(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】内視鏡湾曲部、及び、内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/008 20060101AFI20230322BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
A61B1/008 512
G02B23/24 A
(21)【出願番号】P 2020551030
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2018037178
(87)【国際公開番号】W WO2020070851
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 勝巳
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-279055(JP,A)
【文献】特開2010-220827(JP,A)
【文献】特開2009-160224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00- 1/32
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の湾曲要素が長手軸方向に連設され、ワイヤを牽引することで第1の方向および前記第1の方向に対して180度異なる第2の方向に湾曲可能な内視鏡湾曲部であって、
それぞれの前記湾曲要素は、前記長手軸方向にわたって外表面に形成された開口と、
前記開口に連続するとともに、深さ方向が前記第1の方向
及び前記第2の方向
のそれぞれに対して45度ないし135度で交差する方向に延在するように形成された
2つの第1のワイヤ収容溝を有する第1の湾曲要素と、
前記開口に連続するとともに、深さ方向が前記第1の方向
及び前記第2の方向
のそれぞれに対して225度ないし315度で交差する方向に延在するように形成された
2つの第2のワイヤ収容溝を有する第2の湾曲要素と、を有し、
前記第1の湾曲要素と前記第2の湾曲要素とは、前記長手軸方向において隣接して配設され、
前記第1の方向に湾曲動作させる前記ワイヤは
、前記第1の方向に対して45度ないし135度で交差する方向に延在する前記
第1のワイヤ収容溝
、及び前記第1の方向に対して225度ないし315度で交差する方向に延在する第2のワイヤ収容溝に配設され
、
前記第2の方向に湾曲動作させる前記ワイヤは、前記第2の方向に対して45度ないし135度で交差する方向に延在する前記第1のワイヤ収容溝、及び前記第2の方向に対して225度ないし315度で交差する方向に延在する第2のワイヤ収容溝に配設され、
2つの前記第1のワイヤ収容溝は、前記第1の湾曲要素の中心を基準として、回転対称位置に配置され、
2つの前記第2のワイヤ収容溝は、前記第2の湾曲要素の中心を基準として、回転対称位置に配置されることを特徴とする内視鏡湾曲部。
【請求項2】
前記第1のワイヤ収容溝の前記深さ方向は、前記第1の方向または前記第2の方向と90度で交差し、
前記第2のワイヤ収容溝の前記深さ方向は、前記第1の方向または前記第2の方向と270度で交差する、
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡湾曲部。
【請求項3】
前記第1の方向に対して90度異なる第3の方向および前記第3の方向に対して180度異なる第4の方向にも湾曲可能であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡湾曲部。
【請求項4】
前記第1の湾曲要素は、前記第1の湾曲要素の中心を基準とした回転対称位置に設けられ、前記第1のワイヤ収容溝および前記第1のワイヤ収容溝に対して90度回転させた位置に設けられた第3のワイヤ収容溝を備え、
前記第2の湾曲要素は、前記第2の湾曲要素の中心を基準とした回転対称位置に設けられ、前記第2のワイヤ収容溝および前記第2のワイヤ収容溝に対して90度回転させた位置に設けられた第4のワイヤ収容溝を備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の内視鏡湾曲部。
【請求項5】
前記複数の湾曲要素は、一体的に形成されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡湾曲部。
【請求項6】
複数の湾曲要素が長手軸方向に連設され、ワイヤを牽引することで第1の方向および前記第1の方向に対して180度異なる第2の方向に湾曲可能な内視鏡湾曲部であって、それぞれの前記湾曲要素は、前記長手軸方向にわたって外表面に形成された開口と、前記開口に連続するとともに、深さ方向が前記第1の方向
及び前記第2の方向
のそれぞれに対して45度ないし135度で交差する方向に延在するように形成された
2つの第1のワイヤ収容溝を有する第1の湾曲要素と、前記開口に連続するとともに、深さ方向が前記第1の方向
及び前記第2の方向
のそれぞれに対して225度ないし315度で交差する方向に延在するように形成された
2つの第2のワイヤ収容溝を有する第2の湾曲要素と、を有し、前記第1の湾曲要素と前記第2の湾曲要素とは、前記長手軸方向において隣接して配設され、
前記第1の方向に湾曲動作させる前記ワイヤは
、前記第1の方向に対して45度ないし135度で交差する方向に延在する前記
第1のワイヤ収容溝
、及び前記第1の方向に対して225度ないし315度で交差する方向に延在する第2のワイヤ収容溝に配設され
、前記第2の方向に湾曲動作させる前記ワイヤは、前記第2の方向に対して45度ないし135度で交差する方向に延在する前記第1のワイヤ収容溝、及び前記第2の方向に対して225度ないし315度で交差する方向に延在する第2のワイヤ収容溝に配設され、2つの前記第1のワイヤ収容溝は、前記第1の湾曲要素の中心を基準として、回転対称位置に配置され、2つの前記第2のワイヤ収容溝は、前記第2の湾曲要素の中心を基準として、回転対称位置に配置された前記内視鏡湾曲部を有することを特徴とする内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引ワイヤが牽引或いは弛緩されることによって湾曲動作する内視鏡湾曲部、及び、内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡は、体腔等の被検体内に細長い挿入部を挿入することによって、被検体内の対象部位の観察や、必要に応じて処置具チャンネル内に挿入した処置具を用いた各種処置を行うために用いられている。
【0003】
この種の内視鏡としては、先端側から順に、先端部、湾曲部、及び、可撓管部が配設された構成が広く採用されている。このような内視鏡の挿入部を被検体内に挿入する場合、操作者は、一方の手によって操作部を把持しつつ、他方の手によって可撓管部を把持して被検体内に挿入部を押し込む。その際、操作者は、操作部を把持した手によって、当該操作部に配設されている操作レバー等を操作することにより、湾曲部を所望の方向に湾曲させることが可能となっている。
【0004】
このような湾曲部の湾曲動作は、例えば、日本国特開2011-156269号公報に開示されているように、挿入部の内部に挿通された牽引ワイヤを、操作レバー等に連動させて牽引或いは弛緩させることにより実現される。このため、湾曲部を構成する各湾曲駒には、内径方向に突出する2つまたは4つのワイヤガイドが設けられ、各ワイヤガイドには2本または4本の牽引ワイヤがそれぞれ挿通されている。そして、各牽引ワイヤは、基端側が操作レバー等に接続されるとともに先端側が先端部の内部に固定されることにより、操作レバー等に連動して牽引或いは弛緩することが可能となり、湾曲部を湾曲動作させることが可能となっている。
【0005】
しかしながら、上述の日本国特開2011-156269号公報に開示された技術では、小径な湾曲駒の内部において、微細なワイヤガイドに対する牽引ワイヤの挿通作業を行う必要がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、簡便な作業により牽引ワイヤを装着することができる内視鏡湾曲部、及び、内視鏡を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による内視鏡湾曲部は、複数の湾曲要素が長手軸方向に連設され、ワイヤを牽引することで第1の方向および前記第1の方向に対して180度異なる第2の方向に湾曲可能な内視鏡湾曲部であって、それぞれの前記湾曲要素は、前記長手軸方向にわたって外表面に形成された開口と、前記開口に連続するとともに、深さ方向が前記第1の方向及び前記第2の方向のそれぞれに対して45度ないし135度で交差する方向に延在するように形成された2つの第1のワイヤ収容溝を有する第1の湾曲要素と、前記開口に連続するとともに、深さ方向が前記第1の方向及び前記第2の方向のそれぞれに対して225度ないし315度で交差する方向に延在するように形成された2つの第2のワイヤ収容溝を有する第2の湾曲要素と、を有し、前記第1の湾曲要素と前記第2の湾曲要素とは、前記長手軸方向において隣接して配設され、前記第1の方向に湾曲動作させる前記ワイヤは、前記第1の方向に対して45度ないし135度で交差する方向に延在する前記第1のワイヤ収容溝、及び前記第1の方向に対して225度ないし315度で交差する方向に延在する第2のワイヤ収容溝に配設され、前記第2の方向に湾曲動作させる前記ワイヤは、前記第2の方向に対して45度ないし135度で交差する方向に延在する第1のワイヤ収容溝、及び前記第2の方向に対して225度ないし315度で交差する方向に延在する第2のワイヤ収容溝に配設され、2つの前記第1のワイヤ収容溝は、前記第1の湾曲要素の中心を基準として、回転対称位置に配置され、2つの前記第2のワイヤ収容溝は、前記第2の湾曲要素の中心を基準として、回転対称位置に配置されるものである。
また、本発明の一態様による内視鏡は、複数の湾曲要素が長手軸方向に連設され、ワイヤを牽引することで第1の方向および前記第1の方向に対して180度異なる第2の方向に湾曲可能な内視鏡湾曲部であって、それぞれの前記湾曲要素は、前記長手軸方向にわたって外表面に形成された開口と、前記開口に連続するとともに、深さ方向が前記第1の方向及び前記第2の方向のそれぞれに対して45度ないし135度で交差する方向に延在するように形成された2つの第1のワイヤ収容溝を有する第1の湾曲要素と、前記開口に連続するとともに、深さ方向が前記第1の方向及び前記第2の方向のそれぞれに対して225度ないし315度で交差する方向に延在するように形成された2つの第2のワイヤ収容溝を有する第2の湾曲要素と、を有し、前記第1の湾曲要素と前記第2の湾曲要素とは、前記長手軸方向において隣接して配設され、前記第1の方向に湾曲動作させる前記ワイヤは、前記第1の方向に対して45度ないし135度で交差する方向に延在する前記第1のワイヤ収容溝、及び前記第1の方向に対して225度ないし315度で交差する方向に延在する第2のワイヤ収容溝に配設され、前記第2の方向に湾曲動作させる前記ワイヤは、前記第2の方向に対して45度ないし135度で交差する方向に延在する前記第1のワイヤ収容溝、及び前記第2の方向に対して225度ないし315度で交差する方向に延在する第2のワイヤ収容溝に配設され、2つの前記第1のワイヤ収容溝は、前記第1の湾曲要素の中心を基準として、回転対称位置に配置され、2つの前記第2のワイヤ収容溝は、前記第2の湾曲要素の中心を基準として、回転対称位置に配置された前記内視鏡湾曲部を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】外皮及びブレードの一部を破砕して示す湾曲部及び先端部の斜視図
【
図3】牽引ワイヤが装着される前の湾曲管を示す斜視図
【
図4】牽引ワイヤの装着作業時における湾曲管を示す斜視図
【
図5】牽引ワイヤの装着後における湾曲管を示す斜視図
【
図9】第1の変形例に係り、外皮及びブレードを取り除いた湾曲部の第1の湾曲駒における要部断面図
【
図10】同上、外皮及びブレードを取り除いた湾曲部の第2の湾曲駒における要部断面図
【
図11】第2の変形例に係り、外皮及びブレードを取り除いた湾曲部の第1の湾曲駒における要部断面図
【
図12】同上、外皮及びブレードを取り除いた湾曲部の第2の湾曲駒における要部断面図
【
図16】同上、外皮及びブレードを取り除いた湾曲部の第1の湾曲駒における要部断面図
【
図17】同上、外皮及びブレードを取り除いた湾曲部の第2の湾曲駒における要部断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係り、
図1は内視鏡の外観斜視図、
図2は外皮及びブレードの一部を破砕して示す湾曲部及び先端部の斜視図、
図3は牽引ワイヤが装着される前の湾曲管を示す斜視図、
図4は牽引ワイヤの装着作業時における湾曲管を示す斜視図、
図5は牽引ワイヤの装着後における湾曲管を示す斜視図、
図6は
図2のVI-VI断面図、
図7は
図2のVII-VII断面図、
図8は湾曲管の湾曲状態を示す説明図である。
【0010】
図1に示す内視鏡1は、被検体の体腔内に挿入される細長形状(長尺)の挿入部2と、この挿入部2の基端に連設された操作部3と、この操作部3の基端から延出されたユニバーサルケーブル4と、このユニバーサルケーブル4の延出端に配設された内視鏡コネクタ5と、を備えて構成されている。
【0011】
挿入部2は、先端側から順に、先端部6、湾曲部7、及び、可撓管部8が連設された可撓性を備えた管状部材である。このうち、先端部6には、内部に撮像素子を備えた図示しない撮像ユニット、及び、照明光学系ユニットなどが収納配置されている。
【0012】
なお、内視鏡1は、先端部6に撮像ユニットを備えた電子内視鏡に限定されることなく、イメージガイドファイバが挿入部2に配設されたファイバースコープでもよい。
【0013】
湾曲部7は、例えば、上下2つの湾曲方向(UP-DOWN)へと能動的に湾曲させ得るように構成された機構部位である。なお、本実施形態において、挿入部2等における上下左右方向は、撮像ユニットによって撮像される内視鏡画像の上下左右方向に対応付けて便宜的に定義されるものである。
【0014】
可撓管部8は、受動的に可撓可能となるように柔軟性を持たせて構成された管状部材である。この可撓管部8の内部には、処置具挿通チャンネル20の他、撮像ユニット等から延出する各種の信号ケーブル21、照明光学系ユニットに光学的に接続するライトガイドバンドル22等が挿通されている。
【0015】
操作部3は、先端側に設けられ可撓管部8の基端を覆って可撓管部と接続される折れ止め部9と、この折れ止め部9に連設され使用者の手によって把持することが可能な把持部10と、を備えて構成されている。
【0016】
この把持部10の先端側には、処置具挿通チャンネル20の基端側に連通する処置具挿通部11が設けられている。また、把持部10の基端側には、湾曲部7の湾曲操作を行うための操作レバー13と、内視鏡1の各種機能が割り当てられた操作スイッチ14と、が設けられている。
【0017】
ユニバーサルケーブル4は、例えば、挿入部2の先端部6から延出する各種信号線21やライトガイドバンドル22(
図6,7参照)などを内部に挿通するとともに、先端側が処置具挿通チャンネル20に接続する送気送水チューブ(不図示)などを内部に挿通する複合ケーブルである。
【0018】
内視鏡コネクタ5は、外部装置であるビデオプロセッサ(不図示)に対して各種信号線21を接続するための電気コネクタ部16と、外部装置である光源装置(不図示)に対してライトガイドバンドル22を接続するための光源コネクタ部17と、外部装置である送気送水装置(不図示)に対して送気送水チューブを接続するための送気送水プラグ18と、を有して構成されている。
【0019】
次に、本実施形態の内視鏡1の挿入部2の先端部分の構成について、
図2~
図8を参照して説明する。
【0020】
挿入部2の先端部6は、樹脂などによって形成された略円柱形状の硬性枠である先端硬質部30を有している。この先端硬質部30の先端面には、例えば、撮像ユニットの先端面によって形成された観察窓31と、照明光学系ユニットの先端面によって形成された2つの照明窓32と、処置具チャンネル20の先端側が連通するチャンネル開口部33と、が配設されている。
【0021】
また、先端硬質部30の外周部の基端寄りには、上下一対のワイヤ止部34が設けられている(
図2~
図5において、下側のワイヤ止部34のみを図示)。これらのワイヤ止部34は、上方或いは下方にそれぞれ開口する有底の穴部34aと、穴部34aを先端硬質部30の基端に連通する溝部34bと、を有して構成されている。
【0022】
図2,3に示すように、湾曲部7は、湾曲管40と、この湾曲管40の外周を覆うブレード41と、ブレード41の外周を覆う外皮42と、を有して構成されている。
【0023】
湾曲管40は、挿入軸O方向に連設された湾曲要素としての複数の湾曲駒を有して構成されている。本実施形態において、具体的には、湾曲管40は、第1の湾曲要素としての複数の第1の湾曲駒45と、第2の湾曲要素としての複数の第2の湾曲駒46と、を有して構成されている。
【0024】
本実施形態において、第1の湾曲駒45と第2の湾曲駒46は、挿入軸O方向に沿って交互に配列されている。さらに、隣接する第1の湾曲駒45と第2の湾曲駒46との間は、左右一対の連結部材47によってそれぞれ連結されている。
【0025】
なお、本実施形態の湾曲管40は、樹脂成型によって一体形成されている。さらに、本実施形態の湾曲管40は先端硬質部30とも一体形成されるものであり、湾曲管40の最先端に位置する湾曲駒(図示の例では、第2の湾曲駒46)は、左右一対の連結部材35によって先端硬質部30に連結されている。
【0026】
図2~
図6に示すように、第1の湾曲駒45は、外観形状が扁平な略円柱形状をなしている。この第1の湾曲駒45の内部には、挿入軸方向に貫通する第1の挿通孔45a及び第2の挿通孔45bが形成されている。そして、第1の挿通孔45aには処置具挿通チャンネル20が挿通され、第2の挿通孔45bには各種の信号ケーブル21やライトガイドバンドル22等の内蔵物が挿通されている。
【0027】
また、第1の湾曲駒45の外表面の上側及び下側には、当該第1の湾曲駒45の先端から基端にわたって長手軸(挿入軸O)方向に延在する一対の開口として、第1の上側開口48uと、第1の下側開口48dと、が設けられている。
【0028】
本実施形態における第1の上側開口48uは、第1の湾曲駒45の上側左寄りの位置(第1の位置)に配置されている。
【0029】
この第1の上側開口48uには、ワイヤ収容溝としての第1の上側ワイヤ収容溝49uが連続されている。第1の上側ワイヤ収容溝49uは、その深さ方向(奥行き方向)が、湾曲部7(湾曲管40)の湾曲方向である上方向に対し、90度の角度にて交差する方向に延在するように形成されている。
【0030】
第1の上側ワイヤ収容溝49uは、主として湾曲部7を上側に湾曲動作させるための牽引ワイヤ53uを収容するための溝である。この第1の上側ワイヤ収容溝49uには、第1の上側開口48uを通じて、牽引ワイヤ53uを湾曲管40(第1の湾曲駒45)の外側から挿通することが可能となっている。
【0031】
第1の下側開口48dは、第1の湾曲駒45の下側右寄りの位置(第1の位置)に配置されている。より具体的には、第1の下側開口48dは、第1の湾曲駒45の中心を基準として、第1の上側開口48uに対し180度の回転対称位置に配置されている。
【0032】
この第1の下側開口48dには、ワイヤ収容溝としての第1の下側ワイヤ収容溝49dが連続されている。第1の下側ワイヤ収容溝49dは、その深さ方向(奥行き方向)が、湾曲部7(湾曲管40)の湾曲方向である下方向に対し、90度の角度にて交差する方向に延在するように形成されている。
【0033】
第1の下側ワイヤ収容溝49dは、主として湾曲部7を下側に湾曲動作させるための牽引ワイヤ53dを収容するための溝である。この第1の下側ワイヤ収容溝49dには、第1の下側開口48dを通じて、牽引ワイヤ53dを湾曲管40(第1の湾曲駒45)の外側から挿通することが可能となっている。
【0034】
第2の湾曲駒46は、外観形状が扁平な略円柱形状をなしている。この第2の湾曲駒46の内部には、挿入軸方向に貫通する第1の挿通孔46a及び第2の挿通孔46bが形成されている。そして、第1の挿通孔46aには処置具挿通チャンネル20が挿通され、第2の挿通孔46bには各種の信号ケーブル21やライトガイドバンドル22等の内蔵物が挿通されている。
【0035】
また、第2の湾曲駒46の外表面の上側及び下側には、当該第2の湾曲駒46の先端から基端に渡って長手軸(挿入軸O)方向に延在する一対の開口として、第2の上側開口50uと、第2の下側開口50dと、が設けられている。
【0036】
本実施形態における第2の上側開口50uは、第2の湾曲駒46の上側右寄りの位置(第2の位置)に配置されている。
【0037】
この第2の上側開口50uには、ワイヤ収容溝としての第2の上側ワイヤ収容溝51uが連続されている。第2の上側ワイヤ収容溝51uは、その深さ方向(奥行き方向)が、湾曲部7(湾曲管40)の湾曲方向である上方向に対し、270度の角度にて交差する方向に延在するように形成されている。
【0038】
この場合において、第2の上側ワイヤ収容溝51uの延出端部は、挿入軸O方向において、第1の上側ワイヤ収容溝49uの延出端部と重畳するように形成されている。
【0039】
第2の上側ワイヤ収容溝51uは、主として湾曲部7を上側に湾曲動作させるための牽引ワイヤ53uを収容するための溝である。この第2の上側ワイヤ収容溝51uには、第2の上側開口50uを通じて、牽引ワイヤ53uを湾曲管40(第2の湾曲駒46)の外側から挿通することが可能となっている。
【0040】
第2の下側開口50dは、第2の湾曲駒46の下側左寄りの位置(第2の位置)に配置されている。より具体的には、第2の下側開口50dは、第2の湾曲駒46の中心を基準として、第2の上側開口50uに対し180度の回転対称位置に配置されている。
【0041】
この第2の下側開口50dには、ワイヤ収容溝としての第2の下側ワイヤ収容溝51dが連続されている。第2の下側ワイヤ収容溝51dは、その深さ方向(奥行き方向)が、湾曲部7(湾曲管40)の湾曲方向である下方向に対し、270度の角度にて方差する方向に延在するように形成されている。
【0042】
この場合において、第2の下側ワイヤ収容溝51dの延出端部は、挿入軸O方向において、第1の下側ワイヤ収容溝49dの延出端部と重畳するように形成されている。
【0043】
第2の下側ワイヤ収容溝51dは、主として湾曲部7を下側に湾曲動作させるための牽引ワイヤ53dを収容するための溝である。この第2の下側ワイヤ収容溝51dには、第2の下側開口50dを通じて、牽引ワイヤ53dを湾曲管40(第2の湾曲駒46)の外側から挿通することが可能となっている。
【0044】
このように構成された湾曲管40には、例えば、可撓管8を構成する蛇管8a等に対して湾曲管40を組み付けた後の工程であって、且つ、湾曲管40にブレード41及び外皮42が被覆される前の工程において、牽引ワイヤ53u,53dを挿通することが可能である。
【0045】
すなわち、例えば、
図3に示すように、作業者等は、湾曲管40を蛇管8aに連結する際に、最基端に位置する湾曲駒の開口及びワイヤ収容溝を介して、牽引ワイヤ53u,53dの先端側を湾曲管40の外側に延出させる。ここで、図示の例では、湾曲管40の最基端には第2の湾曲駒46が配置されている。従って、この第2の湾曲駒46の第2の上側開口50u及び第2の上側ワイヤ収容溝51uを介して牽引ワイヤ53uが湾曲管40の外側に延出され、第2の下側開口50d及び第2の下側ワイヤ収容溝51dを介して牽引ワイヤ53dが湾曲管40の外側に延出されている。
【0046】
なお、図示のように、これら牽引ワイヤ53u,53dの先端には、先端構成部30のワイヤ止部34の内部に収容可能な、略円盤状をなす係止部材54が設けられている。
【0047】
そして、例えば、
図4に示すように、作業者等は、各第1の上側ワイヤ収容溝49u及び各第2の上側ワイヤ収容溝51uに対して牽引ワイヤ53uを基端側から順次収容させるように蛇行させるとともに、各第1の下側ワイヤ収容溝49d及び各第2の下側ワイヤ収容溝51dに対して牽引ワイヤ53dを基端側から順次収容させるように蛇行させる。これにより、各牽引ワイヤ53u,53dは、湾曲管40の内部に挿通される。
【0048】
その後、作業者等は、各牽引ワイヤ53u,53dの先端に設けられた係止部材54を、対応するワイヤ止部34の内部に収容し、接着等により固定する。これにより、各牽引ワイヤ53u,53dの挿通状態が保持される。
【0049】
その後、作業者等は、各牽引ワイヤ53u,53dを操作部3側から牽引する。これにより、例えば、
図5に示すように、湾曲管40内における各牽引ワイヤ53u,53dの配索位置は、挿入軸Oに対して略平行となるよう、適正な位置に自動で調整される。
【0050】
すなわち、本実施形態の湾曲管40の上部において、第1の湾曲駒45に設けられた第1の上側開口48uと、第2の湾曲駒46に設けられた第2の上側開口50uは、互いに相反する方向に配置されている。
【0051】
また、第1の上側開口48uに連続する第1の上側ワイヤ収容溝49uと、第2の上側開口50uに連続する第2の上側ワイヤ収容溝51uは、互いの延出端部が重畳する方向に延在されている。
【0052】
従って、第1の上側ワイヤ収容溝49uと第2の上側ワイヤ収容溝51uは、牽引ワイヤ53uが牽引された際に、当該牽引ワイヤ53uを、互いの延出端部に向けてガイドする。
【0053】
これにより、湾曲管40内における牽引ワイヤ53uの配索位置は、適正な位置に自動で調整(セルフアライメント)される。
【0054】
同様に、本実施形態の湾曲管40の下部において、第1の湾曲駒45に設けられた第1の下側開口48dと、第2の湾曲駒46に設けられた第2の下側開口50dは、互いに相反する方向に配置されている。
【0055】
また、第1の下側開口48dに連続する第1の下側ワイヤ収容溝49dと、第2の下側開口50dに連続する第2の下側ワイヤ収容溝51dは、互いの延出端部が重畳する方向に延在されている。
【0056】
従って、第1の下側ワイヤ収容溝49dと第2の下側ワイヤ収容溝51dは、牽引ワイヤ53dが牽引された際に、当該牽引ワイヤ53dを、互いの延出端部に向けてガイドする。
【0057】
これにより、湾曲管40内における牽引ワイヤ53dの配索位置は、適正な位置に自動で調整(セルフアライメント)される。
【0058】
さらに、第1の上側ワイヤ収容溝49uと第2の上側ワイヤ収容溝51uは、袋状の延出端部が互いに重畳するように配置されていることから、牽引ワイヤ53uの脱落方向への移動を互いに規制する。同様に、第1の下側ワイヤ収容溝49dと第2の下側ワイヤ収容溝51dは、袋状の延出端部が高いに重畳するように配置されていることから、牽引ワイヤ53dの脱落方向への移動を互いに規制する。
【0059】
なお、牽引ワイヤ53u,53dを装着後の湾曲管40にはブレード41及び外皮42が被覆されるため、ブレード41及び外皮42によって、牽引ワイヤ53u,53dの脱落方向への移動は、より的確に規制される。
【0060】
これらにより、例えば、
図8に示すように、操作レバー13への操作に連動して牽引ワイヤ53u,53dが牽引或いは弛緩された際にも、牽引ワイヤ53uが第1,第2の上側ワイヤ収容溝49u,51uの内部に保持されるとともに、牽引ワイヤ53dが第1,第2の下側ワイヤ収容溝49d,51dの内部に保持され、湾曲管40(湾曲部7)が的確に湾曲動作する。
【0061】
このような実施形態によれば、長手軸O方向にわたって外表面に形成された第1の上側開口48u及び第1の下側開口48dと、第1の上側開口48u及び第1の下側開口48dにそれぞれ連続するとともに上下2方向の湾曲方向に対してそれぞれ90度の角度で交差する方向に形成された第1の上側ワイヤ収容溝49u及び第1の下側ワイヤ収容溝49dと、を有する第1の湾曲駒45と、長手軸O方向にわたって外表面に形成された第2の上側開口50u及び第2の下側開口50dと、第2の上側開口50u及び第2の下側開口50dにそれぞれ連続するとともに上下2方向の湾曲方向に対してそれぞれ90度の角度で交差する方向に形成された第2の上側ワイヤ収容溝51u及び第2の下側ワイヤ収容溝51dと、を有する第2の湾曲駒46と、を有して湾曲管40を構成することにより、第1の上側ワイヤ収容溝49u及び第2の上側ワイヤ収容溝51uに対して牽引ワイヤ53uを湾曲管40の外側から挿入することができるとともに、第1の下側ワイヤ収容溝49d及び第2の下側ワイヤ収容溝51dに対して牽引ワイヤ53dを湾曲管40の外側から挿入することができ、簡便な作業により牽引ワイヤ53u,53dを湾曲管40に装着することができる。
【0062】
すなわち、湾曲管40の内部における微細な作業等を行うことなく、湾曲管40の外側からのみの簡単な作業により、牽引ワイヤ53u,53dを湾曲管40に挿通することができる。
【0063】
この場合において、第1の上側ワイヤ収容溝49uと第2の上側ワイヤ収容溝51uとを上側の湾曲方向を中心として対象な位置(より具体的には対象な投影位置)に配置することにより、第1の上側ワイヤ収容溝49u及び第2の上側ワイヤ収容溝51uに挿通された牽引ワイヤ53uを挿入軸Oに略平行となる適切な位置に自動で調整することができるとともに、挿通後の牽引ワイヤ53uの脱落を的確に防止することができる。
【0064】
同様に、第1の下側ワイヤ収容溝49dと第2の下側ワイヤ収容溝51dとを下側の湾曲方向を中心として対象な位置(より具体的には対象な投影位置)に配置することにより、第1の下側ワイヤ収容溝49d及び第2の下側ワイヤ収容溝51dに挿通された牽引ワイヤ53dを挿入軸Oに略平行となる適切な位置に自動で調整することができるとともに、挿通後の牽引ワイヤ53dの脱落を的確に防止することができる。
【0065】
ここで、第1,第2の上側ワイヤ収容溝49u,51u及び第1,第2の下側ワイヤ収容溝49d,51dの角度は、上述の実施形態に限定されるものではなく、湾曲部7の上下の各湾曲方向に対して45度ないし135度または225度ないし315度の範囲で交差させることが可能である。
【0066】
例えば、
図9,10に示すように、第1の上側ワイヤ収容溝49u及び第1の下側ワイヤ収容溝49dを上下の湾曲方向に対してそれぞれ45度で交差させ、第2の上側ワイヤ収容溝51u及び第2の下側ワイヤ収容溝51dを上下の湾曲方向に対してそれぞれ315度で交差させることも可能である。このように、第1の上側ワイヤ収容溝49u及び第1の下側ワイヤ収容溝49dを上下の湾曲方向に対して90度よりも小さい角度で交差させ、且つ、第2の上側ワイヤ収容溝51u及び第2の下側ワイヤ収容溝51dを上下の湾曲方向に対して270度よりも大きい角度で交差させることにより、第1の上側開口48uと第2の上側開口50uとの間隔、及び、第1の下側開口48dと第2の下側開口50dとの間隔を小さくすることがでる。従って、湾曲管40に牽引ワイヤ53u,53dを装着する際の蛇行幅を小さくすることができ、作業性をより向上することができる。
【0067】
或いは、例えば、
図11,12に示すように、第1の上側ワイヤ収容溝49u及び第1の下側ワイヤ収容溝49dを上下の湾曲方向に対してそれぞれ135度で交差させ、第2の上側ワイヤ収容溝51u及び第2の下側ワイヤ収容溝51dを上下の湾曲方向に対してそれぞれ225度で交差させることも可能である。なお、
図11,12に示す第1,第2の湾曲駒45,46は、内部に単一の挿通孔45c,46cを形成した構成を例示している。このように第1の上側ワイヤ収容溝49u及び第1の下側ワイヤ収容溝49dを上下の湾曲方向に対して90度よりも大きな角度で交差させ、且つ、第2の上側ワイヤ収容溝51u及び第2の下側ワイヤ収容溝51dを上下の湾曲方向に対して270度よりも小さい角度で交差させることにより、牽引ワイヤ53u,53dの脱落をより的確に防止することができる。
【0068】
また、第1の湾曲駒45と第2の湾曲駒46の配列は、上述の実施形態に限定されるものではなく、任意の組合せが可能である。
【0069】
例えば、
図13に示すように、第1の湾曲駒45と第2の湾曲駒46を、挿入軸O方向に複数個ずつ(例えば2個ずつ)交互に配置することも可能である。このように構成することにより、湾曲管40に牽引ワイヤ53u,53dを装着する際に、当該牽引ワイヤ53u,43dを蛇行させる回数を減らすことができ、作業性をより簡便なものとすることができる。
【0070】
或いは、例えば、
図14に示すように、挿入軸O方向に沿って複数個(例えば、3個)の第2の湾曲駒46を配列する毎に、1個の第1の湾曲駒45を配置する等することも可能である。このように構成することにより、湾曲管40に牽引ワイヤ53u,53dを装着する際に、当該牽引ワイヤ53u,43dを蛇行させる回数を減らすことができ、作業性をより簡便なものとすることができる。
【0071】
また、湾曲管40の湾曲方向は、上下2方向のみに限定されるものではなく、例えば、左右2方向であってもよく、或いは、上下左右の何れか1の方向であってもよい。
【0072】
さらに、例えば、
図15に示すように、湾曲管40の湾曲方向を、上下左右の4方向とすることも可能である。
【0073】
この場合、例えば、
図16に示すように、第1の湾曲駒45には、第1の上側開口48uに連続する第1の上側ワイヤ収容部49u、及び、第1の下側開口48dに連続する第1の下側ワイヤ収容部49dに加え、これらに対して挿入軸O周りに90度回転させた位置に、第1の左側開口48lに連続する第1の左側ワイヤ収容部49l、及び、第1の右側開口48rに連続する第1の右側ワイヤ収容部49rが設けられる。
【0074】
また、例えば、
図17に示すように、第2の湾曲駒46には、第2の上側開口50uに連続する第2の上側ワイヤ収容部51u、及び、第2の下側開口50dに連続する第2の下側ワイヤ収容部51dに加え、これらに対して挿入軸O周りに90度回転させた位置に、第2の左側開口50lに連続する第2の左側ワイヤ収容部51l、及び、第2の右側開口50rに連続する第2の右側ワイヤ収容部51rが設けられる。
【0075】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。例えば、上述の実施形態においては、複数の湾曲駒を樹脂成型によって一体形成した湾曲管の構成について例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ブレス成型した複数の湾曲駒をリベット等によって連設することで湾曲管を構成することも可能である。また、上述の実施形態の構成及び各変形例の構成を適宜組み合わせてもよいことは勿論である。