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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 77/13 20060101AFI20230322BHJP
   F02B 77/00 20060101ALI20230322BHJP
   F02B 67/00 20060101ALI20230322BHJP
   F01P 3/02 20060101ALI20230322BHJP
   F01M 5/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
F02B77/13 Z
F02B77/00 P
F02B77/00 R
F02B67/00 G
F01P3/02 Z
F01M5/00 N
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019237162
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105376
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 怜央
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 隆寛
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小村 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂口 久美子
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-197712(JP,A)
【文献】特開2009-145299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 77/13
F02B 77/00
F02B 67/00
F01P 3/02
F01M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(6)と、回転軸(6)に取り付けられたパルサプレート(7)と、パルサプレート(7)の外周にその周方向に所定間隔を保持して複数設けられた突起(7a)(7b)と、パルサプレート(7)の外周に臨むピックアップセンサ(8)を備え、ピックアップセンサ(8)の検出領域を通過する突起(7a)(7b)の検出で形成されるパルス信号に基づいて、エンジン回転数やクランク角が検出されるように構成されたエンジンにおいて、
パルサプレート(7)は、相互に隣り合う一対の突起(7a)(7b)の片面に風切面(7ae)(7be)を備え、両風切面(7ae)(7be)のうち、一方の風切面(7ae)のパルサプレート(7)の外周面(7de)からの起立寸法(7af)が、他方の風切面(7be)のパルサプレート(7)の外周面(7ca)からの起立寸法(7bf)よりも短く形成され、
パルサプレート(7)は、回転軸(6)に固定される円形基板(7c)と、円形基板(7c)の外周で相互に隣り合う円弧状リブ(7d)(7d)を備え、各円弧状リブ(7d)の周方向両端部の外周から径方向外側に前記一対の突起(7a)(7b)が突設され、相互に隣り合う円弧状リブ(7d)(7d)の間にリブ間隙間(7dd)が形成されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンジンにおいて、
各突起(7a)(7b)の位相角度は、それぞれ回転下手側のものに対し、等しい角度だけずれている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項2に記載されたエンジンにおいて、
各突起(7a)(7b)の位相角度のずれが90°である、ことを特徴とするエンジン。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載されたエンジンにおいて、
パルサプレート(7)は伝動装置(3)を収容する伝動装置カバー(3a)内に配置され、
回転軸(6)の軸長方向に沿う突起(7a)(7b)の前後方向長さ寸法(7f)が、突起(7a)(7b)の周方向厚さ寸法(7g)よりも長く設定されている、ことを特徴とするエンジン。
【請求項5】
請求項4に記載されたエンジンにおいて、
伝動装置カバー(3a)がエンジン冷却水の通水室(3ad)を備え、通水室(3ad)の内壁(3ae)が伝動装置カバー(3a)内でパルサプレート(7)と対向している、ことを特徴とするエンジン。
【請求項6】
請求項5に記載されたエンジンにおいて、
ラジエータで放熱され、シリンダやシリンダヘッド(16)の熱を吸熱する前のエンジン冷却水が通水室(3ad)を通過するように構成されている、ことを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関し、詳しくは、パルサプレートの風切騒音が緩和されるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸と、回転軸に取り付けられたパルサプレートと、パルサプレートの外周にその周方向に所定間隔を保持して複数設けられた突起と、パルサプレートの外周に臨むピックアップセンサを備えたエンジンがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-51949号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題点》 パルサプレートの風切騒音が大きくなることがある。
特許文献1のエンジンでは、エンジンの高回転時等に、パルサプレートの風切騒音が大きくなることがある。
【0005】
本発明の課題は、パルサプレートの風切騒音が緩和されるエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の主要な構成は、次の通りである。
図3(B)に例示するように、パルサプレート(7)は、相互に隣り合う一対の突起(7a)(7b)の片面に風切面(7ae)(7be)を備え、両風切面(7ae)(7be)のうち、一方の風切面(7ae)のパルサプレート(7)の外周面(7de)からの起立寸法(7af)が、他方の風切面(7be)のパルサプレート(7)の外周面(7ca)からの起立寸法(7bf)よりも短く形成され、
図1図2に例示するように、パルサプレート(7)は、回転軸(6)に固定される円形基板(7c)と、図3(A)~(D)に例示するように、円形基板(7c)の外周で相互に隣り合う円弧状リブ(7d)(7d)を備え、各円弧状リブ(7d)の周方向両端部の外周から径方向外側に前記一対の突起(7a)(7b)が突設され、相互に隣り合う円弧状リブ(7d)(7d)の間にリブ間隙間(7dd)が形成されている、ことを特徴とするエンジン。
【発明の効果】
【0007】
本願発明は、次の効果を奏する。
《効果》 バルサプレート(7)の風切騒音が緩和される。
図3(B)に例示するように、バルサプレート(7)が回転すると起立寸法(7af)(7bf)の長さか異なる突起(7a)(7b)の風切面(7ae)(7be)から、図4(A)(B)に例示する位相と振幅が異なる風切音(7ag)(7bg)が発生し、これらの風切音(7ag)(7bg)が相互干渉により、図4(C)のように振幅の小さい合成音(7abg)に減衰され、風切騒音が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンのオイルポンプとその周辺部品を説明する図で、図1(A)は側面の立断面図、図1(B)は図1(A)のB-B線断面図、図1(C)は図1(A)のC方向矢視図である。
図2】本発明の実施形態に係るエンジンのパルサプレートとその周辺部品の側面の立断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るエンジンのパルサプレートを説明する図で、図3(A)は斜視図、図3(B)は正面図、図3(C)は突起(7b)の拡大斜視図、図3(D)は突起(7a)の拡大斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るエンジンの突起による風切音を説明する図で、図4(A)は突起(7a)の風切音(7ag)の波形のグラフ、図4(B)は突起(7b)の風切音(7bg)の波形のグラフ、図4(C)は両風切音(7ag)(7bg)の相互干渉による合成音(7abg)の波形のグラフである。
図5】本発明の実施形態に係るエンジンの伝動装置カバーの背面図である。
図6】本発明の実施形態に係るエンジンの伝動装置カバーの正面図である。
図7】本発明の実施形態に係るエンジンの正面図である。
図8図7のエンジンの右側面図である。
図9図7のエンジンの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図9は本発明の実施形態に係るエンジンを説明する図で、この実施形態では、水冷の立形多気筒ディーゼルエンジンについて説明する。
【0010】
このエンジンの概要は、次の通りである。
図8に示すように、このエンジンは、シリンダブロック(15)と、シリンダブロック(15)の上部に組み付けられたシリンダヘッド(16)と、シリンダヘッド(16)の上部に組み付けられたシリンダヘッドカバー(17)と、クランク軸(1)の架設方向を前後方向、前後方向の一方を前として、シリンダブロック(15)の前側に配置された伝動装置カバー(3a)と、シリンダブロック(15)の後部に配置されたフライホイール(20)と、シリンダブロック(15)の下部に組み付けられたオイルパン(29)を備えている。
【0011】
このエンジンは、前後方向と直交する水平方向を左右横方向として、図7,8に示すように、シリンダヘッド(16)の右側面に組み付けられた吸気マニホルド(21)と、吸気マニホルド(21)の吸気入口に組み付けられた吸気スロットル(22)と、シリンダヘッドカバー(17)の右側に架設されたコモンレール(23)と、シリンダブロック(15)の右側に配置された燃料サプライポンプ(24)を備え、図7,9に示すように、シリンダヘッド(16)の左側面に組み付けられた排気マニホルド(25)と、排気マニホルド(25)の排気出口に組み付けられた過給機(26)を備えている。
【0012】
このエンジンの燃料供給装置は、図7,8に示す燃料サプライポンプ(24)やコモンレール(23)からなるコモンレール式燃料噴射装置である。
このエンジンの吸気装置は、エアクリーナ(図示せず)と、図7,9に示す過給機(26)のエアコンプレッサ(26a)と、図7,8に示す吸気スロットル(22)と、吸気マニホルド(21)を備えている。
このエンジンの排気装置は、図7,9に示す排気マニホルド(25)と、過給機(26)の排気タービン(26b)と、排気処理装置(28)を備えている。排気処理装置(28)は、排気処理ケース(28a)内にDOC(図示せず)とDPF(図示せず)を収容している。DOCはディーゼル酸化触媒の略称、DPFはディーゼル・パティキュレート・フィルタの略称である。
【0013】
図1(A)に示すように、このエンジンは、クランク軸(1)の架設方向を前後方向、その一方を前として、クランクケース(2)と、クランクケース(2)の前部に組み付けられた伝動装置カバー(3a)と、伝動装置カバー(3a)の前壁(3aa)に設けられたオイルポンプ(4)のオイルポンプケース(4a)と、オイルポンプケース(4a)内に差し込まれたオイルポンプ入力軸(4b)と、オイルポンプ入力軸(4b)に固定されたスプラインスリーブ(4c)を備え、スプラインスリーブ(4c)は、オイルポンプケース(4a)内のロータ(4d)にスプライン嵌合で内嵌されている。
【0014】
図1(A)~(C)に示すように、オイルポンプケース(4a)は、その天井壁(4aa)の上面にオイルガイド凹部(4ab)を備え、伝動装置カバー(3a)内で凝集してその前壁(3aa)の内面(3ab)を流れ落ちるエンジンオイル(5)が、図1(A)(B)に示すように、オイルガイド凹部(4ab)の案内でスプラインスリーブ(4c)の外周に案内されるように構成されている。
【0015】
上記構成によれば、図1(A)~(C)に示すように、伝動装置カバー(3a)内で凝集してその前壁(3aa)の内面(3ab)を流れ落ちるエンジンオイル(5)が、図1(A)(B)に示すように、オイルガイド凹部(4ab)の案内でスプラインスリーブ(4c)の外周に案内されるため、図1(A)に示すスプラインスリーブ(4c)とロータ(4d)の嵌合部の潤滑性が高い。
【0016】
図1(C)に示すように、オイルポンプ入力軸(4b)の中心軸線(4ba)(図1(A)(B)参照)と平行な向きに見て、オイルガイド凹部(4ab)は、下向きに凹入された円弧状に形成されている。
上記構成によれば、図1(C)に示すように、エンジンが左右に傾斜しても、オイルガイド凹部(4ab)に溜まったエンジンオイル(5)はオイルガイド凹部(4ab)から左右側には溢れ難く、図1(A)(B)に示すように、後向きに案内され、スプラインスリーブ(4c)の外周に供給されるため,エンジンの左右傾斜時にも、スプラインスリーブ(4c)の潤滑性が高い。
【0017】
図1(A)(B)に示すように、オイルポンプ入力軸(4b)がクランク軸(1)であり、スプラインスリーブ(4c)の後側で、クランク軸(1)にクランク出力輪(1a)が固定され、スプラインスリーブ(4c)の外周に案内されたエンジンオイル(5)がクランク出力輪(1a)に供給されるように構成されている。
上記構成によれば、図1(A)(B)に示すように、スプラインスリーブ(4c)の外周に案内されたエンジンオイル(5)がクランク出力輪(1a)に供給されるため、クランク出力輪(1a)の潤滑性も高い。
【0018】
図1(A)(B)に示すオイルポンプ(4)は、トロコイドポンプであり、オイルポンプケース(4a)は、円筒形で、伝動装置カバー(3a)の前壁(3aa)から後向きに突出され、その後端面は蓋(4e)で覆われている。ロータ(4d)は、インナーロータ(4da)と、インナーロータ(4da)と噛み合うアウターロータ(4db)で構成され、インナーロータ(4da)は、スプラインスリーブ(4c)に外嵌され、スプラインスリーブ(4c)にスプライン嵌合されている。
【0019】
図1(A)(B)に示すクランク出力輪(1a)は、クランクギヤ(3c)であり、このクランクギヤ(3c)を含む伝動装置(3)は調時伝動ギヤトレインである。
図5~7に示すように、伝動装置(3)は、クランクギヤ(3c)と、クランクギヤ(3c)と噛み合わされた第1アイドルギヤ(3d)と、第1アイドルギヤ(3d)にそれぞれ噛み合わされた動弁カムギヤ(3e)、第2アイドルギヤ(3f)、並びに第3アイドルギヤ(3g)と、第2アイドルギヤ(3f)に噛み合わされた燃料サプライポンプ入力ギヤ(3h)と、第3アイドルギヤ(3g)に噛み合わされたPTO入力ギヤ(3k)を備えている。
PTOは、パワーテイクオフの略称で、動力取り出しを意味する。
PTO入力ギヤ(3k)は、図8に示すクランク軸(1)の動力をPTO駆動装置(11)に取り出す。
PTO駆動装置(11)には、油圧ポンプが用いられている。
【0020】
図7に示すように、オイルポンプ(4)を含むエンジンオイル供給経路(18)は、オイルパン(29)と、オイルポンプ(4)と、クランクケース(2)のケース壁内に設けられたオイルギャラリ(図示せず)と、オイルギャラリの途中に設けられたオイルクーラ(12)とオイルフィルタ(27)を備えている。
オイルパン(29)内のエンジンオイルは、オイルポンプ(4)の圧送力で、オイルギャラリを介して伝動装置(3)の軸受等の摺動部に供給されるが、オイルギャラリの途中でオイルクーラ(12)により冷却され、オイルフィルタ(27)により浄化される。
図1(A)に示す伝動装置(3)から伝動装置カバー(3a)に流出したエンジンオイル(5)は、オイル戻り孔(図外)を介して図7のクランクケース(2)からオイルパン(29)に戻る。
【0021】
このエンジンは、図2に示す回転軸(6)と、回転軸(6)に取り付けられたパルサプレート(7)と、図3(A)(B)に示すように、パルサプレート(7)の外周にその周方向に所定間隔を保持して複数設けられた突起(7a)(7b)(7h)と、パルサプレート(7)の外周に臨むピックアップセンサ(8)を備え、ピックアップセンサ(8)の検出領域を通過する突起(7a)(7b)(7h)の検出で形成されるパルス信号に基づいて、エンジン回転数やクランク角が検出されるように構成されている。
図2に示すように、パルサプレート(7)は、伝動装置(3)を収容する伝動装置カバー(3a)内に配置され、図3(A)(B)に示すように、回転軸(6)(図2参照)に固定される円形基板(7c)と、円形基板(7c)の外周で相互に隣り合う円弧状リブ(7d)(7d)を備え、各円弧状リブ(7d)の周方向両端部の外周から径方向外側に一対の突起(7a)(7b)が突設され、相互に隣り合う円弧状リブ(7d)(7d)間にリブ間隙間(7dd)が形成されている。
【0022】
上記構成によれば、図3(A)(B)に示すように、パルサプレート(7)が回転すると、リブ間隙間(7dd)に回転上手側から臨む突起(7b)及び円弧状リブ(7d)の周方向端面からなる広いオイルミスト衝突面(7bd)に伝動装置カバー(3a)内の多くのオイルミストが衝突すると共に、このリブ間隙間(7dd)に回転下手側から臨む突起(7a)及び円弧状リブ(7d)の周方向端面からなる広い後流発生面(7ad)の回転下手側で多くの後流(7e)が発生するため、後流(7e)の攪拌作用で伝動装置カバー(3a)内のオイルミストの拡散が促進され、図2に示す伝動装置カバー(3a)内での伝動装置(3)の潤滑性が高い。
【0023】
また、上記構成によれば、図3(A)(B)に示すように、回転軸(6)(図2参照)に固定される円形基板(7c)と、円形基板(7c)の外周で相互に隣り合う円弧状リブ(7d)(7d)を備え、各円弧状リブ(7d)の周方向両端部の外周から径方向外側に一対の突起(7a)(7b)が突設されているため、円形基板(7c)の外周に突起(7a)(7b)を直接形成する場合に比べ、突起(7a)(7b)の支持強度が高まり、突起(7a)(7b)の振動が抑制され、パルス信号を高精度で形成できる。
【0024】
図2に示す回転軸(6)は動弁カム軸(6a)である。このエンジンは4サイクルエンジンであり、クランク軸(1)が1燃焼サイクルである2回転(720°)する間、動弁カム軸(6a)は1回転(360°)する。
このエンジンは4気筒エンジンであり、図3(A)(B)に示すように、パルサプレート(7)には5個の突起が設けられている。円弧状リブ(7d)は2本あり、各円弧状リブ(7d)の周方向両端部の外周から径方向外側に上記一対の突起(7a)(7b)がそれぞれ突設されていると共に、一方の円弧状リブ(7d)の周方向途中から1個の突起(7h)が突設されている。
【0025】
図3(A)(B)に示すように、上記一対の突起(7a)(7b)のうち、円弧状リブ(7d)の回転下手側にある突起(7b)は、オイルミスト衝突面(7bd)が広く、回転上手側にある突起(7a)はオイルミスト衝突面(風切面7ae)が狭い。
オイルミスト衝突面(7bd)が広い突起(7b)を起点として、パルサプレート(7)の回転上手側に、円弧状リブ(7d)の周方向途中の突起(7h)、オイルミスト衝突面(風切面7ae)が狭い突起(7a)、オイルミスト衝突面(7bd)が広い突起(7b)、オイルミスト衝突面(風切面7ae)が狭い突起(7a)が順に配置されている。
ピックアップセンサ(8)にはピックアップコイルが用いられている。
【0026】
図3(B)に示すように、起点の突起(7b)と回転上手側で隣り合う円弧状リブ(7d)の周方向途中の突起(7h)は位相角度が10°ずれ、起点の突起(7b)と回転上手側で隣り合う円弧状リブ(7d)の周方向途中の突起(7h)から回転上手側に順次配置された突起(7a)、突起(7b)、突起(7a)は、それぞれ回転下手側のものに対し、位相角度が90°ずれている。
ピックアップセンサ(8)は、エンジンECU(図示せず)に電気的に接続され、ピックアップセンサ(8)の検出領域を通過する突起(7a)(7b)(7h)の検出で形成されるパルス信号に基づいて、エンジン回転数やクランク角が検出される。
すなわち、エンジンECUは、起点の突起(7b)によって発生する起点パルス信号と、この突起(7h)から回転上手側に順次配置された突起(7a)、突起(7b)、突起(7a)によって発生する計測パルス信号を形成し、起点パルス信号を起点とする計測パルス信号の発生数と経過時間に基づいてエンジン速度を検出し、起点パルス信号からの計測パルス信号のカウントに基づいてクランク角度を検出する。
ECUは、電子制御ユニットの略称で、マイコンが用いられている。
エンジンECUは、検出したエンジン速度とクランク角度により、燃料噴射量を演算し、コモンレール噴射装置の燃料インジェクタ(図示せず)の電磁弁を制御し、所定のタイミングで所定量の噴射を行う。
【0027】
図3(B)に示すように、リブ間隙間(7dd)に沿う円形基板(7c)の外周面(7ca)の径(7cb)は、円弧状リブ(7d)の内周面(7da)の径(7db)よりも小径とされている。
上記構成によれば、図3(A)(B)に示すように、リブ間隙間(7dd)に回転上手側から臨む円形基板(7c)の周方向端面(7cc)もオイルミスト衝突面(7bd)となり、この周方向端面(7cc)にも伝動装置カバー(3a)内のオイルミストが衝突すると共に、リブ間隙間(7dd)に回転下手側から臨む円形基板(7c)の周方向端面(7cd)も後流発生面(7ad)となり、この円形基板(7c)の周方向端面(7cd)の回転上手側にも後流(7e)が発生するため、後流(7e)の攪拌作用で伝動装置カバー(3a)内のオイルミストの拡散が促進され、図2に示す伝動装置カバー(3a)内の伝動装置(3)の潤滑性が高まる。
【0028】
図3(C)(D)に示すように、回転軸(6)(図2参照)の軸長方向に沿う突起(7a)(7b)の前後方向長さ寸法(7f)が、突起(7a)(7b)の周方向厚さ寸法(7g)よりも長く設定されている。
上記構成によれば、図3(C)に示すように、突起(7a)(7b)の前後方向長さ寸法(7f)が、比較的長く設定されているので、リブ間隙間(7dd)に回転上手側から臨む突起(7b)のオイルミスト衝突面(7bd)と、リブ間隙間(7dd)に回転下手側から臨む突起(7a)の後流発生面(7ad)がいずれも広くなり、伝動装置カバー(3a)内のオイルミストの衝突や後流(7e)の発生が促進され、図2に示す伝動装置カバー(3a)内の伝動装置(3)の潤滑性が高まる。
【0029】
図2,6,7に示すように、伝動装置カバー(3a)がエンジン冷却水の通水室(3ad)を備え、図2に示すように、通水室(3ad)の内壁(3ae)が伝動装置カバー(3a)内でパルサプレート(7)と対向している。
上記構成によれば、図2に示す伝動装置カバー(3a)内で拡散したオイルミストが通水室(3ad)の内壁(3ae)に接触し、冷却されるため、エンジンオイル(5)が熱劣化し難い。
【0030】
ラジエータ(図示せず)で放熱され、シリンダ(図示せず)や図7に示すシリンダヘッド(16)の熱を吸熱する前のエンジン冷却水が通水室(3ad)を通過するように構成されている。
上記構成によれば、ラジエータで放熱された低温のエンジン冷却水でエンジンオイル(5)が冷却されるため、エンジンオイル(5)の冷却効率が高い。
【0031】
このエンジンでは、図2に示すように、パルサプレート(7)は、伝動装置(3)を収容する伝動装置カバー(3a)内に配置され、パルサプレート(7)を回転軸(6)に固定する固定具(9)と、固定具(9)とパルサプレート(7)の間に挟みつけられる皿バネ(10)を備え、皿バネ(10)の弾性復元力でパルサプレート(7)を押圧固定するように構成されている。
このエンジンでは、皿バネ(10)とパルサプレート(7)の間にダンパ空間(10a)が設けられ、回転軸(6)の軸長方向へのパルサプレート(7)の振動で皿バネ(10)が伸縮することにより、皿バネ(10)とパルサプレート(7)の圧接箇所に生じる隙間を介して、伝動装置カバー(3a)内とダンパ空間(10a)との相互間で、エンジンオイル(5)と空気が行き来するように構成されている。
【0032】
このエンジンでは、図2に示すように、回転軸(6)の軸長方向へのパルサプレート(7)の振動が皿バネ(10)のバネ力とダンパ空間(10a)のエンジンオイル(5)や空気のダンパ機能により緩和され、パルス信号を高い精度で形成できる。
【0033】
このエンジンでは、図3(B)に示すように、パルサプレート(7)は、相互に隣り合う一対の突起(7a)(7b)の片面に風切面(7ae)(7be)を備え、両風切面(7ae)(7be)のうち、一方の風切面(7ae)のパルサプレート(7)の外周面(7de)からの起立寸法(7af)が、他方の風切面(7be)のパルサプレート(7)の外周面(7ca)からの起立寸法(7bf)よりも短く形成されている
【0034】
このエンジンでは、図3(B)に示すように、パルサプレート(7)が回転すると起立寸法(7af)(7bf)の長さか異なる突起(7a)(7b)の風切面(7ae)(7be)から、図4(A)(B)に示す位相と振幅が異なる風切音(7ag)(7bg)が発生し、これらの風切音(7ag)(7bg)が相互干渉により、図4(C)のように振幅の小さい合成音(7abg)に減衰され、風切騒音が緩和される。
【0035】
図3(B)に示すように、突起(7a)(7b)の風切面(7ae)(7be)は、相互の位相が略等間隔(略90°)ずれており、図4(A)(B)に示すように、これらの風切音(7ag)(7bg)は逆位相となり、相互干渉により、減衰する。
【符号の説明】
【0036】
(3)…伝動装置、(3a)…伝動装置カバー、(3ad)…通水室、(3ae)…内壁、(6)…回転軸、(7)…パルサプレート、(7a)…突起、(7ae)…風切面、(7af)…起立寸法、(7b)…突起、(7be)…風切面、(7bf)…起立寸法、(7ca)…外周面、(7de)…外周面、(7f)…前後方向長さ寸法、(7g)…周方向厚さ寸法、(8)…ピックアップセンサ、(16)…シリンダヘッド。
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9