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特許7248706ナビゲーション情報を出力する装置及び方法並びに自動車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】ナビゲーション情報を出力する装置及び方法並びに自動車
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20230322BHJP
   G08G 1/0962 20060101ALI20230322BHJP
   G08G 1/14 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
G01C21/26 C
G08G1/0962
G08G1/14 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020564449
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019060029
(87)【国際公開番号】W WO2019219325
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】102018207863.7
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ベルツナー・ハイドルン
(72)【発明者】
【氏名】コーツァー・ダーニエール
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/109828(WO,A1)
【文献】特開2009-174953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G08G 1/00-99/00
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のためのナビゲーション情報(N)を出力する装置(1)であって、
-車両の現在位置(P)に関する情報を含む位置データ(L)、車両が目指す目的地の位置(F)に関する情報を含む目的地データ(Z)及び少なくとも二つの駐車場位置(P)と当該少なくとも二つの駐車場位置(Pi)における駐車スペースの利用可能性(pπi)に関する情報を含むパーキングデータ(P)を提供できるように用いられる少なくとも一つの入力インターフェース(2a,2b,2c)と、
-前記少なくとも二つの駐車場位置(P)の少なくとも一部に順番に立ち寄るべきその順番を、提供された位置データ(L)、目的地データ(Z)及びパーキングデータ(P)に基づいて算出するように構成されたデータ処理装置(3)であって、その算出は、算出された順番が最適化基準を満たし、それらの駐車場位置(P)の少なくとも一つについて、その少なくとも一つの駐車場位置(P)で待つか或いは当該少なくとも一つの駐車場位置(P)よりも時間的に先に立ち寄っているはずの駐車場位置(P )に戻ることで最適化基準を満たすことができるかどうか確認するように行なわれるデータ処理装置(3)と、
-算出された順番をナビゲーション情報(N)として出力できるように用いられる少なくとも一つの出力インターフェース(4)と、
を有する装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置(1)であって、データ処理装置(3)は、少なくとも一つの駐車場位置(P)で待つことで最適化基準を満たすことができるかどうかの確認について、前記少なくとも一つの駐車場位置(P)における駐車スペースの利用可能性(p)の時間発展を表す第一の利用可能性モデルから生じる前記少なくとも一つの駐車場位置(P )における駐車スペースの利用可能性(p)が所定の値となる、前記少なくとも一つの駐車場位置(P )における待ち時間のコストを考慮して結果を出すように構成されている装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、第一の利用可能性モデルは指数分布に基づき、駐車場位置(P)において駐車スペースが利用可能になるのを規定する利用可能率(μ)を、前記少なくとも一つの駐車場位置(P)における待ち時間に関連付ける装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の装置(1)であって、データ処理装置(3)は、前記少なくとも一つの駐車場位置(P)で待つことにより駐車スペースが利用可能になる確率(pacc)を予め設定することにより、第一の利用可能性モデルから生じるコストを操作するように構成されている装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の装置(1)であって、データ処理装置(3)は、前記少なくとも一つの駐車場位置(P)よりも時間的に先に立ち寄っているはずの駐車場位置(P )に戻ることで最適化基準を満たすことができるかどうかの確認について、前記少なくとも一つの駐車場位置(P)よりも時間的に先に立ち寄っているはずの駐車場位置(P )における駐車スペースの条件付き利用可能性であって、前記少なくとも一つの駐車場位置(P)よりも時間的に先に立ち寄っているはずの駐車場位置(P )における駐車スペースの利用可能性時間発展を表す第二の利用可能性モデルから生じる条件付き利用可能性と、異なる駐車場位置間の移動により生じるコストとを考慮して結果を出すように構成されている装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置(1)であって、第二の利用可能性モデルは、一様なマルコフ過程に基づき、駐車スペースが或る駐車場位置において占有されていることを規定する占有状態の確率を、単位時間当たりに駐車スペースに駐車しようとする車両の数を特徴付ける要求率(λ)と、駐車スペースが或る駐車場位置(P)において利用可能になることを規定する利用可能率(μ)に関連付ける装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の装置(1)を有する車両
【請求項8】
車両をナビゲーションする方法であって、以下のステップを有する方法:
-車両の現在位置(P)に関する情報を含む位置データ(L)の提供;
-車両が目指す目的地の位置(F)に関する情報を含む目的地データ(Z)の提供;
-少なくとも二つの駐車場位置(P)と当該少なくとも二つの駐車場位置(P)における駐車スペースの利用可能性に関する情報を含むパーキングデータ(P)の提供;
-前記少なくとも二つの駐車場位置(P)の少なくとも一部に順番に立ち寄るべきその順番の、提供された位置データ(L)、目的地データ(Z)及びパーキングデータ(P)に基づいた算出であって、算出された順番が最適化基準を満たし、それらの駐車場位置(P)の少なくとも一つについて、その少なくとも一つの駐車場位置(P)で待つか或いは当該少なくとも一つの駐車場位置(P)よりも時間的に先に立ち寄っているはずの駐車場位置(P )に戻ることで最適化基準を満たすかどうか確認するように行なわれる算出;及び
-算出された順番のナビゲーション情報(N)としての出力。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に自動車のためのナビゲーション情報を出力する装置及び方法並びにそのような装置を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドライバーをルート策定に際して支援するため、ナビゲーション装置が知られている。このナビゲーション装置は、通常は、車両の滞在位置から目的地まで、移動時間及び/又は燃料消費に関して最適化された一つ又は複数のルートを計算し、然るべきナビゲーション情報をドライバーに出力する。
【0003】
しかしながら、ドライバーは自分の車両を目的地に直接とめることはできず、場合によっては目的地に到着するよりも手前で早々に車両の駐車スペースを探さなければならないのが普通である。目的地に到着するまでの移動時間はこのとき、駐車スペース探しと、見つけた駐車スペースから目的地までの歩行とに要する時間だけ長くなるのが通例である。そのため、駐車位置に関して最適化されたルートを計算するナビゲーション装置が開発された。これについては、例えば、駐車情報サービスより提供される等した、駐車スペースを見つけ出す経験的に見出された確率及び/又は例えばオンラインで報告される等した、最新の駐車スペース利用可能性を計算で考慮することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、車両の現在位置から目的地位置までのナビゲーションを改善し、特に、目指す目的地に到着するまでに全体で要する時間を最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、車両、特に自動車のためのナビゲーション情報を出力する独立請求項に係る装置及び方法により解決される。
【0006】
車両、特に自動車のためのナビゲーション情報を出力する本発明による装置は、少なくとも一つの入力インターフェースを有し、この入力インターフェースを用いることで、車両の現在位置に関する情報を含む位置データ、車両が目指す目的地の位置に関する情報を含む目的地データ及び少なくとも二つの駐車場位置及び当該少なくとも二つの駐車場位置における駐車スペースの利用可能性を含むパーキングデータが提供可能とされている。データ処理装置は、上記の少なくとも二つの駐車場位置の少なくとも一部に順番に立ち寄るべきその順番を、提供された位置データ、目的地データ及びパーキングデータに基づいて算出し、その算出された順番が最適化基準を満たすように構成されている。さらに、データ処理装置は、それらの駐車場位置の少なくとも一つについて、その少なくとも一つの駐車場位置で待つか或いは当該少なくとも一つの駐車場位置よりも時間的に先に立ち寄っているはずの駐車場位置に戻ることで最適化基準を満たすことができるかどうか確認するように構成されている。算出された順番は、少なくとも一つの出力インターフェースを介してナビゲーション情報として出力することができる。
【0007】
本発明による車両、特に自動車は、ナビゲーション情報を出力する本発明による装置を有している。
【0008】
車両、特に自動車のためのナビゲーション情報を出力する本発明による方法では、車両の現在位置に関する情報を含む位置データ、車両が目指す目的地の位置に関する情報を含む目的地データ及び少なくとも二つの駐車場位置及び当該少なくとも二つの駐車場位置における駐車スペースの利用可能性に関する情報を含むパーキングデータが提供される。加えて、上記の少なくとも二つの駐車場位置の少なくとも一部に順番に立ち寄るべきその順番が、提供された位置データ、目的地データ及びパーキングデータに基づいて算出され、その算出された順番が最適化基準を満たすようにする。その際に、それら駐車場位置の少なくとも一つについて、その少なくとも一つの駐車場位置で待つか或いはその少なくとも一つの駐車場位置よりも時間的に先に立ち寄っているはずの駐車場位置に戻ることで最適化基準を満たすかどうか確認が行なわれる。算出された順番は、ナビゲーション情報として出力される。
【0009】
本発明の観点は、ルート策定の際に、少なくとも二つの駐車場位置における、場合によって時間とともに変化する将来の駐車スペース利用可能性を考慮するというアプローチに基づいている。これにより、或る駐車場位置で待つことで及び/又は前に既に立ち寄った駐車場位置に再び立ち寄ることで、従来のような、駐車場位置に次から次へとまっしぐらに立ち寄っていくことで可能とされているものに比べて、駐車スペースをより短い時間で見つけることができるようになる。
【0010】
移動時間、すなわち、車両の現在位置から目指す目的地に(場合によっては一部徒歩で)到着するまでの移動時間に関して最適化されたルートを算出するために、車両の位置データ、目指す目的地の目的地データ及び目指す目的地辺りにある駐車場位置のパーキングデータは、少なくとも一つの入力インターフェースを介して提供される。例えば、車両の現在位置を算出するために、衛星から送信された信号をインターフェースを介して受信することができる。さらに、キーボード、タッチスクリーン及び/又は言語認識ユニット等の他のインターフェースを介して、目指す目的地に該当するアドレスが車両のドライバーにより入力されるのでも構わない。パーキングデータは、例えば、移動無線接続などのエア・インターフェースを介して受信するか或いはデータベースから読み取ることができる。
【0011】
データ処理装置を用いることで、最適化基準、例えば、予め与えられた確率で空いた駐車スペースが見つけられると同時に空いた駐車スペースを見つけ出すのに要する時間を最小にするという最適化基準を満たすように、別々の駐車場位置に順番に立ち寄るべきその順番を算出することができる。算出された順番から一つのルートを計算することができ、そのルートが、予想される最も短い時間で車両の現在位置から少なくとも一つの駐車場位置へと車両を案内し且つ車両のドライバーが駐車スペースを見つけた駐車場位置から目指す目的地へとそのドライバーを案内する。算出された順番は、或る状況では、例えば駐車スペース利用可能性が高い駐車場位置が目的地の直ぐ傍にあるときに、即座には駐車スペースが空いていないような場合、車両が待つべき駐車場位置をたった一つしか含まないこともある。
【0012】
データ処理装置はここで、例えばいわゆる分枝限定法により、最適化基準を満たすことができるかどうかを確認し、例えば、一つ又は複数の駐車場位置に初めて立ち寄る及び/又は駐車場位置の一つにおいてそこに駐車スペースの空きができるまで待つ及び/又は駐車場位置の少なくとも一つに何度も立ち寄ることで移動時間をさらに小さくできるかどうかを確認する。駐車場位置の一つで待つこと及び/又は前に既に立ち寄っているはずの駐車場位置に戻ることは特に、これらの駐車場位置付近の道路、特に駐車場位置そのものが頻繁に使用されてはいるものの駐車場位置の利用可能率が高い場合、すなわち、その駐車場位置では短い時間間隔で駐車スペースに空きができる場合には、有利である。
【0013】
算出された順番、好ましくは最適化基準に関して最適化された順番に基づいて、データ処理装置は、好ましい態様において、例えば、算出された順番に従って車両の現在位置から駐車場位置までの道案内を含むナビゲーション情報を生成する。このナビゲーション情報は、少なくとも一つの出力インターフェース、例えば車両内のスピーカ及び/又は表示装置を介して車両のドライバーに出力され、ドライバーは、ナビゲーション情報に基づいて、ドライバーが空いている駐車スペースを見つけるか又は一つの駐車場位置において駐車スペースが空くのを待つ或いは待つ方がよくなるまで、算出された駐車場位置の順番の一番目の駐車場位置まで車両を操り、引き続きさらなる別の駐車場位置へと、算出された順番に従って車両を操ることができる。
【0014】
この装置はここで、必ずしも車両の一部であったり、車両に組み込まれていたりする必要はない。ナビゲーション情報は、特にスマートフォンなどの携帯端末機器によっても走行中ないし事前に出力することができる。
【0015】
全体として、本発明は、特に、目指す目的地に到着するまでに全体で要する時間に関して車両の現在位置から目的地位置までのナビゲーションを改善することができる。これにより特に、ドライバーの時間を節約し、交通量を削減し及び/又は排出ガス量を削減することができる。
【0016】
好ましい実施形態では、データ処理装置は、少なくとも一つの駐車場位置で待つことで最適化基準を満たすことができるかどうかの確認について、コストを考慮して結果を出すように構成されている。コストはここで、少なくとも一つの駐車場位置における駐車スペースの利用可能性の時間発展を表す第一の利用可能性モデルから生じる該少なくとも一つの駐車場位置における駐車スペースの利用可能性が所定の値となる、該少なくとも一つの駐車場位置における待ち時間を考慮することが好ましい。その第一の利用可能性モデルを用いて、好ましい態様において待ち時間を確実に算出することができ、その待ち時間が経過すれば、少なくとも一つの駐車場位置において所定の確率で駐車スペースに空きができる。少なくとも一つの駐車位置において待つことに関して発生する、特に待ち時間に依存するコストは、好ましい態様において待ち時間に依存するコスト関数によって算出されることが好ましく、少なくとも二つの駐車場位置の一部に順番に立ち寄るべきその順番を算出する際に考慮される。これにより、最適な順番を確実に算出することができる。
【0017】
好ましいさらなる実施形態では、第一の利用可能性モデルは、好ましくは指数分布に基づき、駐車場位置において駐車スペースが利用可能になるのを規定する利用可能率を、少なくとも一つの駐車場位置における待ち時間(この時間の経過後、その駐車場位置において駐車スペースに空きができる。)に関連付ける。好ましくはこのとき、対応する駐車場位置における駐車スペースの数が考慮される。これにより、必要な待ち時間、従って待つことにより発生するコストを確実に見積もることが可能となる。
【0018】
あるいは、第一の利用可能性モデルが別の関数に基づくものであってもよい。
【0019】
例えばパーキングデータを通じて利用可能にされているようにできる利用可能率は、好ましくは、車両の、その対応する駐車場位置における平均駐車時間に依存する。平均駐車時間、従って利用可能率もまた、例えば経験的に容易に割り出すことができ、駐車情報サービスにより提供することができる。
【0020】
さらに好ましい実施形態において、データ処理装置は、少なくとも一つの駐車場位置で待つことにより駐車スペースが利用可能になる確率を予め設定することにより、第一の利用可能性モデルから生じるコストを操作するように構成されている。例えば、少なくとも一つの駐車場位置で待つことにより駐車スペースが90%以上の確率で必ず利用可能となるように予め設定することができる。利用可能率次第では、特に、他の車両がその駐車スペースに長時間駐車して、そのためにほとんど駐車スペースに空きができないような場合には、そのような確率にするのに長い間待たなければならず、それによりコストが高くなる。第一の利用可能性モデルを用いることで、それに必要な待ち時間と、ひいてはそれに関連したコストを、特に予め設定した確率に依存したコスト関数を考慮しながら、確実に計算することができる。
【0021】
さらに好ましい実施形態において、データ処理装置は、少なくとも一つの駐車場位置よりも時間的に先に立ち寄っているはずの駐車場位置に戻ることで最適化基準を満たすことができるかどうかの確認について、少なくとも一つの駐車場位置よりも時間的に先に立ち寄っているはずの駐車場位置における条件付き駐車スペース利用可能性と、異なる駐車場位置間の移動により生じるコストとを考慮して結果を出すように構成されている。条件付き利用可能性はこのとき、少なくとも一つの駐車場位置よりも時間的に先に立ち寄っているはずの駐車場位置における駐車スペースの利用可能性の時間発展を表す第二の利用可能性モデルから生じる。第二の利用可能性モデルは、表現される条件付き駐車スペースの利用可能性がこのとき特に、再び立ち寄るべき駐車場位置に以前既に立ち寄ったかどうか及び/又は立ち寄ったのはいつの時点であったか、特に、前回立ち寄ったときから再び立ち寄るまでの間にどれだけの時間が経過したかに依存するように作られていることが好ましい。或いはまた、表現された条件付き駐車スペースの利用可能性は、その駐車場に前回に立ち寄ったときから再び立ち寄るまでの間に経過した期間とは無関係とされていてもよい。この第二の利用可能性モデルを用いることで、少なくとも二つの駐車場位置の少なくとも一部に順番に立ち寄るべきその最適な順番を確実に算出することができる。
【0022】
第二の利用可能性モデルは、再び駐車場位置に立ち寄るときに、空いた駐車スペースを見つける条件付き確率に対応する条件付き利用可能性を与える。この条件付き確率は、好ましい態様において、前に既に立ち寄っているはずの駐車場位置に戻ることで最適化基準を満たすことができるかどうか確認する際に考慮される。特に、条件付き利用可能性を考慮しながら、前に既に立ち寄っているはずの駐車場位置に再び立ち寄ることで、予め設定された、駐車スペースが必ず見つかる確率と同じかそれより大きい条件付き確率で駐車スペースが利用可能かどうか確認することができる。
【0023】
さらに他の好ましい実施形態では、第二の利用可能性モデルは、好ましくは一様なマルコフ過程に基づき、駐車スペースが或る駐車場位置において占有されていることを規定する占有状態の確率を、単位時間当たりに駐車スペースに駐車しようとする車両の数を特徴付ける要求率(λ)と、駐車スペースが或る駐車場位置において利用可能になることを規定する利用可能率に関連付ける。この第二の利用可能性モデルは、有利にも、再び立ち寄るべき駐車場位置における空いた駐車スペースの時間発展を表すために行列微分方程式として表現することができる。この行列微分方程式は、例えば、駐車場位置に後で再び立ち寄るときに空いた駐車スペースが利用できる確率を得るために、近似法によって解くことができる。このようにして、少なくとも駐車場位置のうち少なくとも一部に立ち寄る最適な順番を、特に確実かつ効率的に算出することができる。
【0024】
本発明のさらに他の特徴、長所及び応用可能性は、図と関連させた以下の説明から明らかになり、図では、本発明の同じ又は対応する要素に対して同じ符号が全体を通して用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ナビゲーション情報を出力する装置の一例を示す図である。
図2】駐車場位置に順番に立ち寄っていくべきその算出された順番の一例を示す図である。
図3】駐車場位置に順番に立ち寄っていくべきその順番を算出する一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、車両のためのナビゲーション情報Nを出力する装置1であって、三つの入力インターフェース2a,2b,2c、データ処理装置3及び出力インターフェース4を有する装置1の一例を示している。
【0027】
第一の入力インターフェース2aによって、車両の現在位置に関する情報を含む位置データLを提供することができる。この目的のために、第一の入力インターフェース2aは、例えば、複数の衛星とのデータリンクを構築して、このデータリンクを介して受信した信号に基づいて車両の現在位置を割り出すことができる。
【0028】
第二の入力インターフェース2bによって、車両が目指す目的地の位置に関する情報を含む目的地データZを提供することができる。この目的のために、第二の入力インターフェース2bは、例えば、キーボード、タッチスクリーン又はマイク等による車両ドライバーの入力を検知して、そこから目的地場所、特にアドレスを明らかにすることができる。
【0029】
第三の入力インターフェース2cによって、少なくとも二つの駐車場位置に関する情報と、それらの少なくとも二つの駐車場位置における駐車スペースの利用可能性に関する情報とを含むパーキングデータPを提供することができる。この目的のために、第三の入力インターフェース2cは、例えば、エア・インターフェースを備え、無線によるインターネット接続を介する等して駐車情報サービスとのデータリンクを確立するように構成することができ、パーキングデータPは、好ましい態様においてサーバから呼び出すことができる。代替的ないし付加的に、第三の入力インターフェース2cは、パーキングデータPを含むデータベースを備えていてもよいし或いはそのようなデータベースと接続可能であるようにしてもよい。
【0030】
データ処理装置3は、位置データL、目的地データZ及びパーキングデータPに基づいて、目指す目的地辺りの駐車スペースを探して車両が少なくとも二つの駐車場位置を順番に立ち寄っていくべきその順番を算出し、好ましくは、例えば工場において又はドライバーによって例えば第二の入力インターフェース2b等を介して予め設定された確率でそれらの駐車場位置の一つに駐車スペースを見つけられるようにする。この順番はここで、例えば車両の現在位置から駐車スペースを見つけるまでの走行と、駐車スペースを見つけた駐車場位置から目指す目的地までの歩行とに要する時間を表す合計移動時間が最小であるという最適化基準を満たすように算出される。
【0031】
データ処理装置3はここで、好ましい態様では、駐車スペース探しにさまざまなやり方を利用し、特に、互いに組み合わせるように構成されている。一番目のやり方は例えば、好ましくは、駐車場位置間で進まなければならない走行距離、各駐車場位置と目指す目的地との間の各々の隔たり及び/又は駐車場位置同士の隔たり、それらの駐車場位置における駐車スペースの利用可能性、すなわち、それらの駐車場位置に立ち寄った際に空いた駐車スペースを見つける確率の少なくともいずれかに応じて、複数の駐車場位置に順次立ち寄っていくというものである。
【0032】
二番目のやり方は例えば、立ち寄った駐車場位置Pに空いた駐車スペースができるまでその駐車場位置で待つというものである。三番目のやり方は例えば、一つ又は複数の駐車場位置に何度も立ち寄る、つまり、前に既に立ち寄っているはずの駐車場位置に戻るというものである。二番目と三番目のやり方では、駐車場位置Pにおける駐車スペースの将来における埋まり具合を考慮することが好ましい。将来における駐車スペースの埋まり具合、特に、駐車スペースの埋まり具合の時間発展は、利用可能性モデル等を用いて、特に、利用可能率(この率で駐車スペースの空きがその対応する駐車場位置Pにできる。)を考慮に入れてモデル化することができる。この利用可能率は、例えば経験的に割り出すか又は推定することができる。
【0033】
ドライバーの合計移動時間について最適化された順番を見つけるために、データ処理装置3は例えば、所謂分枝限定法を適用することができる。この場合、戦略木(この戦略木の枝が、考えられ得る様々な順番を表す。)を展開することが好ましい。枝の展開は中断することができる。つまり、その枝では最適化基準を満たすことができないとき、すなわち、例えば戦略木の他の枝だと目指す目的地までより短い距離及び/又はより短い時間となる駐車スペースを同じ確率で見つけられるとき、最適化基準を満たすことができないその枝に対応する順番を破棄することができる。代替的ないし付加的に、枝の展開は、予想される最小移動時間に到達できないときには中断することができる。
【0034】
最適な順番を算出する際に、データ処理装置3は、好ましくは、異なる駐車場位置間の移動によるコスト及び/又は一つの駐車場位置で待つことによるコストを考慮する。これらのコストはこのとき、好ましい態様において、一つの戦略を実行することに関連した必要時間を表し、対応するコスト関数により算出することができる。
【0035】
このようにして算出された順番は、出力インターフェース4を介して、例えば表示装置及び/又はスピーカを介してナビゲーション情報Nとして出力することができる。
【0036】
図2は、算出された順番の一例を示し、この順番で駐車場位置P(ここでi=1…6)に立ち寄って行く。駐車場位置Pは、車両の現在位置P及び目指すべき目的地の位置Fとともに地図上に書き込まれている。各駐車場位置Pには、円グラフとして表された駐車スペースの利用可能性pπi(ここでi=1…6)が割り振られている。この利用可能性は、該当する駐車場位置Pにおいて、特に一度目に立ち寄った際に空いた駐車スペースを見つける確率に対応している。
【0037】
図示された例では、車両のドライバーは、位置Pから目指す目的地Fに到達しようとする。当然ながら、ドライバーは、先ず駐車スペースを必要とし、その次に最後の区間を歩いて移動しなければならない。各駐車場位置Pにおいて、ドライバーには、駐車スペースが使えるようになるまで待つか、別の駐車場位置Pを試してみるかの選択肢がある。ドライバーが最終的に駐車スペースを見つけるか又は一つの駐車場位置Pにおいて駐車スペースが空くのを待つようになるまでは、立ち寄りを繰り返し行なうことができる。
【0038】
純然たる例として、ルートRが太い実線として示されており、このルートが、ドライバーにとって最適の戦略に対応し、つまりは、最小のコストで、特に、最短時間で目的地Fに到達するための最適な順番で駐車場位置Pをたどっていくことに対応する。ここで、成功率が90%かそれを上回るルートRないし順番だけが許容されることが好ましい。
【0039】
駐車トライ(駐車試行)P’は、白丸で表されている。目下のケースでは、全ての駐車場位置Pに立ち寄るわけではない。ドライバーは先ず、駐車場位置Pにて駐車スペースを見つけようとし、上手くいかないときにはさらに駐車場位置Pに進む。ドライバーは、またしても上手くいかないときには、次には駐車場位置Pで駐車スペース探しを続ける。駐車場位置Pに到着する場合、特に、駐車スペースを見つけていた累積的な確率は、90%を超える。ドライバーが、それでもなお駐車場位置Pまでに何の駐車スペースも見つけていないようなら、駐車場位置Pにてそこで駐車スペースが空くまで待つことができる。成功した場合に進まなければならない歩道は、黒い破線で書き込まれている。
【0040】
図3は、順番を算出する一例を示しており、車両は、この順番で駐車場位置P(ここで、i=1…n)に立ち寄って行かなければならない。可能な駐車場位置Pは、番号付きの、水平に隣り合わせに配置された円で表されている。各駐車場位置Pから出発して、他の駐車場位置Pに向かって行ってもよいし、或いは駐車スペースが空くまで当の駐車場位置Pで待っていてもよいし、そのどちらでも構わない。これらの選択肢は、矢印で表されることによって車両の現在位置Pから出て一本の戦略木が出来上がるようになっており、その枝々が、それぞれ立ち寄るべき駐車場位置Pの順番を成している。これらの順番の一つが、黒い破線で表示されている。この順番に従って、車両は先ず位置Pに立ち寄る。空いた駐車スペースがそこで利用できない場合は、駐車場位置Pi-1に立ち寄らなければならない。空いた駐車スペースがそこで即座に利用できなければ、駐車スペースに空きができるまで待たなければならない。
【0041】
考えられる順番のそれぞれが、駐車スペースを見つけ出すための戦略πを表し、その戦略は、その順番に含まれる駐車場位置Pで駐車スペースを見つける累積的な確率で成功する。別々の駐車場位置Pへのj番目の立ち寄りの後に成功する確率は、駐車場位置Pにおける駐車スペースの利用可能性としてのpπiを用いて、
【数1】
である。別々の駐車場位置Pにおいて駐車スペースを見つける試行をm回行なう所定の戦略πの成功率は従って、
【数2】
となる。
【0042】
続けて別の駐車場位置Pで駐車スペースを見つける試みを重ねるごとに成功率は増加するので、戦略木は有限であり、戦略木のそれぞれの枝は、その枝に対応する成功率pπが、駐車スペースを見つける所定の確率paccより大きくなるときに終端する。
【0043】
最適な順番は、コストを考慮して算出され、そのコストは、異なる戦略を遂行することにより生じ、それも好ましくは、駐車スペースを発見して、そこから出発して歩いて目指す目的地に到達するまでの所要合計時間に対応する。例えば車両の現在位置Pから或る駐車場位置Pへの、又は駐車場位置Pから或る駐車場位置Pへの、又は或る駐車場位置Pから目指す目的地への、車両による走行または歩行により発生するコストを算出するために、従来技術よりNokia HERE、Grashopper又はGoogleルーティング等のルート計算方法が公知である。
【0044】
前述の走行時間又は歩行時間のコストの定量化を行ない、場合によってはさらに車両の状態、例えば道路上の車両の向きに応じてその定量化を行なうコスト関数を考えることができる。
【0045】
駐車場位置Pで待つべき戦略πのコストを計算するために、好ましい態様において、指数分布に基づいた第一の利用可能性モデルを考慮することができる。この第一の利用可能性モデルには、好ましくは、利用可能率
【数3】
が入っており、この利用可能率におけるmttp(平均駐車時間(mean time to park))は、該当する駐車場位置Pに車両が駐車する平均時間を与える。利用可能率は従って、駐車場位置Pにおいて駐車スペースに空きができる率に該当する。この場合、
【数4】
が、n台分の駐車スペースが占有されているときに時間tの後に駐車スペースに空きができる確率となる。従って、pより大きい確率で駐車スペースに空きができるまでの待ち時間は、
【数5】
である。
【0046】
例えばn=10の占有された駐車スペースで通常約t=30分の駐車が行なわれる駐車場位置Pにおいてドライバーがもし待つとすると、ドライバーは、空いた駐車スペースを99パーセントの確率で見つけるには、約t=13.82分待たなければならない。この待ち時間のコストは、例えばコスト関数cwait(p,j)(ここで、1≦j≦n)によって与えることができ、cwaitは、駐車スペースにpよりも大きい確率で空きができるまで駐車場位置Pで待つコストを定量化する。
【0047】
場合によっては、前に既に立ち寄った駐車場位置Pに再び立ち寄ることがドライバーにとって有望であることもある。駐車場位置Pを出て駐車場位置Pに再び立ち寄るコストは、時間に拠らずコスト関数c(i,j,s)によって与えられ、このときsが車両の状態を特徴付ける一方、駐車場位置Pにおける空いた駐車スペースの利用可能性は、再び立ち寄る際には変化する。この利用可能性は従って、条件付き利用可能性とも呼ばれる。時間に依存する又は条件付きの利用可能性は、前に立ち寄った際には空いた駐車スペースが見つからず、その後再び立ち寄った際には駐車スペースが見つかる確率に対応し、第二の利用可能性モデルに基づいて算出することができる。
【0048】
時間に依存する又は条件付きの利用可能性を推定できるように用いられる統計モデルは、出生死亡過程、すなわち一様なマルコフ過程である。このモデルには、好ましくは二つのパラメータが入り込んでいる:λは、要求率であり、単位時間当たり、例えば1時間当たりにその駐車スペースに駐車しようとする車両の数を特徴付け、μは利用可能率である。1台の新たな車両が駐車スペースに到着し、少なくとも1台の車両が駐車スペースを離れる確率は、いずれも指数分布によってモデル化されることが好ましい。
【0049】
要求率は、駐車場位置Pの駐車スペースに既に駐車中の車両の数とは無関係である一方、利用可能率は、駐車スペースがより多く占有されているほど大きくなる。さらに、要求率と利用可能率は、好ましくは時間に依存し、例えば日に依存或いは季節にさえ依存する。λ(t)とμ(t)を時間の関数として用いることで、駐車場位置Pにおける様々な占有状態の確率は、次の行列微分方程式により記述することができる:
【数6】
【0050】
ここで、行列の対角部分は、-λ,...,-(λ+iμ),...,-nμの項目を含んでいる。行列の上側の二次対角部分は、行列の上半分にμ,...,(i+1)μの項目を、行列の下側の二次対角部分は、行列の下半分にλの項目を含んでいる。他の全ての項目はゼロである。この式は、λ(t)とμ(t)が分かっていれば、一つの開始ベクトルpの場合に、時間の経過に伴うp(t)により駐車スペースの状態若しくはその利用可能性を記述する。行列Aを用いることで、式は、
【数7】
と書くことができる。
【0051】
関心のある期間、例えば車両が一つの駐車場位置Pから前に既に立ち寄った他の駐車場位置Pに走行するまでの間にA=一定であると仮定すると、微分方程式は行列指数関数を用いて解くことができる。例えば、p(t)=e(ここでC=A・t)というアプローチを選択でき、その場合、
【数8】
である。行列指数関数は、例えばパデ近似を適用することにより、極めて効率的に得ることができる。
【0052】
時間tの後に、前に既に立ち寄った駐車場位置Pに戻ることで空いた駐車スペースを見つけ出す相応の確率が、
【数9】
(ここで、p =(0,0,…,1) により与えられる。時間に依存する又は条件付き利用可能性に対応するこの確率は、合計移動時間に関して最適化された順番(この順番で少なくとも二つの別々の駐車場位置Pの少なくとも一部に立ち寄らなければならない。)を算出するのに用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 ナビゲーション情報を出力する装置
2a,2b,2c 入力インターフェース
3 データ処理装置
4 出力インターフェース
N ナビゲーション情報
L 位置データ
Z 目的地データ
P パーキングデータ
i,j 駐車場位置
πi 利用可能性
車両位置
F 目的地位置
R ルート
P’ 駐車トライ
π 戦略
図1
図2
図3