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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】深基礎構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/05 20060101AFI20230322BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20230322BHJP
   E02D 27/00 20060101ALI20230322BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
E02D29/05 C
E02D27/01 Z
E02D27/00 D
E02D27/01 D
E04B1/16 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019065717
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020165152
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 浩徳
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-035923(JP,A)
【文献】特開2010-065394(JP,A)
【文献】特開平10-147946(JP,A)
【文献】特開平09-268575(JP,A)
【文献】実開昭60-029809(JP,U)
【文献】特開平08-081964(JP,A)
【文献】特開2005-120640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/05
E02D 27/01
E02D 27/00
E04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製の深基礎を形成する立ち上がり部の内側に、内側鋼製型枠が残置されて防水層を形成し、防水層内に室内空間が存在しており、
前記立ち上がり部を形成する際に適用される前記内側鋼製型枠と、該立ち上がり部の形成後に脱型される外側鋼製型枠とを繋ぐ巾止め金具が、前記内側鋼製型枠の外面に取り付けられている被係合片に係合された状態で、該巾止め金具が前記立ち上がり部に埋設されていることを特徴とする、深基礎構造。
【請求項2】
対向する前記立ち上がり部の内側にある、対向する前記内側鋼製型枠の間に梁が架け渡され、該梁により一階床が支持されていることを特徴とする、請求項1に記載の深基礎構造。
【請求項3】
前記内側鋼製型枠同士の接合部は、ボルトをナット締めすることにより形成され、該内側鋼製型枠の端面の間の該ボルトの周囲に止水材が配設されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の深基礎構造。
【請求項4】
前記内側鋼製型枠の内面に、複数の中空の縦リブが取り付けられていることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載の深基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の基礎として、基礎の左右の地盤に高低差があり、基礎が擁壁を兼用する場合などにおいては、深基礎が一般に適用されている。ところで、例えば地耐力が30kN/m程度かそれ以下の軟弱な地盤において深基礎を施工する場合、深基礎の内側(建物の内側)に埋戻す埋戻し土の高さは、深基礎ゆえに600mm程度以上になり得る。しかしながら、上記地耐力程度の軟弱な地盤に対して600mm程度以上の高さの埋戻し土を施工する場合、直接基礎では設計が困難になることから、埋戻し土に発泡プラスチック等の軽量材を適用したり、直接基礎の下方地盤に地盤改良や杭を施工するといった措置が講じられることとなり、いずれも工費を高騰させる要因となる。
【0003】
また、上記する深基礎を用いて地下室を施工する場合もあるが、深基礎を鉄筋コンクリート製とした場合は、鉄筋コンクリート中にひび割れの発生が不可避であることから、防水施工が余儀なくされ、工費の増加と工期の長期化に繋がる。そこで、防水施工の不要なボックス状の鋼製地下室を適用する方策も考えられるが、ボックス状の鋼製地下室は一般の鉄筋コンクリート製と異なり、専門工事業者による施工が余儀なくされ、この観点から施工費の高騰に繋がる。
【0004】
そこで、軽量材の埋戻しや地盤改良等を不要にするべく、地下空間を有する態様で鉄筋コンクリート製の深基礎が施工されるのが好ましい。しかしながら、例えば鉄筋コンクリート製の立ち上り部に生じたひび割れを介して背面地盤から浸み込んできた水(地下水、雨水等)が、地下空間を形成する立ち上り部の内面に漏水しないように、防水対策を講じる必要があることに変わりはない。従って、工費を高騰させることなく、防水対策が講じられた深基礎の開発が望まれている。
【0005】
ところで、一般基礎と深基礎とを併用した建物の床構造に関し、一般基礎間又は一般基礎との間に設けられた土間コンクリート上に立設された束と、束により支持された大引とによる床組と、深基礎間に架設された梁による床組とが併用された、建物の床構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-125086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の建物の床構造においても、深基礎の内部には埋戻しが行われず、地下空間に利用できるとしている。従って、深基礎を施工するに当たり、軽量材の埋戻しや地盤改良等を不要にできる。しかしながら、鉄筋コンクリート製の深基礎であることから、上記するようにひび割れに起因する漏水対策として、何等かの防水施工が余儀なくされる構造であることに変わりはない。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、軽量材の埋戻しや地盤改良等を不要にしながら、工費を高騰させることなく防水対策が講じられている深基礎構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による深基礎構造の一態様は、
鉄筋コンクリート製の深基礎を形成する立ち上がり部の内側に、内側鋼製型枠が残置されて防水層を形成し、防水層内に室内空間が存在していることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、深基礎を形成する立ち上がり部の内側に内側鋼製型枠が残置されて防水層を形成していることにより、特別な防水施工を行うことなく、防水構造を備えた深基礎構造を形成することができる。すなわち、フレッシュコンクリートが硬化すると同時に、残置された内側鋼製型枠により防水層が形成されることから、工費を高騰させることなく、防水対策が講じられた深基礎構造を提供することができる。また、「防水層内に室内空間が存在している」とは、深基礎の内部に埋戻しが行われないことにより室内空間が形成されていることを意味しており、従って、深基礎の下方の地盤が比較的軟弱な地盤であっても、軽量材の埋戻しや地盤改良等を不要にすることができる。
【0011】
鉄筋コンクリート製の深基礎の施工に際しては、外側鋼製型枠(鋼製型枠は、メタルフォームとも言う)と内側鋼製型枠を組み立て、これらの型枠内にフレッシュコンクリートを打設し、フレッシュコンクリートが硬化した後、外側鋼製型枠のみを脱型する。すなわち、一般には、外型枠と内型枠の全ての型枠が脱型される。あるいは、必要に応じて、型枠の全部を埋め殺す場合もあり、この場合は外型枠と内型枠の全ての型枠が残置される。しかしながら、後者の場合には、完全な埋め殺しが前提であり、本態様の深基礎構造を形成する内側鋼製型枠のように、防水対策として型枠の一部が残置される構造は、従来には存在しない新規な技術思想である。
【0012】
本態様では、防水対策として型枠を残置する関係上、防水性に優れた鋼製型枠を採用している。ここで、内側鋼製型枠は残置され、外側鋼製型枠は脱型されて転用されることから、内側鋼製型枠を相対的に低仕様の鋼製型枠から形成してもよい。
【0013】
深基礎の底盤に関しては、その全てが鉄筋コンクリート製の底盤であってもよいし、深基礎の対向する立ち上り部の間のスパンが長い場合には、立ち上り部から所定長さまでの範囲に鉄筋コンクリート製のフーチングが存在し、深基礎の中央領域においては鉄筋コンクリート製の底盤(フーチング)が存在しない構造としてもよい。後者の構造では、フーチングの上方において、全ての立ち上り部に亘って広がる土間コンクリートが施工されるが、土間コンクリートの施工に際しては、フーチングの上に例えば鋼製型枠を載置し、鋼製型枠の上方に土間コンクリートを施工する等の底盤止水対策を行うのがよい。
【0014】
室内空間は、室内倉庫、地下室の他、一階床一般部に連続して、該一階床一般部から30cm乃至200cm程度下方に落ち込んだ一階床深底部などに適用できる。
【0015】
また、本発明による深基礎構造の他の態様において、対向する前記立ち上がり部の内側にある、対向する前記内側鋼製型枠の間に梁が架け渡され、該梁により一階床が支持されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、対向する内側鋼製型枠の間に複数の梁が架け渡され、複数の梁に複数の根太が固定され、複数の根太に一階床が支持されていることにより、深基礎の底盤に固定される複数の長尺の束材にて一階床を支持することを不要にでき、梁下の空間を地下室等に供することができる。例えば、梁の上面に複数の短尺の束材を固定し、これら複数の短尺の束材により一階床を支持することができる。ここで、梁は、鋼製梁、RC梁、木製梁のいずれであってもよい。
【0017】
立ち上り部に対する梁の固定態様の一例として、深基礎の立ち上り部の内側鋼製型枠のコンクリートに埋設される側において、梁に対応する位置にアンカーボルトを溶接にて接合しておき、コンクリート内に埋設されるようにしておく。一方、内側鋼製型枠の梁側においては、梁に固定される固定ボルトが螺合されている当接プレートを溶接にて接合し、固定ボルトを梁側に突出させておく。例えばH形鋼により形成される梁の端部のエンドプレートに開設されているボルト孔に対して、固定ボルトの先端を挿通させてナット締めすることにより、当接プレートとエンドプレートが相互に当接した状態で、固定ボルトとアンカーボルトを介して立ち上り部と梁を固定することができる。
【0018】
また、本発明による深基礎構造の他の態様において、前記内側鋼製型枠同士の接合部は、ボルトをナット締めすることにより形成され、該内側鋼製型枠の端面の間の該ボルトの周囲に止水材が配設されていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、内側鋼製型枠同士の接合部がボルトナットにより形成されるとともに、内側鋼製型枠の端面の間のボルトの周囲に止水材が配設されていることにより、内側鋼製型枠の背面の立ち上り部等に生じたひび割れを介して流れてきた水が、内側鋼製型枠同士の接合部を介して内側鋼製型枠の内側に漏水することを抑止することができる。
【0020】
また、本発明による深基礎構造の他の態様において、前記立ち上がり部を形成する際に適用される前記内側鋼製型枠と、該立ち上がり部の形成後に脱型される外側鋼製型枠とを繋ぐ巾止め金具が、前記内側鋼製型枠の外面に取り付けられている被係合片に係合された状態で、該巾止め金具が前記立ち上がり部に埋設されていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、立ち上がり部の形成後に脱型される外側鋼製型枠と内側鋼製型枠とを繋ぐ巾止め金具が、内側鋼製型枠の外面に取り付けられている被係合片に係合されることにより、巾止め金具が内側鋼製型枠を貫通しないことから、巾止め金具の貫通部を介した内側鋼製型枠の内側への漏水を抑止することができる。
【0022】
また、本発明による深基礎構造の他の態様は、前記内側鋼製型枠の内面に、複数の中空の縦リブが取り付けられていることを特徴とする。
【0023】
本態様によれば、内側鋼製型枠の内面に設けられている複数の中空の縦リブにより、フレッシュコンクリートのコンクリート圧に対する耐圧性を内側鋼製型枠に付与するとともに、中空の縦リブを内側の化粧パネル等の被取り付け部材として適用することができる。尚、内側鋼製型枠の内面に対して中空の縦リブが溶接等にて接合されることにより、中空の縦リブの取り付けに際して内側鋼製型枠に貫通部が設けられることはなく、貫通部を介した漏水の恐れはない。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から理解できるように、本発明の深基礎構造によれば、室内空間を有することにより、軽量材の埋戻しや地盤改良等を不要にでき、さらには、工費を高騰させることなく、防水対策が講じられている深基礎構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る深基礎構造の一例の縦断面図である。
図2】内側鋼製型枠同士の接合部を拡大した縦断面図である。
図3】立ち上り部と梁の接合部を拡大した縦断面図である。
図4】深基礎構造の立ち上り部が施工され前の状態を示す縦断面図である。
図5】巾止め金具が内側鋼製型枠の背面に係合された状態で立ち上り部に埋設されている状態を示すとともに、留め付け金具の取り外しと外側鋼製型枠の脱型をともに示す縦断面図である。
図6】内側鋼製型枠の内面に取付けられている縦リブを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態に係る深基礎構造について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0027】
[実施形態に係る深基礎構造]
図1乃至図3を参照して、実施形態に係る深基礎構造の一例について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る深基礎構造の一例の縦断面図であって深基礎の一部を示した図である。また、図2は、内側鋼製型枠同士の接合部を拡大した縦断面図であり、図3は、立ち上り部と梁の接合部を拡大した縦断面図である。
【0028】
深基礎構造100は、基礎の左右の地盤Gに高低差がある地形に対して施工される深基礎30と、深基礎30を形成する立ち上がり部10の内側に、内側鋼製型枠60が残置されることにより構成されており、内側鋼製型枠60は内側の防水層を形成し、防水層60内に室内空間USが形成されている。
【0029】
立ち上り部10とフーチング20はいずれも鉄筋コンクリート製であり、土圧もしくは土水圧に対しては深基礎30が抵抗する。図示例のフーチング20は、図示する立ち上り部10と、この立ち上り部10に対向する不図示の立ち上り部まで連続した底盤を形成している。尚、立ち上り部10から所定長さまでの範囲にあるフーチングであって、対向する不図示の立ち上り部まで連続していないフーチングであってもよい。
【0030】
地盤Gの所定深度の根切り面に敷設されている砕石41の上に、捨てコンクリート層42が形成され、捨てコンクリート層42の上にフーチング20が形成される。
【0031】
立ち上り部10の途中位置には、立ち上がり部10を形成する際に適用される内側鋼製型枠60と、立ち上がり部10の形成後に脱型される外側鋼製型枠65(図4参照)とを繋ぐ巾止め金具50が、内側鋼製型枠60の外面に取り付けられている被係合片62に係合された状態で、立ち上がり部10に埋設されている。また、立ち上り部10の最下段の位置には、立ち上がり部10を形成する際に適用される内側鋼製型枠60と、立ち上がり部10の形成後に脱型される外側鋼製型枠65(図4参照)とを繋ぐ底繋ぎ金具68が、内側鋼製型枠60の外面に取り付けられている被係合片67に係合された状態で、立ち上がり部10に埋設されている。
【0032】
図2に示すように、内側鋼製型枠60同士の接合部は、ボルト91を締付けナット92にて固定することにより形成され、内側鋼製型枠60の端面の間のボルト91の周囲には、例えばゴム製の止水材93が配設されている。
【0033】
また、図3に示すように、立ち上り部10の上方における梁70の設置位置には、頭付きの複数のアンカーボルト95aが埋設されており、各アンカーボルト95aの先端は、内側鋼製型枠60の背面に溶接部96を介して固定されている。
【0034】
複数の固定ボルト95bは、内側鋼製型枠60の内面に溶接部96を介して固定されている当接プレート94のボルト孔94aに螺合し、さらにその内側に突出している。
【0035】
梁70はH形鋼により形成され、その端部にはエンドプレート71が溶接にて接合されており、エンドプレート71に開設されているボルト孔71aに固定ボルト95bの先端が挿通され、ナット95cにて締め付けられることにより、固定ボルト95bとアンカーボルト95aを介して立ち上り部10に対して梁70が固定される。梁70に一階床から載荷された荷重は、アンカーボルト95aを介して立ち上り部10の内部に伝達される。
【0036】
ここで、図示する梁70はH形鋼等により形成されるが、梁70は、形鋼材や角形鋼管等の鋼製梁の他、鉄筋コンクリート製梁や木製梁等であってもよい。また、図3に示す取り付け構造の他にも、当接プレート94にガセットプレートが溶接にて接合され、ガセットプレートに対して、エンドプレートを具備しない梁を構成するH形鋼のウエブがボルト接合される形態であってもよい。
【0037】
図1に戻り、立ち上り部10には、別途の鉛直方向に延びるアンカーボルト83が埋設され、立ち上り部10の天端面からアンカーボルト83の一部が上方に突出している。ベースプレート82に開設されているボルト孔(図示せず)がアンカーボルト83に挿通され、ナット88にて締め付けられることにより固定される。ベースプレート82には、建物の構造躯体を形成するH形鋼や角形鋼管等からなる柱81が溶接にて接合されており、従って、柱81はベースプレート82を介して立ち上り部10の天端面に固定される。
【0038】
図1に示すように、梁70の上方には複数の根太84が固定され、複数の根太84に一階床85が固定され、支持される。このように、深基礎構造100は、一階床85を支持する梁70の下方に室内空間USを有し、この室内空間USは、地下の居室、地下の保管室等、様々な用途の地下室として適用される。尚、深基礎構造100は、一階床85を支持する梁70を具備せず、例えば、一階床一般部に連続して、この一階床一般部から30cm乃至200cm程度下方に落ち込んだ一階床深底部などに適用されてもよい。この形態では、一階床深底部において天井高さが高くなることから、開放感のあるリビング等として一階床深底部を使用することができる。
【0039】
深基礎構造100がその内部に室内空間USを有することにより、深基礎30の内部に埋戻しが行われないことから、上記する室内空間USを有効に利用できることの他に、埋戻し土が存在しないことから、深基礎30の下方の地盤Gが比較的軟弱な地盤であっても、軽量材の埋戻しや地盤改良等を不要にすることができる。
【0040】
次に、図4及び図5を参照して、深基礎構造100の施工方法について説明する。ここで、図4は、深基礎構造の立ち上り部が施工され前の状態を示す縦断面図である。また、図5は、巾止め金具が内側鋼製型枠の背面に係合された状態で立ち上り部に埋設されている状態を示すとともに、留め付け金具の取り外しと外側鋼製型枠の脱型をともに示す縦断面図である。
【0041】
図4に示すように、深基礎30の施工は、まず地盤Gの根切り面まで掘削し、根切り面を転圧等により整地した後、砕石41を敷設し、捨てコンクリート層42を施工する。次いで、フーチング用の型枠66を組み付け、下方の立ち上り部用の外側鋼製型枠65及び内側鋼製型枠60を組み付け、内側鋼製型枠60の背面の被係合片67に底繋ぎ金具68の一端を係合し、底繋ぎ金具68の他端を外側鋼製型枠65に係合させた後、フーチング用のコンクリートを打設してフーチング20を先行して施工する。尚、底繋ぎ金具68は紙面の奥行方向に連続しておらず、コンクリートを充填したり、バイブレータを挿入するスペースを有している。
【0042】
次に、既に組み付けられている下方の外側鋼製型枠65及び内側鋼製型枠60の上に、立ち上り部10の天端まで延びる外側鋼製型枠65及び内側鋼製型枠60を組み付けるとともに、外側鋼製型枠65及び内側鋼製型枠60の途中位置において、巾止め金具50により双方を巾止めすることにより、立ち上り部用空間SPを形成する。
【0043】
ここで、図5に示すように、巾止め金具50はその一端に係合片51を備えており、内側鋼製型枠60の背面に溶接にて接合されている被係合片62の中空に係合片51が係合されることにより、内側鋼製型枠60の背面に対して巾止め金具50が係止される。すなわち、巾止め金具50は、内側鋼製型枠60を貫通することなく、内側鋼製型枠60の背面に係止される。
【0044】
図4に戻り、巾止め金具50の他端は係合片52を有し、巾止め金具50が上下の外側鋼製型枠65に挟持され、係合片52が上下の外側鋼製型枠65の外面に係合することにより、立ち上り部用の外側鋼製型枠65及び内側鋼製型枠60の組み付けが行われる。さらに、外側鋼製型枠65及び内側鋼製型枠60の天端には、双方に係合する頭繋ぎ金具69を設置する。尚、頭繋ぎ金具69は紙面の奥行方向に連続しておらず、コンクリートを充填したり、バイブレータを挿入するスペースを有している。そして、形成されている立ち上り部用空間SPにフレッシュコンクリートを充填し、フレッシュコンクリートが硬化することにより、既に施工済のフーチング20と立ち上り部10が一体となって深基礎30が施工される。
【0045】
この施工では、立ち上り部用空間SPにフレッシュコンクリートを充填する前に、対向する立ち上り部10の間に梁70を架け渡すことにより、梁70を仮設の切梁として機能させることもできる。
【0046】
立ち上り部10が形成された後、図5に示すように、外側鋼製型枠65をX方向に脱型し、立ち上り部10の外周に土砂を埋め戻すことにより、図1に示す柱81や一階床85が設置される前の状態の、深基礎構造100が形成される。
【0047】
深基礎構造100によれば、立ち上り部10が施工された後、内側鋼製型枠60を残置することにより自動的に防水層が形成されることから、工費と工期をかけて特別な防水対策を講じる必要がない。尚、脱型された外側鋼製型枠65は、別途のコンクリート施工用の型枠として転用される。
【0048】
また、巾止め金具50をはじめとして、立ち上り部10の側面と連通して内側鋼製型枠60を貫通する水道が存在しないことから、例えば立ち上り部10に生じたひび割れを介して浸み込んできた地下水や雨水が、内側鋼製型枠60から室内側に漏水することが抑止される。また、図2を参照して既に説明したように、内側鋼製型枠60同士の接合部におけるボルト91の周囲において止水材93が配設されていることにより、内側鋼製型枠60同士の接合部を介した室内側への漏水が抑止される。
【0049】
図6は、内側鋼製型枠の内面に縦リブが取り付けられている形態を示す斜視図である。図示例のように、内側鋼製型枠60の内面において、複数の中空98aを有する縦リブ98が縦方向に間隔を置いて複数の溶接部99を介して取り付けられていることにより、フレッシュコンクリートのコンクリート圧に対する耐圧性を内側鋼製型枠60に付与することができる。さらに、縦リブ98を内側の化粧パネル等(図示せず)の被取り付け部材として適用することができる。また、内側鋼製型枠60の内面に対して中空の縦リブ98が複数の溶接部99を介して接合されることにより、中空の縦リブ98の取り付けに際して内側鋼製型枠60に貫通部が設けられることはなく、貫通部を介した漏水の恐れはない。
【0050】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0051】
10:立ち上り部、20:フーチング(底盤)、30:深基礎、50:巾止め金具、51、52:係合片、60:内側鋼製型枠(防水層)、61:折り返し片、62:被係合片、65:外側鋼製型枠、66:型枠、67:被係合片、68:底繋ぎ金具、69:頭繋ぎ金具、70:梁、71:エンドプレート、81:柱、84:根太、85:一階床、88:ナット、91:ボルト、92:締付けナット、93:止水材、94:当接プレート、95a:アンカーボルト、95b:固定ボルト、95c:ナット、96:溶接部、98:縦リブ、98a:中空、99:溶接部、100:深基礎構造、G:地盤、US:室内空間(地下室)、SP:立ち上り部用空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6