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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】車両用フロアカーペット
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019190172
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021062854
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000251060
【氏名又は名称】林テレンプ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】猪股 佑
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 直宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 満
(72)【発明者】
【氏名】大矢 航大
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 喜仙
(72)【発明者】
【氏名】高村 修平
(72)【発明者】
【氏名】川口 英之
(72)【発明者】
【氏名】近藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】伏屋 昭宏
【審査官】草野 顕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-163077(JP,A)
【文献】実開平05-034034(JP,U)
【文献】特開2002-193016(JP,A)
【文献】特開2012-193830(JP,A)
【文献】特開平11-099870(JP,A)
【文献】特開2019-026230(JP,A)
【文献】実開平01-078710(JP,U)
【文献】特開2020-005383(JP,A)
【文献】特開2016-106819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/01-13/04
13/08
16/02
B60N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロア面上に配置される、繊維層と下地層とからなる積層体を含む車両用フロアカーペットであって、
車室の内部に露出する表面が、前記積層体の前記繊維層の表面と、前記繊維層に囲まれた樹脂硬質層の表面と、を含み、
前記樹脂硬質層は単一の樹脂成形品からなり、前記単一の樹脂成形品は、前記積層体の表面と反対側の面に当接するフランジ部と、前記フランジ部から突出して、前記積層体に設けられた貫通孔を貫通し、前記樹脂硬質層の前記表面を構成する凸状部とを有し、前記凸状部は外部部品と係合可能な係合部を有し、前記係合部は前記積層体の前記貫通孔よりも径が小さい孔部であり、
前記樹脂成形品は、前記表面と反対側に突出して、前記フロア面を構成するフロアパネルに当接するリブを有している、車両用フロアカーペット。
【請求項2】
車両のフロア面上に配置される、繊維層と下地層とからなる積層体を含む車両用フロアカーペットであって、
車室の内部に露出する表面が、前記積層体の前記繊維層の表面と、前記繊維層に囲まれた樹脂硬質層の表面と、を含み、
前記樹脂硬質層は単一の樹脂成形品からなり、前記単一の樹脂成形品は、前記積層体の表面と反対側の面に当接するフランジ部と、前記フランジ部から突出して、前記積層体に設けられた貫通孔を貫通し、前記樹脂硬質層の前記表面を構成する凸状部とを有し、前記凸状部は外部部品と係合可能な係合部を有し、前記係合部は前記積層体の前記貫通孔よりも径が小さい孔部であり、
前記フランジ部は薄肉部を含む、車両用フロアカーペット。
【請求項3】
前記繊維層の前記表面と前記樹脂硬質層の前記表面とは略同一面内に位置していることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用フロアカーペット。
【請求項4】
前記樹脂成形品は、少なくとも一部が前記貫通孔内に位置している、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用フロアカーペット。
【請求項5】
前記係合部は、前記外部部品の固定用の孔部である、請求項1からのいずれか1項に記載の車両用フロアカーペット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用フロアカーペットに関する。
【背景技術】
【0002】
車室内の静粛化や居住性の向上のために、繊維層を有する車両用フロアカーペットがフロア面上に敷設された車両がある。このような車両の車室内にカーナビゲーション装置、オーディオ装置、照明部品、温冷蔵庫、テレビ等の電子機器が設置される場合には、電子機器に接続される配線の束、いわゆるワイヤーハーネスが車室内のフロアカーペットの下の、フロアパネルとの間の空間など、通常は乗員から見えないところに配索される。しかし、車内スペースや設計上の都合により、ワイヤーハーネスがフロアカーペットの上に配設される場合がある。この場合、ワイヤーハーネスが乗員の足に引っ掛かったり移動の邪魔になったりしないように、ワイヤーハーネスはフロアカーペット上でより確実に固定される必要がある。
【0003】
特許文献1の図4には、フロアカーペットが敷かれたフロアパネルにワイヤーハーネス取付装置が取り付けられた構成が記載されている。
【0004】
特許文献2の図5~6には、フロアカーペットに貫通孔が設けられ、貫通孔の下方および内部にフロアトンネルとブラケットとエアバッグコントローラーとが配置され、貫通孔の上方からカバー部材がフロアトンネルとブラケットとエアバッグコントローラーとを覆っている構成が記載されている。
【0005】
特許文献3には、ダッシュパネルの車室側の面にスタッドが取り付けられ、吸音材に設けられた開口がスタッドに通されて、固定部材がスタッドに係合している構成が記載されている。
【0006】
特許文献4の図2には、フロアカーペットに設けられた貫通孔に、ハーネス固定用のクリップが差し込まれた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-46482号公報
【文献】特開2016-94070号公報
【文献】特開2017-13541号公報
【文献】特許3483057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された構成では、ワイヤーハーネス取付装置が広いスペースを占めており、特にフロアカーペットの上方においてワイヤーハーネス取付装置が突出する高さが高い。
【0009】
特許文献2に記載された構成では、フロアトンネルの上にエアバッグコントローラーが配置され、このエアバッグコントローラーに接続される配線がカバー部材によって覆われている。この構成では、フロアカーペットに貫通孔が設けられているものの、エアバッグコントローラーやカバー部材がフロアカーペットの上方に突出する高さが高い。
【0010】
特許文献3に記載された構成では、吸音材を固定するためのスタッドが吸音材の表面から車室の内部に向けて大きく突出している。この構成をフロアカーペットに応用すると、車室のフロア面から上方にスタッドが大きく突出する。
【0011】
このように、特許文献1~3に記載された構成に基づいてフロアカーペット上に外部部品を固定しようとすると、その固定のための機構等がフロアカーペットの上方に大きく突出し、乗員の邪魔になるとともに、他の様々な部材を設置する際の妨げになる。
【0012】
また、特許文献4に記載された構成では、フロアカーペットに貫通孔が形成され、この貫通孔にワイヤーハーネスが固定されている。この構成では、主にフロアカーペットの表面に位置する繊維層に設けられた孔部に、ワイヤーハーネス固定用のクリップが取り付けられる。しかし、フロアカーペットの表面に位置する繊維層は、車室内の静粛性や居住性の向上、即ち、内装材として適した触感やクッション性を付与するために比較的柔らかい層である。この柔らかい繊維層に設けられた孔部では、クリップをしっかりと支持できない可能性がある。特に、クリップの爪部の弾性変形を利用してクリップを孔部に固定する構成では、孔部の内周縁部が柔らかい繊維層であると、クリップを固定するために十分な強度が得られず、取り付けられたクリップの安定性が悪い。その結果、ワイヤーハーネスは強固に固定されず、ワイヤーハーネスが孔部から外れたり、固定位置から移動することにより、乗員の邪魔になったり他の部材を設置する際の妨げになったり、車両走行時に異音が発生したりする可能性がある。
【0013】
本発明の目的は、外部部品をフロアカーペット上に固定することができ、外部部品の固定のためにフロアカーペットの上方に大きなスペースを必要とせず、乗員の邪魔になったり他の部材の設置の妨げになったりすることが抑えられる車両用フロアカーペットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、車両のフロア面上に配置される、繊維層と下地層とからなる積層体を含む車両用フロアカーペットにおいて、車室の内部に露出する表面が、積層体の繊維層の表面と、繊維層に囲まれた樹脂硬質層の表面と、を含み、前記樹脂硬質層は単一の樹脂成形品からなり、前記単一の樹脂成形品は、前記積層体の表面と反対側の面に当接するフランジ部と、前記フランジ部から突出して、前記積層体に設けられた貫通孔を貫通し、前記樹脂硬質層の前記表面を構成する凸状部とを有し、前記凸状部は外部部品と係合可能な係合部を有し、前記係合部は前記積層体の前記貫通孔よりも径が小さい孔部であり、前記樹脂成形品は、前記表面と反対側に突出して、前記フロア面を構成するフロアパネルに当接するリブを有していることを特徴とする。
また、本発明は、車両のフロア面上に配置される、繊維層と下地層とからなる積層体を含む車両用フロアカーペットにおいて、車室の内部に露出する表面が、積層体の繊維層の表面と、繊維層に囲まれた樹脂硬質層の表面と、を含み、前記樹脂硬質層は単一の樹脂成形品からなり、前記単一の樹脂成形品は、前記積層体の表面と反対側の面に当接するフランジ部と、前記フランジ部から突出して、前記積層体に設けられた貫通孔を貫通し、前記樹脂硬質層の前記表面を構成する凸状部とを有し、前記凸状部は外部部品と係合可能な係合部を有し、前記係合部は前記積層体の前記貫通孔よりも径が小さい孔部であり、前記フランジ部は薄肉部を含むことをもう1つの特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用フロアカーペットによると、外部部品をフロアカーペット上に固定することができ、外部部品の固定のためにフロアカーペットの上方に大きなスペースを必要とせず、乗員の邪魔になったり他の部材の設置の妨げになったりすることが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は本発明の車両用フロアカーペットの要部の断面図、(b)はその平面図、(c)はその底面図である。
図2】(a)は図1に示す車両用フロアカーペットの分解断面図、(b)はその分解平面図である。
図3】(a)は図1に示す車両用フロアカーペットの樹脂成形品を上方から見た斜視図、(b)はその正面から見た斜視図である。
図4図3に示す樹脂成形品の凸状部が、積層体の貫通孔内に進入した状態を示す平面図である。
図5】(a)は図1に示す車両用フロアカーペットによって、外部部品の一例であるワイヤーハーネスを固定した状態を示す断面図、(b)はその斜視図である。
図6】車両用フロアカーペットの樹脂成形品の他の例を下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1(a)は本発明の車両用フロアカーペット1の要部の断面図、図1(b)はその平面図、図1(c)はその底面図である。図2(a)はこの車両用フロアカーペット1の分解断面図、図2(b)はその分解平面図である。車両用フロアカーペット1は、車両のフロア面上に配置されるものであり、主に、カーペット本体を構成する積層体2と、積層体2に取り付けられている樹脂成形品3とからなる。積層体2は、車室の内部に露出する表面側に位置し、乗員と直接接触する繊維層4と、繊維層4に積層されており、車室の内部と反対側に位置し、通常は乗員と直接接触しない下地層5とを含む。繊維層4は、表皮層とも呼ばれ、カットパイル、ループパイル、ニードルパンチ等からなり、車室内の静粛化や居住性の向上に寄与する比較的柔らかい層である。下地層5は、樹脂バッキング層、穴あき樹脂層、第2の繊維層等のうちの1層または複数層からなる。繊維層4と下地層5が重ね合わせられた状態で互いに接合されて一体化し、積層体2が構成されている。本発明の積層体2には貫通孔2aが設けられている。貫通孔2aは、繊維層4と下地層5とを厚さ方向に貫通している。
【0019】
図3(a)は樹脂成形品を上方から見た斜視図、図3(b)はその正面から見た斜視図である。樹脂成形品3は、平板状のフランジ部3aと、フランジ部3aから突出して樹脂硬質層を構成する凸状部3bとを有している。凸状部3bには、その突出方向(厚さ方向)に沿って貫通する孔部3cが設けられている。樹脂成形品3は、フランジ部3aから、車室の内部に露出する表面側と反対側、すなわち車両用フロアカーペット1が敷設されるフロア面側に突出するリブ3dをさらに有している。
【0020】
樹脂成形品3のフランジ部3aの、リブ3dが設けられている面と反対側の面が、積層体2の車室の内部に露出する表面と反対側、すなわち下地層5の、繊維層4と接する面と反対側の面(便宜上「裏面」と言う)に重なり合っている。フランジ部3aと積層体2とが重なり合った部分がステープル(タッカー)6によって互いに固定され、車両用フロアカーペット1が構成されている。図1,4に示すように、凸状部3bは、積層体2の貫通孔2a内に進入して貫通している。凸状部3bの先端面は貫通孔2a内で外部に対して露出している。従って、積層体2と樹脂成形品3とを含む車両用フロアカーペット1の、車室の内部に露出する表面は、繊維層4の表面と、樹脂成形品3の凸状部3bからなる樹脂硬質層の表面(先端面)とからなる。積層体2の貫通孔2aの深さと、樹脂成形品3の凸状部3bの高さは実質的に一致している。従って、凸状部3bの先端面は、貫通孔2aおよび凸状部3bを囲むように位置する繊維層4の表面と略同一面内に位置する。
【0021】
このように、本発明の車両用フロアカーペット1は、積層体2と樹脂成形品3とを含む構成である。積層体2の繊維層4の表面と、樹脂成形品3の凸状部3bからなる樹脂硬質層の表面とが、車室の内部に露出している。この樹脂硬質層3bに設けられている孔部3cが、外部部品と係合可能な係合部として機能する。例えば、図5に模式的に示すように、孔部3cに、ワイヤーハーネス7を束ねて保持するクリップ8が取り付けられる。具体的には、樹脂等からなるクリップ8が、ワイヤーハーネス7を保持する保持部8aと、弾性変形可能な爪部8bとを有している。爪部8bを一旦撓ませて樹脂硬質層3bの孔部3c内に挿入し孔部3cを通過させてから、爪部8bを弾性変形状態から初期状態に復帰させることによって孔部3cの内周縁部に係合させて、クリップ8を固定することができる。このようにして、ワイヤーハーネス7の保持部材であるクリップ8を、樹脂硬質層3bの孔部3cに固定することができる。
【0022】
車両用フロアカーペット1の積層体2は、車両のフロア面を構成するフロアパネルに沿った形状に形成され、柔らかい繊維層4によって、内装材として適した意匠やクッション性や触感の付与や居住性の向上を実現している。仮に、この繊維層4の上に、ワイヤーハーネス7を保持するクリップ8等の外部部材を取り付けるための取付機構を設けると、フロア面上において高さ方向に大きなスペースを必要とする。フロア面上に突出する取付機構が、車室内において乗員や荷物の占めるスペースに干渉したり、乗員や荷物の移動の邪魔になったりする可能性がある。しかし、本発明の車両用フロアカーペット1では、積層体2に貫通孔2aを設け、その貫通孔2a内に少なくとも一部が位置するように樹脂硬質層3bを配置して、樹脂硬質層3bの孔部3cを外部部材の固定のために利用している。すなわち、貫通孔2aを設けることによって、樹脂硬質層(凸状部)3bは積層体2と重なり合わず、フロア面上に高さ方向に占めるスペースを小さくしている。従って、車室内において乗員や荷物の位置するスペースに干渉したり、乗員や荷物の移動の邪魔になったりする可能性が低減する。
【0023】
特に、各図面に示している実施形態では、凸状部3bに設けられている孔部3cを用いてクリップ8等の外部部材を固定しており、この凸状部3bは、表面が積層体2の繊維層4の表面と略同一面内に位置している。このような構成によると、取付機構の存在しないフロアカーペットと同等の高さであって、積層体2の上に高さ方向に突出する部分が存在しないので、乗員や荷物の邪魔になることが抑えられる。このような観点から、凸状部3bの表面と積層体2の繊維層4の表面との高さの差は±7mmであることが好ましい。すなわち、本明細書における「略同一面」は、少なくとも高さの差が±7mm以内である。
【0024】
また、仮に、フロアカーペットの表面が繊維層である部分に孔部を設けてクリップ8等の外部部材を固定する構成にすると、クリップ8の爪部8b等と係合してそれを保持するのがやわらかい繊維層4と、やわらかい第2の繊維層や軟質な樹脂バッキング層などからなる下地層5との積層体であるため、十分な強度が得られない可能性がある。車室内の静粛化や居住性の向上のために柔らかい繊維層4を形成すると、外部部材をしっかりと保持するために必要な強度が得られず、外部部材を安定的に保持できない可能性がある。一方、繊維層4に十分な強度を持たせると、車室内の静粛化や居住性の向上という車両用フロアカーペットの本来の機能が損なわれる。これに対し、本発明では、車両用フロアカーペット1の表面の大部分は柔らかい繊維層4によって構成されているので、車室内の静粛化や居住性の向上が実現できる。同時に、クリップ8等の外部部材を固定するのは、少なくとも繊維層4に比べて硬質の樹脂硬質層3bであるため、外部部材を安定的に強固に保持することができる。車両用フロアカーペット1の表面において樹脂硬質層3bの表面が占める割合は非常に小さいため、樹脂硬質層3bが設けられても車室内の静粛性や居住性はほとんど損なわれない。従って、十分な強度を有する樹脂硬質層3bを形成することができる。
【0025】
なお、樹脂成形品3には、裏面側に突出するリブ3dが設けられ、このリブ3dが、フロア面を構成するフロアパネル9(図5に模式的に図示)に当接する構成にすると、孔部3cの周囲で樹脂硬質層3bが押圧されて裏面側に凹むことが抑えられる。すなわち、積層体2に貫通孔2aを設けて樹脂硬質層3bを配置することで車両用フロアカーペット1に凹みが生じることを抑えるように、リブ3dがフロアパネル9上で樹脂成形品3を支持する。これにより、クリップ8を固定する際に樹脂成形品3が撓んで爪部8bと嵌合しない不具合を防ぐ。
【0026】
ステープル6によって積層体2と樹脂成形品3のフランジ部3aとを容易に固定するために、フランジ部3aは薄肉であることが好ましい。図1~5に示されている実施形態では、フランジ部3a全体を薄肉にして、ステープル6の針状の部分が貫通しやすいようにしている。ただし、図6に示すように、フランジ部3aの、ステープル6の針状の部分が貫通する部分とその周辺のみを、それ以外の部分に比べて薄肉の薄肉部3eにすることも可能である。また、タッカーの打ち込み位置を取り囲むようにリブ3fを形成しておくと、タッカーによりステープル6を打ち込むべき位置が作業者に判りやすく、積層体2とフランジ部3aとを固定する作業が容易に行える。ただし、フランジ部3aに薄肉部3eやリブ3fが設けられていない構成にすることも可能である。
【0027】
以上説明した通り、本発明では、車両用フロアカーペット1の、車室の内部に露出する表面が、積層体2の繊維層4の表面と、繊維層4に囲まれた樹脂硬質層3bの表面と、を含む構成である。このように、繊維層4と樹脂硬質層3bとを用いることにより、車両用フロアカーペット1の本来の機能である車室内の静粛化や居住性の向上と、外部部材との係合の安定性とを両立することが可能になる。
【0028】
さらに、前述した実施形態では、繊維層4の表面と樹脂硬質層3bの表面とが略同一面内に位置しているため、外部部材を取り付ける部分が、車室内において高さ方向に大きなスペースを必要とせず、乗員や荷物にとって邪魔になることが避けられる。ただし、本発明はこのような構成に限定されるわけではない。
【0029】
また、本実施形態では、積層体2には貫通孔2aが設けられており、樹脂硬質層3bは、少なくとも一部が貫通孔2a内に位置している樹脂成形品3からなるものである。樹脂成形品3は、積層体2の表面と反対側の面に当接するフランジ部3aと、フランジ部3aから突出して積層体2の貫通孔2aを貫通し、樹脂硬質層の表面を構成する凸状部3bと、表面と反対側に突出して、フロア面を構成するフロアパネル9に当接するリブ3dとを有している。前述した構成では、樹脂成形品3は、外部部品と係合可能な係合部を有しており、この係合部は、ワイヤーハーネス7を束ねるクリップ8の固定用の孔部3cである。ただし、本発明はこのような構成に限定されるわけではない。
【0030】
本発明の車両用フロアカーペット1は、車両の後側のフロアカーペットとして好適に用いられるが、前側のフロアカーペットとして用いることもできる。もちろん、後側のフロアカーペットと前側のフロアカーペットの両方が、本発明の車両用フロアカーペット1から構成されていてもよい。図示しないが、これらのフロアカーペットの裏面に、フロアカーペットと別体または一体のフロアサイレンサ(フロアスペーサ)を設ける場合には、樹脂成形品3が配置される位置とその周囲にはフロアサイレンサを配置せず、樹脂成形品3の設置スペースを確保することが好ましい。
【符号の説明】
【0031】
1 車両用フロアカーペット
2 積層体
2a 貫通孔
3 樹脂成形品
3a フランジ部
3b 凸状部(樹脂硬質層)
3c 孔部
3d リブ
3e 薄肉部
3f リブ
4 繊維層
5 下地層
6 ステープル(タッカー)
7 ワイヤーハーネス(外部部品)
8 クリップ(外部部品)
8a 保持部
8b 爪部
9 フロアパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6