IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧

特許7248698環状オレフィン系樹脂組成物、成形体および光学部品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】環状オレフィン系樹脂組成物、成形体および光学部品
(51)【国際特許分類】
   C08L 45/00 20060101AFI20230322BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230322BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230322BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C08L45/00
C08K3/013
C08K3/22
C08K9/04
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020548315
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 JP2019035017
(87)【国際公開番号】W WO2020066529
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2018181395
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】野口 三紀子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 春佳
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】川口 正剛
(72)【発明者】
【氏名】附田 佑道
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-182934(JP,A)
【文献】特開平02-051510(JP,A)
【文献】特開2013-001780(JP,A)
【文献】特開2015-189949(JP,A)
【文献】特開平08-134310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
C08K 3/00 - 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状オレフィン系共重合体(A)と、
表面が修飾剤により修飾された無機微粒子(B)と
を含む環状オレフィン系樹脂組成物であって、
前記修飾剤が、ドデシルリン酸およびカルボン酸からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、
前記環状オレフィン系共重合体(A)中に前記無機微粒子(B)が分散した状態で存在し、
前記環状オレフィン系共重合体(A)が、
下記の[A-1]、[A-2]、[A-3]および[A-4]から選択される1種または2種以上を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[A-1]炭素原子数が2~20のα-オレフィンと下記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体、
【化1】
(前記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R ~R 18 ならびにR およびR は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基であり、R 15 ~R 18 は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR 15 とR 16 とで、またはR 17 とR 18 とで、アルキリデン基を形成していてもよい。)、
【化2】
(前記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R ~R 19 はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、R およびR 10 が結合している炭素原子と、R 13 が結合している炭素原子またはR 11 が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR 15 とR 12 またはR 15 とR 19 とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)、
【化3】
(前記式[III]中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3であり、R 18 ~R 31 はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR 28 とR 29 、R 29 とR 30 、R 30 とR 31 は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR 28 とR 28 、R 28 とR 29 、R 29 とR 30 、R 30 とR 31 、R 31 とR 31 は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)、
【化4】
(前記式[IV]中、qは1、2または3であり、R 32 ~R 39 はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR 36 とR 37 、R 37 とR 38 、R 38 とR 39 は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR 36 とR 36 、R 36 とR 37 、R 37 とR 38 、R 38 とR 39 、R 39 とR 39 は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)、
【化5】
(前記式[V]中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2であり、R ~R 17 はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R 10 ~R 17 のうち一つは結合手であり、またq=0のときR 10 とR 11 、R 11 とR 12 、R 12 とR 13 、R 13 とR 14 、R 14 とR 15 、R 15 とR 10 は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=1または2のときR 10 とR 11 、R 11 とR 17 、R 17 とR 17 、R 17 とR 12 、R 12 とR 13 、R 13 とR 14 、R 14 とR 15 、R 15 とR 16 、R 16 とR 16 、R 16 とR 10 は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また前記単環または前記多環が二重結合を有していてもよく、前記単環または前記多環が芳香族環であってもよい。)
[A-2]前記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体、
[A-3]前記開環重合体または共重合体[A-2]の水素化物、
[A-4]前記[A-1]、[A-2]または[A-3]のグラフト変性物
【請求項2】
請求項1に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記修飾剤が、ドデシルリン酸および炭素数12~18の炭化水素基を含むカルボン酸から選ばれる1種または2種以上を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記環状オレフィン系共重合体(A)は、極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)を含む極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)を含み、
前記極性基がカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基およびアミノ基から選択される1種または2種以上である、環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)中の前記極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)の含有量が、前記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、0.1モル%以上20モル%以下である環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項またはに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)が、前記極性基を有するモノマーと環状オレフィンとのランダム共重合体(A1)および環状オレフィン系重合体に前記極性基を有するモノマーをグラフトまたはグラフト重合させたグラフト共重合体(A2)から選択される一種または2種以上を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)が、炭素原子数が2~20のα-オレフィン由来の構成単位(a1)、下記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィン由来の構成単位(a2)および前記極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)を有するランダム共重合体(A1)を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【化6】
(前記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R~R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、R15~R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とで、アルキリデン基を形成していてもよい。)
【化7】
(前記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R~R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、RおよびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)
【化8】
(前記式[III]中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3であり、R18~R31はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR28とR29、R29とR30、R30とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR28とR28、R28とR29、R29とR30、R30とR31、R31とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【化9】
(前記式[IV]中、qは1、2または3であり、R32~R39はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR36とR37、R37とR38、R38とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR36とR36、R36とR37、R37とR38、R38とR39、R39とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【化10】
(前記式[V]中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2であり、R~R17はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R10~R17のうち一つは結合手であり、またq=0のときR10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=1または2のときR10とR11、R11とR17、R17とR17、R17とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR16、R16とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また前記単環または前記多環が二重結合を有していてもよく、前記単環または前記多環が芳香族環であってもよい。)
【請求項7】
請求項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記ランダム共重合体(A1)中の前記環状オレフィン由来の構成単位(a2)が、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンから選ばれる1種または2種以上の化合物に由来する繰り返し単位を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項8】
請求項またはに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記ランダム共重合体(A1)中の前記α-オレフィン由来の構成単位(a1)がエチレンに由来する繰り返し単位を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項9】
請求項乃至のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記極性基を有するモノマーが下記式(10)により示されるモノマーを含む環状オレフィン系樹脂組成物。
CH=CH-R-Xp (10)
(前記式(10)中、pは1以上3以下の正の整数であり、Rは炭素数0以上の炭化水素基であり、Xはカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基およびアミノ基から選択される一種または2種以上の極性基である)
【請求項10】
請求項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記極性基を有するモノマーがウンデセノールおよびウンデシレン酸から選ばれる1種または2種以上を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項11】
請求項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)が、下記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィン由来の構成単位(a2)を有する環状オレフィン系重合体に前記極性基を有するモノマーをグラフトまたはグラフト重合させたグラフト共重合体(A2)を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【化11】
(前記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R~R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基であり、R15~R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とで、アルキリデン基を形成していてもよい。)
【化12】
(前記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R~R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、RおよびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)
【化13】
(前記式[III]中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3であり、R18~R31はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR28とR29、R29とR30、R30とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR28とR28、R28とR29、R29とR30、R30とR31、R31とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【化14】
(前記式[IV]中、qは1、2または3であり、R32~R39はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR36とR37、R37とR38、R38とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR36とR36、R36とR37、R37とR38、R38とR39、R39とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【化15】
(前記式[V]中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2であり、R~R17はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R10~R17のうち一つは結合手であり、またq=0のときR10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=1または2のときR10とR11、R11とR17、R17とR17、R17とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR16、R16とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また前記単環または前記多環が二重結合を有していてもよく、前記単環または前記多環が芳香族環であってもよい。)
【請求項12】
請求項11に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記グラフト共重合体(A2)中の前記環状オレフィン由来の構成単位(a2)が、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンから選ばれる一種または2種以上の化合物に由来する繰り返し単位を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項13】
請求項11または12に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記グラフト共重合体(A2)が、炭素原子数が2~20のα-オレフィン由来の構成単位(a1)をさらに有する環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記極性基を有するモノマーがアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および無水マレイン酸から選ばれる1種または2種以上を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記無機微粒子(B)がジルコニア、チタニアおよびアルミナから選択される一種または2種以上を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記無機微粒子(B)の平均粒子径D50が1nm以上100nm以下である環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
前記環状オレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、前記無機微粒子(B)の含有量が5質量%以上60質量%以下である環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
当該環状オレフィン系樹脂組成物を用いて膜厚が100μm以上300μm以下のフィルムを作製したとき、
前記フィルムの波長589nmにおける屈折率(nD)が1.545以上である環状オレフィン系樹脂組成物。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の環状オレフィン系樹脂組成物を用いた成形体。
【請求項20】
請求項19に記載の成形体を含む光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂組成物、成形体および光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系共重合体は光学性能に優れるため、例えば、光学レンズ等の光学部品として用いられている。
光学部品に用いられる環状オレフィン系共重合体に関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2013-209501号公報)および特許文献2(特開2009-108282号公報)に記載のものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、分子鎖の末端に官能基を含有する末端変性ビニル脂環式炭化水素重合体水素化物のマトリックス内に、平均粒径100nm以下の無機化合物の粒子が分散しているナノ分散体が開示されている。特許文献1には、このようなナノ分散体を用いると、高屈折率性を有する光学レンズが得られると記載されている。
【0004】
特許文献2には、特定の構造からなる含ケイ素基と、炭素-炭素二重結合を環内に有する脂環構造とを有し、芳香環構造を有しない脂環構造含有重合性単量体(A)5~30重量%と、芳香環構造と、炭素-炭素二重結合を環内に有する脂環構造とを有し、ケイ素原子を有しない脂環構造含有重合性単量体(B)50~90重量%と、これらと共重合可能な重合性単量体(C)0~45重量%とからなる重合性単量体組成物を、少なくとも重合して得られる脂環構造含有重合体が開示されている。特許文献2には、このような脂環構造含有重合体を用いると、高い屈折率と高いアッベ数と高い光線透過率とを兼ね備えた光学レンズが得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-209501号公報
【文献】特開2009-108282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
小型化薄型化が要求される光学レンズ等の光学部品用途において、屈折率のさらなる向上が求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、透明性および高屈折率を有する光学部品を実現できる環状オレフィン系樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、環状オレフィン系共重合体に対して、表面が修飾剤により修飾された無機微粒子を微分散させることにより、透明性および高屈折率の性能バランスに優れる光学部品を実現できる環状オレフィン系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は以下に示すとおりである。
【0009】
[1]
環状オレフィン系共重合体(A)と、
表面が修飾剤により修飾された無機微粒子(B)と
を含む環状オレフィン系樹脂組成物であって、
上記修飾剤が、リン酸エステル、有機ホスホン酸、ホスホン酸エステル、カルボン酸、スルホン酸、アミノ基を有する炭化水素化合物、シランカップリング剤からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、
上記環状オレフィン系共重合体(A)中に上記無機微粒子(B)が分散した状態で存在する環状オレフィン系樹脂組成物。
[2]
上記[1]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、上記修飾剤は、下記式(1)で表される化合物である環状オレフィン系樹脂組成物。
-X (1)
(式中、Rは、炭素数3~18の炭化水素基を表し、Xは、前記無機微粒子(B)の表面との結合を生成させる官能基又は前記官能基を有する原子団を表す。)
[3]
上記[1]または[2]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記環状オレフィン系樹脂(A)が、
下記の[A-1]、[A-2]、[A-3]および[A-4]から選択される1種または2種以上を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[A-1]炭素原子数が2~20のα-オレフィンと下記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体、
【0010】
【化1】
(上記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R~R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基であり、R15~R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とで、アルキリデン基を形成していてもよい。)、
【0011】
【化2】
(上記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R~R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、RおよびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)、
【0012】
【化3】
(上記式[III]中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3であり、R18~R31はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR28とR29、R29とR30、R30とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR28とR28、R28とR29、R29とR30、R30とR31、R31とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)、
【0013】
【化4】
(上記式[IV]中、qは1、2または3であり、R32~R39はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR36とR37、R37とR38、R38とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR36とR36、R36とR37、R37とR38、R38とR39、R39とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)、
【0014】
【化5】
(上記式[V]中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2であり、R~R17はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R10~R17のうち一つは結合手であり、またq=0のときR10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=1または2のときR10とR11、R11とR17、R17とR17、R17とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR16、R16とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また前記単環または前記多環が二重結合を有していてもよく、前記単環または前記多環が芳香族環であってもよい。)、
[A-2]上記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体、
[A-3]上記開環重合体または共重合体[A-2]の水素化物、
[A-4]上記[A-1]、[A-2]または[A-3]のグラフト変性物。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記修飾剤が、炭素数12~18の炭化水素基を含むリン酸エステルおよび炭素数12~18の炭化水素基を含むカルボン酸から選ばれる1種または2種以上を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記環状オレフィン系共重合体(A)は、極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)を含む極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)を含み、
上記極性基がカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基およびアミノ基から選択される1種または2種以上である、環状オレフィン系樹脂組成物。
[6]
上記[5]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)中の上記極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)の含有量が、上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、0.1モル%以上20モル%以下である環状オレフィン系樹脂組成物。
[7]
上記[5]または[6]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)が、上記極性基を有するモノマーと環状オレフィンとのランダム共重合体(A1)および環状オレフィン系重合体に上記極性基を有するモノマーをグラフトまたはグラフト重合させたグラフト共重合体(A2)から選択される一種または2種以上を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[8]
上記[7]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)が、炭素原子数が2~20のα-オレフィン由来の構成単位(a1)、下記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィン由来の構成単位(a2)および上記極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)を有するランダム共重合体(A1)を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【0015】
【化6】
(上記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R~R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、R15~R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とで、アルキリデン基を形成していてもよい。)
【0016】
【化7】
(上記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R~R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、RおよびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)
【0017】
【化8】
(上記式[III]中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3であり、R18~R31はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR28とR29、R29とR30、R30とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR28とR28、R28とR29、R29とR30、R30とR31、R31とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【0018】
【化9】
(上記式[IV]中、qは1、2または3であり、R32~R39はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR36とR37、R37とR38、R38とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR36とR36、R36とR37、R37とR38、R38とR39、R39とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【0019】
【化10】
(上記式[V]中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2であり、R~R17はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R10~R17のうち一つは結合手であり、またq=0のときR10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=1または2のときR10とR11、R11とR17、R17とR17、R17とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR16、R16とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
[9]
上記[8]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記ランダム共重合体(A1)中の上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)が、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンから選ばれる1種または2種以上の化合物に由来する繰り返し単位を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[10]
上記[8]または[9]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記ランダム共重合体(A1)中の上記α-オレフィン由来の構成単位(a1)がエチレンに由来する繰り返し単位を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[11]
上記[8]乃至[10]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基を有するモノマーが下記式(10)により示されるモノマーを含む環状オレフィン系樹脂組成物。
CH=CH-R-Xp (10)
(上記式(10)中、pは1以上3以下の正の整数であり、Rは炭素数0以上の炭化水素基であり、Xはカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基およびアミノ基から選択される一種または2種以上の極性基である)
[12]
上記[11]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基を有するモノマーがウンデセノールおよびウンデシレン酸から選ばれる1種または2種以上を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[13]
上記[7]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)が、下記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィン由来の構成単位(a2)を有する環状オレフィン系重合体に上記極性基を有するモノマーをグラフトまたはグラフト重合させたグラフト共重合体(A2)を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
【0020】
【化11】
(上記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R~R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基であり、R15~R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、該単環または多環は二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とで、アルキリデン基を形成していてもよい。)
【0021】
【化12】
(上記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2であり、R~R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基であり、RおよびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のときR15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。)
【0022】
【化13】
(上記式[III]中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3であり、R18~R31はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR28とR29、R29とR30、R30とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR28とR28、R28とR29、R29とR30、R30とR31、R31とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【0023】
【化14】
(上記式[IV]中、qは1、2または3であり、R32~R39はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR36とR37、R37とR38、R38とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR36とR36、R36とR37、R37とR38、R38とR39、R39とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【0024】
【化15】
(上記式[V]中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2であり、R~R17はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R10~R17のうち一つは結合手であり、またq=0のときR10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=1または2のときR10とR11、R11とR17、R17とR17、R17とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR16、R16とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、上記単環または前記多環が芳香族環であってもよい。)
[14]
上記[13]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記グラフト共重合体(A2)中の上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)が、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンから選ばれる一種または2種以上の化合物に由来する繰り返し単位を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[15]
上記[13]または[14]に記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記グラフト共重合体(A2)が、炭素原子数が2~20のα-オレフィン由来の構成単位(a1)をさらに有する環状オレフィン系樹脂組成物。
[16]
上記[13]乃至[15]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記極性基を有するモノマーがアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および無水マレイン酸から選ばれる1種または2種以上を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[17]
上記[1]乃至[16]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記無機微粒子(B)がジルコニア、チタニアおよびアルミナから選択される一種または2種以上を含む環状オレフィン系樹脂組成物。
[18]
上記[1]乃至[17]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記無機微粒子(B)の平均粒子径D50が1nm以上100nm以下である環状オレフィン系樹脂組成物。
[19]
上記[1]乃至[18]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
上記環状オレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、上記無機微粒子(B)の含有量が5質量%以上60質量%以下である環状オレフィン系樹脂組成物。
[20]
上記[1]乃至[19]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物において、
当該環状オレフィン系樹脂組成物を用いて膜厚が100μm以上300μm以下のフィルムを作製したとき、
上記フィルムの波長589nmにおける屈折率(nD)が1.545以上である環状オレフィン系樹脂組成物。
[21]
上記[1]乃至[20]のいずれか一つに記載の環状オレフィン系樹脂組成物を用いた成形体。
[22]
上記[21]に記載の成形体を含む光学部品。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、透明性および高屈折率を有する光学部品を実現できる環状オレフィン系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態では、数値範囲を示す「A~B」はとくに断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0027】
[環状オレフィン系樹脂組成物]
まず、本発明に係る実施形態の環状オレフィン系樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、環状オレフィン系共重合体(A)と、表面が修飾剤により修飾された無機微粒子(B)と、を含む。そして、上記修飾剤は、リン酸エステル、有機ホスホン酸、ホスホン酸エステル、カルボン酸、スルホン酸、アミノ基を有する炭化水素化合物、シランカップリング剤からなる群から選ばれる1種または2種以上であり、上記環状オレフィン系共重合体(A)中に上記無機微粒子(B)が分散した状態で存在する。
【0028】
ここで、上記環状オレフィン系共重合体(A)中に上記無機微粒子(B)が分散した状態で存在するとは、例えば、環状オレフィン系共重合体(A)の海(マトリクス)の中に無機微粒子(B)が点在する状態をいう。より具体的には、例えば、点在する無機微粒子(B)の平均凝集粒子径(二次粒子径)が500nm以下、好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下である状態をいう。無機微粒子(B)の平均凝集粒子径(二次粒子径)は、例えば、電子顕微鏡により測定することができる。
【0029】
本発明に係る実施形態の環状オレフィン系樹脂組成物は、環状オレフィン系共重合体(A)と、上記の修飾剤で修飾された無機微粒子(B)を含むことにより、両者の相互作用によって、マトリクス内での無機微粒子(B)の分散性を良好にすることができる。これにより、得られる成形体及び光学部品において優れた透明性および高屈折率を実現することが可能となる。
【0030】
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物中の無機微粒子(B)の含有量は、当該環状オレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、得られる光学部品の屈折率をより一層向上させる観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、得られる光学部品の透明性や屈折率、機械的特性、無機微粒子(B)の分散性をより一層向上させる観点から、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
また、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物中の極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)および無機微粒子(B)の合計含有量は、当該環状オレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、得られる成形体の透明性および屈折率の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、特に好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
【0032】
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物において、当該環状オレフィン系樹脂組成物を用いて膜厚が100μm以上300μm以下のフィルムを作製したとき、上記フィルムの波長589nmにおける屈折率(nD)が好ましくは1.545以上であり、より好ましくは1.550以上であり、さらに好ましくは1.554以上であり、特に好ましくは1.560以上である。屈折率(nD)が上記範囲内であると、得られる光学部品の光学特性を良好に保ちつつ、厚みをより薄くすることができる。
【0033】
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物において、当該環状オレフィン系樹脂組成物を用いて成形体を作製したとき、上記成形体は耐溶剤性を有することが好ましい。耐溶剤性は、例えば、不溶分率(質量%)で評価することができ、不溶分率(質量%)は、環状オレフィン系樹脂組成物における無機微粒子(B)の含有率以上とすることができる。
なお、不溶分率(質量%)は例えば以下のように求めることができる。本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を用いて、膜厚100μmのフィルムを作製し、該フィルム0.3gを、フラスコ内に入れて精秤(Y(g))し、1質量%溶液となるようにトルエンを加え、25℃で24時間浸漬する。24時間後に該フィルムの入った溶剤を、メンブレンフィルター(孔径10μm)で濾過して不溶分を捕捉し、25℃で48時間乾燥させた後、不溶分の質量(Z(g))を測定し、以下の式に従って、不溶分率を算出することができる。
不溶分率(質量%)=(Z/Y)×100
【0034】
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物において、当該環状オレフィン系樹脂組成物を用いて成形体を作製したとき、上記成形体は耐摩耗性を有することが好ましい。耐摩耗性は、具体的には、以下のように評価することができる。まず、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を用いて、膜厚100μmのフィルムを作製する。続いて、該フィルムに、φ0.3mmのサファイア針を用い、荷重200gで傷を付け、磨耗した箇所の深さで評価を行なう。このとき、磨耗した箇所(傷)の深さが10μm未満であることが好ましく、5μm未満であることがより好ましい。
なお、磨耗した箇所の深さは、例えば、表面粗さ計で測定することができる。
【0035】
以下、各成分について具体的に説明する。
【0036】
(環状オレフィン系共重合体(A))
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)は、下記の[A-1]、[A-2]、[A-3]および[A-4]から選択される1種または2種以上を含むことが好ましい。
[A-1]炭素原子数が2~20のα-オレフィンと下記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体
[A-2]前記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体
[A-3]前記開環重合体または共重合体[A-2]の水素化物
[A-4]前記[A-1]、[A-2]または[A-3]のグラフト変性物
【0037】
[A-1]において、炭素原子数が2~20のα-オレフィンと下記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体における、炭素原子数が2~20のα-オレフィンは、直鎖状でも分岐状でもよい。このようなα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素原子数が2~20の直鎖状α-オレフィン;4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン等の炭素原子数が4~20の分岐状α-オレフィン等が挙げられる。これらの中でも、炭素原子数が2~4の直鎖状α-オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。このようなα-オレフィンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
[A-1]において、炭素原子数が2~20のα-オレフィンと下記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、上記炭素原子数が2~20のα-オレフィン由比の構成単位の含有量は、好ましくは30モル%以上88モル%以下、より好ましくは40モル%以上78モル%以下である。
上記α-オレフィン由来の構成単位の含有量が上記下限値以上であることにより、得られる光学部品の耐熱性や寸法安定性を向上させることができる。また、上記α-オレフィン由来の構成単位の含有量が上記上限値以下であることにより、得られる光学部品の透明性等を向上させることができる。
【0039】
式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンを以下に示す。
【0040】
【化16】
【0041】
上記式[I]中、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1である。なお、qが1の場合には、RおよびRは、それぞれ独立に、下記の原子または炭化水素基であり、qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。
【0042】
~R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基である。ここでハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
【0043】
また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基およびナフチル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい。
【0044】
さらに上記式[I]において、R15~R18がそれぞれ結合して(互いに共同して)単環または多環を形成していてもよく、しかもこのようにして形成された単環または多環は二重結合を有していてもよい。ここで形成される単環または多環の具体例を下記に示す。
【0045】
【化17】
【0046】
なお、上記例示において、1または2の番号が付された炭素原子は、上記式[I]においてそれぞれR15(R16)またはR17(R18)が結合している炭素原子を示している。また、R15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、例えば炭素原子数2~20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基の具体的な例としては、エチリデン基、プロピリデン基およびイソプロピリデン基を挙げることができる。
【0047】
【化18】
【0048】
上記式[II]中、pおよびqは0または正の整数であり、mおよびnは0、1または2である。またR~R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭化水素基またはアルコキシ基である。
【0049】
ハロゲン原子は、上記式[I]におけるハロゲン原子と同じ意味である。また、炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはアリール基およびアラルキル基等、具体的にはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基等が挙げられる。アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基等を挙げることができる。これらの炭化水素基およびアルコキシ基は、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい。
【0050】
ここで、RおよびR10が結合している炭素原子と、R13が結合している炭素原子またはR11が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよい。すなわち上記二個の炭素原子がアルキレン基を介して結合している場合には、RおよびR13で示される基またはR10およびR11で示される基が互いに共同して、メチレン基(-CH-)、エチレン基(-CHCH-)またはプロピレン基(-CHCHCH-)のうちのいずれかのアルキレン基を形成している。さらに、n=m=0のとき、R15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。この場合の単環または多環の芳香族環として、例えば下記のようなn=m=0のときR15とR12がさらに芳香族環を形成している基が挙げられる。
【0051】
【化19】
【0052】
ここで、qは上記式[II]におけるqと同じ意味である。
【0053】
上記のような式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、例えば、
【0054】
【化20】
(上記式中、1~7の数字は炭素の位置番号を示す。)およびこのビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンに炭化水素基が置換した誘導体等が挙げられる。この炭化水素基としては、例えば、5-メチル、5,6-ジメチル、1-メチル、5-エチル、5-n-ブチル、5-イソブチル、7-メチル、5-フェニル、5-メチル-5-フェニル、5-ベンジル、5-トリル、5-(エチルフェニル)、5-(イソプロピルフェニル)、5-(ビフェニル)、5-(β-ナフチル)、5-(α-ナフチル)、5-(アントラセニル)、5,6-ジフェニル等が挙げられる。
【0055】
さらに、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン、1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセン等のビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン誘導体等が挙げられる。
【0056】
さらに、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、例えば、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン、2-メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン、5-メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン等のトリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン誘導体、トリシクロ[4.4.0.12,5]-3-ウンデセン、10-メチルトリシクロ[4.4.0.12,5]-3-ウンデセン等のトリシクロ[4.4.0.12,5]-3-ウンデセン誘導体、
【0057】
【化21】
【0058】
(上記式中、1~12の数字は炭素の位置番号を示す。)およびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンに炭化水素基が置換した誘導体等が挙げられる。この炭化水素基としては、例えば、8-メチル、8-エチル、8-プロピル、8-ブチル、8-イソブチル、8-ヘキシル、8-シクロヘキシル、8-ステアリル、5,10-ジメチル、2,10-ジメチル、8,9-ジメチル、8-エチル-9-メチル、11,12-ジメチル、2,7,9-トリメチル、2,7-ジメチル-9-エチル、9-イソブチル-2,7-ジメチル、9,11,12-トリメチル、9-エチル-11,12-ジメチル、9-イソブチル-11,12-ジメチル、5,8,9,10-テトラメチル、8-エチリデン、8-エチリデン-9-メチル、8-エチリデン-9-エチル、8-エチリデン-9-イソプロピル、8-エチリデン-9-ブチル、8-n-プロピリデン、8-n-プロピリデン-9-メチル、8-n-プロピリデン-9-エチル、8-n-プロピリデン-9-イソプロピル、8-n-プロピリデン-9-ブチル、8-イソプロピリデン、8-イソプロピリデン-9-メチル、8-イソプロピリデン-9-エチル、8-イソプロピリデン-9-イソプロピル、8-イソプロピリデン-9-ブチル、8-クロロ、8-ブロモ、8-フルオロ、8,9-ジクロロ、8-フェニル、8-メチル-8-フェニル、8-ベンジル、8-トリル、8-(エチルフェニル)、8-(イソプロピルフェニル)、8,9-ジフェニル、8-(ビフェニル)、8-(β-ナフチル)、8-(α-ナフチル)、8-(アントラセニル)、5,6-ジフェニル等が挙げられる。
【0059】
さらに、上記式[I]または[II]で示される環状オレフィンとしては、例えば、(シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物)とシクロペンタジエンとの付加物、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ペンタデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4,10-ペンタデカジエン等のペンタシクロペンタデカジエン化合物、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ヘキサデセンおよびその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセンおよびその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-5-エイコセンおよびその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]-5-ヘンエイコセンおよびその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセンおよびその誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.02,10.03,8.012,21.014,19]-5-ペンタコセンおよびその誘導体、ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]-6-ヘキサコセンおよびその誘導体等が挙げられる。
【0060】
【化22】
【0061】
上記式[III]中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3である。mは0または1であることが好ましく、1であることがより好ましい。nは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。qは1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
18~R31はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R18~R31はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
またq=1のときR28とR29、R29とR30、R30とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR28とR28、R28とR29、R29とR30、R30とR31、R31とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0062】
【化23】
【0063】
上記式[IV]中、qは1、2または3であり、1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
32~R39はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R32~R39はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
またq=1のときR36とR37、R37とR38、R38とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR36とR36、R36とR37、R37とR38、R38とR39、R39とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0064】
【化24】
【0065】
上記式[V]中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2である。nは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。qは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
~R17はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R10~R17のうち一つは結合手であり、R15が結合手であることが好ましい。
~R17はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
またq=0のときR10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=1または2のときR10とR11、R11とR17、R17とR17、R17とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR16、R16とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
上記式[V]の中でも、下記式[V-1A]で示される化合物が好ましい。
【0066】
【化25】
【0067】
上記式[V-1A]中、nは0、1または2である。nは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。また、上記式[V-1A]中、R~R14はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、もしくは、ハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基である。
【0068】
また、式[V]及び[V-1A]において、炭素原子数1~20の炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基等のアリール基またはアラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はフッ素原子を除くハロゲン原子、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基またはアミノ基で置換されていてもよい。
【0069】
本実施形態に係る環状オレフィン由来の構成単位は、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセンおよびヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン誘導体、ベンゾノルボルナジエン、インデンノルボルネンおよびメチルフェニルノルボルネンから選択される少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位を含むことが好ましく、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンから選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する繰り返し単位を含むことがより好ましく、本実施形態に係る光学部品の屈折率をさらに向上させる観点から、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンに由来する繰り返し単位を含むことがさらに好ましい。
【0070】
なお、上記式[I][II][III][IV]又は[V]で示される環状オレフィンの具体例を上記に示したが、これら化合物のより具体的な構造例としては、特開平6-228380号の段落番号[0038]~[0058]に示された環状オレフィンの構造例や、特開2005-330465号の段落番号[0027]~[0029]に示された環状オレフィンの構造例、特開平7-145213号公報の段落番号[0032]~[0054]に示された環状オレフィンの構造例等を挙げることができる。本実施形態に係るランダム共重合体(A1)は、上記環状オレフィンから導かれる単位を2種以上含有していてもよい。
【0071】
上記式[I][II][III][IV]又は[V]で示される環状オレフィンは、例えば、シクロペンタジエンと対応する構造を有するオレフィン類とをディールス・アルダー反応させることによって製造することができる。
【0072】
本実施形態に係るランダム共重合体(A1)において、上記式[I][II][III][IV]又は[V]で示される環状オレフィンの少なくとも一部は下記式[VI][VII][VIII][IX]または[X]で示される繰り返し単位を構成していると考えられる。
【0073】
【化26】
【0074】
上記式[VI]において、n、m、q、R~R18、RおよびRは上記式[I]と同じ意味である。
【0075】
【化27】
【0076】
上記式[VII]において、n、m、p、qおよびR~R19は上記式[II]と同じ意味である。
【0077】
【化28】
【0078】
上記式[VIII]において、n、m、qおよびR18~R31は上記式[III]と同じ意味である。
【0079】
【化29】
【0080】
上記式[IX]において、qおよびR32~R39は上記式[IV]と同じ意味である。
【0081】
【化30】
【0082】
上記式[X]において、n、qおよびR~R17は上記式[V]と同じ意味である。
【0083】
本実施形態の環状オレフィン系共重合体は、[A-1]炭素原子数が2~20のα-オレフィンと上記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体、[A-2]上記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンの開環重合体または共重合体、[A-3]上記開環重合体または共重合体[A-2]の水素化物、[A-4]上記[A-1]、[A-2]または[A-3]のグラフト変性物から選択される1種又は2種以上を含むことが好ましい。得られる光学部品の耐熱性や寸法安定性を向上させる観点から、本実施形態の環状オレフィン系共重合体は、炭素原子数が2~20のα-オレフィンに由来する繰り返し単位を含むことが好ましく、[A-1]炭素原子数が2~20のα-オレフィンと上記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体を含むことがより好ましい。
【0084】
上記ランダム共重合体は、上記ランダム共重合体を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、上記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィン由来の構成単位の含有量は、好ましくは10モル%以上60モル%以下、より好ましくは20モル%以上50モル%以下である。
上記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィン由来の構成単位の含有量が上記下限値以上であることにより、得られる光学部品の透明性等を向上させることができる。また、上記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィン由来の構成単位の含有量が上記上限値以下であることにより、得られる光学部品の耐熱性や寸法安定性を向上させることができる。
【0085】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)のガラス転移温度は、得られる光学部品の透明性および屈折率を良好に保ちつつ、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは110℃~200℃であり、より好ましくは115℃~190℃、さらに好ましくは120℃~180℃である。
【0086】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)の極限粘度[η](135℃デカリン中)は、例えば0.05~5.0dl/gであり、好ましくは0.2~4.0dl/gであり、さらに好ましくは0.3~2.0dl/g、特に好ましくは0.4~2.0dl/gである。
極限粘度[η]が上記下限値以上であると、得られる成形体の機械的強度を向上させることができる。また、極限粘度[η]が上記上限値以下であると、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物の成形性を向上させることができる。
【0087】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)は、極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)を含む極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)を含むことが好ましく、上記極性基は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基およびアミノ基から選択される1種または2種以上であることが好ましい。また、上記極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)は、上記環状オレフィン系共重合体(A)の高分子鎖の主鎖内部または側鎖に位置していることが好ましい。マトリクスである環状オレフィン系共重合体(A)が高分子鎖の主鎖内部または側鎖に上記の極性基を有することにより、上記の極性基と無機微粒子(B)との相互作用により、マトリクス内での無機微粒子(B)の分散性をより良好にすることができる。これにより、得られる光学部品においてさらなる高透明性および高屈折率を実現することが可能となる。
【0088】
また、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を用いて成形体を作成した際の、耐溶剤性、及び、耐摩耗性の観点においても、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)は上記の極性基を有することが好ましい。本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)が上記の極性基を有することにより、該環状オレフィン系共重合体(A)を含む環状オレフィン系樹脂組成物を用いて成形体を作成した際の耐溶剤性、及び、耐摩耗性が向上する理由は必ずしも明らかではないが、上記環状オレフィン系共重合体(A)と無機微粒子(B)を修飾する修飾剤がネットワークを形成されるためと推察される。
【0089】
上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)中の上記極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)の含有量は、環状オレフィン系共重合体(A)のマトリクス内での分散性を向上させ、得られる光学部品の透明性をより一層向上させる観点から、前記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、0.1モル%以上であることが好ましく、0.2モル%以上であることがより好ましく、0.5モル%以上であることがさらに好ましく、得られる光学部品の屈折率や耐湿性、耐熱性をより一層向上させる観点から、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0090】
上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)は、上記極性基を有するモノマーと環状オレフィンとのランダム共重合体(A1)および環状オレフィン系重合体に上記極性基を有するモノマーをグラフトまたはグラフト重合させたグラフト共重合体(A2)から選択される一種または2種以上を含むことが好ましい。
ここで、「グラフト」とは、主鎖である幹ポリマーに、極性基を有するモノマーを導入することをいう。「グラフト重合させた」とは、主鎖である幹ポリマーに、主鎖とは異なる重合体からなる枝ポリマーを導入することをいう。
【0091】
<ランダム共重合体(A1)>
上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)は、炭素原子数が2~20のα-オレフィン由来の構成単位(a1)、上記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィン由来の構成単位(a2)および前記極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)を有するランダム共重合体(A1)を含むことが好ましい。
【0092】
本実施形態に係る炭素原子数が2~20であるα-オレフィンは直鎖状でも分岐状でもよい。このようなα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素原子数が2~20の直鎖状α-オレフィン;4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン等の炭素原子数が4~20の分岐状α-オレフィン等が挙げられる。これらの中でも、炭素原子数が2~4の直鎖状α-オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。上記ランダム共重合体(A1)中の上記α-オレフィン由来の構成単位(a1)はエチレンに由来する繰り返し単位を含むことが好ましい。このようなα-オレフィンは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
本実施形態に係るランダム共重合体(A1)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、上記α-オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量は、好ましくは30モル%以上88モル%以下、より好ましくは40モル%以上78モル%以下である。
上記α-オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量が上記下限値以上であることにより、得られる光学部品の耐熱性や寸法安定性を向上させることができる。また、上記α-オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量が上記上限値以下であることにより、得られる光学部品の透明性等を向上させることができる。
【0094】
本実施形態に係るランダム共重合体(A1)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、上記α-オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量は、好ましくは30モル%以上88モル%以下、より好ましくは40モル%以上78モル%以下である。
上記α-オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量が上記下限値以上であることにより、得られる光学部品の耐熱性や寸法安定性を向上させることができる。また、上記α-オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量が上記上限値以下であることにより、得られる光学部品の透明性等を向上させることができる。
【0095】
本実施形態に係る環状オレフィン由来の構成単位(a2)は脂環式構造を有し、上記式[I][II][III][IV]又は[V]で示される環状オレフィン由来の構成単位であることが好ましい。
【0096】
上記式[I][II][III][IV]又は[V]で示される環状オレフィンの具体例も上記の通りであり、上記ランダム共重合体(A1)中の上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)が、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンから選ばれる1種または2種以上の化合物に由来する繰り返し単位を含むことが特に好ましい。
【0097】
本実施形態に係る極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基およびアミノ基から選択される少なくとも一種の極性基を有するモノマー由来の構成単位の構成単位であることが好ましい。
極性基を有するモノマーとしては上記の極性基を有するモノマーであれば特に限定されないが、例えば、下記式(10)により示されるモノマーが挙げられる。
CH=CH-R-Xp (10)
上記式(10)中、pは1以上3以下の正の整数、好ましくは1である。
は炭素数0以上の炭化水素基、好ましくは2以上の炭化水素基、より好ましくは炭素数3以上20以下の炭化水素基、より好ましくは炭素数5以上15以下の炭化水素である。
Xはカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基およびアミノ基から選択される少なくとも一種の極性基であり、より好ましくはカルボキシル基、ヒドロキシル基および酸無水物基から選択される少なくとも一種の極性基であり、さらに好ましくはカルボキシル基およびヒドロキシル基から選択される少なくとも一種の極性基である。
【0098】
上記極性基を有するモノマーの具体例としては、特開平2-51510号公報の11頁~17頁に記載されている化合物のうち、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基およびアミノ基から選択される少なくとも一種の極性基を有する化合物等が挙げられる。
これらの極性基を有するモノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、環状オレフィンとの共重合性に優れる観点から、アクリル酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、7-オクテン酸、8-ノネン酸、9-デセン酸、10-ウンデセン酸(ウンデシレン酸)、11-ドデセン酸、2-プロペン-1-オール、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、6-ヘプテン-1-オール、7-オクテン-1-オール、8-ノネン-1-オール、ウンデセノールおよび11-ドデセン-1-オールから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、アクリル酸、4-ペンテン酸、6-ヘプテン酸、9-デセン酸、10-ウンデセノールおよびウンデシレン酸から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、10-ウンデセノールおよびウンデシレン酸から選ばれる少なくとも1種を含むことが特に好ましい。
【0099】
本実施形態に係るランダム共重合体(A1)において、ランダム共重合体(A1)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)の含有量がランダム共重合体(A1)のマトリクス内での分散性を向上させ、得られる光学部品の透明性をより一層向上させる観点から、0.1モル%以上であることが好ましく、0.2モル%以上であることがより好ましく、0.5モル%以上であることがさらに好ましく、得られる光学部品の屈折率や耐湿性、耐熱性をより一層向上させる観点から、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0100】
本実施形態に係るランダム共重合体(A1)は、炭素原子数が2~20のα-オレフィン、上記式[I][II][III][IV]又は[V]で示される環状オレフィンおよび上記極性基を有するモノマーを用いて、例えば、特開平2-51510号公報や特許第3817015号公報、特許第5594712号公報に記載の製造方法により製造することができる。
【0101】
<グラフト共重合体(A2)>
上記極性基含有環状オレフィン系共重合体(A-a)は、上記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィン由来の構成単位(a2)を有する環状オレフィン系重合体に上記極性基を有するモノマーをグラフトまたはグラフト重合させたグラフト共重合体(A2)を含む事が好ましい。また、上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)を有する環状オレフィン系重合体は、上記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンの開環重合体であってもよいし、炭素原子数が2~20のα-オレフィンと上記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンとのランダム共重合体であってもよい。
【0102】
上記式[I]、[II]、[III]、[IV]又は[V]で示される環状オレフィンとしては、上記ランダム共重合体(A1)で説明したα-オレフィンと同様のものを用いることができる。そのため、ここでは説明を省略する。
グラフト共重合体(A2)中の上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)は、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテンおよびテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンから選ばれる一種または2種以上の化合物に由来する繰り返し単位を含む事が特に好ましい。
【0103】
本実施形態に係るグラフト共重合体(A2)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)の含有量は、好ましくは10モル%以上60モル%以下、より好ましくは20モル%以上50モル%以下である。
上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)の含有量が上記下限値以上であることにより、得られる光学部品の透明性等を向上させることができる。また、上記環状オレフィン由来の構成単位(a2)の含有量が上記上限値以下であることにより、得られる光学部品の耐熱性や寸法安定性を向上させることができる。
【0104】
上記グラフト共重合体(A2)は、炭素原子数が2~20のα-オレフィン由来の構成単位(a1)をさらに有することが好ましい。
炭素原子数が2~20のα-オレフィンとしては、上記ランダム共重合体(A1)で説明したα-オレフィンと同様のものを用いることができる。そのため、ここでは説明を省略する。
本実施形態に係るグラフト共重合体(A2)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、上記α-オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量は、好ましくは30モル%以上88モル%以下、より好ましくは40モル%以上78モル%以下である。
上記α-オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量が上記下限値以上であることにより、得られる光学部品の耐熱性や寸法安定性を向上させることができる。また、上記α-オレフィン由来の構成単位(a1)の含有量が上記上限値以下であることにより、得られる光学部品の透明性等を向上させることができる。
【0105】
本実施形態に係るグラフト共重合体(A2)において、極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、酸無水物基、エポキシ基およびアミノ基から選択される少なくとも一種の極性基を有するモノマー由来の構成単位である。
本実施形態に係るグラフト共重合体(A2)における極性基を有するモノマーとしては上記の極性基を有するモノマーであれば特に限定されないが、例えば、上記ランダム共重合体(A1)で説明した極性基を有するモノマーや、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
これらの極性基を有するモノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、環状オレフィン系重合体へのグラフトのし易さの観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0106】
本実施形態に係るグラフト共重合体(A2)において、グラフト共重合体(A2)を構成する全構成単位の合計を100モル%としたとき、極性基を有するモノマー由来の構成単位(a3)の含有量が、グラフト共重合体(A2)のマトリクス内での分散性を向上させ、得られる光学部品の透明性をより一層向上させる観点から、0.1モル%以上であることが好ましく、0.2モル%以上であることがより好ましく、0.5モル%以上であることがさらに好ましく、得られる光学部品の屈折率や耐湿性、耐熱性をより一層向上させる観点から、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、2モル%以下であることが特に好ましい。
【0107】
本実施形態に係るグラフト共重合体(A2)は、例えば、特開平5-320258号公報や特公平7-13084号公報等に記載の製造方法により製造した環状オレフィン系重合体に対し、例えば特開2016-056318号公報や国際公開第2008/059938号、国際公開第2010/050437号等に記載の方法で、上記極性基を有するモノマーをグラフトまたはグラフト重合することにより得ることができる。
【0108】
(無機微粒子(B))
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、表面が修飾剤により修飾された無機微粒子(B)を含み、修飾剤が、リン酸エステル、有機ホスホン酸、ホスホン酸エステル、カルボン酸、スルホン酸、アミノ基を有する炭化水素化合物、シランカップリング剤からなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【0109】
上記修飾剤は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
-X (1)
【0110】
上記式(1)中、Rは、炭素数3~18の炭化水素基を表す。炭素数3~18の炭化水素基としては、直鎖又は分岐状のアルキル基、直鎖状又は分岐状のアルケニル基、直鎖又は分岐状のアルキニル基、脂環式構造を有する炭化水素基、芳香環構造を有する炭化水素基等が挙げられる。修飾された無機粒子の環状オレフィン系共重合体(A)への分散性を特に良好にして、透明性に優れた樹脂組成物を得る観点からは、これらの中でも、環構造を含まない鎖状の炭素数3~18の炭化水素基が好ましく、直鎖状の炭素数3~18の炭化水素基がより好ましく、直鎖状の炭素数12~18の炭化水素基が特に好ましい。
【0111】
Xは、無機微粒子(B)の表面との結合を生成させる官能基又は前記官能基を有する原子団を表す。
修飾剤が、上記無機微粒子(B)の表面との結合を生成させる官能基を有すると、これらの基と無機粒子表面に存在する官能基(例えば、水酸基やメルカプト基等)との間で縮合反応が起き、その表面が修飾剤により修飾される。
【0112】
ここで、無機微粒子(B)の表面との結合を生成させる官能基としては、水酸基、カルボキシル基、ヒドロヒドロキシホスホリル基、ホスホノ基、スルフィノ基、スルホ基、チコキシ基等の加水分解性基等が挙げられる。
【0113】
また、前記無機粒子の表面との結合を生成させる官能基を有する原子団としては、下記式(2)~(4)で示される原子団が挙げられる。
【0114】
【化31】
【0115】
式(2)~(4)中、Yは水酸基又は加水分解性基を表し、Z、Zは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1~18の炭化水素基、又は炭素数1~18の炭化水素オキシ基を表す。*は、Rとの結合手を表す。
【0116】
、Zの炭素数1~18の炭化水素基としては、Rで表される基;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ビニル基、アリル基、フェニル基等の炭素数1~18の炭化水素基;等が挙げられる。
、Zの炭素数1~18の炭化水素オキシ基としては、-ORで表される基;メトキシ基、エトキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、フェノキシ基等の炭素数1~18の炭化水素オキシ基;等が挙げられる。
【0117】
また、修飾された無機粒子を透明樹脂に良好に分散させるには、二座配座、或いは三座配座で無機粒子に修飾剤が修飾することが好ましい。そのため、式(2)~(4)中のZは水素原子あるいは水酸基であることがより好ましい。
【0118】
本実施形態において修飾剤として用いられる化合物の具体例としては、ブタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、リノール酸、シクロヘキサンカルボン酸、1-アダマンタンカルボン酸、リン酸ドデセニル、リン酸トリデセニル、リン酸テトラデセニル、リン酸ペンタデセニル、リン酸ヘキサデセニル、リン酸ヘプタデセニル、リン酸オクタデセニル、リン酸オレイル、リン酸オクタデカジエニル、リン酸オクタデカトリエニル、リン酸ジオレイル等のリン酸エステル;ドデセニルホスホン酸、トリデセニルホスホン酸、テトラデセニルホスホン酸、ペンタデセニルホスホン酸、ヘキサデセニルホスホン酸、ヘプタデセニルホスホン酸、オクタデセニルホスホン酸、オレイルホスホン酸、オクタデカジエニルホスホン酸、オクタデカトリエニルホスホン酸、ジオレイルホスホン酸等の有機ホスホン酸;ドデセニルホスホナート、トリデセニルホスホン酸、テトラデセニルホスホン酸、ペンタデセニルホスホン酸、ヘキサデセニルホスホナート、ヘプタデセニルホスホナート、オクタデセニルホスホナート、オレイルホスホナート等のホスホン酸エステル;ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ドデセニルトリメトキシシラン、ペンタデセニルトリメトキシシラン等のシラン化合物;等が挙げられる。
修飾剤として用いられる化合物は、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0119】
上記修飾剤は、リン酸エステル、カルボン酸から選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましく、炭素数12~18の炭化水素基を含むリン酸エステル、炭素数12~18の炭化水素基を含むカルボン酸から選ばれる1種または2種以上を含むことが特に好ましい。環状オレフィン系共重合体(A)と、炭素数12~18の炭化水素基を含むリン酸エステル、炭素数12~18の炭化水素基を含むカルボン酸から選ばれる1種または2種以上を含む修飾剤で修飾された無機微粒子(B)を含むことにより、両者の相互作用によって、マトリクス内での無機微粒子(B)の分散性をより良好にすることができる。
【0120】
本実施形態に係る無機微粒子(B)としては環状オレフィン系共重合体(A)のマトリクス内に微分散するものであれば特に限定されないが、得られる光学部品の屈折率の向上効果に優れる点から、ジルコニア;チタニア;アルミナ;Zr、Ti、Hf、Al、Znおよびランタノイド類等の酸化物または窒化物;複合金属の酸化物または窒化物;等が挙げられる。これらの中でもジルコニア、チタニアおよびアルミナが好ましい。これらは一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してよい。これらの中でも、屈折率の向上効果により一層優れる点から、ジルコニアおよびチタニアが好ましく、環状オレフィン系共重合体(A)、特に極性基含有環状オレフィン系共重合体(A)の劣化を防止できる観点から、ジルコニアがより好ましい。
【0121】
無機微粒子(B)の平均粒子経D50は、環状オレフィン系共重合体(A)のマトリクス内での分散性を向上させ、得られる光学部品の透明性をより一層向上させる観点から、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましく、60nm以下がさらに好ましく、20nm以下が特に好ましい。
無機微粒子(B)の平均粒子経D50は特に限定されないが、例えば1nm以上である。
無機微粒子(B)の平均粒子経D50は、例えば、動的光散乱法により測定することができる。
【0122】
表面が修飾剤により修飾された無機微粒子(B)を製造する方法は特に限定されないが、例えば以下のような方法で得ることができる。
【0123】
まず、無機微粒子(B)を水中に分散させた、無機微粒子(B)の水分散液を得る。続いて、上記無機微粒子(B)の水分散液と、上記表面修飾剤とを混合する。この時、上記表面修飾剤は、上記表面修飾剤単体で加えることもできるし、あらかじめ有機溶媒と混合した表面修飾剤を加えることもできる。
【0124】
ここで、無機微粒子(B)と、表面修飾剤の配合比を調整することで、無機微粒子(B)表面を修飾する修飾剤の修飾量を調整することができる。無機微粒子(B)表面を修飾する修飾剤の修飾量は、特に限定されないが、無機微粒子(B)の量を100としたとき、20質量%以上40質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
無機微粒子(B)表面を修飾する修飾剤の修飾量を上記数値範囲内にすることにより、マトリクス内での無機微粒子(B)の分散性をより良好にすることができ、且つ、無機微粒子(B)を分散させることによる屈折率向上の効果を十分に得ることができる。
【0125】
続いて、得られた無機微粒子(B)の水分散液と表面修飾剤を含む混合溶液から、任意の方法で水を除去し、有機溶媒に置換する。ロータリーエバポレーター等により、水を除去する場合、必要に応じて得られた無機微粒子(B)の水分散液と表面修飾剤を含む混合溶液に有機溶媒を添加し、エバポレーションによって、分散媒を除去する工程を繰り返し、無機微粒子(B)が有機溶媒に分散した、無機微粒子(B)分散溶液を得ることができる。
【0126】
(その他の成分)
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、フェノール系安定剤、高級脂肪酸金属塩、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、塩酸吸収剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、スリップ剤、核剤、可塑剤、難燃剤、リン系安定剤等を本発明の目的を損なわない程度に配合することができ、その配合割合は適宜量である。
【0127】
(環状オレフィン系樹脂組成物の調製方法)
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物は、環状オレフィン系共重合体(A)および無機微粒子(B)を、押出機およびバンバリーミキサー等の公知の混練装置を用いて混練する方法;環状オレフィン系共重合体(A)および無機微粒子(B)を共通の溶媒に溶解または分散させて混合した後に溶媒を蒸発させる方法;等の方法により得ることができる。
これらの中でも、得られる光学部品の透明性をより一層良好にできる観点から、環状オレフィン系共重合体(A)および無機微粒子(B)を共通の溶媒に溶解または分散させて混合した後に溶媒を蒸発させる方法が好ましい。
【0128】
[成形体および光学部品]
次に、本発明に係る実施形態の成形体について説明する。
本実施形態に係る成形体は本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を用いて成形されている。
本実施形態に係る成形体は本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物により構成されているため、透明性および高屈折率を有している。そのため像を高精度に識別する必要がある光学系において、光学部品として好適に用いることができる。光学部品とは光学系機器等に使用される部品であり、具体的には、眼鏡レンズ、fθレンズ、ピックアップレンズ、撮像用レンズ、イメージセンサーに用いるレンズ等のセンサー用レンズ、プリズム、プロジェクタレンズ、導光板、車載カメラレンズ等が挙げられる。本実施形態に係る光学部品は、特に撮像用レンズとして好適に用いることができる。
【0129】
本実施形態に係る成形体を光学用途に使用する場合、光線を透過させることが必須であるので、光線透過率が良好であることが好ましい。光線透過率は用途に応じて分光光線透過率または全光線透過率により規定される。
【0130】
全光線、あるいは複数波長域での使用が想定される場合、全光線透過率が良いことが必要であり、反射防止膜を表面に設けていない状態での全光線透過率は85%以上、好ましくは88~93%である。全光線透過率が85%以上であれば必要な光量を確保することができる。全光線透過率の測定方法は公知の方法が適用でき、測定装置等も限定されないが、例えば、ASTM D1003に準拠して、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を厚み3mmのシートに成形し、ヘーズメーターを用いて、本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を成形して得られるシートの全光線透過率を測定する方法等が挙げられる。
【0131】
また、特定波長域のみで利用される光学系、例えば、レーザー光学系の場合、全光線透過率が高くなくても、該波長域での分光光線透過率が良ければ使用することができる。この場合、使用波長における、反射防止膜を表面に設けていない状態での分光光線透過率は好ましくは85%以上、さらに好ましくは86%~93%である。分光光線透過率が85%以上であれば必要な光量を確保することができる。また、測定方法および装置としては公知の方法が適用でき、具体的には分光光度計を例示することができる。
【0132】
また、本実施形態に係る成形体は、450nm~800nmの波長の光の光線透過率に優れる。
なお、光学部品として用いる場合、公知の反射防止膜を表面に設けることにより、光線透過率をさらに向上させることができる。
【0133】
本実施形態に係る成形体は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状等の種々の形態で使用することができる。
本実施形態に係る環状オレフィン系樹脂組成物を成形して成形体を得る方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。その用途および形状にもよるが、例えば、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、カレンダー成形、発泡成形等が適用可能である。これらの中でも、成形性、生産性の観点から射出成形法が好ましい。また、成形条件は使用目的、または成形方法により適宜選択されるが、例えば射出成形における樹脂温度は、通常150℃~400℃、好ましくは200℃~350℃、より好ましくは230℃~330℃の範囲で適宜選択される。
【0134】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例
【0135】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何等制限されるものではない。
【0136】
<触媒の合成>
(シクロペンタジエニル)チタン(ジ-t-ブチルケチミド)ジクロライド(CpTiNCtBuCl)は、特許第4245801号公報に従って合成した。
【0137】
<環状オレフィン系共重合体(A)の製造>
[製造例1]
攪拌装置を備えた容積2000mlのガラス製反応容器に不活性ガスとして窒素を100NL/hの流量で30分間流通させた後、シクロヘキサン(シクロヘキサン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンおよびウンデシレン酸の合計が1000mlとなる量)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(以下、テトラシクロドデセンとも呼ぶ。)およびウンデシレン酸を表1に記載の割合で加えた後に、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(26.4mmol、濃度1.0mM/mL)を加えた。次いで回転数600rpmで重合溶媒を攪拌しながら溶媒温度を50℃に昇温した。溶媒温度が所定の温度に達した後、流通ガスを窒素からエチレンに切り替え、エチレンを100NL/hの供給速度で反応容器に流通させ、10分経過した後に、(シクロペンタジエニル)チタン(ジ-t-ブチルケチミド)ジクロライドのトルエン溶液(0.040mmol)およびメチルアルミノキサン(12mmol)のトルエン溶液反応をガラス製反応容器に添加し、重合を開始させた。
20分間経過した後、メタノール5mlおよびアセチル酢酸をアルミニウム濃度に対して20当量となるよう添加して重合を停止させ、エチレン、テトラシクロドデセンおよびウンデシレン酸の共重合体を含む重合溶液を得た。その後、反応容器に1.0mol/Lの塩酸水溶液を500ml加え、50℃で1時間600rpmで撹拌した。油層と水層を分液した後、油層を体積で約3倍のアセトンを入れたビーカーに攪拌下加えて共重合体を析出させ、さらに析出した共重合体を濾過により濾液と分離した。得られた溶媒を含む重合体を130℃で10時間減圧乾燥を行ったところ、白色パウダー状のエチレン・テトラシクロロデセン・ウンデシレン酸共重合体(極性基を含有する環状オレフィン系共重合体(A-1))3.79gが得られた。
【0138】
【表1】
【0139】
[製造例2]
三井化学社製APL6015T(100質量部)に、無水マレイン酸(和光純薬社製)1.5質量部およびt-ブチルパーオキシベンゾエート(日本油脂社製、商品名パーブチルZ)1.5質量部をアセトンに溶解させた溶液をブレンドした。その後、二軸混練機(株式会社テクノベル製、KZW15)を用いて樹脂温度250℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量25g/分にて溶融変性を行った。押出しの際、ラジカル開始剤、溶剤および未反応の無水マレイン酸は真空脱気した。押出された溶融状態のストランドは冷却後にペレット化して極性基を含有する環状オレフィン系共重合体(A-2)を得た。
【0140】
<表面修飾ジルコニアの製造>
以下の方法で、ブタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ドデシルリン酸により表面修飾された表面修飾ジルコニアを製造した。
スターラーチップをセットした200mLナスフラスコに、処理されるジルコニアに対して23質量%に相当する量の各種の疎水化表面修飾剤をとり、非水溶性有機溶媒としてのトルエン42mL、両溶性有機溶媒であるメタノール30mLを加えたものに、ジルコニア微粒子水分散液(ジルコニア含有量30質量%)3mLを加えて混合した。ジルコニア微粒子水分散液としては堺化学工業社製(SZR-W)を用いた。得られた混合溶液においては、両溶性有機溶媒であるメタノールに非水溶性有機溶媒のトルエンと水が溶解して均一な液相が形成されると共に、ジルコニア微粒子に起因すると思われる白濁を生じていた。
【0141】
上記で得られる混合液を1時間室温で攪拌した後、ロータリーエバポレーターにより3~5mL程度になるまで分散媒を蒸発除去した。分散媒の蒸発除去は、混合液を室温に保ちつつ液相内での突沸が生じない程度の圧力に雰囲気を減圧することにより行った。
【0142】
初回の分散媒の蒸発除去後にナスフラスコに残留した混合液は白濁を有し、液相が2相に分離していた。その混合液に、更にメタノール30mL、トルエン42mLを加えて再び界面がない白濁した分散液とし、再度3~5mL程度になるまでエバポレーションを行う操作を行った。当該操作を概ね数回重ねることにより、使用した表面修飾剤の種類や量によっては分散液を白濁した状態から無色透明へと変化させ、残留する液相を単相とすることができた。本実施例では5~6回の操作により、水/メタノール/トルエン混合溶媒からトルエンのみの溶媒に置換してジルコニア微粒子のトルエン分散液を得た。
ジルコニア微粒子のトルエン分散液からエバポレーションによりトルエンを除去後、25℃で24時間真空乾燥し、白色固体のジルコニア微粒子を得た。得られたジルコニア微粒子をトルエン中に再分散させ、動的光散乱(DLS)により粒子径を測定した。ラウリン酸修飾ジルコニア微粒子の平均粒子径は18.4nmであった。
【0143】
<実施例及び比較例>
以下の方法で環状オレフィン系重合体/ジルコニアナノ粒子複合化フィルムを作成した。また、下記の方法によって各種物性を測定または評価した。得られた結果を表2に示す。
[環状オレフィン系重合体/ジルコニアナノ粒子複合化フィルムの作製]
製造例1~2で合成した環状オレフィン系共重合体A-1及びA-2、並びに、三井化学社製APL6509T(極性基を含まない環状オレフィン系共重合体A-3)をシクロヘキサンにそれぞれ溶解させて5質量%の溶液をそれぞれ調製した。そこに、上記の方法で得られた、ブタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ドデシルリン酸により表面修飾された表面修飾ジルコニアを用いて調製した5質量%シクロヘキサン溶液を、ジルコニアナノ粒子が重合体に対して表2の割合になるように加え、マグネチックスターラーで室温で1時間撹拌し、ガラス板に流涎させ、バーコートした。25℃で24時間乾燥させた後、80℃で15時間真空乾燥させて溶媒を除去し、膜厚100μmの環状オレフィン系重合体/ジルコニアナノ粒子複合化フィルムをそれぞれ得た。
【0144】
[全光線透過率]
スガ試験機株式会社製のダブルビーム方式ヘーズコンピューターHZ-2を用いて、JIS K-7105に基づいて全光線透過率を測定し、以下の基準で評価した。
全光線透過率の評価
◎:90%以上
○:80%以上90%未満
×:80%未満
【0145】
[ガラス転移温度Tg(℃)]
島津サイエンス社製、DSC-6220を用いてN(窒素)雰囲気下で測定した。常温から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した後に5分間保持し、次いで10℃/分の降温速度で-20℃まで降温した後に5分間保持した。そして10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する際の吸熱曲線から極性基含有環状オレフィン系共重合体のガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0146】
[屈折率]
屈折率・膜厚測定装置(メトリコン社製、プリズムカプラー Model 2010/M)を用いて、波長589nmにおける屈折率(nD)を測定した。
【0147】
[耐溶剤性(トルエン)の評価]
実施例、比較例で得られた膜厚100μmの環状オレフィン系重合体/ジルコニアナノ粒子複合化フィルム0.3gを、フラスコ内に入れて精秤(Y(g))し、1質量%溶液となるようにトルエンを加え、25℃で24時間浸漬した。メンブレンフィルター(孔径10μm)で濾過して不溶分を捕捉し、25℃で48時間乾燥させた後、不溶分の質量(Z(g))を測定した。以下の式に従って、不溶分率を算出し、以下の基準で評価した。
不溶分率(質量%)=(Z/Y)×100
不溶分率(質量%)の評価
○:不溶分率≧ジルコニアの含有率(質量%)
×:不溶分率<ジルコニアの含有率(質量%)
【0148】
ここで、不溶分には、樹脂とネットワークを形成しているジルコニアが含まれるものと考えられる。すなわち、○(不溶分率≧ジルコニアの含有率(質量%))であるということは、樹脂とジルコニアが十分にネットワークを形成したため、フィルターを通過しなかったことを示し、×(不溶分率<ジルコニアの含有率(質量%))は、樹脂とジルコニアが十分にネットワークを形成していないため、樹脂とジルコニアがフィルターを通過したことを示す。なお、環状オレフィン系重合体単独及びジルコニアナノ粒子単独では、メンブレンフィルター(孔径10μm)を通過し、捕捉される不溶分はないことが確認された。
【0149】
[耐摩耗性の評価]
実施例、比較例で得られた膜厚100μmの環状オレフィン系重合体/ジルコニアナノ粒子複合化フィルムに、サファイア針φ0.3mm、荷重200gで傷を付け、表面粗さ計により、磨耗した箇所の深さを測定することにより、耐磨耗性(耐傷付き性)を評価した。
耐磨耗性(耐傷付き性)の評価
○:5μm未満
△:5μm以上10μm未満
×:10μm以上
【0150】
[総合評価]
光線透過率、屈折率、耐溶剤性、耐摩耗性の各評価項目において、◎を3点、○を2点、△を点、×を0点とし、合計点を算出した。以下の基準で、総合評価を行った。
総合評価(合計点)
○ 5点以上
× 5点未満
【0151】
【表2】
【0152】
この出願は、2018年9月27日に出願された日本出願特願2018-181395号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。