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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】非空気圧タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/02 20060101AFI20230322BHJP
   B60C 7/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
B29D30/02
B60C7/00 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019151877
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021030542
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細見 和正
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-219009(JP,A)
【文献】特開2015-217717(JP,A)
【文献】特表2014-503394(JP,A)
【文献】特開2018-58541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00- 30/72
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心線にエラストマーがコーティングされた被覆心線を作製する工程と、
支持構造体が有する環状の外側リングの外周に沿って、前記被覆心線を第1方向に配列してなる第1配列体を環状に配置する工程と、
前記第1配列体の外周に沿って、前記被覆心線を前記第1方向または第2方向に配列してなる第2配列体を環状に配置する工程と、
前記第1配列体と前記第2配列体とを含む積層バンドを加熱加圧する工程と、
前記積層バンドの外周に、接地面を形成する環状のトレッドゴムを設ける工程とを備える、非空気圧タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記被覆心線を作製する工程では、並列された複数の前記心線に前記エラストマーをコーティングして、前記第1配列体または前記第2配列体に対応した幅寸法を有する帯状物を作製する、請求項1に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
【請求項3】
前記トレッドゴムを設ける工程では、加熱加圧した後の前記積層バンドの外周に未加硫のゴム層を環状に配置した後、前記ゴム層を加熱加圧して加硫を施す、請求項1または2に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
【請求項4】
タイヤ周方向に分割された複数の分割片で構成された環状のモールドで前記積層バンドをタイヤ径方向外側から取り囲み、前記モールドによって前記積層バンドを加熱加圧する、請求項1~3いずれか1項に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
【請求項5】
前記モールドにより前記積層バンドを加熱加圧しながら前記モールドを徐々に縮径させる、請求項4に記載の非空気圧タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持構造体の外側リングに環状の補強構造体が設けられている非空気圧タイヤ(non-pneumatic tire)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤに代用するための非空気圧タイヤが種々提案されている。かかる非空気圧タイヤは、車両からの荷重を支持する支持構造体を備えており、その支持構造体は、環状の外側リングと、外側リングのタイヤ径方向内側に同心円状に設けられた環状の内側リングと、外側リングと内側リングとを連結するスポークとを有する。外側リングのタイヤ径方向外側には、接地面を形成する環状のトレッドゴムが設けられる。また、荷重支持力が高められるよう、心線を含んだ環状の補強構造体を外側リングに設けた構造が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
本発明者は、補強効果を更に高めるために、心線の配列体とエラストマー層とをタイヤ径方向に交互に重ねて積層バンドを形成し、それによって補強構造体を構成することを検討した。非空気圧タイヤの支持構造体は注型成形法により作製されるのが一般的であるため、その工程を利用して補強構造体を設けることが可能である。即ち、支持構造体を注型成形するための金型内に積層バンドをセットし、支持構造体の母材となる樹脂を金型内に流し込むことにより、補強構造体となる積層バンドを外側リングに一体的に設けることができる。
【0004】
しかしながら、上記の製造方法では、積層バンドによって補強構造体を設けるに際して不具合を生じる懸念がある。具体的には、粘性を有する樹脂が積層バンドに接触しながら流動することにより、金型内で積層バンドが位置ずれを起こし、タイヤのユニフォミティに悪影響を及ぼす恐れがある。また、積層バンドを構成する心線の間隙に樹脂が行き渡らない場合には、残留空気によるエア入りを生じ、セパレーションなどの故障の起点となり得るため、タイヤの耐久性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2014-503394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、積層バンドによって補強構造体を設ける際に位置ずれやエア入りの発生を抑えることができる、非空気圧タイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の非空気圧タイヤの製造方法は、心線にエラストマーがコーティングされた被覆心線を作製する工程と、支持構造体が有する環状の外側リングの外周に沿って、前記被覆心線を第1方向に配列してなる第1配列体を環状に配置する工程と、前記第1配列体の外周に沿って、前記被覆心線を前記第1方向または第2方向に配列してなる第2配列体を環状に配置する工程と、前記第1配列体と前記第2配列体とを含む積層バンドを加熱加圧する工程と、前記積層バンドの外周に、接地面を形成する環状のトレッドゴムを設ける工程とを備える。
【0008】
この方法によれば、上記の如き第1配列体と第2配列体とを含む積層バンドを加熱加圧することにより、外側リングの外周に補強構造体が設けられる。第1配列体及び第2配列体は、それぞれ心線にエラストマーがコーティングされた被覆心線を配列したものである。そのため、積層バンドが位置ずれを起こす心配がなく、心線の間隙にエラストマーが行き渡らない心配もない。よって、積層バンドによって補強構造体を設ける際に位置ずれやエア入りの発生を抑えることができる。
【0009】
前記被覆心線を作製する工程では、並列された複数の前記心線に前記エラストマーをコーティングして、前記第1配列体または前記第2配列体に対応した幅寸法を有する帯状物を作製するものでもよい。これによって、第1配列体及び/または第2配列体を環状に配置する作業が容易となり、積層バンドを簡便に形成できる。
【0010】
前記トレッドゴムを設ける工程では、加熱加圧した後の前記積層バンドの外周に未加硫のゴム層を環状に配置した後、前記ゴム層を加熱加圧して加硫を施すものでもよい。トレッドゴムを設ける前に積層バンドを加熱加圧することにより、積層バンドの位置ずれをより確実に抑えられる。
【0011】
タイヤ周方向に分割された複数の分割片で構成された環状のモールドで前記積層バンドをタイヤ径方向外側から取り囲み、前記モールドによって前記積層バンドを加熱加圧してもよい。これにより、外側リングの外周に形成された積層バンドを簡便に加熱加圧することができる。
【0012】
前記モールドにより前記積層バンドを加熱加圧しながら前記モールドを徐々に縮径させてもよい。これにより、積層バンド内の空気の排出性を高めて、エア入りの発生をより確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る非空気圧タイヤの一例を示す正面図
図2】非空気圧タイヤのタイヤ子午線断面図
図3】非空気圧タイヤの一部を示す斜視図
図4】積層バンドの構成を模式的に示す斜視図
図5】被覆心線の断面を示す斜視図
図6】外側リングの外周に配列体を配置する工程を示す模式図
図7】積層バンドを加熱加圧する工程を示す模式図
図8】別実施形態における積層バンドの構成を模式的に示す斜視図
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。まずは、非空気圧タイヤの構成の一例について説明し、次いで、その非空気圧タイヤの製造方法について説明する。
【0015】
[非空気圧タイヤの構成]
図1は、非空気圧タイヤTの一例を示す正面図であり、一部を拡大して示している。図2は、その非空気圧タイヤTのタイヤ子午線断面図であり、図1のA-A断面図に相当する。図3は、図2に示した非空気圧タイヤの一部を示す斜視図である。非空気圧タイヤTは、車両からの荷重を支持する支持構造体SSを備える。支持構造体SSは、環状の外側リング1と、その外側リング1のタイヤ径方向内側RDiに同心円状に設けられた環状の内側リング2と、外側リング1と内側リング2とを連結するスポーク3とを有する。スポーク3は、タイヤ周方向CDに各々独立して複数設けられている。
【0016】
外側リング1、内側リング2及びスポーク3は、基本的には互いに同じ材料で形成されていることが好ましい。これにより、支持構造体SSを製造する際には、例えば注型成形法を用いて、それらを容易に一体成形することができる。本実施形態では、支持構造体SSが弾性材料で一体成形されており、つまりは外側リング1、内側リング2及び複数のスポーク3が一体的に成形されている。
【0017】
本明細書において、弾性材料とは、JISK7312に準拠した引張試験により10%伸長時の引張応力として求められる引張モジュラスが100MPa以下の材料を指す。支持構造体SSに十分な耐久性と適度な剛性を付与する観点から、弾性材料の引張モジュラスは5~100MPaが好ましく、7~50MPaがより好ましい。母材として用いられる弾性材料としては、熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂が挙げられる。
【0018】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリスチレンエラストマー、ポリ塩化ビニルエラストマー、ポリウレタンエラストマーが用いられる。架橋ゴムを構成するゴム材料としては、天然ゴムの他に、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(水添NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムなどの合成ゴムが用いられる。これらのゴム材料は、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0019】
その他の樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが用いられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが用いられる。成形性や加工性の観点から、上述した弾性材料の中では、ポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。尚、弾性材料として発泡材料を使用してもよく、上記の熱可塑性エラストマー、架橋ゴム、その他の樹脂を発泡させたものを使用できる。
【0020】
外側リング1は、タイヤ周方向CDに沿って環状をなす円筒体により形成されている。タイヤTのユニフォミティを向上させる観点から、外側リング1の厚みT1は一定であることが好ましい。スポーク3からの力を十分に伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、厚みT1はタイヤ断面高さTHの2~20%が好ましく、10~15%がより好ましい。一般的な自動車用空気入りタイヤの代用を想定した場合、外側リング1の内径は420~750mmが好ましく、470~680mmがより好ましい。同じく自動車用タイヤの代用を想定した場合において、タイヤ幅方向WDにおける外側リング1の幅W1は100~300mmが好ましく、120~250mmがより好ましい。
【0021】
外側リング1のタイヤ径方向外側RDoには、接地面を形成する環状のトレッドゴム4が設けられている。トレッドゴム4を形成するゴム組成物には、従来の空気入りタイヤが備えるトレッドゴムと同様のゴム組成物が好ましく用いられる。トレッドゴム4の外周面には、濡れた路面での走行性能を高めるために、種々のトレッドパターンを設けることが可能である。
【0022】
内側リング2は、タイヤ周方向CDに沿って環状をなす円筒体により形成されている。タイヤTのユニフォミティを向上させる観点から、内側リング2の厚みT2は一定であることが好ましい。スポーク3からの力を十分に伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、厚みT2はタイヤ断面高さTHの2~10%が好ましく、3~9%がより好ましい。一般的な自動車用空気入りタイヤの代用を想定した場合、内側リング2の内径は250~500mmが好ましく、320~440mmがより好ましい。同じく自動車用タイヤの代用を想定した場合において、タイヤ幅方向WDにおける内側リング2の幅W2は100~300mmが好ましく、120~250mmがより好ましい。
【0023】
内側リング2のタイヤ径方向内側RDiには、車軸やリムとの適合用部材(図示せず)を設けることが可能である。内側リング2の内周面には、その適合用部材の嵌合性を保持するための凹凸を設けてもよい。
【0024】
複数のスポーク3は、それぞれタイヤ径方向RDに延びて外側リング1と内側リング2とを連結する。スポーク3の各々のタイヤ径方向外側端は外側リング1の内周面に接合され、スポーク3の各々のタイヤ径方向内側端は内側リング2の外周面に接合されている。タイヤTのユニフォミティを向上させる観点から、タイヤ周方向CDにおけるスポーク3の間隔Gは一定であることが好ましい。接地圧の均一化を図るとともに、ノイズの増大を抑える観点から、間隔Gは10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。
【0025】
本実施形態では、複数のスポーク3が、外側リング1のタイヤ幅方向一方側WD1から内側リング2のタイヤ幅方向他方側WD2へ向かって延びる第1スポーク31と、外側リング1の他方側WD2から内側リング2の一方側WD1へ向かって延びる第2スポーク32とを含む例を示す。互いに隣り合う第1スポーク31及び第2スポーク32は、タイヤ周方向CDから見てX字型に配置されている。複数のスポーク3は、タイヤ周方向CDに沿って交互に配列された第1スポーク31と第2スポーク32とにより構成されている。尚、本発明により製造される非空気圧タイヤのスポーク形状は特に限定されない。
【0026】
車両からの荷重を十分に支持しつつ、軽量化や動力伝達の向上、耐久性の向上を図る観点から、スポーク3の本数は50~300本が好ましく、100~200本がより好ましい。本実施形態では、複数のスポーク3が、50本の第1スポーク31と50本の第2スポーク32とにより構成されている(図1参照)。外側リング1及び内側リング2からの力を十分に伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上、横剛性の向上を図る観点から、スポーク3の引張モジュラスは5~180000MPaが好ましく、7~50000MPaがより好ましい。弾性材料を繊維で補強した繊維補強材料を用いることにより、スポーク3の引張モジュラスを高めてもよい。
【0027】
第1スポーク31は、タイヤ径方向RD及びタイヤ幅方向WDに延びる長尺板状に形成されている。第1スポーク31は、タイヤ周方向CDに沿った板厚tと、板厚tよりも大きい板幅wとを有する。板厚tは、長尺方向PLに沿って一定でもよいが、図1のようにタイヤ径方向外側RDoに向かって漸増していることが好ましい。かかる場合でも、外側リング1の内周面とスポーク3の各々のタイヤ径方向外側端との接合部において、板厚tは板幅wよりも小さい。本実施形態では、板厚方向PTがタイヤ周方向CDに一致しているが、これに限られるものではない。
【0028】
外側リング1及び内側リング2からの力を十分に伝達しつつ、軽量化や耐久性の向上を図る観点から、板厚tは8~30mmが好ましく、10~25mmがより好ましい。同様の観点から、板幅wは5~25mmが好ましく、10~20mmがより好ましい。また、耐久性を向上させつつ接地圧分散を小さくする観点から、板幅wは、板厚tの110%以上が好ましく、115%以上がより好ましい。第2スポーク32は、タイヤ赤道面TEに関して第1スポーク31と対称的に配置されていること以外は第1スポーク31と同様に形成されているので、重複した説明を省略する。
【0029】
第1スポーク31は、内端部3a、中央部3b及び外端部3cで構成されている。中央部3bは、タイヤ径方向RDにおける第1スポーク31の高さ中央31cを中心とした範囲Xを含み、この範囲Xは第1スポーク31の高さhの10~90%である。タイヤ幅方向WDにおける中央部3bの板幅wbは一定であるのに対し、外端部3cの板幅wcはタイヤ径方向外側RDoに向かって漸増している。同様に、内端部3aの板幅waはタイヤ径方向内側RDiに向かって漸増している。これにより、外側リング1及び内側リング2との接合部における応力集中を低減して耐久性を向上できる。
【0030】
この非空気圧タイヤTでは、荷重支持力を高めることなどを目的として、外側リング1に補強構造体5が設けられている。補強構造体5は、タイヤ周方向CDに沿って環状に形成されている。補強効果を確保する観点から、補強構造体5の幅W5(図2参照)は外側リング1の幅W1の50%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。本実施形態では、外側リング1の外周に補強構造体5が設けられ、その補強構造体5の外周にトレッドゴム4が設けられている。但し、これに限られず、例えば外側リング1の内部に補強構造体5が埋設されている構造でもよい。
【0031】
補強構造体5は、図4に示したような積層バンド6で構成されている。積層バンド6は、心線70の配列体7とエラストマー層である樹脂層8とをタイヤ径方向RDに交互に重ねて形成されている。積層バンド6は、複数(即ち、2つ以上)の配列体7を含む。配列体7の各々は、互いに平行に配列された複数の心線70で構成されている。心線70の材料は、特に限定されないが、例えば、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミドなどの有機繊維コードや、スチールなどの金属繊維コードが好ましく用いられる。樹脂層8は、外側リング1の母材と同種の材料で形成されることが好ましいが、異種の材料でも構わない。
【0032】
本実施形態では、積層バンド6が、第1配列体71、第2配列体72及び第3配列体73の3つの配列体7を含む。第1配列体71及び第3配列体73は、それぞれタイヤ周方向CDに延在する心線70をタイヤ幅方向WDに配列することで構成されている。第1配列体71及び第3配列体73において、タイヤ周方向CDに対する心線70の傾斜角度は実質的に0度である。また、第2配列体72は、タイヤ幅方向WDに延在する心線70をタイヤ周方向CDに配列することで構成されている。第2配列体72において、タイヤ周方向CDに対する心線70の傾斜角度は実質的に90度である。
【0033】
[非空気圧タイヤの製造方法]
次に、非空気圧タイヤTを製造する方法について説明する。この製造方法は、心線70にエラストマーがコーティングされた被覆心線を作製する工程(コーティング工程)と、外側リング1の外周に第1配列体71を配置する工程(第1配列工程)と、第1配列体71の外周に第2配列体72を配置する工程(第2配列工程)と、その第1配列体71と第2配列体72とを含む積層バンド6を加熱加圧する工程(加熱加圧工程)と、積層バンド6の外周にトレッドゴム4を設ける工程(トレッド形成工程)とを備える。
【0034】
本実施形態のコーティング工程では、並列された複数の心線70にエラストマーである樹脂80をコーティングし、図5に示すような被覆心線C70からなる帯状物を作製する。この帯状物の表面は、少し波打っているが、平坦でもよい。このような被覆心線C70は、従来公知のカレンダーロールを用いて作製できるが、これに限られず、押出機を用いて作製しても構わない。但し、タイヤ幅方向WDに心線70が配列された第1配列体71(及び第3配列体73)に対応した幅寸法で帯状物を作製するには、カレンダーロールを使用する方が効率的である。
【0035】
図6(A)に示す支持構造体SSは、注型成形法などを用いて予め作製されたものである。第1配列工程では、図6(B)のように、支持構造体SSが有する環状の外側リング1の外周に沿って、被覆心線C70をタイヤ幅方向WD(第1方向に相当)に配列してなる第1配列体71を環状に配置する。また、第2配列工程では、図6(C)のように、第1配列体71の外周に沿って、被覆心線C70をタイヤ周方向CD(第2方向に相当)に配列してなる第2配列体72を環状に配置する。更に、本実施形態では、図6(D)のように、第2配列体72の外周に沿って、被覆心線C70をタイヤ幅方向WDに配列してなる第3配列体73を環状に配置している(第3配列工程)。
【0036】
第1配列工程を簡略化する観点から、第1配列体71に対応した幅寸法を有する帯状物を作製しておき、その帯状物を外側リング1の外周に巻き付けて第1配列体71を配置することが好ましい。第2及び第3配列工程においても、これと同様である。但し、第2配列工程では、タイヤ周方向CDに対して心線70が90度の角度で傾斜した帯状物を用いる。かかる帯状物は、被覆心線C70を所定の長さ(第2配列体72の幅寸法に相当する長さ)で切断し、それにより得られた短冊状の被覆心線C70をタイヤ周方向CD(被覆心線C70の配列方向)に順次に接合することにより作製される。
【0037】
加熱加圧工程では、第1配列体71と第2配列体72と(本実施形態では、更に第3配列体73と)を含む積層バンド6を加熱加圧する。これにより、心線70を被覆している樹脂80が溶融し、積層された複数の配列体7が互いに融着される。その際、注型成形法のように樹脂を満遍なく流動させる必要がないため、積層バンド6が位置ずれを起こす心配がない。また、心線70の各々は既に樹脂80で取り囲まれているので、樹脂80を十分に行き渡らせることができる。よって、積層バンド6によって補強構造体5を設ける際の位置ずれやエア入りの発生が抑えられる。積層バンド6の樹脂層8(図4参照)は、心線70を被覆した樹脂80によって形成される。
【0038】
加熱加圧工程では、図7に示したような環状のモールド9で積層バンド6をタイヤ径方向外側から取り囲み、そのモールド9によって積層バンド6を加熱加圧してもよい。モールド9は、タイヤ周方向CDに分割された複数(図7の例では4つ)の分割片91で構成され、その各々がタイヤ径方向に移動することで開閉可能に構成されている。モールド9は、図示しない加熱手段により所要温度にまで加熱され、積層バンド6に押し当てられる。モールド9により積層バンド6を加熱加圧しながらモールド9を徐々に縮径させてもよく、それによって樹脂80を溶融させながら押し込み、エア入りの発生をより確実に抑えることができる。
【0039】
トレッド形成工程では、積層バンド6の外周に、接地面を形成する環状のトレッドゴム4を設ける。本実施形態では、加熱加圧した後の積層バンド6の外周に未加硫のゴム層を環状に配置した後、そのゴム層を加熱加圧して加硫を施すことにより、トレッドゴム4が設けられる。トレッドゴム4を設ける前に積層バンド6を加熱加圧して複数の配列体7を互いに融着しているので、積層バンド6の位置ずれがより確実に抑えられる。
【0040】
以上のような工程を経て製造された非空気圧タイヤTは、積層バンド6によって構成された補強構造体5を備える。既述の通り、製造時に積層バンド6の位置ずれの発生が抑えられることにより、タイヤのユニフォミティが損なわれる心配が少ない。また、積層バンド6におけるエア入りの発生が抑えられることにより、心線70の周囲に樹脂80が満遍なく固着された状態が得られる。そのため、セパレーションなどの故障の起点になりやすい箇所を生じず、タイヤの耐久性が損なわれる心配が少ない。
【0041】
積層バンド6に含まれる複数の配列体7において、それらの被覆心線C70の配列方向は特に限定されない。本実施形態では、第1配列体71と第2配列体72とで被覆心線C70の配列方向が相違しているが、これらは互いに同じでもよい。したがって、第2配列体72を構成する被覆心線C70の配列方向がタイヤ幅方向WD(第1方向に相当)であってもよい。図8のように被覆心線C70をタイヤ周方向CDに対して斜めに配列することも可能である。図8の例では、第1配列体71と第2配列体72との間で、被覆心線C70が互いに逆向きに配列されている。
【0042】
本実施形態では、所定の幅寸法を有する被覆心線C70の帯状物を巻き付けて第1配列体71を配置する例を示したが、これに限られるものではない。例えば、押出機を用いて、一本又は複数本の心線にエラストマーがコーティングされた被覆心線を連続的に押出成形し、その被覆心線をタイヤ周方向に沿って螺旋状に巻回することにより、被覆心線がタイヤ周方向に延在する配列体(本実施形態における第1配列体71や第3配列体73)を形成してもよい。
【0043】
本実施形態では、心線70にコーティングされるエラストマーが樹脂80である例を示したが、これに限られず、例えばゴムであってもよい。その場合、積層バンドに含まれるエラストマー層はゴムにより形成される。また、エラストマーがゴムである場合において、加熱加圧する前の積層バンドに未加硫のゴム層を環状に配置してもよい。それにより、積層バンドを加熱加圧する工程において、トレッドゴムとなるゴム層を加硫することができる。つまり、積層バンドに対する加熱加圧と、トレッド形成工程における加硫とを同時に実行できる。
【0044】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 外側リング
2 内側リング
3 スポーク
4 トレッドゴム
5 補強構造体
6 積層バンド
7 配列体
8 樹脂層(エラストマー層の一例)
9 モールド
70 心線
71 第1配列体
72 第2配列体
73 第3配列体
80 樹脂(エラストマーの一例)
C70 被覆心線
SS 支持構造体
T 非空気圧タイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8