(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び光半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20230322BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20230322BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230322BHJP
C08G 77/12 20060101ALI20230322BHJP
C08G 77/20 20060101ALI20230322BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20230322BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K3/36
C08G77/12
C08G77/20
H01L33/56
(21)【出願番号】P 2020501820
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(86)【国際出願番号】 US2018044561
(87)【国際公開番号】W WO2019027993
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-20
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チョン、チナ
(72)【発明者】
【氏名】ユク、チュヨン
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-114365(JP,A)
【文献】特開2012-012434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 3/00-13/08
C09J
H01L 23/30
H01L 33/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物であって、少なくとも以下の成分:
(A)15~35重量%の構成成分(A-1)及び65~85重量%の構成成分(A-2)を含むアルケニル含有オルガノポリシロキサンであって、
構成成分(A-1)は、以下の平均組成式:
(R
1
3SiO
1/2)
a(R
1
2SiO
2/2)
b(R
1SiO
3/2)
c(SiO
4/2)
d
[式中、R
1はフェニル基、メチル基、又は2~10個の炭素原子を有するアルケニル基を表し、全R
1基の0.4~50モル%は、2~10個の炭素原子を有するアルケニル基であり、メチル基はR
1に含有されるメチル基とフェニル基の合計の90モル%以上を構成し、「a」、「b」、「c」、及び「d」は、以下の条件:0≦a≦0.05、0.9≦b≦1、0≦c≦0.03、0≦d≦0.03、及びa+b+c+d=1を満たす数である]のオルガノポリシロキサンを含み、
構成成分(A-2)は、以下の平均組成式:
(R
2
3SiO
1/2)
e(R
2
2SiO
2/2)
f(R
2SiO
3/2)
g(SiO
4/2)
h(HO
1/2)
i
[式中、R
2はフェニル基、メチル基、又は2~10個の炭素原子を有するアルケニル基を表し、全R
2基の5~10モル%は、2~10個の炭素原子を有するアルケニル基であり、メチル基はR
2に含有されるメチル基とフェニル基の合計の90モル%以上を構成し、「e」、「f」、「g」、「h」及び「i」は、以下の条件:0.4≦e≦0.6、0≦f≦0.05、0≦g≦0.05、0.4≦h≦0.6、0.01≦i≦0.05、及びe+f+g+h=1を満たす数である]のオルガノポリシロキサンを含む、
アルケニル含有オルガノポリシロキサン、
(B)ケイ素原子結合水素原子を含有し、80~100重量%の構成成分(B-1)、0~20重量%の構成成分(B-2)、及び0~10重量%の構成成分(B-3)を含み、(B)成分中の前記ケイ素原子結合水素原子が(A)成分中のアルケニル基の含有量の合計1モル当たり0.5~2.0モルの範囲にある量である、オルガノポリシロキサンであって、
構成成分(B-1)は、少なくとも0.5重量%のケイ素原子結合水素原子を含有し、以下の平均分子式:R
3
3SiO(R
3
2SiO)
j(R
3HSiO)
kSiR
3
3
[式中、R
3はフェニル基又はメチル基を表し、メチル基はR
3に含まれる全ての基の90モル%以上を構成し、「j」は0~35の範囲の数であり、「k」は10~100の範囲の数である]で表される、オルガノポリシロキサンを含み、
構成成分(B-2)は、少なくとも0.5重量%のケイ素原子結合水素原子を含有し、以下の平均組成式:
(HR
4
2SiO
1/2)
l(R
4
3SiO
1/2)
m(R
4
2SiO
2/2)
n(R
4SiO
3/2)
o(SiO
4/2)
p(R
5O
1/2)
q
[式中、R
4はフェニル基又はメチル基を表し、メチル基はR
4に含まれる全ての基の90モル%以上を構成し、R
5は、水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、「l」、「m」、「n」、「o」、「p」及び「q」は、以下の条件:0.4≦l≦0.7、0≦m≦0.2、0≦n≦0.05、0≦o≦0.5、0.3≦p≦0.6、0≦q≦0.05、及びl+m+n+o+p=1を満たす数である]で表されるオルガノポリシロキサンを含み、
構成成分(B-3)は、以下の平均分子式:HR
6
2SiO(R
6
2SiO)
rSiR
6
2H
[式中、R
6はフェニル基又はメチル基を表し、メチル基はR
6に含まれる全ての基の少なくとも90モル%を構成し、「r」は10~100の範囲の数である]によって表されるオルガノポリシロキサンを含む、
オルガノポリシロキサン、
(C)(A)成分と(B)成分の合計100重量部当たり、0.1~5重量部の量の接着促進剤、
及び
(D)前記組成物を硬化させるのに十分な量の、ヒドロシリル化反応触媒
を含む、硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
(E)20~200m
2/gのBET比面積を有し、(A)~(D)成分の合計100重量部当たり1~10重量部の量で添加されたヒュームドシリカ、を更に含む、請求項1に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
硬化して、JIS K 6253に準拠したタイプDデュロメータ硬さが30~70の範囲である硬化物を形成する、請求項1又は2に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
前記硬化物が、JIS K 6253に準拠したタイプD硬さが55~70の範囲である、請求項3に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
光半導体素子用の封止剤又は接着剤として使用される、請求項1又は請求項2~4のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
前記光半導体素子が発光ダイオードである、請求項5に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項7】
光半導体素子が、請求項1又は請求項2~6のいずれか一項に記載の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物を使用して封
止又は接着されている、光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年7月31日に出願された米国特許出願公開第62/539,138号の優先権及び全ての利点を主張するものであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び該組成物の硬化物により封止及び/又は接着された光半導体素子を有する光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0003】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、フォトカプラー、発光ダイオード、固体撮像素子などの光半導体素子を有する光半導体装置において、光半導体素子を封止及び/又は接着するために用いられる。このような組成物の硬化物は、半導体素子から発光又は受光される光を吸収及び散乱しないことが要求される。更に、光半導体装置の信頼性を向上させるため、硬化物が変色又は接着強度低下を生じ得ないことが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
日本国特許出願公開(本明細書で以後「特開」と呼ぶ)2006-342200号では、高硬度及び高い光透過率を有する硬化物を形成できる硬化性オルガノポリシロキサン組成物を開示している。しかしながら、このような組成物から製造された硬化物は、光半導体装置の製造又は使用中のいずれかに容易に損傷し得るか、又は光半導体素子若しくはそのような素子のパッケージから容易に剥離し得る。
【0005】
特開2007-63538号及び特開2008-120843号では、卓越した耐衝撃性を有する硬化物を形成できる硬化性オルガノポリシロキサン組成物を開示している。しかし、このような硬化物は、時間の経過とともに黄変しやすいことから、高温で長時間使用することを意図した光半導体装置の光半導体素子を封止又は接着するのに好適ではない。
【0006】
特開2012-12434号では、光透過性と接着性が長期持続する特性を有し、比較的高硬度を有する硬化物を形成できる硬化性オルガノポリシロキサン組成物を開示している。しかしながら、ダイ取り付けのためのこれら既存の解決策は、パッド汚染を引き起こす原因となり、その結果パッドへのワイヤの接着が不十分になる。パッドへのワイヤの接着不良により、導電性が阻害され、パッケージ自体が破損することがある。
【0007】
本発明の目的は、光透過性と接着性が長期持続する特性を有する実質的に透明な硬化物を形成することができる硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供すること、並びに低パッド汚染による、より信頼性の高いパッケージを提供することである。別の目的は、卓越した信頼性及び性能を有する光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、少なくとも以下の成分:
(A)15~35重量%の構成成分(A-1)及び65~85重量%の構成成分(A-2)を含むアルケニル含有オルガノポリシロキサンであって、
構成成分(A-1)は、以下の平均組成式:
(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d
[式中、R1はフェニル基、メチル基、又は2~10個の炭素原子を有するアルケニル基を表し、全R1基の0.4~50モル%は、2~10個の炭素原子を有するアルケニル基であり、メチル基はR1に含有されるメチル基とフェニル基の合計の90モル%以上を構成し、「a」、「b」、「c」、及び「d」は、以下の条件:0≦a≦0.05、0.9≦b≦1、0≦c≦0.03、0≦d≦0.03、及びa+b+c+d=1を満たす数である]のオルガノポリシロキサンを含み、
構成成分(A-2)は、以下の平均組成式:
(R2
3SiO1/2)e(R2
2SiO2/2)f(R2SiO3/2)g(SiO4/2)h(HO1/2)i
[式中、R2はフェニル基、メチル基、又は2~10個の炭素原子を有するアルケニル基を表し、全R2基の5~10モル%は、2~10個の炭素原子を有するアルケニル基であり、メチル基はR2に含有されるメチル基とフェニル基の合計の90モル%以上を構成し、「e」、「f」、「g」、「h」及び「i」は、以下の条件:0.4≦e≦0.6、0≦f≦0.05、0≦g≦0.05、0.4≦h≦0.6、0.01≦i≦0.05、及びe+f+g+h=1を満たす数である]のオルガノポリシロキサンを含む、
アルケニル含有オルガノポリシロキサン、
(B)80~100重量%の構成成分(B-1)、0~20重量%の構成成分(B-2)、及び0~10重量%の構成成分(B-3)を含有し、(B-1)、(B-2)、及び(B-3)の各々の割合は、その合計が100重量%であり、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の量が(A)成分中のアルケニル基の含有量の合計1モル当たり0.5~2.0モルの範囲にある量であるように選択される、ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサンであって、
構成成分(B-1)は、少なくとも0.5重量%のケイ素原子結合水素原子を含有し、以下の平均分子式:
R3
3SiO(R3
2SiO)j(R3HSiO)kSiR3
3
[式中、R3はフェニル基又はメチル基を表し、メチル基はR3に含まれる全ての基の90モル%以上を構成し、「j」は0~35の範囲の数であり、「k」は10~100の範囲の数である]で表されるオルガノポリシロキサンを含み、
構成成分(B-2)は、少なくとも0.5重量%のケイ素原子結合水素原子を含有し、以下の平均組成式:
(HR4
2SiO1/2)l(R4
3SiO1/2)m(R4
2SiO2/2)n(R4SiO3/2)o(SiO4/2)p(R5O1/2)q
[式中、R4はフェニル基又はメチル基を表し、メチル基はR4に含まれる全ての基の90モル%以上を構成し、R5は、水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、「l」、「m」、「n」、「o」、「p」及び「q」は、以下の条件:0.4 ≦l≦0.7、0≦m≦0.2、0≦n≦0.05、0≦o≦0.5、0.3≦p≦0.6、0≦q≦0.05、及びl+m+n+o+p=1を満たす数である]で表されるオルガノポリシロキサンを含み、
構成成分(B-3)は、以下の平均分子式:
HR6
2SiO(R6
2SiO)rSiR6
2H
[式中、R6はフェニル基又はメチル基を表し、メチル基はR6に含まれる全ての基の少なくとも90モル%を構成し、「r」は10~100の範囲の数である]によって表されるオルガノポリシロキサンを含む、
オルガノポリシロキサン、
(C)(A)成分と(B)成分の合計100重量部当たり0.1~5重量部の量の接着促進剤、及び
(D)組成物を硬化させるのに十分な量の、ヒドロシリル化反応触媒、
を含む。
【0009】
本発明の組成物に、(E)20~200m2/gのBET比面積を有し、(A)~(D)成分の合計100重量部当たり1~10重量部の量で添加されたヒュームドシリカ、を更に提供してもよい。
【0010】
本発明の組成物は、硬化して、JIS K 6253に準拠したタイプDデュロメータ硬さが30~70の範囲であり、光半導体素子、特に発光ダイオードを封止又は接着するための作用剤としての使用に好適である、実質的に光学的に透明な硬化物を形成する。
【0011】
本発明の光半導体装置は、光半導体素子が上記組成物の硬化物を用いて封止及び/又は接着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、光透過性と接着性が長期持続する特性を有し、比較的高硬度を有する硬化物を形成できることを特徴とする。本発明の光半導体装置は、一部にはワイヤボンド不良の低減によって達成される卓越した信頼性を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の半導体装置の一例として示される表面実装型発光ダイオード(LED)装置の断面図である。
【0014】
本明細書で使用される参照番号
1 ポリフタレート樹脂製筐体
2 インナーリード
3 ダイパッド
4 接着材
5 LEDチップ
6 ボンディングワイヤ
7 封止材
【0015】
【
図2】
図2は、金パッド汚染試験の結果を示す1組の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(A)成分は、本発明の組成物の主成分であり、下記の構成成分(A-1)及び(A-2)からなるアルケニル含有オルガノポリシロキサンを含む。
【0017】
構成成分(A-1)は、組成物の取扱作業性及び硬化物の機械的強度を向上するために使用される。この構成成分は、以下の平均組成式:
(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d
[式中、R1はフェニル基、メチル基、又は2~10個の炭素原子を有するアルケニル基を表す」のオルガノポリシロキサンを含む。R1のアルケニル基は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、又はヘキセニル基によって例示できる。反応性及び合成の容易さの観点からビニル基が好ましい。しかしながら、全R1基の0.4~50モル%は、アルケニル基である。これは、アルケニル基の含有量が推奨下限を下回ると、組成物の硬化物の機械的強度が低くなり、一方、アルケニル基の含有量が推奨上限を超えると、硬化物が脆くなるからである。更に、R1のメチル基とフェニル基の合計が100%と仮定した場合、メチル基は90モル%以上を構成する必要がある。これは、メチル基の含有量が推奨下限を下回ると、組成物の硬化物が高温で容易に着色し得るからである。更に、上記式中、「a」、「b」、「c」、及び「d」は、シロキサン構造単位の比を表し、以下の条件:0≦a≦0.05、0.9≦b≦1、0≦c≦0.03、0≦d≦0.03、及びa+b+c+d=1を満たす数である。「a」の値が推奨上限を超えると、この構成成分の粘度の著しい低下をもたらす。これは次に、組成物の取扱作業性を損ない、本構成成分が揮発性になるか、又は硬化中に組成物の重量を減少させ、硬化物の硬度を低下させるかのいずれかとなる。一方、「c」及び「d」の値が推奨上限を超える場合、本構成成分の粘度を増加させ、組成物の取扱作業性を損なうか、又は硬化物が脆くなりすぎるかのいずれかとなる。「b」の値は、「a」、「c」、及び「d」の値から決定される。ただし、「b」の値が推奨下限よりも低いと、組成物に所望の粘度を付与すること、又は硬化物に必要な硬度若しくは機械的強度を付与することのいずれかができなくなる。構成成分(A-1)は、直鎖状、環状、部分環状、又は部分分岐状の分子構造を有してもよい。この構成成分は25℃で液状である。この構成成分の25℃における粘度は、3~1,000,000mPa・s、あるいは5~50,000mPa・sの範囲である必要がある。粘度が推奨下限を下回ると、硬化物の機械的強度が低下し、一方、粘度が推奨上限を超えると、組成物の取扱作業性が損なわれる。
【0018】
構成成分(A-1)は、以下の平均組成式によって表されるオルガノポリシロキサンによって例示でき、式中、Viはビニルを表し、Meはメチルを表し、Phはフェニルを表す。
(ViMe2SiO1/2)0.012(Me2SiO2/2)0.988
(ViMe2SiO1/2)0.007(Me2SiO2/2)0.993
(Me3SiO1/2)0.007(Me2SiO2/2)0.983(MeViSiO2/2)0.010
(Me3SiO1/2)0.01(MeViSiO1/2)0.01(Me2SiO2/2)0.96(MeSiO3/2)0.02
(ViMe2SiO1/2)0.005(Me2SiO2/2)0.895(MePhSiO2/2)0.100
【0019】
また、構成成分(A-1)は、以下の平均分子式で表されるオルガノポリシロキサンによって例示でき、Vi及びMeは上記と同様である。
(MeViSiO2/2)3
(MeViSiO2/2)4
(MeViSiO2/2)5
【0020】
構成成分(A-2)は、組成物の硬化物に硬度及び機械的強度を付与することを意図したオルガノポリシロキサンである。この構成成分は、以下の平均組成式:
(R2
3SiO1/2)e(R2
2SiO2/2)f(R2SiO3/2)g(SiO4/2)h(HO1/2)iによって表される。
【0021】
この式中、R2はフェニル基、メチル基、又は2~10個の炭素原子を有するアルケニル基を表す。R2のアルケニル基は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、又はヘキセニル基によって例示できる。反応性及び合成の容易さの観点からビニル基が好ましい。しかしながら、全R2基の5~10モル%は、アルケニル基である。これは、アルケニル基の含有量が推奨下限を下回ると、組成物の硬化物の硬度及び機械的強度が低くなり、一方、アルケニル基の含有量が推奨上限を超えると、硬化物が脆くなるからである。更に、R2のメチル基とフェニル基の合計が100%と仮定した場合、メチル基は90モル%以上を構成する必要がある。これは、メチル基の含有量が推奨限界よりも低いと、組成物の硬化物が高温で容易に着色し得るからである。更に、上記式中、「e」、「f」、「g」、「h」及び「i」は、シロキサン構造単位とヒドロキシル基との比を表し、以下の条件:0.4≦e≦0.6、0≦f≦0.05、0≦g≦0.05、0.4≦h≦0.6、0.01≦i≦0.05、及びe+f+g+h=1を満たす数である。「e」の値が推奨下限を下回ると、硬化物の機械的強度が低下し、一方、「e」の値が推奨上限を超えると、硬化物に十分な硬度を付与することができなくなる。「f」の値が推奨上限を超えると、硬化物に十分な硬度を付与することができなくなる。「g」の値が推奨上限を超えると、硬化物の機械的強度が低下する。「h」の値が推奨下限を下回ると、硬化物に十分な硬度を付与することができなくなり、一方、「h」の値が推奨上限を超えると、組成物中の成分の分散性が損なわれ、組成物の硬化物の機械的強度が低下する。最後に、良好な接着性を有する組成物を提供するためには、「i」の値を推奨範囲内に維持することが重要である。「i」の値が推奨下限を下回ると、所望の接着特性を有する組成物を提供することができず、一方で、「i」の値が推奨上限を超えると、組成物中のこの構成成分の分散性が損なわれ、組成物の硬化物に所望の機械的強度及び接着特性を付与することができなくなる。構成成分(A-2)は、分岐状又は網様の分子構造を有してもよい。この構成成分の25℃における粘度に関して特別な制限はなく、構成成分(A-1)と混和可能であるという条件で、液体でも固体でもよい。
【0022】
構成成分(A-2)は、以下の平均組成式で表されるオルガノポリシロキサンで例示でき、式中、Vi、Me、Phは、上記定義と同じである。
(ViMe2SiO1/2)0.10(Me3SiO1/2)0.33(SiO4/2)0.57(HO1/2)0.03
(ViMe2SiO1/2)0.13(Me3SiO1/2)0.35(SiO4/2)0.52(HO1/2)0.02
(ViMePhSiO1/2)0.10(Me3SiO1/2)0.45(SiO4/2)0.45(HO1/2)0.03
(ViMe2SiO1/2)0.09(Me3SiO1/2)0.31(SiO4/2)0.60(HO1/2)0.04
(ViMe2SiO1/2)0.10(Me3SiO1/2)0.40(SiO4/2)0.50(HO1/2)0.03
【0023】
(A)成分は、15~35重量%の構成成分(A-1)及び65~85重量%の構成成分(A-2)、あるいは20~30重量%の構成成分(A-1)及び70~80重量%の構成成分(A-2)を含有することが推奨される。構成成分(A-1)の含有量が推奨上限を超えると、組成物の硬化物に所望の硬度及び機械的強度を付与することができず、一方、構成成分(A-1)の含有量が推奨下限を下回ると、組成物の取扱作業性が損なわれ、硬化物に脆さが付与される。
【0024】
組成物を、最終的に均一性の高い状態で調製できるのであれば、(A)成分の構成成分(A-1)と(A-2)を予め混合する必要はない。良好な取扱作業性の観点から、(A)成分は25℃で液状であり、100~5,000,000mPa・s、あるいは500~100,000mPa・sの範囲の粘度を有する必要がある。
【0025】
(B)成分は、架橋剤として組成物に使用される。(B)成分は、ケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンを含み、構成成分(B-1)と、場合によっては構成成分(B-2)及び/又は構成成分(B-3)とからなる。
【0026】
構成成分(B-1)は、(B)成分の主成分であり、架橋剤として作用するだけでなく、効率的な界面接着改良剤として作用する。(B)成分は、架橋剤として構成成分(B-1)のみで構成されてもよい。この構成成分は、以下の平均分子式:
R3
3SiO(R3
2SiO)j(R3HSiO)kSiR3
3によって例示されるオルガノポリシロキサンを含む。
【0027】
この式中、R3はフェニル基又はメチル基を表し、メチル基はR3に含まれる全ての基の90モル%以上を構成する。メチル基の含有量が推奨限度を下回ると、硬化物が高温で容易に着色し得る。この式中、「j」は0~35の範囲の数であり、「k」は5~100の範囲の数である。「j」の値が推奨上限を超えると、良好な接着性を有する組成物を提供することができなくなる。「k」の値が推奨下限を下回ると、良好な接着性を有する組成物を提供することができず、一方、「k」の値が推奨上限を超えると、機械的強度が低い硬化物が得られる。更に、ケイ素原子結合水素原子の含有量は、0.5重量%以上である必要がある。ケイ素原子結合水素原子の含有量が0.5重量%を下回ると、良好な接着性を有する組成物を提供することが困難となる。構成成分(B-1)は、25℃で液状であること、及び25℃で3~10,000mPa・sの範囲、あるいは5~5,000mPa・sの範囲の粘度を有することが推奨される。粘度が推奨下限を下回ると、硬化物の機械的強度及び接着強度が損なわれ、一方、粘度が推奨上限を超えると、組成物の取扱作業性が損なわれる。
【0028】
構成成分(B-1)は、以下の平均分子式で表されるオルガノポリシロキサンで表されてもよく、式中、Me及びPhは、上記定義と同じである。
Me3SiO(MeHSiO)10SiMe3
Me3SiO(MeHSiO)80SiMe3
Me3SiO(Me2SiO)30(MeHSiO)30SiMe3
Me2PhSiO(MeHSiO)35SiMe2Ph
【0029】
構成成分(B-2)及び構成成分(B-3)は、特定の使用条件に適合するように組成物(B)の物理的特性を変えるために、構成成分(B-1)に添加されてもよい。構成成分(B-2)は、硬化物の機械的強度、並びに凝集及び接着特性を改良するために添加されてもよい。構成成分(B-2)は、以下の平均組成式:
(HR4
2SiO1/2)l(R4
3SiO1/2)m(R4
2SiO2/2)n(R4SiO3/2)o(SiO4/2)p(R5O1/2)qによって表されるオルガノポリシロキサンを含む。
【0030】
この式中、R4はフェニル基又はメチル基を表す。メチル基はR4に含まれる全ての基の90モル%以上を構成する。メチル基の含有量が推奨限度を下回ると、硬化物が高温で着色し得る。上記式中、R5は、水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基を示す。1~10個の炭素原子を有するR5のアルキル基は、メチル基、エチル基、及びイソプロピル基によって例示される。更に、上記式中、「l」、「m」、「n」、「o」、「p」及び「q」は、シロキサン構造単位とヒドロキシル基又はアルコキシ基との比を表し、以下の条件:0.4≦e≦0.7、0≦m≦0.2、0≦n≦0.05、0≦o≦0.5、0.3≦p≦0.6、0≦q≦0.05、及びl+m+n+o+p=1を満たす数である。「l」の値が推奨下限を下回ると、所望の硬度を達成することが不可能となり、一方、「l」の値が推奨上限を超えると、本構成成分の分子量が低下し、硬化物に十分な機械的強度を付与することができなくなる。更に、「m」の値が推奨上限を超えると、所望の硬度を達成することができなくなる。「n」の値が推奨上限を超えると、所望の硬度を達成することができなくなる。「o」の値が推奨上限を超えると、構成成分の分散性が損なわれ、硬化物に十分な機械的強度を付与することができなくなる。「p」の値が推奨下限を下回ると、所望の硬度を達成することができなくなり、一方、「p」の値が推奨上限を超えると、組成物中の本構成成分の分散性が損なわれ、所望の機械的強度を得ることができなくなる。最後に、「q」の値が推奨上限を超えると、構成成分の分子量が低下し、硬化物に十分な機械的強度を付与することができなくなる。本構成成分は、少なくとも0.5重量%のケイ素原子結合水素原子を含有する必要がある。ケイ素原子結合水素原子の含有量が0.5重量%を下回ると、硬化物に十分な機械的強度を付与することができなくなる。本構成成分と組成物との混和性を改善するため、この構成成分は25℃で液体又は固体である必要がある。
【0031】
構成成分(B-2)は、以下の平均組成式で表されるオルガノポリシロキサンによって例示でき、式中、Me及びPhは、上記定義と同じである。
(HMe2SiO1/2)0.67(SiO4/2)0.33
(HMe2SiO1/2)0.50(Me3SiO1/2)0.17(SiO4/2)0.33
(HMe2SiO1/2)0.65(PhSiO3/2)0.05(SiO4/2)0.30
【0032】
構成成分(B-3)は、硬化物の硬度を制御するために使用される。この構成成分は、以下の平均分子式:
HR6
2SiO(R6
2SiO)rSiR6
2H
[式中、R6はフェニル基又はメチル基を表し、メチル基はR6に含まれる全ての基の少なくとも90%を構成する]で表されるオルガノポリシロキサンである。メチル基の含有量が推奨下限を下回ると、高温で硬化物を着色する。上記式中、「r」は10~100の範囲の数を示す。「r」が推奨下限を下回ると、所望の硬度を有する硬化物を提供することが困難となり、一方、「r」の値が推奨上限を超えると、硬化物はその機械的強度を失うことになる。
【0033】
構成成分(B-3)は、以下の平均分子式:
HMe2SiO(Me2SiO)20SiMe2H
HMe2SiO(Me2SiO)80SiMe2H
HMe2SiO(Me2SiO)50(MePhSiO)5SiMe2Hによって表されるオルガノポリシロキサン[式中、Me及びPhは、上記定義と同じである]によって例示することができる。
【0034】
(B)成分は、(B)成分の総重量に対する相対百分率として示して、80~100重量%の構成成分(B-1)、0~20重量%の構成成分(B-2)、及び0~10重量%の構成成分(B-3)を含有する。様々な実施形態において、構成成分(B-1)は、(B)成分の少なくとも85、90、又は95重量%を構成してもよい。構成成分(B-2)は、存在してもよく、範囲の下限は(B)成分の総量の0重量%、少なくとも5、10、又は15重量%であってもよく、範囲の上限は、範囲の下限よりも高いが、5、10、15、又は20重量%を超えない量であってもよい。構成成分(B-3)は、存在してもよく、構成成分(B-1)及び構成成分(B-2)に対する(B)成分の残部を構成してもよい。典型的には、構成成分(B-3)の量は、本発明の組成物の硬化物が十分な硬度を有するように、少量である。記載されている(B)成分の組成は、パッド上をクリープするシロキサン材料によるパッド汚染を低減する。(B)成分は25℃で液状であり、5~100,000mPa・s、あるいは10~50,000mPa・sの範囲の粘度を有し、それにより構成(B)成分は取り扱いが容易となる。
【0035】
(B)成分は、ケイ素原子結合水素原子が、(A)成分中のアルケニル基の含有量の合計1モル当たり0.5~2.0モル、あるいは0.8~1.8モルの範囲であるような量で添加される。成分(B)の含有量が推奨下限を下回るか、又は推奨上限を超える場合、組成物の硬化物に所望の硬度、機械的特性、及び接着特性を付与することができなくなる。
【0036】
構成成分(C)は、接着促進剤である。このような接着促進剤は、当該技術分野において既知であり、ヒドロシリル化反応硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加するために使用されてもよい。例示的な成分(C)は、エポキシ含有有機基、アルケニル基、及びケイ素結合アルコキシ基を含有するオルガノシラン又はオルガノシロキサンである。成分(C)の例としては、以下の化合物が挙げられる:4~20個のケイ素原子を有し、直鎖状、分岐状、又は環状の分子構造であり、トリアルコキシシロキシ基(トリメトキシシロキシ基又はトリエトキシシロキシ基など)又はトリアルコキシシリルアルキル基(トリメトキシシリルエチル基又はトリエトキシシリルエチル基など)と、ヒドロシリル基又はアルケニル基(ビニル基又はアリル基など)とを含有する、オルガノシラン又はオルガノシロキサンオリゴマー;4~20個のケイ素原子を有し、直鎖状、分岐状、又は環状の分子構造であり、トリアルコキシシロキシ基又はトリアルコキシシリルアルキル基と、メタクリロキシアルキル基(3-メタクリロキシプロピル基など)とを含有する、オルガノシラン又はオルガノシロキサンオリゴマー;4~20個のケイ素原子を有し、直鎖状、分岐状、又は環状の分子構造であり、トリアルコキシシロキシ基又はトリアルコキシシリルアルキル基と、エポキシ含有アルキル基(3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、又は3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基など)を含有する、オルガノシラン又はオルガノシロキサンオリゴマー;アミノアルキルトリアルコキシシランとエポキシ結合アルキルトリアルコキシシランとの反応生成物;又はエポキシ含有エチルポリシリケート。具体的な例は、以下の化合物である:ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランと3-アミノプロピルトリエトキシシランとの反応生成物;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとシラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーとの縮合反応物;3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランとシラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーとの縮合反応物;及びトリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート。
【0037】
硬化物が高温で長時間使用されたときの耐黄変性低下と光透過性低下を防止する観点から、(C)成分は、活性窒素原子、例えばアミノ基を含有しないことが好ましい。特定の実施形態では、この接着促進剤は、25℃で1~500mPa・sの範囲の粘度を有する低粘度液体である。
【0038】
(C)成分は、硬化特性を損なわない量、特に、硬化物の色の変化を引き起こさない量で添加される必要がある。より具体的には、(C)成分は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部当たり、少なくとも0.01重量部かつ最大5重量部、あるいは少なくとも0.1重量部かつ最大3重量部の量で添加される必要がある。
【0039】
(D)成分は、本組成物のヒドロシリル化反応を促進するために使用されるヒドロシリル化反応触媒である。このような触媒の例としては、白金系触媒、白金系化合物触媒、金属白金触媒、ロジウム系触媒、又はパラジウム系触媒が挙げられる。(A)成分と(B)成分とのヒドロシリル化反応の効率的な促進、すなわち本組成物の硬化の促進の観点から、白金系触媒の使用が推奨される。このような触媒は、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とジオレフィンの錯体、白金とオレフィンの錯体;白金ビス(アセトアセテート)、白金ビス(アセトアセトネート)などの白金のカルボニル錯体;塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体、塩化白金酸とテトラビニルテトラメチルシクロテトラシランの錯体などの塩化白金酸とアルケニルシロキサンの錯体;白金とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体、白金とテトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンの錯体などの白金とアルケニルシロキサンの錯体;塩化白金酸とアセチレンアルコールの錯体などによって例示できる。ヒドロシリル化効率の観点から、白金とアルケニルシロキサンの錯体の使用が推奨される。
【0040】
アルケニルシロキサンの例としては、以下の化合物が挙げられる:1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン;メチル基の一部がエチル基、フェニル基などで置換されているアルケニルシロキサン;若しくは類似の置換アルケニルシロキサンオリゴマー;そのアルニルシロキサンのビニル基がアリル基、ヘキセニル基などの基で置換されているアルケニルシロキサンオリゴマー。白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が高いことから、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの使用が推奨される。
【0041】
更に、白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性を更に向上させるために、錯体を、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジアリル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサンなどのアルケニルシロキサンオリゴマー、又はジメチルシロキサンオリゴマーなどのオルガノシロキサンオリゴマー、特にアルケニルシロキサンオリゴマーと組み合わせることができる。
【0042】
組成物の硬化を促進する限り、(D)成分を使用できる量に関して、特に制限はない。より具体的には、(D)成分は、本成分中の白金族金属原子、特には白金原子が重量単位で0.01~500ppm、あるいは0.01~100ppm、あるいは0.1~50ppmの範囲内となる量で添加することが推奨される。成分(D)の含有量が推奨下限を下回ると、十分な硬化を提供することが困難となり、一方、(C)成分の含有量が推奨上限を超えると、硬化物の着色を生じる。
【0043】
組成物の取扱作業性及び接着特性を改善するために、20~200m2/gの範囲のBET比面積を有するヒュームドシリカを更に提供してもよい。この成分は、(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計100重量部当たり1~10重量部の量で使用される必要がある。(E)成分が、そのBET比面積が推奨範囲を下回る又は上回る量で使用された場合、取扱作業性が損なわれ、組成物の所望の粘度を得ることができなくなる。更に、(E)成分の含有量が推奨上限を超えると、光透過性が損なわれる。
【0044】
室温での作業可使時間を延長し、貯蔵安定性向上するために、組成物には、(F)成分として、1-エチニルシクロヘキサン-1-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オールなどのアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-インなどのエン-イン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサンなどのメチルアルケニルシロキサンオリゴマー;ジメチルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン、メチルビニルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランなどのアルキンオキシシラン;ベンゾトリアゾールなどのヒドロシリル化反応阻害剤を更に添加することができる。
【0045】
(F)成分は、(A)、(B)、(C)及び(D)成分の混合中に組成物のゲル化又は硬化を阻害するのに十分な量で使用され、また組成物の長期保管をもたらすために必要な量で使用される。より具体的には、この成分を、(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計100重量部当たり、0.0001~5重量部、あるいは0.01~3重量部の量で添加することが推奨される。
【0046】
本発明の目的と矛盾しない範囲内で、組成物には、(E)成分以外に、シリカ、ガラス、酸化亜鉛などの無機充填剤;シリコーンゴム粉末;シリコーン樹脂、ポリメタクリレート樹脂などの樹脂粉末;耐熱剤、染料、顔料、難燃剤、溶剤などの他の任意成分を添加してもよい。
【0047】
取り扱いの観点から、組成物は、液状であり、25℃で10~1,000,000mPa・sの範囲の粘度を有することが推奨される。組成物は、光半導体素子用の封止剤としての使用を意図している場合、25℃で100~10,000mPa・sの範囲の粘度を有する必要があり、光半導体素子用接着剤としての使用を意図している場合、25℃で1,000~500,000mPa・sの範囲の粘度を有する必要がある。
【0048】
組成物は、室温で保持することによって、又は加熱することによって、硬化される。硬化を促進するために、加熱によって組成物を硬化させることが推奨される。加熱温度は、50~200℃の範囲である必要がある。
【0049】
組成物は、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、銀、チタン、チタン合金などの金属若しくは合金;シリコン半導体、ガリウムリン系半導体、ガリウムヒ素系半導体、ガリウムナイトライド系半導体などの半導体素子;セラミック、ガラス、熱硬化性樹脂、及び極性基を含有する熱可塑性樹脂に対して、特に上記対象物が冷熱サイクルを受けたときに、卓越した接着耐久性をもたらす。
【0050】
組成物の硬化により、JIS K 6253に準拠したタイプDデュロメータで測定した硬度が30の範囲であり、上限は下限よりも高く、最大で60、65、又は70の硬化物が得られることが推奨される。硬化物の硬度が30を下回ると、凝集力が乏しく、強度及び接着力が不十分となり、一方、硬度が70を超えると、硬化物が脆性となり、十分な接着特性を提供することができなくなる。特定の実施形態では、硬化物は、少なくとも40、50、55、又は60の硬度を有し得る。
【0051】
次に、本発明の光半導体装置について詳細に説明する。
【0052】
本発明の光半導体装置は、本発明の組成物から形成された封止材の硬化物によって筐体内に封止されるか、又は本発明の組成物から形成された接着材の硬化物で筐体に接着されているかのいずれかである光半導体素子を備える。光半導体素子は、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像素子、又はフォトカプラー用発光体及び受光体を含んでもよい。
最も好適な用途はLEDである。
【0053】
LEDでは、半導体の上下左右から発光が起きるので、装置の部品は、光を吸収せず、高い光透過率又は高い光反射係数のいずれかを有する材料で作製されることが要求される。光半導体素子を支持する基板も、上記原則から除外されない。このような基板は、銀、金、銅などの導電性金属;アルミニウム、ニッケルなどの非導電性金属;白色顔料と混合されたPPA(ポリフタルアミド)、LCP(液晶ポリマー)などの熱可塑性樹脂;白色顔料と混合されたエポキシ樹脂、BT樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂;アルミナ、アルミナ窒化物などのセラミックスから作製することができる。本発明の組成物は、半導体素子及び基板に対して良好な接着をもたらすことから、得られる光半導体装置の信頼性を向上する。
【0054】
本発明の光半導体装置を、
図1を参照してより詳細に説明する。
図1は、光半導体装置の代表例として示されている単体の表面実装型LEDの断面図である。
図1のLEDは、ポリフタルアミド樹脂(PPA)製筐体1の内部の接着材4を通じてダイパッド3上にダイボンディングされたLEDチップ5を備える。次に、LEDチップ5がボンディングワイヤ6によってインナーリード2にワイヤボンディングされると共に、筐体の内壁が封止材7によって封止されている。本発明のLEDにおいて、接着材4及び/又は封止材7を形成するために使用される組成物は、本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物である。
【0055】
産業上の利用可能性
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、LED、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像素子、フォトカプラー用発光体及び受光体などの光半導体素子のための封止剤及び接着剤として使用することができる。本発明の光半導体装置は、光学装置、光学機器、照明機器、照明装置などの光半導体装置として使用してもよい。
【実施例】
【0056】
本発明の硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び本発明の光半導体装置を、適用例及び比較例を参照してより詳細に更に例示する。これらの適用例及び比較例では、粘度の値は25℃に相当する。
【0057】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物の粘度、並びに適用例及び比較例に記載の硬化物の硬度、光透過率、及び接着強度は、以下の方法で測定した。
【0058】
[硬化性オルガノポリシロキサン組成物の粘度]
この特性は、硬化性オルガノポリシロキサン組成物を30分以内に調製した後、粘度計(AR-550、TA Instrument Co.,Ltd.の製品)で、直径20mmの2°コーンプレートを用いて測定した。粘度は、最初に予備剪断を適用した後、1秒-1及び10秒-1の剪断速度で測定した。剪断依存性粘度変化として定義されるチキソトロピーは、1秒-1における粘度を10秒-1における粘度で除算することによって決定される。
【0059】
[硬化物の硬度]
硬化性オルガノポリシロキサンを、150℃で1時間プレス成形することによってシート状硬化物に成形し、当該シートを、JIS K6253に準拠したタイプDデュロメータによる硬度測定に使用した。
【0060】
[硬化物の光透過性]
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を2枚のガラス板の間に挟み、150℃で1時間保持することにより硬化させた。得られた硬化物の光透過特性を、可視光の任意の波長(400nm~700nmの波長範囲)で測定可能な自記分光光度計(光路:0.1cm)を用いて25℃で測定した。ガラスと組成物を通した光透過率から、ガラスのみを通した光透過率を減算することによって、硬化物を通した光透過率を決定した。波長450nmで得られた光透過率を表1に示す。
【0061】
[装置のパッド汚染]
10mm×10mmの正方形の金チップ及び100mgの硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、約20mmの間隔で離したアンプルに入れ、アンプルを封止してオーブン内に入れ、30分間で室温から170℃まで加熱し、更に170℃で30分間維持してオルガノポリシロキサン組成物を硬化させた。金チップの変色を目視で確認し、+++ひどく汚染されている、++やや汚染されている、+汚染が観察される、汚染なし、の4段階で評価した。
【0062】
[実施例1~4及び比較例1]
以下に記載されるのは、適用例及び比較例に示される硬化性オルガノポリシロキサン組成物の調製に使用された構成成分の式であり、式中、Viはビニル基を表し、Meはメチル基を表し、Vi%は、全ての有機基中のビニル基(モル%)の百分率を示す。
【0063】
構成成分(a-1):粘度が60mPa・sであり、以下の平均組成式:(Me2ViSiO1/2)0.042(Me2SiO2/2)0.958で表されるオルガノポリシロキサン(Vi%=2.06モル%)
【0064】
構成成分(a-2):粘度が4mPa・sであり、以下の平均分子式:(MeViSiO2/2)4で表されるオルガノポリシロキサン(Vi%=50モル%)
【0065】
構成成分(a-3):以下の分子式:(MeViSiO1/2)4(SiO4/2)1で表されるオルガノポリシロキサン(Vi%=33モル%)
【0066】
構成成分(a-4):25℃で固体であり、以下の平均組成式:(Me2ViSiO1/2)0.09(Me3SiO1/2)0.43(SiO4/2)0.48(HO1/2)0.03で表されるオルガノポリシロキサン(Vi%=5.8モル%)
【0067】
構成成分(b-1):粘度が20mPa・sであり、ケイ素原子結合水素原子を1.5重量%含有し、以下の平均分子式:Me3SiO(MeHSiO)10SiMe3で表されるオルガノポリシロキサン
【0068】
構成成分(b-2):粘度が120mPa・sであり、ケイ素原子結合水素原子を1.03重量%含有し、以下の平均組成式:(HMe2SiO1/2)0.67(SiO4/2)0.33で表されるオルガノポリシロキサン。
【0069】
構成成分(c):3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、粘度が30mPa・sである分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーとの縮合反応物
【0070】
構成成分(d):白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとの錯体の1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン溶液(金属白金を約4重量%含有)
【0071】
構成成分(e):190~210m2/gの範囲のBET表面積を有し、ヘキサメチルジシラザン(RX300、日本アエロジル社製)による表面処理により疎水化されたヒュームドシリカ
【0072】
構成成分(f):ヒドロシリル化反応阻害剤アルキンオキシシラン(alkyoxysilane)
【0073】
硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、表1に示す成分比で調製した。得られた材料の特性を表2に記載する。パッド汚染の視覚的表現を、
図2として提供する。
【表1】
【表2】
【0074】
用語「含んでいる(comprising)」又は「含む(comprise)」は、本明細書においてこれらの最も広い意味で使用され、「含んでいる(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of)」という概念を意味し、包含する。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば/など(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用されている「約(about)」という用語は、機器分析により測定した、又は試料を取り扱った結果としての数値のわずかな変動を、合理的に包含若しくは説明する働きをする。このようなわずかな変動は、数値の±0~25、±0~10、±0~5、又は±0~2.5%程度であり得る。更に、「約」という用語は、ある範囲の値に関連する場合、数値の両方に当てはまる。更に、「約」という用語は、明確に記載されていない場合でも、数値に当てはまることがある。
【0075】
一般的に、本明細書で使用されている、ある範囲の値におけるハイフン「-」又はダッシュ「-」は、「まで(to)」又は「から(through)」であり、「>」は「~を上回る(above)」又は「超(greater-than)」であり、「≧」は「少なくとも(at least)」又は「以上(greater-than or equal to)」であり、「<」は「~を下回る(below)」又は「未満(less-than)」であり、「≦」は「多くとも(at most)」又は「以下(less-than or equal to)」である。前述の特許出願、特許、及び/又は特許公開のそれぞれは、個別の基準で、特に1つ以上の非限定的な実施形態における参照により明示的にその全体を本明細書に組み込む。
【0076】
添付の特許請求の範囲は、詳細な説明に記載されている表現、及び特定の化合物、組成物又は方法に限定されず、これらは、添付の特許請求の範囲内にある特定の実施形態の間で変化し得ることが、理解されるべきである。様々な実施形の詳細な特徴又は態様について記載している、本明細書で依拠とされたいずれかのマーカッシュグループに関しては、異なる、特別な、及び/又は想定外の結果が、他の全マーカッシュメンバーとは無関係のそれぞれのマーカッシュグループの各メンバーから得られることは理解されるべきである。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0077】
本発明の様々な実施形態の記載を依拠とする任意の範囲及び部分的範囲は、独立して、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内にあることも理解されるべきであり、全体値及び/又は小数値を含む全ての範囲を、そのような値が本明細書で明確に書かれていなくても、説明し、想定することが理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に、及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、各部分範囲は、個々に、及び/又は包括的に依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けるものである。最終的に、開示した範囲内の個々の数が依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点を含む個々の数(又は分数)、例えば4.1を含み、これは、依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態を十分に裏付けることができる。
【0078】
本発明は、実例となる様式で本明細書に記載されており、使用されている用語は限定目的よりも、むしろ説明のための言葉としての性質が意図されているものと理解されるべきである。本発明の多くの修正形態及び変形形態が、上記教示を踏まえて可能である。本発明は、添付の特許請求の範囲内に具体的に記載されているもの以外に、他の方法で実行してもよい。独立請求項及び従属請求項、単一及び複数の従属請求項の両方の、主題の全ての組み合わせが、本明細書において明確に想定されている。