(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20230322BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20230322BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
G06F1/16 312E
H05K7/20 H
H05K7/20 R
(21)【出願番号】P 2021112112
(22)【出願日】2021-07-06
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン ハオユー
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 肇
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
(72)【発明者】
【氏名】大山 敦史
【審査官】白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-140802(JP,A)
【文献】特開2005-038871(JP,A)
【文献】実開昭52-115144(JP,U)
【文献】特許第6846547(JP,B1)
【文献】特開2000-323883(JP,A)
【文献】特開2005-321287(JP,A)
【文献】特開2002-359331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16 - 1/20
H05K 7/20
H01L 23/34 - 23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノート型PC、デスクトップ型PC、タブレット型PC、携帯電話、スマートフォン、又はゲーム機のいずれかである電子機器であって、
発熱体を搭載した筐体と、
前記筐体内に搭載され、前記発熱体を冷却する冷却モジュールと、
を備え、
前記冷却モジュールは、
排気口を有する送風ファンと、
ベースプレートと、該ベースプレートの第1面で起立し、互いに隙間を設けて並んだ複数のフィンと、を有し、各フィンの相互間の隙間に前記送風ファンからの空気が流される空気流路を形成したヒートシンクと、
前記ベースプレートの第2面に接続された熱輸送デバイスと、
を有し、
前記空気の流通方向に沿う方向での前記空気流路の流路長は、前記フィンの起立方向で前記第1面から先端に向かう方向に向かって次第に短くなって
おり、
前記筐体は、底面に筐体吸気口を有し、
前記送風ファンは、
軸方向が前記筐体の厚み方向に沿って配置された回転軸と、
前記回転軸周りに回転するインペラと、
前記回転軸の軸方向で一方側に設けられた第1カバープレートと、他方側に設けられた第2カバープレートとの間で前記インペラを収容したファン筐体と、
前記第1カバープレートに形成され、前記筐体吸気口と対向した第1吸気口と、
を有する遠心ファンであり、
前記フィンは、
前記空気流路の上流側に位置し、前記排気口に面して配置された上流側端面と、
前記空気流路の下流側に位置した下流側端面と、
を有し、
前記上流側端面は、前記第1面から前記先端に向かう方向に沿って次第に前記空気流路の上流側から下流側に向かって傾斜した傾斜面を有し、
前記送風ファンの前記排気口は、前記傾斜面に沿って傾斜しており、
前記下流側端面は、前記第1面と直交すると共に、前記筐体の底面と交差して起立した立壁に形成された筐体排気口と対向している
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項
1に記載の電子機器であって、
前記送風ファンは、
さらに、前記第2カバープレートに形成された第2吸気
口を有
する
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却モジュールを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPU等の発熱体を冷却するための冷却モジュールを搭載している(例えば特許文献1参照)。この種の冷却モジュールとしては、ヒートパイプ等の熱輸送デバイスと、熱輸送デバイスで輸送されたCPU等の熱を筐体外に排出するヒートシンク及び送風ファンと、を備えた構成がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なヒートシンクは、平行に並んだ複数枚のプレート状のフィンを備え、各フィン相互間の隙間に送風ファンからの空気が流されることで、熱輸送デバイスから受けた熱を放熱する。従って、ヒートシンクの通風抵抗は大きく、送風ファンによる空気流量を低下させる。その結果、冷却モジュールは、送風ファンが本来の風量を発揮できず、モジュール全体での冷却効率を低下させる要因となっていた。他方、単にヒートシンクの空気流路の流路長を短縮し、或いはフィン間の隙間を拡大しただけでは、冷却領域が減少して冷却能力が低下し、熱輸送デバイスの接続面積の確保も難しくなる。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、冷却効率を高めることができる冷却モジュールを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第2態様に係る電子機器は、発熱体を搭載した筐体と、前記筐体内に搭載され、前記発熱体を冷却する冷却モジュールと、を備え、前記冷却モジュールは、排気口を有する送風ファンと、ベースプレートと、該ベースプレートの第1面で起立し、互いに隙間を設けて並んだ複数のフィンと、を有し、各フィンの相互間の隙間に前記送風ファンからの空気が流される空気流路を形成したヒートシンクと、前記ベースプレートの第2面に接続された熱輸送デバイスと、を有し、前記空気の流通方向に沿う方向での前記空気流路の流路長は、前記フィンの起立方向で前記第1面から先端に向かう方向に向かって次第に短くなっている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、冷却効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、筐体の内部構造を模式的に示す底面図である。
【
図3】
図3は、筐体の内部構造を模式的に示す側面断面図である。
【
図4】
図4は、ヒートシンクの構成を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る上流側端面を有するヒートシンクの模式的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る冷却モジュール及びこれを搭載した電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、電子機器10は、クラムシェル型のノート型PCであり、ディスプレイ筐体12と筐体14とがヒンジ15で相対的に回動可能に連結されている。本発明に係る電子機器は、ノート型PC以外、例えばデスクトップ型PC、タブレット型PC、携帯電話、スマートフォン、又はゲーム機等でもよい。
【0012】
ディスプレイ筐体12は、薄い扁平な箱体である。ディスプレイ筐体12には、ディスプレイ16が搭載されている。ディスプレイ16は、例えば有機EL(OLED)や液晶で構成される。
【0013】
以下、筐体14及びこれに搭載された各要素について、筐体12,14間を
図1に示すように開いた状態としてディスプレイ16を視認する姿勢を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向(筐体14の厚み方向)を上下、と呼んで説明する。
【0014】
筐体14は、扁平な箱体である。ヒンジ15は、筐体14の後端部に連結されている。筐体14は、上面及び四周側面を形成する上カバー部材17と、下面を形成する下カバー部材18とで構成されている。筐体14の上面には、キーボード20及びタッチパッド21が設けられている。筐体14の内部には、本実施形態に係る冷却モジュール22が搭載されている。
【0015】
図2は、筐体14の内部構造を模式的に示す底面図である。
図2は、下カバー部材18を取り外して上カバー部材17の内面側から筐体14内を見た図である。
【0016】
図2に示すように、筐体14の内部には、マザーボード24と、バッテリ装置26と、冷却モジュール22とが収容されている。筐体14の内部には、さらに無線通信用のアンテナ等、各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0017】
マザーボード24は、電子機器10のメインボードである。マザーボード24は、筐体14の後方寄りに配置され、左右方向に亘って延在している。マザーボード24は、APU(Accelerated Processing Unit)24aの他、通信モジュール、メモリ等の各種電子部品が実装されたプリント基板である。マザーボード24は、上面が上カバー部材17に対する取付面となり、下面がAPU24a等の実装面となる。マザーボード24は、APU24aに代えて、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)を実装してもよい。マザーボード24は、キーボード20の下に配置され、キーボード20の裏面や上カバー部材17の内面にねじ止めされている。マザーボード24は、上面が上カバー部材17に対する取付面となり、下面がAPU24a等の実装面となる。
【0018】
バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、マザーボード24の前方に配置され、筐体14の前端部に沿って左右に延在している。
【0019】
キーボード20は、上カバー部材17と一体又は別体で形成されたフレーム27により各キー20aの周囲が仕切られたアイソレーション型キーボードである。
【0020】
次に、冷却モジュール22及びその周辺部の構成を説明する。
【0021】
図3は、筐体14の内部構造を模式的に示す側面断面図であり、ヒートシンク30及びその周辺部を拡大したものである。冷却モジュール22は、APU24aが発生する熱を吸熱して輸送し、筐体14外へと排出する冷却装置である。冷却モジュール22の冷却対象となる電子部品は、APU24a以外、例えばCPUやGPU等でもよい。冷却モジュール22は、マザーボード24の下面に積層されている。
【0022】
図2及び
図3に示すように、冷却モジュール22は、熱輸送デバイス28と、押付部品29と、ヒートシンク30と、送風ファン31とを備える。
【0023】
熱輸送デバイス28は、APU24aとヒートシンク30との間を熱的に接続している。熱輸送デバイス28は、例えばヒートパイプであり、扁平な金属パイプに形成した密閉空間に作動流体を封入したものである。
図2に示す熱輸送デバイス28は、2本のヒートパイプを左右に並べた構成を例示している。熱輸送デバイス28は、密閉空間内で作動流体が相変化を生じながら流通し、APU24aの熱をヒートシンク30まで高効率に輸送する。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。密閉空間内には、例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや多孔質層等で形成されたウィックが設けられている。熱輸送デバイス28は、一方の端部が押付部品29を介してAPU24aに押し付けられ、他方の端部がヒートシンク30と接合されている。熱輸送デバイス28は、ヒートパイプをプレート型に構成したベーパーチャンバ、又は熱伝導率が高い銅やアルミニウム等のプレート等で構成されてもよい。
【0024】
押付部品29は、熱輸送デバイス28の表面に積層された銅板等の受熱板29aをAPU24aに押し付ける部品である。押付部品29は、例えばマザーボード24に板ばね29bを用いてねじ止めされることで受熱板をAPU24aの頂面に対して付勢する。
【0025】
送風ファン31は、ファン筐体32と、回転軸33と、インペラ34とを有する。送風ファン31は、回転軸33と一体化されたモータによってインペラ34を回転させる遠心ファンである。ファン筐体32は、例えば上面及び側面を形成する上カバープレート32Aと、上カバープレート32Aの下面開口を閉塞する下カバープレート32Bとを有する。ファン筐体32は、下カバープレート32Bに第1吸気口32aが形成され、上カバープレート32Aの上面に第2吸気口32bが形成されている。上カバープレート32Aは、ヒートシンク30側の側面が開口しており、この開口が送風ファン31の排気口32cとなる。
【0026】
図3に示すように、下カバー部材18は、筐体14の底面14aを形成している。下カバー部材18は、複数のスリット状の孔部を並べた筐体吸気口14bを有する。筐体吸気口14bは、筐体14の厚み方向(上下方向)で第1吸気口32aとオーバーラップしている。送風ファン31は、インペラ34の回転により、筐体吸気口14b及び第1吸気口32aを通して筐体14外及び筐体14内下部の空気Aaを吸い込む(
図2中に1点鎖線で示す矢印Aa参照)。同時に送風ファン31は、第2吸気口32bを通して筐体14内上部の空気Abを吸い込む(
図2中に1点鎖線で示す矢印Ab参照)。ファン筐体32内に吸い込まれた空気Aa,Abは、排気口32cからヒートシンク30に向けて排出される。
【0027】
なお、本実施形態の送風ファン31は、筐体吸気口14bを介して筐体14外の空気Aaを取り込める第1吸気口32aの吸気量が、キーボード20の下面との僅かな隙間から筐体14内の空気Abを取り込む第2吸気口32bよりも大きく支配的である。但し、例えばキーボード20にも吸気口が形成された構成等では、第2吸気口32bの吸気量が第1吸気口32aの吸気量よりも大きくなる場合もある。
【0028】
図4は、ヒートシンク30の構成を模式的に示す斜視図である。
【0029】
図2~
図4に示すように、ヒートシンク30は、ベースプレート35と、複数のフィン36と、複数の空気流路37とを備える。
【0030】
ベースプレート35は、例えばアルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属のプレートである。ベースプレート35は、各フィン36の取付台であると共に、送風ファン31との連結部でもある。本実施形態の場合、ベースプレート35は、送風ファン31のファン筐体32の下カバープレート32Bと兼用されている。ベースプレート35は、下カバープレート32Bと別体に構成されてもよい。
【0031】
各フィン36は、ベースプレート35の上面(第1面35a)から上方に向かって起立すると共に、互いに隙間Gを設けて前後方向に並んでいる。これにより各フィン36の相互間の隙間Gがそれぞれ空気流路37となる。空気流路37は、排気口32cからの空気が流通する流路であり、各フィン36の長手方向(
図2及び
図3中の左右方向)に沿って延在している。なお、熱輸送デバイス28は、ベースプレート35の下面(第2面35b)に対して溶接等で接合されている。
【0032】
各フィン36の下端面は、ベースプレート35の第1面35aに溶接等で接合されている。ベースプレート35は空気流路37の下面開口を閉塞している。各フィン36の上端面には、カバーシート38が貼り付けられている(
図3中に破線で示すカバーシート38参照)。カバーシート38は、例えば粘着テープであり、各空気流路37の上面開口を閉塞している。ヒートシンク30は、カバーシート38に代えて、ベースプレート35と同様な金属プレートを上面に設けてもよい。
【0033】
各フィン36は、空気流路37の上流側(
図3中で右側)に位置する上流側端面36aと、下流側(
図3中で左側)に位置する下流側端面36bとを有する。上流側端面36aは、送風ファン31の排気口32cに面して配置される。下流側端面36bは、筐体14の側面(外壁14c)に形成された筐体排気口14dに面して配置される。各フィン36は、上流側端面36a,36a間の隙間Gが空気流路37の入口となり、下流側端面36b,36b間の隙間Gが空気流路37の出口となる。
【0034】
図3及び
図4に示すように、空気流路37の流路長Lは、フィン36の起立方向(上下方向)で第1面35aから先端に向かう方向に向かって次第に短くなっている。つまり各フィン36は、空気の流通方向に沿う長さLが起立方向で先端に向かって次第に短くなっている。
【0035】
本実施形態に係るヒートシンク30は、このような空気流路37の流路長Lの変化を各フィン36の上流側端面36aの形状変化によって実現している。すなわち各フィン36の上流側端面36aは、起立方向の先端に向かって次第に空気流路37の上流側から下流側へと傾斜した傾斜面36cを有する。
図3及び
図4に示す構成例では、上流側端面36aの全体が傾斜面36cで形成されている。このため、この構成例では、空気流路37の上下方向全体で流路長Lが漸次変化している。
【0036】
送風ファン31の排気口32cも傾斜面36cに沿って傾斜している。これにより排気口32cと空気流路37の入口との間に大きな隙間が形成されることを防ぎ、ここからの空気漏れを抑制している。なお、ベースプレート35及びカバーシート38も同様な空気漏れ効果を発揮する。
【0037】
図5に示すように、傾斜面36cは、上流側端面36aの一部のみに形成されてもよい。この場合、傾斜面36cは、少なくとも各フィン36の起立高さの中央を含む位置から、各フィン36の上端面又はその近傍まで連続していることが好ましい。後述する通風抵抗の低下効果を十分に発揮できるようにするためである。この際、送風ファン31の排気口32cも上流側端面36a及び傾斜面36cの形状に応じた形状とすればよい。
【0038】
図2~
図4に示すように、各フィン36の下流側端面36bは、ベースプレート35の第1面35aと直交している。つまり下流側端面36bは、フィン36の起立方向に沿って直立している。従って、冷却モジュール22は、下流側端面36b,36b(空気流路37の出口)を、立壁である外壁14cに形成された筐体排気口14dに面して配置できる。つまり電子機器10は、空気流路37の出口が実質的に筐体排気口14dに直結され、ヒートシンク30を通過した空気が効率的に筐体14外に排出される。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る冷却モジュール22は、送風ファン31と、送風ファン31の排気口32cに面して配置されたヒートシンク30と、ヒートシンク30と接続された熱輸送デバイス28とを備える。ヒートシンク30は、ベースプレート35の第1面35aで起立し、相互間の隙間Gに送風ファン31からの空気が流される空気流路37を形成した複数のフィン36を有する。熱輸送デバイス28は、ベースプレート35の第2面35bに接続されている。そして空気流路37は、その流路長Lがフィン36の起立方向で第1面35aから先端に向かう方向に向かって次第に短くなっている。
【0040】
このようにヒートシンク30は、熱輸送デバイス28が接続されるベースプレート35から各フィン36の起立方向に向かって次第に空気流路37の流路長Lが短くなる構造を有する。ここで、例えば
図3に示すように、空気流路37を通過する空気を上下方向で3等分し、それぞれを空気A1~A3(
図3中に1点鎖線で示す矢印A1~A3参照)と呼ぶものとする。そうすると、空気流路37の上部領域を流れる空気A1の通風抵抗が最も小さく、中部領域を流れる空気A2の空気A2の通風抵抗が2番目に小さく、下部領域を流れる空気A3の通風抵抗が最も大きくなる。このため、冷却モジュール22は、ヒートシンク30の空気流路37全体での通風抵抗を抑制して空気流量を増大させることができ、その冷却効率が向上する。
【0041】
同時に、冷却モジュール22は、ヒートシンク30に対する熱輸送デバイス28の接続面積も大きく確保でき、熱輸送デバイス28とヒートシンク30との間での熱伝達効率を高めることができる。ヒートシンク30は、空気流路37の流路長Lをベースプレート35から離間するのに伴って短くする構成としている。このため、熱輸送デバイス28が接続されるベースプレート35は大きな表面積を容易に確保できるからである。
【0042】
特に本実施形態では、ヒートシンク30の一側面に傾斜面36cを設けることで空気流路37の流路長Lを変化させている。このため、当該ヒートシンク30は、傾斜面36cを形成したフィン36をベースプレート35上に並べるか、又はベースプレート35上にフィン36を接合した後に角部を面取り状にカットして傾斜面36cを形成するだけで容易に製造でき、流路長Lのコントロールも容易である。
【0043】
次に、本実施形態に係るヒートシンク30と、単にプレート状のフィンを並列した一般的なヒートシンク(以下、「比較例」と呼ぶ)とを用いた場合の冷却性能についての実験結果を説明する。実験は、ヒートシンク30を搭載した冷却モジュール22と、冷却モジュール22のヒートシンク30を比較例のものに変更した冷却モジュールとをそれぞれノート型PCに搭載して行った。そして、双方の発生ノイズを一定(32dB)とした状態で、送風ファン31による空気流量と、APU24a及び各カバー部材17,18の表面温度とを測定して冷却性能を比較した。なお、ノイズを一定値とした理由は、通常、ノート型PCのような電子機器は、発生するノイズの上限値を設定し、これを超えない範囲で所望の冷却性能を得ることを目標としてサーマル設計を実施しているためである。周囲温度は25℃とした。
【0044】
実験の結果、本実施形態に係るヒートシンク30は、比較例の場合と比べて、送風ファン31の回転数が250rpm上昇し、空気流量が0.25cfm(cubic feet/minute)増加した。さらに本実施形態に係るヒートシンク30は、比較例の場合と比べて、APU温度が4.7℃低下し、上カバー部材17の表面温度が2.6℃低下し、下カバー部材18の表面温度が3.4℃低下した。この実験結果により、同一ノイズならばヒートシンク30が比較例よりも高い冷却性能を発揮できることが明らかとなった。
【0045】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
10 電子機器
12 ディスプレイ筐体
14 筐体
14b 筐体吸気口
17 上カバー部材
18 下カバー部材
22 冷却モジュール
28 熱輸送デバイス
30 ヒートシンク
31 送風ファン
32 ファン筐体
32c 排気口
35 ベースプレート
36 フィン
36a 上流側端面
36c 傾斜面
37 空気流路