(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】電気接続箱、電気接続箱の製造方法、及び、ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20230322BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610A
(21)【出願番号】P 2021064302
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 裕一朗
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓真
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 司
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-65338(JP,A)
【文献】特開2021-35188(JP,A)
【文献】特開平10-243521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路接続部品を取り付け可能な一又は複数の部品取付部を備えた電気接続箱であって、
当該電気接続箱の内部の電気回路に繋がる端子が取り付けられた第1部分と、前記第1部分に結合可能な第2部分であって当該電気接続箱の外部の電線に繋がる端子を取り付け可能な第2部分と、を備え、
前記第1部分と前記第2部分とは、
当該第1部分に当該第2部分を結合する際の当該第2部分の組付方向における進行向きに当該第1部分が当該第2部分を付勢した状態にて、当該第1部分に当該第2部分が前記進行向きに当接することにより、前記組付方向における当該第1部分と当該第2部分との相対移動が規制された状態にて、互いに結合して前記部品取付部を形成する、
電気接続箱。
【請求項2】
請求項1に記載の電気接続箱において、
前記第1部分は、前記第2部分に向けて突出する第1突起を有し、
前記第2部分は、前記第1部分に向けて突出する第2突起を有し、
前記第1部分と前記第2部分とは、
当該第1部分に当該第2部分を結合する際、前記第1突起を前記第2突起が前記進行向きに乗り越えた後に前記第1突起の突出面と前記第2突起の突出面とを押し付け合うことにより、当該第1部分が当該第2部分を前記進行向きに付勢する、ように構成される、
電気接続箱。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電気接続箱において、
前記第1部分と前記第2部分とは、
当該第1部分及び当該第2部分の一方から他方に向けて突出し且つ前記組付方向に延びる凸条部と、前記凸条部を受け入れるように前記他方が窪み且つ前記組付方向に延びる凹条部と、による案内構造を有し、
前記凸条部と前記凹条部とは、
当該凸条部が当該凹条部に受け入れられた状態にて、前記組付方向に交差する方向に互いに係合し、前記交差する方向における当該凸条部と前記凹条部との相対移動が規制される、
電気接続箱。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の電気接続箱において、
前記回路接続部品が、
ヒューズ、リレー及びヒュージブルリンクの少なくとも一つである、
電気接続箱。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の電気接続箱の製造方法であって、
端子が電線に接続された端子付き電線の前記端子を前記第2部分に取り付ける第1工程と、
前記第1工程の後、前記第1部分に前記第2部分を結合する第2工程と、を備える、
電気接続箱の製造方法。
【請求項6】
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の電気接続箱と、前記電気接続箱と外部負荷とを接続するための電線と、を備えたワイヤハーネスであって、
前記電線は、当該電線に接続され且つ前記第2部分に取り付けられる端子を有し、
前記第1部分と、前記端子が取り付けられた前記第2部分と、が互いに結合して前記部品取付部が形成される、
ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱、その電気接続箱の製造方法、及び、その電気接続箱を用いるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両等に搭載される電気接続箱(例えば、ヒューズ、リレー及びヒュージブルリンク等を内蔵した電力分配ボックス)は、各種の電装品に電線を介して接続され、各種の電装品への電力の供給等を行うようになっている。この種の電気接続箱には、一般に、ヒューズ等を取り付けるための複数の部品取付部(いわゆるキャビティ)が設けられている。
【0003】
従来の電気接続箱の一つは、電装品等に繋がる電線を電気接続箱に接続する作業の作業性を向上する等の観点から、電気接続箱の内部の電気回路に繋がる音叉端子等を収容する本体側ブロックと、電線の端末に取り付けられる外部端子を収容する外部側ブロックと、を互いに結合することで、ヒューズ等を取り付けるためのキャビティを構成するようになっている。換言すると、キャビティが、本体側ブロックと外部側ブロックとに分割可能になっている。このように、あらかじめ外部端子を収容した外部側ブロックを本体側ブロック結合してキャビティを構成することで、既存のキャビティに電線の外部端子を取り付ける作業(いわゆる後嵌め)が低減され、電線を電気接続箱に接続する作業の作業性が向上することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の電気接続箱は、電線を電気接続箱に接続する作業の作業性を向上する点で有用であるものの、キャビティが複数のブロックに分割されていることから、電気接続箱が実際に使用される際、電気接続箱を搭載した車両等の走行に起因して振動等の外力が電気接続箱に及んだとき、それらブロック間に位置ズレ(いわゆるガタつき)が生じる可能性がある。このようなブロック間の位置ズレは、キャビティに取り付けられているヒューズ等の回路接続部品に意図しない外力を及ぼす原因となり得る。ヒューズ等の回路接続部品の保護等の観点から、そのような位置ズレを出来る限り抑制することが望ましい。
【0006】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、回路接続部品へ意図しない外力が及ぶことを抑制可能な電気接続箱、電気接続箱の製造方法、及び、ワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱、電気接続箱の製造方法、及び、ワイヤハーネスは下記[1]~[6]の特徴を有する。
[1]
回路接続部品を取り付け可能な一又は複数の部品取付部を備えた電気接続箱であって、
当該電気接続箱の内部の電気回路に繋がる端子が取り付けられた第1部分と、前記第1部分に結合可能な第2部分であって当該電気接続箱の外部の電線に繋がる端子を取り付け可能な第2部分と、を備え、
前記第1部分と前記第2部分とは、
当該第1部分に当該第2部分を結合する際の当該第2部分の組付方向における進行向きに当該第1部分が当該第2部分を付勢した状態にて、当該第1部分に当該第2部分が前記進行向きに当接することにより、前記組付方向における当該第1部分と当該第2部分との相対移動が規制された状態にて、互いに結合して前記部品取付部を形成する、
電気接続箱であること。
[2]
上記[1]に記載の電気接続箱において、
前記第1部分は、前記第2部分に向けて突出する第1突起を有し、
前記第2部分は、前記第1部分に向けて突出する第2突起を有し、
前記第1部分と前記第2部分とは、
当該第1部分に当該第2部分を結合する際、前記第1突起を前記第2突起が前記進行向きに乗り越えた後に前記第1突起の突出面と前記第2突起の突出面とを押し付け合うことにより、当該第1部分が当該第2部分を前記進行向きに付勢する、ように構成される、
電気接続箱であること。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の電気接続箱において、
前記第1部分と前記第2部分とは、
当該第1部分及び当該第2部分の一方から他方に向けて突出し且つ前記組付方向に延びる凸条部と、前記凸条部を受け入れるように前記他方が窪み且つ前記組付方向に延びる凹条部と、による案内構造を有し、
前記凸条部と前記凹条部とは、
当該凸条部が当該凹条部に受け入れられた状態にて、前記組付方向に交差する方向に互いに係合し、前記交差する方向における当該凸条部と前記凹条部との相対移動が規制される、
電気接続箱であること。
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載の電気接続箱において、
前記回路接続部品が、
ヒューズ、リレー及びヒュージブルリンクの少なくとも一つである、
電気接続箱であること。
[5]
上記[1]~上記[4]の何れか一つに記載の電気接続箱の製造方法であって、
端子が電線に接続された端子付き電線の前記端子を前記第2部分に取り付ける第1工程と、
前記第1工程の後、前記第1部分に前記第2部分を結合する第2工程と、を備える、
電気接続箱の製造方法であること。
[6]
上記[1]~上記[4]の何れか一つに記載の電気接続箱と、前記電気接続箱と外部負荷とを接続するための電線と、を備えたワイヤハーネスであって、
前記電線は、当該電線に接続され且つ前記第2部分に取り付けられる端子を有し、
前記第1部分と、前記端子が取り付けられた前記第2部分と、が互いに結合して前記部品取付部が形成される、
ワイヤハーネスであること。
【0008】
上記[1]の構成の電気接続箱によれば、第1部分と第2部分とが結合されたとき、第1部分が第2部分を組付方向の進行向きに付勢した状態で第1部分に第2部分が進行向きに当接し、第1部分と第2部分との相対移動が規制される。そのため、電気接続箱に振動等の外力が及んだ場合であっても、第1部分と第2部分とが組付方向に位置ズレする(即ち、ガタツキが生じる)ことが抑制される。したがって、第1部分と第2部分との結合で形成された部品取付部にヒューズ等の回路接続部品が取り付けられたとき、第1部分と第2部分との位置ズレに起因する意図しない外力が回路接続部品に及ぶことを抑制できる。
【0009】
上記[2]の構成の電気接続箱によれば、第1部分に第2部分を結合する際、第1部分が有する第1突起を第2部分が有する第2突起が乗り越えた後に互いの突出面同士が押し付け合うことで、第1部分が第2部分を進行向きに付勢することになる。即ち、第1突起と第2突起とが、組付方向において自然に押し退け合う構造(いわゆるラップ構造)を構成することになる。これにより、第1部品および第2部品とは別のバネ等の付勢用部品を設ける場合に比べ、よりシンプルな構造で上述した付勢を実現できる。
【0010】
上記[3]の構成の電気接続箱によれば、第1部分と第2部分との結合の際、凸条部と凹条部との案内構造(いわゆるレール構造)により、結合作業の作業性が向上する。更に、凸条部と凹条部とが組付方向に交差する方向において互いに係合することで、その交差する方向における凸条部と凹条部との相対移動が規制される。よって、上述した付勢による組付方向における位置ズレの抑制に加え、組付方向に交差する方向における第1部分と第2部分との位置ズレも抑制される。よって、そのような位置ズレに起因する力が回路接続部品に及ぶことを、更に適正に抑制できる。
【0011】
上記[4]の構成の電気接続箱によれば、自動車に一般に用いられる回路接続部品(ヒューズ、リレー及びヒュージブルリンク)を取り付け可能な電気接続箱として、本発明の電気接続箱を構成できる。
【0012】
上記[5]の構成の電気接続箱の製造方法によれば、電気接続箱にヒューズ等の回路接続部品を取り付ける部品取付部が第1部分と第2部分とに分割されている。そこで、電気接続箱に接続される端子付き電線を、事前に、第1部分から分離した第2部分に取り付ける。このような第2部分への取り付けは、一般に、機械による自動化が可能である。即ち、いわゆる先嵌めが可能となる。そして、このような工程を経た第2部分を第1部分に結合することで、回路接続部品を取り付け可能な部品取付部を備えた電気接続箱を製造できる。よって、本発明の製造方法は、後嵌めの数を低減できる。なお、第2部分を第1部分に結合する作業も機械による自動化が可能である。更に、第1部分と第2部分とが結合されたとき、電気接続箱に振動等の外力が及んだ場合であっても、第1部分と第2部分とが組付方向に位置ズレする(即ち、ガタツキが生じる)ことが抑制される。したがって、第1部分と第2部分との結合で形成された部品取付部にヒューズ等の回路接続部品が取り付けられたとき、第1部分と第2部分との位置ズレに起因する意図しない外力が回路接続部品に及ぶことを抑制できる。
【0013】
上記[6]の構成のワイヤハーネスによれば、電気接続箱にヒューズ等の回路接続部品を取り付ける部品取付部が第1部分と第2部分とに分割されている。そこで、例えば、電気接続箱に接続される端子付き電線を、事前に、第1部分から分離した第2部分に取り付ける。このような第2部分への取り付けは、一般に、機械による自動化が可能である。即ち、いわゆる先嵌めが可能となる。そして、このような工程を経た第2部分を第1部分に結合することで、回路接続部品を取り付け可能な部品取付部を備えた電気接続箱を製造できる。よって、本発明のワイヤハーネスは、後嵌めの数を低減できる。なお、第2部分を第1部分に結合する作業も機械による自動化が可能である。更に、第1部分と第2部分とが結合されたとき、電気接続箱に振動等の外力が及んだ場合であっても、第1部分と第2部分とが組付方向に位置ズレする(即ち、ガタツキが生じる)ことが抑制される。したがって、第1部分と第2部分との結合で形成された部品取付部にヒューズ等の回路接続部品が取り付けられたとき、第1部分と第2部分との位置ズレに起因する意図しない外力が回路接続部品に及ぶことを抑制できる。
【0014】
したがって、本構成の電気接続箱の製造方法は、後嵌めの数を出来る限り低減するとともに振動等の外力が及んでも回路接続部品の損傷等を抑制可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、回路接続部品へ意図しない外力が及ぶことを抑制可能な電気接続箱、電気接続箱の製造方法、及び、ワイヤハーネスを提供できる。
【0016】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る電気接続箱の一部を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電気接続箱を構成する第1ブロックと第2ブロックとが分離した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す第2ブロックを後側からみた斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、
図1に示す電気接続箱の一部を示す上面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のA-A断面を示す斜視図であり、
図4(c)は、
図4(a)のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電気接続箱1及びワイヤハーネス100について説明する。電気接続箱1は、ヒューズやリレー等の回路接続部品3を内蔵した電源ボックスである。電気接続箱1は、車両に搭載されて、ワイヤハーネス100を介して各種の電装品に電力および制御信号などを送信する機能を果たす。
【0019】
以下、説明の便宜上、
図1~
図6に示すように、「前後方向」、「上下方向」、「幅方向」、「前」、「後」、「上」、及び「下」を定義する。前後方向、上下方向、及び幅方向は互いに直交している。上下方向は、電気接続箱1を搭載する車両の上下方向と一致している。
【0020】
電気接続箱1は、
図1及び
図2に示すように、第1ブロック10と、第1ブロック10と着脱可能(分離・結合が可能)な複数の第2ブロック20と、を含んでいる。複数の第2ブロック20は、第1ブロック10の幅方向及び上下方向に延びる前端面の上部に、当該前端面の上部を覆うように且つ幅方向に並ぶように組み付けられる。第2ブロック20の第1ブロック10に対する組付方向は、上下方向と一致している。単一の大きな第2ブロック20を設ける場合に比べ、本例のように複数の比較的小さな第2ブロック20を設けることで、後述する第2ブロック20の組付作業が容易になる。また、第2ブロック20と電線とを含むサブハーネスの製造も容易になる。
【0021】
各第2ブロック20が第1ブロック10に組み付けられることで、第1ブロック10及び第2ブロック20の協働によって、
図1に示すように、複数(本例では、4つ)の部品取付部2(詳細は後述される)が、幅方向に並ぶように画成され形成される。第1ブロック10及び第2ブロック20を含む電気接続箱1、並びに、電線5は、ワイヤハーネス100を構成している。各部品取付部2には、
図1に示すように、回路接続部品3が取り付けられることになる。以下、電気接続箱1を構成する各部材について順に説明する。
【0022】
まず、第1ブロック10について説明する。第1ブロック10は、樹脂成形体であり、例えば、箱状の形状を有している。
図2に示すように、第1ブロック10の幅方向及び上下方向に延びる前端面の上部には、複数の第2ブロック取付部11が、幅方向に並ぶように配置されている。各第2ブロック20は、対応する第2ブロック取付部11に組み付けられる。
【0023】
図2に示すように、第2ブロック取付部11の上部には、後方に窪み且つ上下方向に延びる複数(本例では、4つ)の凹状の分割取付部12が、幅方向に並ぶように設けられている。複数(本例では、4つ)の分割取付部12は、第2ブロック20に設けられた後述する複数(本例では、4つ)の分割取付部22との協働によって、複数(本例では、4つ)の部品取付部2を幅方向に並ぶように画成して形成することになる(
図1参照)。
【0024】
各分割取付部12には、金属製の端子4(
図2参照)が露出するように固定されている。各端子4は、本例では、音叉端子である。各端子4は、第1ブロック10の内部の電気回路(図示省略)に繋がっている。
【0025】
幅方向に並ぶ4つの分割取付部12を幅方向に区画する3つの隔壁のうち幅方向両側に位置する一対の隔壁には、幅方向中央に位置する隔壁より前方へ突出し且つ上下方向に延びる一対の延出部13が設けられている。一対の延出部13の幅方向内側面(幅方向に互いに対向する面)には、幅方向外側(互いに対向する側と反対側)に窪み且つ上下方向に延びる凹条部14が形成されている(
図6も参照)。凹条部14の上端は、開放され、凹条部14の下端は、底壁15(
図2参照)によって塞がれている。一対の凹条部14は、第2ブロック20に設けられた後述する一対の凸条部24を受け入れることになる。
【0026】
図6に示すように、凹条部14の上下方向に延びる前側側面は、(上下方向からみて)幅方向外側(凹条部14の底面側)に向かうにつれて前側に移動する向きに傾斜する傾斜面16となっている。
【0027】
図2に示すように、第2ブロック取付部11における複数の分割取付部12より下方の幅方向中央部には、前方へ突出し且つ幅方向に延びる第1突起17が形成されている(
図4(b)及び
図5も参照)。第1突起17は、第2ブロック20に設けられた後述する第2突起27と係合することになる。第1突起17の下側の幅方向に延びる側面は、
図4(b)及び
図5に示すように、(幅方向からみて)下側に向かうにつれて後側に移動する向きに傾斜する傾斜面18となっている。
【0028】
次いで、第2ブロック20について説明する。第2ブロック20は、樹脂成形体であり、本例では、
図2及び
図3に示すように、第1ブロック10の第2ブロック取付部11の形状に対応して、幅方向及び上下方向に延びる矩形平板状の形状を有している。
【0029】
図3に示すように、第2ブロック20の内部には、上下方向に貫通する複数(本例では、4つ)の端子収容孔21が、幅方向に並ぶように設けられている。第2ブロック20の後端面の上部には、複数の端子収容孔21に対応して、前方に窪み且つ上下方向に延びる複数(本例では、4つ)の凹状の分割取付部22が、第1ブロック10の複数の分割取付部12に対応して、幅方向に並ぶように設けられている。複数の分割取付部22の各々は、対応する端子収容孔21と上下方向に連通している。なお、
図3では、説明の便宜上、電線5の端末に接続される端子の図示を省略している。
【0030】
各端子収容孔21には、電線5(
図1及び
図2参照)の端末に接続された金属製の端子(図示省略)が、下側から挿入されて、対応する分割取付部22にて露出するように固定される。各電線5は、電気接続箱1と各種の電装品とを接続する上述したワイヤハーネス100を構成する複数のサブハーネスの一部である。
【0031】
ここで、電線5に接続された端子は、必要に応じ、
図2に示すように、第1ブロック10から分離した状態にある第2ブロック20に取り付けることができる。このような第2ブロック20への端子の取り付けは、一般に、機械による自動化が可能である。即ち、いわゆる先嵌めが可能となる。
【0032】
図3に示すように、幅方向に並ぶ4つの分割取付部22を幅方向に区画する3つの隔壁のうち幅方向両側に位置する一対の隔壁には、第1ブロック10の一対の延出部13に対応して、幅方向中央に位置する隔壁より後方へ突出し且つ上下方向に延びる一対の延出部23が設けられている。一対の延出部23の幅方向外側面(幅方向に互いに対向する面と反対側の面)には、第1ブロック10の一対の凹条部14に対応して、幅方向外側(互いに対向する側と反対側)に突出し且つ上下方向に延びる凸条部24が形成されている(
図6も参照)。
【0033】
図6に示すように、凸条部24の上下方向に延びる前側側面は、第1ブロック10の傾斜面16に対応して、(上下方向からみて)幅方向外側(凸条部24の頂面側)に向かうにつれて前側に移動する向きに傾斜し且つ傾斜面16と平行な傾斜面26となっている。
【0034】
図3に示すように、第2ブロック20の後端面における複数の分割取付部22より下方の幅方向中央部には、第1ブロック10の第1突起17に対応して、後方へ突出し且つ幅方向に延びる第2突起27が形成されている(
図4(b)及び
図5も参照)。
【0035】
図4(b)及び
図5に示すように、第2突起27の上側の幅方向に延びる側面は、第1突起17の傾斜面18と平行となるように、(幅方向からみて)上側に向かうにつれて前側に移動する向きに傾斜する傾斜面28となっている。ここで、傾斜面28の下端から凸条部24の下端部25(
図3参照)までの上下方向距離は、第1ブロック10の第1突起17の傾斜面18の下端から底壁15(
図2参照)までの上下方向距離より僅かに長いように設計されている。以上、電気接続箱1を構成する各部材について説明した。
【0036】
第1ブロック10に第2ブロック20を組み付けるためには、
図2に示すように、第1ブロック10の所望の第2ブロック取付部11の上方に第2ブロック20を配置した状態から、第1ブロック10に対して第2ブロック20を相対的に下方に移動させて、一対の延出部23が一対の延出部13の幅方向内側に位置する状態で、上方から、一対の凸条部24を一対の凹条部14に挿入する(受け入れる)。ここで、凸条部24が凹条部14に挿入されることで、第1ブロック10に対して第2ブロック20を上下方向に沿って案内する案内構造(いわゆるレール構造)が構成される。このため、組み付け作業の作業性が向上する。
【0037】
第1ブロック10に対する第2ブロック20の下方へ相対移動は、一対の凸条部24の下端部25(
図3参照)が一対の凹条部14の下端を塞ぐ一対の底壁15(
図2参照)に当接するまで継続される。この間、第2ブロック20の一対の凸条部24の傾斜面26が、第1ブロック10の一対の凹条部14の傾斜面16と対面接触(擦動)し続ける。なお、第1ブロック10に対する第2ブロック20の下方へ相対移動は、凸条部24の凹条部14への挿入開始から凸条部24の下端部25の底壁15への当接までの過程に亘って、機械により自動で行ってもよいし、作業者によって手動で行ってもよい。また、当該過程の前半部は作業者によって手動で行い、当該過程の後半部は機械により自動で行ってもよい。
【0038】
第2ブロック20の下方へ相対移動の過程において、一対の凸条部24の下端部25が一対の底壁15に当接する直前の段階では、第2突起27が、第1突起17に乗り上げて第1突起17から前向きの力を受けることで、第2ブロック20が一時的に前側に弾性変形する。このときに第2ブロック20が受ける前向きの力は、一対の凸条部24の傾斜面26と対面接触している第1ブロック10の凹条部14の傾斜面16が受け止める。これにより、第2ブロック20が第1ブロック10から前方へ分離することが防止される。
【0039】
一対の凸条部24の下端部25が一対の底壁15に当接すると、第1ブロック10への第2ブロック20の組み付けが完了する(
図1及び
図4参照)。第2ブロック20の組付完了状態では、第2突起27が第1突起17を乗り越えたことで第2ブロック20が弾性復帰して、第2突起27の傾斜面28と第1突起17の傾斜面18とが対面接触している(
図4(b)及び
図5参照)。なお、本例では、凸条部24の下端部25と凹条部14の底壁15との当接により、凸条部24の下向きへの移動が終了するようになっている。しかし、例えば、第1ブロック10の他の箇所と、第2ブロック20の他の箇所と、が当接することにより、凸条部24の下向きへの移動が終了するようにしてもよい。
【0040】
ここで、上述したように、第2突起27の傾斜面28の下端から凸条部24の下端部25までの上下方向距離が、第1ブロック10の第1突起17の傾斜面18の下端から底壁15までの上下方向距離より僅かに長い。このため、傾斜面18と傾斜面28とが互いに面接触して押し付け合うことで、第1突起17が、第2突起27(即ち、第2ブロック20)を下向き且つ前向きに付勢している。即ち、第1突起17と第2突起27とが、いわゆるラップ構造を有している。
【0041】
このラップ構造によって第2突起27(即ち、第2ブロック20)が受ける下向きの力は、一対の凸条部24の下端部25と当接している一対の底壁15が受け止める。これにより、一対の凸条部24の下端部25と一対の底壁15とが上下方向に互いに押し付け合った状態が維持される。この結果、第2ブロック20の組付完了状態では、上下方向における第1ブロック10と第2ブロック20との相対移動が規制される。
【0042】
同様に、このラップ構造によって第2突起27(即ち、第2ブロック20)が受ける前向きの力は、一対の凸条部24の傾斜面26と対面接触している第1ブロック10の凹条部14の傾斜面16が受け止める。これにより、一対の傾斜面26と一対の傾斜面16とが互いに面接触して押し付け合った状態が維持される。この結果、第2ブロック20の組付完了状態では、幅方向及び前後方向における第1ブロック10と第2ブロック20との相対移動も規制される。
【0043】
なお、このように、対面接触する凸条部24の側面と凹条部14の側面とが幅方向に対して傾斜する傾斜面26,16となっていることで、対面接触する凸条部24の側面と凹条部14の側面とが幅方向に平行な面である態様と比べて、凸条部24及び凹条部14の薄肉化を図ることができる(凸条部24及び凹条部14の幅方向の延在長さを小さくすることができる)。
【0044】
第2ブロック20の組付完了状態では、
図4(a)に示すように、第1ブロック10の複数(本例では、4つ)の分割取付部12と、第2ブロック20の複数(本例では、4つ))の分割取付部22とがそれぞれ、前後方向に隣接配置されることで、複数(本例では、4つ)の部品取付部2(下方に窪み且つ上方に開口するキャビティ)が、幅方向に並ぶように画成され形成される。各部品取付部2には、
図1に示すように、回路接続部品3が取り付けられる。これにより、分割取付部12に露出するように固定されている端子4と、分割取付部22に露出するように固定されている端子とが、回路接続部品3を介して電気的に接続される。この結果、第1ブロック10の内部の電気回路(図示省略)と、電気接続箱1に接続される電装品とが、電線5を介して電気的に接続される。
【0045】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係る電気接続箱1、電気接続箱1の製造方法、及びワイヤハーネス100によれば、電気接続箱1に回路接続部品3を取り付ける部品取付部2(本例では、回路接続部品3を挿入するキャビティ)が、第1ブロック10の分割取付部12と第2ブロック20の分割取付部22とに分割されている。そこで、電気接続箱1に接続されるサブハーネス等を製造する時点において、必要に応じ、第1ブロック10から分離した第2ブロック20に対応する電線5の端末の端子を取り付けることができる。このような第2ブロック20への取り付けは、一般に、機械による自動化が可能である。即ち、いわゆる先嵌めが可能となる。よって、本実施形態に係る電気接続箱1は、従来の電気接続箱に比べ、後嵌めの数を低減できる。
【0046】
更に、第1ブロック10と第2ブロック20とが結合されたとき、第1ブロック10の第1突起17が第2ブロック20の第2突起27を組付方向(上下方向)の進行向き(下向き)に付勢した状態で、第1ブロック10の底壁15に第2ブロック20の凸条部24の下端部25が進行向き(下向き)に当接し、第1ブロック10と第2ブロック20との上下方向の相対移動が規制される。そのため、電気接続箱1に振動等の外力が及んだ場合に第1ブロック10と第2ブロック20とが組付方向(上下方向)に位置ズレする(いわゆるガタツキが生じる)ことが抑制される。よって、第1ブロック10と第2ブロック20との結合で形成された部品取付部2にヒューズ等の回路接続部品3が取り付けられたとき、第1ブロック10と第2ブロック20との位置ズレに起因する力が回路接続部品3に及ぶことが抑制される。その結果、回路接続部品3の損傷等が抑制される。以上より、本実施形態に係る電気接続箱1は、振動等の外力が及んでも回路接続部品3の損傷等を抑制可能である。
【0047】
更に、本実施形態に係る電気接続箱1によれば、第1ブロック10が有する第1突起17を第2ブロック20が有する第2突起27が乗り越えた後に互いの傾斜面18,28同士が押し付け合うことで、第1ブロック10が第2ブロック20進行向き(下向き)に付勢することになる。即ち、第1突起17と第2突起27とが、いわゆるラップ構造を有する。これにより、第1ブロック10および第2ブロック20とは別の付勢用部品(例えば、バネ等)を用いる場合に比べてシンプルな構造で、第1ブロック10と第2ブロック20との位置ズレを抑制することができる。
【0048】
更に、本実施形態に係る電気接続箱1によれば、第1ブロック10と第2ブロック20とを結合する際、凸条部24と凹条部14との案内構造により、結合の作業の作業性が向上する。更に、第1ブロック10と第2ブロック20とが組付方向に交差する方向(幅方向及び前後方向)において互いに係合することで、その交差する方向(幅方向及び前後方向)における第1ブロック10と第2ブロック20との相対移動が規制される。よって、組付方向(上下方向)における第1ブロック10と第2ブロック20との位置ズレだけでなく、組付方向に交差する方向(幅方向および前後方向)における第1ブロック10と第2ブロック20との位置ズレも抑制される。よって、そのような位置ズレに起因する力が回路接続部品3に及ぶことが抑制され、回路接続部品3の損傷等が抑制される。
【0049】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0050】
上記実施形態では、このように、対面接触する凸条部24の側面と凹条部14の側面とが、幅方向に対して傾斜する傾斜面26,16となっている。これに対し、対面接触する凸条部24の側面と凹条部14の側面とが、幅方向に平行な面であってもよい。
【0051】
更に、上記実施形態では、第1ブロック10に凹条部14が設けられ、第2ブロック20に凸条部24が設けられている。これに対し、第1ブロック10に凸条部が設けられ、第2ブロック20に凹条部が設けられてもよい。
【0052】
更に、一対の凸条部24と一対の凹条部14とは、互いに対面接触(擦動)するようになっている。凸条部24と凹条部14との間のガタつきを更に抑制する観点から、凸条部24が凹条部14に圧入されるように、凸条部24及び凹条部14の形状が定められてもよい。更に、凸条部24を凹条部14に挿入する初期過程では、このような圧入が生じず、凸条部24を凹条部14に挿入する最終過程で、このような圧入が生じるように、凸条部24及び凹条部14の形状が定められてもよい。
【0053】
ここで、上述した本発明に係る電気接続箱1、電気接続箱1、及び、ワイヤハーネス100の製造方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
回路接続部品(3)を取り付け可能な一又は複数の部品取付部(2)を備えた電気接続箱(1)であって、
当該電気接続箱(1)の内部の電気回路に繋がる端子(4)が取り付けられた第1部分(10)と、前記第1部分(10)と結合可能な第2部分(20)であって当該電気接続箱(1)の外部の電線(5)に繋がる端子を取り付け可能な第2部分(20)と、を備え、
前記第1部分(10)と前記第2部分(20)とは、
当該第1部分(10)に当該第2部分(20)を結合する際の当該第2部分(20)の組付方向における進行向きに当該第1部分(10)が当該第2部分(20)を付勢した状態にて、当該第1部分(10)に当該第2部分(20)が前記進行向きに当接することにより、前記組付方向における当該第1部分(10)と当該第2部分(20)との相対移動が規制された状態にて、互いに結合して前記部品取付部(2)を形成する、
電気接続箱(1)。
[2]
上記[1]に記載の電気接続箱(1)において、
前記第1部分(10)は、前記第2部分(20)に向けて突出する第1突起(17)を有し、
前記第2部分(20)は、前記第1部分(10)に向けて突出する第2突起(27)を有し、
前記第1部分(10)と前記第2部分(20)とは、
当該第1部分(10)に当該第2部分(20)を結合する際、前記第1突起(17)を前記第2突起(27)が前記進行向きに乗り越えた後に前記第1突起(17)の突出面(18)と前記第2突起(27)の突出面(28)とを押し付け合うことにより、当該第1部分(10)が当該第2部分(20)を前記進行向きに付勢する、ように構成される、
電気接続箱(1)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載の電気接続箱(1)において、
前記第1部分(10)と前記第2部分(20)とは、
当該第1部分(10)及び当該第2部分(20)の一方(20)から他方に向けて突出し且つ前記組付方向に延びる凸条部(24)と、前記凸条部(24)を受け入れるように前記他方(10)が窪み且つ前記組付方向に延びる凹条部(14)と、による案内構造を有し、
前記凸条部(24)と前記凹条部(14)とは、
当該凸条部(24)が当該凹条部(14)に受け入れられた状態にて、前記組付方向に交差する方向に互いに係合し、前記交差する方向における当該凸条部(24)と当該凹条部(14)との相対移動が規制される、
電気接続箱(1)。
[4]
上記[1]~上記[3]の何れか一つに記載の電気接続箱(1)において、
前記回路接続部品(3)が、
ヒューズ、リレー及びヒュージブルリンクの少なくとも一つである、
電気接続箱(1)。
[5]
上記[1]~上記[4]の何れか一つに記載の電気接続箱(1)の製造方法であって、
端子が電線(5)に接続された端子付き電線の前記端子を前記第2部分(20)に取り付ける第1工程と、
前記第1工程の後、前記第1部分(10)に前記第2部分(20)を結合する第2工程と、を備える、
電気接続箱(1)の製造方法。
[6]
上記[1]~上記[4]の何れか一つに記載の電気接続箱(1)と、前記電気接続箱(1)と外部負荷とを接続するための電線(5)と、を備えたワイヤハーネス(100)であって、
前記電線(5)は、当該電線(5)に接続され且つ前記第2部分(20)に取り付けられる端子を有し、
前記第1部分(10)と、前記端子が取り付けられた前記第2部分(20)と、が互いに結合して前記部品取付部(2)が形成される、
ワイヤハーネス(100)。
【符号の説明】
【0054】
1 電気接続箱
2 部品取付部
3 回路接続部品
4 端子
5 電線
10 第1ブロック(第1部分)
14 凹条部
17 第1突起
18 傾斜面(突出面)
20 第2ブロック(第2部分)
24 凸条部
27 第2突起
28 傾斜面(突出面)
100 ワイヤハーネス