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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】バルブタイミング変更装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/356 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
F01L1/356 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021530391
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2019027110
(87)【国際公開番号】W WO2021005704
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】村坂 力
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-051925(JP,A)
【文献】特開2011-069287(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0276733(US,A1)
【文献】特開2014-137051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/34~ 1/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシプロエンジンのバルブタイミングを変更するためのバルブタイミング変更装置であって、
ベーンロータと、
前記ベーンロータを収容するハウジングと、
一端部が前記ハウジングに当接するとともに他端部が前記ベーンロータに当接し、前記ベーンロータを前記ハウジングに対して前記ベーンロータの周方向に付勢するスプリングと、
前記ハウジングにおいて前記ベーンロータの軸方向における第1方向側の端面から突出し、前記スプリングの前記一端部が当接して前記スプリングに付勢される第1突出部と、
前記スプリングの前記一端部よりも前記第1方向側に設けられ、前記スプリングの前記一端部の前記第1方向への移動を規制するように前記第1突出部から延在する抜け止め部と、
を備え、
前記第1突出部及び前記抜け止め部は、前記ハウジングとともに一体成形され
前記ベーンロータを挟んで前記スプリングと反対側に配置された、動力を伝達するための動力伝達部材と、
前記ハウジングを前記軸方向に貫通する締結穴に挿通されて前記動力伝達部材と前記ハウジングとを締結する締結部材と、
を更に備え、
前記軸方向視において、前記抜け止め部は、前記締結穴の存在する範囲内に配置された、
バルブタイミング変更装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記端面から前記第1方向に突出するように前記スプリングの外周側に前記周方向に沿って延在する外周側突出部を含み、
前記第1突出部は、前記外周側突出部と前記抜け止め部とを接続するように構成された、請求項に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項3】
前記外周側突出部は、前記第1突出部、前記抜け止め部及び前記ハウジングとともに一体成形された、請求項に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項4】
前記第1突出部の側面と前記ハウジングの外周面との距離の最大値をA、前記周方向における前記第1突出部の寸法をBとすると、B>Aを満たす、請求項1乃至の何れか1項に記載のバルブタイミング変更装置。
【請求項5】
前記軸方向視において、前記抜け止め部と前記スプリングとが前記スプリングの太さ方向にオーバーラップする幅をC、前記スプリングの太さをDとすると、
C≧D/2を満たす、請求項1乃至の何れか1項に記載のバルブタイミング変更装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バルブタイミング変更装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レシプロエンジンにおいて効率の良い吸気又は排気を行うために、レシプロエンジンのバルブタイミング(吸気バルブ又は排気バルブの開閉タイミング)を変更するバルブタイミング変更装置が用いられる場合がある。
【0003】
特許文献1には、ベーンロータと、ベーンロータを収容するハウジングと、ベーンロータをハウジングに対してベーンロータの周方向に付勢するスプリングと、を備えるバルブタイミング変更装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載されるバルブタイミング変更装置では、ハウジングのうちベーンロータの軸方向における一方側の端面にピンが圧入されて固定されており、ハウジングは、ピンを介してスプリングから付勢力を受けるように構成されている。また、ピンの先端側にスプリングの脱落防止のための抜け止め部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-325758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のバルブタイミング変更装置では、ハウジングと抜け止め部が設けられたピンとが別部品として構成されているため、バルブタイミング変更装置の部品点数が多くなり、バルブタイミング変更装置の構成が複雑化して高コスト化を招いていた。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、少ない部品点数でスプリングの脱落を抑制可能なバルブタイミング変更装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るバルブタイミング変更装置は、
レシプロエンジンのバルブタイミングを変更するためのバルブタイミング変更装置であって、
ベーンロータと、
ベーンロータを収容するハウジングと、
一端部がハウジングに当接するとともに他端部がベーンロータに当接し、ベーンロータをハウジングに対してベーンロータの周方向に付勢するスプリングと、
ハウジングにおいてベーンロータの軸方向における第1方向側の端面から突出し、スプリングの一端部が当接してスプリングに付勢される第1突出部と、
スプリングの一端部よりも第1方向側に設けられ、スプリングの一端部の第1方向への移動を規制するように第1突出部から延在する抜け止め部と、
を備え、
第1突出部及び抜け止め部は、ハウジングとともに一体成形されている。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のバルブタイミング変更装置において、
ベーンロータを挟んでスプリングと反対側に配置された、動力を伝達するための動力伝達部材と、
動力伝達部材を軸方向に貫通する第1締結穴及びハウジングを軸方向に貫通する第2締結穴に挿通されて動力伝達部材とハウジングとを締結する第1締結部材と、
を更に備え、
軸方向視において、抜け止め部は、第2締結穴の存在する範囲内に配置されてもよい。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載のバルブタイミング変更装置において、
ハウジングは、端面から第1方向に突出するようにスプリングの外周側に周方向に沿って延在する外周側突出部を含み、
第1突出部は、外周側突出部と抜け止め部とを接続するように構成されてもよい。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)に記載のバルブタイミング変更装置において、
外周側突出部は、第1突出部、抜け止め部及びハウジングとともに一体成形されてもよい。
【0012】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかに記載のバルブタイミング変更装置において、
第1突出部の側面とハウジングの外周面との距離の最大値をA、周方向における第1突出部の寸法をBとすると、B>Aを満たしてもよい。
【0013】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかに記載のバルブタイミング変更装置において、
軸方向視において、抜け止め部とスプリングとがスプリングの太さ方向にオーバーラップする幅をC、スプリングの太さをDとすると、
C≧D/2を満たしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、少ない部品点数でスプリングの脱落を抑制可能なバルブタイミング変更装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るバルブタイミング変更装置2の概略斜視図である。
図2図1に示したバルブタイミング変更装置2の分解斜視図である。
図3図1に示したバルブタイミング変更装置2の正面図である。
図4図1に示したバルブタイミング変更装置2のA-A断面図である。
図5図3に示したバルブタイミング変更装置2の部分拡大図である。
図6図3に示したバルブタイミング変更装置2の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るバルブタイミング変更装置2の概略斜視図である。図2は、図1に示したバルブタイミング変更装置2の分解斜視図である。図3は、図1に示したバルブタイミング変更装置2の正面図である。図4は、図1に示したバルブタイミング変更装置2のA-A断面図である。
【0018】
バルブタイミング変更装置2は、不図示のクランクシャフトに対してカムシャフトを進角又は遅角させることで、不図示のレシプロエンジンのバルブタイミング(レシプロエンジンの吸気バルブ又は排気バルブの開閉タイミング)を変化させる位相変化型の可変バルブ機構である。バルブタイミング変更装置2は、吸気バルブ又は排気バルブを駆動するカムシャフト20(図4参照)に連結されてカムシャフト20と同軸上で回転するように構成される。バルブタイミング変更装置2は、例えば二輪車用であってもよいし、その他の自動車用等であってもよい。
【0019】
例えば図2に示すように、バルブタイミング変更装置2は、ベーンロータ4、ハウジング6、スプリング8、スプロケット10(動力伝達部材)及び複数のスクリュー12(12A~12D)を備える。
【0020】
以下では、ベーンロータ4の軸方向を単に「軸方向」と記載し、ベーンロータ4の径方向を単に「径方向」と記載し、ベーンロータ4の周方向を単に「周方向」と記載することとする。また、軸方向のうちベーンロータ4からハウジング6に向かう第1方向(スプロケット10からベーンロータ4及びハウジング6に向かう方向)を「前方向」又は単に「前」と記載し、軸方向のうちハウジング6からベーンロータ4に向かう第2方向(ハウジング6からベーンロータ4及びスプロケット10に向かう方向)を「後方向」又は単に「後」と記載することとする。
【0021】
例えば図2に示すように、ベーンロータ4は、ベーンロータ本体16及び筒状部材18を含む。ベーンロータ本体16は、筒状部16aと、筒状部16aの外周側に周方向に間隔を空けて設けられた複数のベーン部16bとを含む。図4に示すように、ベーンロータ本体16は、吸気バルブ又は排気バルブを駆動するカムシャフト20に不図示のボルトを介して連結されることによりカムシャフト20と同軸上で回転するように構成される。
【0022】
例えば図2に示すように、筒状部材18は、筒状部22と、ベーンロータ本体16の筒状部16aの前側の面17と対向するように軸方向と交差する平面に沿って筒状部22の後端に配置された環状のプレート部24とを含む。筒状部材18は、筒状部16aの前側の面17にピン19で位置決めされてベーンロータ本体16及びカムシャフト20(図4参照)と一体で回転する。筒状部22には、筒状部22を径方向に貫通するスリット26が軸方向に沿って形成されている。
【0023】
例えば図2に示すように、複数のスクリュー12は、スプロケット10とハウジング6とを締結する。図示する例示的形態では、複数のスクリュー12は、4つのスクリュー12(12A~12D)を含む。スプロケット10には、軸方向に貫通する複数の貫通穴36(36A~36D)が周方向に間隔を空けて形成されており、ハウジング6のフロントカバー部30には、軸方向に貫通する複数の締結穴38(38A~38D)が周方向に間隔を空けて形成されている。複数の締結穴38の各々の内周面には、雌ねじが形成されている。スクリュー12の各々は、対応する貫通穴36及び締結穴38に捩じ込まれてスプロケット10とハウジング6とを締結している。すなわち、締結部材としてのスクリュー12Aは貫通穴36A及び締結穴38Aに捩じ込まれ、スクリュー12Bは貫通穴36B及び締結穴38Bに捩じ込まれ、スクリュー12Cは貫通穴36C及び締結穴38Cに捩じ込まれ、スクリュー12Dは貫通穴36D及び締結穴38Dに捩じ込まれる。
【0024】
例えば図1及び図4に示すように、ハウジング6は、ベーンロータ4を収容しており、ベーンロータ4を周方向に囲繞する筒状部28と、複数のベーン部16b(図2参照)の前側を覆うように軸方向と直交する平面に沿って配置された環状のフロントカバー部30とを含む。
【0025】
ハウジング6において軸方向における前側の端面6a(フロントカバー部30の前側の端面)には、端面6aから前方向に突出する第1突出部32が設けられている。第1突出部32の前側端には、第1突出部32から径方向における内側に向けて延在する抜け止め部34が形成されている。
【0026】
第1突出部32及び抜け止め部34は、ハウジング6とともにダイカスト成形により同一材料で一体成形されている。換言すれば、筒状部28、フロントカバー部30、第1突出部32及び抜け止め部34は、全体で、破損せずに分離することができない一部品として成形されている。
【0027】
例えば図1に示すように、スプリング8は、ベーンロータ4をハウジング6に対して周方向に付勢するように組み付けられている。図示する例示的な形態では、スプリング8は、ぜんまいばね(渦巻ばね)によって構成されており、渦巻き形状を有する渦巻き部8a(ばね部)を含む。スプリング8の一端部8bは、渦巻き部8aから周方向と交差する方向に延在しており、ベーンロータ4のスリット26に引っ掛けられて保持されている。図示する形態では、スプリング8の一端部8bは、渦巻き部8aの内周側部分から折り曲げられて径方向における内側に向けてスリット26内に径方向に沿って延在しており、スリット26を形成する一対の壁面のうち一方の壁面26aに当接している。ベーンロータ4の壁面26aは、スプリング8の一端部8bから周方向における一方側(前側からの軸方向視において時計回りの方向)への付勢力を受けている。すなわち、ベーンロータ4は、スプリング8によって周方向における一方側に付勢されている。
【0028】
スプリング8の他端部8cは、渦巻き部8aから周方向と交差する方向に延在しており、第1突出部32の側面32aに引っ掛けられて保持されている。このように、第1突出部32は、スプリング8を引っ掛けるためのスプリングフックとして機能する。図示する形態では、スプリング8の他端部8cは、渦巻き部8aの外周側部分から折り曲げられて径方向における外側に向けて径方向に沿って延在しており、第1突出部32の側面32aに当接している。第1突出部32の側面32aは、スプリング8の他端部8cから周方向における他方側(前側からの軸方向視において反時計回りの方向)への付勢力を受けている。すなわち、第1突出部32は、スプリング8によって周方向における他方側に付勢されている。
【0029】
上記バルブタイミング変更装置2では、駆動源としての油圧によってベーンロータ4をハウジング6に対してスプリング8の付勢力の方向又は付勢力と反対の方向に相対的に回動させることにより、ハウジング6に対するベーンロータ4の相対的な位相が変更される。これにより、不図示のクランクシャフトに対してカムシャフトが進角又は遅角して、レシプロエンジンのバルブタイミングが変更される。
【0030】
例えば図4に示すように、抜け止め部34は、スプリング8の他端部8cよりも前側に設けられており、スプリング8の他端部8cの前方向への移動を規制するように第1突出部32から径方向における内側に向けて延在している。抜け止め部34は、スプリング8の他端部8cの前方向への移動を規制することにより、スプリング8がハウジング6から軸方向における前側に抜けて脱落することを抑制する。図示する例示的形態では、抜け止め部34は、軸方向と直交する平面に沿って第1突出部32からスプリング8側に突出するように板状に形成されている。図3に示すように、抜け止め部34は、軸方向視において、スプリング8の少なくとも一部とオーバーラップしている。また、抜け止め部34は、軸方向視において、締結穴38Aの存在する範囲内に配置されている。
【0031】
例えば図4に示すように、スプロケット10は、ベーンロータ4を挟んでスプリング8と反対側、すなわちベーンロータ4の後側に配置されている。スプロケット10の外周面にはギア列10aが形成されている。ギア列10aには、不図示のレシプロエンジンのクランクシャフトから動力を伝達するための不図示のローラーチェーンが巻かれて、クランクシャフトからの動力がギア列10aを介してスプロケット10に伝達される。スプロケット10の位相(ハウジング6の位相)に対するベーンロータ4の相対的な位相は、不図示のロック機構(例えばロックピン)により固定可能となっている。
【0032】
例えば図1及び図2に示すように、ハウジング6は、ハウジング6の端面6aから前方向に突出するようにスプリング8の外周側に周方向に沿って延在する少なくとも1つの外周側突出部40を含む。図示する例示的形態では、ハウジング6は、周方向に間隔を空けて配置された複数の外周側突出部40(40A~40C)を含む。外周側突出部40(40A~40C)の各々は、軸方向視において円弧状に形成されており、径方向における外周側突出部40(40A~40C)の厚さは周方向の各位置で一定となっている。第1突出部32は、複数の外周側突出部40(40A~40C)のうち外周側突出部40Aと抜け止め部34とを接続するように形成されている。
【0033】
また、外周側突出部40(40A~40C)は、第1突出部32、抜け止め部34及びハウジング6とともに同一材料で一体成形されている。換言すれば、外周側突出部40(40A~40C)、筒状部28、フロントカバー部30、第1突出部32及び抜け止め部34は、全体で、破損せずに分離することができない一部品として成形されている。また、抜け止め部34における前側の端面34aと、第1突出部32における前側の端面(頂面)32bと、外周側突出部40Aにおける前側の端面(頂面)40aとは、同一平面上に形成されている。
【0034】
図5は、図3に示したバルブタイミング変更装置2の部分拡大図である。
図示する例示的形態では、第1突出部32の側面32aとハウジング6の外周面6b(筒状部28の外周面)との距離の最大値をA、周方向における第1突出部32の寸法をBとすると、第1突出部32は、B>Aを満たすように形成されている。
【0035】
図6は、図3に示したバルブタイミング変更装置2の部分拡大図である。
図示する例示的形態では、軸方向視において、抜け止め部34とスプリング8とがスプリング8の太さ方向にオーバーラップする幅をC、スプリング8の太さをDとすると、抜け止め部34は、C≧D/2を満たすように形成されている。
【0036】
次に、上述したバルブタイミング変更装置2が奏する作用効果について説明する。
上述したバルブタイミング変更装置2では、第1突出部32及び抜け止め部34がハウジング6とともに一体成形されているため、ハウジングと抜け止め部が設けられたピンとが別部品として構成されたバルブタイミング変更装置(例えば特許文献1参照)と比較して、少ない部品点数でスプリング8の脱落を抑制することができ、バルブタイミング変更装置2の低コスト化が可能となる。
【0037】
また、ハウジングと抜け止め部が設けられたピンとが別部品として構成されたバルブタイミング変更装置と比較して、抜け止め部が設けられたピンをハウジングに圧入等により組み付ける工程が不要となり、バルブタイミング変更装置の組み立て工数を削減することができるため、この点においてもバルブタイミング変更装置2の低コスト化が可能となる。
【0038】
また、図3に示したように、軸方向視において、抜け止め部34は、締結穴38Aの存在する範囲内に配置されている。このため、アンダーカット処理を要することなく簡素な金型構造で、抜け止め部34を第1突出部32及びハウジングとともに容易に一体成型することができる。
【0039】
また、図1に示したように、第1突出部32は、スプリング8の外周側に周方向に沿って延在する外周側突出部40Aと抜け止め部34とを接続するように構成されている。このため、スプリング8が周囲の部材と干渉することを外周側突出部40Aによって抑制しつつ、スプリング8からの付勢力で第1突出部32が変形することを外周側突出部40Aの剛性を利用して効果的に抑制することができる。
【0040】
また、図1に示したように、外周側突出部40(40A~40C)は、第1突出部32、抜け止め部34及びハウジング6とともに一体成形されている。このため、少ない部品点数で、スプリング8が周囲の部材と干渉することを外周側突出部40Aによって抑制しつつ、スプリング8からの付勢力で第1突出部32が変形することを外周側突出部40Aの剛性を利用して効果的に抑制することができる。
【0041】
また、図5に示したように、周方向における第1突出部32の寸法Bが第1突出部32の側面32aとハウジング6の外周面6bとの距離の最大値Aよりも大きいため、寸法Bが最大値A以下の場合(例えば第1突出部32の軸方向に直交する断面形状が円形の場合)よりも、スプリング8からの周方向の付勢力による第1突出部32の変形を効果的に抑制することができる。
【0042】
また、図6に示したように、軸方向視において、抜け止め部34とスプリング8とがオーバーラップする幅Cとスプリング8の太さDとがC≧D/2を満たすため、スプリング8が抜け止め部34から軸方向に脱落することを効果的に抑制することができる。
【0043】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0044】
例えば、上述した実施形態では、ベーンロータ4の駆動源として油圧を例示したが、ベーンロータ4の駆動源は油圧に限らずモータ等であってもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、スプリング8としてぜんまいばねを例示したが、スプリングは、ぜんまいばねに限らず、例えばねじりコイルばね等の他のスプリングであってもよい。また、スプリング8としてぜんまいばねを用いる場合には、接触型ぜんまいばねであってもよいし、非接触型ぜんまいばねであってもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、ベーンロータ4側がカムシャフト20に連結されてハウジング6側がクランクシャフトに連結される構成を例示したが、ベーンロータ側がクランクシャフトに連結されてハウジング6側がカムシャフトに連結されてもよい。すなわち、上述した実施形態では、スプロケット10に伝達された不図示のクランクシャフトの回転力をベーンロータ4からカムシャフト20に伝達して該カムシャフト20を回転させる構成を例示したが、他の実施形態では、ベーンロータに伝達された不図示のクランクシャフトの回転力をスプロケット又はその他の動力伝達部材を介してカムシャフトに伝達して該カムシャフトを回転させてもよい。
【符号の説明】
【0047】
2 バルブタイミング変更装置
4 ベーンロータ
6 ハウジング
6a 端面
6b 外周面
8 スプリング
8b 一端部
8c 他端部
10 スプロケット(動力伝達部材)
12A スクリュー(締結部材)
32 第1突出部
32a 側面
34 抜け止め部
38A 締結穴
40A 外周側突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6