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特許7248666空隙が低減された予め充填された薬剤送達装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】空隙が低減された予め充填された薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/28 20060101AFI20230322BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20230322BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
A61M5/28
A61M5/20
A61M5/315 550P
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020519710
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018077442
(87)【国際公開番号】W WO2019072826
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】17195670.9
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クヌーセン, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】マルクマン, イェベ
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-519599(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03108914(EP,A1)
【文献】特表2008-515471(JP,A)
【文献】米国特許第05226895(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/28
A61M 5/20
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置用のカートリッジ・ピストンロッドのサブアセンブリ(150)を組み立てる方法であって、
(i)軸方向に変位可能なピストンを有するカートリッジ(130)であって、前記ピストンが近位に面する自由表面を備えるカートリッジと、
前記カートリッジが配置されるカートリッジホルダ(120)と、
前記ピストンの近位に配置され、ねじ穴を備えるナット部分(140)と、を備えるアセンブリを提供するステップと、
(ii)少なくとも1つの外側駆動構造(102)、および遠位端(103)を備えるねじ山付きピストンロッド(100)を提供するステップと、
(iii)少なくとも1つの内側駆動構造(111)を備える駆動部材(110)を提供するステップであって、前記外側駆動構造および前記内側駆動構造の数および円周方向の間隔によって、前記ピストンロッドおよび前記駆動部材が軸方向には摺動し、回転方向にはロック係合される、少なくとも3つの異なる回転位置で、前記ピストンロッドを前記駆動部材において軸方向に受けることを可能にし、前記駆動部材が前記カートリッジホルダに対して少なくとも1つの所定の回転位置を有する、ステップと、
(iv)前記ピストンロッド(100)を前記ナット部分の前記ねじ穴(144)に挿入し、前記ピストンロッドの前記遠位端(103)が直接的または間接的にカートリッジピストンに係合するまで前記ピストンロッドを回転させるステップと、
(v)所定の回転位置に最も近い回転位置にある前記ピストンロッド(100)上に前記駆動部材(110)を取り付けるステップと、
(vi)前記駆動部材(110)を前記所定の回転位置に回転させるステップと、を含む方法。
【請求項2】
ステップ(iv)において、前記駆動部材(110)を所定の回転位置に回転させたときに、前記ピストンロッド(100)をさらに前進させるように前記駆動部材(110)を回転させる、請求項1に記載の組み立てる方法。
【請求項3】
ステップ(iv)において、前記駆動部材(110)を所定の回転位置に回転させたときに、前記ピストンロッド(100)を格納するよう前記駆動部材(110)を回転させる、請求項1に記載の組み立てる方法。
【請求項4】
ステップ(vi)において、前記駆動部材(110)が、前記駆動部材が前記カートリッジホルダに対して自由に回転可能な第1の軸方向位置と、前記駆動部材が前記カートリッジホルダに対して回転ロックされる第2の軸方向位置を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組み立てる方法。
【請求項5】
前記回転ロックが、前記駆動部材と前記ナット部分との間に配置された一方向ラチェット(113、143)によって提供され、前記ナット部分に対する前記駆動部材の第1の方向への回転を防止し、力の一定限度を超えた場合に反対方向への回転を可能にする、請求項4に記載の組み立てる方法。
【請求項6】
(a)前記ピストンロッド(100)が、少なくとも3つの外側駆動構造(102)を備え、前記駆動部材(110)が少なくとも1つの内側駆動構造(111)を備えるか、
(b)前記ピストンロッド(100)が、少なくとも1つの外側駆動構造(102)を備え、前記駆動部材(110)が少なくとも3つの内側駆動構造(111)を備えるか、または
(c)前記ピストンロッド(100)が、少なくとも3つの外側駆動構造(102)を備え、前記駆動部材(110)が少なくとも3つの内側駆動構造(111)を備え、かつ
(d)前記外側駆動構造および前記内側駆動構造のいずれか、または前記外側駆動構造と前記内側駆動構造の両方が、長軸方向の構成を有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の組み立てる方法。
【請求項7】
薬剤送達装置であって、
軸方向を画定する円筒形の本体部分、出口部分、および軸方向に変位可能なピストンを備えるカートリッジ(130)と、
ハウジングと、
吐出配置であって、
ートリッジピストンに直接的または間接的に係合して遠位へ軸方向に変位させるように適合され、それによって前記カートリッジから薬剤の用量を吐出するピストンロッド(100)であって、
外側ねじ山(102)と、
少なくとも1つの外側駆動構造(101)と、を備えるピストンロッドと、
前記ハウジングに回転できないように結合され、ねじ係合する前記ピストンロッドを受けるねじ穴(144)を備える、ナット部分(140)と、
前記ピストンロッドが配置される駆動部材(110)であって、少なくとも1つの内側駆動構造(111)を備え、前記外側駆動構造および前記内側駆動構造の数および円周方向の間隔によって、前記ピストンロッドおよび前記駆動部材が軸方向には摺動し、回転方向にはロック係合される、少なくとも3つの異なる回転位置に、前記ピストンロッドを取り付けることを可能にする、駆動部材と、
ユーザーが、前記駆動部材を回転させることによって、前記ピストンロッドを回転させ前記ナット部分を通して軸方向に移動させ、前記カートリッジから薬剤の量を吐出させることを可能にする駆動配置と、を備える吐出配置と、を備える薬剤送達装置。
【請求項8】
前記吐出配置が、
初期位置から設定用量に対応する設定位置まで回転可能な用量設定部材と、
前記設定用量に応じて前記駆動部材を回転させるための作動可能な作動部材と、をさらに備える、請求項7に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記作動部材が、用量設定中に初期位置から前記設定用量に対応する設定位置へと近位に移動され、
前記作動部材が、前記設定位置から前記初期位置への軸方向の移動によって作動可能である、
請求項8に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記吐出配置が、
用量設定中に前記設定用量に応じて変形される駆動ばねをさらに備え、
前記駆動ばねが、前記作動部材が作動されるときに解放されて、前記設定用量に応じて前記駆動部材を回転させる、請求項8に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記外側駆動構造および前記内側駆動構造が対応するスプライン構造の形態である、請求項7~10のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記外側駆動構造および前記内側駆動構造が、対応する主に平面の形態である、請求項7~10のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
一方向ラチェットが、前記駆動部材と前記ナット部分との間に配置されて前記ナット部分に対する前記駆動部材の第1の方向への回転を防止し、力の一定限度を超えた場合に反対方向への回転を可能にする、請求項7~12のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項14】
(a)前記ピストンロッド(100)が、少なくとも3つの外側駆動構造(102)を備え、前記駆動部材(110)が少なくとも1つの内側駆動構造(111)を備えるか、
(b)前記ピストンロッド(100)が、少なくとも1つの外側駆動構造(102)を備え、前記駆動部材(110)が少なくとも3つの内側駆動構造(111)を備えるか、または
(c)前記ピストンロッド(100)が、少なくとも3つの外側駆動構造(102)を備え、前記駆動部材(110)が少なくとも3つの内側駆動構造(111)を備え、かつ
(d)前記外側駆動構造および前記内側駆動構造のいずれか、または前記外側駆動構造と前記内側駆動構造の両方が、長軸方向の構成を有する、
請求項7~13のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項15】
薬剤送達装置用のカートリッジ・ピストンロッドのサブアセンブリ(150)であって、
軸方向に変位可能なピストンを有するカートリッジ(130)であって、前記ピストンが近位に面する自由表面を備えるカートリッジと、
前記カートリッジが配置されるカートリッジホルダ(120)と、
前記カートリッジホルダに回転できないように結合され、ねじ係合で前記ピストンロッドを受けるように適合されたねじ穴(144)を備える、ナット部分(140)と、
前記ねじ穴で受けられ、カートリッジピストンに直接的または間接的に係合して遠位へ軸方向に変位させるように適合され、それによって、前記カートリッジから薬剤の用量を吐出するピストンロッド(100)であって、
外側ねじ山(102)と、
少なくとも1つの外側駆動構造(101)と、を備えるピストンロッドと、
前記ピストンロッドが配置される駆動部材(110)であって、少なくとも1つの内側駆動構造(111)を備え、前記外側駆動構造および前記内側駆動構造の数および円周方向の間隔によって、前記ピストンロッドおよび前記駆動部材が軸方向には摺動し、回転方向にはロック係合される少なくとも3つの異なる回転位置に、前記ピストンロッドを取り付けることを可能にする、駆動部材と、を備えるサブアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、薬剤送達装置およびそのアセンブリの方法に関し、装置は患者自身の手で使用および操作されるように適合される。特定の実施形態では、本発明は、予め充填されたタイプの医療送達装置、およびそれらのアセンブリの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、主にインスリンまたはその他の糖尿病薬の送達による糖尿病の治療が参照されるが、これは本発明の例示的な使用に過ぎない。
【0003】
流体薬剤の皮下投与用の注射装置という形態での薬剤送達装置は、薬剤および生物学的薬剤を自己投与する必要がある患者の生活を大幅に改善してきた。薬剤注射装置は、注射手段を備えたアンプルと大差ない単純な使い捨て装置を含めた数多くの形態を取ってもよく、または多数の機能を有する高度に洗練された電子制御機器であってもよい。それらの形態にかかわらず、それらは、患者が注射可能な薬剤および生物学的薬剤を自己投与するのを支援するに際して大きな助けとなることが実証されている。また、それらは、介護者が自己注射を行うことができない者に注射可能な薬剤を投与するのを大いに支援する。
【0004】
特に、ペンスタイルの注射装置は、インスリンなどの薬剤および生物学的薬剤を投与するために、正確で使いやすく、しばしば個別的なやり方を提供することが実証されている。典型的には、注射装置は、目的の薬物、例えば、1.5mLまたは3.0mLのインスリンまたは成長ホルモン、を含有する予め充填されたカートリッジを使用する。カートリッジは一般に、一方の端に針貫通可能な隔壁を有し、また注射装置の投与機構によって移動するように設計された対向するピストンを有する、概して円筒形の透明アンプルの形態である。注射装置は一般的に2つのタイプであり、「耐久型」装置および「使い捨て」装置である。耐久型装置(例えば、国際特許公開第2009/10599号および同第2009/132777号を参照)は、ユーザーが1つのカートリッジを別のカートリッジと、典型的には空のカートリッジの代わりに新しいカートリッジと交換することを可能にするように設計されている。対照的に、使い捨て(または「予め充填された」)装置には、装置を損傷または破壊することなくユーザーが置き換えることのできない一体型のカートリッジが提供されており、カートリッジが空になった場合はカートリッジ全体が廃棄される。
【0005】
薬剤の用量を吐出する間にカートリッジピストンを前方に移動させる力を送達する駆動手段について、さらに区別することができる。従来の注射装置は、ユーザーが吐出中に延長可能なボタンを押すことによって手動で作動してきたが、別の方法として、予め変形されるか用量設定中に変形され、その後に解放されることによって「自動的」な薬剤の投与を可能にするバネにより、駆動力が提供されてもよい。
【0006】
一部の注射装置は、カートリッジ内の薬剤量に対応する単回の固定用量、またはより大きなカートリッジからの多数の固定用量のいずれかの固定用量の送達用に設計されているが、大半の注射装置は、ユーザーが吐出される薬剤の量の望ましいサイズを設定できるような用量設定手段を備える。
【0007】
上述の通り、投与される液剤は通常、薬剤送達装置の吐出機構のピストンロッドと機械的に相互作用する移動可能なピストンを有するカートリッジ内に提供される。遠位方向のスラストをピストンに加えることによって、液剤の所与の設定量をカートリッジから吐出できる。予め充填された薬剤送達装置は通常、必然的な製作公差、吐出機構の実際の設計、および組立プロセスを理由として、カートリッジのピストンとピストンロッドの間に軸方向のクリアランス(または「空隙」)が存在する状態でユーザーに提供される。
【0008】
これに対応して、装置の最初の使用の前に、エンドユーザーは、初期用量設定および後続の第1の用量投与ステップがすでに行われた状態で、ピストンロッドがカートリッジピストンと接触して正確な量の液剤が所定の方法で投与されることを確実にするために、吐出機構のいわゆるプライミングを行わなければならない。初期用量設定および微量の吐出は、特定の状況において、カートリッジおよび/または接続された針の中に存在する空気を除去するためならびに流量確認のために必要とされる場合もある。国際特許公開第99/38554号は、薬剤送達装置のいくつかの実施形態を開示しており、それぞれが、生産ラインにおける組立の間に液剤カートリッジが装置の中へ挿入される使い捨て装置を形成するのに適している。
【0009】
用量設定機能を組み込んでいる最新式のペン型薬剤送達装置は、ユーザーが装置のカートリッジの中に残っている液剤の量を超える用量のサイズを選択することを防止するために、いわゆる内容量終了(EoC)部材を備えることが多い(例えば、国際特許公開第01/19434号、同第2006/128794号、および同第2010/149209号を参照のこと)。その初期位置において、EoC部材は、所定の量の薬剤、例えば、薬物製剤3mLに相当するインスリン300IUを、用量設定機構がブロックされる前に吐出することを可能にする。しかし、1つ以上のプライミングステップを最初に実施して空隙を排除すると、EoC部材はそれに応じて「逆算」し、これによって使用可能な薬剤の意図される全量がカートリッジから吐出されることを防止する。さらに、空隙の排除に必要な「用量」は所与の装置内での実際の空隙のサイズに基づき変動するため、空隙の排除はエンドユーザーに送達される薬剤量の変動をもたらす。
【0010】
国際特許公開第2014/16689号は、ピストンが、ピストンロッドのみとねじ係合する駆動ナットの回転によって軸方向に進む薬剤送達装置用の駆動機構を開示している。ピストンロッド上の所与の回転位置に駆動ナットを取り付けることができるため、この設計は、製造中にピストンロッドをカートリッジピストンと接触させるように前進させ、駆動ナットをその後に所望の軸方向の位置に取り付けることを可能にする。しかし、特定の回転取付位置用に設計された、例えば、スロット付きピストンロッドを備える「摺動式」駆動システムを備えたピストンロッドについては、これは可能ではない。
【0011】
上記に関しては、吐出機構のピストンロッドなどのピストン駆動部材とカートリッジピストンとの間の初期の空隙が最小限である(理想的には全くない)摺動式駆動システムを備える予め充填されたタイプの薬剤送達装置、およびその構成要素を、費用対効果の高い方法で提供することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0012】
本発明の開示では、上記の課題のうちの1つまたは複数に対処する実施形態および態様が記載されるか、または以下の開示および例示的実施形態の説明から明らかな課題に対処する実施形態および態様が記載される。
【0013】
したがって、本発明の第1の態様により、(i)近位に面する自由表面を備え軸方向に変位可能なピストンを有するカートリッジと、カートリッジが配置されるカートリッジホルダと、ピストンの近位に配置され、ねじ穴を備えるナット部分と、を備えるアセンブリを提供するステップと、(ii)少なくとも1つの外側駆動構造および遠位端を備えるねじ山付きピストンロッドを提供するステップと、(iii)少なくとも1つの内側駆動構造を備える駆動部材を提供するステップであって、外側駆動構造および内側駆動構造の数および円周方向の間隔により、ピストンロッドおよび駆動部材が軸方向に摺動しているが回転はロック係合されている少なくとも3つの異なる回転位置で、ピストンロッドを軸方向に受けることを可能にし、駆動部材がカートリッジホルダに対して少なくとも1つの所定の回転位置を有する、ステップと、(iv)ナット部分のねじ穴にピストンロッドを挿入し、ピストンロッドの遠位端がカートリッジピストンに直接的または間接的に係合するまでピストンロッドを回転させるステップと、(v)所定の回転位置に最も近い回転位置にあるピストンロッド上に駆動部材を取り付けるステップと、(vi)駆動部材を所定の回転位置まで回転させるステップ、とを含む、薬剤送達装置用のカートリッジ・ピストンロッドのサブアセンブリを組み立てる方法が提供されている。
【0014】
所定の回転位置に最も近い回転位置にあるピストンロッド上に駆動部材を取り付けると定義される場合、これはその後の回転運動の望ましいまたは許容される方向を組み込む。例えば、30度の間隔を有する回転位置にあるピストンロッド上に駆動部材を取り付けることができる場合、一方向に5度オフセットされた回転位置と反対方向に25度オフセットされた回転位置が、所定の回転位置に「最も近い」と見なされうる。これらの選択肢の関連性を以下に説明する。
【0015】
この配置により、ピストンロッドの遠位端とカートリッジピストンとの間の初期空隙を低減できる薬剤送達装置を提供することができる。実際に、より多くの駆動構造がピストンロッド表面上に円周方向に提供されるほど、駆動部材を取り付けることのできる回転可能な位置がより多く、これによって駆動部材を所定の回転位置まで回転させるのに必要な回転の量が最小化される。
【0016】
駆動構造は、ピストンロッドおよび駆動部材が軸方向に摺動するが回転はロック係合されている少なくとも3つの異なる回転位置で、ピストンロッドを軸方向に受けることを可能にするという、必要な仕様を満たすさまざまな構成で提供されてもよい。例えば、ピストンロッドは少なくとも3つの外側駆動構造を備えていてもよく、駆動部材は少なくとも1つの内側駆動構造を備えてもよい。別の方法として、ピストンロッドは少なくとも1つの外側駆動構造を備えていてもよく、駆動部材は少なくとも3つの内側駆動構造を備えてもよい。さらなる別の方法としては、ピストンロッドは少なくとも3つの外側駆動構造を備え、駆動部材も少なくとも3つの内側駆動構造を備える。
【0017】
ピストンロッドと駆動部材が互いに対して軸方向に摺動し、駆動構造が回転運動を伝達することを可能にするために、外側駆動構造、内側駆動構造、または外側駆動構造および内側駆動構造の両方が長軸方向の構成を有してもよい。
【0018】
駆動構造は、ピストンロッドの外部表面上に等距離で配置されてもよく、対向する対として偶数で提供されてもよい。
【0019】
本発明は、薬剤送達装置全体の組立ではなく、かかる組立プロセスの一部のみに関しており、残りの組立ステップは所与の薬剤送達装置の実際の設計によって決定されるため、これは本発明の範囲外であることに留意されたい。
【0020】
最終ステップでは、駆動部材を所定の回転位置に回転させたときに、ピストンロッドをさらに前進させるために駆動部材を回転させてもよく、これにより、空隙が完全に排除されたアセンブリを提供してもよい。示されるように、これはカートリッジの加圧をもたらし、これはある程度までは許容されうる。別の方法として、駆動部材を所定の回転位置に回転させたときに、ピストンロッドを格納するために駆動部材を反対方向に回転させてもよい。
【0021】
所与のアセンブリの所定の回転位置の数に応じて、各々の個別のアセンブリが、ピストンロッドを遠位に移動させそれによってカートリッジを加圧するか、または、ピストンロッドを近位に移動させそれによって空隙を形成するかどうかを、例えばビジョンシステムを用いて決定できることが望ましい場合がある。
【0022】
例示的な実施形態では、駆動部材は、駆動部材がカートリッジホルダに対して自由に回転可能な第1の軸方向位置と、駆動部材がカートリッジホルダに対して回転ロックされる第2の軸方向位置を有する。ロックは、回転を防止する「絶対的」なものでもよく、または、加えられた一定の量の回転力まで回転を防止する相対的なものでもよい。このようにして、その後の組立ステップの間、例えば、駆動部材と係合する追加の構成要素が取り付けられたときに、駆動部材がカートリッジホルダに対して回転できることをある程度まで防止することができる。
【0023】
例示的な実施形態では、回転ロックは、駆動部材とナット部分との間に配置される一方向ラチェットによって提供されており、ナット部分に対する駆動部材の第1の方向への回転を防止し、力の一定限度を超えた場合に反対方向に回転することを可能にする。ナット部分は、カートリッジホルダに回転できないように取り付けられたナット部材の形態であってもよい。
【0024】
本発明の第2の態様では、カートリッジと、ハウジングと、ピストンロッド、ナット部分および駆動部材を備える吐出配置と、を備える薬剤送達装置が提供される。カートリッジは、軸方向を画定する円筒形の本体部分、出口部分、および軸方向に変位可能なピストンを備える。吐出配置は、ピストンロッド、ナット部分、および駆動部材を備える。ピストンロッドは、遠位方向にカートリッジピストンに係合して軸方向に変位させるように適合され、それによってカートリッジから薬剤の用量を吐出し、ピストンロッドは外側ねじ山および少なくとも1つの外側駆動構造を備える。ピストンロッドは、例えば、ピストンワッシャーなしまたはありで、直接的または間接的にカートリッジピストンに係合して軸方向に変位させてもよい。ナット部分は回転できないようにハウジングに結合され、ねじ係合するピストンロッドを受けるねじ穴を備える。ピストンロッドが配置される駆動部材は、少なくとも1つの内側駆動構造を備え、外側駆動構造および内側駆動構造の数および円周方向の間隔は、ピストンロッドおよび駆動部材が軸方向に摺動するが回転はロック係合されている少なくとも3つの異なる回転位置に、ピストンロッドを取り付けることを可能にする。薬剤送達装置は、ユーザーが、ピストンロッドを回転させナット部分を通して軸方向に移動させる際に駆動部材を回転させることによって、カートリッジから薬剤の量を吐出することを可能にする駆動配置をさらに備える。
【0025】
この配置により、本発明の方法の態様を参照しながら上述したように、ピストンロッドの遠位端とカートリッジピストンとの間の初期空隙を低減できる薬剤送達装置が提供される。
【0026】
駆動構造は、ピストンロッドおよび駆動部材が軸方向に摺動するが回転はロック係合されている少なくとも3つの異なる回転位置で、ピストンロッドを軸方向に受けることを可能にするという、必要な仕様を満たすさまざまな構成で提供されてもよい。例えば、ピストンロッドは少なくとも3つの外側駆動構造を備えていてもよく、駆動部材は少なくとも1つの内側駆動構造を備えてもよい。別の方法として、ピストンロッドは少なくとも1つの外側駆動構造を備えていてもよく、駆動部材は少なくとも3つの内側駆動構造を備えてもよい。さらなる別の方法としては、ピストンロッドは少なくとも3つの外側駆動構造を備え、駆動部材も少なくとも3つの内側駆動構造を備える。
【0027】
ピストンロッドと駆動部材が互いに対して軸方向に摺動し、駆動構造が回転運動を伝達することを可能にするために、外側駆動構造、内側駆動構造、または外側駆動構造および内側駆動構造の両方が長軸方向の構成を有してもよい。
【0028】
駆動構造は、ピストンロッドの外部表面上に等距離で配置されてもよく、対向する対として偶数で提供されてもよい。
【0029】
本発明は、薬剤送達装置全体ではなく、かかる装置の一部のみに関しており、追加の構成要素は所与の薬剤送達装置の実際の設計によって決定されるため、これは本発明の範囲外であることに留意されたい。
【0030】
例示的な実施形態では、吐出配置は、初期位置から設定用量に対応する設定位置まで回転可能な用量設定部材と、設定用量に応じて駆動部材を回転するよう作動可能な作動部材とをさらに備える。作動部材は、用量設定中に初期位置から回転できる設定用量に対応する設定位置まで近位に移動するよう配置されてもよく、作動部材は設定位置から初期位置への軸方向の移動によって作動可能である。
【0031】
吐出配置は、用量設定中に設定用量に応じて変形される駆動ばねをさらに備えてもよく、駆動ばねは、作動部材が作動されたときに解放されて、設定用量に応じて駆動部材を回転させる。
【0032】
外側駆動構造および内側駆動構造は、対応するスプライン構造の形態であってもよい。別の方法として、外側駆動構造および内側駆動構造は、対応する主に平面の形態であってもよく、すなわち、駆動面は、例えば、製造上または機能上の理由から提供される追加の構造を組み込んでもよい。
【0033】
例示的な実施形態では、一方向ラチェットは駆動部材とナット部分との間に配置され、ナット部分に対する駆動部材の第1の方向への回転を防止し、力の一定限度を超えた場合に反対方向への回転を可能にする。
【0034】
本発明のさらなる態様では、近位に面する自由表面を備え軸方向に変位可能なピストンを有するカートリッジと、近位に面する自由表面を備え軸方向に変位可能なピストンを有するカートリッジと、カートリッジホルダに回転できないように結合され、ねじ係合でピストンロッドを受けるように適合されたねじ穴を備えるナット部分と、ピストンロッドとを備える、薬剤送達装置用のカートリッジ・ピストンロッドのサブアセンブリが提供される。ピストンロッドは、ねじ穴内で受けられ、遠位方向に直接的または間接的にカートリッジピストンに係合して軸方向に変位させるように適合され、それによってカートリッジから薬剤の用量を吐出し、ピストンロッドは外側ねじ山および少なくとも1つの外側駆動構造を備え、ピストンロッドが配置される駆動部材は、少なくとも1つの内側駆動構造を備え、外側駆動構造および内側駆動構造の数および円周方向の間隔が、ピストンロッドおよび駆動部材が軸方向に摺動するが回転はロック係合されている少なくとも3つの異なる回転位置に、ピストンロッドを取り付けることを可能にする。
【0035】
本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、制御された方法でカニューラまたは中空針などの送達手段を通過することができる任意の薬剤含有流動性医薬品、例えば、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液を包含することを意味する。代表的な薬剤としては、ペプチド(例えば、インスリン、インスリン含有薬剤、GLP-1含有薬剤、およびそれらの誘導体)、タンパク質、ならびにホルモンなどの医薬品、生物由来または活性物質、ホルモンおよび遺伝子に基づく物質、栄養処方、ならびに固体(分散)または液体形態の他の物質が挙げられる。例示的な実施形態の説明において、インスリン含有薬剤の使用に対する言及が行われる。それに応じて、「皮下」注入という用語は、対象への経皮送達の任意の方法を包含することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下において、本発明を、図面を参照しながらさらに説明する。
【0037】
図1図1は、薬剤送達装置の構成要素の分解図を示す。
図2図2は、図1の薬剤送達装置の組み立てた状態での断面図を示す。
図3図3Aおよび図3Bは、修正されたピストンロッド、およびそれに応じて修正されたラチェットチューブのアセンブリを示す。
図4図4A図4Cは、図3Aのアセンブリの構成要素を組み込んだ組立手順のステップを示す。
【0038】
図面において、同様の構造物は、主として同様の参照番号で識別される。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の用語で「上」および「下」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」、または同様の相対表現が使用されている場合、これらは単に添付図を参照するだけであり、必ずしも実際の使用状況を示すわけではない。図示された図は、概略表現であり、そのため、異なる構造の構成と相対的寸法が例示的な目的のみを果たすことを意図している。部材または要素という用語が所与の構成要素に対して使用される場合、一般的に、記載の実施形態において該構成要素が単一の構成要素であることを示すが、代替的に、記載の構成要素の2つ以上が単一の構成要素として提供されうるように、例えば、単一の射出成形部品として製造されうるように、同一の部材または要素が複数のサブ構成要素を備えてもよい。「アセンブリ」という用語は、所与の組立手順中に、記載された構成要素が、単一または機能的アセンブリを提供するために組み立てられうることを必ずしも暗示しているわけではなく、単に、機能的により密接に関連しているとして一緒に分類された構成要素を説明するために使用されている。
【0040】
本発明の本来の実施形態へ戻る前に、予め充填された薬剤送達装置の一例を説明する。そのような装置は、本発明の例示的な実施形態の基礎を提供する。記載された装置は、国際特許公開第99/38554号の図16および図17で開示された薬剤送達装置に対応し、概念的にはNovo Nordisk社(デンマーク)が販売・製造するFlexPen(登録商標)薬剤送達装置を表す。
【0041】
図1は、予め充填された薬剤送達装置の構成要素の分解図を示し、製造過程中にカートリッジサブアセンブリに組み立てられる遠位の構成要素群と、製造過程中に駆動サブアセンブリに組み立てられる近位の構成要素群を備え、2つのサブアセンブリは、最終製造ステップで最終製品を提供するために互いに取り付けられる(図示されていないキャップを除く)。
【0042】
カートリッジサブアセンブリは、薬剤充填済みのカートリッジ89を受けるように適合されたカートリッジホルダ2と、ねじ穴部分4およびラチェット突起の内周アレイを有するナット部材40と、ピストンワッシャー9と、ねじ山付きナット穴および対向する駆動平面の対と係合するように適合された外側ねじ山7を備えるピストンロッド6と、ラチェット駆動チューブ85とを備える。ラチェット駆動チューブ85は、ピストンロッドの駆動面と摺動するが回転はしないように係合するよう配置するように適合された、対向する駆動平面の内側の対を有する穴と、ナット部材のラチェットアレイと係合するように適合された、遠位に配置された対向するラチェットアーム13の対と、コネクタチューブ82と係合するように適合された、近位に配置された対向するフック部分86の対とを備える(以下を参照)。カートリッジホルダは、ユーザーがカートリッジを点検することを可能にする、対向する検査窓の対を備える。
【0043】
駆動サブアセンブリは、窓18および遠位の円周方向の内側フランジ部分46を備えた管状ハウジング1と、内側区画と内側ハウジング表面上の螺旋状リブと係合するように適合された外側螺旋状溝を有する近位の用量設定把持部分81(すなわち「用量設定ボタン」)を有するスケールドラム80と、ラチェットチューブのフック部分86に軸方向に係合し、それによってコネクタチューブ82とラチェット駆動チューブ85を互いに結合させて、長軸方向の変位ではなく回転が前記2つの構成要素の間で伝達されるように適合された対向するスロット84の対および近位のクラッチ部分83を備えるコネクタチューブ82と、コネクタチューブの近位端に回転可能に取り付けられるように適合された旋回ピン94を有する吐出プッシュボタン部材90と、を備える。設定用量を示す数値は、スケールドラム80の外壁に印刷され、設定用量に対応する数値はハウジング1の側壁に提供される窓18に示される。
【0044】
用量設定把持部分81には、長軸方向の窪みが円周上に提供された円筒形の側壁と、三角形の断面を有する歯付き菊座を有する底部と、を有する区画が提供される。コネクタチューブ82のクラッチ部分83は、前記区画内に位置付けることができ、その周辺に、区画の側壁に向かって付勢される半径方向の突起87を有する可撓性のクリッカーアームを有する。クラッチ部分83は遠位に歯付き菊座93を有し、これは区画の底部で菊座と係合することができる。FlexPen(登録商標)で使用される代替的な実施形態(図示せず)では、コネクタチューブの近位のクリッカー部分および残りの部分は、2つの構成要素として形成されうる(下記参照)。
【0045】
コネクタチューブ82は、スケールドラム内でのコネクタチューブの限定された移動が許容されて、コネクタチューブがスケールドラムに対して軸方向に移動して前記菊座の歯が互いに係合できるように、または係合できないように、コネクタチューブ82の外壁上にある突起がスケールドラム80の内壁の窪みと係合した状態で、スケールドラム80に取り付けることができる。
【0046】
好ましい実施形態では、駆動サブアセンブリは、カートリッジの中に残っている薬剤の量よりも大きな用量を設定できることを防止するEoC部材(図示せず)を備える(EoC機能部の機能を詳細に記述した国際特許公開第01/19434号を参照のこと)。要約すると、環状EoC部材は、コネクタチューブ(図示せず)上の外側EoCねじ山とねじ係合して取り付けられるように適合された内側ねじ山と、スケールドラムの内部表面上の対応するスプライン構造と係合するように適合された外側スプラインとを備える。このようにして、コネクタチューブとスケールドラムとの間の相対的回転は、結果としてEoC部材をコネクタチューブ上で軸方向に、すなわち最初の最も遠位の位置から、コネクタチューブ上の近位の停止構造と係合する内容量終了の最終位置まで移動させる。
【0047】
用量設定ボタン81を時計回り方向に回転させて用量を設定すると、スケールドラムはハウジングから緩み、用量設定ボタンがハウジングの近位端から離れて持ち上げられる。コネクタチューブ82は、時計回りの回転に対してロックされたラチェット駆動チューブ85への結合によって回転しない状態に保たれ、また、用量設定ボタン81を反時計回り方向に回転させることによって設定用量を減少させた場合、ラチェット駆動チューブ85とナット部材40の間で作用するラチェット機構13は、コネクタチューブ82がこの反時計回り方向の回転に従うのを防止するほど十分に、遮断しない方向に回転させるのに消極的である。したがって、用量設定ボタン81の任意の方向への回転によって、コネクタチューブ82のクラッチ部分83上にある半径方向の突起87は、用量設定ボタン81の内壁にある軸方向の窪みの1つから次の窪みへと音を立てて噛み合う(クリック)ことになり、窪みは、1つのクリックが設定用量の所与の増分変化、例えば一単位または半単位に対応するように間隙を介している。用量設定中、用量設定ボタンの菊座は、コネクタチューブ82のクラッチ部分83上にある菊座93を脱係合させる。
【0048】
吐出ボタン90が押し下げられて設定用量が吐出されると、スケールドラム80がハウジング1の中へと戻る際に、ハウジング内のスケールドラム80の螺旋状トラックとリブ16(図2参照)との間のねじ係合によって誘発されて、コネクタチューブ82が用量設定ボタン81の反時計回り方向の回転に従うように前記菊座同士が係合する。コネクタチューブ82は、ラチェット駆動チューブ85を反時計回り方向に回転させて、ラチェット機構13、40の抵抗を克服し、それによって、ピストンロッド7がカートリッジホルダ2内のカートリッジ89内へとさらに回転される。同時に、ラチェットは一連の吐出クリックを生む。
【0049】
上述のように、FlexPen(登録商標)で使用される別の実施形態では、近位のクリッカー部分は別個の部材として形成される。より具体的には、別個のクリッカー部材は、用量設定ボタン81の内周壁上のラチェット歯のアレイに一方向に係合する対向するラチェット用量設定クリッカーアームの近位のセットと、コネクタチューブのクラッチ部分83の内壁上のラチェット歯のアレイに一方向に係合する対向するラチェット用量設定クリッカーアームの遠位の対を備える。用量を設定するときには、クリッカーアームの近位のセットが用量クリックを生み、設定用量を減少させるときには、遠位のラチェットアームが用量クリックを生む。
【0050】
カートリッジサブアセンブリを組み立てるときには、カートリッジホルダに取り付ける前にピストンロッドとラチェットチューブをナット部材に取り付けてもよく、これは、カートリッジホルダに対して所定の回転位置にラチェット部材を取り付けることを可能にする。より具体的には、ピストンロッド6は、ピストンロッドがカートリッジピストンの予想される最も近位の位置に応じて軸方向に位置付けられナット部材40に対して所定の回転位置に進むまで、ナット穴を通してねじ込まれる。次に、ラチェットチューブ85は、ラチェットアームがナット部材のラチェットアレイに係合するまで、ピストンロッドの上を摺動する。また、ピストンロッドとラチェットチューブとの間の協働駆動面により、後者は所定の回転位置に配置される。最後に、カートリッジ89がカートリッジホルダ2の中へと挿入され、ピストンワッシャー9がカートリッジピストンの上部に配置され、取り付けられたピストンロッドとラチェットチューブを有するナット部材40がカートリッジホルダとスナップ係合する。ピストンロッドはカートリッジピストンの予想される最も近位の位置に応じて軸方向に位置付けられるため、これは大半の場合、ピストンロッドとピストンワッシャーとの間に空隙をもたらす。
【0051】
別の方法として、カートリッジ89は、最初にカートリッジホルダ2に挿入され、ピストンワッシャー9がカートリッジピストンの上部に配置され、ナット部材40がカートリッジホルダとスナップ係合する。次に、ピストンロッド6は、ピストンワッシャーと係合するまで、ナット穴を通してねじ込まれる。最終ステップとして、ラチェットチューブ85は、適合されたラチェットアームがナット部材のラチェットアレイと係合するまで、ピストンロッドの上を摺動する。製作公差によりカートリッジピストンの軸方向位置は変化するため、ピストンロッドの回転位置と、それによって、カートリッジホルダに対するラチェットチューブの回転位置もまた、組み立てられたカートリッジサブアセンブリによって変化する。しかし、以下に記載するように、2つのサブアセンブリを組みつける際に、ラチェットチューブを180度オフセットされた2つの所定の回転位置のうちの1つに配置する必要がある。それに応じて、ラチェットアームをナット部材のラチェットアレイに位置付ける前に、ラチェットチューブを所定の回転位置の2つのうちの1つまで回転させる必要があり、これによってピストンロッドとピストンワッシャーとの間に空隙が導入される。
【0052】
駆動サブアセンブリを組み立てるときには、最初にスケールドラム80がハウジング1に挿入され、ハウジングの窓18内に「0」と配置される最も遠位の位置まで回転される。次に、EoC部材がスケールドラムの中に軸方向に挿入され、その最初の最も遠位の位置に応じて位置付けられ、その後に、コネクタチューブが挿入され、カートリッジホルダ、ひいてはハウジングに対してスケールドラムの所定の回転位置に配置され、外側EoCねじ山はEoC部材とのみ係合する。このようにして、ラチェットチューブのフック部分86に軸方向に係合するように適合されたコネクタチューブ上の対向するスロット84の対は、ハウジングに対して所定の回転位置に配置される。クラッチ部分83が別個の部材である場合は、この段階でまたはそれ以降に取り付けられてもよい。
【0053】
2つのサブアセンブリの間にスナップ結合が提供され、これが、駆動サブアセンブリを180度オフセットされた2つの所定の回転位置の1つにおいてカードリッジサブアセンブリ上に取り付けることを可能にし、ハウジングの窓18は2つのカートリッジ検査窓のうちの1つと回転整列する。この組立ステップ中、ラチェットチューブの対向するフック部86は、コネクタチューブの対向するスロット84にスナップ係合する必要がある。実際、これを可能にするには、上述のように、ラチェットチューブとコネクタチューブが相互に対して180度オフセットされた2つの所定の回転位置のうちの1つに配置される必要がある。組み立てた状態で、ラチェットアーム13(ひいてはラチェットチューブ85)は、ナット部材の穴部分4とハウジングの内側フランジ46との間に配置され、これにより、ラチェットチューブ85の軸方向の移動は防止されるが回転は可能になる。キャップを取り付ける前の最終ステップとして、別個のクラッチ部材(提供される場合)が取り付けられ、用量ボタン88が所定の位置にはめ込まれる。
【0054】
図2は、図1の薬剤送達装置の組み立てた状態での断面図を示す。
【0055】
図3Aおよび図3Bを参照すると、本発明の例示的な実施形態が説明される。上記で詳細に説明する通り、ラチェットチューブを回転させて所定の回転組立位置の1つに配置するとき、結果として得られるピストンロッドの軸方向の位置は、大半の場合、ピストンワッシャーとピストンロッドの遠位端との間に空隙を生むという結果をもたらす。
【0056】
本発明によると、ピストンロッドは、外側ねじ山および少なくとも1つの外側駆動構造を備え、ピストンロッドが配置される駆動部材は少なくとも1つの内側駆動構造を備える。外側駆動構造および内側駆動構造の数および円周方向の間隔により、ピストンロッドおよび駆動部材が軸方向に摺動するが回転してロック係合される少なくとも3つの異なる回転位置に、ピストンロッドを取り付けることが可能な限り、駆動構造をさまざまな構成で提供することができる。
【0057】
示されるように、単純な構成では、ピストンロッドまたは駆動部材は単一の駆動構造を備え、その他の部品は3つの駆動構造を備え、ここで構成要素の少なくとも1つの駆動構造は、他方の構成要素上の「定時の」構造と協働するように適合された長軸方向の構成を有する。
【0058】
図3Aは、特定の実施形態において、修正されたピストンロッド100と、軸方向には自由だがマルチスプラインのインターフェースを介して回転は互いにロック係合された、対応して修正されたラチェットチューブ110のアセンブリを示す。ピストンロッドは、ナット部材の対応するねじ穴と係合するように適合されたねじ山付き外部表面102と、ピストンワッシャーの近位表面と係合するように適合された尖った遠位端103と、を備える。示された実施形態では、ラチェットチューブには、2つの対向する隆起の対として配置された、軸方向に延在する4つのスプライン隆起111が提供され、隆起は、ピストンロッド100のねじ山付き表面102に等距離に形成された12の対応するスプライン溝101のうち4つに係合するように適合され、これにより、ピストンロッド上で上述のように、2つの回転位置の代わりに12の異なる回転位置にラチェットチューブを取り付けることが可能となる。2つの代わりに12の潜在的な回転位置を有することで、ラチェットチューブを、ピストンワッシャーと回転係合したピストンロッド上の、平均すると2つの所定の取付位置のうちの1つにより近い回転位置に取り付けることが可能となる。示されるように、ラチェットチューブをその所定の回転位置のうちの1つにより近く取り付けると、わずかな回転調整のみが必要となり、結果として、平均するとピストンロッドが軸方向に格納されるのはより小さくなり、それゆえに空隙がより小さくなる。通常は、ピストンロッドを遠位に移動させそれによってカートリッジを加圧する代わりに、ピストンロッドを格納して空隙を形成することがより望ましいが、少量の回転調整のみが必要であり、そのことが空隙の完全な排除をもたらす場合には、これを行うことが許容できる。したがって、所与のアセンブリの所定の回転位置の数に応じて、各個別のアセンブリが、ピストンロッドを遠位に移動させそれによってカートリッジを加圧するか、または、ピストンロッドを近位に移動させそれによって空隙を形成するかどうかを、例えば組立中に視覚システムを用いて決定できることが望ましい場合がある。
【0059】
示される実施形態では、スプライン溝の数は四であり、スプライン溝の数は12であるが、スプライン溝の数はこの例示的な実施形態と異なってもよい。さらに、ラチェットチューブ110には、図1の実施形態と比較して逆の配置である、対応するコネクタチューブ(図示せず)上のフック部分の対と協働するように適合された対向するスロット116の対、および遠位端において対向するラチェットアーム113の対が提供される。
【0060】
別の実施形態では、ラチェットチューブとピストンロッドの間で回転係合を伝達する力は、図1を参照して説明した実施形態で使用されるように、スプラインの代わりに実質的に平面に基づいてもよい。図1の実施形態は一対の対向する駆動面を使用しているが、より多くの数の駆動面をピストンロッド上に提供してもよい。スプラインを備える上述の実施形態については、ラチェットチューブ内部表面上の駆動面の数は、ピストンロッド上の駆動面の数より小さくてもよい。
【0061】
スプラインまたは駆動面の最適な数と構成は、複数のパラメータ、例えば、ピストンロッドのねじ山の特徴、構成要素の直径、伝達するべき望ましい力量、および構成要素の所与の製造方法によって達成可能な公差に依存する。
【0062】
図4A図4Cを参照すると、図3Aのアセンブリの構成要素を組み込んだカートリッジ・ピストンロッドのサブアセンブリ150の組立手順のステップが説明される。
【0063】
図4Aは、垂直位置に配置され、薬剤充填済みのカートリッジ130が挿入されたカートリッジホルダ120を示す。ピストンワッシャー139は、カートリッジピストンの上部に配置されている。カートリッジホルダは、近位に延在するフランジ121の対向する対を備え、図4Bに見られるように、その各々に、スナップ係合でナット部材140の対応するフック部分142を受けるように適合されたスロット122が提供される。ナット部材140がカートリッジホルダの中に取り付けられると、ピストンロッド100がナット部材のねじ穴144の中へと挿入され、ピストンロッドの遠位端がピストンワッシャーと係合するまで遠位に回転する。ねじ山表面の特定の設計と構成要素の材料に応じて、ピストンロッドは、例えば、重力または応力によって、遠位に移動されうる。ピストンロッド100がピストンワッシャー139と接触係合して完全に位置付けられると、ラチェットチューブ110が、スプライン係合されるピストンロッド100上に取り付けられる。示された実施形態では、ラチェットチューブ110は、ピストンロッド100上の12の異なる回転位置に取り付けることができるが、ラチェットチューブは180度回転オフセットされた2つの所定の回転取付位置を有するため、これは、ラチェットチューブ110の30度の間隔を置いた6つの潜在的な回転取付位置を提供する。
【0064】
所与のカートリッジ内のピストンの実際の軸方向の位置はさまざまであるため、個別のカートリッジアセンブリについても、係合したピストンロッドの回転位置はこれに対応してさまざまである。したがって、ピストンロッド100上にラチェットチューブ110を取り付けるとき、ラチェットチューブは、ラチェットチューブのスプラインがピストンロッドのスプラインと係合することを可能にするために、所定の回転取付位置から所定の数の角度分だけ離れるように回転させる必要がある。上述のように、通常は、ピストンロッドを遠位に移動させそれによってカートリッジを加圧する代わりに、ピストンロッドを格納して空隙を形成することがより望ましい場合があるが、少量の回転調整が必要であり、そのことが空隙の完全な排除をもたらす場合には、これを行うことが許容できる。したがって、ラチェットチューブ110を所定の回転位置に直接取り付けることを可能にする、12の回転位置のうちの1つからどの程度離してピストンロッドを回転させて位置付けるかによって、ラチェットチューブを2つの別の回転位置のうちの1つに取り付けてもよく、第1の位置は、ピストンロッドを近位に移動させそれによって空隙を形成するために第1の方向にラチェットチューブを回転させることを必要とし、第2の位置は、ピストンロッドを遠位に移動させそれによってカートリッジを加圧するために対向する第2の方向にラチェットチューブを回転させることを必要とする。部分的に取り付けられたラチェットチューブが所定の回転位置まで回転すると、ラチェットアーム113はナット部材のラチェットアレイ143とも整列し、これによって、図4Cに示すように、完全に取り付けられた近位の位置へとラチェットチューブを移動することが可能になる。
【0065】
本発明の一部ではないが、図4Bは、ハウジングの窓が2つの対向するカートリッジ検査窓エリア124のうちの1つと回転整列した、180度オフセットされた2つの所定の回転位置のうちの1つで、駆動サブアセンブリをカートリッジサブアセンブリに取り付けることを可能にする、円周方向のスナップ環123および2つの対向する回転位置決め溝141のうちの1つを示す。
【0066】
好適な実施形態の上記の説明では、本発明の概念が当業者にとって明らかである程度に、異なる構成要素について記載された機能を提供する異なる構造および手段を説明してきた。異なる構成要素の詳細な構造および仕様は、本明細書に記載されるラインに沿って当業者によって実施される通常の設計手順の対象とみなされる。
図1
図2
図3
図4