスクリーン13間の空気層Aによって、遮音効果だけではなく、遮熱(断熱)効果も期待できる。
【0057】
また、本実施形態のように、遮音システム1を窓2と対向するように設けることで、窓2と遮音システム1(具体的には、第二ロールスクリーン20のスクリーン13)との間にも空気層B(図5参照)を形成することができる。これによって、空気層Aだけでなく、空気層Bによっても遮音効果を得ることができる。また、第二ロールスクリーン20のスクリーン13の位置を変更することで、当該空気層Bの幅Dを変更することができる。このように、空気層Aの幅dだけでなく、空気層Bの幅Dを変更することによって、遮音効果を任意に変更することができる。
【0058】
また、図6に示すように、遮音システム1のスクリーン13を鉛直方向に対して傾斜させて使用することもできる。以下、具体的に説明する。
【0059】
図6(a)に示すように、第二ロールスクリーン20のウェイトバー14が接地した状態から、巻取り軸11を左側面視反時計回りに回転させる。これによって、スクリーン13の上端(固定位置P)は、後方に移動することになる(図6(b))。これに対して、ウェイトバー14は、床3との間の摩擦力によってその場に保持される。従って、固定位置Pは、ウェイトバー14に対して相対的に後方に移動することになり、スクリーン13は、上端が後方に向かって傾斜することになる。
【0060】
このように、第二ロールスクリーン20のスクリーン13を傾斜させることで、空気層Aの幅dが一定ではなくなる。すなわち、空気層Aの幅dは、高さに応じて異なるものとなる。
【0061】
ここで、上述の如く、共鳴が起こる周波数は空気層Aの幅dに応じて決まることになる。これに対し、図6(c)に示すように、スクリーン13を傾斜させることで、高さに応じて幅dが異なるため、共鳴透過現象が起こる周波数をなくすことができる。すなわち、このような状態では、どのような音域の騒音に対しても共鳴が起こり難く、安定した遮音性を得ることができる。
【0062】
なお、このようにスクリーン13を傾斜させて使用する場合は、ウェイトバー14と床3との間にある程度の摩擦力(傾斜させやすい摩擦力)が得られるように、ウェイトバー14の形状や、素材等を適宜選択することが望ましい。また上述の説明で用いた図3では、説明の簡略化のため、当該摩擦(スクリーン13の傾斜)を考慮していない。
【0063】
以上の如く、本実施形態に係る遮音システム1は、
第一のスクリーン13、及び、前記第一のスクリーン13が巻き掛けられた第一の巻取り軸11を具備する第一ロールスクリーン10と、
第二のスクリーン13、及び、前記第一の巻取り軸11の側方に配置され、前記第二のスクリーン13の巻き掛け方を変更することで、前記第一のスクリーン13に対する前記第二のスクリーン13の位置が変更可能となるように当該第二のスクリーン13が巻き掛けられた第二の巻取り軸11を具備する第二ロールスクリーン20と、
を具備するものである。
このように構成することにより、遮音性能を変更することができる。すなわち、第一ロールスクリーン10のスクリーン13に対する、第二ロールスクリーン20のスクリーン13の位置を変更することで、2つのスクリーン13間に形成される空気層Aの幅dを変更することができる。これによって、遮音システム1による遮音性能を任意に変更することができる。
【0064】
また、前記第二ロールスクリーン20は、
前記第二のスクリーン13の下端部に設けられるウェイトバー14を具備し、
前記ウェイトバー14は、
接地した際に前記第二のスクリーン13のたるみの発生を抑制する抑制機構(固定部14a及び収容部14b)を具備するものである。
このように構成することにより、第二のスクリーン13のたるみの発生を抑制することができる。すなわち、第二ロールスクリーン20のスクリーン13の位置を変更する際にウェイトバー14が接地したとしても、当該スクリーン13がたるむのを抑制することができる。これによって、遮音システム1の美観を保つことができる。
【0065】
また、前記抑制機構は、
前記第二のスクリーン13の下端部に固定される固定部14aと、
前記固定部14aが上下に移動可能となるように当該固定部14aを収容する収容部14bと、
を具備するものである。
このように構成することにより、抑制機構を簡素な構成とすることができる。
【0066】
また、前記第二ロールスクリーン20は、
前記ウェイトバー14を接地させた状態で前記第二の巻取り軸11を回転させることで、前記第二のスクリーン13を鉛直方向に対して傾斜させることが可能なものである。
このように構成することにより、スクリーン13間の幅を高さに応じて変化させることができ、共鳴の発生を効果的に抑制することができる。
【0067】
なお、本実施形態に係る第一ロールスクリーン10の巻取り軸11及びスクリーン13(並びに/又は、第二ロールスクリーン20の巻取り軸11及びスクリーン13)は、本発明に係る第一の巻取り軸及び第一のスクリーンの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る第二ロールスクリーン20の巻取り軸11及びスクリーン13(並びに/又は、第一ロールスクリーン10の巻取り軸11及びスクリーン13)は、本発明に係る第二の巻取り軸及び第二のスクリーンの実施の一形態である。
また、本実施形態に係る固定部14a及び収容部14bは、本発明に係る抑制機構の実施の一形態である。
【0068】
以下では、図7を用いて、本発明の別実施形態(第二実施形態)に係る遮音システム1Aの構成について説明する。
【0069】
なお、第二実施形態に係る遮音システム1Aと第一実施形態に係る遮音システム1との相違点は、自動的にスクリーン13の位置を変更可能とした点である。具体的には、第二実施形態に係る遮音システム1Aは、アクチュエータ30、マイク40及び制御部50を具備する点で、第一実施形態に係る遮音システム1と相違している。以下では、当該相違点について具体的に説明する。
【0070】
アクチュエータ30は、巻取り軸11を回転させる駆動力を発生させるものである。アクチュエータ30は、例えばモータ等により構成される。アクチュエータ30は、第一ロールスクリーン10及び第二ロールスクリーン20の巻取り軸11に、それぞれ1つずつ連結される。アクチュエータ30により発生された駆動力は、適宜の動力伝達部材(歯車、軸等)を介して巻取り軸11に伝達される。アクチュエータ30の動作を制御することで、巻取り軸11を任意の方向に回転させることができる。
【0071】
マイク40は、周囲音(特に、騒音)を検出するものである。マイク40は、任意の場所に配置される。例えば、マイク40は、窓2の近傍(窓2の室外側又は室内側)に配置される。
【0072】
制御部50は、アクチュエータ30の動作を制御可能なものである。制御部50は、RAM、ROM、HDD等の記憶部や、CPU等の演算処理部等を具備する。制御部50には、アクチュエータ30の動作を制御するための各種の情報やプログラム等が記憶されている。
【0073】
制御部50はマイク40に接続され、当該マイク40により検出される騒音に関する情報を取得することができる。また、制御部50はアクチュエータ30に接続され、当該アクチュエータ30の動作を制御することができる。
【0074】
このように構成された遮音システム1Aでは、制御部50によってアクチュエータ30の動作を制御することで、スクリーン13の位置を自動的に変更することができる。例えば制御部50は、現在の時間に応じてスクリーン13の位置を変更することができる。具体的には、子供の声など比較的高音が騒音になり易い昼間の時間帯には、幅dが大きくなるようにスクリーン13の位置を変更する。これによって遮音システム1Aは、高音域の騒音を効果的に遮ることができる。また、車の走行する音など比較的低音が騒音になり易い夜間の時間帯には、幅dが小さくなるようにスクリーン13の位置を変更する。これによって遮音システム1Aは、低音域の騒音を効果的に遮ることができる。
【0075】
また制御部50は、マイク40により検出される騒音に基づいて、スクリーン13の位置を自動的に変更することもできる。例えば制御部50は、マイク40によって比較的高音の騒音が検出された場合、幅dが大きくなるようにスクリーン13の位置を変更する。これによって遮音システム1Aは、高音域の騒音を効果的に遮ることができる。また制御部50は、マイク40によって比較的低音の騒音が検出された場合、幅dが小さくなるようにスクリーン13の位置を変更する。これによって遮音システム1Aは、低音域の騒音を効果的に遮ることができる。
【0076】
以上の如く、第二実施形態に係る遮音システム1Aは、
前記第二の巻取り軸11を回転駆動させるアクチュエータ30と、
前記アクチュエータ30の動作を制御可能な制御部50と、
をさらに具備するものである。
このように構成することにより、自動的に遮音性能を変更することができる。これによって、利便性を向上させることができる。
【0077】
また、遮音システム1Aは、
周囲音を検出するマイク40(検出部)をさらに具備し、
前記制御部50は、
前記マイク40により検出される周囲音に基づいて前記アクチュエータ30の動作を制御するものである。
このように構成することにより、騒音に応じて遮音性能を変更することができる。これによって、効果的に騒音を遮ることができる。
【0078】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態においては、第一ロールスクリーン10及び第二ロールスクリーン20の両方のスクリーン13が前後に移動可能な構成とした。しかし、本発明はこれに限るものではなく、第一ロールスクリーン10及び第二ロールスクリーン20のどちらか一方のスクリーン13のみが前後に移動可能な構成とすることも可能である。このように、第一ロールスクリーン10及び第二ロールスクリーン20のうち、少なくとも一方のスクリーン13を前後に移動可能とすれば、空気層Aの幅dを変更することができ、ひいては遮音性能を変更することができる。
【0080】
また、上記実施形態においては、第一ロールスクリーン10及び第二ロールスクリーン20はスクリーン13のたるみを抑制する抑制機構(固定部14a及び収容部14b)を具備するものとしたが、必ずしも抑制機構を具備していなくてもよい。
【0081】
また、制御部50による制御態様は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の情報に基づいて任意のタイミングでスクリーン13の位置を変更することができる。また、制御部50によって、スクリーン13の位置の変更だけでなく、開閉を行うことも可能である。
【0082】
また、上記実施形態においては、窓2と対向するように遮音システム1(1A)を配置した例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、必要に応じて任意の場所に配置することが可能である。
【0083】
また、上記実施形態においては、遮音システム1(1A)の使用方法として、特に騒音(人の健康や生活環境に影響を及ぼすような音)を遮ることを目的とした使用方法を説明したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、遮音システム1(1A)は、騒音(人の健康や生活環境に影響を及ぼすような音)だけではなく、遮音する必要のある種々の音(周囲音)を遮るために用いることが可能である。また第二実施形態に係る遮音システム1Aにおいても、マイク40によって騒音だけではなくその他の音(周囲音)を検出し、当該検出結果に基づいてスクリーン13の位置を変更することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 遮音システム
10 第一ロールスクリーン
11 巻取り軸
13 スクリーン
14 ウェイトバー
14a 固定部
14b 収容部
20 第二ロールスクリーン
30 アクチュエータ
40 マイク
50 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7