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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/055 20060101AFI20230322BHJP
   B01J 23/63 20060101ALI20230322BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20230322BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20230322BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
B01J27/055 A
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301Q
F01N3/28 301A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020054639
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021154191
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎮西 勇夫
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昂大
(72)【発明者】
【氏名】白川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】三浦 真秀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】城戸 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 実
(72)【発明者】
【氏名】星野 将
(72)【発明者】
【氏名】中山 真
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/089151(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/021512(WO,A1)
【文献】特開2017-200676(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0219906(US,A1)
【文献】特表2010-501337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
F01N 3/10
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に形成された触媒コート層を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記触媒コート層が、前記基材上に形成された第1触媒コート層と、前記第1触媒コート層上に形成された第2触媒コート層と、前記第2触媒コート層上に形成された第3触媒コート層を少なくとも有し、
前記第1触媒コート層が、触媒金属としてPdを含み、且つ排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の15%以上60%以下の長さの範囲に形成されており、
前記第2触媒コート層が、触媒金属としてRhを含み、且つ排ガス流れ方向の下流側端面から基材全長の60%以上100%以下の長さの範囲に形成されており、
前記第3触媒コート層が、触媒金属としてPdを含み、且つ排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の15%以上100%以下の長さの範囲に形成されており
前記第2触媒コート層のRhが、透過型電子顕微鏡観察により測定された平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、且つ粒径の標準偏差σが0.8nm以下であるRh微粒子である、
排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記触媒コート層が、前記第3触媒コート層上に形成された第4触媒コート層をさらに有し、前記第4触媒コート層が、触媒金属としてPdを含み、且つ排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の15%以上50%以下の長さの範囲に形成されている、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれており、これらの有害成分は排ガス浄化用触媒によって浄化されてから大気中に放出されている。従来、この排ガス浄化用触媒には、CO、HCの酸化とNOxの還元とを同時に行う三元触媒が用いられており、三元触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属を触媒金属として用いたものが広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材と、該基材の表面に形成された2層構造の触媒コート層とを備える排ガス浄化用触媒であって、触媒コート層の上層が、Rh及びPdと担体とを含有し、触媒コート層の下層が、Pd及びPtから選択される少なくとも1種の貴金属と担体とを含有し、上層に含有されるPdの65質量%以上が、基材表面に相対的に遠い上層の表面から上層の厚さ50%までの層に存在し、上層において、Rhに対するPdの質量比(Pd/Rh)が0.5以上7.0以下である、排ガス浄化用触媒が開示されている。
【0004】
近年、排ガス規制が厳しくなる一方で、資源リスクの観点から排ガス浄化用触媒に用いられる貴金属量は低減させることが求められている。しかし、従来の排ガス浄化用触媒においては、貴金属量を低減すると、排ガス浄化性能、暖機性能やOSC性能が低下することがあった。
【0005】
ここで、排ガス浄化用触媒において、貴金属の使用量を低減させる一つの方法として、貴金属を担体上に微細な粒子として担持して利用する方法が知られている。例えば、特許文献2には、酸化物担体に貴金属粒子を担持させて貴金属担持触媒とする工程と、還元雰囲気中で貴金属担持触媒を加熱処理して、貴金属の粒径を所定の範囲に制御する工程とを含む触媒の製造方法が開示されている。特許文献2の実施例には、酸化物担体上の貴金属粒子の粒径を2.8nm以上3.8nm以下の範囲に制御することができたことが記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、酸化物担体に貴金属微粒子を担持させた触媒に対して、還元剤を作用させて小粒径の貴金属微粒子を肥大化させ、該貴金属微粒子の最小粒径を1nm以上にする工程を有する、触媒の製造方法が開示されている。特許文献3の実施例には、酸化物担体上の貴金属微粒子の粒径を3.0nm以上4.1nm以下に制御できたことが記載されている。
【0007】
しかし、粒径を制御した貴金属粒子を用いた従来の触媒では、貴金属粒子が触媒反応中に凝集して劣化してしまい、触媒の耐久性が十分でない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-176109号公報
【文献】特開2016-147256号公報
【文献】特開2007-38085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の通り、排ガス浄化用触媒には、貴金属量を低減することが求められているが、従来の排ガス浄化用触媒においては、貴金属量を低減すると、排ガス浄化性能、暖機性能やOSC性能が低下することがあった。また、粒径を制御した貴金属粒子を用いた従来の排ガス浄化用触媒では、触媒の耐久性が十分でなく、貴金属量を十分に低減することができない場合があった。それ故、本発明は、触媒の性能を維持しつつ貴金属量を低減することができる排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、少なくとも3層の触媒コート層を有する排ガス浄化用触媒において、各触媒コート層の組成及びコート幅を特定することにより、触媒の性能を維持しつつ貴金属量を低減することができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)基材と、該基材上に形成された触媒コート層を有する排ガス浄化用触媒であって、
前記触媒コート層が、前記基材上に形成された第1触媒コート層と、前記第1触媒コート層上に形成された第2触媒コート層と、前記第2触媒コート層上に形成された第3触媒コート層を少なくとも有し、
前記第1触媒コート層が、触媒金属としてPdを含み、且つ排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の15%以上60%以下の長さの範囲に形成されており、
前記第2触媒コート層が、触媒金属としてRhを含み、且つ排ガス流れ方向の下流側端面から基材全長の60%以上100%以下の長さの範囲に形成されており、
前記第3触媒コート層が、触媒金属としてPdを含み、且つ排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の15%以上100%以下の長さの範囲に形成されている、
排ガス浄化用触媒。
(2)前記第2触媒コート層のRhが、透過型電子顕微鏡観察により測定された平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下であり、且つ粒径の標準偏差σが0.8nm以下であるRh微粒子である、前記(1)に記載の排ガス浄化用触媒。
(3)前記触媒コート層が、前記第3触媒コート層上に形成された第4触媒コート層をさらに有し、前記第4触媒コート層が、触媒金属としてPdを含み、且つ排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の15%以上50%以下の長さの範囲に形成されている、前記(1)又は(2)に記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、触媒の性能を維持しつつ貴金属量を低減することができる排ガス浄化用触媒を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の排ガス浄化用触媒の第1の実施形態を示す断面模式図である。
図2図2は、本発明の排ガス浄化用触媒の第2の実施形態を示す断面模式図である。
図3図3は、実施例1~2及び比較例1の触媒の暖機特性を示すグラフである。
図4図4は、実施例1~2及び比較例1の触媒の暖機後のNOx浄化率を示すグラフである。
図5図5は、実施例1~2及び比較例1の触媒のOSC特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材上に形成された触媒コート層を有する。触媒コート層は、基材上に形成された第1触媒コート層と、第1触媒コート層上に形成された第2触媒コート層と、第2触媒コート層上に形成された第3触媒コート層を少なくとも有する。触媒コート層は、3層以上であればよく、好ましくは3層又は4層からなる。
【0016】
本発明の排ガス浄化用触媒に用いる基材としては、特に限定されずに、一般的に用いられている多数のセルを有するハニカム形状の材料を使用することができる。基材の材質としては、コージェライト(2MgO・2Al・5SiO)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の耐熱性を有するセラミックス材料や、ステンレス鋼等の金属箔からなるメタル材料が挙げられるが、コストの観点からコージェライトが好ましい。
【0017】
第1触媒コート層は、基材上に形成されている。
【0018】
第1触媒コート層は、触媒金属としてパラジウム(Pd)を含む。第1触媒コート層は、Pd以外の触媒金属を含んでいてもよい。触媒金属としては、例えば、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)及びイリジウム(Ir)等の白金族貴金属を用いることができる。第1触媒コート層は、好ましくは、触媒金属としてPdのみを含む。
【0019】
第1触媒コート層におけるPdの含有量は、基材容量に対して、好ましくは0.01g/L以上20g/L以下であり、より好ましくは0.1g/L以上10g/L以下である。第1触媒コート層におけるPdの含有量が0.01g/L以上20g/L以下であると、高い暖機性能及び高い浄化性能が得られる。
【0020】
第1触媒コート層は、好ましくは酸素吸蔵能を有するOSC材を含む。OSC材は酸素吸蔵能を有する無機材料であり、リーン排ガスが供給された際に酸素を吸蔵し、リッチ排ガスが供給された際に吸蔵した酸素を放出し、排ガスの雰囲気変動を吸収・緩和して、理論空燃比付近に保つことを可能としている。三元触媒は理論空燃比付近でCO、HC、NOx等の有害成分を高効率で浄化する。第1触媒コート層がOSC材を含むことにより、排ガス中の有害成分を効率的に浄化することができる。
【0021】
OSC材としては、特に限定されずに、例えば、酸化セリウム(セリア:CeO)や該セリアを含む複合酸化物(例えば、セリア-ジルコニア(ZrO)複合酸化物(CZ又はZC複合酸化物))等が挙げられる。前記のOSC材の中でも、高い酸素吸蔵能を有しており、且つ比較的安価であるため、セリア-ジルコニア(CeO-ZrO)複合酸化物を用いることが好ましい。セリア-ジルコニア複合酸化物は、Ce及びZr以外の金属元素の酸化物を含んでいてもよい。Ce及びZr以外の金属元素としては、希土類元素(ただし、Ceを除く)が好ましい。希土類元素としては、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等を挙げることができる。これらのうち、Y、La、Pr、Nd、及びEuから選択される1種以上が好ましく、Y及びLaがより好ましい。好ましくは、セリア-ジルコニア複合酸化物は、ランタナ(La)及びイットリア(Y)との複合酸化物の形態で用いる。セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリアとジルコニアとの混合割合は、好ましくは重量基準でCeO/ZrO=0.01以上9.0以下である。
【0022】
第1触媒コート層におけるOSC材の含有量は、基材容量に対して、好ましくは10g/L以上80g/L以下であり、より好ましくは20g/L以上60g/L以下である。第1触媒コート層におけるOSC材の含有量が10g/L以上80g/L以下であると、高い浄化性能を確保することができる。
【0023】
第1触媒コート層は、前記の触媒金属及びOSC材の他に、任意の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されずに、例えば金属酸化物、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類元素、その他遷移金属元素やこれらを含有する化合物等が挙げられる。第1触媒コート層が他の成分を含む場合、その含有量は、基材容量に対して、好ましくは80g/L以下であり、より好ましくは60g/L以下である。
【0024】
金属酸化物に含まれる金属としては、例えば、周期律表の3族、4族及び13族から選択される1種以上の金属やランタノイド系の金属が挙げられる。金属酸化物が2種以上の金属の酸化物から構成されるとき、2種以上の金属酸化物の混合物、2種以上の金属を含む複合酸化物、又は1種以上の金属酸化物と、1種以上の複合酸化物との混合物のいずれであってもよい。
【0025】
金属酸化物は、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)から選択される1種以上の金属の酸化物であってよく、好ましくはY、La、Ce、Ti、Zr及びAlから選択される1種以上の金属の酸化物である。金属酸化物としては、アルミナ(Al)又はAl及びランタナ(La)の複合酸化物を用いることが好ましい。
【0026】
また、他の成分として、排ガス浄化性能の向上の観点から、炭酸バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウムなどのバリウム化合物を用いることが好ましく、触媒の使用温度域及び使用雰囲気で安定である硫酸バリウムがより好ましい。
【0027】
第1触媒コート層において、Pdは、好ましくは担体粒子上に担持されている。担体粒子としては、特に限定されずに、例えば、前記のOSC材及び他の金属酸化物を用いることができる。好ましい実施形態において、PdはOSC材上に担持されている。担持方法は、含浸担持法、吸着担持法及び吸水担持法等の一般的な担持法を利用することができる。
【0028】
Pdを担体粒子上に担持して用いる場合、Pdの担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、1重量%以下、0.7重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、又は0.2重量%以下である。また、Pdの担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.05重量%以上、0.07重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、10重量%以上である。
【0029】
第1触媒コート層は、排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の15%以上60%以下の長さの範囲に形成されている。すなわち、第1触媒コート層は、基材上の上流側の一部に形成されており、第1触媒コート層のコート幅は、排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の15%以上60%以下の長さの範囲である。第1触媒コート層のコート幅が上流側端面から基材全長の15%以上の長さであると触媒コート層を容易に調製することができ、60%以下の長さであると、貴金属密度が高くなり、暖機性能が向上する。第1触媒コート層のコート幅は、排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の好ましくは15%以上50%以下、より好ましくは15%以上30%以下の長さの範囲である。また、第1触媒コート層のコート幅は、排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の25%以上50%以下の長さであってもよい。
【0030】
第2触媒コート層は、第1触媒コート層上に形成されている。本発明の排ガス浄化用触媒において、第1触媒コート層は、基材上の上流側の一部に形成されているところ、下流側に形成される第2触媒コート層は、少なくとも一部が第1触媒コート層上に形成していればよく、下流側の一部は基材上に形成されている(図1及び図2参照)。
【0031】
第2触媒コート層は、触媒金属としてロジウム(Rh)を含む。第2触媒コート層がRhを含むことにより、排ガス中のNOxが主に浄化される。
【0032】
第2触媒コート層のRhとして、平均粒径及び粒径の標準偏差σが特定の範囲内に制御されたRh微粒子(以下、粒径制御Rh微粒子とも記載する)を用いることが好ましい。この粒径制御Rh微粒子は、平均粒径が比較的小さいため、有意に大きな比表面積を示し、高い触媒活性を有する。また、この粒径制御Rh微粒子は、粒径分布が狭く、粗大粒子及び微細粒子の割合が少ないため、高い耐久性及び高い触媒活性を有する。この粒径制御Rh微粒子を用いることにより、触媒活性及びOSC性能が向上するため、Rhの使用量を低減することができる。
【0033】
粒径制御Rh微粒子は、平均粒径が1.0nm以上2.0nm以下である。本発明において、粒径制御Rh微粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察において撮影した画像を元に、直接に投影面積円相当径を計測し、集合数100以上の粒子群を解析することによって得られた個数平均粒子径である。
【0034】
粒径制御Rh微粒子の平均粒径を1.0nm以上とすることにより、触媒反応中に凝集して粗大化する要因となると考えられる粒径1.0nm未満の微細粒子の割合を低減することができるため、Rh微粒子の劣化を抑制し、触媒の耐久性を向上させることができる。一方、粒径制御Rh微粒子の平均粒径を2.0nm以下とすることにより、Rh微粒子の表面積を大きくすることができ、触媒活性を高くすることができる。粒径制御Rh微粒子の平均粒径は、好ましくは1.1nm以上、より好ましくは1.2nm以上である。また、粒径制御Rh微粒子の平均粒径は、好ましくは1.9nm以下であり、より好ましくは1.8nm以下であり、特に好ましくは1.6nm以下である。粒径制御Rh微粒子の平均粒径は、好ましくは1.1nm以上1.9nm以下であり、より好ましくは1.2nm以上1.8nm以下である。
【0035】
粒径制御Rh微粒子は、透過型電子顕微鏡観察により測定された粒径の標準偏差σが、0.8nm以下である。粒径制御Rh微粒子は、粒径の標準偏差σが0.8nm以下であるため、粒径分布がシャープであり、微細粒子及び粗大粒子の含有割合が低い。微細粒子が少ないことにより、触媒反応中のRh微粒子の凝集が抑制されるため、Rhの劣化が抑制され、触媒の耐久性が向上する。また、粗大粒子が少ないことにより、Rh微粒子の表面積が大きくなり、触媒活性が向上する。
【0036】
粒径制御Rh微粒子の粒径の標準偏差σは、好ましくは0.7nm以下であり、より好ましくは0.6nm以下であり、特に好ましくは0.5nm以下である。粒径制御Rh微粒子の粒径は単分散であってもよいが、標準偏差σが0.2nm以上、0.3nm以上又は0.4nm以上であっても、本発明の効果を奏することができる。
【0037】
粒径制御Rh微粒子は、特に粒径1.0nm未満の微細粒子の割合が低減されている。粒径1.0nm末満の微細粒子の割合が少ないことにより、触媒反応中のRh微粒子の凝集が抑制されるため、Rhの劣化が抑制され、触媒の耐久性が向上する。粒径制御Rh微粒子は、粒径1.0nm未満のRh微粒子の存在割合が、Rh微粒子の全重量に対して、好ましくは5重量%以下である。この値は、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下又は0.1重量%以下であってよく、これを全く含まなくてもよい。
【0038】
好ましい実施形態において、粒径制御Rh微粒子は、透過型電子顕微鏡によって測定したときに、平均粒径が1.2nm以上1.8nm以下であり、且つ粒径1.0nm未満のRh微粒子の存在割合が、Rh微粒子の全重量に対して5.0重量%以下である。
【0039】
第2触媒コート層におけるRhの含有量は、基材容量に対して、好ましくは0.01g/L以上5g/L以下であり、より好ましくは0.05g/L以上2.5g/L以下である。第2触媒コート層におけるRhの含有量が0.01g/L以上5g/L以下であると、高い触媒活性を達成することができる。
【0040】
第2触媒コート層は、Rh以外の触媒金属を含んでいてもよい。触媒金属としては、例えば、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)等の白金族貴金属を用いることができる。第2触媒コート層は、好ましくは、触媒金属としてRhのみを含む。
【0041】
第2触媒コート層は、好ましくはOSC材を含む。OSC材としては、特に限定されずに、例えば、酸化セリウム(セリア:CeO)や該セリアを含む複合酸化物(例えば、セリア-ジルコニア(ZrO)複合酸化物(CZ又はZC複合酸化物))等が挙げられる。前記のOSC材の中でも、高い酸素吸蔵能を有しており、且つ比較的安価であるため、セリア-ジルコニア(CeO-ZrO)複合酸化物を用いることが好ましい。セリア-ジルコニア複合酸化物は、Ce及びZr以外の金属元素の酸化物を含んでいてもよい。Ce及びZr以外の金属元素としては、希土類元素(ただし、Ceを除く)やアルミニウム(Al)が好ましい。希土類元素としては、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等を挙げることができる。これらのうち、Y、La、Pr、Nd及びEuから選択される1種以上が好ましく、Y、La及びNdがより好ましい。好ましくは、セリア-ジルコニア複合酸化物は、アルミナ(Al)との複合酸化物の形態、又はランタナ(La)、イットリア(Y)との複合酸化物の形態で用いる。セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリアとジルコニアとの混合割合は、好ましくは重量基準でCeO/ZrO=0.01以上9.0以下である。
【0042】
第2触媒コート層におけるOSC材の含有量は、基材容量に対して、好ましくは10g/L以上200g/L以下であり、より好ましくは20g/L以上150g/L以下である。第2触媒コート層におけるOSC材の含有量が10g/L以上200g/L以下であると、第2触媒コート層において高い浄化性能を確保することができる。
【0043】
第2触媒コート層は、前記の触媒金属及びOSC材の他に、任意の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されずに、例えば金属酸化物等が挙げられる。第2触媒コート層が他の成分を含む場合、その含有量は、基材容量に対して、好ましくは80g/L以下であり、より好ましくは60g/L以下である。
【0044】
金属酸化物に含まれる金属としては、例えば、周期律表の3族、4族及び13族から選択される1種以上の金属やランタノイド系の金属が挙げられる。金属酸化物が2種以上の金属の酸化物から構成されるとき、2種以上の金属酸化物の混合物、2種以上の金属を含む複合酸化物、又は1種以上の金属酸化物と、1種以上の複合酸化物との混合物のいずれであってもよい。
【0045】
金属酸化物は、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)から選択される1種以上の金属の酸化物であってよく、好ましくはY、La、Ce、Ti、Zr及びAlから選択される1種以上の金属の酸化物である。金属酸化物としては、アルミナ(Al)又はAl及びランタナ(La)の複合酸化物を用いることが好ましい。
【0046】
第2触媒コート層において、Rhは、好ましくは担体粒子上に担持されている。担体粒子としては、特に限定されずに、例えば、前記のOSC材及び他の金属酸化物を用いることができる。好ましい実施形態において、RhはOSC材上に担持されている。担持方法は、含浸担持法、吸着担持法及び吸水担持法等の一般的な担持法を利用することができる。
【0047】
Rhを担体粒子上に担持して用いる場合、Rhの担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば10重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、1重量%以下、0.7重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、又は0.2重量%以下である。また、Rhの担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.05重量%以上、0.07重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上である。
【0048】
一実施形態において、粒径制御Rh微粒子を担体粒子上に担持して用いる場合、担体粒子を、予め所定の粒径分布に制御されたRh微粒子前駆体を含有するRh微粒子前駆体分散液と接触させることによって、粒径制御Rh微粒子を担体粒子上に担持することができる。
【0049】
Rh微粒子前駆体分散液は、例えば、以下のいずれかの方法によって製造することができる。
(1)反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器中で、Rh化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを反応させる方法(方法1)、及び
(2)Rh化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを混合して反応させた後、高速ミキサー中で撹拌処理する方法(方法2)。
【0050】
方法1では、Rh化合物(例えば、Rhの無機酸塩)の酸性溶液と、塩基性溶液(例えば、含窒素有機化合物の水溶液)とを反応させる際に、反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器を用いることにより、得られる分散液中に含まれるRh微粒子前駆体(例えばRhの水酸化物)の粒径及び粒径分布を制御することができる。
【0051】
反応器が有するクリアランス調節部材は、例えば、2枚の平板、平板と波状板との組み合わせ、細管等であってよい。反応場のクリアランスは、所望の粒径及び粒径分布に応じて適宜設定することができる。反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器としては、例えば、適当なクリアランス調節部材を有するマイクロリアクター等を用いることができる。
【0052】
方法2では、Rh化合物(例えば、Rhの無機酸塩)の酸性溶液と、塩基性溶液(例えば、含窒素有機化合物の水溶液)との反応によって、大粒径の粒子として生成したRh微粒子前駆体を高速ミキサー中で撹拌処理して、強い剪断力を与えて分散することにより、分散後のRh微粒子前駆体の平均粒径及び粒径分布を制御することができる。
【0053】
以上のようにして調製したRh微粒子前駆体分散液を担体粒子と接触させることによって、粒径制御Rh微粒子を担体粒子に担持することができる。
【0054】
第2触媒コート層は、排ガス流れ方向の下流側端面から基材全長の60%以上100%以下の長さの範囲に形成されている。すなわち、第2触媒コート層のコート幅は、排ガス流れ方向の下流側端面から基材全長の60%以上100%以下の長さの範囲である。第2触媒コート層のコート幅がこの範囲であると高い触媒活性が達成される。第2触媒コート層は、下流側端面から基材全長にわたって形成されていてもよい。第2触媒コート層のコート幅は、排ガス流れ方向の下流側端面から基材全長の好ましくは70%以上100%以下、より好ましくは70%以上80%以下の長さの範囲である。第2触媒コート層のコート幅が70%以上80%以下の長さの範囲であると、触媒活性への寄与が大きい下流部のRh密度が高くなり、また、Pdを含む第1触媒コート層との接触が少なくなるため、Rhを含む第2触媒コート層の劣化が抑制され、高い触媒活性が達成される。
【0055】
第3触媒コート層は、第2触媒コート層上に形成されている。本発明において、第3触媒コート層が第2触媒コート層上に形成されているとは、第3触媒コート層の少なくとも一部が第2触媒コート層上に形成していることをいう。第3触媒コート層の上流側の一部は、第1触媒コート層上に形成していてもよい(図2参照)。
【0056】
第3触媒コート層は、触媒金属としてパラジウム(Pd)を含む。第3触媒コート層は、Pd以外の触媒金属を含んでいてもよい。触媒金属としては、例えば、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)及びイリジウム(Ir)等の白金族貴金属を用いることができる。第3触媒コート層は、好ましくは触媒金属としてPdのみを含む。
【0057】
第3触媒コート層におけるPdの含有量は、基材容量に対して、好ましくは0.01g/L以上10g/L以下であり、より好ましくは0.1g/L以上5g/L以下である。第3触媒コート層におけるPdの含有量が0.01g/L以上10g/Lであると、高い浄化性能が達成される。
【0058】
第3触媒コート層は、Pdの他に、任意の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されずに、例えば、OSC材や金属酸化物等が挙げられる。第3触媒コート層が他の成分を含む場合、その含有量は、基材容量に対して、好ましくは80g/L以下であり、より好ましくは60g/L以下である。第3触媒コート層は、好ましくはPdからなる。
【0059】
第3触媒コート層は、排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の15%以上100%以下の長さの範囲に形成されている。すなわち、第3触媒コート層のコート幅は、排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の15%以上100%以下の長さの範囲である。第3触媒コート層は、基材全長にわたって形成されていてもよい。第3触媒コート層のコート幅は、排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の好ましくは25%以上100%以下、より好ましくは60%以上100%以下の長さの範囲である。第3触媒コート層が排ガス流れ方向の上流側端面から所定の範囲に形成されていることにより、排ガスが初期に通過するこの層において、排ガス中の有害成分の一部が浄化されるので、下層の貴金属量を低減することができる。
【0060】
触媒コート層は、前記の第1~第3触媒コート層に加えて、少なくとも1層の追加の触媒コート層を含んでいてもよい。触媒コート層は、好ましくは、第3触媒コート層上に形成された第4触媒コート層を含む。
【0061】
第4触媒コート層は、好ましくは、触媒金属としてパラジウム(Pd)を含む。
【0062】
第4触媒コート層は、Pd以外の触媒金属を含んでいてもよい。触媒金属としては、例えば、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)及びイリジウム(Ir)等の白金族貴金属を用いることができる。第4触媒コート層は、好ましくは触媒金属としてPdのみを含む。
【0063】
第4触媒コート層におけるPdの含有量は、基材容量に対して、好ましくは0.01g/L以上20g/L以下であり、より好ましくは0.1g/L以上10g/L以下である。第4触媒コート層におけるPdの含有量が0.01g/L以上20g/L以下であると、高い暖機性能及び高い浄化性能が得られる。
【0064】
第4触媒コート層は、Pdの他に、任意の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、特に限定されずに、例えば、OSC材や金属酸化物等が挙げられる。第4触媒コート層が他の成分を含む場合、その含有量は、基材容量に対して、好ましくは80g/L以下であり、より好ましくは60g/L以下である。第4触媒コート層は、好ましくはPdからなる。
【0065】
第4触媒コート層は、排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の好ましくは15%以上100%以下、より好ましくは15%以上50%以下の長さの範囲に形成されている。第4触媒コート層が排ガス流れ方向の上流側端面から所定の範囲に形成されていることにより、触媒コート層を容易に調製することができ、また、暖機性能が向上する。
【0066】
一実施形態において、第3触媒コート層のコート幅が排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の60~100%の長さの範囲であり、且つ第4触媒コート層のコート幅が排ガス流れ方向の上流側端面から基材全長の15~50%の長さの範囲である。この実施形態の排ガス浄化用触媒は、高い暖機性能と高い触媒活性を両立することができる。
【0067】
図1に、本発明の排ガス浄化用触媒の第1の実施形態を示す。図1に示されるように、排ガス浄化用触媒10は、基材11と、基材11上に形成された三層構造の触媒コート層15を有する。触媒コート層15は、第1触媒コート層12と、第2触媒コート層13と、第3触媒コート層14とからなる。この実施形態において、第1触媒コート層12は、排ガス流れ方向の上流側端面から所定の範囲に形成されており、第2触媒コート層13及び第3触媒コート層14は、基材全長にわたって形成されている。図1において、矢印は排ガス流れ方向を示す。
【0068】
図2に、本発明の排ガス浄化用触媒の第2の実施形態を示す。図2に示されるように、排ガス浄化用触媒20は、基材21と、基材21上に形成された三層構造の触媒コート層25を有する。触媒コート層25は、第1触媒コート層22と、第2触媒コート層23と、第3触媒コート層24とからなる。この実施形態において、第1触媒コート層22は、排ガス流れ方向の上流側端面から所定の範囲に形成されており、第2触媒コート層23は、排ガス流れ方向の下流側端面から所定の範囲に形成されており、第3触媒コート層24は、基材全長にわたって形成されている。図2において、矢印は排ガス流れ方向を示す。
【0069】
本発明の排ガス浄化用触媒は、当業者に公知の方法によって基材上に触媒コート層の成分を含むスラリー又は溶液をコートすることにより、製造することができる。一実施形態において、例えば、Pd、OSC材、金属酸化物及びバリウム化合物を含むスラリーを公知の方法を用いて上流側端面から所定の範囲にわたりコートして、所定の温度及び時間にて乾燥及び焼成することにより、基材上に第1触媒コート層を形成する。次いで、Rh、OSC材及び金属酸化物を含むスラリーを公知の方法を用いて下流側端面から所定の範囲にわたりコートして、所定の温度及び時間にて乾燥及び焼成することにより、第1触媒コート層上に第2触媒コート層を形成する。次いで、Pd溶液を公知の方法を用いて上流側端面から所定の範囲にわたりコートして、所定の温度及び時間にて乾燥及び焼成することにより、第2触媒コート層上に第3触媒コート層を形成する。
【0070】
本発明の排ガス浄化用触媒は、単独で用いることもできるが、2つ以上の触媒を含む排ガス浄化用触媒システムに用いることもできる。本発明の排ガス浄化用触媒は、優れた暖機性能を有するため、好ましくは、内燃機関の直下に取り付けられたスタートアップ触媒(S/C、スタートアップコンバータ等とも称される)と、排ガスの流れ方向に対して前記S/Cよりも後方に設置されたアンダーフロア触媒(UF/C、アンダーフロアコンバータ、床下触媒等とも称される)の2つの触媒を含む排ガス浄化用触媒システムのS/Cに用いられる。
【実施例
【0071】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0072】
<触媒の調製>
使用原料
材料1:Al:La複合化Al(La:1重量%~10重量%)
材料2:ACZ:Al-CeO-ZrO複合酸化物(CeO:15重量%~30重量%、Nd、La3、が微量添加され、高耐熱化が施されたもの)
材料3:CZ複合酸化物1(CZ材1):50重量%-ZrO、40重量%-CeO、5重量%-La、5重量%-Y複合酸化物
材料4:CZ複合酸化物2(CZ材2):20重量%-CeO、70重量%-ZrO、5重量%-La、5重量%-Y複合酸化物
材料5:硝酸Pd溶液
材料6:硝酸Rh溶液
材料7:粒径制御Rh分散液
材料8:硫酸Ba溶液
基材:875cc(600セル六角 壁厚2mil)のコージェライトハニカム基材
【0073】
材料7は以下のようにして調製した。
材料7:粒径制御Rh分散液
イオン交換水50mL中に硝酸Rh(III)0.2gを加えて溶解し、Rh化合物の酸性溶液(pH1.0)を調製した。
【0074】
有機塩基溶液として、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液(濃度175g/L、pH14)を準備した。
【0075】
クリアランス調節部材としての2枚の平板を有する反応器(マイクロリアクター)を用い、クリアランスが10μmに設定された反応場に、前記のRh化合物の酸性溶液及び有機塩基溶液を導入する手法により、両液を水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)と硝酸Rh(RN)とのモル比(TEAH/RN)が18となる条件で反応させて、Rh微粒子前駆体分散液を調製した。得られたRh微粒子前駆体分散液のpHは14であった。また、得られたRh微粒子前駆体分散液に含まれるRh微粒子前駆体のメジアン径(D50)を動的光散乱法(DLS)によって測定したところ、2.0nmであった。
【0076】
比較例1
蒸留水に材料5、材料3、材料1、材料8及びAl系バインダーを攪拌しながら投入し、これらの材料が懸濁したスラリー1を調製した。次いで、調製したスラリー1を上流側端面から基材へ流し込み、ブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面に材料をコーティングした。コート幅は基材全長の100%に調整した。また、コート量は、基材容量に対して、材料5がPdとして5g/L、材料3が50g/L、材料1が50g/L、材料8が5g/Lになるようにした。最後に、120℃の乾燥機で2時間乾燥した後、電気炉で500℃にて2時間焼成し、第1触媒コート層を調製した。
【0077】
同様に、蒸留水に材料6、材料2、材料4、材料1及びAl系バインダーを攪拌しながら投入し、これらの材料が懸濁したスラリー2を調製した。第1触媒コート層が形成された基材にスラリー2を下流側端面から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払い、基材壁面に材料をコーティングした。コート幅は基材全長の100%に調整した。また、コート量は、基材容量に対して材料6がRhとして1g/L、材料2が50g/L、材料4が50g/L、材料1が50g/Lとなるようにした。最後に、120℃の乾燥機で2時間乾燥した後、電気炉で500℃にて2時間焼成し、第2触媒コート層を調製して、2層の触媒コート層を有する比較例1の触媒を得た。
【0078】
比較例2
材料5のコート量がPdとして4g/Lとなるようにスラリー1を調製した以外は比較例1と同様にして、第1及び第2触媒コート層を調製した。
【0079】
次いで、第1及び第2触媒コート層が形成された基材に硝酸Pd溶液を上流側端面から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払い、Pdをコーティングした。コート幅は基材全長の100%に調整した。また、コート量は、基材容量に対してPdが1g/Lとなるようにした。最後に、120℃の乾燥機で2時間乾燥した後、電気炉で500℃にて2時間焼成し、第3触媒コート層を調製して、3層の触媒コート層を有する比較例2の触媒を得た。
【0080】
実施例1
材料5のコート量がPdとして8g/Lとなるようにスラリー1を調製し、第1触媒コート層のコート幅を、上流側端面から基材全長の50%に調整した以外は比較例2と同様にして、3層の触媒コート層を有する実施例1の触媒を調製した。
【0081】
実施例2
スラリー2の材料6を材料7に変更した以外は実施例1と同様にして、3層の触媒コート層を有する実施例2の触媒を調製した。なお、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定した粒径制御Rh微粒子の粒径は、平均粒径が1.7nmであり、粒径の標準偏差σが0.4nmであった。
【0082】
実施例3
第2触媒コート層のコート幅を下流側端面から基材全長の75%に調整した以外は実施例2と同様にして、3層の触媒コート層を有する実施例3の触媒を調製した。
【0083】
実施例4
第1触媒コート層のコート幅を上流側端面から基材全長の25%に調整した以外は実施例3と同様にして、第1、第2及び第3触媒コート層を調製した。
【0084】
次いで、第1、第2及び第3触媒コート層が形成された基材に硝酸Pd溶液を上流側端面から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払い、Pdをコーティングした。コート幅は上流側端面から基材全長の25%に調整した。また、コート量は、基材容量に対してPdとして8g/Lとなるようにした。最後に、120℃の乾燥機で2時間乾燥した後、電気炉で500℃にて2時間焼成し、第4触媒コート層を調製して、4層の触媒コート層を有する実施例4の触媒を得た。
【0085】
表1に、実施例1~4及び比較例1~2の触媒の構成を示す。なお、貴金属量は、基材容量に対する貴金属量(g/基材1L)である。
【0086】
【表1】
【0087】
<耐久試験>
調製した各触媒について、実際のエンジンを用いて耐久試験を実施した。具体的には、耐久試験は、各触媒をV型8気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、触媒床温950℃で50時間にわたり、ストイキ及びリーンの各雰囲気の排ガスを一定時間(3:1の比率)ずつ繰り返して流すことにより行った。
【0088】
<性能評価>
暖機特性
耐久試験を行った各排ガス浄化用触媒をL型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、空燃比(A/F)=14.4の排ガスを供給し、Ga=16g/sの条件において、入りガスを導入し、HCがT50(50%浄化率)に達するまでの時間を測定した。
【0089】
暖機後の触媒活性
耐久試験を行った各排ガス浄化用触媒をL型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、空燃比(A/F)14.4の排ガスを供給し、Ga=30g/sの条件において、昇温特性(~500℃)を評価した。また、入りガス温度が500℃になった際のNOx浄化率を測定し、触媒活性を評価した。
【0090】
OSC特性
耐久試験を行った各排ガス浄化用触媒をL型4気筒エンジンの排気系にそれぞれ装着し、空燃比(A/F)14.1~15.1の排ガスを供給し、短周期で繰り返した際の酸素吸放出量を測定した。数値が大きい程、エンジン出カガスのA/F変動を吸収し、触媒内の雰囲気をストイキ近傍に保ち、高い浄化性能を維持できる事を示す。
【0091】
表2に、実施例1~4及び比較例1~2の触媒の評価結果を示す。また、図3に、実施例1~2及び比較例1の触媒の暖機特性を示す。また、図4に、実施例1~2及び比較例1の触媒の暖機後のNOx浄化率を示す。また、図5に、実施例1~2及び比較例1の触媒のOSC特性を示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表2に示されるように、比較例2の触媒は、Pdを含む第3触媒コート層を最表層に設けたことにより、比較例1の触媒と比較して、暖機後の触媒活性が向上した。これは、排ガスとの接触性が高く、反応性の高い最表層に貴金属のみを配置したためであると考えられる。また、表2及び図3に示されるように、実施例1の触媒は、第1触媒コート層のコート幅を短くすることにより、比較例1及び2の触媒と比較して暖機性能が大幅に向上した。これは、暖機性能に寄与の大きい上流部の貴金属密度が高くなったためであると考えられる。
【0094】
表2及び図3~5に示されるように、実施例2の触媒は、粒径制御Rh微粒子を使用することにより、実施例1と比較して、暖機性能は維持しつつ、触媒活性及びOSC性能が向上し、比較例2と比較して、暖機性能、触媒活性及びOSC性能の全てが向上していた。これは、粒径制御Rh微粒子を使用することにより、Rhの耐久性が向上し、Rhの活性が向上したためであると考えられる。
【0095】
また、表2に示されるように、実施例3のように、第2触媒コート層のコート幅を短くした場合、実施例2と比較して暖機後の触媒活性がさらに向上した。これは、暖機後の触媒活性への寄与が大きい下流部のRh密度が増加したためであると考えられる。また実施例4のように、第1触媒コート層及び第4触媒コート層のコート幅を25%と短くした場合、暖機性能がさらに向上した。この結果から、上流部に貴金属を多く配置すると暖機性能が向上することが示された。
【符号の説明】
【0096】
10 排ガス浄化用触媒
11 基材
12 第1触媒コート層
13 第2触媒コート層
14 第3触媒コート層
15 触媒コート層
20 排ガス浄化用触媒
21 基材
22 第1触媒コート層
23 第2触媒コート層
24 第3触媒コート層
25 触媒コート層
図1
図2
図3
図4
図5