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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】セラミックヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/18 20060101AFI20230322BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20230322BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20230322BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230322BHJP
   H01L 21/31 20060101ALN20230322BHJP
【FI】
H05B3/18
H05B3/74
H01L21/02 Z
H01L21/68 N
H01L21/31 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021507175
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2020009188
(87)【国際公開番号】W WO2020189286
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2019049548
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高崎 秀明
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-077508(JP,A)
【文献】特許第6393006(JP,B1)
【文献】国際公開第2015/025589(WO,A1)
【文献】特開2006-060040(JP,A)
【文献】特開2010-177698(JP,A)
【文献】特開2007-258609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02- 3/82
H01L 21/02-21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ載置面を備えたAlNセラミック基体に、前記ウエハ載置面に近い方からプラズマ発生用電極、ヒータ電極がこの順に離間した状態で埋設されたセラミックヒータであって、
前記AlNセラミック基体は、
前記プラズマ発生用電極と前記ヒータ電極との間に設けられたAlNセラミック高抵抗層と、
前記高抵抗層以外のAlNセラミック低抵抗層と、
を備え、
前記高抵抗層と前記低抵抗層ともSi、Mg及びTiを含み、
前記高抵抗層は、前記低抵抗層と比べて、Mg及びTiの含有量が多く体積抵抗率が高く、
前記AlNセラミック基体は、前記低抵抗層と前記高抵抗層と前記低抵抗層とがこの順に積層された3層構造となっており、前記高抵抗層の厚みは2つの前記低抵抗層の厚みの合計よりも小さい、
セラミックヒータ。
【請求項2】
前記高抵抗層は、前記低抵抗層と比べて、Siの含有量が少ない、
請求項1に記載のセラミックヒータ。
【請求項3】
前記低抵抗層は、10質量ppm以上50質量ppm以下のTiを含むAlNセラミック層であり、
前記高抵抗層は、1000質量ppm以上1500質量ppm以下のTiを含むAlNセラミック層である、
請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項4】
前記低抵抗層は、90質量ppm以上180質量ppm以下のMgを含むAlNセラミック層であり、
前記高抵抗層は、200質量ppm以上400質量ppm以下のMgを含むAlNセラミック層である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のセラミックヒータ。
【請求項5】
前記高抵抗層の体積抵抗率は、前記低抵抗層の体積抵抗率の1.2倍以上である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のセラミックヒータ。
【請求項6】
前記高抵抗層の熱伝導率は、前記低抵抗層の熱伝導率の90%以上である、
請求項1~5のいずれか1項に記載のセラミックヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体製造プロセスにおいて、プラズマCVD工程が採用されることがある。プラズマCVD工程では、セラミックヒータのウエハ載置面にウエハを載置する。セラミックヒータのセラミック基体には、プラズマ発生用電極とヒータ電極とが埋設されている。一方、ウエハの上方空間には、上部電極が配置されている。そして、上部電極とプラズマ発生用電極との間に高周波電圧を印加すると、これらの電極の間にプラズマが発生し、このプラズマを利用してウエハに薄膜が蒸着される。こうしたセラミックヒータでは、プラズマ発生用電極に印加した高周波電圧の漏れ電流がヒータ電極に伝わると、ヒータ電極への通電が制御できなくなるという問題があった。この点に鑑み、特許文献1には、プラズマ発生用電極とヒータ電極との間に高抵抗の絶縁層(漏れ電流防止層)を設けることが提案されている。また、一例として、セラミック基体自体は窒化アルミニウムセラミックで形成し、絶縁層として窒化アルミニウムよりも抵抗値の大きい窒化珪素セラミックで形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3602908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、窒化珪素セラミックの熱膨張率は窒化アルミニウムセラミックの熱膨張率の6割程度しかないため、セラミックヒータの昇温と降温を繰り返すうちに絶縁層が剥離するおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、プラズマ発生用電極とヒータ電極との間の漏れ電流を長期にわたって防止することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセラミックヒータは、
ウエハ載置面を備えたAlNセラミック基体に、前記ウエハ載置面に近い方からプラズマ発生用電極、ヒータ電極がこの順に離間した状態で埋設されたセラミックヒータであって、
前記AlNセラミック基体は、
前記プラズマ発生用電極と前記ヒータ電極との間に設けられたAlNセラミック高抵抗層と、
前記高抵抗層以外のAlNセラミック低抵抗層と、
を備え、
前記高抵抗層と前記低抵抗層ともSi、Mg及びTiを含み、
前記高抵抗層は、前記低抵抗層と比べて、Mg及びTiの含有量が多く体積抵抗率が高い、
ものである。
【0007】
このセラミックヒータでは、AlNセラミック基体は、プラズマ発生用電極とヒータ電極との間に設けられたAlNセラミック高抵抗層と、高抵抗層以外のAlNセラミック低抵抗層とを備えている。高抵抗層と低抵抗層ともSi、Mg及びTiを含む。高抵抗層は、低抵抗層と比べて、Mg及びTiの含有量が多く体積抵抗率が高い。そのため、プラズマ発生用電極とヒータ電極との間に漏れ電流が流れるのを高抵抗層が防止する。高抵抗層は、低抵抗層よりも体積抵抗率が高くなるようにMg及びTiを多めに含有している。また、AlNセラミック基体を構成する高抵抗層と低抵抗層は、いずれも基本的にはAlNセラミックであるため、熱膨張率に大きな差が生じない。そのため、セラミックヒータの昇温と降温を繰り返したとしても、高抵抗層と低抵抗層との層間に剥離が生じにくい。したがって、このセラミックヒータによれば、プラズマ発生用電極とヒータ電極との間の漏れ電流を長期にわたって防止することができる。
【0008】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記高抵抗層は、前記低抵抗層と比べて、Siの含有量が少ないことが好ましい。
【0009】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記低抵抗層は、10質量ppm以上50質量ppm以下のTiを含むAlNセラミック層であり、前記高抵抗層は、1000質量ppm以上1500質量ppm以下のTiを含むAlNセラミック層であることが好ましい。こうすれば、高抵抗層の体積抵抗率を低抵抗層の体積抵抗率よりも高くすることができると共に、高抵抗層の熱伝導率を低抵抗層の熱伝導率と同程度にすることができる。
【0010】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記低抵抗層は、90質量ppm以上180質量ppm以下のMgを含むAlNセラミック層であり、前記高抵抗層は、200質量ppm以上400質量ppm以下のMgを含むAlNセラミック層であることが好ましい。
【0011】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記高抵抗層の体積抵抗率は、前記低抵抗層の体積抵抗率の1.2倍以上であることが好ましい。こうすれば、プラズマ発生用電極とヒータ電極との間の漏れ電流をより防止しやすくなる。
【0012】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記高抵抗層の熱伝導率は、前記低抵抗層の熱伝導率の90%以上であることが好ましい。こうすれば、高抵抗層の熱伝導率が比較的高いため、ウエハの均熱性が良好になる。
【0013】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記AlNセラミック基体は、前記低抵抗層と前記高抵抗層と前記低抵抗層とがこの順に積層された3層構造となっており、前記高抵抗層の厚みは2つの前記低抵抗層の厚みの合計よりも小さいことが好ましい。通常、セラミックは体積抵抗率が高いと熱伝導率が低くなる傾向にあるが、このような構造を採用すれば、全体として熱伝導率を比較的高くすることができ、ウエハの均熱性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】プラズマ処理装置10の概略構成を示す断面図。
図2図1における1点鎖線の円内部分の拡大図。
図3】他の実施形態の円内部分の拡大図。
図4】他の実施形態の円内部分の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1はプラズマ処理装置10の概略構成を示す断面図、図2図1における1点鎖線の円内部分の拡大図である。
【0016】
プラズマ処理装置10は、図1に示すように、チャンバ12と、シャワーヘッド20と、ウエハ載置装置30とを備えている。
【0017】
チャンバ12は、アルミニウム合金等によりボックス状に形成された容器である。このチャンバ12は、底面の略中央に丸穴14を有している。また、チャンバ12は、底面に排気管16を有している。排気管16は、図示しない圧力調整弁や真空ポンプ等を途中に備えており、チャンバ12の内部を所望の圧力に調整できるようになっている。チャンバ12の天井は、開口されている。
【0018】
シャワーヘッド20は、チャンバ12の天井の開口を塞ぐように取り付けられている。チャンバ12の天井の開口縁とシャワーヘッド20との間には、絶縁部材22が設けられている。シャワーヘッド20で開口が塞がれたチャンバ12の内部は、気密が保たれるように構成されている。シャワーヘッド20は、ガス導入管24から導入されたガスを、多数のガス噴射孔26からセラミックヒータ31に載置されたウエハWに向かって噴射するようになっている。シャワーヘッド20には、プラズマ発生用のRF電源60が接続されている。そのため、シャワーヘッド20は、プラズマ発生用の電極として機能する。RF電源60の周波数は、例えば13MHzとか27MHzが好ましい。
【0019】
ウエハ載置装置30は、セラミックヒータ31と、中空シャフト38とを備えている。
【0020】
セラミックヒータ31は、ウエハ載置面32aを備えた円板状のAlNセラミック基体32に、ウエハ載置面32aに近い方からプラズマ発生用のRF電極33とヒータ電極34とがこの順に離間した状態で埋設されたものである。
【0021】
AlNセラミック基体32は、図2に示すように、RF電極33とヒータ電極34との間に設けられたAlNセラミック高抵抗層321と、高抵抗層321以外のAlNセラミック低抵抗層322,323とを備えている。高抵抗層321と低抵抗層322,323ともSi,Mg及びTiを含んでいる。ここでは、AlNセラミック基体32は、低抵抗層322と高抵抗層321と低抵抗層323とがこの順に積層された3層構造となっており、高抵抗層321の厚みは2つの低抵抗層322,323の厚みの合計よりも小さい。高抵抗層321は、低抵抗層322,323と比べて、Mg及びTiの含有量が多く体積抵抗率が高い。高抵抗層321は、低抵抗層322,323と比べてTi含有量が多いため、外観上、黒っぽく見える。高抵抗層321は、低抵抗層322,323と比べて、Siの含有量が少ないことが好ましい。低抵抗層322,323は、10質量ppm以上50質量ppm以下のTiを含むAlNセラミック層であることが好ましく、高抵抗層321は、1000質量ppm以上1500質量ppm以下のTiを含むAlNセラミック層であることが好ましい。低抵抗層322,323は、90質量ppm以上180質量ppm以下のMgを含むAlNセラミック層であり、高抵抗層321は、200質量ppm以上400質量ppm以下のMgを含むAlNセラミック層であることが好ましい。また、高抵抗層321の体積抵抗率は、低抵抗層322,323の体積抵抗率の1.2倍以上であることが好ましく、高抵抗層321の熱伝導率は、低抵抗層322,323の熱伝導率の90%以上であることが好ましい。高抵抗層321の熱膨張率α1は、低抵抗層322,323の熱膨張率α2と同等(例えばα2±10%の範囲内、好ましくはα2±5%の範囲内)であることが好ましい。
【0022】
RF電極33は、メッシュ形状、板状又は膜状であり、例えばW,Mo,Ti,Si,Niの単体又は化合物(炭化物など)を主成分とする材料、それらを組み合わせた材料、あるいはそれらとセラミック基体32に用いられたセラミック原料との混合材料などによって作製される。RF電極33は、セラミック基体32のうちウエハ載置面32aとは反対側の面(裏面)から差し込まれた給電ロッド35を介してプラズマ発生用のRF電源60に接続されている。
【0023】
ヒータ電極34は、コイル形状又はリボン形状であり、例えばW,Mo,Ti,Si,Niの単体又は化合物(炭化物など)を主成分とする材料、それらを組み合わせた材料、あるいはそれらとセラミック基体32に用いられたセラミック原料との混合材料などによって作製される。ヒータ電極34は、ウエハ載置面32aの全体にわたって行き渡るように一筆書きの要領で一端34aから他端34bまで配線されている。ヒータ電極34の一端34aと他端34bには、それぞれ給電ロッド36,37が接続されている。2つの給電ロッド36,37の間には、ヒータ電源62が接続されている。ヒータ電極34は、ヒータ電源62から電力が供給されると、ウエハ載置面32aに吸着保持されているウエハWを加熱する。
【0024】
中空シャフト38は、セラミック基体32と同様、AlN製であり、両端の開口の周囲にはフランジ38a,38bが設けられている。中空シャフト38は、一端のフランジ38aを介してセラミック基体32の裏面に拡散接合やTCB(Thermal compression bonding)により接合されている。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。なお、使用温度が低ければ、中空シャフト38はセラミック基体32の裏面に有機接着層を介して接着されていてもよい。また、中空シャフト38は、他端のフランジ38bを介してチャンバ12の底面に設けられた丸穴14の周囲に気密に取り付けられている。そのため、中空シャフト38の内部とチャンバ12の内部とは、完全に遮断された状態となっている。中空シャフト38のフランジ38bの裏面には、ロッド固定器39が取り付けられている。ロッド固定器39は、貫通する給電ロッド35,36,37を図示しないクランプ機構によって固定するものである。
【0025】
次に、プラズマ処理装置10の製造例について説明する。ここでは、ウエハ載置装置30の製造例について説明する。なお、この製造例は周知の技術を応用したものであるため概略のみ説明する。まず、扁平な円柱状の空間を備えた成形型を用意する。その成形型内に、焼成すると低抵抗層になる低抵抗層用原料を投入して敷き詰める。続いて、その上にRF電極33を配置し、更に低抵抗層用原料を投入してRF電極33上に敷き詰める。続いて、その上に、焼成すると高抵抗層になる高抵抗層用原料を投入して敷き詰め、一旦、円板状に成形する。続いて、高抵抗層用原料の上にヒータ電極34を配置し、更に低抵抗層用原料を投入してヒータ電極34上に敷き詰め、再度、円板状に成形する。得られた円板状の成形体を焼成し、セラミックヒータ31を得る。焼成は、加圧焼成(例えばホットプレス焼成)でもよいし、常圧焼成でもよい。続いて、セラミックヒータ31のウエハ載置面32aとは反対側の面に、給電ロッド35,36,37を接続するための穴あけ等の切削を行う。切削を行ったあとのセラミックヒータ31に、別途作製した中空シャフト38を接合したあと、給電ロッド35をRF電極33に接続すると共に給電ロッド36,37をヒータ電極34の一端34a及び他端34bに接続し、ウエハ載置装置30を得る。
【0026】
次に、プラズマ処理装置10の使用例について説明する。図1に示すように、チャンバ12内にプラズマ処理装置10を配置し、ウエハ載置面2aにウエハWを載置する。そして、シャワーヘッド20から反応ガスを供給し、チャンバ12内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とする。この状態で、シャワーヘッド20とセラミック基体32に埋設されたRF電極33との間に、RF電源60から高周波電力を供給する。これにより、シャワーヘッド20とRF電極33とからなる平行平板電極間にプラズマが発生する。そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。また、図示しない熱電対の検出信号に基づいてウエハWの温度を求め、その温度が設定温度(例えば350℃とか300℃)になるようにヒータ電極34へ印加するヒータ電源62の電圧を制御する。
【0027】
以上詳述したセラミックヒータ31では、RF電極33とヒータ電極34との間に漏れ電流が流れるのを高抵抗層321が防止する。高抵抗層321は、低抵抗層322,323よりも体積抵抗率が高くなるようにTiを多めに含有している。AlNセラミックは、Ti含有量が多すぎると体積抵抗率が低くなるが、Ti含有量が適量であれば体積抵抗率が高くなる傾向がある。本実施形態ではこの性質を利用している。また、AlNセラミック基体32を構成する高抵抗層321と低抵抗層322,323は、いずれも基本的にはAlNセラミックであるため、熱膨張率に大きな差が生じない。そのため、セラミックヒータ31の昇温と降温を繰り返したとしても、高抵抗層321と低抵抗層322,323との層間に剥離が生じにくい。したがって、このセラミックヒータ31によれば、RF電極33とヒータ電極34との間の漏れ電流を長期にわたって防止することができる。
【0028】
また、RF電極33の周辺には、RF電極33を流れるRF電流により発生するRF磁場の時間変化によりRF電界が誘起される。高抵抗層321は、このRF電界がヒータ電極34に結合するのを防止する。そのため、ヒータ電極34を含むヒータ回路へのRFノイズの影響を十分防止することができる。その結果、ヒータ電極34の温度制御を精度よく行うことができる。
【0029】
高抵抗層321は、低抵抗層322,323と比べて、Siの含有量が少ないことが好ましい。こうすれば、後述する実験例の測定データが示すように、Tiの含有量が多くても高抵抗とすることができる。低抵抗層322,323は、30質量ppm以上120質量ppm以下のSiを含むAlNセラミック層であり、高抵抗層321は、20質量ppm以上100質量ppm以下のSiを含むAlNセラミック層であり、低抵抗層322,323の方が高抵抗層321よりもSiの含有量が多いことが好ましい。
【0030】
低抵抗層322,323は、10質量ppm以上50質量ppm以下のTiを含むAlNセラミック層であり、高抵抗層321は、1000質量ppm以上1500質量ppm以下のTiを含むAlNセラミック層であることが好ましい。こうすれば、高抵抗層321の体積抵抗率を低抵抗層322,323の体積抵抗率よりも高くすると共に、高抵抗層321の熱伝導率を低抵抗層322,323の熱伝導率と同程度にすることができる。
【0031】
低抵抗層322,323は、90質量ppm以上180質量ppm以下のMgを含むAlNセラミック層であり、高抵抗層321は、200質量ppm以上400質量ppm以下のMgを含むAlNセラミック層であることが好ましい。こうすれば、後述する実験例の測定データが示すように、Tiの含有量が多くても高抵抗とすることができる。
【0032】
更にまた、高抵抗層321の体積抵抗率は、低抵抗層322,323の体積抵抗率の1.2倍以上であることが好ましい。こうすれば、RF電極33とヒータ電極34との間の漏れ電流をより防止しやすくなる。
【0033】
そしてまた、高抵抗層321の熱伝導率は、低抵抗層322,323の熱伝導率の90%以上であることが好ましい。こうすれば、高抵抗層321の熱伝導率が比較的高いため、ウエハWの均熱性が良好になる。
【0034】
そして更に、AlNセラミック基体32は、低抵抗層322と高抵抗層321と低抵抗層323とがこの順に積層された3層構造となっており、高抵抗層321の厚みは2つの低抵抗層322,323の厚みの合計よりも小さい。通常、セラミックは体積抵抗率が高いと熱伝導率が低くなる傾向にあるが、このような構造を採用しているため、全体として熱伝導率を比較的高くすることができ、ウエハWの均熱性が良好になる。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0036】
例えば、上述した実施形態では、高抵抗層321をRF電極33の下面よりも下側であってヒータ電極34の上面に接するように配置したが、特にこれに限定されない。例えば、図3に示すように、高抵抗層321をRF電極33の下面及びヒータ電極34の上面に接するように配置してもよい。あるいは、RF電極33及びヒータ電極34の少なくとも一方を高抵抗層321に埋設してもよい。ヒータ電極34を高抵抗層321に埋設した例を図4に示す。図3及び図4では、上述した実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付した。いずれにおいても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0037】
上述した実施形態において、ウエハ載置面32aを複数のゾーンに分けて、各ゾーンごとにヒータ電極34を配置してもよい。
【0038】
上述した実施形態において、AlNセラミック基体32内に静電電極を内蔵し、ウエハWをウエハ載置面32aに静電吸着させてもよい。
【実施例
【0039】
上述した実施形態で説明したセラミックヒータ31の製造例にしたがって4種類のセラミックヒータ31を製造し(実験例1~4)、それぞれのAlNセラミック基体32のTi含有率及び特性を評価した。その結果を表1に示す。Si,Mg及びTiの含有率は、ICP発光分光分析法(ICP-AES)にしたがって求めた。体積抵抗率は、室温で測定したときの値であり、JIS-C2141にしたがって求めた。熱伝導率は、室温で測定したときの値であり、JIS-R1611にしたがって求めた。熱膨張率は、室温-1000℃の値であり、JIS-R1618にしたがって求めた。
【0040】
【表1】
【0041】
実験例1~4では、高抵抗層321と低抵抗層322,323ともSi、Mg及びTiを含み、高抵抗層321は、低抵抗層322,323と比べて、Mg及びTiの含有量が多く体積抵抗率が高くSiの含有量が低かった。熱膨張率は、実験例1~4のいずれも、高抵抗層321と低抵抗層322,323とでほぼ同等だった。体積抵抗率は、実験例1~4のいずれも、高抵抗層321の方が低抵抗層322,323よりも高かった。実験例1,2では、高抵抗層321の体積抵抗率は低抵抗層322,323の体積抵抗率の約4倍、高抵抗層321の熱伝導率は低抵抗層322,323の熱伝導の約9%であった。実験例3,4では、高抵抗層321の体積抵抗率は低抵抗層322,323の体積抵抗率の約1.2倍、高抵抗層321の熱伝導率は低抵抗層322,323の熱伝導の約96%であった。
【0042】
本出願は、2019年3月18日に出願された日本国特許出願第2019-049548号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えば半導体製造プロセスに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 プラズマ処理装置、12 チャンバ、14 丸穴、16 排気管、20 シャワーヘッド、22 絶縁部材、24 ガス導入管、26 ガス噴射孔、30 ウエハ載置装置、31 セラミックヒータ、32 AlNセラミック基体、321 AlNセラミック高抵抗層、322,323 AlNセラミック低抵抗層、32a ウエハ載置面、33 RF電極、34 ヒータ電極、34a 一端、34b 他端、35,36,37 給電ロッド、38 中空シャフト、38a フランジ、38b フランジ、39 ロッド固定器、60 RF電源、62 ヒータ電源。
図1
図2
図3
図4