IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】部品事前配備支援システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/087 20230101AFI20230322BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20230322BHJP
   G06Q 10/0631 20230101ALI20230322BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20230322BHJP
   G06Q 10/04 20230101ALI20230322BHJP
【FI】
G06Q10/087
G06Q10/20
G06Q10/0631
G05B19/418 Z
G06Q10/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021142066
(22)【出願日】2021-09-01
(65)【公開番号】P2023035307
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二神 廉太郎
(72)【発明者】
【氏名】馮 益祥
(72)【発明者】
【氏名】高見 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】室 啓朗
【審査官】貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-169684(JP,A)
【文献】特開2005-322094(JP,A)
【文献】特開2014-130468(JP,A)
【文献】特開2016-062382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバを有し、
前記サーバは、
機械の稼働情報、及び前記機械の故障を報知するため前記機械から発せられた故障アラームの発報履歴情報に基づいて前記故障アラームの発報確率を算出する故障予測部と、
顧客が保有または利用する前記機械の稼働情報、該機械の部品の受注に関する受注履歴情報、前記故障アラームの発報履歴情報に関するデータに基づき、前記機械を保有または利用する地域において部品として非純正部品を入手する可能性を示す数値、前記顧客の保全に関する積極性を示す数値、及び前記顧客の業務の煩忙月に関する情報を算出し、前記地域及び前記顧客の特性に関するデータを推定する地域/顧客特性推定部と、
前記故障予測部で算出した前記発報確率と、前記地域/顧客特性推定部で算出した前記顧客の保全に関する積極性を示す数値、及び前記顧客の業務の煩忙月に関する情報とに基づき、前記顧客が部品交換を行う確率を算出し、前記地域/顧客特性推定部で算出した前記部品として非純正部品を入手する可能性を示す数値に基づき、前記部品として純正部品が購入される確率を算出し、前記機械に係る部品を受注する確率である受注確率を、前記顧客が部品交換を行う確率と、前記部品として純正部品が購入される確率とに基づいて算出する受注確率算出部と、
前記部品を、前記機械の所在地の近隣の拠点に事前配備した場合の損益を、前記事前配備を行って前記部品の受注があった場合の損益と、前記事前配備を行って前記部品の受注が無かった場合の損益と、事後配備を行って前記部品の受注があった場合の損益と、前記受注確率に基づいて算出する事前配備損益算出部と
を備える、部品事前配備支援システム。
【請求項2】
前記受注確率算出部は、前記部品に係る販促活動が行われる場合の販促付き受注確率を、前記地域/顧客特性推定部で算出した前記部品として非純正部品を入手する可能性を示す数値と、前記販促活動に対する部品購入への影響パラメータとに基づいて算出し、
前記事前配備損益算出部は、前記販促活動が行われる場合の前記損益を前記販促付き受注確率に基づいて算出する、請求項1に記載の部品事前配備支援システム。
【請求項3】
前記地域/顧客特性推定部は、前記部品として非純正部品を入手する可能性を示す数値として、前記機械の故障アラームの発報以降の一定期間内において前記部品の受注が無い場合に、前記故障アラームの発報以降の一定期間内における前記機械の稼働時間が前記故障アラームの発報以前の一定期間内における前記機械の稼働時間の平均値よりも減少した回数の平均値を前記地域ごとに算出する、請求項1に記載の部品事前配備支援システム。
【請求項4】
前記地域/顧客特性推定部は、前記顧客の保全に関する積極性を示す数値として、前記顧客が保有または利用する機械に搭載された部品の健全性に関する指標の平均値と、前記部品の平均の受注頻度とを乗算した値の平均値を算出する、請求項1に記載の部品事前配備支援システム。
【請求項5】
前記受注確率、及び前記事前配備した場合の損益に基づき、前記部品の事前配備に関する情報を表示する事前配備通知表示部を更に備え、
前記事前配備通知表示部は、前記機械毎に前記情報を表示する、請求項1に記載の部品事前配備支援システム。
【請求項6】
コンピュータが、機械の稼働情報、及び前記機械の故障を報知するため前記機械から発せられた故障アラームの発報履歴情報に基づいて前記故障アラームの発報確率を算出するステップと、
コンピュータが、顧客が保有または利用する前記機械の稼働情報、該機械の部品の受注に関する受注履歴情報、前記故障アラームの発報履歴情報に関するデータに基づき、前記機械を保有または利用する地域において部品として非純正部品を入手する可能性を示す数値、前記顧客の保全に関する積極性を示す数値、及び前記顧客の業務の煩忙月に関する情報を算出し、前記地域及び前記顧客の特性に関するデータを推定するステップと、
コンピュータが、前記発報確率と、前記顧客の保全に関する積極性を示す数値、及び前記顧客の業務の煩忙月に関する情報とに基づき、前記顧客が部品交換を行う確率を算出し、前記部品として非純正部品を入手する可能性を示す数値に基づき、部品として純正部品が購入される確率を算出し、前記機械に係る部品を受注する確率である受注確率を、前記顧客が部品交換を行う確率と、前記部品として純正部品が購入される確率とに基づいて算出するステップと、
コンピュータが、前記部品を、前記機械の所在地の近隣の拠点に事前配備した場合の損益を、前記事前配備を行って前記部品の受注があった場合の損益と、前記事前配備を行って前記部品の受注が無かった場合の損益と、事後配備を行って前記部品の受注があった場合の損益と、前記受注確率に基づいて算出するステップと
を備える、部品事前配備支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品事前配備支援システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造装置や建設機械などの機械においては、各種部品が消耗や劣化により交換や補充が必要になることがある。機械の生産性の向上のため、機械が停止又は機能低下するよりも前に(事前に)そのような部品をユーザに向けて供給することが望まれており、そのための部品事前配備支援システムが、例えば特許文献1等により知られている。
【0003】
特許文献1のシステムは、顧客が保有する機械の異常をセンサの出力に従って検知し、その異常に関連する部品を配備拠点に事前に配備するようにされている。しかし、このような従来のシステムは、異常の情報と、過去の実際の交換率に従って、交換等が必要となる部品名と部品数を判定するものである。このため、実際に発注される部品の数と部品の在庫数との間に乖離が生じ、事前配備が無駄になったり(在庫過剰)、事前配備が間に合わず在庫不足に陥ったりすることが避けられない。このように、従来のシステムでは、状況に応じた部品の事前配備が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-33249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、部品の事前配備を適正に実行することを可能にした部品事前配備支援システム及び方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る部品事前配備支援システムは、サーバを有し、前記サーバは、機械の稼働情報に基づいて前記機械の故障を予測する故障予測部と、顧客が保有または利用する前記機械に関するデータに基づき、前記機械を保有または利用する地域の特性、又は顧客の特性を推定する地域/顧客特性推定部と、前記故障予測部及び前記地域/顧客特性推定部の出力に基づき、前記機械に係る部品を受注する確率である受注確率を算出する受注確率算出部と、前記部品を、前記機械の所在地の近隣の拠点に事前配備した場合の損益を、前記受注確率に基づいて算出する事前配備損益算出部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、部品の事前配備を適正に実行することを可能にした部品事前配備支援システム及び方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る部品事前配備支援システムの全体構成を示す構成図である。
図2】稼働情報テーブル101のデータ構成の一例を説明する。
図3】在庫管理テーブル102のデータ構成の一例を説明する。
図4】受注履歴テーブル103のデータ構成の一例を説明する。
図5】発報履歴テーブル104のデータ構成の一例を説明する。
図6】地域顧客属性テーブル301のデータ構成の一例を説明する。
図7】部品配備費用テーブル302のデータ構成の一例を説明する。
図8】販促活動コストテーブル303のデータ構成の一例を説明する。
図9】販促活動履歴テーブル304のデータ構成の一例を説明する。
図10】発報予測テーブル401のデータ構成例を示す表図である。
図11】受注予測テーブル402のデータ構成の一例を説明する。
図12】販促付き受注予測テーブル403のデータ構成の一例を説明する。
図13】事前配備損益テーブル404のデータ構成の一例を説明する。
図14】受注予測サーバ200でのデータ処理の手順を説明するフローチャートである。
図15図14のステップS201の詳細(地域・顧客特性推定部201でのデータ処理の手順の詳細)の一例を説明するフローチャートである。
図16A】ステップS2010(地域における非純正部品の入手性の良さの算出)の詳細を説明するフローチャートである。
図16B】ステップS2010(地域における非純正部品の入手性の良さの算出)の詳細を説明するフローチャートである。
図17】顧客における保全に関する積極性を示す数値の算出の手順の一例を説明するフローチャートである。
図18】煩忙月の算出の手順の詳細の一例を説明するフローチャートである。
図19A】発報予測部202でのデータ処理の手順の詳細の一例を説明するフローチャートである。
図19B】発報予測部202でのデータ処理の手順の詳細の一例を説明するフローチャートである。
図20A】受注確率の算出の具体的な手順を説明するフローチャートである。
図20B】受注確率の算出の具体的な手順を説明するフローチャートである。
図21A】事前配備損益の算出の具体的な手順を説明するフローチャートである。
図21B】事前配備損益の算出の具体的な手順を説明するフローチャートである。
図21C】事前配備損益の算出の具体的な手順を説明するフローチャートである。
図22】事前配備計画表示部501の画面の一例を示している。
図23】事前配備通知表示部601の画面の一例を説明する。
図24】事前配備計画表示部501での動作の一例を示している。
図25】事前配備通知表示部601での動作の一例を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0010】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る部品事前配備支援システムの全体構成を示す構成図である。図1の例では、建設機械の部品の事前配備を支援するシステムを説明する。対象となる機械が建設機械以外の機械とされる場合であっても、基本的なシステムの構成は同一である。
【0012】
本明細書において「事前配備」とは、機械の故障の情報に従い、受注の可能性がある部品を予測して、顧客からの注文があるよりも前の段階で、機械の所在地近隣の配備拠点に遠方の配備拠点等から部品を配送することである。一方、「事後配備」とは、顧客から部品の注文を受けた後に、最寄りの配備拠点又は機械が稼働する現場に直接部品を配送することである。本実施の形態のシステムは、部品の事前配備が適正に行われ、部品の遅配が生じないようにする一方、事前配備による金銭的な損失が増大しないよう支援することを意図している。また、本明細書においては、機械の所在地の近隣の配備拠点を「代理店」と称しており、代理店よりも遠方の配備拠点を「物流拠点(デポ)」と称している。
【0013】
図1のシステムは、業務データ記憶部100と、受注予測サーバ200と、受注予測データ記憶部300と、受注予測結果記憶部400とを含む。受注予測サーバ200は、本システムにおいて、建設機械の部品の受注確率を算出すると共に、部品の事前配備を行った場合における損益(事前配備損益)を算出する役割を有する。受注予測サーバ200は、業務データ記憶部100に記憶される各種業務データ、及び受注予測データ記憶部300に記憶される受注予測データに従い、受注確率及び事前配備損益を算出する。受注予測サーバ200は、ネットワーク1を介して、部品の取次を行う代理店により操作される代理店端末500、及び建設機械を保有し利用する顧客により操作される顧客端末600と接続される。
【0014】
業務データ記憶部100は、顧客が保有し利用する建設機械に関する業務データ(稼働情報、部品の在庫管理、部品の受注履歴、故障アラームの発報の履歴など)を記憶する記憶部(データベース)である。なお、図示は省略するが、顧客が保有し利用する建設機械の機体には、各種センサが取り付けられており、建設機械の稼働状況に関する情報がセンサから得られる。得られた稼働状況に関する情報は、無線通信によってネットワークを介して定期的に業務データ記憶部100に送信され、記憶される。
【0015】
受注予測サーバ200において算出された受注確率、及び事前配備損益は、受注予測結果記憶部400に送信され、格納される。算出された受注確率、及び事前配備損益に従い、部品の事前配備がなされるか否かが判定される。その判定結果は、顧客端末600からの要求に従い、顧客端末600の事前配備通知表示部601に表示される。また、算出された受注確率及び事前配備損益に従って作成された事前配備計画は、代理店端末500に送信され、事前配備計画表示部501に表示される。
【0016】
業務データ記憶部100は、一例として、稼働情報テーブル101、在庫管理テーブル102、受注履歴テーブル103、及び発報履歴テーブル104を備える。稼働情報テーブル101は、建設機械の各々の稼働状況に関する情報(稼働情報)を格納するテーブルであり、在庫管理テーブル102は、代理店(配備拠点)の各々における部品の在庫管理に関する情報を格納するテーブルである。また、受注履歴テーブル103は、顧客から部品の受注を受けた履歴(受注履歴)に関する情報を格納するテーブルである。また、発報履歴テーブル104は、建設機械から発せられた故障アラートの履歴(発報履歴)に関する情報を格納するテーブルである。
【0017】
受注予測サーバ200は、一例として地域・顧客特性推定部201と、発報予測部202と、受注確率算出部203と、事前配備損益算出部204とを備える。地域・顧客特性推定部201は、顧客が機械を保有し利用する地域の特性や、その顧客の特性を推定する役割を有する。推定は、受注予測データ記憶部300から提供される各種データに従って行われる。発報予測部202は、各種情報に従って、各建設機械における故障を示すアラートが発せられることを予測する役割を有する。発報予測部202は、機械の稼働情報に基づいて建設機械の故障を予測する故障予測部の一形態である。受注確率算出部203は、地域・顧客特性推定部201、及び発報予測部202からの出力に従い、ある部品の受注確率を算出する役割を有する。また、事前配備損益算出部204は、その部品を事前配備した場合における損益を算出する役割を有する。
【0018】
受注予測データ記憶部300は、一例として、地域顧客属性テーブル301と、部品配備費用テーブル302と、販促活動コストテーブル303と、販促活動履歴テーブル304とを備え、受注確率算出部203での受注確率の算出、及び事前配備損益算出部204での事前配備損益の算出に用いられる受注予測データを記憶(格納)する。地域顧客属性テーブル301は、ある地域に属する顧客の属性を示すデータを格納する。また、部品配備費用テーブル302は、各部品についての配備費用を示すデータを格納する。販促活動コストテーブル303は、ある販売促進活動(以下「販促活動」と略す)に関して生じるコストに関するデータを格納する。また、販促活動履歴テーブルは、実行された販促活動の履歴に関するデータを格納する。これらのデータは、上述の地域・顧客特性推定部201に供給され、地域の特性、及び顧客の特性の推定に用いられる。
【0019】
受注予測結果記憶部400は、一例として、発報予測テーブル401、受注予測テーブル402、販促付き受注予測テーブル403、及び事前配備損益テーブル404を備える。発報予測テーブル401は、各建設機械から発せられた故障アラーム(発報)に関するデータを格納するテーブルである。また、受注予測テーブル402は、各建設機械の部品の受注確率や、その他受注に関する予測データを格納するテーブルである。また、販促付き受注予測テーブル403は、販促活動が行われた場合における、部品の受注確率や、その他受注に関する予測データを格納するテーブルである。また、事前配備損益テーブル404は、事前配備損益算出部204で算出された事前配備損益に関するデータを格納するテーブルである。
【0020】
なお、業務データ記憶部100、受注予測サーバ200、受注予測データ記憶部300、受注予測結果記憶部400はそれぞれ記憶装置やサーバ装置などのハードウエアとして独立に構成されていてもよいが、単一のデータサーバにより実現されてもよい。
【0021】
図2を参照して、稼働情報テーブル101のデータ構成の一例を説明する。稼働情報テーブル101は、データ項目の一例として、機体ID1010、稼働日1011、稼働時間1012、バッテリーSOH(State of Health)1013、エンジン吸気温度最低値1014、エンジン排気温度最高値1015を記憶しており、1行のデータが、ある建設機械(機体ID)の、ある稼働日における稼働状態のデータ(稼働時間、バッテリーSOH、エンジン吸気温度の最低値、エンジン排気温度の最高値等)を表している。バッテリーSOHは、バッテリーの健全性を示しており、故障や機能低下を避けて通常動作が行うことができる度合を示している。バッテリーSOHやエンジン吸気温度等は、建設機械に配置された各種のセンサにより計測することができる。バッテリーSOHやエンジン吸気温度等は、その建設機械における発報のタイミングに影響を与える数値である。図2に示すデータ項目は一例であり、これに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0022】
図3を参照して、在庫管理テーブル102のデータ構成の一例を説明する。在庫管理テーブル102は、データ項目の一例として、代理店コード1020、部品ID1021、個数1022、販売価格1023、粗利率1024を含み、1行のデータが、ある代理店(代理店コード)における、ある部品の在庫状況(在庫の個数、販売価格、粗利率等)を表している。
【0023】
図4を参照して、受注履歴テーブル103のデータ構成の一例を説明する。受注履歴テーブル103は、データ項目の一例として、受注ID1030、機体ID1031、部品ID1032、部品名1033、個数1034、受注日1035を含む。受注ID1030は個々の受注を識別する記号であり、機体ID1031は建設機械を識別する記号であり、部品ID1032は部品を識別する記号である。1行のデータは、ある建設機械における一の部品の受注のデータ(各種ID)を、部品名、個数、受注日などと共に示している。なお、1回の受注において、複数の部品を受注することがあるが、その場合には、複数の部品に対し同一の受注ID1030が与えられ、受注履歴テーブル103においては、複数行に亘り同一の受注ID1030のデータが生成される。すなわち、受注ID1030は、機体ID1031と受注日1032の組み合わせ毎に付与される。
【0024】
図5を参照して、発報履歴テーブル104のデータ構成の一例を説明する。発報履歴テーブル104は、一例として、データ項目として、機体ID1040、アラームID1041、発報日1042を含む。1行のデータは、どの建設機械が、いつアラームの発報を行ったのかを示している。
【0025】
図6を参照して、地域顧客属性テーブル301のデータ構成の一例を説明する。地域顧客属性テーブル301は、一例として、機体ID3010、適用開始日3011、適用終了日3012、国コード3013、代理店コード3014、地域コード3015、顧客コード3016、非純正部品入手性3017、保全に関する積極性3018、煩忙月3019を含む。1行のデータは、適用開始日3011から適用終了日3012までの期間内において、ある機体ID3010の建設機械が所属している国・地域や顧客の特性を示している。
【0026】
適用開始日3011及び適用終了日3012は、1行のデータが適用される期間(開始日、終了日)を示している。建設機械は、機械の移動や他人への譲渡(売買、貸出、リース等)により、その稼働地や所有者が変更されることがあり、このため、地域顧客属性テーブル301においても、適用開始日3011及び適用終了日3012をデータ項目に含め、適用期間を指定することが可能である。適用開始日3011及び適用終了日3012は一例であり、省略することも可能である。顧客のIDは顧客コード3016に、顧客の所在地の地域分類は地域コード3015に、所在国の分類は国コード3013に、代理店のコードは代理店コード3014に格納される。
【0027】
非純正部品入手性3017は、交換が必要と予測される部品の代替品である非純正部品(非正規品)の入手可能性を示す数値である。非純正品が入手可能か否かは、その地域によって、また顧客企業の経営方針等によって異なることから、非純正部品の入手可能性を数値で表すことで、地域や顧客の属性を表現しているものである。また、保全に関する積極性3018は、その顧客が建設機械の保全業務に積極的に取り組んでいる度合を示す指標である。保全に関する積極性3018の数値が高いほど、建設機械に問題が生じた場合において部品の受注確率が高くなる。煩忙月3019は、顧客企業の業務の煩忙期を示す月の数値を示す。非純正部品入手性3017、保全に関する積極性3018、及び煩忙月3019のデータは、地域・顧客特性推定部201にて推定されて格納される値である。
【0028】
図7を参照して、部品配備費用テーブル302のデータ構成の一例を説明する。部品配備費用テーブル302は、一例として、部品ID3020、代理店コード3021、デポコード3022、標準配送日数3023、標準速達日数3024、配送費3025、速達費3026、在庫費/日3027、故障損失/日3028、期待処分費3029を含む。1行のデータは、ある部品ID3020の部品を、あるデポコード3022の物流拠点(デポ)からある代理店コード3021の代理店へ事前配備又は事後配備した場合における費用(配送費、速達費、在庫費/日、故障損失/日、期待処分費等)を示している。在庫費/日3027は、代理店で部品を保管するための1日当たりの在庫管理費用を示す。
また、故障損失/日3028は、機械が故障したことに起因する顧客の信頼度の低下によ
る、将来の販売額の減少の予想額(1日当たり)を示す。
【0029】
また、期待処分費3029は、事前配備した部品が所定の確率で紛失・破損したり、デポへ返品されたりした場合における処分費の期待値を示している。各種費用のデータの組合せは任意であり、図7に例示した以外の費用の項目を追加することも可能であり、図示した項目の一部を削除することも可能である。データ項目の定義を変更することも可能である。また、配送費が時期によって変動する費用となるよう、モデル化することも可能である。更に、部品ごとの費用を格納するのではなく、全部品に一律に固定の費用を適用してもよいし、ある費用に対する所定の割合で各部品に費用を配分してもよい。
【0030】
図8を参照して、販促活動コストテーブル303のデータ構成の一例を説明する。販促活動コストテーブル303は、データ項目の一例として、販促活動ID3030、販促活動名3031、販促費用3032、実施上限/顧客3033を含む。1行のデータは、ある販促活動を実施する際の費用(3032)と、1か月当たり同一顧客への販促実施回数
の上限(3033)を示している。販促費用3032、及び実施上限/顧客3033は、
販促対象の部品の種類や価格などによって変動してもよい。また、販促活動名3031には、実行に顧客の承認が必要な販促活動の場合、(承認済み)が付与された販促活動名と、(承認済み)が付与されていない販促活動名が格納されており、(承認済み)が付与されていない場合には、販促活動の伺いを顧客に対し実行する。
【0031】
図9を参照して、販促活動履歴テーブル304のデータ構成の一例を説明する。この販促活動履歴テーブル304は、データ項目の一例として、故障予知ID3040、販促活動ID3041、顧客ID3042、及び販促実行日3043を含む。1行のデータは、ある建設機械において故障アラームの発報を予想した結果としての故障予知ID3040に対応し、その故障の対策部品を事前配備する際に実施した販促活動(対象の顧客、販促
実行日等)を示している。1つの故障予知ID3040に対して複数の販促活動ID30
41及び販促実行日3043が格納されることもある。また、販促活動ID3041が0
である行のデータは、販促活動ではなく事前配備を行った履歴を示す。
【0032】
図10を参照して、発報予測テーブル401のデータ構成の一例を説明する。発報予測テーブル401は、データ項目の一例として、機体ID4010、アラームID4011、予測日4012、故障予知ID4013、及び発報確率4014を備えている。1行のデータは、ある予測日(4012)の数日以内に、ある機体ID4010の建設機械において、あるアラームID4011のアラームが発報する確率を示している。発報確率4014は、発報予測部202の処理の結果を格納する。また、故障予知ID4013は、その機体・アラーム・予測日に関する予測のユニークなIDである。
【0033】
図11を参照して、受注予測テーブル402のデータ構成の一例を説明する。受注予測テーブル402は、データ項目の一例として、故障予知ID4020、予測日4021、機体ID4022、アラームID4023、部品ID4024、受注確率4025、純正購入確率4026、部品交換確率4027、発報確率4028、及び発報予測限界日数4029を含む。1行のデータは、ある日(4021)に、ある建設機械(4022)から発せられた故障アラーム(4923)に基づく故障予測(4020)がされた場合、その故障予測に係る部品の部品ID(4024)、及びその受注確率(4025)等を示している。受注確率と共に、当該顧客が純正部品を購入する確率(4026)、当該顧客が故障アラームに対応して部品を交換する確率(4027)、故障アラームが発報される確率(4028)も、1行のデータに含まれる。受注確率4025は、各種確率4026~4028に従って、最終的に部品の注文を代理店において受ける確率を示している。
【0034】
図12を参照して、販促付き受注予測テーブル403のデータ構成の一例を説明する。
販促付き受注予測テーブル403は、データ項目の一例として、故障予知ID4030、販促活動ID4031、販促付き受注確率4032、販促付き純正購入確率4033を含む。1行のデータは、故障予知ID4030の各々において、販促活動ID4031の販促活動を行った場合において、故障対策として純正部品が購入される確率(4033)、及び、最終的に部品を受注する確率である販促付き受注確率(4032)を示している。
【0035】
図13を参照して、事前配備損益テーブル404のデータ構成の一例を説明する。事前配備損益テーブル404の1行のデータは、ある故障予知ID4040に対して、あるデ
ポコード4042のデポからある代理店コード4041の代理店に部品を事前配備した場合の、配備にかかる日数である配備日数4044と、対策部品が受注する確率である受注確率4045と、その事前配備の結果として事後配備を行う場合と比較して得られる期待利益である期待利益4046を示す。また、各故障予知ID4040で販促活動を行う場合の受注確率4045及び期待利益4046が、該当する販促活動の販促活動ID4043が格納されている行と同じ行に格納される。
【0036】
次に、本実施の形態の部品事前配備支援システムの動作を、図14図25を参照して説明する。前述の通り、受注予測サーバ200は、業務データ記憶部100と受注予測データ記憶部300から取得されるデータに従い、地域・顧客特性推定部201と発報予測部202とでデータ処理を実行し、その結果を、受注確率算出部203に入力して所定のデータ処理を実行する。そのデータ処理の結果は事前配備損益算出部204に入力され、事前配備損益が演算され、その演算の結果が受注予測結果記憶部400に格納される。
【0037】
受注予測サーバ200でのデータ処理の手順を図14のフローチャートを参照して説明する。受注予測サーバ200は、業務データ記憶部100及び受注予測データ記憶部300から各種データを取得し、取得したデータに従い、地域及び顧客の特性に関するデータを地域・顧客特性推定部201において推定し、推定された特性データを地域顧客属性テーブル301に格納する(ステップS201)。また、各建設機械における発報の予測を発報予測部202において行い、その結果を発報予測テーブル401において格納する(ステップS202)。
【0038】
そして、受注確率算出部203は、得られた地域・顧客の特性に関するデータ、及び発報予測データに従い、部品を受注する確率である受注確率、及び販促活動がされた場合における販促付き受注確率を算出する(ステップS203)。算出された受注確率、及び販促付き受注確率は、それぞれ、受注予測テーブル402、及び販促付き受注予測テーブル403に格納される。更に、事前配備損益算出部204は、算出された受注確率、及び販促付き受注確率に基づき、部品配備費用テーブル302、販促活動コストテーブル303のデータも加味して、部品に係る事前配備損益を算出し、その結果を事前配備損益テーブル404に格納する(ステップS204)。
【0039】
なお、受注予測サーバ200での図14に示すデータ処理は、例えば一日1回などの頻度でバッチ処理により実行される。
【0040】
図15のフローチャートを参照して、図14のステップS201の詳細(地域・顧客特性推定部201でのデータ処理の手順の詳細)の一例を説明する。受注予測サーバ200は、まず、地域・顧客特性推定部201において、業務データ記憶部100の稼働情報テーブル101、受注履歴テーブル103、及び発報履歴テーブル104から稼働情報、受注履歴情報、発報履歴情報等を取得し、これらの取得データに基づき、建設機械の保全部品の受注確率に影響する、当該地域や顧客の特性に関するデータを数値的に推定する処理を実行する。特性に関するデータは、特定のものには限定されないが、例えば、当該地域における非純正部品の入手性の良さを示すデータ、当該の顧客における保全に関する積極性に関するデータ、煩忙月か否かのデータ、及び顧客の資金力に関するデータ等が含まれ得る。これらは、地域顧客属性テーブル301のデータ項目に含まれる。
【0041】
図15のフローチャートを参照して、地域・顧客特性推定部201でのデータ処理の手順を説明する。はじめに、地域・顧客特性推定部201は、業務データ記憶部100から、稼働情報テーブル101、発報履歴テーブル104、及び受注履歴テーブル103のデータを受信する(ステップS2009)。
【0042】
次に地域・顧客特性推定部201は、各テーブルから取得したデータに基づいて、非純正部品の入手性の良さを算出する(ステップS2010)。そして、各テーブルから取得したデータに基づいて、保全に関する積極性を算出する(ステップS2011)。最後に、各テーブルから取得したデータに基づいて、煩忙月を算出する(ステップS2012)。
【0043】
なお「非純正部品の入手性の良さ」、「保全に関する積極性」、「煩忙月」は、それぞれ地域・顧客特性を算出するための要件であるが、これら3つ全てを算出する必要はなく、状況に応じ、少なくともいずれか一つを算出するようにすることも可能である。図15は、上記3種類のデータを算出することで、地域・顧客特性情報をより精緻に算出することができる場合の手順の一例を示している。また、ステップS2010~S2012のデータの取得順序は、図15に示す順序には限られない。例えば、最初に「煩忙月」を、次に「保全に関する積極性」を取得し、最後に「非純正部品の入手性の良さ」を取得するようにしてもよい。
【0044】
図16A図16Bのフローチャートを参照して、ステップS2010(地域における非純正部品の入手性の良さの算出)の詳細を説明する。まず、地域・顧客特性推定部201は、地域顧客属性テーブル301を取得し(ステップS3010)、その地域顧客属性テーブル301の中から、未処理の地域コードを1件取得し(ステップS3011)、更に未処理の機体ID3010を1件取得する(ステップS3012)。
【0045】
そして、取得した機体ID3010に係る建設機械の故障アラームの発報の履歴を、発報履歴テーブル104から取得すると共に(ステップS3013)、取得した機体ID3010に係る建設機械の部品受注の履歴を、受注履歴テーブル103から取得する(ステップS3014)。そして、取得した発報履歴テーブル104の中の発報日1042と機体ID1040を参照し、発報日1042以降のある日数の範囲内で、当該機体ID1031の建設機械に関し、一定期間内(例えば直近1か月)に部品受注がないか否かを、受注履歴テーブル103を参照して判定する。
【0046】
部品受注が無い場合には、その発報日1042のデータを取得すると共に(ステップS3015)、稼働情報テーブル101を参照して、当該機体ID1010の建設機械の稼働時間の平均値を算出する(ステップS3016)。そして、稼働情報テーブル101の稼働時間1011の値が、アラーム発報日以降の一定期間内(例えば直近1か月)の中で、当該平均値と比べ一定値、又は一定割合以上減少しているか否かが判定される(ステップS3016)。判定が肯定的(yes)の場合にはステップS3017に移行し、否定的(no)の場合にはステップS3018に移行する。
【0047】
ステップS3017では、当該建設機械の稼働時間の減少が認められたとして、回数データNに1を加算する(ステップS3017)。ステップS3016でnoの判定がされた場合には、ステップS3017はスキップされる。以上のステップS3012~S3017が、全ての機体コードについて処理が完了するまで繰り返される(ステップS3018)。ステップS3018で全ての機体コードについて処理が完了すると(yes)、処理が終了した機体コード毎に、建設機械の稼働時間の減少の回数Nの平均値が算出される(ステップS3019)。
【0048】
以上のステップS3012~S3019が、全ての地域コードについて処理が完了するまで繰り返される(ステップS3020)。ステップS3020ですべての地域コードについて処理が完了すると(yes)、建設機械の稼働時間の減少の回数Nの平均値を地域コード毎に算出し、その値を地域顧客属性テーブル301の非純正部品入手性3017に格納する(ステップS3021)。以上により、非純正部品の入手可能性に関する数値の算出の手順が完了する。
【0049】
次に、図17のフローチャートを参照して、当該顧客における保全に関する積極性を示す数値の算出の手順の一例を説明する。この図17の手順では、当該の顧客における保全に関する積極性を、顧客が保有する建設機械におけるバッテリーの交換頻度、及びバッテリー交換時のバッテリー残り寿命をファクタとして算出する。
【0050】
具体的に説明すると、まず、地域・顧客特性推定部201は、地域顧客属性テーブル301を取得し(ステップS4010)、その地域顧客属性テーブル301の中から、未処理の顧客コードを1件取得する(ステップS4011)。そして、取得した顧客コードに対応する機体ID3010を、地域顧客属性テーブル301から取得する(ステップS4012)。更に、取得された機体ID3010に関するバッテリーSOH(1013)の値を、稼働情報テーブル101から取得する(ステップS4013)。
【0051】
続いて、地域・顧客特性推定部201は、ステップS4012で取得した機体ID3010に関する部品名(1033)が「バッテリー」である受注データの受注日(1035)のデータを、受注履歴テーブル103から取得する(ステップS4014)。そして、そのバッテリーの受注日におけるバッテリーSOHの平均値を算出する(ステップS4015)。また、バッテリー部品の一年間における平均の受注頻度を算出する(ステップS4016)。
バッテリー部品の一年間の平均の受注頻度は、例えば、バッテリー部品の受注があった旨の受注履歴データの、1年間当たりの更新回数に従って算出することができる。また、稼働情報テーブル101中のバッテリーSOH1013の値が、ある低い値から100%に近い値に回復した場合に、バッテリー部品の新たな受注がされたものと見なすことも可能である。
【0052】
続いて、算出されたバッテリーSOHの平均値と、平均の受注頻度の値とを乗算し(ステップS4017)、その乗算結果について、顧客コード3016毎に平均値を算出する。この算出された値が、地域顧客属性テーブル301の保全に関する積極性3018に格納される(ステップS4018)。そして、ステップS4011~4018の処理が、全ての顧客コードについて終了するまで繰り返される(ステップS4019)。
【0053】
次に、図18のフローチャートを参照して、煩忙月の算出の手順の詳細の一例を説明する。顧客の煩忙月は、一例として、稼働情報テーブル101の稼働時間1012のデータを参照して算出することができる。
【0054】
具体的には、地域顧客属性テーブル301を取得した後(ステップS4030)、その地域顧客属性テーブル301の中から、未処理の顧客コードを1件取得する(ステップS4031)。そして、取得した顧客コードと対応する稼働時間のデータを、稼働情報テーブル101から取得する(ステップS4032)。一例として、5年程度の期間で、顧客コード3016ごとに全ての建設機械の稼働時間1012のデータを稼働情報テーブル101から取得し、公知の手法を用いて、この稼働時間の変動を、1年周期の季節成分と、ランダム成分と、トレンド成分に分解する(ステップS4033)。また、分解した各日の稼働時間の季節成分において第三四分位数を算出する(ステップS4034)。
【0055】
続いて、あるデータ未処理の月において、分解した各日の稼働時間の季節成分を取得した後(ステップS4035)、その季節成分の平均値が、ステップS4034で演算した第三四分位数以上であるか否かが判定される(ステップS4036)。判定が肯定的(yes)である場合、その顧客の煩忙月であるとして、地域顧客属性テーブル301の煩忙月3019に格納することができる(ステップS4037)。このデータ処理が、全ての月、全ての顧客コードについて実行されるまで、上記の手順が繰り返される(ステップS4038、S4039)。
【0056】
次に、図19A図19Bのフローチャートを参照して、発報予測部202でのデータ処理の手順の詳細の一例を説明する。この図19A及び図19Bの手順では、稼働情報テーブル101と発報履歴テーブル104のデータに従って、ある建設機械において故障アラートが発生する確率(発報確率4014)が算出される。
【0057】
具体的に図19A及び図19Bに沿って説明すると、まず発報予測部202は、稼働情報テーブル101と、発報履歴テーブル104を取得し(ステップS4040)、発報履歴テーブル104から、未処理の故障アラームのアラームIDを1件取得する(ステップS4041)。そして、各機体IDで取得したアラームが発報した発報日(1042)を発報履歴テーブル104から取得し、当該建設機械の発報日に関する行を稼働情報テーブル101から取得する(ステップS4043)。
【0058】
そして、その取得した発報日に関する行を、故障が発生した状態でのデータであると推定し、一方、発報がされていない日に関する行を、故障が発生していない正常状態でのデータであると推定し、識別モデルとして学習する(ステップS4044)。そして、稼働情報テーブル101から、稼働日が当日である行のデータを取得し(ステップS4045)、取得した行データの中から、未処理の機体IDが含まれる行のデータを1件取得する(ステップS4046)。そして、ステップS4044で学習した識別モデルを用い、取得した行データが故障が発生した状態でのデータである確率を算出し、この確率を発報確率とする(ステップS4047)。そして、発報予測テーブル401に、ユニークな故障予知IDを採番して格納させる(ステップS4048)。そして、故障予知IDを格納した行に、取得した機体IDと、取得したアラームIDと、当日の日付と、算出した発報確率を格納する(ステップS4049)。以上のステップS4046~S4049が、全ての機体IDについて終了するまで繰り返される(ステップS4050)。なお、発報確率は、発報予測テーブル401の各機体ID4010ごとに、各アラームID4011の故障アラームの発報が数日以内にある確率を示している。発報確率の算出方法としては、Change Finder法などの公知の変化点検知の手法を用いることができる。あるいは、ある機体でアラーム発報した日の稼働情報テーブル101の計測データを異常データ、前後1か月間などでアラーム発報していない期間の稼働データを正常データとし、RandomForestモデルなどの公知の識別モデルを用いて学習し、そのモデルを用いて稼働データが異常である確率を発報確率として予測する方法も採用し得る。
【0059】
発報確率を算出するに当たり、故障アラームの発報日の何日前であれば、一定割合以上(例えば9割以上)でアラーム発報を予測することができるか(換言すれば、発報確率が閾値以上(例えば50%)であるとの予測が、一定割合以上の予測に対して得られるか否か)を評価する必要がある。また発報日から発報の数日前までの全ての予測において、一定の割合以上(例えば9割以上)でアラームの発報を予測できる最長の日数を発報予測限界日数4029として算出する。ここで算出した発報予測限界日数4029は、受注確率算出部203での処理の結果、受注予測結果記憶部400の受注予測テーブル402の発報予測限界日数4029に格納される。
【0060】
発報予測限界日数4029の算出は、ステップS4051~S4058により行われる。まず、発報予測部202は、機体ID毎に、発報日のデータを発報履歴テーブル104から取得し、その発報日よりも前の一定期間の日に関する行を稼働情報テーブル101から取得する(ステップS4051)。続いて、当該一定期間の日数を示す変数nのカウントを1とした後(ステップS4052)、取得した一定期間の日に関する行のデータのうち、発報日のn日前以降の行のデータを取得する(ステップS4053)。
【0061】
そして、その取得されたn日前以降の行のデータに識別モデルを適用し、その行のデータが故障データであると判定されるか否かを判定する。そして、n日前以降の行のデータのうち、故障データと判定される行のデータの割合を算出する(ステップS4054)。
【0062】
ステップS4054で算出された割合が閾値以下であるか否かが判定される(ステップS4055)。割合が閾値以下である場合(yes)、現時点の変数nにより発報予測限界日数を設定する(ステップS4056)。一方、割合が閾値より大きい場合(no)、変数nに1を加算して(ステップS4057)、ステップS4053~4057を再度実行する。以上のステップS4053~S4057が、全ての機体IDについて終了するまで繰り返される(ステップS4058)。
【0063】
次に、図20A図20Bを参照して、受注確率算出部203における処理フローの一例を説明する。受注確率算出部203は、地域・顧客特性推定部201での処理結果、発報予測部202での処理結果、及び業務データ記憶部100の各テーブルのデータを参照して、ある建設機械において部品の受注が発報予測限界日数以内に発生する確率を算出する。受注確率の算出の手順は、基本的には以下の通りである。
(1)発報予測部202で求めた発報確率(すなわち故障が発生する確率)を算出する。(2)顧客がアラームを放置せず対策部品を交換する確率を算出する。
(3)非純正部品ではなく純正部品が選択され、交換される確率を算出し、この確率を受注確率とする。
【0064】
図20A及び図20Bのフローチャートを参照して、受注確率算出の具体的な手順を説明する。まず、受注確率算出部203は、発報予測テーブル401と、受注履歴テーブル103と、地域顧客属性テーブル301を取得する(ステップS4060)。
【0065】
次に、これらのテーブルから取得されたデータを使用して、受注確率の算出のための統計モデルのパラメータを公知の方法により算出する(ステップS4061)。更に、これらのテーブルから取得されたデータを使用して、販促付き受注確率の算出のための統計モデルのパラメータを公知の方法により算出する(ステップS4062)。
【0066】
続いて、受注予測テーブル402から、未処理の機体IDを1件取得し(ステップS4063)、続いて未処理のアラームIDを1件取得し(ステップS4064)、更に未処理の部品IDを取得する(ステップS4065)。そして、取得した機体IDにおいて、取得したアラームIDのアラームが所定期間以内に発報する確率を、発報予測テーブル401から取得する(ステップS4067)。続いて、地域顧客属性テーブル301から、取得した機体IDに係る国コード(3013)、非純正部品入手性(3017)、保全に関する積極性(3018)、煩忙月(3019)のデータを取得する(ステップS4068)。そして、取得した機体IDに関連して取得された部品IDの部品の受注確率を算出し、受注予測テーブル402に格納する(ステップS4069)。
【0067】
続いて、販促活動コストテーブル303を取得して、その中で未処理の販促活動IDを1件取得する(ステップS4070)。続いて、この販促活動IDに基づいて、ステップ
S4063、4065で取得した機体ID及び部品IDに係る部品の販促付き受注確率を算出し、受注予測テーブル402に格納する(ステップS4071)。このステップS4071が全ての販促活動IDについて繰り返される(ステップS4072)。そして、ステップS4067~4071の処理が、全ての販促活動ID、全ての部品ID、全てのアラームID、及び全ての機体IDの組合せについて終了するまで繰り返される(ステップS4072~4075)。
【0068】
ステップS4069における受注確率算出は、一例として、以下に説明するように、ベイズ推測によって算出することが可能である。
[数1]
O_i、j ~ Bernoulli(P_i、j * alpha)
P_i、j ~ Bernoulli(A_i * beta)
Logit alpha = a_0 + a_1*imitation + a_2*country
Logit beta = b_0 + b_1*delta + b_2*hozen
j: parts
i: alarm
a_n ~ Norm(0、 10^3)
b_m ~ Norm(0、 10^3)
delta = 1: 予想日が煩忙月(country)であるとき、 0: それ以外
【0069】
上記は、アラームiが発報し部品jを受注する確率0_i、jを表した統計モデルである。O_i、jは、顧客が部品交換を行う確率P_i、jと、部品jとして純正部品が購入される確率alphaをパラメータとするベルヌーイ分布で表される。
【0070】
純正品が購入される確率alphaは、[数1]の第3式のように、確率alphaのロジットに対する共変量として、非純正部品入手性3017(imitation)、国コード3013(country)を設定して演算され得る。すなわち、確率alphaのロジットは、パラメータa_nを用いたimitationとcountryの線形和により表される。
【0071】
また、[数1]の第2式の如く、顧客が部品交換を行う確率P_i、jは、発報予測部202で求めたアラームiの発報確率A_iと、そのアラームに応じて部品を交換する確率betaをパラメータとするベルヌーイ分布で表すことができる。
【0072】
また、アラームに応じて部品を交換する確率betaは、確率betaのロジットに対する共変量として、対象顧客の保全に関する積極性3018(hozen)と、予測日が煩忙月であると
き1、煩忙月でないときとなるパラメータdeltaを用い、パラメータb_mを用いた線形和と
して算出することができる。なお、上記の統計モデルは、Stanなどの公知の確率的プログラミング言語を用いて実装することができる。
【0073】
上記のパラメータのうち、パラメータa_n(n=0、1、2)、及びb_n(n=0、 1、 2)は平均0
、分散1000の正規分布を事前分布とする。パラメータの事後分布は、発報履歴テーブル104のアラームiが発報してから一定日数以内における受注履歴テーブル103の部品jの受注の有無と、アラームiの発報の発報予測限界日数前における発報予測時の発報確率A_iとをデータとして、MCMCアルゴリズムなどの公知の方法を用いることで求めることができる。この事後分布は、アラームiや部品jごとに違うパラメータを求めてもよい。
【0074】
受注確率を算出するには、得られたパラメータの事後分布を用いて受注確率の分布を求め、その平均値を受注確率とし、受注予測結果記憶部400の受注予測テーブル402の受注確率4025に格納することができる。また、純正部品が購入される確率alphaを受
注予測テーブル402の純正購入確率4026に、顧客がアラーム発報に対して部品交換
を行う確率betaを部品交換確率4027に、アラームの発報確率A_iを発報確率4028
にそれぞれ格納することができる。
【0075】
ステップS4071における販促付き受注確率の算出は、一例として、以下の[数2]のように算出することが可能である。
【0076】
[数2]
O_i、j、k ~ Bernoulli(P_i、j * alpha_k)
Logit alpha_k = a_0 + a_1*imitation + a_2 * country + c_k
c_k ~ Norm(0、 10^3)
【0077】
上記の[数2]は、販促活動kを行う場合に、アラームiが発報し部品jの受注がある確
率O_i、j、kを表した統計モデルである。純正部品が購入される確率alpha_kは、[数2]の第2式に示すように、確率alpha_kのロジットに対する共変量として、非純正部品入手
性3017(imitation)、国コード3013(country)を設定して演算され得る。更に、各販促活動kに対する部品購入への影響c_kが加算される。このc_kは、顧客や地域ごとに算
出してもよいし、対象顧客の保全に関する積極性3018と乗算するなどしてもよい。あるいは、販促活動kを複数個行う場合には、対応するc_kをそれぞれ乗算・加算してもよい。
【0078】
パラメータc_kの事前分布は平均0、分散1000の正規分布とする。パラメータの事後分布は、販促活動を行わない場合の受注確率の算出と同様のデータと、受注を実施した履歴を販促活動履歴テーブル304から参照してデータとし、MCMCアルゴリズムなどの公知の方法を用いることで求めることができる。
【0079】
販促活動kを行う場合の受注確率は、得られたパラメータの事後分布を用いて受注確率
の分布を求め、その平均値を受注確率とし、受注予測結果記憶部400の販促付き受注予測テーブル403の販促付き受注確率4032に格納することができる。また、販促活動を行った場合に顧客が純正部品を購入する確率を、販促付き受注予測テーブル403の販促付き純正購入確率4033に格納することができる。
【0080】
図21A図21Cを参照して、事前配備損益の算出の具体的な手順を説明する。この手順において、事前配備損益算出部204は、受注予測テーブル402、販促付き受注予測テーブル403、部品配備費用テーブル302、及び販促活動履歴テーブル304のデータを参照して、事前配備による損益を予測する。事前配備による損益は、販促活動を行わない場合の事前配備損益と、販促活動を行う場合の事前配備損益とが含まれ得る。前者及び後者の両方を予測することが好適であるが、どちらか一方のみを予測することも可能である。
【0081】
具体的には、まず事前配備損益算出部204は、受注予測テーブル402、販促付き受注予測テーブル403、及び部品配備費用テーブル302、販促活動履歴テーブル304のデータを取得する(ステップS4081)。
【0082】
次に、事前配備損益算出部204は、受注予測テーブル402の中のデータから、未処理の故障予知IDが含まれる行のデータを1件取得する(ステップS4082)。そして、取得された行のデータの中の部品IDに関する未処理のデポコードを、部品配備費用テーブル302から1件取得し(ステップS4083)、同様に取得された行のデータの中の部品IDに関する未処理の代理店コードを、部品配備費用テーブル302から1件取得する(ステップS4084)。そして、取得したデポコード及び代理店コードに対応するデポに部品の事前配備をする場合の期待利益を算出し、この算出値を、事前配備損益テーブル404に格納する(ステップS4085)。このステップS4083~S4085の手順を、全ての未処理の代理店コード、及びデポIDの組合せについて繰り返す(ステップS4086、S4087)。
【0083】
S4087の処理が完了すると(yes)、次に、販促付き受注予測テーブル403において、ステップS4082で取得した故障予知IDが格納されている行のデータを取得する(ステップS4088)。そして、その取得された行のデータの中から、未処理の販促活動IDのデータを取得する(ステップS4089)。そして、取得した故障予知ID4030に係る建設機械を所有する顧客の顧客コード3016を、地域顧客属性テーブル301から取得する(ステップS4090)。
【0084】
続いて、取得した顧客コード3016の顧客が、取得した販促活動IDの販促活動を所定期間内(例えば当月内)に実施した回数を、販促活動履歴テーブル304から算出する(ステップS4091)。そして、販促活動コストテーブル303を参照し、算出された販促活動の実施回数が、同テーブル303中の実施上限/顧客3033を超過していない販促活動IDを1件取得する(ステップS4092)。更に、取得した故障予知IDと販促活動IDに関する販促付き受注予測テーブル403の未処理の行を1件取得する(ステ
ップS4093)。
【0085】
そして、その未処理の行データの中の部品IDに関する未処理のデポコードを、部品配備費用テーブル302から1件取得し(ステップS4094)、同様に取得された行のデータの中の部品IDに関する未処理の代理店コードを、部品配備費用テーブル302から1件取得する(ステップS4095)。そして、取得したデポコード及び代理店コードに対応するデポに、取得した販促活動IDの販促活動を行って部品の事前配備をする場合の期待利益を算出し、この算出値を、事前配備損益テーブル404に格納する(ステップS4096)。このステップS4088~S4096の手順を、全ての未処理の代理店コード、及びデポIDの組合せについて処理が終了し、且つすべての販促活動IDが処理済み又は実施上限/顧客の値を超過するまで繰り返す(ステップS4097、S4098、S4099)。ステップS4097、S4098、S4099の全てでyesの判定がなされると、全ての故障予知IDが処理済みであるか否かが判定され(S4100)、S4100がnoであれば、ステップS4082に戻って上記の手順が繰り返され、yesであれば全ての処理が終了する。
【0086】
事前配備の予想利益、すなわち事前配備を行う場合と事後配備を行う場合の損益の差は、次の式で算出される。
【0087】
[数3]
事前配備の予想利益= 事前配備を行って受注があった場合の損益*受注確率
+事前配備を行って受注が無かった場合の損益*(1-受注確率)
-事後配備を行って受注があった場合の損益*受注確率
【0088】
上式による事前配備の利益を予測するに当たり、予測対象の建設機械の担当代理店の情報を、部品配備費用テーブル302の代理店コード3021から取得する。そして、部品配備費用テーブル302において、事前配備を行う部品の部品ID3020と、代理店コード3021とが一致する行の費用を参照する。
【0089】
上式の事前配備を行って受注があった場合の損益は、在庫管理テーブル102の販売価格1023に粗利率1024を乗算した粗利から、部品配備費用テーブル302の部品の配送費3025と、一日当たりの在庫費3027と、一日当たりの故障損失3028とを減算して算出することができる。ただし、配送にかかる日数は標準配送日数3023とし
、在庫費及び故障損失に乗算する日数は、配送にかかる日数から発報予測限界日数4029を減算した日数とする(ただし0未満の場合は0日とする)。
【0090】
また、上式の事前配備を行って受注が無かった場合の損益は、前述の事前配備を行って受注があった場合の損益から、粗利と故障損失を削除し、期待処分費3029を減算し、在庫費に乗算する日数を在庫を保管しておく目安の日数に変更することで算出できる。目安の日数として例えば30日などの値を用いることができる。
【0091】
また、上式の事後配備を行って受注があった場合の損益は、在庫管理テーブル102の販売価格1023に粗利率1024を乗算した粗利から、部品配備費用テーブル302の部品の速達費3026と一日当たりの在庫費3027と一日当たりの故障損失3028を減算して算出することができる。ただし、配送にかかる日数は標準速達日数3024とし、在庫費及び故障損失に乗算する日数は配送にかかる日数から発報予測限界日数を減算した日数の絶対値とする。
【0092】
上述のようにして事前配備の予想利益を、部品配備費用テーブル302の代理店コード3021とデポコード3022の組み合わせの数だけ算出し、事前配備損益テーブル404の期待利益4046に格納する。また、販促活動を行った場合の事前配備の予想利益も算出する。具体的には、上式の受注確率を販促付き受注予測テーブル403の販促付き受注確率4032に置き換え、事前配備を行って受注が無かった場合の損益から、販促活動コストテーブル303の販促費用3032を減算して求める。ただし、販促活動履歴テーブル304を参照して各販促活動ID3030の当月の実施回数を算出し、販促活動コストテーブル303の一か月あたりの実施上限/顧客3033を上回る場合には、その販促
活動についての販促活動を行った場合の事前配備の予想利益を算出しない。上述の処理にて算出した販促活動を行った場合の事前配備の予想利益は、事前配備損益テーブル404の行った販促活動の販促活動ID4043と同じ行の、期待利益4046に格納する。
【0093】
上記のようにして算出された事前配備による損益を含む、部品の事前配備計画は、代理店端末500の事前配備計画表示部501に表示される。図22は、この事前配備計画表示部501の一例を示している。
【0094】
事前配備計画表示部501は、ネットワーク1を通して受注予測結果記憶部400のデータを取得し、受注予測データ記憶部300に処理の結果を格納させる。事前配備計画表示部501の処理は、ユーザが事前配備計画表示部501を操作する毎に逐次実行される。
【0095】
事前配備計画表示部501は、代理店に所属するユーザが、代理店コード5001と、その代理店が管轄する建設機械の機体ID5002と、故障予測を行う日付である予想日5003を入力することが可能に構成されている。
【0096】
前述の情報が入力されると、代理店端末500は、受注予測テーブル402を参照し、入力された情報と一致する機体ID4022と予測日4021が格納された行のデータを受注予測テーブル402から抽出して、予測情報表示部5010に、アラームID4023(予想アラーム)と、発報確率4028と、部品ID4024(予想部品受注)と、受注確率4025とをテーブルとして表示する(受注予測テーブル402の内容を表示する)。予測情報表示部5010の複数行のデータのうちの1行を、ユーザがタッチパネル上でタッチするか、マウスでクリックするなどして選択すると、受注確率内訳表示部5020、事前配備利益表示部5030、事前配備内容表示部5040の表示が更新される。
【0097】
受注確率内訳表示部5020は、発報確率4028と、部品交換確率4027と、純正
購入確率4026と、受注確率4025を表示するよう構成される。これらの数値は、例えば棒グラフにより表示され得る。表示される数値は、予測情報表示部5010の選択された行と故障予知IDが一致する、受注予測テーブル402の一つの行を参照することで特定される。
【0098】
事前配備利益表示部5030は、一例として、期待利益5031、販促活動5032、及び販促付き期待利益5033を表示する。代理店端末500は、事前配備損益テーブル404を参照して、予測情報表示部5010の選択された行と故障予知IDが一致する行のデータを取得する。そして、その行のデータに従い、期待利益5031、販促活動5032、及び販促付き期待利益5033を表示する。取得された行データに販促活動ID4043が格納されていない場合には、事前配備利益表示部5030は空欄とされる。
【0099】
代理店のユーザは、販促活動選択部5032の操作を通して、適用したい販促活動IDを選択することもできる。販促活動IDが販促活動選択部5032において選択されると、事前配備損益テーブル404において、予測情報表示部5010で選択中の行データと販促活動IDが一致する行データが選択され、その選択された行データに従って、期待利益5031及び販促付き期待利益5033の表示も更新される。
【0100】
事前配備内容表示部5040は、予測情報表示部5010で選択している部品の情報と、販促活動選択部5032で選択している販促活動の内容と、それに合致する期待損益の情報とを表示する。
【0101】
部品の数量は、例えば受注履歴テーブル103の個数データ等に基づく推定値である。部品の数量のデータは、部品ID1032毎に、例えば中央値が演算され、事前配備内容表示部5040に表示される。
【0102】
また、この事前配備内容表示部5040には、事前配備による時間短縮に関するデータも表示される。代理店ユーザにより予測情報表示部5010において選択されている行データと故障予知ID4040が一致する行データを事前配備損益テーブル404上で参照し、選択された行データに含まれる代理店コード4041及びデポコード4042を、更に部品配備費用テーブル302から抽出する。この部品配備費用テーブル302において抽出された行のデータから、標準速達日数3024、発報予測限界日数4029を抽出し、両者の和から標準配送日数3023を減算した日数を算出する。その算出された日数が、時間短縮日数として事前配備内容表示部5040に表示される。
【0103】
事前配備内容表示部5040に表示されている事前配備の内容について代理店のユーザが実施を決定すると、事前配備内容確定ボタン5041が押下される。代理店のユーザが販促活動選択部5032で選択している販促活動の販促活動ID3041と故障予知ID3040が販促活動履歴テーブル304に格納される。なお、販促活動が1つも選択され
ていない場合であっても、事前配備を行うことの履歴として、販促活動ID3041が0
(空欄)である行が販促活動履歴テーブル304に格納される。ただし販促実行日3043としては、代理店ユーザが入力している予想日5003を格納する。
【0104】
図23を参照して、事前配備通知表示部601の画面の一例を説明する。事前配備通知表示部601は、顧客端末600に備わっており、ネットワーク1を通して受注予測データ記憶部300、受注予測結果記憶部400のデータを取得する。事前配備通知表示部601でのデータ処理は、ユーザが事前配備通知表示部601を操作する毎に逐次実行される。
【0105】
事前配備通知表示部601は、故障予想機体表示部6010と機体状態表示部6020
の表示領域を含む。対象顧客の顧客端末600への入力操作がされると、事前配備通知表示部601は発報予測テーブル401を参照し、発報確率4014の値が0.5などの一定以上である建設機械の一覧を、故障予想機体表示部6010に表示する。故障予想機体表示部6010は、建設機械を特定する情報を示す機体IDと、その機体に関連付けて発報予定のアラームの識別情報、および予想故障日を表示する。表示の順序は任意に設定し得るものであって、故障予想日が直近の順で表示してもよいし、故障の対応の緊急度に応じた順で表示してもよい。ここで建設機械を保有するユーザは、故障予想機体表示部6010に表示された建設機械の中から任意の一つを選択することができる。ユーザが建設機械の1つを選択すると、機体状態表示部6020と事前配備経過表示部6030の表示内容が更新される。
【0106】
機体状態表示部6020は、ある建設機械の発報確率と、発報がなされ、故障が発生した場合の対策部品の部品コード及び価格を関連付けて表示する。なお表示は操作時点の情報のみに基づくものであってよいが、それに限られず、将来予測を含んだものとしてもよい。たとえば価格自体は部品の在庫状況などに応じて変動し得るので、現時点の価格と、発報確率が上昇した場合の予想価格を併記して表示することができる。期間設定は1週間後、2週間後など、任意に変更することができる。また、対策部品と、価格に加えて、在庫状況に関する情報を、「多」「少」「残りわずか」などの表記で簡易的に表示してもよい。通知内容はテキスト形式に限られず、グラフ形式で通知されてもよい。
こうすることによって、故障対応の緊急度や顧客の必要性に応じた迅速な対応が可能となる。これらの表示は、受注予測テーブル402の発報確率4028と部品ID4024に基づいて行われる。また、販促活動履歴表示部6021において、販促活動の経過(ご連絡、ご提案など)が表示される。部品の手配を対応可能な近隣店舗から希望する場合、候補の店舗の地図情報を表示することとしてもよい。
【0107】
図8に示すように、販促活動コストテーブル303にて(承認済み)の付与の有無が異なる2つの販促活動名3031(巡回点検実施)が格納されている販促活動であって、同じ故障予知ID4020に対して(承認済み)が付与されていない販促活動のみが格納されている場合については、販促活動承認ボタン6022を表示する。ユーザは、販促活動の提案に対して同意すると、販促活動承認ボタン6022を押下し、販促活動の実行を承認する。販促活動承認ボタン6022が押下された場合、販促活動履歴テーブル304に(承認済み)の販促活動を追加する。
【0108】
また、機体状態表示部6020は、受注予測テーブル402の選択された行のデータ中の故障予知ID4020と関連して実行した販促活動を販促活動履歴テーブル304から取得し、販促活動の履歴として販促活動履歴表示部6021に表示する。
【0109】
事前配備経過表示部6030は、販促活動履歴テーブル304にて、販促活動ID3041が0(販促活動が行われていないことを示す)である行を取得し、機体状態表示部6020の機体について配送中の部品がいつ発送を開始し、いつ到着する見込かを表示する。ただし、発送開始日は、販促活動履歴テーブル304の販促実行日3043とし、到着見込日は、部品配備費用テーブル302の標準配送日数3023を販促実行日3043に加算した値とする。なお、図24、及び図25は、事前配備計画表示部501、及び事前配備通知表示部601における上述の動作の手順を俯瞰的に示したものである。
【0110】
以上説明したように、本実施の形態のシステムによれば、機械に係る地域の特性、又は顧客の特性が地域/顧客特性推定部により推定され、故障予測部と前記地域/顧客特性推定部の出力に基づき、機械に係る部品を受注する確率である受注確率が算出される。地域や顧客の特性を加味した受注確率の予測がなされるため、実際に発注される部品の数が、実際の需要に沿ったものとすることができ、在庫過剰や在庫不足を抑制することができる
【0111】
以上、本発明の種々の実施形態を説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0112】
1…ネットワーク
100…業務データ記憶部
101…稼働情報テーブル
102…在庫管理テーブル
103…受注履歴テーブル
104…発報履歴テーブル
200…受注予測サーバ
201…地域・顧客特性推定部
202…発報予測部
203…受注確率算出部
204…事前配備損益算出部
300…受注予測データ記憶部
301…地域顧客属性テーブル
302…部品配備費用テーブル
303…販促活動コストテーブル
304…販促活動履歴テーブル
400…受注予測結果記憶部
401…発報予測テーブル
402…受注予測テーブル
403…販促付き受注予測テーブル
404…事前配備損益テーブル
500…代理店端末
501…事前配備計画表示部
600…顧客端末
601…事前配備通知表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
図22
図23
図24
図25