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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】高周波加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/52 20060101AFI20230322BHJP
   H05B 6/50 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H05B6/52
H05B6/50
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019136272
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021022432
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】319006047
【氏名又は名称】シャープセミコンダクターイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓貴
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-022675(JP,A)
【文献】特開平08-288060(JP,A)
【文献】特開2005-158326(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006673(WO,A1)
【文献】特開昭56-102096(JP,A)
【文献】特表2018-521494(JP,A)
【文献】国際公開第03/019985(WO,A1)
【文献】特開2005-056781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/50- 6/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極および前記第1電極と対向する第2電極を含み、前記第1電極と前記第2電極との間に被加熱物が配置される電極部と、
前記電極部に高周波電力を供給する高周波電源部と、
前記電極部と前記高周波電源部との間に設けられ、前記電極部と前記高周波電源部との間のインピーダンス整合を行う第1可変整合回路および第2可変整合回路と、
前記高周波電源部と前記第2可変整合回路との間に設けられ、少なくとも前記高周波電源部に対する反射電力を検出する電力検出部と、を備え、
前記第1可変整合回路の変化幅は、前記第2可変整合回路の変化幅よりも大きく、
前記第1可変整合回路が調整された後、前記第2可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、前記電力検出部の検出結果に基づいて調整されることを特徴とする高周波加熱装置。
【請求項2】
記第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、前記被加熱物の態様に関する情報に基づいて調整され、
前記第2可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、前記電力検出部の検出結果に基づいて調整されることを特徴とする請求項1に記載の高周波加熱装置。
【請求項3】
前記第1可変整合回路における最適条件の探索の際に、前記第2可変整合回路に含まれる可変素子の素子値は、前記可変素子の可変範囲に含まれる予め定められた値となるよう設定され、前記第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、前記電力検出部の検出結果に基づいて調整されることを特徴とする請求項1に記載の高周波加熱装置。
【請求項4】
前記第1可変整合回路は、前記電極部および前記高周波電源部の間で前記電極部に近い側に設けられ、
前記第2可変整合回路は、前記高周波電源部および前記電極部の間で前記高周波電源部に近い側に設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の高周波加熱装置。
【請求項5】
前記第1可変整合回路および前記第2可変整合回路を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記電力検出部が検出する、前記反射電力が小さくなるように、前記第2可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整することを特徴とする請求項2に記載の高周波加熱装置。
【請求項6】
前記第1可変整合回路および前記第2可変整合回路を制御する制御部と、
ユーザから前記被加熱物の態様に関する情報を取得する情報取得部とを備え、
前記制御部は、
前記情報取得部が取得した前記被加熱物の態様に関する情報に基づいて、前記第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整することを特徴とする請求項2に記載の高周波加熱装置。
【請求項7】
前記被加熱物の態様に関する情報は、前記被加熱物の種類、数量、大きさおよび重量の何れか少なくとも1つに関する情報を含むことを特徴とする請求項6に記載の高周波加熱装置。
【請求項8】
前記第1可変整合回路および前記第2可変整合回路を制御する制御部を備え、
前記第1可変整合回路における最適条件の探索の際に、
前記制御部は、
前記第2可変整合回路に含まれる可変素子の素子値を、前記可変素子の可変範囲に含まれる予め定められた値となるよう設定し、
前記電力検出部が検出する、前記反射電力が小さくなるように、前記第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整することを特徴とする請求項3に記載の高周波加熱装置。
【請求項9】
前記第2可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方の調整は、通常動作の際の高周波電力よりも小さい高周波電力で行ない、
前記第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方の調整は、前記第2可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整する際の高周波電力よりも小さい高周波電力で行われることを特徴とする請求項3に記載の高周波加熱装置。
【請求項10】
前記電力検出部は、前記電極部に対する進行電力を検出し、
前記制御部は、
前記電力検出部が検出した前記反射電力の前記進行電力に対する比が小さくなるように前記第2可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整することを特徴とする請求項5に記載の高周波加熱装置。
【請求項11】
前記第1可変整合回路は、
前記第1電極に一端が接続された第1のコイルと、
前記第1のコイルの他端と前記第2電極との間に接続された可変インピーダンス回路とを備えていることを特徴とする請求項2から10までの何れか1項に記載の高周波加熱装置。
【請求項12】
前記可変インピーダンス回路は、
前記第1のコイルの他端に一端が接続された第2のコイルと、
前記第2のコイルの他端と前記第2電極との間に接続された第3のコイルとを有し、
前記第3のコイルおよびスイッチが並列に接続されていることを特徴とする請求項11に記載の高周波加熱装置。
【請求項13】
前記可変インピーダンス回路は、
前記第1のコイルの他端に一端が接続された第2のコイルと、
前記第2のコイルの他端と前記第2電極との間に接続された第3のコイルとを有し、
前記第3のコイル、および、コイルまたはキャパシタとスイッチとの直列回路、が並列に接続されていることを特徴とする請求項11に記載の高周波加熱装置。
【請求項14】
前記第1可変整合回路は、
前記可変インピーダンス回路を複数備えることを特徴とする請求項11から13までの何れか1項に記載の高周波加熱装置。
【請求項15】
複数の前記可変インピーダンス回路に含まれる可変素子のそれぞれは、インダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方に関する特性が、互いに異なっていることを特徴とする請求項14に記載の高周波加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向電極の間に配置された被加熱物に対して高周波誘電加熱を行う高周波加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、対向電極の間に、冷凍された食品等の被加熱物を配置し、該対向電極に対して高周波電源から高周波電力を供給することで、被加熱物を誘電加熱する高周波加熱装置が知られている。このような高周波加熱装置においては、高周波電源と対向電極との間に、前記高周波電源と前記対向電極との間のインピーダンス整合を行う整合回路と、該整合回路から前記高周波電源に反射する反射電力を検出する電力検出回路とが設けられる。
【0003】
このような高周波加熱装置においては、精度の高いインピーダンス整合を行わなければ、前記反射電力が大きくなり、被加熱物を効率よく加熱することができないという問題が生じる。例えば、対向電極間に配置された冷凍された食品を解凍する場合、解凍の進行に応じて対向電極側のインピーダンスが変化する。また、対向電極間に配置された被加熱物の種類や大きさに応じて、対向電極側のインピーダンスは異なる値となる。このため、被加熱物の種類や大きさに応じて、精度の高いインピーダンス整合が行われないと、前記反射電力が生じて効率よく加熱することができなくなる。
【0004】
このような問題点を解決する1つの方法を提供する高周波加熱装置が特許文献1に開示されている。この高周波加熱装置は、被加熱物の形状を認識して整合回路の素子値を決定し、種々の被加熱物に応じて電極を上下に可動させる昇降機能を備えることでインピーダンス整合の高精度化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-158326公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術を小型の高周波加熱装置に適用することは、以下の点で問題がある。例えば、特許文献1に記載の技術では、精度の高いインピーダンス整合を図るために、被加熱物の種類や大きさなどに応じて電極を上下に可動させる昇降機能を備えているが、この昇降機能は、高周波加熱装置の小型化を阻む要因となる。
【0007】
また、小型の高周波加熱装置においては、内部に設けられる対向電極のサイズも小さくなるため、一般的な高周波加熱装置に設けられる対向電極と比べて、対向電極の容量値も小さくなる。そのため、被加熱物の状態の変化(例えば、冷凍された食品の解凍の進行などを想定)に応じて、より高精度にインピーダンス整合を図る必要がある。
【0008】
本発明の一態様は、装置の小型化を図りつつ、被加熱物の態様に関わらずインピーダンス整合の精度を向上させることができる高周波加熱装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る高周波加熱装置は、第1電極および前記第1電極と対向する第2電極を含み、前記第1電極と前記第2電極との間に被加熱物が配置される電極部と、前記電極部に高周波電力を供給する高周波電源部と、前記電極部と前記高周波電源部との間に設けられ、前記電極部と前記高周波電源部との間のインピーダンス整合を行う可変整合回路部と、前記高周波電源部と前記可変整合回路部との間に設けられ、少なくとも前記高周波電源部に対する反射電力を検出する電力検出部と、を備え、前記可変整合回路部は、少なくとも1つの可変整合回路を含み、前記可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、前記電力検出部の検出結果に基づいて調整される構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、装置の小型化を図りつつ、被加熱物の態様に関わらずインピーダンス整合の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態1に係る高周波加熱装置の構成を示すブロック図である。
図2】前記高周波加熱装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態2に係る高周波加熱装置の構成を示すブロック図である。
図4】第2可変整合回路の一構成例を示す回路図である。
図5】第2可変整合回路の別の構成例を示す回路図である。
図6】前記高周波加熱装置に関し、対向電極のインピーダンスを示すスミスチャートの一例である。
図7】前記高周波加熱装置に関し、対向電極のインピーダンスを示すスミスチャートの別の例である。
図8】メニュー情報と第1可変整合回路に含まれるリレースイッチの設定情報との対応関係を示す表である。
図9】第1可変整合回路の一構成例を示す回路図である。
図10】第1可変整合回路の別の構成例を示す回路図である。
図11】本発明の実施形態3に係る第2可変整合回路の一構成例である。
図12】前記高周波加熱装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図13】前記第2可変整合回路の別の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、図1および図2に基づき、本発明の実施形態1に係る高周波加熱装置1の詳細について説明する。高周波加熱装置1は、対向電極(電極部)4の間に、冷凍された食品等の被加熱物7を配置し、対向電極4に対して高周波電源部11から高周波電力を供給することで、被加熱物7を誘電加熱する装置である。このような高周波加熱装置1の例として例えば、電子レンジを挙示することができる。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る高周波加熱装置1は、高周波電源部11、電力検出部2、可変整合回路部3、対向電極4、絶縁体5a,5b、加熱室6、制御部8、バイアス回路9、およびユーザインターフェイス(情報取得部)10を備える。なお、本実施形態では、高周波加熱装置1の内部に制御部8を備える形態を示したが、これに限定されず、制御部8は、高周波加熱装置1の外部に設けられていても良い。
【0014】
高周波電源部11は、高周波発振器11aと高周波増幅器11bとを含む。高周波電源部11から出力される高周波電力は、高周波増幅器11bに入力される直流バイアスにより変化させることができる。なお、直流バイアスは、制御部8の指示により、バイアス回路9にて生成され、高周波増幅器11bに入力される。
【0015】
電力検出部2は、高周波電源部11と、後述する可変整合回路部3との間に設けられる。また、電力検出部2は、少なくとも高周波電源部11に対する反射電力を検出する。なお、電力検出部2は、反射電力とともに、対向電極4に対する進行電力を検出しても良い。電力検出部2は、検出した進行電力および反射電力に関する情報を制御部8へ伝送する。ここで、高周波電源部11から対向電極4に向う電力を進行電力といい、逆に対向電極4から高周波電源部11に向う電力を反射電力という。
【0016】
可変整合回路部3は、高周波電源部11と対向電極4との間に設けられる。可変整合回路部3は、高周波電源部11からの高周波電力が効率よく対向電極4に供給されるように、高周波電源部11と対向電極4との間でインピーダンス整合を取る。
【0017】
可変整合回路部3は、第1可変整合回路(可変整合回路)3aおよび第2可変整合回路(可変整合回路)3bを含む。具体的には、可変整合回路部3の第1可変整合回路3aまたは第2可変整合回路3bのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、電力検出部2の検出結果に基づいて調整される。
【0018】
本実施形態では、第1可変整合回路3aのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、後述する被加熱物の態様に関する情報に基づいて調整され、第2可変整合回路3bのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、電力検出部2の検出結果に基づいて調整される。
【0019】
小型の高周波加熱装置においては、その内部に設置される対向電極のサイズが小さく、その容量値も小さくなり、電極部側が高インピーダンスになることがある。その場合、第1可変整合回路3aを調整する際に大きな反射電力が発生することがあり、高周波電源部の発振などの異常動作や故障につながることがある。また、被加熱物の状態の変化(例えば、冷凍された食品の解凍の進行などを想定)に応じて、より高精度にインピーダンス整合を図る必要もある。
【0020】
このため、前記構成では、第2可変整合回路3bのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を、電力検出部2の検出結果に基づいて調整している。これにより、引用文献1に記載の技術のような電極の可動機構を設けなくても、例えば、高周波電源部に対する反射電力が小さくなるように、インピーダンス整合を行うことが可能になる。以上により、装置の小型化を図りつつ、被加熱物の態様に関わらずインピーダンス整合の精度を向上させることができる。
【0021】
また、被加熱物の種類や大きさに応じて、電極部側のインピーダンスは異なる値となる。このため、前記構成では、第1可変整合回路3aのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を、被加熱物の態様に関する情報(被加熱物の種類や大きさなど)に基づいて調整している。これにより、被加熱物の種類や大きさに応じて、精度の高いインピーダンス整合が可能になる。
【0022】
次に、可変整合回路部3は、対向電極4および高周波電源部11の間で対向電極4に近い側に設けられた第1可変整合回路3aと、高周波電源部11に近い側に設けられた第2可変整合回路3bとを備える。
【0023】
なお、本実施形態では、対向電極4および高周波電源部11の間で対向電極4に近い側に第1可変整合回路3aが設けられ、高周波電源部11に近い側に第2可変整合回路3bが設けられた形態を示したが、これに限定されず、対向電極4に近い側に第2可変整合回路3bを設け、高周波電源部11に近い側に第1可変整合回路3aに設けても良い。第1可変整合回路3aおよび第2可変整合回路3bは、それぞれ少なくとも1つの可変素子を含む。
【0024】
第1可変整合回路3aでは、被加熱物7の種類、数量、大きさおよび重量等の被加熱物の態様に関する情報に基づく制御部8からの指示に応じて可変素子の素子値が調整される。すなわち、第1可変整合回路3aのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、被加熱物7の態様に関する情報に基づいて調整される。
【0025】
一方、第2可変整合回路3bでは、電力検出部2で検出された進行電力と反射電力の情報に基づく制御部8からの指示に応じて可変素子の素子値が調整される。すなわち、第2可変整合回路3bのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、電力検出部2の検出結果に基づいて調整される。なお、第1可変整合回路3aは、第2可変整合回路3bよりも、対向電極4側を見込んだインピーダンスを変化させる変化幅が大きくなっている。
【0026】
なお、以下、本明細書において、「第1可変整合回路3aを調整する」とは、第1可変整合回路3aのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整することを意味する。換言すれば、第1可変整合回路3aに含まれる可変素子の素子値を調整することを意味し、より具体的には、後述する実施形態に示すように、第1可変整合回路3aに含まれるリレースイッチを操作して、コイルやキャパシタなどの可変素子のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整することを意味する。「第2可変整合回路3bを調整する」についても同様である。
【0027】
対向電極4は、加熱室6に内蔵されており、第1可変整合回路3aと接続されている。また、対向電極4は、上部電極(第1電極)4aと、上部電極4aの下側に(上部電極4aと対向して)配置され、被加熱物7が配置される下部電極(第2電極)4bとを含む。上部電極4aは、第1可変整合回路3aと接続され、下部電極4bは接地されている。
【0028】
前記の構成により、高周波電源部11から出力された高周波電力を対向電極4に供給することで、上部電極4aと下部電極4bとの間に配置された被加熱物7を誘電加熱することができる。具体的には、上部電極4aと下部電極4bとの間に、高周波、例えば40.68MHzの高周波電圧を印加して、誘電加熱により被加熱物7を加熱することができる。
【0029】
なお、本実施形態に係る高周波加熱装置1が、家庭用電子レンジ程度の小型である場合を想定し、対向電極4の面積Sを250mm×150mm、電極間隔dを100mmとする。このとき、対向電極4の容量値Cは、空の状態(被加熱物7がない状態)での平行平板モデル(C=ε*S/d)から、約3.32pFとなる。ここで、εは、比誘電率である。なお、対向電極4間に置かれる被加熱物7によって容量値は大きくなることが想定される。
【0030】
また、上部電極4aと下部電極4bとが向かい合った側に、それぞれ絶縁体5a、5bを配置することで、対向電極4の電極間に被加熱物7が置かれたときに、被加熱物7が直接電極と接触しないようにしている。また、対向電極4の電極間には高電圧が印加されるので、絶縁体5a、5bにより絶縁が確保されるように構成することができる。
【0031】
制御部8は、バイアス回路9を通じて高周波電源部11に供給する直流電力を調整し、高周波電源部11の出力電力を制御する。また、制御部8は、上述した対向電極4に対する進行電力、および高周波電源部11に対する反射電力に関する情報や、被加熱物7の種類、数量、大きさおよび重量等の被加熱物の態様に関する情報を取得し、適宜、第1可変整合回路3a、第2可変整合回路3b、バイアス回路9に対して指示(制御)する。
【0032】
具体的には、制御部8は、被加熱物の態様に関する情報に基づいて、第1可変整合回路3aに含まれる可変素子の素子値を調整する。また、制御部8は、進行電力および反射電力に関する情報に基づいて、第2可変整合回路3bに含まれる可変素子の素子値を調整する。また、制御部8は、バイアス回路9が出力する直流バイアスを調整する。
【0033】
より具体的には、高周波電源部11から高周波電力を出力する前に、制御部8は、被加熱物の態様に関する情報に基づいて、変化幅が大きい第1可変整合回路3aに含まれる可変素子の素子値を調整する。その後、制御部8は、高周波電源部11に高周波電力を出力させる。そして、制御部8は、進行電力および反射電力に関する情報に基づいて、バイアス回路9が出力する直流バイアスを制御させつつ、第2可変整合回路3bに含まれる可変素子の素子値を調整する。
【0034】
なお、ユーザインターフェイス10は、ユーザからの被加熱物の態様に関する情報の入力を受けて、制御部8に、被加熱物の態様に関する情報を送信する。被加熱物の態様に関する情報に対応した第1可変整合回路3aに含まれる可変素子の素子値に関する情報をメモリ(不図示)に、予め保存しておく。
【0035】
また、上述した被加熱物の態様に関する情報としては、被加熱物7の種類や大きさ、重量等の他に、被加熱物7の数量の情報を例示することができる(以下、これらの被加熱物の態様に関する情報を、単に「メニュー情報」と称する場合がある)。
【0036】
前記の構成から、本実施形態に係る高周波加熱装置1は、より高精度に、十分なインピーダンス整合を取りながら被加熱物を解凍する。特に、小型の高周波加熱装置1において、異なる種類の被加熱物に対しても反射電力を小さくし、効率よく加熱することができる。
【0037】
具体的には、可変整合回路部3は、それぞれ可変素子を含む第1可変整合回路3aと第2可変整合回路3bとに分割することが可能である。また、制御部8は、動作を開始する際に変化幅の大きい第1可変整合回路3aの調整を行った後、電力検出部2により検出される反射電力が小さくなるように第2可変整合回路3bの調整を行う。これにより、本実施形態に係る高周波加熱装置1は、電極の可動機構がなくても高周波加熱が効率よくできる被加熱物の範囲を広げることができる。
【0038】
また、小型の高周波加熱装置1においては、その内部に設置される対向電極4のサイズも小さく、その容量値も小さく高インピーダンスになることがある。その場合、対向電極4に近い側に設けた第1可変整合回路3aを調整する際には大きな反射電力が発生することがあり、高周波電源部11の発振などの異常動作や故障につながることがある。
【0039】
動作を開始する際に、対向電極4に近い側に設けた第1可変整合回路3aの調整を行った後、電力検出部2により検出される反射電力が小さくなるように第2可変整合回路3bの調整を行う。また、加熱動作中に反射電力が大きくなった場合には第2可変整合回路3bのみを調整することにより、大きな反射電力の発生を抑制しつつ、短時間で整合状態の回復が得られるとともに効率よく加熱動作を継続することが可能になる。
【0040】
特に、第1可変整合回路3aを対向電極4に近い側に設けることで、対向電極4側は高インピーダンス側であるため、接続される第1可変整合回路3aはより簡単に対向電極4側を見込んだインピーダンスを大きく変化させることができる。
【0041】
また、電力検出部2は上記の進行電力を検出しても良く、制御部8は、反射電力の進行電力に対する比が所定値より大きくなった(整合状態が悪くなった)ときに第2可変整合回路3bを調整して、反射電力の進行電力に対する比が最も小さくなるように構成しても良い。
【0042】
前記の構成により、反射電力の進行電力に対する比が小さくなるように第2可変整合回路3bを調整することにより、反射電力がほぼ同じレベルの構成の候補の中から進行電力が最も大きくなる構成を選択することが可能となる。
【0043】
また、対向電極4に高周波電力を供給する前に、第1可変整合回路3aをメニュー情報に基づき調整するようにすれば、第1可変整合回路3aを調整する際に、大きな反射電力が発生することがなくなる。
【0044】
その後、高周波電力を供給して第2可変整合回路3bの調整を実施することができる。また、メニュー情報により第1可変整合回路3aに含まれる可変素子の素子値を決定するため、例えば、可変素子の素子値をスイッチによって切り替える場合、スイッチ数の増加にともなう構成の組み合わせ数の増加を低減でき、短時間で整合動作を完了させることができる。
【0045】
また、制御部8は、ユーザインターフェイス10から取得したメニュー情報に基づいて第1可変整合回路3aを調整し、さらに電力検出部2から取得した進行電力および反射電力に関する情報に基づいて、反射電力が小さくなるように第2可変整合回路3bを調整するように構成しても良い。
【0046】
例えば、第1可変整合回路3aおよび第2可変整合回路3bをスイッチにより切り替えて再調整する場合、スイッチの数が増えると組み合わせ数が多くなり、最適な条件を探索するために必要となる時間が多くなって利便性が低下してしまう。そのような場合でも、スムーズに第1可変整合回路3aの調整を完了することできるため、探索に必要な時間の増加を抑制することが可能となる。
【0047】
また、高周波電力の供給を開始する前にユーザインターフェイス10からのメニュー情報に基づいて第1可変整合回路3aを調整することが可能となるため、その間、反射電力が生じず高周波電源部11への負担が少なく、高周波電源部11の長寿命化に有利である。
【0048】
さらに、電力検出部2からの反射電力が小さくなるよう第2可変整合回路3bを調整することにより、整合が短時間で実現される。加熱または解凍の進行によって、対向電極4側のインピーダンスが変化し反射電力が大きくなった場合には、第2可変整合回路3bのみを再調整するようにすることができ、効率よく加熱することが可能になる。
【0049】
(加熱方法)
以下、本実施形態に係る高周波加熱装置1における加熱方法を、図2に示すフローチャートを用いて説明する。ここで、制御部8は、図2に示すフローに沿って被加熱物7を加熱することができる。まず、制御部8は、ユーザインターフェイス10を介して、例えば、被加熱物7の数量に関する情報(メニュー情報)を取得する(S1)。
【0050】
次に、制御部8は取得した数量情報に応じてあらかじめ定められた条件を満たすように、第1可変整合回路3aを調整する(S2)。ここで、被加熱物7の数量情報に対応した第1可変整合回路3aに含まれる可変素子の素子値に関する情報をあらかじめメモリ(不図示)に保存しておくようにする。これにより、高周波電力の供給前に第1可変整合回路3aを調整するため、第1可変整合回路3aを再調整する際の反射損失が生じず、高周波電源部11の長寿命化に有効である。
【0051】
その後、第2可変整合回路3bの調整を行うため、高周波電源部11より高周波電力の供給を開始する(S3)。この段階では、高周波電力を供給しながら第2可変整合回路3bを調整するため、加熱動作の際よりも小さい探索用の高周波電力(出力電力A)を出力するよう制御する。
【0052】
この状態で、第2可変整合回路3bに含まれる可変素子の素子値を変化させながら、最適条件を探索する(S4)。例えば、電力検出部2により検出される反射電力および進行電力に関する情報から反射電力の進行電力に対する比が所定値よりも小さくなる構成を探索する。また、得られた構成候補の中から最も反射電力の進行電力に対する比が小さい構成を選択して第2可変整合回路3bを調整する(S5,S6)。ここでは、反射電力の進行電力に対する比が所定の値以下となるよう構成したが、反射電力の進行電力に対する比が優位な差で算出できない場合には、反射電力が所定の値以下となるように構成してもよい。
【0053】
また、反射電力が所定の値以下となる構成候補が複数ある場合には、反射電力の進行電力に対する比が最も小さくなる構成、すなわち、最も進行電力が大きくなる構成を選択することもでき、効率的に加熱処理が行える。
【0054】
条件を満足する構成が見つからない場合は、高周波電力の供給を停止し、条件を満足する構成が見つからなかった旨の表示を表示部(不図示)に表示するなどの停止処理を行う。
【0055】
次に、制御部8は、被加熱物7を加熱するため、所定の高周波電力(出力電力B)の供給を開始し加熱処理が行われる(S7)。加熱動作中は、反射電力の進行電力に対する比が所定値よりも小さいかどうかを監視し、第2可変整合回路3bの再調整が必要かどうかを判定する(S8)。ここでは、反射電力の進行電力に対する比が所定の値以下となるよう監視したが、反射電力が所定の値以下となるように監視してもよい。
【0056】
第2可変整合回路3bの再調整が必要と判断される場合は、高周波電源部11の出力電力を探索用の高周波電力(出力電力A)まで低下させ、再び第2可変整合回路3bの最適条件の探索を実施する。
【0057】
第2可変整合回路3bの再調整が必要ない場合は、加熱処理の終了条件が成立するまで加熱処理を継続する(S9)。終了条件が成立した場合は、高周波電力の供給を停止し、正常に終了した旨の表示を表示部に表示するなどの停止処理を行う(S10)。例えば、所定の時間が経過したことを判定し、加熱処理を停止する。
【0058】
〔実施形態2〕
次に、図3に基づき、本発明の実施形態2に係る高周波加熱装置1bについて説明する。本実施形態では、可変整合回路部3は、以下のように構成した。同図に示すように、第1可変整合回路3aは、上部電極4aに一端が接続された第1のコイル30と、第1のコイル30の他端と下部電極4bとの間に接続された可変インピーダンス回路31a,31bとを備えている。
【0059】
上部電極4aと下部電極4bとを含む対向電極4は、並行平板コンデンサの構造を有しており、被加熱物7を電極間に置くことにより若干の抵抗成分をもつようになる。しかしながら、電極間に被加熱物7を置くスペースが必要であるため、電極間隔は狭くすることができず、特に、小型の装置では対向電極4の容量成分は小さい値となる場合が多い。
【0060】
そのため、電極側を見た場合、そのインピーダンスはオープンに近く、50Ω系に対してその反射係数は大きくなることがある。第1可変整合回路3aは、そのような高インピーダンスとなる対向電極4に近い側に設けられ、また、上部電極4aに一端が接続された第1のコイル30と、第1のコイル30の他端と下部電極4bとの間に接続された可変インピーダンス回路31a,31bとを備えることにより、特性を大きく変化させることができる。
【0061】
そのため、被加熱物7の種類等が異なり、対向電極4側を見たインピーダンスが大きく異なる場合でも、第1可変整合回路3aにより、第1可変整合回路3aと第2可変整合回路3bとの接続点(図3の符号Cの位置)から対向電極4側を見たインピーダンスの変化を小さくすることができる。
【0062】
すなわち、第1可変整合回路3aは、第2可変整合回路3bによって接続点(図3の符号Cの位置)から対向電極4側を見たインピーダンスを所定のインピーダンス(例えば、50Ω)に変換可能となるよう、対向電極4のインピーダンスを変換することを目的とする。
【0063】
第1のコイル30に大きな高周波電流を流して高周波電圧を昇圧し、高周波高電圧を対向電極4の電極間に印加する。そのため、第1のコイル30は、固定のインダクタンス値を有し、十分な電流を許容できるサイズのものが好ましい。しかし、第1のコイル30は、固定のインダクタンス値を有しているため、被加熱物7の種類の違いによるインピーダンスの違いは残る。第1のコイル30の他端と下部電極との間に接続された可変インピーダンス回路31a,31bにより、接続点(図3の符号Cの位置)から対向電極4側を見たインピーダンスの違いを補正することができる。
【0064】
また、可変インピーダンス回路31aは、第1のコイル30に一端が接続された第2のコイル32aと、第2のコイル32aの他端と下部電極4bとの間に接続された第3のコイル33aとを有し、第3のコイル33aにはリレースイッチ(スイッチ)34aが並列に接続されている。
【0065】
また、可変インピーダンス回路31bは、第1のコイル30に一端が接続された第2のコイル32bと、第2のコイル32bの他端と下部電極4bとの間に接続された第3のコイル33bとを有し、第3のコイル33bにはリレースイッチ(スイッチ)34bが並列に接続されている。
【0066】
このような構成とすることにより、可変インピーダンス回路31aは、第1のコイル30と第2のコイル32aとの接続点の高周波電圧を第2のコイル32aと第3のコイル33aとで分圧しながら、リレースイッチ34aにより、第3のコイル33aを短絡することができる。よって、リレースイッチ34aに要求される耐電圧を緩和することが可能となり、低コスト化にも有利である。また、大電流が流れるシリーズ経路にリレースイッチ34aを設けないため、リレースイッチ34aに流れる電流を抑えることができる。可変インピーダンス回路31bについても、同様である。
【0067】
ここで、制御部8は、2つの可変インピーダンス回路31a,31bにそれぞれ設けられたリレースイッチ34a,34bをON/OFFすることによって第1可変整合回路3aの特性を4段階で変化させることができる。このように、可変インピーダンス回路を複数並列に設けることにより、より多くの被加熱物の種類、数量または重量に対応することが可能になる。
【0068】
また、第2可変整合回路3bは、例えば、図4に示した可変インダクタ35と可変キャパシタ37との組合せ、または図5に示した可変インダクタ35と可変インダクタ36との組合せによって構成することができる。
【0069】
例えば、被加熱物(A)70を電極間に配置したとき、図3のA点から対向電極4側を見たインピーダンスが図6に示したスミスチャートの点70Aであったとき、固定のインダクタンス値を有する第1のコイル30を接続すると図3のB点から対向電極4側を見たインピーダンスは、図6に示したスミスチャート上で点70Bまで移動させることができる。
【0070】
次に、例えば、リレースイッチ34a,34bをともにOFFに設定した可変インピーダンス回路31a,31bにより、図3のC点から対向電極4側を見たインピーダンスを図7に示したスミスチャートの点70Cまで移動させることができる。
【0071】
ここで、リレースイッチ34a,34bをともにOFFに設定することによって、第2のコイル32a,33a、または、第2のコイル32b,33bはそれぞれ直列に接続される構成となり、これらの合成インダクタンスによって点70Cまで移動するようにそれぞれのコイルのインダクタンス値を設計することができる。
【0072】
この後、第2可変整合回路3bによって、例えば、図4に示した構成であれば可変インダクタ35により図7に示す点70Eまで移動させ、可変キャパシタ37により点70Dまで移動させることができる。
【0073】
また、別の構成例として図5に示した構成であれば可変インダクタ35により点70Fまで移動させ、可変インダクタ36により点70Dまで移動させることができる。図3のD点から対向電極4側を見たインピーダンスを図7に示したスミスチャートの点70Dまで移動させることができ、例えば、50Ωに整合せることができる。ここで、可変インダクタ35、36と可変キャパシタ37とはその素子値を連続的に変化させても良いし、スイッチ等で段階的に変化させてもよい。また、第2可変整合回路3bの構成は、図4および図5に示した構成に限るものではなく、例えば、これらを組み合わせた構成としても良い。
【0074】
しかしながら、被加熱物(A)70と例えば種類の異なる被加熱物(B)71を対向電極4間に配置したとき、図3のA点から対向電極4側を見たインピーダンスは、例えば、図6に示したスミスチャートの点71Aとなる。このとき、固定のインダクタンス値を有する第1のコイルを接続すると、図3のB点から対向電極4側を見たインピーダンスは、図6に示したスミスチャート上で点71Bまで移動し、被加熱物(A)70の場合と比較してインピーダンスのズレが生じる。
【0075】
次に、例えば、リレースイッチ34a,34bをともにONに設定した可変インピーダンス回路31a,31bにより、図3のC点から対向電極4側を見たインピーダンスを被加熱物(A)70の場合と近いインピーダンス点となる図7に示したスミスチャートの点71Cまで移動させることができる。
【0076】
すなわち、リレースイッチ34a,34bをともにONに設定することによって、第2のコイル32a,32bはそれぞれグランドに接続される構成となり、第2のコイル32a,32bの合成インダクタンスによって点71Cまで移動するようにそれぞれのインダクタンス値を選択する。
【0077】
この後は、第2可変整合回路3bによって、例えば、図4に示した構成であれば可変インダクタ35により点71Eまで移動させ、可変キャパシタ37により点71Dまで移動させることができる。また、図5に示した構成であれば可変インダクタ35により点71Fまで移動させ、可変インダクタ36により点71Dまで移動させることができる。図3のD点から対向電極4側を見たインピーダンスを図7に示したスミスチャートの点71Dまで移動させることができ、例えば、50Ωと整合させることができる。
【0078】
ここで制御部8は、図2に示すフローに沿って被加熱物7を加熱することができる。まず、制御部8は、ユーザインターフェイス10を介して、被加熱物7の種類に関する情報、例えば、メニュー情報を取得する。
【0079】
制御部8は、例えば、図8に示すように、予めメニュー情報に対応した第1可変整合回路3aのリレースイッチ34aとリレースイッチ34bとの設定情報をメモリに保存しておき、その情報に基づいて第1可変整合回路3aを調整する。その後は、実施形態1と同様の処理を行うことにより、加熱処理を行うことができる。
【0080】
ここで、第2のコイル32a,32b、および、第3のコイル33a,33bはそれぞれ同じインダクタンス値を持つ必要はなく、個別のインダクタンス値としてもよい。例えば、各可変インピーダンス回路31a,31bを構成する各コイルは、異なるインダクタンス値を被加熱物7の種類、数量または重量に応じて整合状態が達成できるよう好適に選定することができ、図8に示すように、被加熱物(C)および被加熱物(D)に対応することが容易になる。
【0081】
また、上述した形態では、可変インピーダンス回路31aは、第1のコイル30に一端が接続された第2のコイル32aと、第2のコイル32aの他端と下部電極4bとの間に接続された第3のコイル33aとを有し、第3のコイル33aにリレースイッチ34aを並列に接続した構成とした。しかしながら、図9に示すように、第3のコイル33aに、コイル38aとリレースイッチ34aとの直列回路を並列に接続した構成としても良い。
【0082】
第3のコイル33aの両端の高周波電圧がコイル38aとリレースイッチ34aとにより分圧されるため、リレースイッチに要求される耐電圧を緩和し長寿命化に有利となる。また、リレースイッチ34aをONしたとき、第3のコイル33aが短絡される代わりに、第3のコイル33aとコイル38aとが並列に接続されるようになるため、リレースイッチ34aのON/OFFによる可変インピーダンス回路31aの全体のインダクタンス値の変化を小さく設定できる。そのため、所望の被加熱物7に好適な特性となるように設定でき、設計性が向上する。また、可変インピーダンス回路31bについても、同様の構成としても良い。
【0083】
また、別の構成として、可変インピーダンス回路31aは、図10に示すように、第3のコイル33aに、キャパシタ39aとリレースイッチ34aとの直列回路を並列に接続した構成としても良い。
【0084】
リレースイッチ34aをONしたとき、第3のコイル33aが短絡されるかわりに、第3のコイル33aとキャパシタ39aとが並列に接続されるようになるため、リレースイッチ34aのON/OFFによる可変インピーダンス回路31aの全体のリアクタンス値の変化を大きく設定できる。
【0085】
例えば、第3のコイル33aとキャパシタ39aとの並列回路とが所定の周波数で並列共振に近くなるように設定すれば、高インピーダンスにすることも容易となり、特性を大きく変化させることができる。そのため、所望の被加熱物7に好適な特性となるように設定でき、設計性が向上する。また、可変インピーダンス回路31bについても、同様の構成としても良い。また、プリント基板上に可変整合回路部3を構成する場合は、各コイル、キャパシタ、およびリレースイッチの配置を考慮してそれぞれを伝送線路等で接続してもよい。
【0086】
〔実施形態3〕
次に、本発明の実施形態3に係る高周波加熱装置について説明する。本実施形態では、第2可変整合回路3bに含まれる可変素子の素子値は、可変範囲の中央値に近い値となるよう設定され、第1可変整合回路3aのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、電力検出部2の検出結果に基づいて調整される。これにより、ユーザ操作なしでも短時間で第1可変整合回路の調整を完了させることが可能となる。
【0087】
また、本実施形態では、ユーザから前記被加熱物の態様に関する情報を取得するユーザインターフェイス(情報取得部)10を備え、制御部8は、ユーザインターフェイス10が取得した前記被加熱物の態様に関する情報に基づいて、第1可変整合回路3aのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整しても良い。例えば、高周波電力を供給する前に第1可変整合回路3aのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方をユーザからの被加熱物の態様に関する情報に基づき調整するようにすれば、第1可変整合回路3aのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整する際に大きな反射電力が発生することを抑制することができる。また、第1可変整合回路3aのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整する際に、大きな反射電力が生じないため、高周波電源部への負担が少なく、高周波電源部の長寿命化に有利である。
【0088】
また、本実施形態では、第2可変整合回路3bのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方の調整は、通常動作の際の高周波電力よりも小さい高周波電力で行ない、第1可変整合回路3aのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方の調整は、第2可変整合回路3bのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整する際の高周波電力よりも小さい高周波電力で行われる。これにより、第1可変整合回路3aのインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整する際に生じる反射電力を低減し、高周波増幅部の発振等の異常動作を防止することができる。
【0089】
次に、図11は、本発明の実施形態3に係る可変整合回路部3に設けられた第2可変整合回路3bの一構成例である。その他の構成は、実施形態2と同じである。本実施形態では、第2可変整合回路3bは、図4に示した構成で以下のようにリレースイッチを用いて構成した。
【0090】
例えば、ここでは、可変インダクタ35は、コイル35a~35cを直列に接続し、それぞれに並列にリレースイッチ40a~40cを設けて構成した。また、可変キャパシタ37は、キャパシタ37aとリレースイッチ41a、キャパシタ37bとリレースイッチ41b、および、キャパシタ37cとリレースイッチ41cのそれぞれの直列回路を並列に接続して構成した。
【0091】
可変インダクタ35および可変キャパシタ37に設けられたリレースイッチ40a~40c、および41a~41cは、それぞれ制御部8からの信号によりON/OFFすることができる。ここでは、可変インダクタ35と可変キャパシタ37とは、それぞれ3ビットの信号によりインダクタンス値とキャパシタンス値が設定される。
【0092】
例えば、コイル35cのインダクタンス値をLs、コイル35bのインダクタンス値を2Ls、コイル35aのインダクタンス値を4Lsとすることで、リレースイッチの状態によって、0~7Lsまでの範囲の値をLsの分解能で設定することができる。
【0093】
また、キャパシタ37cのキャパシタンス値をCp、キャパシタ37bのキャパシタンス値を2Cp、キャパシタ37aのキャパシタンス値を4Cpとすることで、リレースイッチの状態によって、0~7Cpまでの範囲の値をCpの分解能で設定することができる。
【0094】
制御部8は、図12に示すフローに沿って被加熱物7の加熱処理を実行する。まず、制御部8は、第2可変整合回路3bを所定の条件に設定する(S11)。ここでは、可変インダクタ35は、可変範囲の中央値に近くなるよう、リレースイッチ40aをON、リレースイッチ40b、40cはOFFに設定し、インダクタンス値を3Lsに設定した。
【0095】
また、インダクタンス値が4Lsとなるようにリレースイッチ40a~40cを設定してもよいが、最も大きいコイルに接続されたリレースイッチ40aのみONするだけで設定が完了するので処理時間の短縮にも有利である。
【0096】
また、可変キャパシタ37についても同様に可変範囲の中央値に近くなるよう、リレースイッチ41aをON、リレースイッチ41b、41cはOFFに設定し、キャパシタンス値を4Cpに設定した。
【0097】
次に、第1可変整合回路3aの調整を行うため、高周波電源部11より高周波電力(出力電力C)の供給を開始する(S12)。
【0098】
次に、第1可変整合回路3aの構成を切替えながら最適条件を探索する(S13)。例えば、リレースイッチ34a,34bの状態を変えながら電力検出部2により検出される反射電力がもっとも小さくなるリレースイッチ34a,34bの状態を選択して第1可変整合回路3aを調整する(S14)。このように、ユーザ操作なしでも短時間で第1可変整合回路3aの調整を完了させることが可能となる。
【0099】
この後は、第2可変整合回路3bの調整を行うため、高周波電源部11より高周波電力(出力電力A)の供給を開始し(S15)、以降、実施形態2と同様の処理を行うことにより、加熱処理を行うことができる(S16~S22)。
【0100】
ここで、第2可変整合回路3bを調整する際の高周波電力(出力電力A)は、加熱動作を行う際の高周波電力(出力電力B)よりも小さい高周波電力とし、さらに、第1可変整合回路3aの調整は、第2可変整合回路3bを調整する際の高周波電力(出力電力A)よりも小さい高周波電力(出力電力C)で行う。これにより、可変幅を大きくした第1可変整合回路3aを調整する際に生じる反射電力を低減することができ、高周波増幅器11bの発振等の異常動作を防止することができる。
【0101】
次に、図13は、第2可変整合回路3bの別の構成例である。第2可変整合回路3bは、図5に示した構成で以下のようにリレースイッチを用いて構成した。例えば、ここでは、可変インダクタ35は、コイル35aと、コイル35bとリレースイッチ40bとの直列回路とを並列に接続して構成した。
【0102】
また、可変インダクタ36は、インダクタ36aとリレースイッチ42a、インダクタ36bとリレースイッチ42b、および、インダクタ36cとリレースイッチ42cのそれぞれの並列回路を直列に接続して構成した。
【0103】
可変インダクタ35と可変インダクタ36とに設けられたリレースイッチ40b、42a~42cは、それぞれ制御部8からの信号によりON/OFFすることができる。ここでは、可変インダクタ35と可変インダクタ36とは、それぞれ1ビットと3ビットとの信号によりインダクタンス値が設定される。
【0104】
例えば、コイル35aとコイル35bとのインダクタンス値をLsとすることで、リレースイッチのON/OFF状態によって、0.5Lsと1Lsの値を設定することができる。
【0105】
また、インダクタ36cのインダクタンス値をLp、インダクタ36bのインダクタンス値を2Lp、インダクタ36aのインダクタンス値を4Lpとすることで、リレースイッチのON/OFF状態によって、0~7Lpまでの範囲の値をLpの分解能で設定することができる。
【0106】
ここでは、可変インダクタ35は、可変範囲の中央値に近くなるよう、例えばリレースイッチ40bをOFFに設定し、インダクタンス値を1Lsにした。また、可変インダクタ36は、可変範囲の中央値に近くなるよう、リレースイッチ42aをON、リレースイッチ42b,42cはOFFに設定し、インダクタンス値を3Lpにして、第1可変整合回路3aの調整を行うことができる。
【0107】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る高周波加熱装置(1,1a)は、第1電極(上部電極4a)および前記第1電極と対向する第2電極(下部電極4b)を含み、前記第1電極と前記第2電極との間に被加熱物(7)が配置される電極部(対向電極4)と、前記電極部に高周波電力を供給する高周波電源部(11)と、前記電極部と前記高周波電源部との間に設けられ、前記電極部と前記高周波電源部との間のインピーダンス整合を行う可変整合回路部(3)と、前記高周波電源部と前記可変整合回路部との間に設けられ、少なくとも前記高周波電源部に対する反射電力を検出する電力検出部(2)と、を備え、前記可変整合回路部は、少なくとも1つの可変整合回路(第1可変整合回路3aまたは第2可変整合回路3b)を含み、前記可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、前記電力検出部の検出結果に基づいて調整される構成である。
【0108】
小型の高周波加熱装置においては、その内部に設置される対向電極のサイズが小さく、その容量値も小さくなり、電極部側が高インピーダンスになることがある。その場合、可変整合回路を調整する際に大きな反射電力が発生することがあり、高周波電源部の発振などの異常動作や故障につながることがある。また、被加熱物の状態の変化(例えば、冷凍された食品の解凍の進行などを想定)に応じて、より高精度にインピーダンス整合を図る必要もある。
【0109】
このため、前記構成では、可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を、前記電力検出部の検出結果に基づいて調整している。これにより、引用文献1に記載の技術のような電極の可動機構を設けなくても、例えば、高周波電源部に対する反射電力が小さくなるように、インピーダンス整合を行うことが可能になる。以上により、装置の小型化を図りつつ、被加熱物の態様に関わらずインピーダンス整合の精度を向上させることができる。
【0110】
本発明の態様2に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様1において、前記可変整合回路部(3)は、前記可変整合回路として、第1可変整合回路(3a)および第2可変整合回路(3b)を含み、前記第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、前記被加熱物の態様に関する情報に基づいて調整され、前記第2可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、前記電力検出部の検出結果に基づいて調整されても良い。
【0111】
被加熱物の種類や大きさに応じて、電極部側のインピーダンスは異なる値となる。このため、前記構成では、第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を、被加熱物の態様に関する情報(被加熱物の種類や大きさなど)に基づいて調整している。これにより、被加熱物の種類や大きさに応じて、精度の高いインピーダンス整合が可能になる。
【0112】
本発明の態様3に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様1において、前記可変整合回路部(3)は、前記可変整合回路として、第1可変整合回路(3a)および第2可変整合回路(3b)を含み、前記第2可変整合回路に含まれる可変素子の素子値は、可変範囲の中央値に近い値となるよう設定され、前記第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方は、前記電力検出部(2)の検出結果に基づいて調整されても良い。
【0113】
前記構成によれば、ユーザ操作なしでも短時間で第1可変整合回路の調整を完了させることが可能となる。
【0114】
本発明の態様4に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様2または3において、前記第1可変整合回路(3a)は、電極部(対向電極4)および前記高周波電源部(11)の間で前記電極部に近い側に設けられ、前記第2可変整合回路(3b)は、前記高周波電源部および前記電極部の間で前記高周波電源部に近い側に設けられていることが好ましい。
【0115】
上述したように、小型の高周波加熱装置においては、その内部に設置される対向電極のサイズが小さく、その容量値も小さく対向電極側が高インピーダンスになることがある。その場合、電極部に近い側に設けた第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整する際に大きな反射電力が発生することがあり、高周波電源部の発振などの異常動作や故障につながることがある。
【0116】
このため、前記構成では、高周波電源部に近い側に設けた第2可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を、前記電力検出部の検出結果に基づいて調整している。これにより、第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整する際に大きな反射電力が発生することを防止することができる。
【0117】
本発明の態様5に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様2において、前記可変整合回路部(3)を制御する制御部(8)を備え、前記制御部は、前記電力検出部(2)が検出する、前記反射電力が小さくなるように、前記第2可変整合回路(3b)のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整することが好ましい。前記構成のように、電力検出部からの反射電力が小さくなるよう第2可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整することにより、インピーダンス整合が短時間で実現される。また、加熱または解凍の進行によって、電極部側のインピーダンスが変化し反射電力が大きくなったような場合でも、第2可変整合回路のみで再調整することができ、効率よく加熱することが可能になる。
【0118】
本発明の態様6に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様2において、前記可変整合回路部(3)を制御する制御部(8)と、ユーザから前記被加熱物の態様に関する情報を取得する情報取得部(ユーザインターフェイス10)とを備え、前記制御部は、前記情報取得部が取得した前記被加熱物の態様に関する情報に基づいて、前記第1可変整合回路(3a)のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整しても良い。例えば、高周波電力を供給する前に第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方をユーザからの被加熱物の態様に関する情報に基づき調整するようにすれば、第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整する際に大きな反射電力が発生することを抑制することができる。また、第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整する際に、大きな反射電力が生じないため、高周波電源部への負担が少なく、高周波電源部の長寿命化に有利である。
【0119】
本発明の態様7に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様6において、前記被加熱物(7)の態様に関する情報は、前記被加熱物の種類、数量、大きさおよび重量の何れか少なくとも1つに関する情報を含んでも良い。前記構成によれば、例えば、ユーザから被加熱物の種類、数量、大きさおよび重量に関する情報を取得して第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整することにより、スムーズに第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方の調整を完了することが可能となる。
【0120】
本発明の態様8に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様3において、前記可変整合回路部(3)を制御する制御部(8)を備え、前記制御部は、前記第2可変整合回路(3b)に含まれる可変素子の素子値を可変範囲の中央値に近い値となるよう設定し、前記電力検出部(2)が検出する、前記反射電力が小さくなるように、第1可変整合回路(3a)のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整しても良い。前記構成によれば、インピーダンス整合が短時間で実現される。
【0121】
本発明の態様9に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様3において、前記第2可変整合回路(3b)のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方の調整は、通常動作の際の高周波電力よりも小さい高周波電力で行ない、前記第1可変整合回路(3a)のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方の調整は、前記第2可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整する際の高周波電力よりも小さい高周波電力で行われても良い。前記構成によれば、第1可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整する際に生じる反射電力を低減し、高周波増幅部の発振等の異常動作を防止することができる。
【0122】
本発明の態様10に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様5において、前記電力検出部(2)は、前記電極部(対向電極4)に対する進行電力を検出し、前記制御部(8)は、前記電力検出部が検出した前記反射電力の前記進行電力に対する比が小さくなるように前記第2可変整合回路(3b)のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整しても良い。前記構成によれば、反射電力の進行電力に対する比が小さくなるように第2可変整合回路のインダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方を調整することにより、反射電力がほぼ同じレベルの構成の候補の中から進行電力が最も大きくなる構成を選択することが可能となり、効率的に加熱処理を行うことができる。
【0123】
本発明の態様11に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様2~10の何れかにおいて、前記第1可変整合回路(3a)は、前記第1電極(上部電極4a)に一端が接続された第1のコイル(30)と、前記第1のコイルの他端と前記第2電極(下部電極4b)との間に接続された可変インピーダンス回路(31a,31b)とを備えていても良い。前記構成によれば、第1可変整合回路に含まれる可変素子の特性を大きく変化させることができる。そのため、被加熱物の種類等が異なり、電極部側を見たインピーダンスが大きく変化した場合でも、第1可変整合回路により、第1可変整合回路と第2可変整合回路との接続点から電極部側を見たインピーダンスの変化を小さくすることができる。
【0124】
本発明の態様12に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様11において、前記可変インピーダンス回路(31a,31b)は、前記第1のコイル(30)の他端に一端が接続された第2のコイル(32a,32b)と、前記第2のコイルの他端と前記第2電極(下部電極4b)との間に接続された第3のコイル(33a,33b)とを有し、前記第3のコイルおよびスイッチ(リレースイッチ34a,34b)が並列に接続されていても良い。前記構成によれば、第1のコイルとの接続点の高周波電圧を第2のコイルと第3のコイルで分圧しながら、スイッチ(例えば、リレースイッチ)により、第3のコイルを短絡することができる。よって、スイッチに要求される耐電圧を緩和することが可能となり、低コスト化にも有利である。また、大電流が流れるシリーズ経路にスイッチを設けないため、スイッチに流れる電流を抑制することができる。
【0125】
本発明の態様13に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様11において、前記可変インピーダンス回路(31a,31b)は、前記第1のコイル(30)の他端に一端が接続された第2のコイル(32a,32b)と、前記第2のコイルの他端と前記第2電極(下部電極4b)との間に接続された第3のコイル(33a,33b)とを有し、前記第3のコイル、および、コイル(38a,38b)またはキャパシタ(39a,39b)とスイッチ(リレースイッチ34a,34b)との直列回路、が並列に接続されていても良い。
【0126】
前記構成によれば、第1のコイルとの接続点の高周波電圧を第2のコイルと第3のコイルで分圧しながら、スイッチ(例えば、リレースイッチ)により、可変インピーダンス回路の特性を変化させることができる。また、スイッチにかかる高周波電圧は、第3のコイルの両端の高周波電圧を、コイルまたはキャパシタと、スイッチとによりさらに分圧されるため、スイッチに要求される耐電圧を緩和することが可能となる。
【0127】
また、キャパシタとスイッチとの直列回路とすることにより、例えば、第3のコイルとキャパシタとが所定の周波数で並列共振するようにすれば、可変インピーダンス回路を容易に高インピーダンスにすることができる。これにより、第1可変整合回路に含まれる可変素子の特性を大きく変化させることができるため、所望の可変特性を得ることが容易になる。また、コイルとスイッチとの直列回路にすることにより、スイッチに直列に接続されたコイルのため、スイッチのON/OFFによる可変量を小さくすることができる。
【0128】
本発明の態様14に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様11~13の何れかにおいて、前記第1可変整合回路(3a)は、前記可変インピーダンス回路(31a,31b)を複数備えていても良い。前記構成によれば、可変インピーダンス回路を複数設けることにより、より多くの被加熱物の種類、数量または重量に応じたインピーダンス整合が可能になる。
【0129】
本発明の態様15に係る高周波加熱装置(1,1a)は、前記態様14において、複数の前記可変インピーダンス回路(31a,31b)のそれぞれは、インダクタンスおよびキャパシタンスの何れか少なくとも一方に関する特性が、互いに異なっていても良い。前記構成によれば、例えば、各可変インピーダンス回路に含まれる可変素子の素子値を異なるインダクタンス値および/またはキャパシタンス値に設定することで、より多くの被加熱物の種類、数量または重量に応じたインピーダンス整合が可能になる。
【0130】
〔本発明の別の表現〕
本発明は、以下のように表現することもできる。すなわち、本発明の一態様に係る高周波加熱装置は、上部電極と、前記上部電極の下側に配置された下部電極からなる対向電極と、前記対向電極に高周波電力を供給する高周波電源部と、前記対向電極と前記高周波電源部の間に設けられ、前記対向電極と高周波電源部とのインピーダンス整合をとる可変整合回路部と、前記高周波電源部と前記可変整合回路部の間に設けられ、少なくとも反射電力を検出する電力検出部と、前記可変整合回路部を調整する手段を有する制御部とを備えた高周波加熱装置であって、前記可変整合回路部は、第1の可変整合回路と、第2の可変整合回路を備え、制御部は、動作開始時に第1の可変整合回路の調整を行った後、前記電力検出部からの情報に基づいて第2の可変整合回路の調整を行ない、動作中に反射電力が大きくなった時は第2の可変整合回路を調整する構成である。
【0131】
また、本発明の一態様に係る高周波加熱装置は、前記可変整合回路部は、対向電極側に設けられた第1の可変整合回路と、高周波電源部側に設けられた第2の可変整合回路を備えることが好ましい。
【0132】
また、本発明の一態様に係る高周波加熱装置は、前記第1の可変整合回路は、前記上部電極に一端が接続された第1のコイルと、前記第1のコイルの他端と前記下部電極の間に接続された可変インピーダンス回路を備えていても良い。
【0133】
また、本発明の一態様に係る高周波加熱装置は、前記可変インピーダンス回路は、前記第1のコイルの他端に一端が接続された第2のコイルと、前記第2のコイルの他端と前記下部電極の間に接続された第3のコイルを有し、前記第3のコイルとスイッチが並列に接続されていても良い。
【0134】
また、本発明の一態様に係る高周波加熱装置は、前記可変インピーダンス回路は、前記第1のコイルの他端に一端が接続された第2のコイルと、前記第2のコイルの他端と前記下部電極の間に接続された第3のコイルを有し、前記第3のコイルは、コイルまたはキャパシタとスイッチの直列回路が並列に接続されていても良い。
【0135】
また、本発明の一態様に係る高周波加熱装置は、前記第1の可変整合回路は、前記可変インピーダンス回路を複数備えていても良い。
【0136】
また、本発明の一態様に係る高周波加熱装置は、前記複数の可変インピーダンス回路は、各可変インピーダンス回路を構成する各コイルまたはキャパシタは、異なるインダクタンス値またはキャパシタンス値を有することが好ましい。
【0137】
また、本発明の一態様に係る高周波加熱装置は、前記制御部は、ユーザからの情報を取得する手段を備え、前記制御部は、前記ユーザからの情報に基づいて前記第1の可変整合回路を調整し、前記電力検出部により検出される反射電力が小さくなるように前記第2の可変整合回路を調整しても良い。
【0138】
また、本発明の一態様に係る高周波加熱装置は、前記ユーザからの情報は、被加熱物の種類、数量または重量いずれかに関する情報を含んでも良い。
【0139】
また、本発明の一態様に係る高周波加熱装置は、前記制御部は、前記第2の可変整合回路に備えた可変素子の素子値をそれぞれ可変範囲の中央値に近い値となるよう設定し、前記電力検出部により検出される反射電力が小さくなるように前記第1の可変整合回路を調整し、さらに、前記電力検出部により検出される反射電力が小さくなるように前記第2の可変整合回路を調整しても良い。
【0140】
また、本発明の一態様に係る高周波加熱装置は、前記第2の可変整合回路の調整は、通常動作時の高周波電力よりも小さい高周波電力で行ない、前記第1の可変整合回路の調整は、第2の可変整合回路の調整時の高周波電力よりも小さい高周波電力で行われても良い。
【0141】
また、本発明の一態様に係る高周波加熱装置は、前記電力検出部は、進行電力を検出する手段を有し、前記制御部は、前記電力検出部により検出された反射電力の進行電力に対する比が小さくなるように第1の可変整合回路、または、第2の可変整合回路を調整する手段を備えていても良い。
【0142】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0143】
1,1a 高周波加熱装置
2 電力検出部
3 可変整合回路部
3a 第1可変整合回路(可変整合回路)
3b 第2可変整合回路(可変整合回路)
4 対向電極(電極部)
4a 上部電極(第1電極)
4b 下部電極(第2電極)
7 被加熱物
8 制御部
10 ユーザインターフェイス(情報取得部)
11 高周波電源部
30 第1のコイル
31a,31b 可変インピーダンス回路
32a,32b 第2のコイル
33a,33b 第3のコイル
34a,34b リレースイッチ(スイッチ)
38a,38b コイル
39a,39b キャパシタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13