(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】口腔内走査装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/24 20060101AFI20230322BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
A61B1/24
A61C19/04 Z
(21)【出願番号】P 2020530438
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 US2018046144
(87)【国際公開番号】W WO2019032923
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-06
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509316349
【氏名又は名称】ディーフォーディー テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】リ、イー
(72)【発明者】
【氏名】クゥアドリング、マーク、エス.
(72)【発明者】
【氏名】クゥアドリング、ヘンリー、エス.
(72)【発明者】
【氏名】ダンカン、ロッド、エー.
(72)【発明者】
【氏名】バジル、グレゴリー、アール.
(72)【発明者】
【氏名】グラハム、ジャスティン、ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ケンワージー、グラント、イー.
(72)【発明者】
【氏名】チョウプラコフ、アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】トイメラ、ラッス、エイチ.
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-093511(JP,A)
【文献】特開2010-096843(JP,A)
【文献】米国特許第05552922(US,A)
【文献】特開2012-141574(JP,A)
【文献】特表2007-517261(JP,A)
【文献】特開2017-113389(JP,A)
【文献】特表2016-522883(JP,A)
【文献】特開2015-223463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
A61C 1/00 - 5/00
A61C 5/40 - 5/68
A61C 5/90 - 7/36
A61C 19/00 -19/10
A61C 15/14 -15/18
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内走査装置であって、
本体部と、
前記本体部に
着脱自在に装着された先端部と、
照明エンジンモジュールと、
光変調器
と内部全反射(TIR)プリズムとを有する投影モジュール
と
を有し、
前記内部全反射(TIR)プリズムは、第1および第2のプリズム素子とを有
し、
前記第1のプリズム素子は内部全反射(TIR)面を有する
三角形状のプリズムであり、前記第2のプリズム素子は前記内部全反射(TIR)面に隣接して配置されたウェッジ形状のプリズムであり
、
前記照明エンジンモジュールによって生成された光
は、前記第1のプリズム素子に入射して前記光変調器に向かって反射され、さらに、前記光変調器から前記第1のプリズム素子に向かって反射されるものであ
り、
前記光変調器
から反射され、第1の角度範囲で出射する光は前記第1および第2のプリズム素子を透過して、
前記内部全反射(TIR)プリズムから出射するものであり、
前記光変調器
から反射され、第2の角度範囲で出射する光は前記第1のプリズム素子により反射され、前記第2のプリズム素子を透過しないものである、
口腔内走査装置。
【請求項2】
請求項1記載の口腔内走査装置において、前記照明エンジンモジュールは、赤色(R)レーザーダイオードと、緑色(G)レーザーダイオードと、青色(B)レーザーダイオードとを有するものである、口腔内走査装置。
【請求項3】
請求項1記載の口腔内走査装置において、前記第1のプリズム素子は直角三角形のプリズムであり、前記内部全反射(TIR)面は、45°の角度を成す面である、口腔内走査装置。
【請求項4】
請求項3記載の口腔内走査装置において、
前記照明エンジンモジュールおよび前記投影モジュールはレーザー投影サブシステム
の一部であり、
前記レーザー投影サブシステムは、さらに、前記第1および第2のプリズム素子を透過して、前記内部全反射(TIR)プリズムから出射する光を受け取る1若しくはそれ以上の投影レンズを支持するハウジングを有するものである、口腔内走査装置。
【請求項5】
請求項4記載の口腔内走査装置において、前記ハウジングの1表面は長孔部を含み、当該長孔部は、当該走査装置から伝搬される光のパターンにおける一組の光線の方向に沿って長細い形状になっているものである、口腔内走査装置。
【請求項6】
請求項1記載の口腔内走査装置において、さらに、
前記照明エンジンモジュールの下流にスペックル除去モジュールを
有するものである、口腔内走査装置。
【請求項7】
請求項6記載の口腔内走査装置において、前記スペックル除去モジュールは、回転ディフューザディスクを有するものである、口腔内走査装置。
【請求項8】
請求項6記載の口腔内走査装置において、前記スペックル除去モジュールは、前記照明エンジンモジュールによって生成されたレーザーパターンを均一化する光ホモジナイザーとして構成されたマイクロレンズアレイを
有するものである、口腔内走査装置。
【請求項9】
請求項1記載の口腔内走査装置において、前記先端部はシームレスである、口腔内走査装置。
【請求項10】
請求項2記載の口腔内走査装置において、さらに、
前記照明エンジンモジュール内のレーザーダイオードの色較正を提供する電子モジュールを
有するものである、口腔内走査装置。
【請求項11】
請求項10記載の口腔内走査装置において、色較正により、グレースケールとなっている対象からの画像をキャプチャし、その画像についての目標RGB値を目標平均RGB値に設定し、前記レーザーダイオードの発光器駆動値を設定可能な範囲内で選択し、平均RGB値を収集した後、前記平均RGB値と前記目標平均RGB値との間の差分が最小となるまで前記発光器駆動値を調整するものである、口腔内走査装置。
【請求項12】
請求項1記載の口腔内走査装置において、前記走査装置の本体部は、並列配置されたレーザー投影サブシステムおよび光学撮像サブシステムを支持するものであり、それにより、当該走査装置のフォームファクター(form factor)が低減されるものであ
り、
前記照明エンジンモジュールおよび前記投影モジュールは前記レーザー投影サブシステムの一部である、口腔内走査装置。
【請求項13】
請求項1記載の口腔内走査装置において、
前記照明エンジンモジュールおよび前記投影モジュールはレーザー投影サブシステムの一部であり、
前記レーザー投影サブシステムは、さらに、テレセントリックレンズを
有するものである、口腔内走査装置。
【請求項14】
請求項2記載の口腔内走査装置において、さらに、
前記レーザーダイオードに隣接して配置された、フルスペクトルミラーと、赤色透過・緑色反射ダイクロイックフィルターと、青色反射・赤色および緑色透過ダイクロイックフィルターとを
有するものである、口腔内走査装置。
【請求項15】
請求項1記載の口腔内走査装置において、前記先端部は、前記先端部内に支持され、加熱されたミラーに電力を供給する電気的接続構造を含むものである、口腔内走査装置。
【請求項16】
請求項12記載の口腔内走査装置
において、
前記照明エンジンモジュールは、線パターンを有する投影画像を生成
するものであり、
前記レーザー投影サブシステムは、さらに、
前記照明エンジンモジュールから前記投影画像を受け取るスペックル除去モジュールであって、前記
線パターンを構成する線を均一化するマイクロレンズアレイを
有するものである、前記スペックル除去モジュールと、
前記内部全反射(TIR)プリズムを透過する前記
線パターンを受け取るレンズ鏡筒モジュールであって、前記投影画像を構成する
前記線パターンの被写界深度を向上させるための長孔部を含むものである、前記レンズ鏡筒モジュールと
、
を有
し、
前記投影モジュールは、前記スペックル除去モジュールから前記線パターンを受け取るものである、
口腔内走査装置。
【請求項17】
請求項16記載の口腔内走査装置において、前記照明エンジンモジュールは、赤色(R)レーザーダイオードと、緑色(G)レーザーダイオードと、青色(B)レーザーダイオードとを有するものである、口腔内走査装置。
【請求項18】
請求項17記載の口腔内走査装置において、前記レーザーダイオードは色較正されるものである、口腔内走査装置。
【請求項19】
請求項17記載の口腔内走査装置において、この走査装置は、さらに、
走査される材料または走査される表面の幾何学的構造の関数として、前記赤色、緑色、および青色ダイオードを個別に、または組み合わせて選択的に作動させる機構を含むものである、口腔内走査装置。
【請求項20】
請求項12記載の口腔内走査装置
において、
前記走査装置本体部は
前記先端部に対する電気的インターフェースを有し、この電気的インターフェースにより
前記先端部に対して電力および電気的接続が提供されるものであ
る、口腔内走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者が歯科患者の口腔内を走査できるように口腔内走査装置を提供することは周知である。このような装置は、単体の走査装置として、またはコンピュータ支援設計(CAD)システムおよびコンピュータ支援製造(CAM)システムの一部として使用されている。通常、CAD/CAMシステムでは、ラップトップまたはデスクトップコンピュータ上で実行される歯科用CADソフトウェアが使用され、選択的に、このソフトウェアは機械制御されるCAMソフトウェアによって駆動される特殊なフライス機械のハードウェアとともに用いられる。歯科医はまず最初に、インレー、アンレー、被覆冠、クラウン、またはブリッジを含む(これらに限定されるものではない)歯科用修復物を受容できるように、(標準的な歯科技法を使って)患者の疾患のある歯の解剖学的構造を調整する。この調整が完了した後、歯科医は本明細書で説明および図示する走査装置を使って患者の歯の解剖学的構造の光学印象(digital impression)をキャプチャする。この光学印象のキャプチャが完了すると、自動CADソフトウェアにより歯科医に修復物の「初期提案」が提示される。この初期提案によって自動的に適切な歯の解剖学的構造が選択され、調整された歯上、および患者の既存の「健康」な解剖学的構造に適合するように修復物がサイズ設定されることが好ましい。次に、この初期提案は通常、設計を調整および変更する特殊なソフトウェアツールを使って、歯科専門家より最終的に患者の解剖学的構造に適合する最適な設計が得られるようにカスタム化される。歯の最終的な3Dモデルが完成した後、このモデルは電子的にフライス機械(または第三者)に送られ、その設計に基づいて実際の修復物が生成される。
【0003】
既存の走査装置によっても良好な結果が得られるが、装置の走査速度および精度を改良する必要があり、また、装置のサイズおよび重量を低減して利用者が使用中に容易に利用できるようにする必要がある。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許第9,539,070号明細書
(特許文献2) 韓国公開特許第10-2011-0127950号公報
(特許文献3) 米国特許出願公開第2013/0130191号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2002/0045811号明細書
(特許文献5) 欧州特許出願公開第0345368号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
より効果的および正確に歯科患者の口腔内を走査するため、口腔内走査装置が提供される。通常、この走査装置は、歯科用修復物のコンピュータ支援設計(CAD)およびコンピュータ支援製造(CAM)のための光学印象システムの構成要素を有する。動作時において、前記走査装置は、デジタル方法によって生成された、歯、歯科用印象物、または石材モデルの位相幾何学的特徴を記録するために使用されるとともに、歯科用修復物の人工補装具のCAD/CAMにおいて使用される。本開示によれば、前記走査装置における多様な動作構成要素は、機械的および電気的なパッケージングおよびアセンブリを簡略化するように構成および配置されており、それにより、従来の口腔内走査装置と比べ、前記走査装置は大幅に小型化し、利便性が高まる。
【0005】
以下、本走査装置に関連性の高い特徴を概略的に説明するが、これらの特徴は単に例示的なものであると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示事項およびその利点についてのより詳細な理解のために、以下に説明する添付の図面を参照してその内容を以下に説明する。
【
図1】
図1は、本開示に基づいた1実施形態におけるハンドヘルド走査装置の斜視図を示す。
【
図2】
図2は、前記走査装置の照明エンジンモジュールの斜視図を示す。
【
図2A】
図2Aは、照明エンジンモジュールの断面(内部)図を示す。
【
図3】
図3は、スペックル除去モジュール(despeckler module)の斜視図を示す。
【
図3A】
図3Aは、スペックル除去モジュールの内部図を示す。
【
図4】
図4は、前記走査装置の投影モジュールの斜視図を示す。
【
図5】
図5は、前記走査装置のレンズ鏡筒モジュールの斜視図を示す。
【
図6】
図6は、照明エンジンモジュール内の内部全反射(TIR)プリズムの好適な構成を示す。
【
図7A】
図7Aは、照明エンジンモジュールを通る光のビーム経路を示し、この光は垂直より大きい角度に向けられるため、残りの光学系に投影される。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aは、照明エンジンモジュールを通る光のビーム経路を示し、この光は垂直より小さい角度に向けられるため、投影されない。
【
図9】
図9は、走査装置の好適な実施形態において構成部品を説明する図である。
【
図10】
図10は、走査装置の先端部を走査装置の本体部に装着するためのツイストロック機構である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上記で説明したように、本開示の走査装置は、歯科用修復物のための調整後に患者の口腔内に配置して患者の歯の画像(通常3D画像)を生成するハンドヘルド走査装置である。以下、この走査装置の1実施形態について説明する。
【0008】
図1は、特に、1実施形態におけるハンドヘルド走査装置の斜視図を示す。本実施形態において、走査装置は、走査装置本体部1と、着脱自在な走査装置先端部2と、着脱自在なデータ用ケーブル3とを有することが好ましい。
【0009】
ここで
図2を参照すると、
図1の走査装置における照明エンジンモジュールの斜視図が図示されており、また
図2Aは、照明エンジンモジュールの内部(断面)図を示す。照明エンジンモジュールは、赤色レーザーダイオード9と、緑色レーザーダイオード10と、青色レーザーダイオード11とを有することが好ましい。フルスペクトルミラー4、赤色透過・緑色反射ダイクロイックフィルター5、および青色反射・赤色および緑色透過ダイクロイックフィルター6がそれぞれ前記ダイオードに近接して配置されている。要素7は照明エンジンモジュールのレーザーハウジングおよびヒートシンクであり、要素8は前記レーザーダイオードが取付られるレーザー用フレキシブル回路基板である。
【0010】
図3はスペックル除去モジュール(despeckler module)を示し、
図3Aは、スペックル除去モジュールの内部図を提供する。スペックル除去モジュールは、マイクロレンズアレイ(MLA)12と、スペックル除去駆動モータ13と、スペックル除去ハウジング14と、(スペックル除去要素として機能する)ディフューザディスク15と、色消しレンズ16(「複レンズ」または「コリメートレンズ」)とを有する。ディフューザディスク15は、レーザーの前方で回転する。代替実施形態において、ディフューザは、他の手段により、縦軸、横軸、回転軸、または任意の軸に沿って移動する。
【0011】
図4は投影モジュールの斜視図を示し、
図4Aは、光路を示した内部図を図示する。図示するように、投影モジュールは、TIRハウジング17と、レーザー光空間変調チップ18(Texas Instruments DLP(登録商標))と、内部全反射(TIR:Total Internal Reflection)プリズム19と、テレセントリックレンズ20とを有する。図示するように、変調チップ面に対して垂直な方向からモジュールに入射する光は、内部全反射(TIR)プリズム19によって光軸からオフセットされた方向に移動する。以下に詳細に説明するように、この構成によって光学系全体のサイズを実質的に減少させることが可能となり、その結果、走査装置全体のサイズを減少させることができる。
【0012】
図5はレンズ鏡筒モジュールの斜視図を示し、
図5Aは、鏡筒モジュールの内部図を示す。斜視図において最も明確なように、レンズ鏡筒モジュールは、(時に「キャットアイ」と呼ばれる)長孔部22を含む変倍レンズハウジング21(レンズ鏡胴)を含む。図示するように、変倍レンズ23が実質的に支持されている。この長孔部22により、投影画像を構成するレーザー線の被写界深度が著しく改善される。実際の効果として、この長孔部を用いることによって、光学系において垂直方向における解像度が犠牲となるが、その一方、水平方向において解像度が著しく向上する。本発明の概念は、画像処理において重要な方向により高い光学倍率を提供することにある。
【0013】
以下、
図4に示す内部全反射(TIR)プリズムのさらなる詳細とその動作原理について説明する。
図6に示すように、TIRプリズムは、24、25と付記した2つのガラスから構成されることが好ましく、これらのガラスは、その間に僅かな空隙を残す態様で接着するのが好ましい。TIRプリズムは、当該プリズムに対して特定の角度範囲で入射する光を透過し、異なる角度で入射する光を反射するように構成されている。この動作は、
図6において3つの特定された透過面およびTIR面30について観察される。上記で説明したように、TIRプリズムは、特定の入射角の光を透過し、異なる入射角の光を反射するために用いられる。光は、TIRプリズムの第1の透過面26に対して垂直に入射し、大部分はTIR面30によって反射される。この光は、第2の透過面27から外側に透過してDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)面28上に入射し、次に光は、DMDマイクロミラーの配置位置に応じて、DMD面28により垂直より大きい角度または垂直より小さい角度に方向付けられる。次にこの光は、再度第2の透過面27を透過する。DMD面28から垂直より大きい所定の角度で出射する光はTIR面30を透過し、第3の透過面29を透過してプリズムから出射する。この動作は
図7Aに図示されている。第3の透過面29は、出射光が残りの投影路に対して垂直に透過されるような角度を成している。垂直より小さい角度で反射された光はTIR面30によって反射され、光学系を透過して投影されることはない。この動作は
図7B図示されている。
【0014】
TIRプリズムは、図示したように、2つのプリズムから構成され、その間に数ミクロンの空隙を有するように構成することが好ましい。第1のプリズム24は、90°の1つの角と、等角(45°)の2つの角とを有する三角形(または直角三角形)のプリズムであり、面30において内部全反射が確実となるように選択された材料によって形成されている。第2のプリズム25も同様に三角形のプリズムであり、このプリズムは、出射レーザービームが光軸と平行になるようにウェッジ角度および材料が設計されたウェッジプリズムの形態に形成されている。第2のプリズムは、90°の角度以外に約21°および69°の角度を有する。上記で説明したように、2つのプリズムは面30に沿ってその間に僅かな空隙を残す態様で接着するのが好ましい。前記プリズムは、光学的に十分透明な孔部ができるようにサイズ設定し、レーザービームのパターン寸法を確実にカバーすることが好ましい。上記で説明したように、レーザービームは第1のプリズム24に対して垂直の角度で入射し、45°を成すTIR面30によって内部(全)反射されて、次に光変調器に衝突する。この光変調器が作動し、個々のミラーが12°角度が増す方向に回転すると、レーザービームはプリズム24に戻る方向に反射され、プリズム24を透過して45°を成すTIR面30に到達する。上述したDMDの角度により、プリズム24の面30における内部反射は存在しないため、レーザービームはプリズム24を透過して第2のプリズム25に到達し、次に第3の透過(背)面により屈折されて光軸と平行となり、残りの光路を透過する。上記で説明したように、この動作は
図7Aに図示されている。0°である待機位置にある場合、または-12°の角度を成すオフ位置にある場合、レーザービームは、内部全反射によって第1のプリズムの45°を成す面30を透過しない。
【0015】
TIRの配置構成を上記で説明したような態様とすることにより、DMDチップとCCD(またはCMOS)チップの双方を垂直面に配置することが可能となり、機械的および電気的なパッケージングおよびアセンブリが簡略化される。一部的にこの構成により、本走査装置は、同種の従来装置と比べて大幅に小型化される。
【0016】
代替実施形態では、2つのプリズムの相対位置が反対となり、その場合、出射レーザービームは45°を成すTIR面30に対して垂直となり、DMDチップは水平面に配置され、かつCCD(またはCMOS)面に対して垂直となる。
【0017】
図8Aおよび
図8Bは、走査装置の光学系をさらに詳細に示す。
図8Aは平面図であり、
図8Bは立面図である。
図8Aによって最もよく示されているように、走査装置の光学系40は2つの光路、すなわち、レーザー投影路41と、光学撮像路42とを含むように構成されている。通常、レーザー投影路は、歯の表面上に構造化されたレーザー光のパターンおよびカラー照明のライブビューを投影するために、3色(RGB)レーザー43と、光空間変調器44(例えば、Texas Instruments DLP(登録商標))とを有することが好ましい。光学撮像路42は、歯の表面上に投影されたレーザー光の遠近感のあるパターン画像をキャプチャするために、高速かつ高解像度のCCD(またはCMOS)センサ45を有することが好ましい。2つの光路が分離(図示するように並列に配置)されることにより、投影されたレーザー光のパターンとCCD光学画像との間に三角分割(triangulation)が形成される(このような歯の表面の3D形状は周知の三角測量法の原理に基づいて決定することが可能である)。投影レンズ46よび撮像レンズ47の双方は、それぞれ同一のレンズ群を含み、かつ撮像空間における高解像度、色補正、およびテレセントリック光線を提供するために最適化されることが好ましい。レーザー投影路は、3色レーザーダイオード43に加えて、レーザーコリメートレンズ48と、色合成フィルタ49と、マイクロレンズアレイホモジナイザー50と、レンズスペックル減少器51と、色消しダブレットレンズ52と、(上記で説明したように)反射TIR(内部全反射)プリズム53とを含む。走査装置先端部の端部において、透過した光はミラー54によって反射される。
【0018】
光学撮像路における被写界深度(約15mm)は、開口絞りのサイズおよび焦点距離の制御に基づいて設計される。レーザー投影路における被写界深度(例えば、約15mm)は、鮮明なレーザーラインと鮮やかなレーザー出力を達成するために、(以下、より詳細に説明するように)スリット開口絞りに基づいて設計される。視野(例えば、約17mm x 13mm)は、選択されたCCDセンサ、光空間変調器、および先端部ミラーのサイズと光学倍率および光学全長に基づいて設計される。小型の撮像用開口絞りおよび投影用開口絞りがガラス窓を使用することなく光学系の前方に配置されるのが好ましい。また、好ましくは加熱された先端部ミラーによる光路の曇りを防止するために、全てのレンズが機械的なハウジング本体部に装着されていることが好ましい。
【0019】
これに限定されるものではないが、代表的な光学設計のパラメータは以下の通りである。有効焦点距離(26.6mm)、三角測量法角度(6.55°)、倍率(1/3.6x)、視野(17.6mm x 13.2mm)、CCDセンサのサイズ(4.736 x 3.552および7.4μmピクセル、200fps)、光空間変調器(0.3"およびカラムにおけるピッチ10.6μm)、色(RGB色の3つのレーザー)、コントラスト(ミラーのオン/オフ切り替え)、均一性(平坦、マイクロレンズアレイによる上部照明)。
【0020】
図9を参照すると、走査装置の好適な1実施形態における構成部品のさらなる詳細を図示する。これらの構成部品を収容するハウジングについては図示していない。図示するように、この実施形態において、走査装置60は、スペックル除去モジュール61と、投影モジュール62と、(キャットアイ長孔部を備える)レンズ鏡筒モジュール63と、先端部取付モジュール64と、カメラモジュール65と、電子モジュール66と、データケーブル67と、照明エンジンモジュール68とを有する。
【0021】
レンズ鏡筒モジュールのキャットアイ形状の孔部はさらなる利点を提供する。動作時において、また
図8Aに図示したように、TIRプリズムから出射する光は、(4つのレンズによる投影光学系46を支持する)レンズ鏡筒モジュールを透過する。このレンズ鏡筒モジュールは、スロット形状を有する、キャットアイ(または「絞り」)長孔部を含む。このスロットはレーザーラインの方向に沿って形成されているため、より大きなレーザ出力が光学系を通過するという利点がある。孔部は幅狭に延びているため、細く鮮明なレーザーラインに対して十分な被写界深度を提供する。前記レンズによる投影光学系46は、3D測定のために高解像度および高被写界深度を提供するように最適化された、隣接する撮像光学系47と同一であることが好ましい。通常、撮像光学系は円形状の絞り開口部を有する。前記4つのレンズによる光学系は、撮像空間における透過と検出を改良するためにテレセントリックに設計されている。
【0022】
図1を再び参照すると、走査装置先端部2およびデータケーブル3は、着脱自在かつ取り換え可能であることが好ましい。走査装置をコンピュータに接続するデータケーブル3は、USB3.0データケーブルであり、バヨネットロック式のコネクタによって装置の残りの部分に接続されるのが好ましい。
【0023】
動作時において、(例えば、デスクトップ、ラップトップなどの)関連コンピュータ上に実装された走査ソフトウェアがキャプチャされたデータから3D点群を抽出し、その3D点群をキャプチャされた既存データと整合させ、表示スクリーン(または、他の出力)にレンダリングする。利用者が走査を継続している間、この工程が繰り返し行われる。次に、システムにより、利用者は復元された解剖学的構造をデザインツールに転送することが可能になる。このソフトウェアを使用して、利用者は、次に(例えば、クラウンなどの)歯の解剖学的特徴に適合するように修復物の設計を行う。
【0024】
走査装置先端部の機械的設計は、一体的なプラスチックのハウジングであることが好ましく、また、外側にシーム(seam)がないことが好ましい。また、利用しやすいように配向を示す印を含んでもよい。先端部内のミラーは、臨床経験に悪影響を及ぼすと考えられる曇りを防止するために加熱されるのが好ましい。
図10に示すように、先端部2は、ツイストロック機構32によって走査装置本体部1に取付られる。先端部に対して本体部を回転させることにより、先端部を修理または取り換えのために取り外すことができる。接点33と、一対のポゴパッドを有する接点パッド34とを含むコネクタ構造によって、加熱されたミラーに電気的接続が提供される。接点33によって提供されるこの電気的接続は、電力、通信(例えば、1つの特定の場合において、I
2C)、および安全性を含む。
【0025】
走査装置のRGBレーザーは、以下説明するように、所望の画像を生成するために色バランスが取れていることが好ましい。特に、本発明では、レーザー発光器を均衡化することにより色較正を行う手法を利用する。以下、この較正処理の手法について説明する。
【0026】
各レーザーは、特定の周波数範囲(すなわち、赤、緑、または青)を有し、また各レーザー発光器のパルス幅または電力は調整可能である。本明細書では、「発光器」は、LEDまたはシーンを照射するレーザーを指し、また「発光器駆動値」は、発光器の見掛けの振幅を駆動する値(例えば、パルス幅または他の電力)を指し、さらに「tRGB」値は、所定の較正対象における所望のまたは目標平均RGB値を指す。この較正処理を実行するために、まず、ペン型走査装置がグレースケールとなっている色較正対象に配置される。次に、最終的な画像のための目標RGB値がtRGBとして設定される。次に、許容範囲(設定可能な)の中間値が選択される。対象のスナップショットが撮像され、平均RGB値が収集される。次に、その平均RGB値がtRGBより大きいかどうかが決定され、その結果がバイナリサーチの初期条件として利用される。次に、平均RGBとtRGBとの間の差分が最小となるまで、バイナリサーチを利用して発光器駆動値が調整される。次に、最終的に最適化された発光器駆動値は、走査装置のカラーフレームを駆動するために利用される(すなわち、通常の使用時に)。赤色よりも緑色と青色がより優勢な構成要素となるようにtRGBを選択することが好ましく、それにより、患者の口腔内における赤色の散乱が低減される。代替実施形態において、グレースケールの代わりに異なる色空間(例えば、HSL、HSV)を用いて上記の較正を駆動することが可能である。
【0027】
別の観点によれば、色均一性の補正は以下のように実行することができる。まず、走査装置がグレースケールとなっている色較正対象に配置される。次に、シーンが、好ましくは上記で説明した最適化された発光器駆動値に基づいて照明される。次に、フレームがキャプチャされた後、n x nカーネルを用いてこのフレームがぼかしが施される。各ピクセルについて倍率が計算される。この倍率は、入力RGBをrRGBと近似した所望の出力RGBにマッピングする値である。次に、倍率画像は(例えば、OpenJPEGを使って)圧縮され、これによりグリッドの圧縮アーティファクトが低減されるとともに、ファイルサイズが大幅に縮小される。
【0028】
次に、この圧縮ファイルは走査装置に格納される。走査が開始されると、上記倍率画像は入力走査画像によって乗算され、均一誤差が補正される。倍率画像が算出され、一対の方程式に使用される。第1の方程式は、較正の間に(および要素毎の算術演算を仮定して)導出されたS=T/Iである。式中、Sは倍率画像であり、Iは走査装置からの入力画像であり、Tは全ピクセルにおいてtRGBを有する画像である。第2の方程式は、O=S*Iであり、この式は(走査の間に行われる)較正後の出力を表す。式中、Sは倍率画像であり、Iは走査装置からの入力画像であり、Oは利用者に表示される出力画像である。
【0029】
さらなる観点に基づいて、以下、レーザー発光器が画像センサと異なる光路に配置されていることによって発生する影を低減させる効率的な方法について説明する。この点において、生成された3Dモデルからkdツリーが計算される。生成されたモデルの各頂点について、kdツリーを用いて、推定されるカメラ位置に対して当該頂点から光線が照射される。次に、交差結果が格納される。このルーチンにおいては、光線がテスト中の頂点と交差することを確実に防ぐために、光線に沿ってエプシロンを用いることが好ましい。また、kdツリーを用いて、推定される照明位置に対して頂点から光線が照射され、交差結果が格納される。ここでも、光線がテスト中の頂点と交差することを確実に防ぐために、光線に沿ってエプシロンが用いられる。カメラ光線およびレーザー光線が他の幾何学的構造によって遮蔽されていない場合にのみ、ライブビュー画像はルックアップされる。
【0030】
通常、3Dモデル用データをキャプチャするために利用されるフレームは、部分的照明フレーム(partially-illuminated frames)である。走査装置の操作を容易にし、操作者に(3D演算データとともに)ライブビデオをフィードバックとして提供するために、全照明フレーム(full illumination frames)が選択的に点在する連続パターンが走査装置に使用される。全照明フレームでは、部分的な線のみが投影される部分照明手法と異なり、全ての線または実質的に全ての線がオンとなる。全照明フレームにおいては、実質上パターンが存在しない。部分的照明フレームによって表面の3D座標を決定するデータが提供される。このような手法でフレームをレンダリングする技術については、米国特許第7,184,150号明細書に記載されている(その開示はこの参照によって本明細書に組み込まれる)。これに対し、全照明フレームは、部分的照明フレームによって生成された3Dモデルにテクスチャー(質感)を与えるために使用される。1つのシークエンスでは、第1のセット(例えば、6つ)のパターンフレームとともに第2のセット(例えば、3つ)の照明フレームが点在し、合計で9つのCCDフレームが使用される。次に、ソフトウェアトラフィックシェーパーの使用により、キャプチャされたフレームが2つのストリーム、すなわち、ライブプレビューストリーム、および3Dモデルが生成されるデータ処理ストリームに分離される。CPUの作業負荷が特定の限界を超える場合、(例えば、演算または記憶装置の効率化のために)必要であれば、ライブプレビューストリームを優先せずにフレームの一部を落とすことも可能である。
【0031】
上記で説明したように、本明細書に記載の口腔内用走査装置は、単体の走査装置、またはCAD/CAMシステムの一部として提供することができる。非限定的な1実装形態において、走査装置は、ラップトップまたはデスクトップコンピュータ上で実行される、E4D Design Centerなどの歯科用CADソフトウェアを使用するCAD/CAMシステムの一部であり、選択的に、このソフトウェアは機械制御されるCAMソフトウェアによって駆動される特殊なフライス機械のハードウェアとともに用いられる。歯科医はまず最初に、インレー、アンレー、被覆冠、クラウン、またはブリッジを含む(これらに限定されるものではない)歯科用修復物を受容するために、(標準的な歯科技法を使って)疾患のある患者の歯の解剖学的構造を調整する。この調整が完了した後、歯科医は本明細書で説明および図示する走査装置を使って患者の歯の解剖学的構造の光学印象(digital impression)をキャプチャする。この光学印象のキャプチャが完了すると、自動CADソフトウェアにより歯科医に修復物の「初期提案」が提示される。この初期提案によって自動的に適切な歯の解剖学的構造が選択され、調整された歯上、および患者の既存の「健康」な解剖学的構造に適合するように修復物がサイズ設定されることが好ましい。次に、この初期提案は通常、歯科専門家より、設計を調整および変更する特殊なソフトウェアツールを使って、最終的に患者の解剖学的構造に適合する最適な設計が得られるようにカスタム化される。歯の最終的な3Dモデルが完成した後、このモデルは電子的にフライス機械(または第三者)に送られ、その設計に基づいて実際の修復物が生成される。
【0032】
走査装置内のRGBレーザーは選択的に制御(または停止)され、任意特定の色(例えば、青色、紫色など)を生成することができる。代替実施形態においては、走査のために利用される特定の色は走査される材料の関数である。
【0033】
走査装置先端部もまた、走査の用途に応じて必要であれば(例えば、追加の装置または要素を含めるために)、カスタム化することができる。先端部に対する電気的インターフェースにより、電力、通信、および先端部の設計者に対する安全性が提供され、より幅広いカスタム化の可能性が提供される。