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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】赤外線検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/00 20060101AFI20230322BHJP
   G01N 21/35 20140101ALI20230322BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
G01N25/00 Z
G01N21/35
G02B21/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019534412
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 FR2017053799
(87)【国際公開番号】W WO2018115778
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】1663273
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・ウィルド,ヤニク
(72)【発明者】
【氏名】ペロス,エロディ
(72)【発明者】
【氏名】クラクマルニコフ,バレンティーナ
(72)【発明者】
【氏名】カルミナーティ,レミ
(72)【発明者】
【氏名】ボッカラ,アルベール-クロード
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-292282(JP,A)
【文献】特開2005-257414(JP,A)
【文献】特開2007-067423(JP,A)
【文献】特開2008-089395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00
G01N 21/35
G02B 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線検出装置であって、
- 少なくとも1のホットスポット(21)のセットによって放出された波長(L_F2)の熱放射を表す信号(S1)を放出するように構成された赤外線検出器(50)、
- UV又は可視波長の窓において、前記波長(L_F2)より短い波長(L_F1)の入射ビーム(F1)を放出するように構成された光源(10)、
- 前記入射ビーム(F1)を集束させるための装置(11)であって、前記入射ビーム(F1)の前記集束は、少なくとも1つの焦点のセットを生成し、各焦点の直径は、検出された赤外線熱放射の前記波長(L_F2)のサイズより小さいサイズを有し、各焦点は、前記焦点がホルダ又はサンプルに位置する場合にそれぞれのホットスポット(21)を生成することができ、及び前記ホルダ又は前記サンプルにわたる前記ホットスポット(21)の拡散速度は、既知である、装置(11)、
- 少なくとも1の赤外線検出器(50)に接続された処理モジュール(60)、
- 前記光源(10)、前記赤外線検出器(50)及び前記処理モジュール(60)のうちの少なくとも1つに接続された同期化装置(70)
を含み、
- 前記同期化装置(70)は、同期信号(SYNC)を放出するように構成され、及び
- 前記赤外線検出器(50)又は前記処理モジュールは、前記同期信号(SYNC)及び前記ホットスポットの前記拡散速度に依存してプリセットされる時間窓(FT)において前記信号(S1)を測定するように構成される、赤外線検出装置において、
- 前記処理モジュール(60)は、時間窓(FT)において前記信号(S1)を測定するように構成され、前記ホットスポット(21)の前記拡散速度の値を掛けられた前記時間窓(FT)の値は、前記ホットスポット(21)によって放出された前記熱放射の前記赤外線波長(L_F2)の値より低いことを特徴とする赤外線検出装置。
【請求項2】
- 前記光源(10)は、パルス源であって、それが作動される場合に少なくとも1つのパルスの列を放出するように構成されたパルス源であり、及び
- 前記同期信号(SYNC)は、前記少なくとも1つのパルスの列に依存して放出される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
- 前記光源(10)は、変調周波数(Fmod)で時間変調される連続波又はパルス光源であり、
- 前記赤外線検出装置は、前記変調周波数(Fmod)又はその高調波の1つにおいて前記赤外線検出器(50)から出力された前記信号(S1)を復調するように構成された復調器を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記赤外線検出器(50)は、
- 単一チャネル赤外線検出器又は赤外線イメージャ(51)、及び
- 赤外線分光計(52)
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
サンプルホルダ(30)を更に含み、以下の構成:
- 前記光源(10)及び前記赤外線検出器(50)が前記ホルダ(30)の同じ側に配置される反射構成、及び
- 前記光源(10)及び前記赤外線検出器(50)が前記ホルダ(30)の両側に配置される透過構成
のいずれか1つを場合により採用する、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
- 前記ビーム(F1)の前記焦点及び前記ホルダ(30)の相対的位置を修正するように構成された走査装置
を更に含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
サンプル(20)を更に含み、前記サンプルは、マイクロ流体細胞のマイクロ流体チャネル(23)に含まれ、前記マイクロ流体細胞は、前記入射ビーム(F1)の前記励起波長(L_F1)において透明な外層(22)と、前記熱放射(F2)の前記波長(L_F2)において透明な内層(24)とを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
請求項5に記載の装置を使用することができる赤外線検出方法であって、
- ホルダ(30)上にサンプル(20)を配置するステップと、
- 光源(10)を作動させるステップと、
- 前記サンプル(20)又は前記ホルダ(30)によって放出された熱放射(F2)の局所的な増加を発生させるために、少なくとも1つの焦点ゾーン(21)のセット内に光源(10)のビーム(F1)を集束させるステップであって、前記少なくとも1つの焦点ゾーン(21)の位置は、前記サンプル(20)内、前記サンプルの表面上又は前記サンプル(20)と前記ホルダ(30)との間の界面にプリセットされ、且つ含まれる、ステップと、
- 赤外線検出器(50)であって、
- 単一チャネル赤外線検出器又は赤外線イメージャ(51)、及び
- 赤外線分光計(52)
のうちの少なくとも1つを含む赤外線検出器(50)と組み合わされる光学対物レンズ(40)において、前記セットの各焦点ゾーン(21)によって放出された前記熱放射(F2)を収集するステップと、
- 前記赤外線検出器(50)によって検出された前記熱放射(F2)を表す出力信号(S1)を生成するステップと、
- 前記赤外線検出器(50)及び前記光源(10)を同期させるステップと、
- 前記光源(10)の前記作動後にプリセット時間を開始するプリセット時間窓(FT)において前記赤外線検出器(50)を作動させるステップと
を含む赤外線検出方法。
【請求項9】
- 変調周波数(Fmod)で前記連続波又はパルス光源(10)を時間変調するステップと、
- 前記赤外線検出装置の復調器を用いて、前記変調周波数(Fmod)又はその高調波の1つにおいて前記赤外線検出器(50)から出力された前記信号(S1)を復調するステップと
を更に含み、
- 前記光源(10)がパルス源である場合、前記光源(10)は、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのセットを含むパルス列を生成するように構成され、前記赤外線検出器(50)を作動させる前記ステップは、従って、遅くとも前記パルス列の最後の立ち下がりエッジで前記赤外線検出器(50)を作動させることを含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルの撮像(顕微鏡法)、サーモグラフィ又は分光法のためのものであるかどうかにかかわらず、赤外線における超解像検出の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
簡潔にするために、用語「赤外線」は、本発明において、任意の電磁界であって、その周波数又は均等に波長が赤外線帯域(近及び遠赤外線を含む)、テラヘルツ帯域又はマイクロ波帯域に含まれる、任意の電磁界を意味するように理解される。
【0003】
赤外線スペクトルは、情報(分子振動、フォノン、半導体におけるプラズモン、熱放出等)に非常に富んでいる。従って、それは、サンプルを特徴付けることを可能にする。
【0004】
赤外線分光法は、書籍Peter R.Griffiths and James A.De Haseth,Fourier Transform Infrared Spectrometry(John Wiley and Sons,Hoboken,New Jersey,2007),2nd edに説明されているように、サンプルによって反射、透過若しくは吸収されるか、又はその表面からの熱放射によって生成される赤外線放射スペクトルの研究に関する。また、この研究に説明されているように、サンプルの表面におけるスペクトルをマッピングすることを目的とする顕微分光測定は、赤外線分光計に結合された赤外線顕微鏡を使用する。サンプルは、2つの直交軸及び多数の走査ステップのそれぞれのために測定されたスペクトルに沿ってサンプルを平行移動するためのコンピュータ制御装置上に配置され得るか、又は代わりに、サンプルは、静止したままであり得、そのスペクトルは、マルチチャネルマトリックスアレイ検出器を用いて測定され得る。
【0005】
この分野において、赤外線顕微鏡及び赤外線分光計などの従来の器具が知られており、これらの器具は、観察波長に直接関係する回折限界のために約10マイクロメートルの空間解像度を有し、それは、これらの器具の本質的な限界である。
【0006】
超解像技術は、顕微鏡法、分光法又は顕微分光法に適用されるかどうかにかかわらず、波長より優れた空間解像度で情報を取得するために回折限界を回避することを可能にする。
【0007】
これまで、赤外線における解像限界を回避するために、走査可能な局所プローブとして原子間力顕微鏡(AFM)チップを用いた走査型近接場光学顕微鏡(SNOM)を用いることが必要であり、プローブは、サンプルの表面に接して配置される。これは、AFMによって測定されたトポグラフィの解像度に近い解像度で赤外線において測定を行うことを可能にする。例えば、刊行物F Huth,M Schnell,J Wittborn,N Ocelic,&R Hillenbrand,“Infrared-spectroscopic nanoimaging with a thermal source”,NATURE MATERIALS Vol.10,352(2011)は、サンプルの表面に接するAFMチップによって散乱された外部熱源の放射を用いるかかる装置を提示している。刊行物AC Jones,MB Raschke,“Thermal Infrared Near-Field Spectroscopy”,NANO LETTERS,Vol.12,1475-1481(2012)は、サンプルの熱放出を局所的に増加させ、且つ前記放出を赤外線顕微分光装置の方へ散乱させる加熱AFMチップを用いる機器を提示している。
【0008】
かかる顕微鏡は、効果的であるが、高価であり、且つ外部源を用いて励起された電磁界を散乱させることができるように、研究されるサンプルの表面に接して走査可能な局所プローブを配置することを必要とする。
【0009】
IR-AFMと呼ばれるSNOMの代替方法は、AFMチップに対して熱機械効果を用いることを含む。この場合、赤外線放射は、サンプルによって吸収され、結果として生じる熱膨張は、サンプルの表面に接して配置されたカンチレバーAFMチップの振動の振幅を介して測定される。それは、ここでもまたサンプルとの接触を要求し、変調された赤外線源を用いることを要求し、且つまた非常に高価である技術の問題である。
【0010】
例えば、文献米国特許第4947034号明細書、米国特許出願公開第20050259252号明細書、米国特許第7977636号明細書及び国際公開第2008143817号パンフレットにおいて、又は実際に刊行物A Dazzi,CB Prater,Q Hu,DB Chase,et al.,“AFM-IR:Combining Atomic Force Microscopy and Infrared Spectroscopy for Nanoscale Chemical Characterization”,APPLIED SPECTROSCOPY Vol.66,1365-1384(2012)において説明されているようなSNOM及びIR-AFMは、非常に高価である。なぜなら、それらは、スペクトルが赤外線において広いAFM及び外部源を必要とするからである。
【0011】
更に、それらは、実施するのが難しく、且つサンプル表面の検査に制限される接触法である。
【0012】
例えば、米国特許第8873140号明細書及び米国特許第5093580号明細書に説明されているようないわゆるATR方法(ATRは、減衰全反射を表す)も知られている。赤外顕微鏡法において、ATRセルに接してサンプルを配置することにより、顕微鏡の解像度を向上させることが可能である。SNOM及びIR-AFM方法におけるように、サンプルとの接触を要求する欠点とは別に、解像度における向上は、ATRセルの屈折率nの値によって制限され、ATRセルは、一般にゲルマニウム(n=4)又はシリコン(n=3.4)で作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第4947034号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0259252号明細書
【文献】米国特許第7977636号明細書
【文献】国際公開第2008/143817号
【文献】米国特許第8873140号明細書
【文献】米国特許第5093580号明細書
【非特許文献】
【0014】
【文献】Peter R.Griffiths and James A.De Haseth,Fourier Transform Infrared Spectrometry(John Wiley and Sons,Hoboken,New Jersey,2007),2nd ed
【文献】F Huth,M Schnell,J Wittborn,N Ocelic,&R Hillenbrand,“Infrared-spectroscopic nanoimaging with a thermal source”,NATURE MATERIALS Vol.10,352(2011)
【文献】AC Jones,MB Raschke,“Thermal Infrared Near-Field Spectroscopy”,NANO LETTERS,Vol.12,1475-1481(2012)
【文献】A Dazzi,CB Prater,Q Hu,DB Chase,et al.,“AFM-IR:Combining Atomic Force Microscopy and Infrared Spectroscopy for Nanoscale Chemical Characterization”,APPLIED SPECTROSCOPY Vol.66,1365-1384(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、これらの制約を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これに関連して、より正確には、本発明の第1の主題は、赤外線検出装置であって、
- 少なくとも1のホットスポット(21)のセットによって放出された波長(L_F2)の熱放射を表す信号(S1)を放出するように構成された赤外線検出器(50)、
- 好ましくはUV又は可視波長の窓において、波長(L_F2)より短い波長(L_F1)の入射ビーム(F1)を放出するように構成された光源(10)、
- 前記入射ビーム(F1)を集束させるための装置(11)であって、前記入射ビーム(F1)の集束は、少なくとも1つの焦点のセットを生成し、各焦点は、検出された赤外線熱放射の波長(L_F2)のサイズより小さいサイズを有し、各焦点は、前記焦点がホルダ又はサンプル上に位置する場合にそれぞれのホットスポット(21)を生成することができ、及び前記ホルダ又は前記サンプルにわたるホットスポット(21)の拡散速度は、既知である、装置(11)、
- 少なくとも1の赤外線検出器(50)に接続された処理モジュール(60)、
- 前記光源(10)、前記赤外線検出器(50)及び前記処理モジュール(60)のうちの少なくとも1つに接続された同期化装置(70)
を含み、
- 同期化装置(70)は、同期信号(SYNC)を放出するように構成され、
- 赤外線検出器(50)又は処理モジュールは、前記同期信号(SYNC)及びホットスポットの拡散速度に依存してプリセットされる時間窓(FT)において信号(S1)を測定するように構成される、赤外線検出装置である。
【0017】
それは、処理モジュール(60)が時間窓(FT)において信号(S1)を測定するように構成され、ホットスポット(21)の拡散速度の値を掛けられた時間窓(FT)の値が、前記ホットスポット(21)によって放出された熱放射の赤外線波長(L_F2)の値より低いことを本質的に特徴とする。
【0018】
信号(S1)は、電気信号又は光信号であり得る。
【0019】
同期化装置(70)、光源(10)、赤外線検出器(50)及び処理モジュール(60)間の接続は、電気的及び/又は光学的、例えば高速フォトダイオードであり得る。
【0020】
一実施形態において、処理モジュール(60)は、時間窓(FT)において信号(S1)を測定するように構成され、ホットスポット(21)の拡散速度の値を掛けられた時間窓(FT)の値は、前記ホットスポット(21)によって放出された熱放射の赤外線波長(L_F2)の値より低い。
【0021】
この特徴により、このように生成された1つ又は複数のホットスポットのサイズは、熱放射の赤外線波長(L_F2)より小さい。
【0022】
好ましくは、少なくとも1のホットスポット(21)のセットによって放出された熱放射の波長(L_F2)は、中赤外線(3マイクロメートル~50マイクロメートル)及び遠赤外線(50マイクロメートル~1000マイクロメートル)に含まれる。
【0023】
試験は、7~12マイクロメートルに含まれるスペクトル範囲の検出器で実行された。
【0024】
一実施形態において、
- 光源(10)は、パルス源であって、それが作動される場合に少なくとも1つのパルスの列を放出するように構成されたパルス源であり、及び
- 同期信号(SYNC)は、前記少なくとも1つのパルスの列に依存して放出される。
【0025】
好ましくは、処理モジュールは、ホットスポットの広がりが、検出される熱放射の赤外線波長より小さいような時間の長さのために、少なくとも1つのパルスの列の直後に赤外線検出器(50)に達する熱放射に対応する信号(S1)をサンプリングするように構成される。
【0026】
一実施形態において、
- 光源(10)は、変調周波数(Fmod)で時間変調される連続波又はパルス光源であり、
- 赤外線検出装置は、変調周波数(Fmod)又はこの周波数の高調波において赤外線検出器(50)から出力された信号(S1)を復調するように構成された復調器を更に含む。
【0027】
一実施形態において、赤外線検出器(50)は、
- 単一チャネル赤外線検出器又は赤外線イメージャ(51)、及び
- 赤外線分光計(52)
のうちの少なくとも1つを含む。
【0028】
「赤外線イメージャ」によって意味されるものは、赤外線検出器のマトリックスアレイによって典型的に形成されたマルチチャネル赤外線検出器である。マルチチャネル検出器を用いて、ホットスポットの超局所化を達成することが可能である。即ち、ホットスポットは、赤外線イメージャの複数の画素によってサンプリングされ得る回折限界エアリーディスクを生成する。従って、ディスクの中心は、光活性化局在性顕微鏡法(PALM)において知られているように、このディスクのプロファイルに二次元ガウス関数を適合させることにより、赤外線波長より優れた精度で決定され得る。
【0029】
ホットスポット(21)の熱放射(F2)を収集し、且つ前記赤外線検出器(50)に熱放射(F2)を転送するように構成された光学対物レンズ(40)が更に提供され得る。
【0030】
処理モジュール(60)は、時間窓(FT)において信号(S1)を測定するように構成され、ホットスポット(21)の拡散速度の値を掛けられた時間窓(FT)の値は、前記ホットスポット(21)によって放出された熱放射の赤外線波長(L_F2)の値より低いようになされ得る。
【0031】
サンプルホルダ(30)が更に提供され得、装置は、以下の構成:
- 光源(10)及び赤外線検出器(50)がホルダ(30)の同じ側に配置される反射構成、及び
- 光源(10)及び赤外線検出器(50)がホルダ(30)の両側に配置される透過構成
のいずれか1つを場合により採用する。
【0032】
- ビーム(F1)の焦点及びサンプルホルダ(30)の相対的位置を修正するように構成された走査装置
が更に提供され得る。
【0033】
サンプル(20)が更に提供され得、前記サンプルは、マイクロ流体細胞のマイクロ流体チャネル(23)に任意選択的に含まれ、前記マイクロ流体細胞は、入射ビーム(F1)の励起波長(L_F1)において透明な外層(22)と、熱放射(F2)の波長(L_F2)において透明な内層(24)とを含む。
【0034】
本発明の別の主題によれば、本発明は、本発明に従う装置を使用することができる赤外線検出方法であって、
- ホルダ(30)上にサンプル(20)を配置するステップと、
- 光源(10)を作動させるステップと、
- 前記サンプル(20)又は前記ホルダ(30)によって放出された熱放射(F2)の局所的な増加を発生させるために、少なくとも1つの焦点ゾーン(21)のセット内に光源(10)のビーム(F1)を集束させるステップであって、少なくとも1つの焦点ゾーン(21)の位置は、前記サンプル(20)内、前記サンプルの表面上又は前記サンプル(20)と前記ホルダ(30)との間の界面にプリセットされ、且つ含まれる、ステップと、
- 赤外線検出器(50)であって、
- 単一チャネル赤外線検出器又は赤外線イメージャ(51)、及び
- 赤外線分光計(52)
のうちの少なくとも1つを含む赤外線検出器(50)と組み合わされる光学対物レンズ(40)において、前記セットの各焦点ゾーン(21)によって放出された前記熱放射(F2)を収集するステップと、
- 前記赤外線検出器(50)によって検出された熱放射(F2)を表す出力信号(S1)を生成するステップと、
- 前記赤外線検出器(50)及び前記光源(10)を同期させるステップと、
- 光源(10)の作動後にプリセット時間を開始するプリセット時間窓(FT)において出力信号(S1)を測定するステップと
を含む赤外線検出方法に関する。
【0035】
方法は、
- 変調周波数(Fmod)で前記連続波又はパルス光源(10)を時間変調するステップと、
- 赤外線検出装置の復調器を用いて、変調周波数(Fmod)又はその高調波の1つにおいて赤外線検出器(50)から出力された信号(S1)を復調するステップと
を含み、好ましくは、
- 光源(10)がパルス源である場合、光源(10)は、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのセットを含むパルス列を生成するように構成され、赤外線検出器(50)を作動させるステップは、従って、遅くともパルス列の最後の立ち下がりエッジで赤外線検出器(50)を作動させることを含むように更になされ得る。
【0036】
光源(10)がパルス光源である場合、時間窓の代わりに同期検出技術を用いて信号(S1)の復調を適用するようにすることも可能である。
【0037】
以下の動作:
- 光源(10)の作動後のプリセット時間に開始するプリセット時間窓(FT)において赤外線検出器(50)を作動させることと、
- 赤外線検出器(50)をアクティブに保持し、且つ光源(10)の作動後のプリセット時間に開始するプリセット時間窓(FT)において生成される出力信号(S1)の部分のみをサンプリングすることと
の1つを含むように、プリセット時間窓(FT)において出力信号(S1)を測定することを含むステップが提供され得る。
【0038】
光源(10)が、立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジのセットを含むパルス列を生成するように構成されたパルス源である場合、赤外線検出器(50)を作動させるステップは、遅くともパルス列の最後の立ち下がりエッジにおいて赤外線検出器(50)を作動させることを含むようになされ得る。
【0039】
検出器が常にアクティブである場合、プリセット時間窓(FT)において出力信号(S1)をサンプリングするステップは、遅くともパルス列の最後の立ち下がりエッジにおいて開始する。
【0040】
本発明により、ホットスポットであって、その赤外線熱放射(それが放出する波長(L_F2)より小さいサイズのゾーンに極めて局所化される)が測定される、ホットスポットを生成するために、短波長(L_F1)のパルス又は変調光源を用いることが可能である。従って、それは、この点で先行技術の解決法と異なる非接触の解決法である。
【0041】
更に、本発明は、サンプルの表面の赤外線特性を精査することだけでなく、サンプルの表面下で精査することも可能にし、これは、SNOMプローブでは可能でない。
【0042】
本発明は、サンプル上に生成された(L_F2)より小さいサイズのホットスポットから放出された赤外線熱放射を利用し得る。従って、サンプルは、赤外線自体の源であり、従って、本発明は、外部赤外線源を必要としない。同様に、本発明は、サンプルの下で生成されたホットスポットから放出された赤外線熱放射を利用し得る。この場合、ホルダは、赤外線源であり、従って再び、本発明は、外部赤外線源を必要としない。
【0043】
更に、サンプルによって生成された赤外線放射は、広いスペクトルを有し、且つサンプルの特徴付けに対して興味深い全ての光周波数を本来包含し、これは、外部赤外線源を必要とするSNOMプローブに対して非常に有利であり、外部赤外線源は、提供されるサンプルの興味のある光周波数と重なっている。
【0044】
本発明は、超解像撮像を可能にする。即ち、その空間解像度の撮像は、測定される熱放射(L_F2)の波長より優れている。この場合、時間窓を調整することにより、解像度を焦点のサイズと等しくすることが可能である。
【0045】
更に、本発明は、超解像顕微鏡法の概念をより長い波長(中赤外線、テラヘルツ周波数)に一般化することを可能にし、且つ検出される信号がサンプル自体の赤外線熱放射から到来するためにマーカなしに機能する。これは、可視及び近赤外線スペクトル領域に更に制限される超解像蛍光顕微鏡法技術から本発明を区別する。
【0046】
本発明は、非常に安価であり、且つそれが非接触の技術であるため、サンプルの表面下を精査することを可能にする。
【0047】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明を読むことでより明確に明らかになるであろう。以下の説明は、添付の図に関連して実例及び非限定的な例として与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明による装置の一実施形態を示す。
図2】本発明による装置の反射構成を示す。
図3】本発明による装置の透過構成を示す。
図4】本発明による装置の反射構成を示す。
図5】本発明による装置の透過構成を示す。
図6】本発明によって取得された、この場合には13マイクロメートルの厚さのガラス繊維の超解像赤外線画像を挿入面に含む従来の赤外顕微鏡法画像を示す。
図7】赤外線信号F2の強度の傾斜曲線を時間の関数として示す。
図8A】本発明による分光計により、ガラスサンプル上で取得された赤外線スペクトルを示す。
図8B】本発明による分光計により、PDMSサンプル上で取得された赤外線スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本発明による装置の一実施形態を示す。
【0050】
装置は、光源10を含み、光源10は、入射光F1の励起ビームを生成するように構成され、入射光F1は、信号F1とも呼ばれる。
【0051】
光源10は、時間変調光源又はパルス光源である。例えば、入射光ビームF1は、レーザビームであり、光源10は、可視スペクトルで放出するレーザである。簡潔にするために、「パルス」によって意味されるものは、単一パルス又はパルス列である。
【0052】
光ビームF1は、好ましくは、短波長である。典型的には、波長は、可視窓又はUV窓に含まれる。典型的には、以下で説明されるように、ビームF1の波長L_F1は、サンプルの熱放射F2の波長L_F2よりはるかに短いようになされる。「はるかに短い」によって意味されるものは、ビームF1の波長L_F1と熱放射の波長L_F2との間の比率がプリセット閾値より低いことである。典型的には、閾値は、10以上である。
【0053】
本発明に関連して、簡潔にするために、「その」波長L_F2によって意味されるものは、ホットスポット21によって放出された熱放射スペクトルの平均波長である。
【0054】
好ましくは、L_F2は、中赤外線を超え、即ち2.5μmより長い。
【0055】
サンプル20は、例えば、ホルダ30、典型的には顕微鏡(図示せず)のホルダ30に配置される。
【0056】
サンプル20は、好ましくは、ほぼ一定の温度、典型的には室温の環境に配置される。光源10が作動されない場合、この場合のサンプル20の内部熱は、信号F2とも呼ばれる熱放射F2を生成し、その強度は、ほぼ一定である。
【0057】
光源10がアクティブである場合、入射ビームF1は、例えば、光源10に任意選択的に統合される、光学対物レンズなど、入射ビーム11を光学的に集束させるための装置により、サンプル20の焦点ゾーン、その外面若しくは内面又はその内部に集束される。
【0058】
ビームF1を焦点ゾーンに集束させることが可能であり、焦点ゾーンの相当直径は、ビームF2又は信号F2とも呼ばれる熱放射F2の波長L_F2より小さい。この場合、焦点ゾーンの相当直径は、約1マイクロメートルであり、波長L_F2は、約10マイクロメートルである。
【0059】
サンプル上に入射ビームF1を集束させることは、吸収によってサンプルの温度に局所的な上昇を発生させる。
【0060】
所与の強度のビームF1に関し、焦点ゾーンが小さいほど、温度の局所的上昇がそれだけ大きい。
【0061】
前記サンプルが入射ビームF1の波長において吸収性であり、従ってホットスポット21を画定するのであれば、ビームF1の影響下において、焦点ゾーンの局所温度は、上昇し且つサンプルの残りの温度より高くなる。
【0062】
ホットスポット21は、単数であり得る。対応する単一の焦点は、幅の広い励起レーザビームにレンズを通過させることによって典型的に達成される。
【0063】
例えば、ホットスポットセットを同時に生成し、且つ例えばマルチチャネル検出器により、熱放射の検出を並行して実行することが可能であり、これは、信号F2の測定を並行して実行し、且つ分析時間を低減することを可能にする。
【0064】
複数のホットスポットは、幅の広い励起レーザビームに複数のマイクロレンズを通過させることによって多重化され得る。この原理は、いわゆるSDCLM(スピニングディスク共焦点レーザ顕微鏡法)方法を用いる共焦点蛍光顕微鏡法において用いられ、且つ例えばアドレスhttp://www.andor.com/learning-academy/spinning-disk-confocal-a-technical-overviewで説明されている。この場合、サンプルの表面を走査する単一のレーザスポットを用いる代わりに、複数のスポットは、マイクロレンズを設けられた回転ディスクを使用することによって同時に走査し、レーザは、マイクロレンズセットを同時に照射する。
【0065】
次に、前記ホットスポット21の周りのサンプルにおける温度の局所的な上昇は、サンプルにおける赤外線の熱放射F2の増加をもたらし、前記増加の大きさは、前記ホットスポットの周りで発生し、サンプルの熱放射における局所的な増加に対応する。
【0066】
ホットスポット21の位置は、既知であり、その空間範囲は、少なくとも入射ビームF1の焦点ゾーンに対応する。
【0067】
経時的に、入射ビームF1のパルス後、熱は、ホットスポット21の周りのサンプル20を通って拡散し、従って広がる傾向がある。
【0068】
それ自体知られている光学対物レンズ40は、ホットスポット21から熱放射F2を収集し、次に前記ビームF2を少なくとも1つの赤外線検出器50、この場合、少なくとも、
- 単一チャネル赤外線検出器又は赤外線イメージャ51、及び
- 赤外線分光計52
のうちの1つに導く。
【0069】
次に、赤外線検出器50は、出力信号S1を生成し、出力信号S1は、熱放射F2を表し、且つ処理モジュール60に送信される。
【0070】
処理モジュール60は、この場合、入射ビームF1の各パルスに基づき、光源10によって処理モジュール60に送信された電気パルスによって光源10と同期される。
【0071】
しかしながら、特に光源10が連続波源である場合、サンプル20に又はサンプル上に発生する熱拡散効果のリスクが存在する。従って、いずれかのサンプルに固有の熱拡散定数のために、光源10を集束させることによって生成されたホットスポットは、時間と共により大きくなる傾向がある。
【0072】
時間窓処理
この効果を回避又は少なくとも制限するために、ボックスカー積分としても知られている時間窓処理又は時間的選択を実行するようになされ、時間窓処理又は時間的選択は、赤外線検出器50を作動させること、又は光源10の作動後にプリセット時間を開始するプリセット時間窓FTにおいて、赤外線検出器50が生成する信号(S1)を選択することを含む。
【0073】
赤外線検出器50の作動期間、又は「窓幅」とも呼ばれる、赤外線検出器50が生成する信号S1の選択期間に対応する熱放射F2の測定期間は、光学空間解像度を修正することを可能にする。
【0074】
サンプルにおける熱拡散のために、窓が広いほど、空間解像度は、それだけ貧弱になり、これは、サンプルの細かい詳細を観察する能力を減少させる。同様に、時間窓FTの初期化と光源10の作動との間の時間が長いほど、空間解像度は、それだけ貧弱になる。従って、結果を最適化するために、光源の作動後にできるだけ早く時間窓FTを初期化するか又は作動させること、及び窓幅を制限することが有利であり、これらの動作のそれぞれは、熱拡散の影響を制限することを可能にする。
【0075】
好ましくは、時間窓FTは、遅くとも光源10、この場合にはパルス光源10の作動の終了時、遅くともパルス列の最後の立ち下がりエッジにおいて初期化される。
【0076】
好ましくは、窓幅は、サンプルの熱拡散定数に隷属する。特に、窓幅は、好ましくは、サンプルの熱拡散定数に反比例する。
【0077】
この場合、光源10及び赤外線検出器50又は処理モジュール60を同期させる装置70が提供される。同期化装置70は、処理モジュール60に統合され得る。
【0078】
一実施形態において、光源10は、空間(ホットスポット21)及び時間(パルス)において高度に局所化される加熱パルスを生成するパルス源である。
【0079】
例えば、光源10は、1kHzの最大繰り返し率で1ナノ秒毎にパルスを生成するUVレーザ源である。
【0080】
好ましくは、ホットスポットの熱放射F2は、光源10の加熱パルスが放出された直後に収集される。「直後」によって意味されるものは、遅くとも加熱パルスが放出された後、即ち光源が作動された後のプリセット時間である。
【0081】
従って、熱拡散効果は、極端に制限され、熱放射を実際に放出するサンプルのゾーンは、ホットスポット21にほぼ対応する。
【0082】
例えば、赤外線検出器50は、検出窓FTにおいて作動され、検出窓FTの期間は、プリセットされ、検出窓FTの時間的位置は、加熱パルスの端部に隷属する。典型的には、検出窓FTは、遅くとも加熱パルス列の最後の立ち下がりエッジ後に作動され、窓幅は、サンプルの性質に依存する。
【0083】
一実施形態において、光源10は、連続波源であり、その強度は、変調周波数Fmod、好ましくは高周波において例えば正弦関数によって時間変調される。好ましくは、変調周波数Fmodは、熱拡散長さLDTがホットスポット21のサイズにほぼ対応する周波数f以上であり、ここで、
LDT=√(DT/π.f)
であり、ここで、DTは、熱拡散率である。
【0084】
信号F1の変調により、ホットスポットから出力された信号F2は、それ自体また同じ変調周波数Fmod又はその高調波の1つで変調される。この場合、信号F1の変調は、音響光学変調器を用いて行われ得る。
【0085】
次に、同期検出技術を用いてホットスポットの熱放射を検出するようになされる。即ち、変調周波数Fmod又はその高調波の1つで赤外線検出器50を用いて赤外線信号F2を捕捉するようになされる。特に、この場合、熱拡散によるホットスポットの空間範囲と変調周波数との間の関係が存在する。
【0086】
赤外線検出器50によって出力された場合、次に、信号S1は、典型的には復調器(図示せず)によって復調され得る。復調器は、処理モジュール60に統合され得る。この場合、復調器は、ロックイン増幅器を含む。
【0087】
従って、上記の実施形態のいずれか1つにおいて、信号F2は、時間領域又は周波数領域において検出され得る。
【0088】
走査
ホットスポットのプリセット数に従って、ポイント毎にサンプルを走査し、且つ各ポイントで信号F2の強度を測定するようになされ得る。
【0089】
走査は、ビームF1の焦点及びサンプル又はそのホルダのいずれかの相対的位置を修正することによって実行される。例えば、ビームF1の焦点の位置を修正し、サンプル(若しくはそのホルダ)の位置が不変のままであること、又はサンプル(若しくはそのホルダ)の位置を修正し、ビームF1の焦点の位置が不変のままであることが可能である。
【0090】
従って、時間窓によって決定された解像度でポイント毎にサンプルの赤外線熱放射の画像を取得することが可能である。
【0091】
信号F2は、赤外線分光計52、例えばフーリエ変換赤外線分光計の入力部にも伝送され得る。
【0092】
赤外線撮像及び赤外線分光法は、組み合わせ可能である。
【0093】
例えば、走査によってサンプルの赤外線画像を生成し、次に前記赤外線画像において、位置が既知であり且つ興味深い少なくとも1つのホットスポットのセットを選択するように最初になされ得る。赤外線画像のこの分析により、次に少なくとも1つの選択されたホットスポットのための前記サンプルの分光分析を実行することが可能である。
【0094】
有利には、走査によってサンプルの赤外線画像をポイント毎に同時に生成すること、及び各ホットスポットの赤外線分光分析を実行することも可能であり、これは、前記サンプルの非常に豊かな赤外線分析を取得することを可能にする。なぜなら、各ホットスポットのために、前記ホットスポットの熱画像と、別の次元で前記ホットスポットのために検出された信号F2のエネルギ(波長)依存性との両方が得られるからである。
【0095】
本解決法は、2つの構成を有し得、その2つの構成は、以下で説明される。第1又は第2構成がどのようなものであっても、以下の3つの変形形態の1つが提供され得る。
【0096】
図2に示されている第1の変形形態として、ビームF1の焦点は、サンプルの外面に置かれる。この種の構成は、本明細書で提案される解決法がサンプルに対して非接触であること以外にはSNOMプローブの原理に近い。
【0097】
図3及び図5に示されている第2の変形形態として、ビームF1の焦点は、サンプルの内部に置かれる。
【0098】
図4に示されている第3の変形形態として、ビームF1の焦点は、サンプルの内面に置かれる。
【0099】
図2及び図4に示されている、反射構成と呼ばれる第1の構成において、光源10及び赤外線検出器50は、サンプルの同じ側、この場合にはサンプル20の外側EXTに配置され、内側INTは、例えば、ホルダと接触するようになされる。
【0100】
図2において、サンプル20は、入射ビームF1の波長L_Fにおいて吸収性である。サンプル20は、赤外線F2の源である。
【0101】
図4において、サンプル20は、入射ビームF1の波長L_F1において透明であり、ホルダ30(又は基板)は、入射ビームF1の波長L_F1において吸収性である。この場合、ホルダ30は、赤外線F2の源であり、この放射は、サンプル20によって部分的に吸収される。好ましくは、サンプルは、ホルダ30に配置され、その結果、それらは、互いに接触する。サンプル20は、ホルダ30によって生成された赤外線熱波長において吸収性であり、赤外線熱波長は、赤外線検出器50によって検出される。ホルダ30によって放出され、且つサンプル20によって部分的に吸収される赤外線スペクトルを直接検出するようになされ得る。サンプルが存在する状態で赤外線検出器50によって行われる検出と、前記サンプルが存在しない状態で赤外線検出器50によって行われる検出との間の差動検出を実行するようにもなされ得る。
【0102】
図3及び図5に示されている、透過構成と呼ばれる第2の構成において、光源10及び赤外線検出器50は、サンプルの両側に配置されるようになされる。
【0103】
この場合、サンプルと光源との間の界面は、入射ビームの励起波長L_F1に対して透明であり、サンプルと赤外線検出器50との間の界面は、熱放射の波長L_F2において透明である。この種の構成は、サンプルが層によって覆われなければならない場合に有利であり得る。特に、反射構成において、サンプルを覆うために用いられる層22の材料は、励起波長L_F1に対して透明であると共に熱放射L_F2の波長に対して透明でなければならない。対照的に、透過構成において、2つの異なる界面を達成することが可能であり、各界面は、1つのそれぞれの波長に対して透明である。
【0104】
この構成は、有利には、サンプルの表面下画像を生成することを可能にし、これは、SNOMプローブでは不可能である。
【0105】
図5は、励起波長L_F1に対して透明な外層22を含むマイクロ流体細胞と、例えば生物細胞25を含むマイクロ流体チャネル23と、熱放射の波長L_F2に対して透明な内層24との形式をとるサンプル20を示す。
【0106】
この場合、ビームF1は、マイクロ流体チャネルの細胞25に集束される。マイクロ流体細胞は、ホットスポット21を生成するために、可視又はUVで一方の側(外側EXT)から照射され、且つ反対側(内側INT)、即ちそれを通って、放出された熱放射F2が検出される反対側(内側INT)で、IRにおいて透明な基板24に配置される。
【0107】
構成のいずれが選択されるかは、例えばサンプルの性質、特に2つの波長L_F1及びL_F2におけるその吸収性に依存する。
【実施例
【0108】
実験結果
試験は、本出願人によって実行され、図6~8に示されている。
【0109】
図7は、t=0で、サンプル、この場合にはガラス繊維への熱パルスの印加後の、時間tの関数としての赤外線信号F2の強度の傾斜曲線を示す。パルスの影響下において、サンプルの局所温度は、最大へと非常に急速に上昇し、次にサンプルを通した熱拡散に依存する低下曲線で低下し、熱拡散は、サンプルの性質及びそのジオメトリと関係がある。従って、光源10のパルスで始まる時間窓F2を設けることが好ましく、これは、信号F2の強度ピークが検出されることを保証する。
【0110】
好ましくは、プリセット期間、例えば遅くとも熱拡散長さが入射ビームF1の焦点のサイズである値に時間窓の期間を制限するようになされ、これは、サンプルを通した熱拡散の影響を制限すること、及び従って熱波長L_F2より小さい熱放射源の範囲を保持し、且つよりよい信号対雑音比を取得するために熱放射源の範囲を制限することを可能にする。
【0111】
これらの特徴により、図6に示されているように、赤外線イメージャを用いて、いわゆる超解像画像を取得することが可能である。
【0112】
図6は、従来の赤外顕微鏡法画像及び挿入面(図6の上部のフレームの)におけるガラス繊維の超解像赤外線画像を比較する。この場合、時間窓は、加熱パルス後の50μsであり、ガラス繊維は、13マイクロメートルの厚さであった。図6の挿入面の画像の各ポイントは、位置の関数として、時間窓FTにわたって平均された赤外線信号F2の強度値である。
【0113】
図8A及び図8Bは、ガラスサンプル及びポリジメチルシロキサン(PDMS)サンプルに関して取得された赤外線スペクトルをそれぞれ示し、前記スペクトルは、本発明による分光計によって取得される。
【0114】
本発明は、熱波長L_F2より小さいスケールにおける赤外線光学特性の非接触の特徴付けを可能にする。
【0115】
上記のように、光源10は、電子同期化装置70及び処理モジュール60のうちの少なくとも1つと組み合わされ、これは、使用される赤外線検出器から出力された信号S1に影響を及ぼすことを可能にする。これは、信号F2に寄与する、サンプルのホットスポットの周りの熱スポットの拡散を制限することを可能にする。従って、この放射の特性波長L_F2より小さいサイズのゾーンから到来する、サンプルからの赤外線熱放射が検出される。このゾーンは、超解像赤外線撮像及び分光測定を行うためにサンプルの表面にわたって走査され得る。
【0116】
同期化は、この場合には処理モジュール60により、リアルタイム又は後処理で実行され得、これは、光源10の作動とは無関係に赤外線検出器50を作動させることを可能にする。
【0117】
更に、サンプルの表面において、近接場熱放射の局所散乱体の役割を果たすナノ粒子を堆積するようにもなされ得る。
【0118】
上記で分かるように、サンプルは、サブ波長サイズのホットスポット21を生成できるように、波長L_F1が、検出される熱放射L_F2より短いスペクトル領域において吸収しなければならない。そうでなければ、サンプルを基板に配置し、且つこの基板とサンプルとの間の界面にホットスポットを形成することが可能である。例えば、サンプルが単純なガラススライドに配置される場合、UVレーザビームとの界面でホットスポットを生成することが可能である。なぜなら、UVレーザビームは、ガラスによって一層多く吸収されるからである。
【0119】
本発明は、サンプルの表面にわたって走査され得る簡潔で(又は変調された)ポイント状の熱パルスに続いて、動的領域における伝熱を特に非接触で研究するために赤外線サーモグラフィにおいて実施され得る。ホットスポットに関して赤外線検出器を走査することにより、熱パルス後の様々な時点で熱の広がりを撮像すること、及び従って例えば熱伝導率における局所的差異の地図を取得することも可能である。
【0120】
伝熱異常は、構造における欠陥を非破壊的に検出することを可能にし、これは、場合により生物組織、重合体、複合材料などのサンプルのために有用である。
【符号の説明】
【0121】
F1 励起波長L_F1の入射ビーム
F2 ホットスポットにおける波長L_F2の熱放射
S1 赤外線検出器から出力された信号
10 光源
11 入射ビームを光学的に集束させるための装置
20 サンプル
21 ホットスポット
22 励起波長L_F1に対して透明な層
23 マイクロ流体チャネル
24 波長L_F2に対して透明な界面
25 生物細胞
30 サンプルホルダ
40 サンプルの熱放射を収集するための光学装置(光学対物レンズ)
50 赤外線検出器
51 赤外線イメージャ
52 赤外線分光計
60 処理モジュール
70 同期化装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B