(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】ディップ成形用ラテックス組成物およびそれを含むディップ成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 9/10 20060101AFI20230322BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230322BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20230322BHJP
C08F 236/12 20060101ALI20230322BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20230322BHJP
B29C 41/14 20060101ALI20230322BHJP
A41D 19/00 20060101ALI20230322BHJP
B29K 19/00 20060101ALN20230322BHJP
B29L 22/00 20060101ALN20230322BHJP
【FI】
C08L9/10
C08K3/22
C08K3/06
C08F236/12
C08J5/00 CEQ
B29C41/14
A41D19/00 P
B29K19:00
B29L22:00
(21)【出願番号】P 2021021728
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2021-02-15
(31)【優先権主張番号】10-2020-0018774
(32)【優先日】2020-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516298504
【氏名又は名称】コリア クンホ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Korea Kumho Petrochemical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】100,Cheonggyecheon-ro,Jung-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ソン フン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,チョン チン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,クン-ホ
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104058(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/004459(WO,A1)
【文献】特表2019-529602(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104057(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0225553(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
C08C 19/00 - 19/44
C08F 6/00 - 246/00
C08F 301/00
C08J 5/00 - 5/02
C08J 5/12 - 5/222
B29C 41/00 - 41/36
B29C 41/46 - 41/52
B29C 70/00 - 70/88
A41D 19/00 - 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、およびエチレン性不飽和酸単量体が共重合された共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物であって、
前記共重合体ラテックスは、
イソプレン単量体
70~90重量部;
エチレン性不飽和ニトリル単量体5~30重量部;および
エチレン性不飽和酸単量体
1.5~3.5重量部が共重合された共重合体を含み、
前記共重合体ラテックスは、水、乳化剤、重合開始剤および分子量調節剤をさらに含んで共重合されて得られたものであり、
前記分子量調節剤の含有量は、前記共重合体ラテックスの単量体の総量100重量部を基準として0.3~0.45重量部であり、
前記ディップ成形用ラテックス組成物から製造されるディップ成形品の下記耐久性試験により測定される破損するまでの時間が
180分以上であり、
前記ディップ成形品の引張強度が10MPa以上であり、
前記ディップ成形品の伸び率が600%以上であることを特徴とする、ディップ成形用ラテックス組成物:
<耐久性試験>
幅30mm、長さ135mm、厚さ0.06~0.08mmのディップ成形品を長さ方向に20%伸長して35℃のpH4.0~4.3の溶液に浸漬し、
前記成形品を10秒間長さ方向の伸び率が50%になるように伸長させ、2秒間固定した後、10秒間長さ方向の伸び率が20%になるように弛緩させる工程を繰り返して前記成形品が破損するまでの時間を測定する。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和ニトリル単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロ
アクリロニトリル、およびα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和酸単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、およびマレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピルからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項4】
前記ディップ成形用ラテックス組成物は、前記共重合体ラテックスの単量体の総量100重量部を基準として、酸化亜鉛0.1~1重量部、硫黄1~2重量部、および加硫促進剤0.3~1.5重量部をさらに含むことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項5】
前記ディップ成形用ラテックス組成物は、キレート剤、分散剤、pH調節剤、脱酸素剤、粒径調節剤、老化防止剤、および酸素捕捉剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項6】
前記ディップ成形用ラテックス組成物の固形分含量は、15~25重量%であることを特徴とする、請求項1~
5のいずれか1項に記載のディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載のディップ成形用ラテックス組成物から製造されたことを特徴とする、ディップ成形品。
【請求項8】
前記ディップ成形品は、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋、コンドーム、カテーテル、または健康管理用成形品であることを特徴とする、請求項
7に記載のディップ成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディップ成形用ラテックス組成物に関し、より詳しくは、実使用耐久性に優れたディップ成形用ラテックス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用、食品用、検査用、実験用で用いられる手袋やコンドームなどのディップ成形品は、天然ゴムラテックス(natural rubber latex)を主原料として製造されていた。しかし、このような天然ゴムラテックス成形品は、内部にタンパク質を含んでいるため、使用者に接触性アレルギー反応を引き起こして発疹、かゆみ、風邪などを誘発する問題があった。その結果、タンパク質を全く含まない合成ゴムラテックスであるアクリロニトリル-ブタジエン系共重合体ラテックスを主原料として製造されたニトリルゴムラテックス成形品の使用量が、増加する傾向にある。
【0003】
ディップ成形用ラテックスの使用量の増加によって品質向上の必要性があり、最近、ディップ成形用ラテックスから製造されたディップ成形品の引張強度、伸び率などの耐久性を改善しようとする試みが行われている。しかし、このような機械的物性の改善の試みにもかかわらず、ディップ成形品の破損により人体への影響が発生する事例や、所望の目的を達成できない事例が継続して現われている。
【0004】
これは、成形品の実使用時に弱酸性である人体の皮膚または汗などの体液と接触して物性が劣化するためであって、従来の機械的物性である引張強度および伸び率は、常温の空気下で測定され、これらの特性に優れると、ディップ成形品の使用前の耐久性は担保できるが、実使用条件での耐久性が不良である場合が発生した。
【0005】
したがって、実使用条件での耐久性に優れたディップ成形品の製造のための技術開発が要求されている実情がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、その目的は、実使用条件での耐久性に優れたディップ成形品製造のためのディップ成形用ラテックス組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、イソプレン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体およびエチレン性不飽和酸単量体が共重合された共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物であって、前記ディップ成形用ラテックス組成物から製造されるディップ成形品の下記耐久性試験により測定される破損するまでの時間が45分以上であるディップ成形用ラテックス組成物を提供する:
<耐久性試験>
幅30mm、長さ135mm、厚さ0.06~0.08mmのディップ成形品を長さ方向に20%伸長して35℃のpH4.0~4.3の溶液に浸漬し、前記成形品を10秒間長さ方向の伸び率が50%になるように伸長させ、2秒間固定した後に10秒間長さ方向の伸び率が20%になるように弛緩させる工程を繰り返して、前記成形品が破損するまでの時間を測定する。
【0008】
一実施形態において、前記エチレン性不飽和ニトリル単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、およびα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0009】
一実施形態において、前記エチレン性不飽和酸単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、およびマレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピルからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0010】
一実施形態において、前記共重合体ラテックスは、イソプレン単量体30~90重量部;エチレン性不飽和ニトリル単量体1~55重量部;およびエチレン性不飽和酸単量体0.001~20重量部が共重合された共重合体を含むことができる。
【0011】
一実施形態において、前記共重合体ラテックスは、水、乳化剤、重合開始剤、および分子量調節剤をさらに含んで共重合されて得られたものであり得る。
【0012】
一実施形態において、前記分子量調節剤の含有量は、前記共重合体ラテックスの単量体の総量100重量部を基準として0.1~1重量部であってもよい。
【0013】
一実施形態において、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、前記共重合体ラテックスの単量体の総量100重量部を基準として、酸化亜鉛0.1~1重量部、硫黄1~2重量部、および加硫促進剤0.3~1.5重量部をさらに含むことができる。
【0014】
一実施形態において、前記ディップ成形用ラテックス組成物は、キレート剤、分散剤、pH調節剤、脱酸素剤、粒径調節剤、老化防止剤、および酸素捕捉剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができる。
【0015】
一実施形態において、前記ディップ成形用ラテックス組成物の固形分の含有量は、15~25重量%であってもよい。
【0016】
一実施形態において、前記ディップ成形用ラテックス組成物から製造されるディップ成形品の上記耐久性試験により測定される破損するまでの時間が60分以上であり、前記ディップ成形品の引張強度が10MPa以上であり、前記ディップ成形品の伸び率が600%以上であってもよい。
【0017】
本発明の他の一側面は、上述したディップ成形用ラテックス組成物から製造されるディップ成形品を提供する。
【0018】
一実施形態において、前記ディップ成形品は、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋、コンドーム、カテーテル、または健康管理用成形品であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一側面によれば、保管時の物性以外にも、実使用物性に優れたディップ成形品の製造に用いられるディップ成形用ラテックス組成物が提供され得る。
【0020】
本発明の多様な側面による効果は、上述した効果に限定されるものではなく、本明細書の詳細な説明または特許請求の範囲に記載された構成から推論可能な全ての効果を含むものと理解しなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の多様な実施様態のうち一部を参照して説明する。しかしながら、本明細書の記載事項は様々な異なる形態で具現することができ、したがって、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。
【0022】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとの用語は、「直接的に連結」されている場合だけでなく、それらの間に他の部材を介在して「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」との用語は、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外することではなく他の構成要素をさらに具備できることを意味する。。
【0023】
本明細書で数値範囲が記載されたとき、その具体的な範囲が特に記述されない限り、その値は有効数字に対する化学での標準規則によって提供された有効数字の精度を有する。例えば、10は、5.0~14.9の範囲を含み、数字10.0は、9.50~10.49の範囲を含む。
【0024】
以下、本発明の好ましい一実施形態を詳しく説明する。
【0025】
<ディップ成形用ラテックス組成物>
本発明の一実施形態によるディップ成形用ラテックス組成物は、イソプレン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、およびエチレン性不飽和酸単量体が共重合された共重合体ラテックスを含むディップ成形用ラテックス組成物であって、前記ディップ成形用ラテックス組成物から製造されるディップ成形品の下記耐久性試験により測定される破損するまでの時間が45分以上、60分以上、75分以上、90分以上、105分以上、120分以上、135分以上、150分以上、165分以上、180分以上、195分以上、210分以上、225分以上、または240分以上であってもよい:
<耐久性試験>
幅30mm、長さ135mm、厚さ0.06~0.08mmのディップ成形品を長さ方向に20%伸長して35℃のpH4.0~4.3の溶液に浸漬し、前記成形品を10秒間長さ方向の伸び率が50%になるように伸長させ、2秒間固定した後に10秒間長さ方向の伸び率が20%になるように弛緩させる工程を繰り返して、前記成形品が破損するまでの時間を測定する。
【0026】
上記の耐久性試験は、ディップ成形品の実使用時に接触可能性が高い皮膚、体液と類似した条件である35℃、pH4.0~4.3の溶液中で伸長および弛緩を繰り返して試験片の破損の有無を確認することで、例えば、上記成形品が手袋であれは、指の動きによって成形品が伸長と弛緩とを繰り返す状況を真似て、実使用条件でのディップ成形品の耐久性を測定することができる。
【0027】
上記耐久性試験により測定される破損するまでの時間が45分未満であれば、従来のディップ成形用ラテックス組成物に比べて、実使用条件の耐久性改善効果が低い。
【0028】
上記共重合体ラテックスは、イソプレン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、およびエチレン性不飽和酸単量体に由来した構造を含むことができる。上記イソプレン単量体に由来した構造は、ディップ成形品に柔軟性を付与することができる。前記共重合体ラテックスの主原料でイソプレン単量体を用いると、実使用条件の耐久性が一層優秀になる。
【0029】
上記エチレン性不飽和ニトリル単量体に由来した構造は、ディップ成形品の強度と耐薬品性とを改善することができる。上記エチレン性不飽和ニトリル単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、およびα-シアノエチルアクリロニトリルからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0030】
上記エチレン性不飽和酸単量体に由来した構造は、架橋構造を形成してディップ成形品の物性を維持することができる。上記エチレン性不飽和酸単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、およびマレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピルからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0031】
一例として、上記共重合体ラテックスは、イソプレン単量体30~90重量部;エチレン性不飽和ニトリル単量体1~55重量部;およびエチレン性不飽和酸単量体0.001~20重量部を含むことができる。
【0032】
例えば、上記イソプレン単量体の含有量は、30重量部、32.5重量部、35重量部、37.5重量部、40重量部、42.5重量部、45重量部、47.5重量部、50重量部、52.5重量部、55重量部、57.5重量部、60重量部、62.5重量部、65重量部、67.5重量部、70重量部、72.5重量部、75重量部、77.5重量部、80重量部、82.5重量部、85重量部、87.5重量部、または90重量部であってもよい。上記イソプレン単量体の含有量が30重量部未満であると、ディップ成形品が過度に硬化されて着用感が不良となる場合があり、90重量部を超えると、上記共重合体ラテックスの製造時の反応速度が過度に遅くなる場合がある。
【0033】
上記エチレン性不飽和ニトリル単量体の含有量は、1重量部、2.5重量部、5重量部、7.5重量部、10重量部、12.5重量部、15重量部、17.5重量部、20重量部、22.5重量部、25重量部、27.5重量部、30重量部、32.5重量部、35重量部、37.5重量部、40重量部、42.5重量部、45重量部、47.5重量部、50重量部、52.5重量部、または55重量部であってもよい。上記エチレン性不飽和ニトリル単量体の含有量が1重量部未満であると、ディップ成形品の耐薬品性または機械的強度が低下する場合があり、55重量部を超えると、ディップ成形品の伸び率が低下して使用性が低下する場合がある。
【0034】
上記エチレン性不飽和酸単量体の含有量は、0.001重量部、0.5重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部、5重量部、5.5重量部、6重量部、6.5重量部、7重量部、7.5重量部、8重量部、8.5重量部、9重量部、9.5重量部、10重量部、10.5重量部、11重量部、11.5重量部、12重量部、12.5重量部、13重量部、13.5重量部、14重量部、14.5重量部、15重量部、15.5重量部、16重量部、16.5重量部、17重量部、17.5重量部、18重量部、18.5重量部、19重量部、19.5重量部、または20重量部であってもよい。上記エチレン性不飽和酸単量体の含有量が0.001重量部未満であると、ディップ成形品の引張強度が低下する場合があり、20重量部を超えると、ディップ成形品が過度に硬化して着用感が悪くなる場合がある。
【0035】
本明細書において「単量体の総量」とは、上記イソプレン単量体、上記エチレン性不飽和ニトリル単量体、および上記エチレン性不飽和酸単量体を合わせた量を意味するが、上記共重合体ラテックスは、耐久性の試験結果が上記範囲を逸脱しない程度で、上述したイソプレン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、およびエチレン性不飽和酸単量体に由来した構造以外の重合性単量体に由来した構造をさらに含むことができ、このとき、「単量体の総量」は、上記重合性単量体の量をさらに含む。
【0036】
上記共重合体ラテックスは、水、乳化剤、重合開始剤、および分子量調節剤をさらに含んで共重合され得る。
【0037】
上記水の含有量は、上記単量体の総量100重量部を基準として100~120重量部であってもよい。上記水の含有量が100重量部未満であると、粘度が過度に上昇して成形品の製造が困難になる場合があり、120重量部を超えると、固形分含量が過度に低くなり得る。
【0038】
上記乳化剤は、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、または両性界面活性剤であってもよい。例えば、陰イオン性界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、およびアルキルエーテル硫酸エステル塩からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができるが、これらに限定されるものではない。上記乳化剤の含有量は、上記単量体の総量100重量部を基準として、0.8~8重量部、例えば、0.8重量部、1.0重量部、1.2重量部、1.4重量部、1.6重量部、1.8重量部、2.0重量部、2.2重量部、2.4重量部、2.6重量部、2.8重量部、3.0重量部、3.2重量部、3.4重量部、3.6重量部、3.8重量部、4.0重量部、4.2重量部、4.4重量部、4.6重量部、4.8重量部、5.0重量部、5.2重量部、5.4重量部、5.6重量部、5.8重量部、6.0重量部、6.2重量部、6.4重量部、6.6重量部、6.8重量部、7.0重量部、7.2重量部、7.4重量部、7.6重量部、7.8重量部、または8.0重量部が用いられ得る。
【0039】
上記重合開始剤は、ラジカル開始剤であってもよい。ラジカル開始剤は、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、および過酸化水素からなる群より選択される無機過酸化物;t-ブチルパーオキシド、キュメンヒドロパーオキシド、p-メンタンヒドロパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、アセチルパーオキシド、イソブチルパーオキシド、オクタノイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサンノイルパーオキシド、およびt-ブチルパーオキシイソブチレートからなる群より選択される有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、およびアゾビスイソ酪酸(ブチル酸)メチルからなる群より選択されるアゾ系開始剤のうち一つ以上であってもよいが、これらに限定されるものではない。上記重合開始剤の含有量は、上記単量体の総量100重量部を基準として0.01~1.5重量部、例えば、0.01重量部、0.10重量部、0.20重量部、0.30重量部、0.40重量部、0.50重量部、0.60重量部、0.70重量部、0.80重量部、0.90重量部、1.00重量部、1.10重量部、1.20重量部、1.30重量部、1.40重量部、または1.50重量部が用いられ得る。
【0040】
上記分子量調節剤は、α-メチルスチレンダイマー(dimer)、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロム化メチレンなどのハロゲン化炭化水素;テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの含硫黄化合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。上記分子量調節剤の含有量は、上記単量体の総量100重量部を基準として0.1~1重量部であってもよい。例えば、上記分子量調節剤の含有量は、0.1重量部、0.15重量部、0.2重量部、0.25重量部、0.3重量部、0.35重量部、0.4重量部、0.45重量部、0.5重量部、0.55重量部、0.6重量部、0.65重量部、0.7重量部、0.75重量部、0.8重量部、0.85重量部、0.9重量部、0.95重量部、または1重量部であってもよい。上記分子量調節剤の含有量が0.1重量部未満であると、ゲルが生成してラテックスの安定性が低下する場合があり、1重量部を超えると、引張強度が不良であるか、応力維持率が低下すること以外にも、実使用耐久性が低下する場合がある。
【0041】
上記共重合体ラテックスは、固形分含量が35~65重量%であってもよく、pHが7.0~9.0であってもよい。
【0042】
上記のディップ成形用ラテックス組成物は、上記単量体の総量100重量部を基準として、酸化亜鉛0.1~1重量部、硫黄1~2重量部、および加硫促進剤0.3~1.5重量部をさらに含むことができる。上記ディップ成形用ラテックス組成物は、水酸化カリウム水溶液をさらに含むことができる。
【0043】
上記酸化亜鉛は、上記エチレン性不飽和酸単量体に由来した構造とイオン結合を形成して架橋構造を形成することができる。上記酸化亜鉛の含有量は、例えば、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、または1重量部であってもよい。上記酸化亜鉛が過度に少ないと、実使用耐久性が低下する場合があり、過度に多いと、引張強度が低下する場合がある。
【0044】
上記硫黄は、上記イソプレン単量体に由来した構造と反応して架橋構造を形成することができる。上記硫黄の含有量は、例えば、1重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.3重量部、1.4重量部、1.5重量部、1.6重量部、1.7重量部、1.8重量部、1.9重量部、または2.0重量部であってもよい。上記硫黄の含有量が1重量部未満であると、引張強度などの機械的物性と実使用耐久性が低下する場合があり、2重量部を超えると、使用者のアレルギー反応を誘発する場合がある。
【0045】
上記加硫促進剤の含有量は、例えば、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.3重量部、1.4重量部、または1.5重量部であってもよい。または、上記加硫促進剤は、上記硫黄の投入量に対して50~75重量%で投入され得る。
【0046】
上記ディップ成形用ラテックス組成物は、キレート剤、分散制、pH調節剤、脱酸素剤、粒径調節剤、老化防止剤、および酸素捕捉剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができる。これら添加剤としては、当業界の公知の構成を用いることができ、種類、機能、および添加量に対する説明は省略する。
【0047】
上記ディップ成形用ラテックス組成物の固形分含量は、15~25重量%、例えば、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、または25重量%であってもよい。例えば、上記ディップ成形用ラテックス組成物は、固形分含量が35~65重量%、例えば、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%、50重量%、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、または65重量%である共重合体ラテックスに水酸化カリウム水溶液を添加して固形分15~25重量%に調節したものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0048】
上記ディップ成形用ラテックス組成物から製造されるディップ成形品の引張強度は、3MPa以上、5MPa以上、7MPa以上、9MPa以上、11MPa以上、13MPa以上、15MPa以上、20MPa以上、25MPa以上、30MPa以上、または35MPa以上であってもよいが、これらに限定されるものではない。引張強度が高いほど保管時の耐久性は向上するが、伸び率などのその他機械的物性が減少し得る。
【0049】
上記ディップ成形用ラテックス組成物から製造されるディップ成形品の伸び率は、600%以上、650%以上、700%以上、750%以上、800%以上、850%以上、または900%以上であってもよいが、これらに限定されるものではない。伸び率が高いほど着用感などが向上するが、その他の機械的物性とトレードオフの関係となり得る。
【0050】
上記ディップ成形用ラテックス組成物から製造されるディップ成形品の耐久性試験により測定される破損するまでの時間が60分以上であり、上記ディップ成形品の引張強度が10MPa以上であり、上記ディップ成形品の伸び率が600%以上であってもよい。従来のブタジエン系ディップ成形用ラテックス組成物とは異なり、本発明の一側面によるディップ成形用ラテックス組成物は、最小限の引張強度および伸び率を維持すると同時に、耐久性試験から確認される実使用耐久性に優れるので、高品質のディップ成形品の製造に用いられ得る。
【0051】
本発明の他の一側面によるディップ成形品は、上述したディップ成形用ラテックス組成物から製造され得る。上記ディップ成形品の各特性は上述した通りである。
【0052】
上記ディップ成形品は、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋、コンドーム、カテーテルまたは健康管理用成形品であってもよい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例に関してより詳しく説明する。ただし、以下の実験結果は、上記実施形態のうち代表的な実験結果のみを記載したものであり、実施例などによって本発明の範囲と内容が縮小されるか制限されると解釈されてはいけない。下記で明示的に提示しない本発明の多様な具現例のそれぞれの効果は、該当部分で具体的に記載する。
【0054】
<製造例>
攪拌機、温度計、冷却器、および窒素ガスの引込口が具備されており、各構成要素を連続的に投入できるように装備された1Lの高圧反応器を準備した。前記の高圧反応器を窒素で置換した後、イソプレン(IPM)、アクリロニトリル(AN)、およびメタクリル酸(MAA)の単量体混合物を投入した。前記の高圧反応器に、分子量調節剤としてのt-ドデシルメルカプタン(TDDM)、乳化剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム2重量部、およびイオン交換水120重量部を投入した。前記の高圧反応器の温度を約25~45℃まで昇温させた後、重合開始剤として過硫酸カルシウムを0.3重量部投入した。上記単量体混合物を基準に転換率が約95%に到逹した時点で、水酸化ナトリウム0.9重量部を投入して重合反応を停止した。その後、精製工程を通じて、未反応単量体を除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤などを添加して、固形分濃度45重量%、pH8.5のカルボン酸変性イソプレン-ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0055】
<比較製造例>
イソプレンの代わりに1,3-ブタジエンを投入したこと以外は、上記製造例と同様の方法で共重合体ラテックスを得た。
【0056】
<実施例および比較例>
上記製造例または比較製造例から得たラテックス100重量部に、硫黄(S)、酸化亜鉛(ZnO)、加硫促進剤としてジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(zinc dibutyldithiocarbamate、ZDBC)を添加した。その後、4%水酸化カリウム水溶液、および二次蒸留水を投入して、固形分濃度20重量%、pH10.0であるディップ成形用組成物を製造した。
【0057】
上記製造例、比較製造例、実施例、および比較例で用いられた各成分の投入量を下の表1に示した。
【0058】
【0059】
<物性測定>
本開示で測定された物性それぞれに対する試験方法は下記の通りである。測定条件に対する別の言及がない場合、常温、常圧で測定した。
【0060】
ASTM D-412に準じて、上記実施例および比較例のディップ成形用組成物を成形してダンベル形状の試験片を製造した。
【0061】
上記実施例および比較例のディップ成形用組成物を成形して、横30mm、縦135mm、厚さ0.06~0.08mmの矩形試験片を製造した。
【0062】
引張強度および伸び率:万能試験機(universal testing machine、UTM)を用いてダンベル形状の試験片を500mm/分の速度で伸長させ、試験片の破断が発生したときに加えられた引張荷重と伸び率とを測定した。
【0063】
応力維持率(stress retention、S/R):万能試験機を用いてダンベル形状の試験片を500mm/分の速度で伸び率100%まで伸長させた後、初期の引張荷重(σ0)を測定し、6分後の引張荷重(σ6)を測定して、下記式によって応力維持率を算出した。
【0064】
【0065】
耐久性(durability):クエン酸を用いてpH4の溶液を製造して35℃の条件で維持した。矩形試験片を縦方向に20%伸長させた状態で上記の溶液に投入した。試験片を10秒間伸び率50%まで伸長させ、2秒間固定した後に10秒間伸び率20%に弛緩させる作業を繰り返して、試験片が破損するまでの時間を、実施例1~3の試験片は最大240分、それ以外は最大180分まで測定した。
【0066】
ゲル含量(gel content):攪拌中のイソプロピルアルコール200mLに、上記実施例および比較例で製造されたラテックスを5g投入して凝固させた。凝固物を120メッシュ(mesh)の金網で濾過し、50±2℃、750±10mmHgの恒温真空乾燥器で1時間乾燥した。その後、デシケーター(desiccator)で室温まで放置した。乾燥された試料0.25~0.35gを0.1mg単位の精度で正確に測定(Wi)して三角フラスコに投入し、メチルエチルケトン(MEK)100mLを加えた後に2時間攪拌した。その後、前記試料を濾紙で全量濾過した。濾液20mLを加熱してメチルエチルケトンを蒸発させた後、デシケーターで室温まで放冷し、0.1mg単位の精度で正確に測定(Wf)した。下記式により試料中のゲル含量を算出して、2個の平均値を小数点以下1桁まで算出した。
【0067】
【0068】
物性の測定結果を下記表2に示す。
【0069】
【0070】
上記表2を参照すると、上記比較製造例のカルボン酸変性ブタジエン-ニトリル系共重合体ラテックスから製造された比較例1~8の試験片は、引張強度、伸び率、応力維持率などは優れていたが、耐久性(破損するまでの時間)が19.0~42.0分に過ぎず、実使用条件での耐久性が充分でなかった。
【0071】
一方、上記製造例のカルボン酸変性イソプレン-ニトリル系共重合体ラテックスから製造された実施例1~17の試験片は、耐久性が45.0分以上であって、実使用条件での耐久性に優れていたことが確認できる。
【0072】
また、メタクリル酸の含有量が単量体の総量100重量部を基準として2~4重量部である実施例5~7、分子量調節剤の含有量が単量体の総量100重量部を基準として0.3~0.45重量部である実施例10~12は、耐久性が全て180分以上であって実使用条件での耐久性が顕著に優れていた。同一のラテックスから製造された実施例14~17を比較すると、単量体の総量100重量部を基準として硫黄および加硫促進剤の総量が2重量部以上である実施例14、15は、加硫効率に優れて実使用耐久性に優れていた。
【0073】
前述した本発明の説明は例示のためのものに過ぎず、本明細書の記載事項が属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変更が可能であることが理解できるであろう。したがって、上述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型として説明されている各構成要素は分散して実施することもでき、同様に、分散されたものとして説明されている構成要素を結合された形態で実施することもできる。
【0074】
本明細書の保護範囲は、特許請求の範囲により示されるが、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出される全ての変更または変形された形態は、本発明の範囲に含まれるものと解釈しなければならない。