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特許7248691無線周波数通信モジュールを備えたタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】無線周波数通信モジュールを備えたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
B60C19/00 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020544756
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 FR2019050493
(87)【国際公開番号】W WO2019170998
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】1851974
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ツッカーマン フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヒエ ヤン
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0122757(US,A1)
【文献】特表2017-537013(JP,A)
【文献】特開2017-132291(JP,A)
【文献】特開2005-323339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウンと、回転軸を有する2つのサイドウォール部及び2つのビード部と、カーカス補強体とを備え、各ビード部に2つのカーカスプライがそれぞれ係止されたタイヤであって、各ビード部が、
ビードワイヤと、
ターンアップ部によって前記第1のカーカスプライの前記ビードワイヤの周囲に延びて、前記ターンアップ部の端部が前記ビードワイヤに対して軸方向及び半径方向外側に存在するようになっている前記第1のカーカスプライの一部と、
前記ビードワイヤに対する半径方向外側であって前記第1のカーカスプライと前記ターンアップ部との軸方向中間に配置されたフィラーと、
前記第1のカーカスプライ、前記フィラー及び前記ターンアップ部に対して軸方向外側に配置された前記第2のカーカスプライの一部と、
前記外側に向って最も軸方向に離れた保護ゴム(クッションゴム)及びサイドウォールゴムと、
電子チップと螺旋状の放射アンテナとを有する無線周波数トランスポンダを含む通信モジュールと、
を含み、
一方では前記第2のカーカスプライと、他方では前記クッションゴム及び前記サイドウォールゴムとの軸方向中間に追加フィラーが配置され、前記通信モジュールは、前記第2のカーカスプライと前記追加フィラーとの間の境界面に位置する、
ことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記ターンアップ部は、前記フィラーの前記半径方向外側端部の半径方向下方に存在する端部を有し、前記通信モジュールは、実質的に前記フィラーの前記端部の高さに半径方向に配置される、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記通信モジュールの前記無線周波数トランスポンダは、前記フィラーの前記半径方向外側端部から半径方向に30mm未満の距離に配置される、
請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記通信モジュールの前記無線周波数トランスポンダは、前記フィラーの前記半径方向外側端部から半径方向に10mm未満の距離に配置される、
請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記通信モジュールは、電気絶縁封入ゴム質量体に封入された前記無線周波数トランスポンダから成る、
請求項1から4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記無線周波数トランスポンダは、2枚のゴム間に挟持される、
請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記封入ゴム質量体の引張弾性係数は、隣接するゴム化合物の引張弾性係数以下である、
請求項5又は6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記封入ゴム質量体の比誘電率は、隣接するゴム化合物の比誘電率未満である、
請求項5から7の1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記無線周波数トランスポンダの前記螺旋状の放射アンテナは第1の長手方向軸を定め、該第1の長手方向軸は円周方向に配向される、
請求項1から8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記放射アンテナは、2つの螺旋アンテナセグメントを含み、前記電子チップは、前記2つの螺旋アンテナセグメントに流電的に接続される、
請求項1から9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記電子部材の前記無線周波数トランスポンダは、前記電子チップに電気的に接続された1次アンテナをさらに含み、該1次アンテナは、前記放射アンテナに誘導結合され、前記放射アンテナは、前記第1の長手方向軸を定める一本鎖螺旋ばねから成るダイポールアンテナである、
請求項1から9の1項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記1次アンテナは、第2の長手方向軸を定める少なくとも1回の巻きを有するコイルであり、該コイルは、前記第2の長手方向軸に平行な回転軸と、前記放射アンテナの前記螺旋ばねの平均直径の1/3~3倍の、好ましくは0.5~2倍の直径とを有するシリンダによって取り囲まれる、
請求項11に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記放射アンテナは、2つの横方向領域間の中心領域を有し、前記1次アンテナは、前記第2の長手方向軸に垂直な正中面を有し、前記第1及び第2の長手方向軸は互いに平行であり、前記1次アンテナの前記正中面は、前記放射アンテナの前記中心領域内に配置される、
請求項12に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記1次アンテナは、前記放射アンテナの前記一本鎖螺旋ばねの内側に配置される、
請求項11から13のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、具体的には、無線周波数通信モジュールを備えたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
とりわけ本発明は、排他的な意味ではないが、強力な高速車両のための乗用車タイプの自動車用タイヤに適用される。一般に、このようなタイヤは、例えばレーヨン、ナイロン又はポリエステル製などの非金属材料製のスレッドを有する、例えば2つなどの複数のカーカス補強体を含む。
【0003】
タイヤの軸方向、半径方向及び円周方向は、このタイヤの回転軸に対して定義される。
【0004】
先行技術、特に欧州特許公開第2186658A1号からは、無線周波数通信モジュールを含むタイヤが既知である。この文献では、無線周波数通信モジュールが、双極子を形成する2つのアンテナを備えた受動的無線周波数識別トランスポンダを含む。この種のトランスポンダは、一般にRFIDという頭字語によって知られている。このような部材は、例えばタイヤのアイデンティティー、タイプ及び製造日に関するデータを記憶することができる。
【0005】
欧州特許公開第2186658A1号に記載されている、とりわけ図7B及び図9Bに示されているタイヤは、クラウンと、回転軸を有する2つのサイドウォール部及び2つのビード部と、それぞれが各ビード部に係止された2つのカーカスプライを有するカーカス補強体とを備え、各ビード部は、ビードワイヤと、ターンアップ部によってビードワイヤの周囲に延びて、ターンアップ部の端部がビードワイヤに対して軸方向及び半径方向外側に存在するようになっている第1のカーカスプライの一部と、ビードワイヤに対する半径方向外側であって第1のカーカスプライとターンアップ部との軸方向中間に配置されたフィラーと、第1のカーカスプライ、フィラー及びターンアップ部に対して軸方向外側に配置された第2のカーカスプライの一部と、外側に向って最も軸方向に離れた保護クッションゴム及びサイドウォールゴムとを含む。
【0006】
このタイヤは、フィラーとサイドウォールゴムとの軸方向中間であって第1のカーカスプライのターンアップ部とフィラーとの間の境界面に配置された通信モジュールを含むようになっている。
【0007】
このような通信モジュールの配置は、無線通信の観点からは概ね良好であるが、特にカーカスプライが金属スレッドで構成されている場合、金属の影響を受けやすいUHF無線周波数性能の観点からは明らかに限界がある。しかしながら、たとえスレッドが非金属であっても、通信モジュールをビード部内に埋め込むことは、タイヤの耐久性及び通信モジュールの物理完全性には役立つものの、優れた無線通信性能に役立つものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2012/030321号
【文献】欧州特許公開第2186658号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、タイヤの耐久性を損なうことなくUHF無線通信性能を改善することである。
【0010】
本発明の主題は、第2のカーカスプライと、保護ゴム及びサイドウォールゴムで構成されたアセンブリとの軸方向中間に追加フィラーを配置し、第2のカーカスプライと追加フィラーとの間の境界面に通信モジュールを配置した同様のタイヤである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人の企業は、第2のカーカスプライに対する軸方向外側の位置が、この第2のカーカスプライとフィラーとの間の位置に比べて通信モジュールが受ける応力を制限できることに気付いた。この位置は、第2のカーカスプライに対する軸方向内側の位置に比べて、例えば亀裂が発生して広がることなどの通信モジュールの存在に関連する欠陥のリスクを非常に大きく制限するという利点も有する。具体的には、通信モジュールとフィラー及び第1のカーカスプライで構成されたアセンブリとの間のセパレータとして第2のカーカスプライを位置付けることにより、通信モジュールと第1のカーカスプライ及びビードフィラーの端部との間に物理的障壁を形成することができる。このようにすると、これらの端部付近に通信モジュールを挿入することによるタイヤの損傷リスクが制限される。この位置は、通信モジュールと外部リーダとの通信品質の観点からも好ましい。具体的には、通信モジュールが、ビードワイヤなどの金属領域、又は第1及び第2のカーカスプライなどの潜在的金属領域から遠ざけられる。さらに、この位置は、通信モジュールを物理的に組み込むことに支障がなく、通信モジュールは、例えば縁石にぶつかることによる衝撃などのタイヤ外部からの攻撃から追加フィラー、保護ゴム及びサイドウォール部によって保護された状態を保つ。最後に、通信モジュールを第2のカーカスプライ上に載置することにより、追加フィラーなどの肉厚ゴムを通じてよりも第2のカーカスプライからの方が生タイヤ(green tyre)上で識別しやすい第1のカーカスプライのターンアップ部の端部又はビードフィラーの端部などのタイヤの構造細部に対して通信モジュールを容易に配置できるようになる。具体的に言えば、第1のカーカスプライ及びビードフィラーは、第2のカーカスプライよりも前にタイヤ成型ドラム(tyre-building drum)上に配置され、通信モジュールが第2のカーカスプライ上に配置されると、全てが追加フィラーで覆われるようになる。
【0012】
1つの特定の実施形態では、第1のカーカスプライの一部のターンアップ部が、フィラーの半径方向外側端部の半径方向下方に位置する端部を有し、通信モジュールが、実質的にフィラーの端部の高さに半径方向に配置される。
【0013】
この構成では、通信モジュールを半径方向最外部に配置することによって無線通信性能を支援すると同時に、タイヤの耐久性及び通信モジュールの完全性を維持することが好ましい。通信モジュールは、その物理完全性のために、できるだけタイヤの剛体領域を構成するタイヤのビード部内又はその直近に位置する必要がある。通信モジュールが載る第2のカーカスプライの存在は、第1のカーカスプライのターンアップ部又はビードフィラーの端部によって象徴される不利点の部分的な克服を可能にする。
【0014】
好ましくは、無線周波数通信モジュールは、電気絶縁封入ゴム質量体(mass of electrically insulating encapsulation rubber)に封入された無線周波数トランスポンダを含み、トランスポンダは、第1の長手方向軸を定める放射アンテナに結合された電子チップを含み、この第1の長手方向軸は円周方向に配向される。
【0015】
1つの特定の実施形態によれば、この封入ゴム質量体は、無線周波数トランスポンダを挟持する2枚のゴムから成ることができる。
【0016】
この方法は、無線周波数トランスポンダを封入して無線周波数トランスポンダの取り扱いを容易にする単純かつ効果的な方法である。この結果、生のタイヤ形態(green form of the tyre)への導入が容易になる。
【0017】
1つの好ましい実施形態によれば、封入ゴム質量体の引張弾性係数は、隣接するゴム化合物の引張弾性係数以下である。
【0018】
この結果、通信モジュールがタイヤに導入される地点を取り囲む領域の応力を最小化することによって良好なタイヤの耐久性及び無線周波数トランスポンダの物理完全性を保証することが可能になり、この封入ゴムがタイヤのコンポーネントに損傷の原因と成り得る力を及ぼすよりもむしろ変形しやすくなる。
【0019】
別の好ましい実施形態によれば、封入ゴム質量体の比誘電率は、隣接するゴム化合物の比誘電率未満である。
【0020】
この特徴は、封入ゴム内のエネルギー損失を最小化することによって無線周波数トランスポンダとの間の無線周波数通信を改善することができる。
【0021】
第1の長手方向軸の配向は、カーカスプライのスレッドに垂直であり、無線周波数トランスポンダの機械的完全性の観点、及びトランスデューサの読み取り品質の観点から非常に好ましい。
【0022】
選択事項として、無線周波数トランスポンダの第1の長手方向軸は、フィラーの半径方向外側端部から半径方向30mm未満の距離に配置される。
【0023】
この距離は、10mm未満であることが非常に好ましい。
【0024】
第2のカーカスプライを配置した後に半完成品の通信モジュールを配置することは容易であり、この半径方向位置は既に識別されているため、通信モジュールをフィラーに対してフィラーの半径方向外側端部の高さに配置することは工業的観点から有利である。
【0025】
無線周波数トランスポンダの第1の実施形態では、無線周波数トランスポンダの放射アンテナが2つの螺旋アンテナセグメントを含む。その後、2つの螺旋アンテナセグメントに電子チップが流電的に(galvanically)接続される。
【0026】
無線周波数トランスポンダの第2の実施形態では、電子部材の無線周波数トランスポンダが、電子チップに電気的に、すなわち流電的に接続された1次アンテナをさらに含む。1次アンテナは、第1の長手方向軸を定める一本鎖螺旋ばね(single-strand helical spring)から成るダイポールアンテナである放射アンテナに誘導結合される。
【0027】
この無線周波数トランスポンダの第2の実施形態の1つの特定の実施形態モードでは、1次アンテナが、第2の長手方向軸を定める少なくとも1回の巻きを有するコイルである。コイルは、第2の長手方向軸に平行な回転軸と、放射アンテナの螺旋ばねの平均直径の1/3~3倍の、好ましくは0.5~2倍の直径とを有するシリンダによって取り囲まれる。
【0028】
この構成により、1次アンテナと放射アンテナとの間の無線周波数通信の品質性能を取得できるとともに、無線周波数トランスポンダがタイヤの内側に位置する時に無線周波数トランスポンダのレベルで所望の無線周波数通信性能を達成できるようになる。
【0029】
無線周波数トランスポンダの第2の実施形態の1つの特定の実施態様モードでは、放射アンテナが2つの横方向領域間に中心領域を有し、1次アンテナが第2の長手方向軸に垂直な正中面を有し、第1及び第2の長手方向軸が互いに平行であり、1次アンテナの正中面が放射アンテナの中心領域内に配置される。
【0030】
この配置では、電流が通過するコイルの中心において最も磁界が強くなるので、より良い品質の誘導結合が保証される。
【0031】
無線周波数トランスポンダの第2の実施形態の別の特定の実施態様モードでは、1次アンテナが放射アンテナの一本鎖螺旋ばねの内側に配置される。
【0032】
この構成では、無線周波数トランスポンダの空間容量(spatial bulk)が減少し、電子モジュールがタイヤの寸法規模で詳細になることにより、さらに高いタイヤの耐久性が保証される。
【0033】
以下の詳細な説明、及び全体を通じて同じ参照番号を使用して同一部分を示す添付図面を通じて、本発明の様々な主題がより良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明によるタイヤのビード部の部分的軸方向断面図である。
図2】典型的な無線周波数トランスポンダを示す図である。
図3】通信モジュールの概略的分解図である。
図4】本発明の1つの実施形態による、電子部分が放射アンテナの内側に位置する構成の無線周波数トランスポンダの斜視図である。
図5】本発明による、電子部分が放射アンテナの外側に位置する構成の無線周波数トランスポンダの斜視図である。
図6】電子部分が放射アンテナの内側に位置する構成の無線周波数トランスポンダの電子部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、タイヤのゴム成分を識別するために、「ゴム化合物」、「ゴム」及び「化合物」という用語を同義的に使用する。
【0036】
図1に、本発明によるタイヤのビード部34の軸方向X、円周方向C及び半径方向Zを示す。
【0037】
軸方向については、「軸方向外側」がタイヤの外側に向かう軸方向を意味し、「軸方向内側」がタイヤの内部空洞に向かう軸方向を意味する。
【0038】
従来、タイヤは、クラウン、2つのサイドウォール部及び2つのビード部を含む。図1には、サイドウォール部32及びビード部34の半径方向内側部分のみを示す。図1に示すビード部34は、回転対称を示すビードワイヤ35と、サイドウォール部32からビードワイヤ35に向かって第1の部分371が延び、ターンアップ部372がビードワイヤ35に巻き回されて端部373まで半径方向外側に延びる第1のカーカスプライ37とを含む。このターンアップ部372は、タイヤのビード部34の外側に向って軸方向に配置される。ビードワイヤ35に対する半径方向外側であって第1のカーカスプライ37の第1の部分371とターンアップ部372との軸方向中間には、フィラー46が配置される。このフィラー46は、端部461まで半径方向外側に延びる。なお、フィラーの端部461は、ターンアップ部372の端部373に対して半径方向外側に位置する。
【0039】
ビード部は、サイドウォール部32からビードワイヤ35まで延びる第2のカーカスプライ38も含む。この第2のカーカスプライ38は、第1のカーカスプライ37、フィラー46及びターンアップ部372に対して軸方向外側に配置される。2つのカーカスプライ37及び38は、それ自体知られているように、例えばここでは繊維の「ラジアル」コードとして知られているものによって補強されたプライで構成され、すなわちこれらのコードは、互いに実質的に平行に配置されてタイヤの円周方向正中面(median circumferential plane)EPとの間に80°~90°の角度を成すように一方のビード部から他方のビード部に延びる。第1のカーカスプライ37に対する半径方向内側には、一方のビード部から他方のビード部に気密インナーライナ40が延びる。ビード部34は、リムの表面に接触できる保護ゴム(或いは「プロテクタ」又は「クッションゴム」)42を含む。このクッションゴムは、サイドウォールゴム33との境界面まで半径方向外側に延びる。クッションゴム42及びサイドウォールゴム33は、タイヤの外層を構成する。ビード部34は、一方では第2のカーカスプライ38と、他方ではクッションゴム42及びサイドウォールゴム33との軸方向中間に配置された追加フィラー44も含む。
【0040】
ビード部34は、第2のカーカスプライ38と追加フィラー44との間の境界面であってフィラー46の端部461と第1のカーカスプライのターンアップ部371の端部372との半径方向中間に軸方向に配置された無線周波数通信モジュール2も含む。
【0041】
図2に示すように、従来の無線周波数トランスポンダは、第1の長手方向軸を定める2つの螺旋状のハーフアンテナで構成された放射アンテナに流電的に結合された電子チップを含む。タイヤのビード部では、この放射アンテナの軸によって定められる第1の長手方向軸が円周方向に、従って2つのカーカスプライの補強スレッドに対して垂直に配向される。この配向は、無線周波数トランスポンダの機械的完全性の観点、及び外部リーダとの通信品質の観点から非常に好ましい。
【0042】
図3は、電子部材2の分解図である。この部材2は、非加硫電気絶縁エラストマ化合物の2つの層3a及び3b間に埋め込まれた無線周波数トランスポンダ1を含む。このような電子部材は、タイヤの製造中にタイヤの構造に組み込むことができる半完成品である。
【0043】
この封入エラストマ化合物は、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマーゴム)、ブチルゴム、SBR(スチレンブタジエンゴム)などのネオプレン又はジエンエラストマ、ポリブタジエン、天然ゴム又はポリイソプレンなどの100phr(エラストマ100部当たり重量部)のポリマーを含む。
【0044】
この化合物は、シリカ、カーボンブラック、チョーク及びカオリンフィラーなどのフィラーを以下の配合で含むことができる。
- シリカフィラーを最大50phrの量、
- 700よりも高いASTM等級のカーボンブラックフィラーを50phr未満の量、
- 500以下の等級のカーボンブラックフィラーを最大20phrの量。
- これらのフィラーは、追加又はチョーク又はカオリンと置換することができる。
【0045】
このような量及びタイプのフィラーは、とりわけ915MHzの周波数で6.5未満の比誘電率を保証することができる。
【0046】
硬化状態の封入材料の剛性は、隣接する化合物よりも低く、又はこれに近いことが好ましい。
【0047】
第1の実施形態では、通信モジュール20の無線周波数トランスポンダが、図2に示すような国際公開第2012/030321号に記載されているものなどの従来の無線周波数トランスポンダである。このトランスポンダ100は、担体又はPCB(プリント基板)102に固定され、導電性トラック104及びはんだ接合部130を介して2つのハーフアンテナ110及び112に流電的に接続された電子チップ120を含む。アンテナは、固体コアが鋼線の螺旋ばねである。上述したように、電子部分及びアンテナの少なくとも一部は、絶縁ゴム化合物150に埋め込まれる。
【0048】
ゴム化合物を導電層の材料から保護するために、必要に応じて、アンテナの鋼線は、例えば真鍮、亜鉛、ニッケル又は錫製の化学的絶縁層で被覆された銅、アルミニウム、銀、亜鉛又は真鍮製の導電層で被覆される。
【0049】
このようなアンテナの電磁誘電(electromagnetic conduction)は、主に表皮効果を介して行われ、すなわち主にアンテナの外層で行われる。この表皮厚は、とりわけ放射周波数と導電層が形成される材料との関数に依存する。一例として、UHF周波数(例えば、915MHz)の場合、銀では表皮厚が2.1μm程度であり、銅では2.2μm程度であり、真鍮では4.4μm程度である。
【0050】
鋼線は、これらの層で被覆した後に形成することも、或いは形成した後に被覆することもできる。
【0051】
図3に示すような電子部材2の無線周波数トランスポンダ1は、以下で説明する電子部材2の第2の実施形態に対応する。
【0052】
電子部材2の第2の実施形態による無線周波数トランスポンダ1は、電子部分20と、外部無線周波数リーダと通信できる放射アンテナ10とを含む。電子部分20(図6を参照)は、電子チップ22を含む。電子部分20は、電子チップ22に電気的に接続されて放射アンテナ10に誘導結合された1次アンテナ24をさらに含む。放射アンテナは、第1の長手方向軸を定める一本鎖螺旋ばねから成るダイポールアンテナである。
【0053】
図4に、電子部分20が放射アンテナ10の内側に位置する構成の無線周波数トランスポンダ1を示す。電子部分10の幾何学的形状は、螺旋ばねの内径以下の直径を有するシリンダによって取り囲まれる。これにより、電子部分20を放射アンテナ10に挿入するのが容易になる。1次アンテナの正中面21は、放射アンテナの中心領域内に位置し、放射アンテナ10の正中面に実質的に重なり合う。
【0054】
図5に、電子部分20が放射アンテナ10の外側に位置する構成の無線周波数トランスポンダ1を示す。電子部分20の幾何学的形状は、放射アンテナ10の外径以上の直径を有する円筒空胴25を有する。これにより、放射アンテナ10を電子部分の円筒空胴25に挿入するのが容易になる。1次アンテナの正中面21は、放射アンテナの中心領域内の実質的に放射アンテナ10の正中面内に位置する。
【0055】
図6に、電子部分20が放射アンテナ10の内側に位置する構成を対象とした無線周波数トランスポンダ1の電子部分20を示す。電子部分20は、電子チップ22と、プリント基板26を介して電子チップ22に電気的に接続された1次アンテナ24とを含む。ここでは、1次アンテナが、対称軸23を有する表面実装デバイス(SMD)マイクロコイルから成る。SMDコイルの対称軸23に平行な法線によって定められてコイルを2つの等しい部分に分離する、1次アンテナの正中面21が決定される。プリント基板上のコンポーネントは、銅製パッド27によって終端する銅製の軌道を使用して電気的に接続される。プリント基板上のコンポーネントは、コンポーネントとパッド27との間に延びる金線28によってワイヤボンディング法を使用して電気的に接続される。プリント基板26、電子チップ22及び1次アンテナ24から成るアセンブリは、無線周波数トランスポンダ1の電子部分20を形成する電気絶縁高温エポキシ樹脂製の剛体質量29に埋め込まれる。
【0056】
この無線周波数トランスポンダ1は、従来のトランスポンダよりも機械的にはるかに強固であるという利点を有する。
【符号の説明】
【0057】
2 無線周波数通信モジュール
32 サイドウォール部
33 サイドウォールゴム
34 ビード部
35 ビードワイヤ
37 第1のカーカスプライ
371 第1の部分
372 ターンアップ部
373 端部
38 第2のカーカスプライ
40 気密インナーライナ
42 クッションゴム
44 追加フィラー
46 フィラー
461 端部
C 円周方向
X 軸方向
Z 半径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6