(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/92 20190101AFI20230322BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20230322BHJP
B29C 48/21 20190101ALI20230322BHJP
B29C 48/285 20190101ALI20230322BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/08
B29C48/21
B29C48/285
(21)【出願番号】P 2021087844
(22)【出願日】2021-05-25
(62)【分割の表示】P 2021062023の分割
【原出願日】2021-03-31
【審査請求日】2021-05-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】木林 達也
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】河原 正
【審判官】清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-168855(JP,A)
【文献】特開2010-260938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
B29B17/00-17/04
C08J11/00-11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕フィルムを含む再生原料をペレット化することによって、再生ペレットを製造する再ペレット化ステップと、
前記再生ペレットの流動性を測定する測定ステップと、
測定された流動性に基づいて前記再生ペレットをロット管理する管理ステップと、
製造するフィルムに含まれる任意の層の流動性に基づいて、複数の前記再生ペレットのロットから、前記任意の層を構成するために用いる前記再生ペレットのロットを選択する選択ステップと、
前記選択ステップで選択されたロットの再生ペレットを用いて前記フィルムを製造する製造ステップと、を含み、
前記測定ステップでは、第1温度および第2温度における前記再生ペレットの流動性を測定し、
前記製造ステップでは、
前記選択ステップで選択されたロットの再生ペレットと、前記任意の層のバージン原料とを混合したフィルム原料を用いて前記フィルムを製造し、
前記再生ペレットの流動性と、前記任意の層の流動性との差に基づいて、前記フィルム原料の流動性が、前記任意の層の流動性を含む所定範囲に含まれるように
、かつ、
前記フィルム原料の流動性が、前記第1温度における前記任意の層の流動性を含む第1所定範囲に含まれるように、かつ、前記第2温度における前記任意の層の流動性を含む第2所定範囲に含まれるように、前記再生ペレットと前記バージン原料との混合比を決定する
フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、再生原料の流動性を測定し、流動性が第1範囲に含まれる再生原料を第1出荷用として管理し、流動性が第2範囲に含まれる再生原料を第2出荷用として管理する品質管理方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、再生原料を用いて高い品質のフィルムを製造できるフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係るフィルムの製造方法は、破砕フィルムを含む再生原料をペレット化することによって、再生ペレットを製造する再ペレット化ステップと、前記再生ペレットの流動性を測定する測定ステップと、測定された流動性に基づいて前記再生ペレットをロット管理する管理ステップと、製造するフィルムに含まれる任意の層の流動性に基づいて、複数の前記再生ペレットのロットから、前記任意の層を構成するために用いる前記再生ペレットのロットを選択する選択ステップと、前記選択ステップで選択されたロットの再生ペレットを用いて前記フィルムを製造する製造ステップと、を含む。
【0006】
上記フィルムの製造方法においては、選択ステップにおいて、任意の層の流動性に近い再生ペレットのロットが選択され、選択されたロットの再生ペレットがフィルムの製造に用いられる。このため、高い品質のフィルムを製造できる。
【0007】
本発明の第2観点に係るフィルムの製造方法は、前記製造ステップでは、前記選択ステップで選択されたロットの再生ペレットと、前記任意の層のバージン原料とを混合したフィルム原料を用いて前記フィルムを製造する。
【0008】
上記フィルムの製造方法では、再生ペレットにバージン原料が混合されたフィルム原料がフィルムの製造に用いられる。このため、より高い品質のフィルムを製造できる。
【0009】
本発明の第3観点に係るフィルムの製造方法は、第2観点に係るフィルムの製造方法であって、前記製造ステップでは、前記再生ペレットの流動性と、前記任意の層の流動性との差に基づいて、前記再生ペレットと前記バージン原料との混合比を決定する。
【0010】
再生ペレットの流動性と任意の層の流動性との差が小さいほど、フィルム原料に占めるバージン原料の割合を小さくできる。一方、高い品質のフィルムを製造するためには、再生ペレットの流動性と任意の層の流動性との差が大きいほど、フィルム原料に占めるバージン原料の割合が大きくなる。上記フィルムの製造方法では、再生ペレットとバージン原料との混合比を適切に決めることができる。
【0011】
本発明の第4観点に係るフィルムの製造方法は、第3観点に係るフィルムの製造方法であって、前記製造ステップでは、前記フィルム原料の流動性が、前記任意の層の流動性を含む所定範囲に含まれるように前記再生ペレットと前記バージン原料との混合比を決定する。
【0012】
上記フィルムの製造方法によれば、フィルム原料に占める再生ペレットの割合を大きくできる。
【0013】
本発明の第5観点に係るフィルムの製造方法は、第4観点に係るフィルムの製造方法であって、前記製造ステップでは、前記フィルム原料の流動性が、第1温度における前記任意の層の流動性を含む第1所定範囲に含まれるように、かつ、第2温度における前記任意の層の流動性を含む第2所定範囲に含まれるように、前記再生ペレットと前記バージン原料との混合比を決定する。
【0014】
上記フィルムの製造方法によれば、複数の温度におけるフィルム原料の流動性が任意の層の流動性と近いため、より高い品質のフィルムを製造できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に関するフィルムの製造方法によれば、再生原料を用いて高い品質のフィルムを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】フィルムの品番と内層の流動性との関係を示す表。
【
図3】フィルムの製造工程の一例を示すフローチャート。
【
図4】再生ペレットのロットと流動性との関係を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るフィルムの製造方法について説明する。
【0018】
<1.概要>
図1は、フィルム100の層構成の一例を示す断面図である。フィルム100は、外層10、20と、内層30と、接着層40と、を含む。外層10、20を構成する材料は、例えば、ポリエステル系樹脂である。ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、または、ポリブチレンナフタレートである。本実施形態では、外層10、20を構成する材料は、ポリエチレンテレフタレートである。内層30は、外層10と外層20との間に積層される。内層30を構成する材料は、例えば、スチレン系樹脂である。スチレン系樹脂は、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン、または、アクリロニトリルブタジエンスチレンである。本実施形態では、内層30を構成する材料は、ポリスチレンである。接着層40は、第1接着層41および第2接着層42を含む。第1接着層41は、外層10と内層30とを接合する。第2接着層42は、外層20と内層30とを接合する。接着層40を構成する材料は、例えば、ポリエステル系エラストマー等の接着剤である。フィルム100は、商品に関する説明等が記載された印刷層が任意の位置に積層され、ペットボトル等に貼り付けられて使用される。
【0019】
図2は、フィルム100の品番と、内層30の流動性との関係を示す表である。フィルム100は、層構成が同じであっても、例えば、外層10および外層20に対する内層30の比率が異なる複数の品番を有する。複数の品番は、例えば、品番A101、品番A102、および、品番A103を含む。品番A101、品番A102、および、品番A103のフィルム100においては、第1温度TAおよび第2温度TBにおける内層30の流動性が異なる。内層30の流動性を評価する指標は、例えば、MFR(Melt Flow Rate)である。内層30の流動性は、公知のメルトフローインデクサによって測定される。本実施形態では、第2温度TBは、第1温度TAよりも高い。第2温度TBは、好ましくは、フィルム100を押出成形する場合に、ダイを通過するときの樹脂の温度であることが好ましい。なお、
図2に示されるMFR値は、一例である。
【0020】
フィルム100のような、複数種類の層を含む積層フィルムが一般的に知られている。一般的に、積層フィルムから得られた再生原料を用いて生産されたフィルムにおいては、例えば、フィルムの外観が悪化し、フィルムの性能が低下するため、積層フィルムのリサイクルは難しい。
【0021】
本実施形態のフィルムの製造方法においては、工夫が施されているため、積層フィルムから回収された再生原料を用いたとしても、高品質のフィルムを製造可能となっている。以下、本実施形態のフィルムの製造方法について詳細に説明する。
【0022】
<2.フィルムの製造方法>
図3は、本実施形態のフィルムの製造方法におけるフィルムの製造工程の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される工程の前には、廃棄フィルムに対して印刷層を除去する脱墨処理が実施される。脱墨処理が実施された廃棄フィルムは、粉砕され、多数のフィルム片(以下では、「破砕フィルム」という)を含む再生原料となる。再生原料には、外層10、20、内層30、および、接着層40が含まれる。本実施形態では、再生原料を内層30を構成する材料として用いる場合について説明する。
【0023】
ステップS11(再ペレット化ステップ)では、フィルムの製造装置によって、破砕フィルムを含む再生原料がペレット化され、再生ペレットが製造される。
【0024】
ステップS12(測定ステップ)では、メルトフローインデクサによって、再生ペレットのMFR値が測定される。ステップS12では、第1温度TAおよび第2温度TBにおける再生ペレットのMFR値が測定される。
【0025】
ステップS13(管理ステップ)では、測定されたMFR値に基づいて、再生ペレットがロット管理される。
図4は、再生ペレットのロット管理の一例である。破砕フィルムは、例えば、フィルムが使用されていた環境、および、廃棄されたフィルムが保管されていた環境等によって特性が大きく異なる。このため、破砕フィルムを含む再生原料から製造される再生ペレットのMFR値も破砕フィルムの特性に応じて異なる。
図4のように、MFR値に基づいて再生ペレットをロット管理することによって、製造するフィルム100の内層30を構成するために用いる好適なMFR値を有する再生ペレットを容易に選択できる。
【0026】
ステップS14(選択ステップ)では、製造するフィルム100の内層30の流動性に基づいて、複数の再生ペレットのロットRA~RCから、内層30を構成するために用いる再生ペレットのロットが選択される。本実施形態では、ステップS14において、内層30の第2温度TBにおけるMFR値とロットRA~RCの再生ペレットの第2温度TBにおけるMFR値とを比較することによって、内層30を構成するために用いる再生ペレットのロットが選択される。内層30の第1温度TAにおけるMFR値とロットRA~RCの再生ペレットの第1温度TAにおけるMFR値とを比較することによって、内層30を構成するために用いる再生ペレットのロットを選択してもよい。
【0027】
例えば、
図2に示される品番A101のフィルム100を製造する場合、品番A101のフィルム100の内層30の第2温度TBにおけるMFR値に近いMFR値を有するロットRAの再生ペレットが選択される。品番A102のフィルム100を製造する場合、品番A102のフィルム100の内層30の第2温度TBにおけるMFR値に近いMFR値を有するロットRBの再生ペレットが選択される。品番A103のフィルム100を製造する場合、品番A103のフィルム100の第2温度TBにおける内層30のMFR値に近いMFR値を有するロットRCの再生ペレットが選択される。なお、ステップS14では、作業者がロットを選択してもよく、記憶装置に記憶されるプログラムをコンピュータが実行することによってロットが選択されてもよい。
【0028】
ステップS15(製造ステップ)では、製造装置によって、ステップS14で選択されたロットの再生ペレットと、内層30のバージン原料とを混合したフィルム原料が製造される。再生ペレットとバージン原料との混合比は、選択されたロットの再生ペレットのMFR値と、製造するフィルム100の内層30のMFR値との差に基づいて決定されることが好ましい。例えば、選択されたロットの再生ペレットのMFR値と、製造するフィルム100の内層30のMFR値との差が小さい程、フィルム原料に占めるバージン原料の割合が小さくなるように、混合比が決められる。選択されたロットの再生ペレットのMFR値と、製造するフィルム100の内層30のMFR値との差が大きい程、フィルム原料に占めるバージン原料の割合が大きくなるように、混合比が決められる。
【0029】
ステップS15では、フィルム原料のMFR値が、内層30のMFR値を含む所定範囲に含まれるように、再生ペレットとバージン原料との混合比が決められることが好ましい。所定範囲は、フィルム100の高い品質を維持することができる範囲である。所定範囲は、第1所定範囲および第2所定範囲を含む。第1所定範囲は、
図2に示される第1温度TAにおけるMFR値を中央値とする範囲である。第2所定範囲は、
図2に示される第2温度TBにおけるMFR値を中央値とする範囲である。第1所定範囲および第2所定範囲は、例えば、内層30のMFR値を中央値として、-20g/10min~+20g/10minの範囲である。一般的には、再生ペレットのMFR値は、バージン原料のMFR値よりも高いため、再生ペレットとバージン原料とが混合されたフィルム原料は、
図2に示される内層30のMFR値よりも高くなる。ステップS15では、フィルム原料のMFR値が、第1所定範囲および第2所定範囲に含まれるように、再生ペレットとバージン原料との混合比が決定されることが好ましい。なお、ロットRA~RCの再生ペレットとバージン原料との混合比と、フィルム原料の第1温度TAおよび第2温度TBにおけるMFR値との関係は、予め試験によって把握されている。
【0030】
ステップS16(製造ステップ)では、製造装置によって、フィルム原料を用いてフィルム100が製造される。
【0031】
<3.本実施形態の効果>
本実施形態のフィルムの製造方法においては、選択ステップにおいて、内層30のMFR値に近いMFR値を有する再生ペレットのロットが選択され、選択されたロットの再生ペレットとバージン原料とを混合したフィルム原料がフィルムの製造に用いられる。フィルム原料の分子量がある程度の大きさに保たれるため、再生原料のみを用いてフィルムを製造する場合と比較して、高い品質のフィルムを製造できる。
【0032】
<4.変形例>
上記実施形態は本発明に関するフィルムの製造方法が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関するフィルムの製造方法は、実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の幾つかの例を示す。
【0033】
<4-1>
上記実施形態では、フィルム製造工程のステップS15において、ステップS14で選択されたロットの再生ペレットと、内層30のバージン原料とを混合したフィルム原料が製造された。しかし、フィルム製造工程は、これに限定されない。例えば、フィルム製造工程において、ステップS15を省略し、ステップS16において、ステップS14で選択されたロットの再生ペレットのみを用いてフィルム100を製造してもよい。
【0034】
<4-2>
上記実施形態では、フィルム製造工程のステップS15において、フィルム原料のMFR値が、第1所定範囲および第2所定範囲に含まれるように、再生ペレットとバージン原料との混合比が決定された。しかし、再生ペレットとバージン原料との混合比の決め方は、これに限定されない。例えば、フィルムの製造工程のステップS15において、フィルム原料のMFR値が第1所定範囲または第2所定範囲の一方のみに含まれるように再生ペレットとバージン原料との混合比を決定してもよい。
【0035】
<4-3>
上記実施形態では、フィルムの製造工程のステップS12(測定ステップ)において、第1温度TAおよび第2温度TBにおける再生ペレットのMFR値が測定されたが、第1温度TAまたは第2温度TBの一方における再生ペレットのMFR値を測定してもよい。この変形例では、第1温度TAまたは第2温度TBのうちのフィルム100を押出成形する場合に、ダイを通過するときの樹脂の温度に近い温度における再生ペレットのMFR値を測定することが好ましい。
【0036】
<4-4>
上記実施形態では、破砕フィルムを含む再生原料をフィルム100の内層30を構成する材料として用いた。しかし、破砕フィルムを含む再生原料が材料として用いられるフィルム100の層は、これに限定されない。例えば、破砕フィルムを含む再生原料を、フィルム100の外層10、20を構成する材料として用いてもよい。この変形例では、フィルムの製造工程のステップS14(選択ステップ)において、製造するフィルム100の外層10、20の流動性に基づいて、複数の再生ペレットのロットRA~RCから、外層10、20を構成するために用いる再生ペレットのロットが選択される。
【0037】
<4-5>
上記実施形態では、破砕フィルムを含む再生原料を用いて、複数の層を有する積層フィルムが製造された。しかし、破砕フィルムを含む再生原料を用いて製造されるフィルムの構成は、これに限定されない。例えば、破砕フィルムを含む再生原料を用いて、単層のフィルムが製造されてもよい。
【0038】
<4-6>
上記実施形態では、流動性を評価する指標として、MFRを用いたが、MVR(Melt Volume Rate)を流動性を評価する指標として用いてもよい。
【符号の説明】
【0039】
S11:再ペレット化ステップ
S12:測定ステップ
S13:管理ステップ
S14:選択ステップ
S15:製造ステップ
S16:製造ステップ