(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】燃焼設備
(51)【国際特許分類】
F23C 99/00 20060101AFI20230322BHJP
F22B 37/10 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
F23C99/00 316
F22B37/10 N
(21)【出願番号】P 2021106744
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】516047175
【氏名又は名称】三菱重工パワーインダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】津村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】冠木 豊
(72)【発明者】
【氏名】上妻 富明
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄三
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-145902(JP,A)
【文献】特開平08-303703(JP,A)
【文献】特開平07-139701(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105465821(CN,A)
【文献】特開平07-318003(JP,A)
【文献】特開平11-211001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 99/00
F22B 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉の壁面を構成する複数の水管と、
前記火炉内にガス燃料を噴出するバーナと、を備え、
前記複数の水管は、前記バーナにより形成される火炎を横断するように設けられる
少なくとも1つの接触水管と、前記火炎を横断しないように設けられる非接触水管と、を含み、
前記少なくとも1つの接触水管は、前記非接触水管と比較して内径が大き
く、
前記少なくとも1つの接触水管は、前記火炉の内部空間に向かって突出する突出形状を有する突出管を含み、
前記突出管は、
上下方向に沿って直線状に延びており、少なくとも一部が前記火炎の形成領域を横断する横断部と、
前記上下方向に沿って直線状に延びており、前記横断部よりも前記バーナの軸方向のうち前記火炉の前記内部空間から離れる方向、且つ前記横断部よりも上方に配置される上側水管部と、
前記上下方向に沿って直線状に延びており、前記横断部よりも前記バーナの前記軸方向のうち前記火炉の前記内部空間から離れる方向、且つ前記横断部よりも下方に配置される下側水管部と、
前記横断部の上端と前記上側水管部の下端とを接続する上側接続部と、
前記横断部の下端と前記下側水管部の上端とを接続する下側接続部と、を含む、
燃焼設備。
【請求項2】
前記ガス燃料は、水素を含む、
請求項1に記載の燃焼設備。
【請求項3】
前記ガス燃料は、炭素成分を含まない、
請求項1又は2に記載の燃焼設備。
【請求項4】
前記
少なくとも1つの接触水管は、前記バーナの前方の空間を直線状に延びる、
請求項1から3の何れか一項に記載の燃焼設備。
【請求項5】
前記少なくとも1つの接触水管は、互いに隣接して設けられる一対
の接触水管を含み、
前記一対の前記接触水管は、前記バーナの前方の空間において、前記バーナの軸方向視において互いに間隔をあけて設けられている、
請求項1から4の何れか一項に記載の燃焼設備。
【請求項6】
前記一対の前記接触水管は、前記バーナの前方の空間において、前記バーナの軸方向の位置が互いに異なる、
請求項5に記載の燃焼設備。
【請求項7】
前記少なくとも1つの接触水管は、第1の前記一対の前記接触水管と、第2の前記一対の前記接触水管と、を含み、
前記第1の一対の前記接触水管は、
前記バーナの前方の空間において、前記バーナの軸方向に沿った軸方向位置が第1位置である第1水管と、
前記バーナの前方の空間において、前記バーナの軸方向に沿った軸方向位置が前記第1位置とは異なる第2位置である第2水管と、を有し、
前記第2の一対の前記接触水管は、
前記バーナの前方の空間において、前記バーナの軸方向に沿った軸方向位置が前記第1位置であり、且つ、前記第2水管を挟んで前記第1水管とは反対側に位置する第3水管と、
前記バーナの前方の空間において、前記バーナの軸方向に沿った軸方向位置が前記第2位置であり、且つ、前記第3水管を挟んで前記第2水管とは反対側に位置する第4水管と、を有する、
前記第1水管及び前記第3水管のそれぞれは、前記上下方向に沿って直線状に延びる直管であり、
前記第2水管及び前記第4水管のそれぞれは、前記突出管である、
請求項6に記載の燃焼設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、火炉の壁面を構成する複数の水管を湾曲させることで開口を形成し、この開口にバーナを挿入することで、火炉内における燃料の燃焼によって生成する高温ガスに曝されるバーナの部分を低減する技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
火炉内で燃料を燃焼すると、窒素酸化物(NOx)が発生する。NOxの発生は、可能な限り抑制されることが望ましい。NOxの発生を抑制する手段の1つが、燃料の燃焼時に形成される火炎の温度を低減することである。しかしながら、特許文献1には、水管によって火炎温度を低減することについて開示も示唆もされていない。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、水管によって火炎温度を低減させ、NOxの発生を抑制することができる燃焼設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る燃焼設備は、火炉の壁面を構成する複数の水管と、前記火炉内にガス燃料を噴出するバーナと、を備え、前記複数の水管の内の少なくとも1本は、前記バーナにより形成される火炎を横断するように設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の燃焼設備によれば、水管によって火炎温度を低減させ、NOxの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る燃焼設備の構成を概略的に示す図である。
【
図2】一実施形態に係る火炉の壁面の一部を拡大して示す斜視図である。
【
図3】一実施形態に係るバーナの構成を概略的に示す図である。
【
図4】一実施形態に係る複数の水管の構成を概略的に示す図である。
【
図5】
図4に示す複数の水管のレイアウトを説明する図である。
【
図6】幾つかの実施形態に係る複数の水管のレイアウトを示す図である。
【
図7】幾つかの実施形態に係る第2接触水管の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態による燃焼設備について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
(燃焼設備の構成)
図1は、一実施形態に係る燃焼設備1の構成を概略的に示す図である。
図1に例示するように、燃焼設備1は、火炉2と、火炉2内にガス燃料Fを噴出するバーナ4と、を備える。このような燃焼設備1は、例えば、ボイラであって、火炉2内に噴出されたガス燃料Fを火炎Xを形成して燃焼することで高温の燃焼ガスGを生成し、この高温の燃焼ガスGから熱を回収することで蒸気を生成する。尚、燃焼ガスGの熱は、火炉2内に設けられる熱交換器によって回収されてもよいし、火炉2外に設けられる熱交換器によって回収されてもよい。
【0011】
火炉2は、筒形状を有し、バーナ4から噴出されるガス燃料Fを燃焼させるための内部空間3が形成されている。
図2は、一実施形態に係る火炉2の壁面8の一部を拡大して示す斜視図である。
図2に例示するように、火炉2の壁面8は、複数の水管6(炉壁管)によって構成される。この構成により、ガス燃料Fの燃焼により発生した熱は水管6内を流通する給水や蒸気と熱交換されるので、火炉2の壁面8の温度上昇が抑制される。
図2に例示する形態では、複数の水管6は、フィン10によって互いに接続されている(いわゆるメンブレン構造を採用している)。この場合、火炉2の壁面8は、複数の水管6とフィン10とによって構成される。
【0012】
図3は、一実施形態に係るバーナ4の構成を概略的に示す図である。一実施形態では、
図3に例示するように、バーナ4は、火炉2の側壁を開口するバーナスロート部12に設けられている。バーナスロート部12は、耐火材によって形成されており、火炉2の内部空間3に向かうにつれて開口13を拡げる傾斜面14を含む。このバーナスロート部12の開口13は、例えば、バーナ4の中心軸Cが延びる延在方向視において、円形状を有する。
【0013】
以下では、バーナ4の中心軸Cが延びる延在方向をバーナ4の軸方向D1とする。本開示において、バーナ4の軸方向D1は、水平方向に対してフラットな方向である。バーナの軸方向D1のうち火炉2の内部空間3に向かう方向を軸方向D1の前方とし、火炉2の内部空間3から離れる方向を軸方向D1の後方とする。バーナ4の軸方向D1(水平方向に対してフラットな方向)と直交する方向を上下方向D2とする。
【0014】
バーナ4は、火炉2内(内部空間3)にガス燃料Fを噴出する。一実施形態では、
図3に例示するように、バーナ4は、ノズル16と、一次空気流路18と、二次空気流路20と、を含む。
【0015】
ノズル16は、軸方向D1に沿って延びており、筒形状を有している。このノズル16の軸線はバーナ4の中心軸Cと一致している。ノズル16の内部にはガス燃料Fが軸方向D1の前方に流通する流路が形成されている。そして、ガス燃料Fは、ノズル16の前端部17に形成される主孔26と副孔28から火炉2内に噴出される構造となっている。
【0016】
一実施形態では、ノズル16は、水素ガスが貯蔵されている水素ガスタンク29と接続されており、ガス燃料Fは水素を含む。つまり、バーナ4は、水素を燃料とする燃焼装置である。バーナ4は、水素のみを燃焼してもよいし、水素と水素以外の燃料(副生ガス)を燃焼してもよい。副生ガスは、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、一酸化炭素、窒素などを含む。副生ガスは、水素ガスとともに水素ガスタンク29に貯蔵されてもよい。そして、一実施形態では、ガス燃料Fは炭素成分を含まない。
【0017】
尚、本開示は、ガス燃料Fが水素を含むことに限定するものではない。あるいは、ガス燃料Fが炭素成分を含まないことに限定するものではない。ガス燃料Fは、メタンなどを含む都市ガスやプロパンなどを含むLPGであってもよい。バーナ3からの微粉炭を高温の火炉2内に向けて噴出するために炉壁1に開口され、かつ耐火材20によりスロート状に形成された開口部4に、その耐火材20の表面に向けて空気等の冷却体を噴出する噴出口23を設ける。
【0018】
一次空気流路18は、ノズル16の外周に形成され、一次空気A1が流通する。
図3に例示する形態では、バーナ4は、バーナ4の軸方向D1に沿って延びる円筒状の一次スリーブ22を備えている。一次スリーブ22の内径はノズル16の外径より大きく、ノズル16が一次スリーブ22内に配置されるようになっている。一次空気流路18は、一次スリーブ22とノズル16との間に形成されている。
【0019】
二次空気流路20は、一次空気流路18の外周に形成され、二次空気A2が流通する。
図3に例示する形態では、バーナ4は、一次スリーブ22の外周側に設けられ、バーナ4の軸方向D1に沿って延びる円筒状の二次スリーブ24を備えている。二次スリーブ24の内径は一次スリーブ22の外径より大きく、一次スリーブ22が2次スリーブ24内に配置されるようになっている。二次空気流路20は、二次スリーブ24と一次スリーブ22との間に形成されている。尚、幾つかの実施形態では、不図示であるが、バーナ4は、二次空気流路20の外周に形成される三次空気流路を備える。
【0020】
一次空気A1は、ガス燃料Fに対する空気比が1未満になるように設定されている。空気比とはガス燃料Fを完全燃焼させるのに必要な空気量を1としたときの空気量の比率をいう。一実施形態では、一次空気A1の空気比は、二次空気A2の空気比より小さい。一実施形態では、一次空気A1の空気比と二次空気A2の空気比との合計値は1以上である。つまり、バーナ4は、ガス燃料Fを完全燃焼するように構成されている。幾つかの実施形態では、不図示であるが、燃焼設備1は、バーナスロート部12とは別に設けられ、火炉2内に空気を供給する空気供給口を含む。そして、燃焼設備1は、バーナ4の燃焼によって燃焼し切らなかった未燃のガス燃料Fを、空気供給口から供給される空気によって完全燃焼するように構成されている。
【0021】
図3に例示する形態では、バーナ4は、主に保炎を目的として一次空気流路18の出口部分に設けられるスワラー30(保炎器)を備える。一次空気流路18を流れる一次空気A1は直進流であるが、スワラー30は一次空気A1のうちの一部又は全部に旋回力を付与するように構成されている。
【0022】
図3に例示する形態では、バーナ4は、一次空気A1及び二次空気A2の両方が供給されるウインドボックス36を備える。ウインドボックス36は、箱状の部材であって、一次空気流路18の入口31、及び二次空気流路20の入口33のそれぞれと連通している。
【0023】
複数の水管6の内の少なくとも1本は、バーナ4により形成される火炎Xを横断するように設けられる。一実施形態では、
図3に例示するように、水管6は、上下方向D2に沿って延びる接触水管6A(6)を含む。
【0024】
接触水管6Aは、上下方向D2に沿って直線状に延びており、少なくとも一部が火炎Xの形成領域Rを横断する横断部38と、横断部38の上端40に接続されるとともに、横断部38の上端40から上方に延びる上側水管部42と、横断部38の下端44に接続されるとともに、横断部38の下端44から下方に延びる下側水管部46と、を含む。
【0025】
火炎Xの形成領域Rは、火炉2の内部空間3のうちバーナ4の前方の空間に形成される。この火炎Xの形成領域Rは、ガス燃料Fに含まれる成分やノズル16から噴出されるガス燃料Fの噴出圧などによって変化するが、予め推定可能である。
【0026】
図3に例示する形態では、横断部38は、バーナスロート部12の開口13に面しており、火炎Xの形成領域R(バーナ4の前方の空間)を直線状に延びている。上側水管部42及び下側水管部46のそれぞれは、例えば、溶接によってバーナスロート部12及びウインドボックス36のそれぞれと固定されている。
【0027】
燃焼設備1は、一本の接触水管6Aを備えていてもよいし、複数本の接触水管6Aを備えていてもよい。一実施形態では、燃焼設備1は、複数本の接触水管6Aを備えている。
図4は、一実施形態に係る複数の水管6の構成を示す概略構成図であって、バーナスロート部12の開口13を火炉2内から視ている。
図5は、
図4に示す複数の水管6のレイアウトを説明する図であって、複数の水管6を上下方向D2から視ている。
【0028】
一実施形態では、
図4に例示するように、複数の水管6は、上述したように火炎Xを横断するように設けられる接触水管6Aと、火炎Xを横断しないように設けられる非接触水管6B(6)と、を含む。
【0029】
図4に例示する形態では、複数の水管6は、8本の接触水管6Aを含んでいる。8本の接触水管6Aは、火炉2の壁面8の周方向D3に沿って互いに間隔を空けて設けられている。そして、8本の接触水管6Aのうち周方向D3において互いに隣り合って設けられる一対の接触水管6Aは、バーナ4の前方の空間において、バーナ4の軸方向D1視において互いに間隔をあけて設けられている。
【0030】
具体的に説明すると、一対の接触水管6Aは、フィン10によって互いに接続され、火炉2の壁面8の一部を構成している。しかしながら、この壁面8の一部のうちバーナスロート部12の開口13に面する円形部分B1にはフィン10が設けられていない。
図4に例示する形態では、壁面8の一部のうち円形部分B1を取り囲む矩形状の矩形部分B2にはフィン10が設けられていない。このように、一対の接触水管6Aは、バーナ4の前方の空間において、バーナの軸方向D1視において互いに間隔をあけて設けられている。一実施形態では、
図5に例示するように、8本の接触水管6Aは、周方向D3に沿って間隔をあけるとともに、軸方向D1における位置が同じとなるように配置されている。
【0031】
図4に例示する形態では、複数の水管6は、複数の非接触水管6Bを含んでいる。複数の非接触水管6Bのそれぞれは、上下方向D2に沿って直線状に延びている。複数の非接触水管6Bのそれぞれは、バーナ4の軸方向D1視において、火炉2の壁面8の矩形部分B2を通過しない。接触水管6Aは、非接触水管6Bと比較して内径が大きい。
【0032】
(作用・効果)
一実施形態によれば、
図3に例示したように、接触水管6Aは、バーナ4により形成される火炎Xを横断するように、バーナ4の前方の空間に設けられる。このため、火炎Xを接触水管6Aに接触させることで火炎温度を低減し、ガス燃料Fの燃焼によるNOxの発生を抑制することができる。
【0033】
一実施形態によれば、ガス燃料Fは水素を含むので、水素を含むガス燃料Fを燃焼する燃焼設備1に適用することができる。さらに、ガス燃料Fは炭素成分を含まないので、ガス燃料Fを燃焼することによる一酸化炭素の発生を抑制することができる。また、接触水管6Aの表面(横断部38)に煤が付着することを抑制できる。
【0034】
一実施形態によれば、接触水管6Aは、バーナ4の前方の空間を直線状に延びている。このため、火炎Xに接触させる接触水管6Aがバーナ4の前方の空間を非直線状に延びている場合と比較して、接触水管6Aの製造を容易化し、製造コストを削減することができる。また、接触水管6Aを含む複数の水管6の構造を簡素化することができる。
【0035】
尚、本開示は、接触水管6Aを直線状に延びることに限定しない。つまり、本開示は、接触水管6Aを直管に限定しない。接触水管6Aは、火炎Xを横断するように設けられるのであれば、湾曲して延びる湾曲部を有していてもよい。さらに、本開示は、非接触水管6Bを直線状に延びることに限定しない。
【0036】
火炎Xを横断する接触水管6Aは、一次空気A1、二次空気A2、及び火炎Xの流れを阻害し、ガス燃料Fの燃焼性を悪化させる場合がある。これに対して、一実施形態によれば、
図4に例示したように、一対の接触水管6Aは、周方向D3に沿って互いに間隔をあけて設けられている。このため、火炎Xを一対の接触水管6Aの間を通過させ、一次空気A1、二次空気A2、及び火炎Xの流れの円滑化を図ることができる。よって、ガス燃料Fの燃焼性の悪化を抑制することができる。
【0037】
接触水管6A内を流通する流体(給水や蒸気)は、接触水管6Aが火炎Xと接触するため、非接触水管6B内を流通する流体よりも高温となり、流速が速くなる。この結果、接触水管6Aの劣化が促進される虞がある。これに対して、一実施形態によれば、接触水管6Aの内径を非接触水管6Bの内径より大きくすることで、接触水管6A内を流通する流体の流速上昇を抑制し、接触水管6Aの劣化を抑制することができる。
【0038】
従来からの水管(炉壁管)は、バーナスロート部12の開口13に面する円形部分B1を迂回するように、曲げ加工が行われていた。しかしながら、一実施形態によれば、接触水管6Aは直線状に延びている。このため、曲げ加工が不要となり、火炉2の製造コストを削減することができる。
【0039】
ところで、一実施形態では、複数の接触水管6Aは、軸方向D1における位置が互いに同じとなるように配置されていたが、本開示はこの形態に限定されない。
図6は、幾つかの実施形態に係る複数の水管6のレイアウトを示す図である。
【0040】
幾つかの実施形態では、
図6に例示するように、周方向D3において互いに隣り合って設けられる一対の接触水管6Aは、バーナ4の前方の空間において、バーナの軸方向D1の位置が互いに異なる。
【0041】
具体的に説明すると、
図6に例示する形態では、8本の接触水管6Aは、周方向D3の一方側から順に、第1接触水管6A1、第2接触水管6A2、第3接触水管6A3、第4接触水管6A4、第5接触水管6A5、第6接触水管6A6、第7接触水管6A7、及び第8接触水管6A8を含む。
【0042】
第1接触水管6A1、第3接触水管6A3、第5接触水管6A5、及び第7接触水管6A7のそれぞれは、上述してきたように上下方向D2に沿って直線状に延びている(
図3参照)。つまり、第1接触水管6A1、第3接触水管6A3、第5接触水管6A5、及び第7接触水管6A7のそれぞれは、直管である。第1接触水管6A1、第3接触水管6A3、第5接触水管6A5、及び第7接触水管6A7のそれぞれの横断部38は、バーナ4の前方の空間において、バーナ4の軸方向D1に沿った位置が第1位置P1である。
【0043】
一方で、第2接触水管6A2、第4接触水管6A4、第6接触水管6A6、及び第8接触水管6A8のそれぞれは、火炉2の内部空間3に向かって突出する突出形状を有している。第2接触水管6A2、第4接触水管6A4、第6接触水管6A6、及び第8接触水管6A8のそれぞれの横断部38が火炉2の内部空間3に向かって突出しており、該横断部38は、バーナ4の前方の空間において、バーナ4の軸方向D1に沿った位置が第2位置P2である。第2位置P2は第1位置より前方の位置である。
【0044】
第2接触水管6A2、第4接触水管6A4、第6接触水管6A6、及び第8接触水管6A8のそれぞれの構成について説明する。
図7は、幾つかの実施形態に係る第2接触水管6A2の構成を示す図である。第4接触水管6A4、第6接触水管6A6、及び第8接触水管6A8のそれぞれは、第2接触水管6A2と同様の構成を備えるので、説明を省略する。
【0045】
幾つかの実施形態では、
図7に例示するように、第2接触水管6A2は、横断部38の上端40と上側水管部42の下端48とを接続する上側接続部50と、横断部38の下端44と下側水管部46の上端52とを接続する下側接続部54と、をさらに備える。横断部38の上端40は上側水管部42の下端48よりも前方に位置し、横断部38の下端44は下側水管部46の上端52よりも前方に位置している。つまり、第2接触水管6A2は、横断部38が前方にずれるように構成されている。この横断部38は、軸方向D1に沿った位置が第2位置P2である。
【0046】
よって、一対の接触水管6A(例えば、第1接触水管6A1、第2接触水管6A2)の横断部38は、バーナ4の軸方向D1の位置が互いに異なる。このような構成によれば、一対の接触水管6Aの軸方向D1の位置が互いに同じである場合と比較して、火炎Xを一対の接触水管6Aの間をよりスムーズに通過させるので、ガス燃料Fの燃焼性の悪化をさらに抑制することができる。
【0047】
ところで、例えば、第2接触水管6A2の横断部38と第4接触水管6A4の横断部38が、軸方向D1に沿った位置が互いに異なる場合、第2接触水管6A2及び第4接触水管6A4のそれぞれに対応する2種の接触水管6Aを用意する必要がある。このため、火炉2の製造コストが大きく増大する場合がある。
【0048】
幾つかの実施形態では、
図6に例示するように、複数の接触水管6Aのそれぞれは、横断部38が第1位置P1又は第2位置P2の何れか一方に位置するように構成されている。幾つかの実施形態では、
図6に例示するように、複数の水管6は、第1接触水管6A1と第2接触水管6A2からなる第1の一対の接触水管6Aと、第3接触水管6A3と第4接触水管6A4からなる第2の一対の接触水管6Aと、を含む。
【0049】
そして、周方向D3において、第3接触水管6A3は、第2接触水管6A2を挟んで第1接触水管6A1とは反対側に位置する。上述したように、第1接触水管6A1及び第3接触水管6A3のそれぞれは、バーナ4の軸方向D1に沿った位置が第1位置P1である。周方向D3において、第4接触水管6A4は、第3接触水管6A3を挟んで第2接触水管6A2とは反対側に位置する。上述したように、第2接触水管6A2及び第4接触水管6A4のそれぞれは、バーナ4の軸方向D1に沿った位置が第2位置P2である。
【0050】
このような構成によれば、第1接触水管6A1に対応する直線状の接触水管6A(いわゆる直管)と、第2接触水管6A2に対応する1種の接触水管6Aとを用意するだけで済むので、ガス燃料Fの燃焼性の悪化をさらに抑制しつつ、火炉2の製造コストの増大を抑制できる。
【0051】
尚、複数の水管6のレイアウトは、
図5及び
図6のそれぞれに例示した形態に限定されない。例えば、不図示であるが、一対の接触水管6Aは、一方の接触水管6Aと、一方の接触水管6Aよりバーナの中心軸Cに近い他方の接触水管と、を含み、他方の接触水管6Aは一方の接触水管6Aよりも前方に位置する。つまり、接触水管6Aは、バーナの中心軸Cに近づくにつれて、バーナスロート部12の開口13から遠ざかるように設けられている。
【0052】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0053】
[1]本開示に係る燃焼設備(1)は、火炉(2)の壁面(8)を構成する複数の水管(6)と、前記火炉内にガス燃料(F)を噴出するバーナ(4)と、を備え、前記複数の水管の内の少なくとも1本(6A)は、前記バーナにより形成される火炎(X)を横断するように設けられる。
【0054】
上記[1]に記載の構成によれば、複数の水管の内の少なくとも1本はバーナにより形成される火炎を横断するので、火炎を水管に接触させることで火炎温度を低減させ、ガス燃料の燃焼によるNOxの発生を抑制することができる。
【0055】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、前記ガス燃料は、水素を含む。
【0056】
上記[2]に記載の構成によれば、水素を含むガス燃料を燃焼する燃焼設備に適用することができる。
【0057】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、前記ガス燃料は、炭素成分を含まない。
【0058】
上記[3]に記載の構成によれば、ガス燃料は炭素成分を含まないので、ガス燃料を燃焼することによる一酸化炭素の発生を抑制することができる。また、火炎を横断する水管の表面に煤が付着することを抑制できる。
【0059】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、前記複数の水管の内の少なくとも1本は、前記バーナの前方の空間を直線状に延びている。
【0060】
上記[4]に記載の構成によれば、火炎に接触させる水管(接触水管)がバーナの前方の空間を非直線状に延びている場合と比較して、接触水管の製造を容易化し、製造コストを削減することができる。また、接触水管を含む複数の水管の構造を簡素化することができる。
【0061】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、前記複数の水管の内の2本(6A1、6A2)は、互いに隣接して設けられる一対の水管を含み、前記一対の水管は、前記バーナの前方の空間において、前記バーナの軸方向視において互いに間隔をあけて設けられている。
【0062】
火炎を横断するように水管を設けると、火炎の流れが水管によって阻害され、ガス燃料の燃焼性が悪化する場合がある。上記[5]に記載の構成によれば、火炎を一対の水管の間を通過させ、火炎の流れの円滑化を図ることができる。このため、ガス燃料の燃焼性の悪化を抑制することができる。
【0063】
[6]幾つかの実施形態では、上記[5]に記載の構成において、前記一対の水管は、前記バーナの前方の空間において、前記バーナの軸方向の位置が互いに異なる。
【0064】
上記[6]に記載の構成によれば、バーナの軸方向の位置が互いに同じである場合と比較して、ガス燃料の燃焼性の悪化をさらに抑制することができる。
【0065】
[7]幾つかの実施形態では、上記[6]に記載の構成において、前記複数の水管は、第1の前記一対の水管(6A1、6A2)と、第2の前記一対の水管(6A3、6A4)と、を含み、前記第1の一対の水管は、前記バーナの前方の空間において、前記バーナの軸方向に沿った軸方向位置が第1位置(P1)である第1水管(6A1)と、前記バーナの前方の空間において、前記バーナの軸方向に沿った軸方向位置が前記第1位置とは異なる第2位置(P2)である第2水管(6A2)と、を有し、前記第2の一対の水管は、前記バーナの前方の空間において、前記バーナの軸方向に沿った軸方向位置が前記第1位置であり、且つ、前記第2水管を挟んで前記第1水管とは反対側に位置する第3水管(6A3)と、前記バーナの前方の空間において、前記バーナの軸方向に沿った軸方向位置が前記第2位置であり、且つ、前記第3水管を挟んで前記第2水管とは反対側に位置する第4水管(6A4)と、を有する。
【0066】
上記[7]に記載の構成によれば、第1水管の軸方向位置と第3水管の軸方向位置とは互いに同じ第1位置であり、第2水管の軸方向位置と第4水管の軸方向位置とは互いに同じ第2位置である。このため、第1水管と第3水管との構成、及び第2水管と第4水管との構成を統一できるので、ガス燃料の燃焼性の悪化をさらに抑制しつつ、火炉の製造コストの増大を抑制できる。
【符号の説明】
【0067】
1 燃焼設備
2 火炉
4 バーナ
6 水管
6A 接触水管(複数の水管の内の少なくとも1本)
6A1 第1接触水管(第1水管)
6A2 第2接触水管(第2水管)
6A3 第3接触水管(第3水管)
6A4 第4接触水管(第4水管)
8 火炉の壁面
F ガス燃料
P1 第1位置
P2 第2位置
X 火炎