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特許7248578抗体-薬物コンジュゲートの新規製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】抗体-薬物コンジュゲートの新規製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/12 20060101AFI20230322BHJP
   C07C 233/33 20060101ALI20230322BHJP
   C07C 233/32 20060101ALI20230322BHJP
   C07D 491/22 20060101ALI20230322BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230322BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230322BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230322BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230322BHJP
   C07K 5/103 20060101ALN20230322BHJP
【FI】
C07C231/12
C07C233/33
C07C233/32
C07D491/22
A61K31/4745
A61K47/68
A61P35/00
C07K16/28 ZNA
C07K5/103
【請求項の数】 65
(21)【出願番号】P 2019539604
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2018032055
(87)【国際公開番号】W WO2019044946
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2017167690
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】仁士 良雄
(72)【発明者】
【氏名】坂西 航平
(72)【発明者】
【氏名】野口 滋
(72)【発明者】
【氏名】武田 斉大
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-527420(JP,A)
【文献】特開平06-087746(JP,A)
【文献】特開平05-059061(JP,A)
【文献】米国特許第05849945(US,A)
【文献】REGISTRY(STN)[online],2016年06月21日,[検索日 2022.08.29], CAS登録番 号 1936451-40-9
【文献】GREENE,T.W. et al.,PROTECTIVE GROUP IN ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION,JOHN WILLEY & SONS, INC,1999年,p.552-555
【文献】BIGGS,D.F. et al.,Journal of Medicinal Chemistry,1976年,Vol.19, No.4,p.472-475
【文献】J.Med.Chem.,1998年,Vol.41,pp.2308-2318
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(B)
【化1】
で表される化合物(ここで、Rは、保護基で保護されたアミノ基を示す)を、分子内環化することにより、
式(C)
【化2】
で表される化合物(ここで、Rは、前記と同意義を示す)へ変換する工程を含む、式(C)で表される化合物の製造方法。
【請求項2】
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
がアセチル基で保護されたアミノ基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
分子内環化が、式(B)で表される化合物を無水トリフルオロ酢酸と反応させることを含む方法により行われる、請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
分子内環化が、トリフルオロ酢酸を含む溶媒中で行われる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
分子内環化が、式(B)で表される化合物を塩化チオニルと反応させることを含む方法により行われる、請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
分子内環化が、塩化アルミニウムの存在下で行われる、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
式(J)
【化3】
で表される化合物(ここで、Yは脱離基を示し、Rは、保護基で保護されたアミノ基を示す)を、分子内環化することにより、
式(C)
【化4】
で表される化合物(ここで、Rは、前記と同意義を示す)へ変換する工程を含む、式(C)で表される化合物の製造方法。
【請求項10】
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
がアセチル基で保護されたアミノ基である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
Yがクロロ基である、請求項9から12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
Yがトリフルオロアセトキシ基である、請求項9から12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
分子内環化が、塩化アルミニウムの存在下で行われる、請求項13に記載の製造方法。
【請求項16】
分子内環化が、トリフルオロ酢酸を含む溶媒中で行われる、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
式(D)
【化5】
で表される化合物(ここで、Xは脱離基を示し、Rは保護基で保護されたアミノ基を示す)と、3-ブテン酸を、カップリングし、
式(E)
【化6】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程、次いで、式(E)で表される化合物を還元し、
式(B)
【化7】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程、次いで、式(B)で表される化合物を分子内環化し、
式(C)
【化8】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程、
を含む、式(C)で表される化合物の製造方法。
【請求項18】
Xがブロモ基、ヨード基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、又はアリールスルホニルオキシ基である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
Xがブロモ基である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項20】
Xがヨード基である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項21】
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、請求項17から20のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、請求項17から20のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項23】
がアセチル基で保護されたアミノ基である、請求項17から20のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項24】
式(D)で表される化合物と3-ブテン酸をカップリングし、式(E)で表される化合物へ変換する工程が、酢酸パラジウム(II)とトリ(o-トリル)ホスフィンから調製されるパラジウム錯体の存在下にて行われる、請求項17から23のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項25】
式(E)で表される化合物を塩基性水溶液に溶解し、第一の有機溶媒により分液洗浄する工程、次いで、塩基性水溶液に酸を加え、第二の有機溶媒により式(E)で表される化合物を分液抽出する工程、を含む、請求項17から24のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項26】
第一の有機溶媒が、2-メチルテトラヒドロフランである、請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
第二の有機溶媒が、2-メチルテトラヒドロフランである、請求項25又は26に記載の製造方法。
【請求項28】
塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液である、請求項25から27のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項29】
式(E)で表される化合物を還元し、式(B)で表される化合物へ変換する工程が、式(E)で表される化合物を溶媒中、パラジウム炭素触媒の存在下で水素と反応させる方法により行われる、請求項17から28のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項30】
式(B)で表される化合物を分子内環化し、式(C)で表される化合物へ変換する工程が、式(B)で表される化合物を無水トリフルオロ酢酸と反応させることを含む方法により行われる、請求項17から29のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項31】
分子内環化が、トリフルオロ酢酸を含む溶媒中で行われる、請求項30に記載の製造方法。
【請求項32】
式(B)で表される化合物を分子内環化し、式(C)で表される化合物へ変換する工程が、式(B)で表される化合物を塩化チオニルと反応させることを含む方法により行われる、請求項17から29のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項33】
分子内環化が、塩化アルミニウムの存在下で行われる、請求項32に記載の製造方法。
【請求項34】
請求項1から33のいずれか1項に記載された方法によ
式(C)
【化9】
で表される化合物(ここで、R は、前記と同意義を示す)製造する工程次いで、
式(C)で表される化合物を、
式(F)
【化10】
で表される化合物(ここで、R前記と同意義を示し、Rは保護基で保護されたアミノ基を示す)へ変換する工程、次いで、式(F)で表される化合物を、
式(G)
【化11】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程、次いで、式(G)で表される化合物と、
式(1)
【化12】
で表される化合物を縮合し、
式(H)
【化13】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程、次いで、式(H)で表される化合物を、
式(2)
【化14】
で表される化合物へ変換する工程を含む、式(2)で表される化合物の製造方法。
【請求項35】
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、請求項34に記載の製造方法。
【請求項36】
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、請求項34に記載の製造方法。
【請求項37】
がアセチル基で保護されたアミノ基である、請求項34に記載の製造方法。
【請求項38】
式(C)で表される化合物を、式(F)で表される化合物へ変換する工程が、(i)塩基の存在下で亜硝酸エステルと反応させニトロソ基を導入するステップ、次いで、(ii)ニトロソ基由来の窒素原子に保護基を導入するステップ、及び(iii)白金炭素触媒の存在下、水素で還元するステップ、を含む、請求項34から37のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項39】
式(F)で表される化合物を、式(G)で表される化合物へ変換する工程が、塩酸/エタノールを含む溶媒中で行われる、請求項34から38のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項40】
式(G)で表される化合物と、式(1)で表される化合物を縮合し、式(H)で表される化合物へ変換する工程が、o-クレゾールを含む溶媒中で行われる、請求項34から39のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項41】
式(H)で表される化合物を、式(2)で表される化合物へ変換する工程が、メタンスルホン酸を含む溶媒中で行われる、請求項34から40のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項42】
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩である、請求項34から41のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項43】
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・m水和物(ここで、mは0~3個の範囲内である)である、請求項34から41のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項44】
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・2水和物である、請求項34から41のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項45】
式(3)
【化15】
で表される化合物を、
式(4)
【化16】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(4)で表される化合物を、
式(5)
【化17】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(5)で表される化合物を、
式(6)
【化18】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(6)で表される化合物と、3-ブテン酸をカップリングし、
式(7)
【化19】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(7)で表される化合物を、
式(8)
【化20】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(8)で表される化合物を分子内環化し、
式(9)
【化21】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(9)で表される化合物を、
式(10)
【化22】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(10)で表される化合物を、
式(11)
【化23】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(11)で表される化合物と、
式(1)
【化24】
で表される化合物を縮合し、
式(12)
【化25】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(12)で表される化合物を、
式(2)
【化26】
で表される化合物へ変換する工程を含む、式(2)で表される化合物の製造方法。
【請求項46】
式(6)で表される化合物と3-ブテン酸をカップリングし、式(7)で表される化合物へ変換する工程が、酢酸パラジウム(II)とトリ(o-トリル)ホスフィンから調製されるパラジウム錯体の存在下にて行われる、請求項45に記載の製造方法。
【請求項47】
式(7)で表される化合物を塩基性水溶液に溶解し、第一の有機溶媒により分液洗浄する工程、次いで、塩基性水溶液に酸を加え、第二の有機溶媒により式(7)で表される化合物を分液抽出する工程、を含む、請求項45又は46に記載の製造方法。
【請求項48】
第一の有機溶媒が、2-メチルテトラヒドロフランである、請求項47に記載の製造方法。
【請求項49】
第二の有機溶媒が、2-メチルテトラヒドロフランである、請求項47又は48に記載の製造方法。
【請求項50】
塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液である、請求項46から49のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項51】
式(8)で表される化合物を分子内環化し、式(9)で表される化合物へ変換する工程が、式(8)で表される化合物を無水トリフルオロ酢酸と反応させることを含む方法により行われる、請求項45から50のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項52】
分子内環化が、トリフルオロ酢酸を含む溶媒中で行われる、請求項51に記載の製造方法。
【請求項53】
式(9)で表される化合物を、式(10)で表される化合物へ変換する工程が、(i)塩基の存在下で亜硝酸エステルと反応させニトロソ基を導入するステップ、次いで、(ii)ニトロソ基由来の窒素原子に保護基を導入するステップ、及び(iii)白金炭素触媒の存在下、水素で還元するステップ、を含む、請求項45から52のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項54】
式(10)で表される化合物を、式(11)で表される化合物へ変換する工程が、塩酸/エタノールを含む溶媒中で行われる、請求項45から53のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項55】
式(11)で表される化合物と、式(1)で表される化合物を縮合し、式(12)で表される化合物へ変換する工程が、o-クレゾールを含む溶媒中で行われる、請求項45から54のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項56】
式(12)で表される化合物を、式(2)で表される化合物へ変換する工程が、メタンスルホン酸を含む溶媒中で行われる、請求項45から55のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項57】
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩である、請求項45から56のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項58】
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・m水和物(ここで、mは0~3個の範囲内である)である、請求項45から56のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項59】
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・2水和物である、請求項45から56のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項60】
クロマトグラフィーを使用しないことを特徴とする、請求項1から59のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項61】
式(7)
【化27】
で表される化合物。
【請求項62】
式(8)
【化28】
で表される化合物。
【請求項63】
請求項34から60のいずれか1項に記載された方法によ
式(2)
【化29】
で表される化合物を製造する工程次いで、
式(2)で表される化合物と、
式(13)
【化30】
で表される化合物を縮合することにより、
式(14)
【化31】
で表される化合物へ変換する工程、を含む、式(14)で表される化合物の製造方法。
【請求項64】
請求項63に記載された方法によ
式(14)
【化32】
で表される化合物を製造する工程
(i)抗体を、還元する工程、次いで、
(ii)式(14)で表される化合物を、還元された抗体と反応させる工程、
を含む、
式(15)
【化33】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートの製造方法。
【請求項65】
抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、又は抗GPR20抗体である、請求項64に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体-薬物コンジュゲートの構成要素であるエキサテカンの新規製造方法、及びこれを用いた抗体-薬物コンジュゲートの新規製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がん細胞表面に発現し、かつ細胞に内在化できる抗原に結合する抗体に、細胞毒性を有する薬物を結合させた抗体-薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Conjugate; ADC)は、がん細胞に選択的に薬物を送達できることによって、がん細胞内に薬物を蓄積させ、がん細胞を死滅させることが期待できる(非特許文献1~5)。
【0003】
抗体-薬物コンジュゲートの一つとして、抗体とトポイソメラーゼI阻害剤であるエキサテカンを構成要素とする抗体-薬物コンジュゲートが知られている(特許文献1~8、非特許文献6、7)。これらの抗体-薬物コンジュゲートは、優れた抗腫瘍効果と安全性を有することから、現在、臨床試験が進行中である。
【0004】
エキサテカンの製造方法として、特許文献9から11に記載された方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/057687号
【文献】国際公開第2014/061277号
【文献】国際公開第2015/098099号
【文献】国際公開第2015/115091号
【文献】国際公開第2015/146132号
【文献】国際公開第2015/155976号
【文献】国際公開第2015/155998号
【文献】国際公開第2018/135501号
【文献】特開平5-59061号公報
【文献】特開平8-337584号公報
【文献】国際公開第96/26181号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Ducry, L., et al., Bioconjugate Chem. (2010) 21, 5-13.
【文献】Alley, S. C., et al., Current Opinion in Chemical Biology (2010) 14, 529-537.
【文献】Damle N. K. Expert Opin. Biol. Ther. (2004) 4, 1445-1452.
【文献】Senter P. D., et al., Nature Biotechnology (2012) 30, 631-637.
【文献】Howard A. et al., J Clin Oncol 29: 398-405.
【文献】Ogitani Y. et al., Clinical Cancer Research (2016) 22(20), 5097-5108.
【文献】Ogitani Y. et al., Cancer Science (2016) 107, 1039-1046.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
エキサテカンは、式(2)
【0008】
【化1】
【0009】
で表される化合物であり、本発明にかかる抗体-薬物コンジュゲートの構成要素となる化合物である。
【0010】
エキサテカンの製造方法として、特許文献9から11に記載された方法が知られている。かかる製造方法は、以下のように表すことができる。すなわち、式(19)で表される化合物と無水コハク酸を反応させ式(20)で表される化合物へ変換し、還元して式(21)で表される化合物へ変換し、分子内環化反応により式(22)で表される化合物へ変換し、オキシム化し式(23)で表される化合物へ変換し、ベックマン転移により式(24)で表される化合物へ変換し、開環反応により式(25)で表される化合物へ変換し、アミノ基を保護し式(26)で表される化合物へ変換し、加水分解し式(27)で表される化合物へ変換し、分子内環化反応により式(28)で表される化合物へ変換し、還元により式(29)で表される化合物へ変換し、酸化により式(9)で表される化合物へ変換し、次いで、窒素原子を導入し式(10)で表される化合物へ変換し、選択的脱保護により式(11)で表される化合物へ変換し、式(1)で表される化合物とのFriedlander反応により式(12)で表される化合物へ変換し、最後に、アセチル基を脱保護することにより、式(2)で表される化合物、すなわちエキサテカンを製造する方法である。しかし、この製造方法は、開環・閉環反応、酸化・還元反応を繰り返し行わなければならないため、工程数が長く、煩雑な操作が必要とされる。従って、工業的に優れた製造方法の開発が望まれている。
【0011】
【化2】
【0012】
本発明の一つの課題は、工程数が短く、工業的に優れたエキサテカンの新規製造方法を見出すことである。さらにこれを用いた抗体-薬物コンジュゲートの新規製造方法を構築することを本発明の他の一つの課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、エキサテカンの製造方法を鋭意検討した結果、工程数が短く、工業的に優れたエキサテカンの新規製造方法を見出した。さらに該製造方法によって製造されたエキサテカンを用いた抗体-薬物コンジュゲートの新規製造方法を構築した。
すなわち、本発明は、
[1]
式(B)
【0014】
【化3】
【0015】
で表される化合物(ここで、Rは、保護基で保護されたアミノ基を示す)を、分子内環化することにより、
式(C)
【0016】
【化4】
【0017】
で表される化合物(ここで、Rは、前記と同意義を示す)へ変換する工程を含む、式(C)で表される化合物の製造方法。
[2]
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、[1]に記載の製造方法。
[3]
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、[1]に記載の製造方法。
[4]
がアセチル基で保護されたアミノ基である、[1]に記載の製造方法。
[5]
分子内環化が、式(B)で表される化合物を無水トリフルオロ酢酸と反応させることを含む方法により行われる、[1]から[4]のいずれか1項に記載の製造方法。
[6]
分子内環化が、トリフルオロ酢酸を含む溶媒中で行われる、[5]に記載の製造方法。
[7]
分子内環化が、式(B)で表される化合物を塩化チオニルと反応させることを含む方法により行われる、[1]から[4]のいずれか1項に記載の製造方法。
[8]
分子内環化が、塩化アルミニウムの存在下で行われる、[7]に記載の製造方法。
[9]
式(J)
【0018】
【化5】
【0019】
で表される化合物(ここで、Yは脱離基を示し、Rは、保護基で保護されたアミノ基を示す)を、分子内環化することにより、
式(C)
【0020】
【化6】
【0021】
で表される化合物(ここで、Rは、前記と同意義を示す)へ変換する工程を含む、式(C)で表される化合物の製造方法。
[10]
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、[9]に記載の製造方法。
[11]
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、[9]に記載の製造方法。
[12]
がアセチル基で保護されたアミノ基である、[9]に記載の製造方法。
[13]
Yがクロロ基である、[9]から[12]のいずれか1項に記載の製造方法。
[14]
Yがトリフルオロアセトキシ基である、[9]から[12]のいずれか1項に記載の製造方法。
[15]
分子内環化が、塩化アルミニウムの存在下で行われる、[13]に記載の製造方法。
[16]
分子内環化が、トリフルオロ酢酸を含む溶媒中で行われる、[14]に記載の製造方法。
[17]
式(D)
【0022】
【化7】
【0023】
で表される化合物(ここで、Xは脱離基を示し、Rは保護基で保護されたアミノ基を示す)と、3-ブテン酸を、カップリングし、
式(E)
【0024】
【化8】
【0025】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程、次いで、式(E)で表される化合物を還元し、
式(B)
【0026】
【化9】
【0027】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程、次いで、式(B)で表される化合物を分子内環化し、
式(C)
【0028】
【化10】
【0029】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程、
を含む、式(C)で表される化合物の製造方法。
[18]
Xがブロモ基、ヨード基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、又はアリールスルホニルオキシ基である、[17]に記載の製造方法。
[19]
Xがブロモ基である、[17]に記載の製造方法。
[20]
Xがヨード基である、[17]に記載の製造方法。
[21]
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、[17]から[20]のいずれか1項に記載の製造方法。
[22]
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、[7]から[10]のいずれか1項に記載の製造方法。
[23]
がアセチル基で保護されたアミノ基である、[17]から[20]のいずれか1項に記載の製造方法。
[24]
式(D)で表される化合物と3-ブテン酸をカップリングし、式(E)で表される化合物へ変換する工程が、酢酸パラジウム(II)とトリ(o-トリル)ホスフィンから調製されるパラジウム錯体の存在下にて行われる、[17]から[23]のいずれか1項に記載の製造方法。
[25]
式(E)で表される化合物を塩基性水溶液に溶解し、第一の有機溶媒により分液洗浄する工程、次いで、塩基性水溶液に酸を加え、第二の有機溶媒により式(E)で表される化合物を分液抽出する工程、を含む、[17]から[24]のいずれか1項に記載の製造方法。
[26]
第一の有機溶媒が、2-メチルテトラヒドロフランである、[25]に記載の製造方法。
[27]
第二の有機溶媒が、2-メチルテトラヒドロフランである、[25]又は[26]に記載の製造方法。
[28]
塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液である、[25]から[27]のいずれか1項に記載の製造方法。
[29]
式(E)で表される化合物を還元し、式(B)で表される化合物へ変換する工程が、式(E)で表される化合物を溶媒中、パラジウム炭素触媒の存在下で水素と反応させる方法により行われる、[17]から[28]のいずれか1項に記載の製造方法。
[30]
式(B)で表される化合物を分子内環化し、式(C)で表される化合物へ変換する工程が、式(B)で表される化合物を無水トリフルオロ酢酸と反応させることを含む方法により行われる、[17]から[29]のいずれか1項に記載の製造方法。
[31]
分子内環化が、トリフルオロ酢酸を含む溶媒中で行われる、[30]に記載の製造方法。
[32]
式(B)で表される化合物を分子内環化し、式(C)で表される化合物へ変換する工程が、式(B)で表される化合物を塩化チオニルと反応させることを含む方法により行われる、[17]から[29]のいずれか1項に記載の製造方法。
[33]
分子内環化が、塩化アルミニウムの存在下で行われる、[32]に記載の製造方法。
[34]
[1]から[33]のいずれか1項に記載された方法により製造された
式(C)
【0030】
【化11】
【0031】
で表される化合物を出発原料として使用することを特徴とし、
式(C)で表される化合物を、
式(F)
【0032】
【化12】
【0033】
で表される化合物(ここで、Rは請求項1から33のいずれか1項に記載のRと同意義を示し、Rは保護基で保護されたアミノ基を示す)へ変換する工程、次いで、式(F)で表される化合物を、
式(G)
【0034】
【化13】
【0035】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程、次いで、式(G)で表される化合物と、
式(1)
【0036】
【化14】
【0037】
で表される化合物を縮合し、
式(H)
【0038】
【化15】
【0039】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程、次いで、式(H)で表される化合物を、
式(2)
【0040】
【化16】
【0041】
で表される化合物へ変換する工程を含む、式(2)で表される化合物の製造方法。
[35]
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、[34]に記載の製造方法。
[36]
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、[34]に記載の製造方法。
[37]
がアセチル基で保護されたアミノ基である、[34]に記載の製造方法。
[38]
式(C)で表される化合物を、式(F)で表される化合物へ変換する工程が、(i)塩基の存在下で亜硝酸エステルと反応させニトロソ基を導入するステップ、次いで、(ii)ニトロソ基由来の窒素原子に保護基を導入するステップ、及び(iii)白金炭素触媒の存在下、水素で還元するステップ、を含む、[34]から[37]のいずれか1項に記載の製造方法。
[39]
式(F)で表される化合物を、式(G)で表される化合物へ変換する工程が、塩酸/エタノールを含む溶媒中で行われる、[34]から[38]のいずれか1項に記載の製造方法。
[40]
式(G)で表される化合物と、式(1)で表される化合物を縮合し、式(H)で表される化合物へ変換する工程が、o-クレゾールを含む溶媒中で行われる、[34]から[39]のいずれか1項に記載の製造方法。
[41]
式(H)で表される化合物を、式(2)で表される化合物へ変換する工程が、メタンスルホン酸を含む溶媒中で行われる、[34]から[40]のいずれか1項に記載の製造方法。
[42]
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩である、[34]から[41]のいずれか1項に記載の製造方法。
[43]
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・m水和物(ここで、mは0~3個の範囲内である)である、[34]から[41]のいずれか1項に記載の製造方法。
[44]
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・無水物である、[34]から[41]のいずれか1項に記載の製造方法。
[45]
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・1水和物である、[34]から[41]のいずれか1項に記載の製造方法。
[46]
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・2水和物である、[34]から[41]のいずれか1項に記載の製造方法。
[47]
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・3水和物である、[34]から[41]のいずれか1項に記載の製造方法。
[48]
式(3)
【0042】
【化17】
【0043】
で表される化合物を、
式(4)
【0044】
【化18】
【0045】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(4)で表される化合物を、
式(5)
【0046】
【化19】
【0047】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(5)で表される化合物を、
式(6)
【0048】
【化20】
【0049】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(6)で表される化合物と、3-ブテン酸をカップリングし、
式(7)
【0050】
【化21】
【0051】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(7)で表される化合物を、
式(8)
【0052】
【化22】
【0053】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(8)で表される化合物を分子内環化し、
式(9)
【0054】
【化23】
【0055】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(9)で表される化合物を、
式(10)
【0056】
【化24】
【0057】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(10)で表される化合物を、
式(11)
【0058】
【化25】
【0059】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(11)で表される化合物と、
式(1)
【0060】
【化26】
【0061】
で表される化合物を縮合し、
式(12)
【0062】
【化27】
【0063】
で表される化合物へ変換する工程、次いで、式(12)で表される化合物を、
式(2)
【0064】
【化28】
【0065】
で表される化合物へ変換する工程を含む、式(2)で表される化合物の製造方法。
[49]
式(6)で表される化合物と3-ブテン酸をカップリングし、式(7)で表される化合物へ変換する工程が、酢酸パラジウム(II)とトリ(o-トリル)ホスフィンから調製されるパラジウム錯体の存在下にて行われる、[48]に記載の製造方法。
[50]
式(7)で表される化合物を塩基性水溶液に溶解し、第一の有機溶媒により分液洗浄する工程、次いで、塩基性水溶液に酸を加え、第二の有機溶媒により式(7)で表される化合物を分液抽出する工程、を含む、[48]又は[49]に記載の製造方法。
[51]
第一の有機溶媒が、2-メチルテトラヒドロフランである、[50]に記載の製造方法。
[52]
第二の有機溶媒が、2-メチルテトラヒドロフランである、[50]又は[51]に記載の製造方法。
[53]
塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液である、[50]から[52]のいずれか1項に記載の製造方法。
[54]
式(8)で表される化合物を分子内環化し、式(9)で表される化合物へ変換する工程が、式(8)で表される化合物を無水トリフルオロ酢酸と反応させることを含む方法により行われる、[50]から[53]のいずれか1項に記載の製造方法。
[55]
分子内環化が、トリフルオロ酢酸を含む溶媒中で行われる、[54]に記載の製造方法。
[56]
式(9)で表される化合物を、式(10)で表される化合物へ変換する工程が、(i)塩基の存在下で亜硝酸エステルと反応させニトロソ基を導入するステップ、次いで、(ii)ニトロソ基由来の窒素原子に保護基を導入するステップ、及び(iii)白金炭素触媒の存在下、水素で還元するステップ、を含む、[48]から[55]のいずれか1項に記載の製造方法。
[57]
式(10)で表される化合物を、式(11)で表される化合物へ変換する工程が、塩酸/エタノールを含む溶媒中で行われる、[48]から[56]のいずれか1項に記載の製造方法。
[58]
式(11)で表される化合物と、式(1)で表される化合物を縮合し、式(12)で表される化合物へ変換する工程が、o-クレゾールを含む溶媒中で行われる、[48]から[57]のいずれか1項に記載の製造方法。
[59]
式(12)で表される化合物を、式(2)で表される化合物へ変換する工程が、メタンスルホン酸を含む溶媒中で行われる、[48]から[58]のいずれか1項に記載の製造方法。
[60]
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩である、[48]から[59]のいずれか1項に記載の製造方法。
[61]
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・m水和物(ここで、mは0~3個の範囲内である)である、[48]から[59]のいずれか1項に記載の製造方法。
[62]
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・無水物である、[48]から[59]のいずれか1項に記載の製造方法。
[63]
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・1水和物である、[48]から[59]のいずれか1項に記載の製造方法。
[64]
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・2水和物である、[48]から[59]のいずれか1項に記載の製造方法。
[65]
式(2)で表される化合物が、メタンスルホン酸塩・3水和物である、[48]から[59]のいずれか1項に記載の製造方法。
[66]
式(D)
【0066】
【化29】
【0067】
で表される化合物(ここで、Xは脱離基を示し、Rは保護基で保護されたアミノ基を示す)と、3-ブテン酸を、カップリングし、
式(E)
【0068】
【化30】
【0069】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程を含む、式(E)で表される化合物の製造方法。
[67]
Xがブロモ基、ヨード基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、又はアリールスルホニルオキシ基である、[66]に記載の製造方法。
[68]
Xがブロモ基である、[66]に記載の製造方法。
[69]
Xがヨード基である、[66]に記載の製造方法。
[70]
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、[66]から[69]のいずれか1項に記載の製造方法。
[71]
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、[66]から[69]のいずれか1項に記載の製造方法。
[72]
がアセチル基で保護されたアミノ基である、[66]から[69]のいずれか1項に記載の製造方法。
[73]
酢酸パラジウム(II)とトリ(o-トリル)ホスフィンから調製されるパラジウム錯体の存在下にて行われる、[66]から[72]のいずれか1項に記載の製造方法。
[74]
式(E)で表される化合物を塩基性水溶液に溶解し、第一の有機溶媒により分液洗浄する工程、次いで、塩基性水溶液に酸を加え、第二の有機溶媒により式(E)で表される化合物を分液抽出する工程、を含む、[66]から[73]のいずれか1項に記載の製造方法。
[75]
第一の有機溶媒が、2-メチルテトラヒドロフランである、[74]に記載の製造方法。
[76]
第二の有機溶媒が、2-メチルテトラヒドロフランである、[74]又は[75]に記載の製造方法。
[77]
塩基性水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液である、[74]から[76]のいずれか1項に記載の製造方法。
[78]
式(E)
【0070】
【化31】
【0071】
で表される化合物(ここで、Rは保護基で保護されたアミノ基を示す)を還元し、
式(B)
【0072】
【化32】
【0073】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程を含む、式(B)で表される化合物の製造方法。
[79]
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、[78]に記載の製造方法。
[80]
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、[78]に記載の製造方法。
[81]
がアセチル基で保護されたアミノ基である、[78]に記載の製造方法。
[82]
式(E)で表される化合物を溶媒中、パラジウム炭素触媒の存在下で水素と反応させる方法により行われる、[78]から[81]のいずれか1項に記載の製造方法。
[83]
式(C)
【0074】
【化33】
【0075】
で表される化合物(ここで、Rは保護基で保護されたアミノ基を示す)を、
(i)塩基の存在下で亜硝酸エステルと反応させニトロソ基を導入するステップ、次いで、(ii)ニトロソ基由来の窒素原子に保護基を導入するステップ、及び(iii)白金炭素触媒の存在下、水素で還元するステップを含むことにより、
式(F)
【0076】
【化34】
【0077】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示し、Rは保護基で保護されたアミノ基を示す)へ変換する工程を含む、式(F)で表される化合物の製造方法。
[84]
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、[83]に記載の製造方法。
[85]
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、[83]に記載の製造方法。
[86]
がアセチル基で保護されたアミノ基である、[83]に記載の製造方法。
[87]
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、[83]から[86]のいずれか1項に記載の製造方法。
[88]
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、[83]から[86]のいずれか1項に記載の製造方法。
[89]
がアセチル基で保護されたアミノ基である、[83]から[86]のいずれか1項に記載の製造方法。
[90]
式(F)
【0078】
【化35】
【0079】
で表される化合物(ここで、R及びRは保護基で保護されたアミノ基を示す)を、塩酸/エタノールを含む溶媒中で、
式(G)
【0080】
【化36】
【0081】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程を含む、式(G)で表される化合物の製造方法。
[91]
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、[90]に記載の製造方法。
[92]
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、[90]に記載の製造方法。
[93]
がアセチル基で保護されたアミノ基である、[90]に記載の製造方法。
[94]
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、[90]から[93]のいずれか1項に記載の製造方法。
[95]
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、[90]から[93]のいずれか1項に記載の製造方法。
[96]
がアセチル基で保護されたアミノ基である、[90]から[93]のいずれか1項に記載の製造方法。
[97]
式(G)
【0082】
【化37】
【0083】
で表される化合物(ここで、Rは保護基で保護されたアミノ基を示す)と、
式(1)
【0084】
【化38】
【0085】
で表される化合物を、o-クレゾールを含む溶媒中で縮合し、
式(H)
【0086】
【化39】
【0087】
で表される化合物(ここで、Rは前記と同意義を示す)へ変換する工程を含む、式(H)で表される化合物の製造方法。
[98]
がアセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基である、[97]に記載の製造方法。
[99]
がアセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基である、[97]に記載の製造方法。
[100]
がアセチル基で保護されたアミノ基である、[97]に記載の製造方法。
[101]
クロマトグラフィーを使用しないことを特徴とする、[1]から[100]のいずれか1項に記載の製造方法。
[102]
式(6)
【0088】
【化40】
【0089】
で表される化合物。
[103]
式(34)
【0090】
【化41】
【0091】
で表される化合物。
[104]
式(7)
【0092】
【化42】
【0093】
で表される化合物。
[105]
式(8)
【0094】
【化43】
【0095】
で表される化合物。
[106]
[34]から[65]のいずれか1項に記載された方法により製造された
式(2)
【0096】
【化44】
【0097】
で表される化合物を出発原料として使用することを特徴とし、
式(2)で表される化合物と、
式(13)
【0098】
【化45】
【0099】
で表される化合物を縮合することにより、
式(14)
【0100】
【化46】
【0101】
で表される化合物へ変換する工程、を含む、式(14)で表される化合物の製造方法。
[107]
[106]に記載された方法により製造された
式(14)
【0102】
【化47】
【0103】
で表される化合物を原料として使用することを特徴とし、
(i)抗体を、還元する工程、次いで、
(ii)上記方法で製造された式(14)で表される化合物を、還元された抗体と反応させる工程、
を含む、
式(15)
【0104】
【化48】
【0105】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートの製造方法。
[108]
抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、又は抗GPR20抗体である、[107]に記載の製造方法。
[109]
抗体が、抗HER2抗体である、[108]に記載の製造方法。
[110]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[109]に記載の製造方法。
[111]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[109]又は[110]に記載の製造方法。
[112]
抗体が、抗HER3抗体である、[108]に記載の製造方法。
[113]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である、[112]に記載の製造方法。
[114]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[112]又は[113]に記載の製造方法。
[115]
抗体が、抗TROP2抗体である、[108]に記載の製造方法。
[116]
抗TROP2抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である、[115]に記載の製造方法。
[117]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3から5個の範囲である、[115]又は[116]に記載の製造方法。
[118]
抗体が、抗B7-H3抗体である、[108]に記載の製造方法。
[119]
抗B7-H3抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である、[118]に記載の製造方法。
[120]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3から5個の範囲である、[118]又は[119]に記載の製造方法。
[121]
抗体が、抗GPR20抗体である、[108]に記載の製造方法。
[122]
抗GPR20抗体が、配列番号9においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である、[121]に記載の製造方法。
[123]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、[121]又は[122]に記載の製造方法。
に関する。
【発明の効果】
【0106】
本発明により、工程数が短く、工業的に優れたエキサテカンの新規製造方法を提供することができる。さらにこれを用いた抗体-薬物コンジュゲートの新規製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1】抗HER2抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
図2】抗HER2抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
図3】抗HER3抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
図4】抗HER3抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号4)を示す。
図5】抗TROP2抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号5)を示す。
図6】抗TROP2抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号6)を示す。
図7】抗B7-H3抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号7)を示す。
図8】抗B7-H3抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
図9】抗GPR20抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号9)を示す。
図10】抗GPR20抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号10)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0108】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これによって本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0109】
[抗体-薬物コンジュゲート]
【0110】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートは、好適には、
式(15)
【0111】
【化49】
【0112】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートである。
【0113】
本発明においては、抗体-薬物コンジュゲートのうち、リンカー及び薬物からなる部分構造を「薬物リンカー」と称する。この薬物リンカーは抗体の鎖間のジスルフィド結合部位(2箇所の重鎖-重鎖間、及び2箇所の重鎖-軽鎖間)において生じたチオール基(言い換えれば、システイン残基の硫黄原子)に結合している。
【0114】
本発明の薬物リンカーは、トポイソメラーゼI阻害剤であるエキサテカンを構成要素としている。エキサテカンは、式(2)
【0115】
【化50】
【0116】
で表される化合物であり、抗腫瘍効果を有するカンプトテシン誘導体である。
【0117】
本発明において使用される抗体-薬物コンジュゲートは、
式(16)
【0118】
【化51】
【0119】
で表されることもできる。
【0120】
ここで、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している。また、nはいわゆる平均薬物結合数(DAR; Drug-to-Antibody Ratio)と同義であり、1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す。
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、がん細胞内に移行した後に、
式(18)
【0121】
【化52】

【0122】
で表される化合物を遊離することにより、抗腫瘍効果を発揮する。
【0123】
式(18)で表される化合物は、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートの抗腫瘍活性の本体であると考えられ、トポイソメラーゼI阻害作用を有することが確認されている(Ogitani Y. et al., Clinical Cancer Research, 2016, Oct 15;22(20):5097-5108, Epub 2016 Mar 29)。
【0124】
式(18)で表される化合物は、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートのリンカー部分が切断されることにより生じると考えられる、
式(17)
【0125】
【化53】
【0126】
で表される化合物のアミナール構造が分解することにより生じると考えられる。
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートは、バイスタンダー効果を有することも知られている(Ogitani Y. et al., Cancer Science (2016) 107, 1039-1046)。
このバイスタンダー効果は、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートが、標的発現がん細胞に内在化した後、遊離された式(18)で表される化合物が、標的を発現していない近傍のがん細胞に対しても抗腫瘍効果を及ぼすことにより発揮される。
【0127】
[エキサテカンの製造]
本発明のエキサテカンの製造は、下記の方法に従って行うことができる。
【0128】
【化54】

【0129】
[式中、Xは脱離基を示し、好適には、ブロモ基、ヨード基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、又はアリールスルホニルオキシ基を示し、より好適には、ブロモ基又はヨード基を示し、更により好適には、ブロモ基を示す;Rは、保護基で保護されたアミノ基を示し、好適には、アセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基を示し、より好適には、アセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基を示し、更により好適には、アセチル基で保護されたアミノ基を示す;Rは、保護されたアミノ基を示し、好適には、アセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基を示し、より好適には、アセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基を示し、更により好適には、アセチル基で保護されたアミノ基を示す。]
【0130】
工程1:
本工程は、式(D)で表される化合物を、3-ブテン酸とカップリングすることにより、式(E)で表される化合物へ変換する工程である。式(D)で表される化合物は、公知の方法を参考に製造することができる。本工程に用いられる3-ブテン酸の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(D)で表される化合物に対して、1~1.5当量である。
【0131】
カップリング反応は、遷移金属触媒の存在下で行うことができ、好適には、パラジウム触媒の存在下で行うことができる。本工程に用いられるパラジウム触媒は、反応が進行するものであれば特に限定されないが、例えば、酢酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)、塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)などの2価のパラジウム塩及びその錯体や、パラジウムブラック、パラジウムカーボン、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)などの0価パラジウム金属及びその錯体などを用いることができ、好適には、酢酸パラジウム(II)を用いることができる。本工程に用いられるパラジウム触媒の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(D)で表される化合物に対して、0.003~0.03当量である。
【0132】
さらに、本工程は、好適には、上記パラジウム触媒の他に、反応系内でパラジウム錯体とするための配位子を用いることができる。本工程に用いることができる配位子としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリ(3-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(4-クロロフェニル)ホスフィン、トリ(2-フリル)ホスフィン、トリ(2-チエニル)ホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、及びBuchwaldリガンド(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’ -ジメトキシビフェニル(SPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’ ,6’ -トリイソプロピルビフェニル(XPhos)等)を用いることができ、好適には、トリ(o-トリル)ホスフィンを用いることができる。本工程に用いられる配位子の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(D)で表される化合物に対して、0.006~0.06当量である。
【0133】
本工程は、好適には塩基の存在下で行うことができる。本工程に用いられる塩基としては、反応が進行する限り特に限定されないが、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、ピリジン、2-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン、及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ウンデク-7-エン等の有機塩基や、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、及びカリウム tert-ブトキシド等の無機塩基を挙げることができ、好適には、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、及び酢酸カリウムを挙げることができ、より好適には、ジイソプロピルエチルアミンを挙げることができる。本工程に用いられる塩基の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(D)で表される化合物に対して、2~3当量である。
【0134】
本工程に用いられる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定はされないが、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、アセトン、2-ブタノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、及び水、並びにこれらの混合溶媒を用いることができ、好適には、テトラヒドロフランを挙げることができる。
【0135】
本工程の反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、45~85℃であり、より好適には、テトラヒドロフランの加熱還流下となる温度である。本工程の反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、2.5~10時間である。
【0136】
式(E)で表される化合物は、式(E)で表される化合物を塩基性水溶液に溶解し、第一の有機溶媒により分液洗浄する工程、次いで、塩基性水溶液に酸を加え、第二の有機溶媒により式(E)で表される化合物を分液抽出する工程、を行うことにより、好適に精製することができる。第一の有機溶媒は、好適には、2-メチルテトラヒドロフランである。第二の有機溶媒は、好適には、2-メチルテトラヒドロフランである。塩基性水溶液は、好適には水酸化ナトリウム水溶液である。
【0137】
なお、式(E)で表される化合物には幾何異性体として、E体とZ体が存在するが、いずれも式(E)で表される化合物に包含されており、本発明の範囲に含まれる。本発明の式(E)で表される化合物は、E体とZ体の混合物であっても良く、混合物のまま次の工程に用いることができる。
【0138】
また、本工程は、3-ブテン酸の代わりに3-ブテン酸エステルを用いることもできる。かかる場合、式(D)で表される化合物と3-ブテン酸エステルとのカップリングにより得られた生成物を加水分解することにより、式(E)で表される化合物へ変換することができる。
【0139】
工程2:
本工程は、式(E)で表される化合物を、還元することにより、式(B)で表される化合物へ変換する工程である。
【0140】
本工程の還元は、反応が進行する限り方法は制限されないが、好適には、水素雰囲気下(好適には、0.05~0.6MPaの水素気流下)で、パラジウム触媒、白金触媒、ニッケル触媒、ルテニウム触媒、又はロジウム触媒を用いて行うことができ、より好適には、パラジウム触媒を用いて行うことができ、更により好適には、パラジウム炭素を用いて行うことができ、更により好適には、5%パラジウム炭素を用いて行うことができる。本工程に用いられる5%パラジウム炭素の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、工程1で用いる式(D)で表される化合物に対して、5~80重量%である。
【0141】
本工程に用いられる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定はされないが、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、アセトン、2-ブタノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、及び水、並びにこれらの混合溶媒を挙げることができ、好適には、2-メチルテトラヒドロフランを挙げることができる。
【0142】
本工程の反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、20~60℃である。本工程の反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、0.5~2時間である。
【0143】
工程3:
本工程は、式(B)で表される化合物を、分子内環化することにより、式(C)で表される化合物へ変換する工程である。分子内環化は、好適には分子内Friedel-Craftsアシル化反応により、行うことができる。本工程における分子内Friedel-Craftsアシル化反応としては、反応が進行する限り方法は制限されないが、好適には、無水トリフルオロ酢酸を用いる方法、又は、塩化チオニル、塩化スルフリル、塩化オキサリル、オキシ塩化リン、三塩化リン若しくは五塩化リンを用いる方法を挙げることができ、より好適には、無水トリフルオロ酢酸、又は塩化チオニルを用いる方法を挙げることができ、更により好適には、無水トリフルオロ酢酸を用いる方法を挙げることができる。本工程で用いられる無水トリフルオロ酢酸の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(B)で表される化合物に対して、1~3当量である。本工程で用いられる塩化チオニルの量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(B)で表される化合物に対して、1~3当量である。
【0144】
無水トリフルオロ酢酸を用いる方法の場合、本工程は、好適には、酸の存在下にて行われ、より好適には、トリフルオロ酢酸の存在下にて行われる。塩化チオニル、塩化スルフリル、塩化オキサリル、オキシ塩化リン、三塩化リン若しくは五塩化リンを用いる方法の場合は、本工程は、好適には、塩化アルミニウムの存在下にて行われる。本工程で用いられる塩化アルミニウムの量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(B)で表される化合物に対して、1~5当量である。
【0145】
本工程に用いられる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定はされないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、及びクロロベンゼン、並びにこれらの混合溶媒を挙げることができ、好適には、塩化メチレンを挙げることができる。なお、トリフルオロ酢酸を用いる場合は、好適には、トリフルオロ酢酸を溶媒として含むことができる。
【0146】
本工程の反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、無水トリフルオロ酢酸を用いる方法の場合、好適には、-10℃~20℃であり、塩化チオニルを用いる方法の場合、好適には、10℃~40℃である。本工程の反応時間は、反応が進行する限り方法は制限されないが、無水トリフルオロ酢酸を用いる方法の場合、好適には、2時間~8時間であり、塩化チオニルを用いる方法の場合、好適には、1時間~4時間である。
【0147】
なお、本工程は、以下の2段階の工程に分けて行うこともできる。
【0148】
【化55】

【0149】
[式中、Yは脱離基を示し、好適には、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、フルオロ基、又はトリフルオロアセトキシ基を示し、より好適には、クロロ基、又はトリフルオロアセトキシ基を示す;Rは、保護基で保護されたアミノ基を示し、好適には、アセチル基、メトキシアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ピバロイル基、ホルミル基、又はベンゾイル基で保護されたアミノ基を示し、より好適には、アセチル基又はトリフルオロアセチル基で保護されたアミノ基を示し、更により好適には、アセチル基で保護されたアミノ基を示す。]
【0150】
工程3Aは、式(B)で表される化合物を、式(J)で表される化合物へ変換する工程である。
【0151】
Yがクロロ基の場合、好適には、塩化チオニル、塩化スルフリル、塩化オキサリル、オキシ塩化リン、三塩化リン若しくは五塩化リンを用いる方法により本工程を行うことができ、より好適には、塩化チオニルを用いる方法により本工程を行うことができる。本工程で用いられる塩化チオニルの量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(B)で表される化合物に対して、1~3当量である。Yがトリフルオロアセトキシ基の場合、好適には、無水トリフルオロ酢酸を用いる方法により本工程を行うことができる。本工程で用いられる無水トリフルオロ酢酸の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(B)で表される化合物に対して、1~3当量である。本工程に用いられる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定はされないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、及びトリフルオロ酢酸、並びにこれらの混合溶媒を挙げることができ、塩化チオニルを用いる方法の場合、好適には、塩化メチレンを挙げることができ、無水トリフルオロ酢酸を用いる方法の場合、好適には、トリフルオロ酢酸を挙げることができる。
【0152】
工程3Bは、式(J)で表される化合物を、式(C)で表される化合物へ変換する工程である。塩化チオニルを用いる方法の場合、好適には、塩化アルミニウムの存在下にて本工程を行うことができる。本工程で用いられる塩化アルミニウムの量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(B)で表される化合物に対して、1~5当量である。無水トリフルオロ酢酸を用いる方法の場合、好適には、酸の存在下にて本工程を行うことができ、より好適には、トリフルオロ酢酸の存在下にて本工程を行うことができる。
【0153】
工程3A及び工程3Bの反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、塩化チオニルを用いる方法の場合、好適には、10℃~40℃であり、無水トリフルオロ酢酸を用いる方法の場合、好適には、-10℃~20℃である。工程3Aと工程3Bを合計した反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、塩化チオニルを用いる方法の場合、好適には、1時間~4時間であり、無水トリフルオロ酢酸を用いる方法の場合、好適には、2時間~8時間である。
【0154】
工程4:
本工程は、式(C)で表される化合物を式(F)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、好適には(i)カルボニル基のα位をニトロソ化(又はオキシム化)するステップ、(ii)ニトロソ基(又はオキシム基)由来の窒素原子に保護基を導入するステップ、(iii)還元するステップ、により行うことができる。(ii)と(iii)は順序を入れ替えても良いし、同時に行っても良い。
【0155】
(i)のステップで用いられるニトロソ化剤(又はオキシム化剤)は、式(C)で表される化合物のカルボニル基のα位をニトロソ化(又はオキシム化)できるものであれば特に限定はないが、好適には、亜硝酸エステルを用いることができ、より好適には、亜硝酸アミル、亜硝酸n-ブチル、又は亜硝酸tert-ブチルを用いることができ、更により好適には、亜硝酸アミルを用いることができる。(i)のステップで用いられる亜硝酸アミルの量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(C)で表される化合物に対して、1~1.6当量である。
【0156】

(i)のステップは好適には塩基を用いる。(i)のステップで用いられる塩基としては、式(C)で表される化合物のカルボニル基のα位のニトロソ化(又はオキシム化)に適用できるものであれば特に制限はないが、好適には、カリウムtert-ブトキシドを用いることができる。(i)のステップで用いられるカリウムtert-ブトキシドの量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(C)で表される化合物に対して、1~1.5当量である。
【0157】
(i)のステップに用いられる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定はされないが、例えば、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、及びジメチルスルホキシド、並びにこれらの混合溶媒を挙げることができ、好適には、テトラヒドロフランを挙げることができる。
【0158】
(i)のステップの反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、-10~20℃である。本ステップの反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、1.5~30時間である。
(ii)のステップは、Rにおけるアミノ基の保護基の種類に応じて適宜反応条件を設定することができる。Rがアセチル基で保護されたアミノ基である場合には、(ii)のステップは、好適には、酢酸中、無水酢酸を用いることができる。
【0159】
(iii)のステップは、水素雰囲気下(好適には、0.15~1.2MPaの水素気流下)にて、例えば、白金炭素触媒を用いて行うことができるし、亜鉛粉末を用いて行うこともできるが、好適には、白金炭素触媒を用いて行うことができ、より好適には、2%又は5%白金炭素触媒を用いて行うことができる。2%又は5%白金炭素触媒の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(C)で表される化合物に対して、5~60重量%である。(iii)のステップは、(ii)のステップで用いる溶媒を用いることができる。
(ii)のステップと(iii)のステップの反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、0~40℃である。(ii)のステップと(iii)のステップの合計した反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、2~8時間である。
【0160】
工程5:
本工程は、式(F)で表される化合物の芳香族アミノ基の保護基を選択的に脱保護し、式(G)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、R及びRにおけるアミノ基の保護基の種類に応じて適宜反応条件を設定することができる。R及びRがアセチル基で保護されたアミノ基である場合には、本工程は、好適には塩酸を用いて行うことができ、より好適には、2N塩酸/エタノールを用いて行うことができる。
本工程の反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、40~60℃である。本工程の反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、2~14時間である。
【0161】
工程6:
本工程は、式(G)で表される化合物と、式(1)で表される化合物を縮合し、式(H)で表される化合物へ変換する工程である。式(1)で表される化合物は、米国特許第4778891号等の記載を参考に製造することができるし、市販のものを用いることもできる。本工程で用いられる式(1)で表される化合物の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(G)で表される化合物に対して、0.8~1.2当量である。
【0162】
本工程は酸触媒の存在下にて行われる。本工程に用いる酸触媒としては、好適には、ピリジニウム p-トルエンスルホナートを挙げることができる。本工程に用いる酸触媒は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(G)で表される化合物に対して、0.03~0.3当量である。
【0163】
本工程は、好適には、クレゾール又はフェノールを含む溶媒中にて行われ、より好適には、o-クレゾールを含むトルエン中にて行われる。o-クレゾール又はフェノールが存在することにより、式(H)で表される化合物の析出様相が改善され、収率向上、反応時間短縮等の効果が見られるためである。
【0164】
本工程の反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、90~130℃であり、より好適には、トルエンの加熱還流下となる温度である。本工程の反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、16~64時間である。
【0165】
なお、本工程は、反応中間体として、式(K)で表される化合物及び式(L)で表される化合物を経由すると考えられる。
【0166】
【化56】

【0167】
工程7:
本工程は、式(H)で表される化合物を、式(2)で表される化合物へ変換する工程である。式(2)で表される化合物は、塩であってもよく、さらに水和物であってもよく、いずれも本発明における「式(2)で表される化合物」の範囲に含まれる。
本工程は、好適には酸の存在下で行うことができ、より好適にはメタンスルホン酸及び水の存在下で行うことができる。
【0168】
本工程に用いられる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定はないが、好適には2-メトキシエタノール、及びエチルシクロヘキサンを含む溶媒を用いることができ、更に上記の酸を溶媒として含めた場合、より好適には、メタンスルホン酸、水、2-メトキシエタノール、及びエチルシクロヘキサンの混合溶媒を用いることができる。
【0169】
本工程は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、80~160℃で行うことができ、より好適には、メタンスルホン酸、水、2-メトキシエタノール、及びエチルシクロヘキサンの混合溶媒の加熱還流下となる温度にて行うことができる。本工程の反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、4~16時間である。
【0170】
式(2)で表される化合物は、好適にはメタンスルホン酸塩として取得することができ、より好適にはメタンスルホン酸塩・m水和物(ここで、mは0~3である)として取得することができ、更により好適には、メタンスルホン酸塩・無水物、メタンスルホン酸塩・1水和物、メタンスルホン酸塩・2水和物、又はメタンスルホン酸塩・3水和物として取得することができ、更により好適には、メタンスルホン酸塩・2水和物として取得することができるが、いずれも本発明の製造方法に使用することができる。上記の水和物数は、結晶取得・乾燥時の湿度を調整することにより、コントロールすることができる。
式(2)で表される化合物は、より好適には、下記の方法に従って製造することができる。
【0171】
【化57】

【0172】
工程8:
本工程は、式(3)で表される化合物をブロモ化し、式(4)で表される化合物へ変換する工程である。式(3)で表される化合物は、公知の方法により製造したもの又は市販のものを用いることができる。
【0173】
本工程に用いられるブロモ化剤としては、反応が進行する限り制限されないが、例えば、臭素やN-ブロモスクシンイミドを挙げることができ、好適にはN-ブロモスクシンイミドを挙げることができる。本工程に用いられるN-ブロモスクシンイミドの量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(3)で表される化合物に対して、1~1.5当量である。本工程は好適には硫酸とその他の溶媒の混合溶媒中にて行うことができる。
【0174】
その他の溶媒は、反応を阻害するものでなければ特に限定はされないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、又はこれらの混合溶媒を挙げることができ、好適には、ヘプタンを挙げることができる。
【0175】
本工程の反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、50~70℃である。本工程の反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、0.5~2時間である。
【0176】
工程9:
本工程は、式(4)で表される化合物のニトロ基をアミノ基へ還元し、式(5)で表される化合物へ変換する工程である。本工程に用いられる還元剤は、脱ブロモ化が進行せずに、ニトロ基のみを選択的に還元できるものであればよく、好適には、水素存在下(好適には、0.05~0.2MPaの水素気流下)にて白金炭素触媒を用いることができ、より好適には、1%白金炭素触媒を用いることができる。本工程に用いられる白金炭素触媒の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、工程8で用いる式(3)で表される化合物に対して、5~40重量%である。本工程に用いられる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定はないが、例えば、メタノール、エタノール、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、及び水、並びにこれらの混合溶媒を挙げることができ、好適には酢酸エチルを挙げることができる。本工程の反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、50~70℃である。本工程の反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、2~8時間である。
【0177】
工程10:
本工程は、式(5)で表される化合物のアミノ基をアセチル化し、式(6)で表される化合物へ変換する工程である。本工程に用いられるアセチル化剤は、例えば、無水酢酸や塩化アセチルを挙げることができ、好適には、無水酢酸を挙げることができる。本工程に用いられる無水酢酸の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、工程8で用いる式(3)で表される化合物に対して、0.5~1当量である。本工程は好適には塩基を用いることができる。該塩基としては、反応が進行する限り制限されないが、好適には、トリエチルアミンである。該塩基の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、工程8で用いる式(3)で表される化合物に対して、0.75~1.5当量である。本工程に用いられる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定はないが、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、アセトン、2-ブタノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、及び水、並びにこれらの混合溶媒を挙げることができ、好適には酢酸エチルを挙げることができる。本工程の反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、10~40℃である。本工程の反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、3~12時間である。
【0178】
工程11:
本工程は、式(6)で表される化合物を、3-ブテン酸とカップリングすることにより、式(7)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、工程1に記載の方法と同様に行うことができる。
なお、式(7)で表される化合物には幾何異性体として、E体とZ体が存在するが、いずれも式(7)で表される化合物に包含されており、本発明の範囲に含まれる。本発明の式(7)で表される化合物は、E体とZ体の混合物であっても良く、混合物のまま次の工程に用いることができる。
【0179】
工程12:
本工程は、式(7)で表される化合物を、還元することにより、式(8)で表される化合物へ変換する工程である。
【0180】
本工程の還元は、反応が進行する限り方法は制限されないが、好適には、水素雰囲気下(好適には、0.05~0.2MPaの水素気流下)で、パラジウム触媒、白金触媒、ニッケル触媒、ルテニウム触媒、又はロジウム触媒を用いて行うことができ、より好適には、パラジウム触媒を用いて行うことができ、更により好適には、パラジウム炭素を用いて行うことができ、更により好適には、5%パラジウム炭素を用いることができる。本工程に用いられる5%パラジウム炭素の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、工程11で用いる式(7)で表される化合物に対して、5~40重量%である。
【0181】
本工程に用いられる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定はされないが、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、アセトン、2-ブタノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、及び水、並びにこれらの混合溶媒を挙げることができ、好適には、2-メチルテトラヒドロフランを挙げることができる。
【0182】
本工程の反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、20~60℃である。本工程の反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、0.5~2時間である。
【0183】
工程13:
本工程は、式(8)で表される化合物を、分子内環化することにより、式(9)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、工程3に記載の方法と同様に行うことができる。
【0184】
工程14:
本工程は、式(9)で表される化合物を式(10)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、工程4に記載の方法と同様に行うことができる。
【0185】
工程15:
本工程は、式(10)で表される化合物の芳香族アミノ基の保護基を選択的に脱保護し、式(11)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、工程5に記載の方法と同様に行うことができる。
【0186】
工程16:
本工程は、式(11)で表される化合物と、式(1)で表される化合物を縮合し、式(12)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、工程6に記載の方法と同様に行うことができる。
なお、本工程は、反応中間体として、式(30)で表される化合物及び/又は式(31)で表される化合物を経由すると考えられる。
【0187】
【化58】

【0188】
工程17:
本工程は、式(12)で表される化合物を、式(2)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、工程7に記載の方法と同様に行うことができる。
式(2)で表される化合物は、下記の方法に従って製造することもできる。
【0189】
【化59】

【0190】
工程18:
本工程は、式(3)で表される化合物をヨード化し、式(32)で表される化合物へ変換する工程である。式(3)で表される化合物は、公知の方法により製造したもの又は市販のものを用いることができる。
本工程に用いられるヨード化剤としては、反応が進行する限り制限されないが、例えば、よう素やN-ヨードスクシンイミドを挙げることができ、好適にはN-ヨードスクシンイミドを挙げることができる。本工程に用いられるN-ヨードスクシンイミドの量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、式(3)で表される化合物に対して、1~2当量である。本工程は好適には硫酸とその他の溶媒の混合溶媒中にて行うことができる。
【0191】
その他の溶媒は、反応を阻害するものでなければ特に限定はされないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、又はこれらの混合溶媒を挙げることができ、好適には、ヘプタンを挙げることができる。
本工程の反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、-10~10℃である。本工程の反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、1~4時間である。
【0192】
工程19:
本工程は、式(32)で表される化合物のニトロ基をアミノ基へ還元し、式(33)で表される化合物へ変換する工程である。本工程に用いられる還元剤は、脱ヨード化が進行せずに、ニトロ基のみを選択的に還元できるものであればよく、好適には、水素存在下(好適には、0.05~0.2MPaの水素気流下)にて白金炭素触媒を用いることができる。本工程に用いられる白金炭素触媒の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、工程18で用いる式(3)で表される化合物に対して、5~40重量%である。本工程に用いられる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定はないが、例えば、メタノール、エタノール、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、及び水、並びにこれらの混合溶媒を挙げることができ、好適には酢酸エチルを挙げることができる。本工程の反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、50~70℃である。本工程の反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、2~8時間である。
【0193】
工程20:
本工程は、式(33)で表される化合物のアミノ基をアセチル化し、式(34)で表される化合物へ変換する工程である。本工程に用いられるアセチル化剤は、例えば、無水酢酸や塩化アセチルを挙げることができ、好適には、無水酢酸を挙げることができる。本工程に用いられる無水酢酸の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、工程18で用いる式(3)で表される化合物に対して、0.5~1当量である。本工程は好適には塩基を用いることができる。該塩基としては、反応が進行する限り制限されないが、好適には、トリエチルアミンである。該塩基の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、工程18で用いる式(3)で表される化合物に対して、0.75~1.5当量である。本工程に用いられる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定はないが、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、アセトン、2-ブタノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、及び水、並びにこれらの混合溶媒を挙げることができ、好適には酢酸エチルを挙げることができる。本工程の反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、10~40℃である。本工程の反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、3~12時間である。
【0194】
工程21:
本工程は、式(34)で表される化合物を、3-ブテン酸とカップリングすることにより、式(7)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、工程1に記載の方法と同様に行うことができる。
【0195】
工程22:
本工程は、式(7)で表される化合物を、還元することにより、式(8)で表される化合物へ変換する工程である。
【0196】
本工程は、工程12と同様な方法で行うことができるが、残存するヨウ化物イオンにより触媒活性が低下する可能性があるため、工程12よりも高い触媒量及び水素圧にて行うことが好ましい。
【0197】
本工程の還元は、反応が進行する限り方法は制限されないが、好適には、水素雰囲気下(好適には、0.15~0.6MPaの水素気流下)で、パラジウム触媒、白金触媒、ニッケル触媒、ルテニウム触媒、又はロジウム触媒を用いて行うことができ、より好適には、パラジウム触媒を用いて行うことができ、更により好適には、パラジウム炭素を用いて行うことができ、更により好適には、5%パラジウム炭素を用いることができる。本工程に用いられる5%パラジウム炭素の量は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、工程21で用いる式(34)で表される化合物に対して、20~160重量%である。
【0198】
本工程に用いられる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定はされないが、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、アセトン、2-ブタノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、及び水、並びにこれらの混合溶媒を挙げることができ、好適には、2-メチルテトラヒドロフランを挙げることができる。
【0199】
本工程の反応温度は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、20~60℃である。本工程の反応時間は、反応が進行する限り制限されないが、好適には、4~16時間である。
【0200】
工程23:
本工程は、式(8)で表される化合物を、分子内環化することにより、式(9)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、工程3に記載の方法と同様に行うことができる。
【0201】
工程24:
本工程は、式(9)で表される化合物を式(10)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、工程4に記載の方法と同様に行うことができる。
【0202】
工程25:
本工程は、式(10)で表される化合物の芳香族アミノ基の保護基を選択的に脱保護し、式(11)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、工程5に記載の方法と同様に行うことができる。
【0203】
工程26:
本工程は、式(11)で表される化合物と、式(1)で表される化合物を縮合し、式(12)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、工程16に記載の方法と同様に行うことができる。
【0204】
工程27:
本工程は、式(12)で表される化合物を、式(2)で表される化合物へ変換する工程である。本工程は、工程7に記載の方法と同様に行うことができる。
上記の各工程の反応において、反応終了後、各工程の目的化合物は、有機化学の分野で周知の方法に従って、反応混合物から単離され得る。目的化合物は、例えば、(i)必要に応じて触媒等の不溶物を濾去し、(ii)反応混合物に水及び水と混和しない溶媒(例えば、塩化メチレン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、又は2-メチルテトラヒドロフラン等)を加えて目的化合物を抽出し、(iii)有機層を水洗して、無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤を用いて乾燥させ、(iv)溶媒を留去することによって得られる。得られた目的化合物は、必要に応じ、有機化学の分野で周知の方法(例えば、再結晶、再沈殿、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィー等)により、さらに精製することができるが、本発明の製造方法は、好適には、クロマトグラフィーを使用せずに行うことができる。
【0205】
本発明の製造方法により得られた式(2)で表される化合物は、好適には、式(15)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートの製造のために使用することができるが、これに限定されず、他の化学構造を有する抗体-薬物コンジュゲートの製造や、その他の用途のために使用することもできる。
【0206】
[薬物リンカー中間体の製造]
【0207】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に、好適に使用される薬物リンカー中間体は、式(14)で表される化合物である。
【0208】
【化60】

【0209】
式(14)で表される化合物は、以下のように製造することができる。
【0210】
【化61】
【0211】
式(2)で表される化合物は、本発明の製造方法により、製造したものを用いることができる。式(13)で表される化合物は、国際公開第2014/057687号、国際公開第2015/098099号、国際公開第2015/115091号、国際公開第2015/155998号等の記載を参考に製造することができる。
【0212】
式(14)で表される化合物への変換は、式(13)で表される化合物を、活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物等に誘導し、好適には塩基の存在下、式(2)で表される化合物と反応させることにより、行うことができる。
【0213】
活性エステルは、例えば、式(13)で表される化合物を、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、又は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(WSCD・HCl)等の縮合剤を用いて、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、N-ヒドロキシスクシンイミド、又はp-ニトロフェノール等の添加剤と反応させることにより製造することができる。また、活性エステルは、式(13)で表される化合物を、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩ペンタフルオロフェニルトリフルオロアセテート(HATU)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩(HBTU)、シアノホスホン酸ジエチル、又は4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド(DMTMM)等の縮合剤と反応させることにより製造することもできる。
【0214】
混合酸無水物は、例えば、式(13)で表される化合物を、必要に応じて塩基の存在下、クロロ炭酸イソブチルと反応させることにより製造することができる。
【0215】
酸ハロゲン化物は、必要に応じて塩基の存在下、塩化チオニル、又はオキザリルクロリド等の酸ハロゲン化物で処理することにより製造することができる。
【0216】
本工程に用いられる塩基としては、反応が進行する限り特に制限は無いが、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン、ピリジン、2-メチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ウンデク-7-エン等の有機塩基や、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム tert-ブトキシド等の無機塩基を挙げることができ、好適には、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムを挙げることができ、より好適には、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、又はN-メチルモルホリンを挙げることができる。
【0217】
本工程に用いられる溶媒としては、反応を阻害するものでなければ特に限定はされないが、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、アセトン、2-ブタノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、及び水、並びにこれらの混合溶媒を挙げることができ、好適には、アセトニトリル、ジクロロメタン、メタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、及び水、並びにこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0218】
[抗体の製造]
【0219】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される抗体は、いずれの種に由来してもよいが、好適には、ヒト、ラット、マウス、及びウサギに由来する抗体である。抗体がヒト以外の種に由来する場合は、周知の技術を用いて、キメラ化又はヒト化することが好ましい。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。
【0220】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される抗体は、好適にはがん細胞を標的にできる性質を有するものであり、がん細胞を認識できる特性、がん細胞に結合できる特性、がん細胞内に取り込まれて内在化する特性、及び/又はがん細胞に対する殺細胞活性等を備えているものが好ましい。
【0221】
抗体のがん細胞への結合性は、フローサイトメトリーを用いて確認できる。がん細胞内への抗体の取り込みは、(1)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内に取り込まれた抗体を蛍光顕微鏡で可視化するアッセイ(Cell Death and Differentiation (2008) 15, 751-761)、(2)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内に取り込まれた蛍光量を測定するアッセイ(Molecular Biology of the Cell Vol. 15, 5268-5282, December 2004)、又は(3)治療抗体に結合するイムノトキシンを用いて、細胞内に取り込まれると毒素が放出されて細胞増殖が抑制されるというMab-ZAPアッセイ(Bio Techniques 28:162-165, January 2000)を用いて確認できる。イムノトキシンとしては、ジフテテリア毒素の触媒領域とプロテインGとのリコンビナント複合蛋白質も使用可能である。
【0222】
抗体の抗腫瘍活性は、in vitroでは、細胞の増殖の抑制活性を測定することで確認できる。例えば、抗体の標的蛋白質を過剰発現しているがん細胞株を培養し、培養系に種々の濃度で抗体を添加し、フォーカス形成、コロニー形成及びスフェロイド増殖に対する抑制活性を測定することができる。in vivoでは、例えば、標的蛋白質を高発現しているがん細胞株を移植したヌードマウスに抗体を投与し、がん細胞の変化を測定することによって、抗腫瘍活性を確認できる。
【0223】
抗体自体が抗腫瘍効果を有することは、好ましいが、抗体-薬物コンジュゲートは抗腫瘍効果を発揮する化合物を結合させてあるので、抗体自体の抗腫瘍効果は必須ではない。抗腫瘍性化合物の細胞障害性をがん細胞において特異的・選択的に発揮させる目的からは、抗体が内在化してがん細胞内に移行する性質のあることが重要であり、好ましい。
【0224】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される抗体は、公知の手段によって取得することができる。例えば、この分野で通常実施される方法を用いて、抗原となるポリペプチドを動物に免疫し、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。抗原の由来はヒトに限定されず、マウス、ラット等のヒト以外の動物に由来する抗原を動物に免疫することもできる。この場合には、取得された異種抗原に結合する抗体とヒト抗原との交差性を試験することによって、ヒトの疾患に適用可能な抗体を選別できる。
【0225】
また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature (1975) 256, p.495-497;Kennet, R. ed., Monoclonal Antibodies, p.365-367, Plenum Press, N.Y.(1980))に従って、抗原に対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによってハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。
【0226】
なお、抗原は抗原蛋白質をコードする遺伝子を遺伝子操作によって宿主細胞に産生させることによって得ることができる。具体的には、抗原遺伝子を発現可能なベクターを作製し、これを宿主細胞に導入して該遺伝子を発現させ、発現した抗原を精製すればよい。上記の遺伝子操作による抗原発現細胞、或は抗原を発現している細胞株、を動物に免疫する方法を用いることによっても抗体を取得できる。
【0227】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される抗体は、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体であることが好ましく、又はヒト由来の抗体の遺伝子配列のみを有する抗体、すなわちヒト抗体であることが好ましい。これらの抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0228】
キメラ抗体としては、抗体の可変領域と定常領域が互いに異種である抗体、例えばマウス又はラット由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体を挙げることができる(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, 6851-6855,(1984))。
【0229】
ヒト化抗体としては、異種抗体の相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)のみをヒト由来の抗体に組み込んだ抗体(Nature(1986) 321, p.522-525)、CDR移植法によって、異種抗体のCDRの配列に加えて、異種抗体の一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(国際公開第90/07861号)、遺伝子変換突然変異誘発(gene conversion mutagenesis)ストラテジーを用いてヒト化した抗体(米国特許第5821337号)を挙げることができる。
【0230】
ヒト抗体としては、ヒト抗体の重鎖と軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片を有するヒト抗体産生マウスを用いて作成した抗体(Tomizuka, K. et al., Nature Genetics(1997) 16, p.133-143;Kuroiwa, Y. et. al., Nucl. Acids Res.(1998) 26, p.3447-3448;Yoshida, H. et. al., Animal Cell Technology:Basic and Applied Aspects vol.10, p.69-73(Kitagawa, Y., Matsuda, T. and Iijima, S. eds.), Kluwer Academic Publishers, 1999;Tomizuka, K. et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2000) 97, p.722-727等を参照。)を挙げることができる。或いは、ヒト抗体ライブラリーより選別したファージディスプレイにより取得した抗体(Wormstone, I. M. et. al, Investigative Ophthalmology & Visual Science. (2002)43 (7), p.2301-2308;Carmen, S. et. al., Briefings in Functional Genomics and Proteomics(2002), 1(2), p.189-203;Siriwardena, D. et. al., Ophthalmology(2002) 109(3), p.427-431等参照。)も挙げることができる。
【0231】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される抗体には、抗体の修飾体も含まれる。当該修飾体とは、本発明に係る抗体に化学的又は生物学的な修飾が施されてなるものを意味する。化学的な修飾体には、アミノ酸骨格への化学部分の結合、N-結合又はO-結合炭水化物鎖への化学部分の結合を有する化学修飾体等が含まれる。生物学的な修飾体には、翻訳後修飾(例えば、N-結合又はO-結合型糖鎖の付加、N末端又はC末端のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化等)されたもの、原核生物宿主細胞を用いて発現させることによってN末にメチオニン残基が付加されたもの等が含まれる。また、本発明に係る抗体又は抗原の検出又は単離を可能にするために標識されたもの、例えば、酵素標識体、蛍光標識体、アフィニティ標識体もかかる修飾体の意味に含まれる。この様な本発明に係る抗体の修飾体は、抗体の安定性及び血中滞留性の改善、抗原性の低減、抗体又は抗原の検出又は単離等に有用である。
【0232】
また、本発明に係る抗体に結合している糖鎖修飾を調節すること(グリコシル化、脱フコース化等)によって、抗体依存性細胞傷害活性を増強することが可能である。抗体の糖鎖修飾の調節技術としては、国際公開第99/54342号、国際公開第00/61739号、国際公開第02/31140号等が知られているが、これらに限定されるものではない。本発明に係る抗体には当該糖鎖修飾が調節された抗体も含まれる。
【0233】
なお、哺乳類培養細胞で生産される抗体では、その重鎖のカルボキシル末端のリシン残基が欠失することが知られており(Journal of Chromatography A, 705: 129-134(1995))、また、同じく重鎖カルボキシル末端のグリシン、リシンの2アミノ酸残基が欠失し、新たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基がアミド化されることが知られている(Analytical Biochemistry, 360: 75-83(2007))。しかし、これらの重鎖配列の欠失及び修飾は、抗体の抗原結合能及びエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞障害作用等)には影響を及ぼさない。したがって、本発明に係る抗体には、当該修飾を受けた抗体及び当該抗体の機能性断片も含まれ、重鎖カルボキシル末端において1又は2のアミノ酸が欠失した欠失体、及びアミド化された当該欠失体(例えば、カルボキシル末端部位のプロリン残基がアミド化された重鎖)等も包含される。但し、抗原結合能及びエフェクター機能が保たれている限り、本発明に係る抗体の重鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種類に限定されない。本発明に係る抗体を構成する2本の重鎖は、完全長及び上記の欠失体からなる群から選択される重鎖のいずれか一種であってもよいし、いずれか二種を組み合わせたものであってもよい。各欠失体の量比は本発明に係る抗体を産生する哺乳類培養細胞の種類及び培養条件に影響を受け得るが、本発明に係る抗体は、好ましくは2本の重鎖の双方でカルボキシル末端のひとつのアミノ酸残基が欠失しているものを挙げることができる。
【0234】
本発明に係る抗体のアイソタイプとしては、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)等を挙げることができるが、好ましくはIgG1又はIgG2を挙げることができる。
【0235】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用できる抗体は、特に制限はないが、例えば、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗CD3抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD56抗体、抗CD98抗体、抗DR5抗体、抗EGFR抗体、抗EPHA2抗体、抗FGFR2抗体、抗FGFR4抗体、抗FOLR1抗体、抗VEGF抗体、及び抗GPR20抗体を挙げることができ、好適には、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、及び抗GPR20抗体を挙げることができる。
【0236】
本発明において、「抗HER2抗体」とは、HER2(Human Epidermal Growth Factor Receptor Type 2; ErbB-2)に特異的に結合し、好ましくは、HER2と結合することによってHER2発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0237】
抗HER2抗体としては、例えば、トラスツズマブ(trastuzumab)(米国特許第5821337号)、及び、ペルツズマブ(pertuzumab)(国際公開第01/00245号)を挙げることができ、好適にはトラスツズマブを挙げることができる。
【0238】
本発明において、「トラスツズマブ」は、配列番号1(図1)においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2(図2)においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなるヒト化抗HER2モノクローナル抗体である。
【0239】
本発明において、「抗HER3抗体」とは、HER3(Human Epidermal Growth Factor Receptor Type 3; ErbB-3)に特異的に結合し、好適には、HER3発現細胞表面上のHER3と結合して該HER3発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0240】
抗HER3抗体としては、例えば、パトリツマブ(patritumab; U3-1287)、U1-59(国際公開第2007/077028号)、MM-121(seribantumab)、国際公開2008/100624号記載の抗ERBB3抗体、RG-7116(lumretuzumab)、及びLJM-716(elgemtumab)を挙げることができ、好適には、パトリツマブ、及びU1-59を挙げることができる。
【0241】
本発明において、「抗TROP2抗体」とは、TROP2(TACSTD2:Tumor-associated calcium signal transducer 2; EGP-1)に特異的に結合し、好ましくは、TROP2と結合することによってTROP2発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0242】
抗TROP2抗体としては、例えば、hTINA1-H1L1(国際公開第2015/098099号)を挙げることができる。
【0243】
本発明において、「抗B7-H3抗体」とは、B7-H3(B cell antigen #7 homolog 3; PD-L3; CD276)に特異的に結合し、好ましくは、B7-H3と結合することによってB7-H3発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0244】
抗B7-H3抗体としては、例えば、M30-H1-L4(国際公開第2014/057687号)を挙げることができる。
【0245】
本発明において、「抗GPR20抗体」とは、GPR20(G Protein-coupled receptor 20)に特異的に結合し、好ましくは、GPR20と結合することによってGPR20発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
抗GPR20抗体としては、例えば、h046-H4e/L7(国際公開第2018/135501号)を挙げることができる。
【0246】
[抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション]
【0247】
本発明にかかる抗体-薬物コンジュゲートは、薬物リンカー中間体(好適には式(14)で表される化合物)と、チオール基(又はスルフヒドリル基とも言う)を有する抗体を反応させることによって製造することができる。
【0248】
スルフヒドリル基を有する抗体は、当業者周知の方法で得ることができる(Hermanson, G. T, Bioconjugate Techniques, pp.56-136, pp.456-493, Academic Press(1996))。例えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)等の還元剤を、抗体内鎖間ジスルフィド1個当たりに対して0.3乃至3モル当量用い、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート剤を含む緩衝液中で、抗体と反応させることで、抗体内鎖間ジスルフィドが部分的若しくは完全に還元されたスルフヒドリル基を有する抗体を得ることができる。
【0249】
さらに、スルフヒドリル基を有する抗体1個あたり、2乃至20モル当量の薬物リンカー中間体(好適には式(14)で表される化合物)を使用して、抗体1個当たり2個乃至8個の薬物が結合した抗体―薬物コンジュゲートを製造することができる。
【0250】
製造した抗体-薬物コンジュゲートの抗体一分子あたりの平均薬物結合数の算出は、例えば、280nm及び370nmの二波長における抗体-薬物コンジュゲートとそのコンジュゲーション前駆体のUV吸光度を測定することにより算出する方法(UV法)や、抗体-薬物コンジュゲートを還元剤で処理し得られた各フラグメントをHPLC測定により定量し算出する方法(HPLC法)により行うことができる。
【0251】
抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション、及び抗体-薬物コンジュゲートの抗体一分子あたりの平均薬物結合数の算出は、国際公開第2014/057687号、国際公開第2015/098099号、国際公開第2015/115091号、国際公開第2015/155998号、及び国際公開第2018/135501号等の記載を参考に実施することができる。
【0252】
本発明において、「抗HER2抗体-薬物コンジュゲート」とは、抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗HER2抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0253】
抗HER2抗体は、好適には、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である。
【0254】
本発明によって製造される抗HER2抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0255】
該抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、本発明の製造方法により製造した薬物リンカー中間体(好適には式(14)で表される化合物)を用いて、国際公開第2015/115091号等の記載を参考に製造することができる。
【0256】
本発明において、「抗HER3抗体-薬物コンジュゲート」とは、抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗HER3抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0257】
抗HER3抗体は、好適には、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0258】
本発明によって製造される抗HER3抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0259】
該抗HER3抗体-薬物コンジュゲートは、本発明の製造方法により製造した薬物リンカー中間体(好適には式(14)で表される化合物)を用いて、国際公開第2015/155998号等の記載を参考に製造することができる。
【0260】
本発明において、「抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート」とは、抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗TROP2抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0261】
抗TROP2抗体は、好適には、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0262】
本発明によって製造される抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から5であり、更により好適には3.5から4.5であり、更により好適には約4である。
【0263】
該抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、本発明の製造方法により製造した薬物リンカー中間体(好適には式(14)で表される化合物)を用いて、国際公開第2015/098099号等の記載を参考に製造することができる。
【0264】
本発明において、「抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲート」とは、抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗B7-H3抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0265】
抗B7-H3抗体は、好適には、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0266】
本発明によって製造される抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から5であり、更により好適には3.5から4.5であり、更により好適には約4である。
【0267】
該抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲートは、本発明の製造方法により製造した薬物リンカー中間体(好適には式(14)で表される化合物)を用いて、国際公開第2014/057687号等の記載を参考に製造することができる。
【0268】
本発明において、「抗GPR20抗体-薬物コンジュゲート」とは、抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗GPR20抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0269】
抗GPR20抗体は、好適には、配列番号9においてアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0270】
本発明によって製造される抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には約8である。
【0271】
該抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートは、本発明の製造方法により製造した薬物リンカー中間体(好適には式(14)で表される化合物)を用いて、国際公開第2018/135501号等の記載を参考に製造することができる。
【0272】
[医薬組成物]
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートは、1種以上の薬学的に適合性の成分を含み投与され得る。薬学的に適合性の成分は、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートの投与量や投与濃度等に応じて、この分野において通常使用される製剤添加物その他から適宜選択して適用することができる。例えば、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートは、ヒスチジン緩衝剤等の緩衝剤、スクロース又はトレハロース等の賦形剤、並びにポリソルベート80又はポリソルベート20等の界面活性剤を含む医薬組成物として投与され得る。
【0273】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物は、患者に対しては全身療法として適用する他、がん組織に局所的に適用して治療効果を期待することができる。
【0274】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物は、哺乳動物に対して好適に使用することができるが、より好適にはヒトに対して使用することができる。
【0275】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物は、好適には、注射剤として使用することができ、より好適には、水性注射剤又は凍結乾燥注射剤として使用することができ、更により好適には、凍結乾燥注射剤として使用することができる。
【0276】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物が水性注射剤である場合、好適には、適切な希釈液で希釈した後、静脈内に点滴投与することができる。希釈液としては、ブドウ糖溶液(好適には5%ブドウ糖溶液)や、生理食塩液、等を挙げることができる。
【0277】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物が凍結乾燥注射剤である場合、好適には、注射用水により溶解した後、必要量を適切な希釈液で希釈した後、静脈内に点滴投与することができる。希釈液としては、ブドウ糖溶液(好適には5%ブドウ糖溶液)や、生理食塩液等を挙げることができる。
【0278】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物を投与するために使用され得る導入経路としては、例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、及び腹腔内の経路を挙げることができ、好適には、静脈内の経路を挙げることができる。
【0279】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートは、ヒトに対して、1~180日間に1回の間隔で投与することができ、好適には、1週、2週、3週、又は4週に1回の間隔で投与することができ、さらにより好適には、3週に1回の間隔で投与することができる。また、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートは、1回あたり約0.001~100mg/kgの投与量で投与することができ、好適には、1回あたり0.8~12.4mg/kgの投与量で投与することができる。本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートが抗HER2抗体-薬物コンジュゲートである場合、好適には、1回あたり5.4、6.4、又は7.4mg/kgの投与量で投与することができ、更により好適には、1回あたり5.4mg/kg又は6.4mg/kgの投与量で投与することができる。
【0280】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物は、がんの治療のために使用することができ、好適には、乳がん、胃がん(胃腺がんと呼ぶこともある)、大腸がん(結腸直腸がんと呼ぶこともあり、結腸がん及び直腸がんを含む)、肺がん(小細胞肺がん及び非小細胞肺がんを含む)、食道がん、唾液腺がん、胃食道接合部腺がん、胆管がん、ページェット病、膵臓がん、卵巣がん、子宮がん肉腫、尿路上皮がん、前立腺がん、膀胱がん、胃腸間質腫瘍、消化管間質腫瘍、子宮頸がん、扁平上皮がん、腹膜がん、肝臓がん、肝細胞がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん、子宮がん、腎臓がん、外陰部がん、甲状腺がん、陰茎がん、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞腫、骨髄腫、神経上皮組織性腫瘍、神経鞘性腫瘍、頭頸部がん、皮膚がん、咽頭がん、胆のうがん、胆管がん、中皮腫、及び肉腫からなる群より選択される少なくとも一つのがんの治療のために使用することができ、例えば、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートが抗HER2抗体-薬物コンジュゲートである場合、より好適には、乳がん、胃がん、大腸がん、非小細胞肺がん、食道がん、唾液腺がん、胃食道接合部腺がん、胆管がん、ページェット病、膵臓がん、卵巣がん、及び子宮がん肉腫からなる群より選択される少なくとも一つのがんの治療のために使用することができ、より好適には、乳がん、胃がん、大腸がん、非小細胞肺がん、食道がん、唾液腺がん、胃食道接合部腺がん、胆管がん、及びページェット病からなる群より選択される少なくとも一つのがんの治療のために使用することができ、さらにより好適には、乳がん、胃がん、大腸がん、又は非小細胞肺がんの治療のために使用することができる。
【0281】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物は、がん治療の主要な治療法である薬物療法のための薬剤として選択して使用することができ、その結果として、がん細胞の成長を遅らせ、増殖を抑え、さらにはがん細胞を破壊することができる。これらの作用によって、がん患者において、がんによる症状からの解放や、QOLの改善を達成でき、がん患者の生命を保って治療効果が達成される。がん細胞の破壊には至らない場合であっても、がん細胞の増殖の抑制やコントロールによってがん患者においてより高いQOLを達成しつつより長期の生存を達成させることができる。
【0282】
このような薬物療法においての薬物単独での使用の他、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物は、アジュバント療法において他の療法と組み合わせて使用することもでき、外科手術や、放射線療法、ホルモン療法等と組み合わせることができる。さらにはネオアジュバント療法における薬物療法として使用することもできる。
【0283】
以上のような治療的使用の他、本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物は、微細な転移がん細胞の増殖を押さえ、さらには破壊するといった予防効果も期待することができる。例えば、転移過程で体液中にあるがん細胞を抑制し破壊する効果や、いずれかの組織に着床した直後の微細ながん細胞に対する抑制、破壊等の効果が期待できる。したがって、特に外科的ながんの除去後においてのがん転移の抑制、予防効果が期待できる。
【0284】
本発明によって製造される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物は、他のがん治療剤と併用して投与することもでき、これによって抗腫瘍効果を増強させることができる。この様な目的で使用される他のがん治療剤として、5-フルオロウラシル(5-FU)、ペルツズマブ(Pertuzumab)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、パクリタキセル(Paclitaxel)、カルボプラチン(Carboplatin)、シスプラチン(Cisplatin)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、カペシタビン(Capecitabine)、イリノテカン(Irinotecan)(CPT-11)、ドセタキセル(Docetaxel)、ペメトレキセド(Pemetrexed)、ソラフェニブ(Sorafenib)、ビンブラスチン(Vinblastin)、ビノレルビン(Vinorelbine)、エベロリムス(Everolims)、タネスピマイシン(Tanespimycin)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、ラパチニブ(Lapatinib)、トラスツズマブエムタンシン(Trastuzumab emtansine)(T-DM1)及び国際公開第2003/038043号に記載の薬剤、更にLH-RHアナログ(リュープロレリン(Leuprorelin)、ゴセレリン(Goserelin)等)、エストラムスチン・フォスフェイト(Estramustine Phosphate)、エストロジェン拮抗薬(タモキシフェン(Tamoxifen)、ラロキシフェン(Raloxifene)等)、アロマターゼ阻害剤(アナストロゾール(Anastrozole)、レトロゾール(Letrozole)、及びエキセメスタン(Exemestane)等)等を挙げることができるが、抗腫瘍活性を有する薬剤であれば限定されることはない。
【実施例
【0285】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
実施例中の「H-NMR」及び「13C-NMR」は、「核磁気共鳴スペクトル」を意味し、括弧内のCDClは測定溶媒である重クロロホルムを意味し、DMSO-dは測定溶媒である重ジメチルスルホキシドを意味し、DOは測定溶媒である重水を意味する。内部標準物質としてTMS(テトラメチルシラン)を用いた。H-NMRにおける多重度は、s=singlet、d=doublet、t=triplet、q=quartet、quint=quintet、m=multiplet、及びbrs=broad singletを意味する。
【0286】
(実施例1)
N-(3-ブロモ-5-フルオロ-4-メチルフェニル)アセトアミド
【0287】
【化62】
【0288】
2-フルオロ-1-メチル-4-ニトロベンゼン(10.0g、64.5mmol)の濃硫酸(90%以上、50mL)とヘプタン(50mL)の溶液を約60℃に加温した後、N-ブロモスクシンイミド(13.8g、77.4mmol)を6回に分けて添加した。約60℃で1時間撹拌した後、室温まで冷却した。得られた反応液を冷水(50mL)に添加した。トルエン(50mL)を添加して分液後、水層を除去した。次いで有機層を水(50mL)、6.5wt%炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、5wt%亜硫酸ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄した。得られた水層に水(50mL)、活性炭(1.0g)を添加して、室温で1時間撹拌した後、不溶物を濾別して不溶物をトルエン(20mL)で洗浄した。濾液から水層を除去後、有機層を減圧下、濃縮した。濃縮残渣(約30mL)に酢酸エチル(100mL)を添加して、再度減圧下、濃縮して1-ブロモ-3-フルオロ-2-メチル-5-ニトロベンゼンの酢酸エチル溶液(約30mL)を得た。
【0289】
1-ブロモ-3-フルオロ-2-メチル-5-ニトロベンゼンの酢酸エチル溶液(約30mL)に1%白金炭素触媒(2.0g)、酢酸エチル(120mL)を添加した懸濁液を窒素で置換した後、水素で置換した。水素気流下(0.1MPa)、約60℃で4時間撹拌し、室温まで冷却した。得られた懸濁液から不溶物を濾別して不溶物を酢酸エチル(30mL)で洗浄した。濾液を0.5N塩酸水(100mL)で2回洗浄して有機層を得た。この際の水層を酢酸エチル(50mL)で抽出し、有機層を得て、有機層を合致した。その後、6.5wt%炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)、5wt%食塩水(50mL)で洗浄して、得られた有機層を減圧下、濃縮した。濃縮残渣(約30mL)に酢酸エチル(50mL)を添加して、再度減圧下、濃縮して3-ブロモ-5-フルオロ-4-メチルアニリンの酢酸エチル溶液(約30mL)を得た。
3-ブロモ-5-フルオロ-4-メチルアニリンの酢酸エチル溶液(約29mL)に酢酸エチル(30mL)を添加した溶液に、トリエチルアミン(7.2mL、51.8mmol)、無水酢酸(3.3mL、34.4mmol)を添加して室温で6時間撹拌した。得られた反応液に10wt%食塩水(50mL)を添加して分液後、水層を除去した。得られた有機層を減圧下、濃縮後、酢酸エチル(50mL)添加して再度減圧下、濃縮した。濃縮残渣(約30mL)に酢酸エチル(80mL)を加え、4N塩酸/酢酸エチル溶液(10.9mL、43.7mmol)を添加後、室温下で1時間撹拌した。不溶物を濾別して不溶物を酢酸エチル(40mL)で洗浄した。濾液に10wt%食塩水(40mL)を添加後、25wt%水酸化ナトリウム水溶液(5.6g)を添加してpHを約7とした。水層を除去後、有機層を減圧下、濃縮した。濃縮残渣(約30mL)にトルエン(100mL)を添加して、減圧下濃縮した濃縮残渣(約30mL)を50℃で5時間撹拌後、室温に冷却した。室温にて12時間撹拌した後、3℃まで冷却して2時間撹拌した。析出した結晶を濾取して、冷トルエン(20mL)、冷75%含水アセトニトリル(20mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下40℃で乾燥し、N-(3-ブロモ-5-フルオロ-4-メチルフェニル)アセトアミドを白色結晶(5.7g、収率37%)として得た。
【0290】
H-NMR (500MHz,CDCl)δ7.41(1H,s),7.39(1H,d,J=9.2Hz),7.20(1H,brs),2.27(3H,d,J=2.0Hz),2.17(3H,s)
【0291】
(実施例2)
4-[5-(アセチルアミノ)-3-フルオロ-2-メチルフェニル]ブタン酸
【0292】
【化63】
【0293】
N-(3-ブロモ-5-フルオロ-4-メチルフェニル)アセトアミド(30.0g、121.9mmol)、3-ブテン酸(12.4mL、146.3mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(46.0mL、268.2mmol)のテトラヒドロフラン(120mL)、水(30mL)の溶液を減圧下、脱気して窒素置換後、トリ(o-トリル)ホスフィン(1.1g、3.7mmol)を添加した。再度減圧下、脱気し窒素置換後、酢酸パラジウム(II)(0.4g、1.8mmol)を添加し、減圧下、脱気して窒素で置換後5時間加熱還流した。室温に冷却した反応液に活性炭(3.0g)を添加して室温で1時間撹拌した。不溶物を濾別して不溶物を20%含水テトラヒドロフラン(60mL)で洗浄した。濾液に2-メチルテトラヒドロフラン(300mL)、水(300mL)を添加して25wt%水酸化ナトリウム水溶液(23.4g、146.3mmol)を添加した。有機層を除去し、水層に2-メチルテトラヒドロフラン(300mL)、濃塩酸(36%、22.2g、219.4mmol)を添加後、塩化ナトリウム(30g)を添加した。分液後、水層を除去し、有機層を10wt%食塩水(90mL)で洗浄した。得られた有機層を減圧下、濃縮して幾何異性体を含む4-[5-(アセチルアミノ)-3-フルオロ-2-メチルフェニル]-3-ブテン酸を2-メチルテトラヒドロフラン溶液(約150mL)として得た。
【0294】
幾何異性体を含む4-[5-(アセチルアミノ)-3-フルオロ-2-メチルフェニル]-3-ブテン酸を2-メチルテトラヒドロフラン溶液(約140mL)に2-メチルテトラヒドロフラン(308mL)、5%パラジウム炭素(5.6g)を添加した懸濁液を窒素で置換した後、水素で置換した。水素気流下(0.1MPa)、約40℃で1時間撹拌し、室温まで冷却した。得られた懸濁液から不溶物を濾別して不溶物を2-メチルテトラヒドロフラン(112mL)で洗浄した。濾液に水(140mL)を添加して1N塩酸水でpHを約2とした。分液後、水層を除去して、得られた有機層を減圧下、濃縮した。濃縮残渣に酢酸エチル(420mL)を添加して、減圧下、濃縮した。再度酢酸エチル(420mL)を添加して、減圧下、濃縮して濃縮残渣(約170mL)を得た。50℃で5時間撹拌後、ヘプタン(140mL)を添加して、室温まで冷却した。析出した結晶を濾取して、酢酸エチル/ヘプタン(3/7)(84mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下、乾燥して4-[5-(アセチルアミノ)-3-フルオロ-2-メチルフェニル]ブタン酸を白色結晶(26.1g、収率91%)として得た。
【0295】
H-NMR (500MHz,DMSO-d)δ12.08(1H,brs),9.97(1H,s),7.42(1H,dd,J=12.5,2.0Hz),7.05(1H,d,J=1.5Hz),2.59-2.54(2H,m),2.28(2H,t,J=7.3Hz),2.10(3H,d,J=2.0Hz),2.02(3H,s),1.71(2H,quint,J=7.5Hz)
【0296】
(実施例3-1)
N-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド
【0297】
【化64】
【0298】
4-[5-(アセチルアミノ)-3-フルオロ-2-メチルフェニル]ブタン酸(12.0g、47.4mmol)、トリフルオロ酢酸(24mL)の溶液を4℃に冷却後、無水トリフルオロ酢酸(13.4mL、94.8mmol)を滴下し、約4℃で4時間撹拌した。得られた反応液を5℃に冷却した50%含水アセトニトリル(120mL)に滴下した。25wt%水酸化ナトリウム水溶液(77.3g)でpHを約7とした後、水(59mL)を添加した。その後、室温に戻して析出した結晶を濾取して、水(60mL)、75%含水アセトニトリル(60mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下、乾燥してN-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミドを淡黄白色結晶(10.2g、収率92%)として得た。
【0299】
H-NMR (400MHz,CDCl)δ12.31(1H,brs),8.43(1H,d,J=12.8Hz),2.88(2H,t,J=12.0Hz),2.66(2H,dd,J=7.2,6.0Hz),2.22(3H,s),2.17(3H,d,J=2.0Hz),2.09(3H,quint,J=6.4Hz)
【0300】
(実施例3-2)
N-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド
【0301】
【化65】
【0302】
4-[5-(アセチルアミノ)-3-フルオロ-2-メチルフェニル]ブタン酸(5.0g、19.7mmol)、トリフルオロ酢酸(10mL)の溶液を2℃に冷却後、無水トリフルオロ酢酸(5.6mL、39.5mmol)を滴下し、約5℃で3時間撹拌した。反応液に50%含水アセトニトリル(50mL)を滴下した。25w/v%水酸化ナトリウム水溶液(33mL)でpHを約7とした後、水(17mL)を添加した。その後、室温に戻して析出した結晶を濾取して、水(25mL)、75%含水アセトニトリル(25mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下、乾燥してN-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミドを淡黄白色結晶(4.3g、収率92%)として得た。
【0303】
(実施例3-3)
N-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド
【0304】
【化66】
【0305】
4-[5-(アセチルアミノ)-3-フルオロ-2-メチルフェニル]ブタン酸(5.0g、19.7mmol)、トリフルオロ酢酸(10mL)の溶液を2℃に冷却後、無水トリフルオロ酢酸(5.6mL、39.5mmol)を滴下し、約5℃で4時間撹拌した。反応液に17%含水アセトニトリル(30mL)を滴下後、水(20mL)を滴下した。25w/v%水酸化ナトリウム水溶液(33mL)でpHを約7とした後、水(17mL)を添加した。その後、室温に戻して析出した結晶を濾取して、水(25mL)、75%含水アセトニトリル(25mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下、乾燥してN-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミドを淡黄白色結晶(4.3g、収率93%)として得た。
【0306】
(実施例4-1)
N,N’-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,7-ジイル)ジアセトアミド
【0307】
【化67】
【0308】
N-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド(5.0g、21.3mmol)のテトラヒドロフラン(75mL)溶液を6℃に冷却し、亜硝酸アミル(3.7mL、27.6mmol)、カリウム tert-ブトキシド(2.9g、25.5mmol)を添加した。3℃で17時間撹拌した後、酢酸(25mL)、無水酢酸(25mL)を添加後、昇温した。約20℃で2%白金炭素触媒(1.5g)を添加し、窒素で置換した後、水素で置換した。水素気流下(0.3MPa)、室温で4時間撹拌した。得られた懸濁液から不溶物を濾別して不溶物を酢酸エチル(25mL)で洗浄した。濾液に活性炭(0.7g)を添加して、室温で1時間撹拌後、不溶物を濾別、不溶物を酢酸エチル(25mL)で洗浄した。濾液を1℃に冷却し、5N水酸化ナトリウム水溶液(50mL)を滴下した。水層を除去し、再度5N水酸化ナトリウム水溶液(50mL)を添加し、水層を除去した。得られた有機層にテトラヒドロフラン(35mL)、水(25mL)を添加後、5N水酸化ナトリウム水溶液(25mL)を添加してpHを約7とした。室温に昇温後、水層を除去し有機層を10wt%食塩水(25mL)で洗浄した。得られた有機層を減圧下、濃縮し、濃縮残渣とした。濃縮残渣に酢酸エチル(50mL)を添加して減圧下、濃縮した。本操作を合計3回繰り返した濃縮残渣(約25mL)を40℃で5時間撹拌後、室温に冷却し、2℃で3時間撹拌した。析出した結晶を濾取して、冷酢酸エチル(25mL)、水(25mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下、乾燥してN,N’-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,7-ジイル)ジアセトアミドを白色結晶(3.7g、収率60%)として得た。
【0309】
H-NMR (500MHz,CDCl)δ11.76(1H,s),8.43(1H,d,J=13.0Hz),6.53(1H,d,J=4.5Hz),4.62(1H,dt,J=14.0,5.4Hz),3.08-2.96(2H,m),2.78-2.72(1H,m),2.23(3H,s),2.15(3H,d,J=1.5Hz),2.11(3H,s),1.88-1.77(1H,m)
【0310】
(実施例4-2)
N,N’-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,7-ジイル)ジアセトアミド
【0311】
【化68】
【0312】
N-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド(35.0g、148.8mmol)のテトラヒドロフラン(525mL)溶液を4℃に冷却し、亜硝酸アミル(25.7mL、193.4mmol)、カリウム tert-ブトキシド(20.0g、178.6mmol)を添加した。1℃で17時間撹拌した後、酢酸(175mL)、無水酢酸(175mL)を添加後、昇温した。約20℃で2%白金炭素触媒(11.8g)を添加し、窒素で置換した後、水素で置換した。水素気流下(0.3MPa)、室温で3時間撹拌した。得られた懸濁液から不溶物を濾別して不溶物を酢酸エチル(175mL)で洗浄した。濾液に活性炭(5.3g)を添加して、室温で2時間撹拌後、不溶物を濾別、不溶物を酢酸エチル(175mL)で洗浄した。濾液を1℃に冷却し、5N水酸化ナトリウム水溶液(350mL)を滴下した。水層を除去し、再度5N水酸化ナトリウム水溶液(350mL)を添加し、水層を除去した。得られた有機層にテトラヒドロフラン(245mL)、水(175mL)を添加後、5N水酸化ナトリウム水溶液(150mL)を添加してpHを約7とした。室温に昇温後、水層を除去し有機層を10wt%食塩水(175mL)で洗浄した。得られた有機層を減圧下、濃縮し、濃縮残渣とした。濃縮残渣に酢酸エチル(350mL)を添加して減圧下、濃縮した。本操作を合計3回繰り返した濃縮残渣(約175mL)を40℃で5時間撹拌後、室温に冷却し、2℃で3時間撹拌した。析出した結晶を濾取して、冷酢酸エチル(175mL)、水(175mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下、乾燥して白色結晶(25.1g)として取得した。
取得した結晶(24.0g、82.1mmol)の20%含水エタノール(300mL)の懸濁液を65℃に加熱した。活性炭(4.8g)を添加して、70℃で30分間撹拌後、不溶物を濾別、不溶物を20%含水エタノール(72mL)で洗浄した。濾液に60℃で水(300mL)を滴下後、2℃まで徐冷し、2時間撹拌した。析出した結晶を濾取して、冷60%含水エタノール(120mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下、乾燥してN,N’-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,7-ジイル)ジアセトアミドを白色結晶(21.6g、収率52%)として得た。
【0313】
H-NMR (500MHz,CDCl)δ11.76(1H,s),8.43(1H,d,J=13.0Hz),6.53(1H,d,J=4.5Hz),4.62(1H,dt,J=14.0,5.4Hz),3.08-2.96(2H,m),2.78-2.72(1H,m),2.23(3H,s),2.15(3H,d,J=1.5Hz),2.11(3H,s),1.88-1.77(1H,m)
【0314】
(実施例4-3)
N,N’-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,7-ジイル)ジアセトアミド
【0315】
【化69】
【0316】
N-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド(3.0g、12.8mmol)のテトラヒドロフラン(45mL)溶液を0℃に冷却し、亜硝酸アミル(2.2mL、16.6mmol)、カリウム tert-ブトキシド(1.7g、15.3mmol)を添加した。3℃で3時間撹拌した後、酢酸(15mL)、無水酢酸(15mL)を添加し、20℃に昇温して1.5時間撹拌した。約3℃で5%白金炭素触媒(0.4g)を添加し、窒素で置換した後、水素で置換した。水素気流下(0.6MPa)、約5℃で3時間撹拌した。その後、約30℃で1時間撹拌し、不溶物を濾別して不溶物を酢酸エチル(15mL)で洗浄した。濾液に活性炭(0.5g)を添加して、室温で2時間撹拌後、不溶物を濾別、不溶物を酢酸エチル(15mL)で洗浄した。濾液を約5℃に冷却し、5N水酸化ナトリウム水溶液(30mL)を滴下した。水層を除去し、テトラヒドロフラン(30mL)5N水酸化ナトリウム水溶液(30mL)を添加し、水層を除去した。得られた有機層に水(15mL)を添加後、5N水酸化ナトリウム水溶液(15mL)を添加してpHを約7とした。室温に昇温後、水層を除去し有機層を10wt%食塩水(15mL)で洗浄した。得られた有機層を減圧下、濃縮し、濃縮残渣とした。濃縮残渣に酢酸エチル(30mL)を添加して減圧下、濃縮した。本操作を合計3回繰り返した濃縮残渣(約15mL)を40℃で5時間撹拌後、室温に冷却し、5℃で2時間以上撹拌した。析出した結晶を濾取して、冷酢酸エチル(15mL)、水(15mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下、乾燥してN,N’-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,7-ジイル)ジアセトアミドを白色結晶(2.3g、収率62%)として得た。
【0317】
(実施例5-1)
N-(8-アミノ-6-フルオロ-5-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)アセトアミド
【0318】
【化70】
【0319】
N,N’-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,7-ジイル)ジアセトアミド(3.0g、10.3mmol)と2N塩酸/エタノール(30mL)の懸濁液を50℃で7時間撹拌した。得られた反応液に水(45mL)を添加し、1℃に冷却した。1℃でトリエチルアミン(8.6mL、61.6mmol)を滴下後、亜硫酸ナトリウム(26mg、0.2mmol)を添加した。1℃で4時間撹拌後、析出した結晶を濾趣して、冷60%含水エタノール(30mL)、水(15mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下、乾燥して淡緑色結晶(2.4g)として取得した。取得した淡緑色結晶(1.8g)のアセトン(18mL)の懸濁液を50℃で5時間撹拌後、室温に冷却した。析出した結晶を濾取して、アセトン(9mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下、40℃で乾燥してN-(8-アミノ-6-フルオロ-5-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)アセトアミドを淡緑色結晶(1.6g、収率82%)として得た。
【0320】
H-NMR (400MHz,DMSO-d)δ8.07(1H,d,J=8.0Hz),7.40(2H,brs),6.38(1H,d,J=13.2Hz),4.52-4.43(1H,m),2.98-2.88(1H,m),2.87-2.76(1H,m),2.18-2.10(1H,m),1.98(3H,d,J=1.2Hz),1.90(3H,s),1.88-1.78(1H,m)
【0321】
(実施例5-2)
N-(8-アミノ-6-フルオロ-5-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)アセトアミド
【0322】
【化71】
【0323】
2N塩酸/エタノール(75mL)にN,N’-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,7-ジイル)ジアセトアミド(5.0g、17.1mmol)を室温で5分割添加し、50℃で5時間撹拌した。得られた反応液に水(113mL)を添加し、2℃に冷却した。2℃でトリエチルアミン(22.5mL、161.4mmol)を滴下後、亜硫酸ナトリウム(43mg、0.3mmol)を添加した。2℃で3時間撹拌後、析出した結晶を濾趣して、冷60%含水エタノール(50mL)、水(25mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下、乾燥して淡青色結晶(3.9g)として取得した。取得した結晶(1.8g)のアセトン(18mL)の懸濁液を50℃で5時間撹拌後、室温に冷却した。析出した結晶を濾取して、アセトン(9mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下、40℃で乾燥してN-(8-アミノ-6-フルオロ-5-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)アセトアミドを淡緑色結晶(1.6g、収率80%)として得た。
【0324】
H-NMR (400MHz,DMSO-d)δ8.07(1H,d,J=8.0Hz),7.40(2H,brs),6.38(1H,d,J=13.2Hz),4.52-4.43(1H,m),2.98-2.88(1H,m),2.87-2.76(1H,m),2.18-2.10(1H,m),1.98(3H,d,J=1.2Hz),1.90(3H,s),1.88-1.78(1H,m)
【0325】
(実施例6-1)
N-[(9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アセトアミド
【0326】
【化72】
【0327】
N-(8-アミノ-6-フルオロ-5-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)アセトアミド(170.0g、679mmol)と(4S)-4-エチル-4-ヒドロキシ-7,8-ジヒドロ-1H-ピラノ[3,4-f]インドリジン-3,6,10(4H)-トリオン(196.7g、747mmol)のトルエン(8.5L)懸濁液に、o-クレゾール(510mL)とピリジニウム p-トルエンスルホナート(25.6g,102mmol)を加え、32時間還流した。トルエン(500mL)を添加し室温まで冷却し更に2時間撹拌した。析出した結晶を濾過し、濾別した結晶をアセトン(850mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下40℃で乾燥し、黄色結晶のN-[(9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アセトアミド(312.5g,収率96%)を得た。
【0328】
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ0.87(3H,t,J=7.3Hz),1.79-1.88(2H,m),1.91(3H,s),2.13-2.15(2H,m),2.39(3H,s),3.13-3.22(2H,m),5.20(2H,dd,J=25.6, 18.9Hz),5.42(2H,s),5.53-5.57(1H,m),6.52(1H,s),6.65-6.69(0.4H,m),6.75(0.4H,d,J=7.9Hz),6.95-6.99(0.4H,m),7.03(0.4H,d,J=7.3Hz),7.13-7.27(0.4H,m).7.30(1H,s),7.79(1H,d,J=11.0Hz),8.46(1H,d,J=9.2Hz),9.19(0.4H,s).
13C-NMR (100MHz,DMSO-d)δ7.7, 10.9, 10.9, 15.9, 22.6, 23.1, 27.7, 30.3, 44.0, 49.5, 65.2, 72.3, 96.6, 109.7, 109.9, 114.5, 118.7, 119.1, 121.4, 123.6, 123.7, 123.7, 125.3, 125.5, 126.6, 128.2, 128.9, 130.5, 136.2, 136.3, 140.4, 145.2, 147.8, 147.9, 149.9, 152.3, 155.3, 156.6, 160.3, 162.8, 169.1, 172.4.
MS(ESI)(m/z):478([M+H]).
【0329】
(実施例6-2)
N-[(9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アセトアミド
【0330】
【化73】
【0331】
N-(8-アミノ-6-フルオロ-5-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)アセトアミド(2.5g、9.99mmol)と(4S)-4-エチル-4-ヒドロキシ-7,8-ジヒドロ-1H-ピラノ[3,4-f]インドリジン-3,6,10(4H)-トリオン(3.42g、12.99mmol)のトルエン(125mL)懸濁液に、o-クレゾール(7.5mL)とピリジニウム p-トルエンスルホナート(0.75g,3.00mmol)を加え、19時間還流した(中間体として式(30)で表される化合物及び式(31)で表される化合物を経由していることを確認した)。
【0332】
式(30)で表される化合物:
N-[(2S)-8-{[(4S)-4-エチル-4-ヒドロキシ-3,10-ジオキソ-3,4,8,10-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3,4-f]インドリジン-6-イル]アミノ}-6-フルオロ-5-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル]アセトアミド
【0333】
【化74】
【0334】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ1.04(3H,t,J=7.5Hz),1.80-1.93(2H,m),2.02-2.18(8H,m),3.80-3.85(1H,m),4.62-4.68(1H,m),4.75-4.85(m,2H),5.20-5.33(m,2H),5.70(1H,d,J=16.0Hz),6.35(1H,s),6.67(1H,d,J=5.5Hz),6.88(1H,s),6.99(1H,d,J=12.0Hz),11.14(1H,s).
MS(ESI)(m/z):496.5([M+H]).
【0335】
式(31)で表される化合物:
N-[(2R)-8-{[(4S)-4-エチル-4-ヒドロキシ-3,10-ジオキソ-3,4,8,10-テトラヒドロ-1H-ピラノ[3,4-f]インドリジン-6-イル]アミノ}-6-フルオロ-5-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル]アセトアミド
【0336】
【化75】
【0337】
H-NMR(500MHz,CDCl)δ1.03(3H,t,J=7.5Hz),1.80-1.92(2H,m),2.02-2.18(8H,m),3.79(1H,s),4.60-4.68(1H,m),4.72-4.87(m,2H),5.28(1H,d,J=16.0Hz),5.70(1H,d,J=16.0Hz),6.35(1H,s),6.68(1H,d,J=4.5Hz),6.88(1H,s),7.00(1H,d,J=12.0Hz),11.10(1H,s).
MS(ESI)(m/z):496.6([M+H]).
【0338】
冷却後、トルエンにより液量を135mLに調整し、更に2時間撹拌した。析出した結晶を濾過し、濾別した結晶をアセトン(12.5mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下40℃で乾燥し、黄色結晶のN-[(9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アセトアミド(4.58g,収率96%)を得た。
【0339】
機器データは、実施例6-1に記載の化合物と同様であった。
【0340】
(実施例7-1)
メタンスルホン酸 (1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-アミニウム 2水和物
【0341】
【化76】
【0342】
N-[(9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アセトアミド(300.0g,628mmol)の2-メトキシエタノール(1.5L)、水(4.5L)、エチルシクロヘキサン(1.5L)懸濁液にメタンスルホン酸(1.5L)を加え、8時間還流した。室温に冷却後分液して有機層を取り除き、3Lまで減圧濃縮した。濃縮液を40℃に加温し、メタノール(6L)を30分かけて滴下した。2時間撹拌後、析出した結晶を濾過し、濾別した結晶をメタノール(1.5L)で洗浄した。
【0343】
得られた結晶を水(1.2L)、メタノール(600mL)、メタンスルホン酸(1.2L)に溶解し、活性炭(15g)を加え30分間撹拌した。セルロース粉末(150g)を添加し30分間撹拌した後、不溶物を濾別し、不溶物を50%メタンスルホン酸水(600mL)及びメタノール(600mL)で洗浄した。濾液を40℃に加温し、メタノール(4.8L)を55分かけて滴下した。2時間撹拌後、析出した結晶を濾過し、濾別した結晶をメタノール(1.5L)で洗浄した。
【0344】
得られた結晶をエタノール(6L)、水(600mL)に懸濁し、1.5時間還流した。室温に冷却後、30分間撹拌し析出した結晶を濾過し、結晶をエタノール(1.5L)で洗浄した。得られた結晶を減圧下40℃で乾燥し、その後40%RHの空気下で4日間調湿することで、無色結晶のメタンスルホン酸 (1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-アミニウム 2水和物(152.3g,収率43%)を得た。
【0345】
H-NMR(400MHz,DMSO-d、DO)δ0.89(3H,t,J=7.3Hz),1.90(2H,q,J=7.3Hz),2.35(3H,s),2.38-2.47(1H,m),2.64(3H,s),3.04-3.11(1H,m),3.30-3.34(1H,m),5.08(1H,s),5.34(2H,dd,J=17.7, 15.9Hz),5.50(2H,dd,J=17.7, 10.4Hz),7.41(1H,s),7.59(1H,d,J=11.0Hz).
13C-NMR (125MHz,DMSO-d)δ7.7, 10.9, 11.0, 18.5, 20.8, 24.7, 30.2, 39.5, 44.5, 49.4, 55.9, 65.2, 72.2, 95.3, 96.9, 110.1, 100.3, 119.4, 120.5, 124.6, 124.7, 127.5, 134.2, 135.2, 135.2, 144.8, 147.8, 147.9, 149.9, 152.3, 156.6, 160.6, 162.6, 172.3.
MS(ESI)(m/z):436([M+H]).
【0346】
(実施例7-2)
メタンスルホン酸 (1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-アミニウム
【0347】
【化77】
【0348】
N-[(9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アセトアミド(3.5g,7.3mmol)の精製水(53mL)、2-メトキシエタノール(18mL)、エチルシクロヘキサン(18mL)懸濁液にメタンスルホン酸(18mL)を加えた後、減圧窒素置換を3回繰り返した(50mbar減圧攪拌後、常圧窒素置換する操作を3回繰り返した)。懸濁液を85℃に加温後、11時間攪拌し、反応終了を確認後、25℃に冷却した。混合物を38.5mLまで減圧濃縮し、濃縮液を40℃に加温し、メタノール(18mL)を15分かけて滴下した。6時間撹拌後、メタノール(53mL)を2時間かけて滴下し、更に2時間撹拌後、析出した結晶を濾過し、濾別した結晶をメタノール(35mL)で洗浄した。
【0349】
得られた結晶を精製水(14mL)、メタンスルホン酸(14mL)の混合液に溶解し、37℃に加温後、メタノール(7mL)、活性炭(0.35g)及び濾過助剤(0.70g,珪藻土:CelpureC1000)を加え、減圧窒素置換を3回繰り返した(50mbar、常圧窒素置換を3回)。懸濁液を20分間撹拌した後、不溶物を濾別し、不溶物をメタンスルホン酸-精製水-メタノール混液(7mL,7mL,3.5mL)及びメタノール(7mL)で洗浄した。濾液を37℃に加温し、メタノール(10.5mL)を15分かけて滴下した。6時間撹拌後、メタノール(42mL)を1時間かけて滴下し、更に2時間撹拌後、析出した結晶を濾過し、濾別した結晶をメタノール(35mL)で洗浄した。
【0350】
得られた結晶をエタノール(70mL)、水(7mL)に懸濁し、73℃で2時間攪拌した。25℃に冷却後、2時間撹拌し析出した結晶を濾過し、結晶をエタノール(18mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下40℃で乾燥し、メタンスルホン酸 (1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-アミニウム(1.72g,収率44%)を得た。
【0351】
機器データは、実施例7-1に記載の化合物と同様であった。
【0352】
(実施例8)
N-(3-ヨード-5-フルオロ-4-メチルフェニル)アセトアミド
【0353】
【化78】
【0354】
2-フルオロ-1-メチル-4-ニトロベンゼン(5.0g、32.3mmol)の濃硫酸(90%以上、25mL)とヘプタン(25mL)の溶液を約1℃に冷却した後、N-ヨードスクシンイミド(10.2g、45.1mmol)を6回に分けて添加した。約2℃で2時間撹拌した。得られた反応液を冷水(25mL)に添加した。トルエン(25mL)を添加して分液後、水層を除去した。次いで有機層を水(25mL)、6.5wt%炭酸水素ナトリウム水溶液(25mL)、5wt%亜硫酸ナトリウム水溶液(25mL、3回)、最後に水(25mL)で洗浄した。濾液から水層を除去後、有機層を減圧下、濃縮した。濃縮残渣(約30mL)に酢酸エチル(50mL)を添加して、再度減圧下、濃縮して1-ヨード-3-フルオロ-2-メチル-5-ニトロベンゼンの酢酸エチル溶液(約15mL)を得た。
【0355】
1-ヨード-3-フルオロ-2-メチル-5-ニトロベンゼンの酢酸エチル溶液(約15mL)に1%白金炭素触媒(1.1g)、酢酸エチル(45mL)を添加した懸濁液を窒素で置換した後、水素で置換した。水素気流下(0.1MPa)、約60℃で5時間撹拌し、室温まで冷却した。得られた懸濁液から不溶物を濾別して不溶物を酢酸エチル(15mL)で洗浄した。濾液を0.5N塩酸水(50mL、25mL)で2回洗浄して有機層を得た。この際の水層を酢酸エチル(25mL)で抽出し、有機層を得て、有機層を合致した。その後、6.5wt%炭酸水素ナトリウム水溶液(25mL)、5wt%食塩水(25mL)で洗浄して、得られた有機層を減圧下、濃縮して3-ヨード-5-フルオロ-4-メチルアニリンの酢酸エチル溶液を得た。
【0356】
3-ブロモ-5-フルオロ-4-メチルアニリンの酢酸エチル溶液に酢酸エチル(25mL)を添加した溶液に、トリエチルアミン(3.7mL、26.8mmol)、無水酢酸(1.7mL、17.7mmol)を添加して室温で4時間撹拌した。得られた反応液に10wt%食塩水(25mL)を添加して分液後、水層を除去した。得られた有機層を減圧下、濃縮した。濃縮残渣に酢酸エチル(50mL)を加え、4N塩酸/酢酸エチル溶液(5.6mL、22.6mmol)を添加後、室温下で15分撹拌した。不溶物を濾別して不溶物を酢酸エチル(20mL)で洗浄した。濾液に10wt%食塩水(20mL)を添加後、25w/v%水酸化ナトリウム水溶液(2.5mL)を添加してpHを約7とした。水層を除去後、有機層を減圧下、濃縮した。濃縮残渣にアセトニトリル(38mL)、水(38mL)を添加して、25℃で撹拌した。析出した結晶を濾取して、50%含水アセトニトリル(15mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下40℃で乾燥し、N-(3-ヨード-5-フルオロ-4-メチルフェニル)アセトアミドを白色結晶(2.8g、収率29%)として得た。
【0357】
H-NMR (500MHz,CDCl)δ7.61(1H,s),7.47(1H,d,J=10.8Hz),7.10(1H,brs),2.30(3H,d,J=2.3Hz),2.16(3H,s)
【0358】
(実施例9)
4-[5-(アセチルアミノ)-3-フルオロ-2-メチルフェニル]ブタン酸
【0359】
【化79】
【0360】
N-(3-ヨード-5-フルオロ-4-メチルフェニル)アセトアミド(2.0g、6.8mmol)、3-ブテン酸(0.7mL、8.2mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(2.6mL、15.0mmol)のテトラヒドロフラン(8mL)、水(2mL)の溶液を減圧下、脱気して窒素置換後、トリ(o-トリル)ホスフィン(62.3mg、0.2mmol)を添加した。再度減圧下、脱気し窒素置換後、酢酸パラジウム(II)(23.0mg、0.1mmol)を添加し、減圧下、脱気して窒素で置換後2時間加熱還流した。室温に冷却した反応液に活性炭(0.2g)、2-メチルテトラヒドロフラン(10mL)、水(10mL)を添加して室温で1時間撹拌した。不溶物を濾別して不溶物を20%含水テトラヒドロフラン(4mL)で洗浄した。濾液に2-メチルテトラヒドロフラン(10mL)、水(10mL)を添加して25w/v%水酸化ナトリウム水溶液(1.3mL、8.2mmol)を添加した。有機層を除去し、水層に2-メチルテトラヒドロフラン(20mL)、濃塩酸(36%、1.2g、12.3mmol)を添加後、塩化ナトリウム(2g)を添加した。分液後、水層を除去し、有機層を10wt%食塩水(6mL)で洗浄した。得られた有機層を減圧下、濃縮して幾何異性体を含む4-[5-(アセチルアミノ)-3-フルオロ-2-メチルフェニル]-3-ブテン酸残渣(1.9g)を得た。
【0361】
幾何異性体を含む4-[5-(アセチルアミノ)-3-フルオロ-2-メチルフェニル]-3-ブテン酸残渣(1.9g)に2-メチルテトラヒドロフラン(30mL)、5%パラジウム炭素(1.7g)を添加した懸濁液を窒素で置換した後、水素で置換した。水素気流下(0.3MPa)、約40℃で8時間撹拌し、室温まで冷却した。得られた懸濁液から不溶物を濾別して不溶物を2-メチルテトラヒドロフラン(8mL)で洗浄した。濾液に水(10mL)を添加して1N塩酸水でpHを約2とした。分液後、水層を除去して、得られた有機層を減圧下、濃縮した。濃縮残渣に酢酸エチル(10mL)を添加して、約50℃に加熱後、ヘプタン(10mL)を添加して、室温まで冷却した。析出した結晶を濾取して、酢酸エチル/ヘプタン(3/7)(6mL)で洗浄した。得られた結晶を減圧下、乾燥して4-[5-(アセチルアミノ)-3-フルオロ-2-メチルフェニル]ブタン酸を白色結晶(1.4g、収率81%)として得た。
【0362】
(実施例10)
N-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミド
【0363】
【化80】
【0364】
4-[5-(アセチルアミノ)-3-フルオロ-2-メチルフェニル]ブタン酸(200mg、0.79mmol)、塩化チオニル(86μL、1.18mmol)、塩化メチレン(4mL)の溶液に室温、窒素気流下で塩化アルミニウム(263mg、1.97mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。得られた反応液に1N塩酸水溶液(10ml)、酢酸エチル(50ml)を添加した。水層を除き、有気層を水(10ml)、6.5wt%炭酸水素ナトリウム水溶液(10ml)、水(10ml)で洗浄し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。不溶物をろ別後、減圧下で溶媒を留去して得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)で精製し、N-(3-フルオロ-4-メチル-8-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1-イル)アセトアミドを淡黄白色結晶(125mg、収率67%)として得た。
【0365】
機器データは、実施例3-1に記載の化合物と同様であった。
【配列表フリーテキスト】
【0366】
配列番号1:抗HER2抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号2:抗HER2抗体軽鎖のアミノ酸配列
配列番号3:抗HER3抗体の重鎖のアミノ酸配列
配列番号4:抗HER3抗体の軽鎖のアミノ酸配列
配列番号5:抗TROP2抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号6:抗TROP2抗体軽鎖のアミノ酸配列
配列番号7:抗B7-H3抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号8:抗B7-H3抗体軽鎖のアミノ酸配列
配列番号9:抗GPR20抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号10:抗GPR20抗体軽鎖のアミノ酸配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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