(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】積層成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/42 20060101AFI20230322BHJP
B32B 37/12 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
B29C65/42
B32B37/12
(21)【出願番号】P 2021558364
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2020042599
(87)【国際公開番号】W WO2021100652
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2019210771
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】516351991
【氏名又は名称】ミドリオートレザー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】賽 那
(72)【発明者】
【氏名】東根 秀治
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-124619(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065758(WO,A1)
【文献】特開昭54-152557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を形成するようにクッション層を裁断して裁断部を形成する裁断工程と、
前記裁断工程で裁断された前記クッション層の下面に、加熱によって接着力を有する接着シートを介して、基材を配置して、第1積層体を形成する基材積層工程と、
前記第1積層体の前記裁断部に断熱材を取り付ける断熱材載置工程と、
前記断熱材が取り付けられた前記第1積層体を熱圧着する第1熱圧着工程と、
前記第1熱圧着工程で熱圧着された前記第1積層体から、前記裁断部を剥離して前記開口部を形成する剥離工程と、
前記裁断部が剥離された前記第1積層体の上面に、加熱によって接着力を有する接着シートを介して、表皮を配置して、第2積層体を形成する表皮積層工程と、
前記第2積層体を熱圧着して、前記表皮を、前記開口部において、前記開口部を有する前記クッション層の下層に配置される下層材に接合する第2熱圧着工程と、を含む
ことを特徴とする、積層成形体の製造方法。
【請求項2】
前記第2熱圧着工程では、分割面が平坦な金型を使用し、
前記開口部は、前記クッション層の厚さの70%以上の幅を有している
ことを特徴とする、請求項1に記載の積層成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層成形体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の内装材に使用される積層成形体は、その表面に凹凸を形成したものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1には、2枚の不織布で挟んだ発泡ウレタンにキルティング加工を施し、その上面に表皮材層を接合することで、積層成形体に凹凸を形成する構成が開示されている。
【0004】
特許文献2には、開口部が形成されたテンプレートを使用して、金型によってシート層を押圧することで、積層成形体に凹凸を形成する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/096944号
【文献】米国特許第10118525号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、積層成形体に凹凸を形成するために、キルティング加工を要するため、積層成形体の製造時間の短縮化が困難となる、という問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の発明は、突起を設けたクッション層と、この突起に適合した形状の開口部を設けたテンプレートとの間にシート層を挟んで押し付けて、積層成形体に凹凸を形成するため、角張った直線的な硬い感じの凹凸を有する意匠になってしまうとともに、積層成形体の表面が損傷するおそれがあるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、柔らかい感じの凹凸を有する意匠とし、かつ、表面の損傷を回避することにより美観を向上させると共に、簡易に製造時間を短縮することができる積層成形体の製造方法及び積層成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の積層成形体の製造方法は、開口部を形成するようにクッション層を裁断して裁断部を形成する裁断工程と、前記裁断工程で裁断された前記クッション層の下面に、加熱によって接着力を有する接着シートを介して、基材を配置して、第1積層体を形成する基材積層工程と、前記第1積層体の前記裁断部に断熱材を取り付ける断熱材載置工程と、前記断熱材が取り付けられた前記第1積層体を熱圧着する第1熱圧着工程と、前記第1熱圧着工程で熱圧着された前記第1積層体から、前記裁断部を剥離して前記開口部を形成する剥離工程と、前記裁断部が剥離された前記第1積層体の上面に、加熱によって接着力を有する接着シートを介して、表皮を配置して、第2積層体を形成する表皮積層工程と、前記第2積層体を熱圧着して、前記表皮を、前記開口部において、前記開口部を有する前記クッション層の下層に配置される下層材に接合する第2熱圧着工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の積層成形体は、クッション層と、前記クッション層の上面に接合される表皮と、前記クッション層の下面に接合される基材と、を備え、前記クッション層は、開口部を備え、前記表皮は、前記開口部において、前記基材に接合され、前記クッション層は、厚さが2~15mmで、密度が20~35kg/m3のポリウレタンフォームで形成されていることを特徴とする。
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の積層成形体は、クッション層と、前記クッション層の上面に接合される表皮と、前記クッション層の下面に接合される基材と、を備え、前記クッション層は、第1クッション層と、前記第1クッション層の下面に配置される第2クッション層と、を備え、前記第1クッション層及び前記第2クッション層の少なくとも一方は、第1開口部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように構成された本発明の積層成形体及びその製造方法は、柔らかい感じの凹凸を有する意匠とし、かつ、表面の損傷を回避することにより美観を向上させると共に、簡易に製造時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】実施例1の裁断工程で裁断された第1クッション層を示す平面図である。
【
図4】実施例1の基材取付工程を説明する断面図である。
【
図5】実施例1の断熱材載置工程を説明する断面図である。
【
図6】実施例1の断熱材載置工程で使用する断熱材を示す平面図である。
【
図7】実施例1の第1熱圧着工程を説明する断面図である。
【
図8】実施例1の剥離工程を説明する説明図である。
【
図9】実施例1の剥離工程で裁断部が剥離された第1積層体を示す平面図である。
【
図10】実施例1の表皮積層工程を説明する断面図である。
【
図11】実施例1の第2熱圧着工程を説明する断面図である。
【
図12】実施例2の積層成形体の配列を示す断面図である。
【
図13】実施例2の積層成形体を示す断面図である。
【
図14】実施例3の積層成形体の配列を概略的に示す断面図である。
【
図15】実施例3の積層成形体を概略的に示す断面図である。
【
図16】実施例4の積層成形体の配列を概略的に示す断面図である。
【
図17】実施例4の積層成形体を概略的に示す断面図である。
【
図18】別の実施例のクッション層を示す斜視図である。
【
図19】別の実施例のクッション層を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による積層成形体及びその製造方法を実現する実施形態を、図面に示す実施例1~4に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
実施例1における積層成形体は、車両のシートに適用される。
【0016】
[シートの構成]
図1は、実施例1のシートを示す斜視図である。以下、実施例1のシートの構成を説明する。
【0017】
図1に示すように、シート1は、乗員のお尻を支持する座部2と、乗員の背面を支持する背面部3と、を備える。
【0018】
座部2の車両幅方向の中央部分と、背面部3の車両幅方向の中央部分には、積層成形体10が使用される。なお、積層成形体10は、座部2の周縁部に使用されてもよいし、背面部の周縁部に使用されてもよい。
【0019】
[積層成形体の構成]
図2は、実施例1の積層成形体10を示す断面図である。以下、実施例1の積層成形体10の構成を説明する。
【0020】
図2に示すように、積層成形体10は、クッション層としての第1クッション層11と、第1クッション層11の上面に、接着層12としての第2接着層12bを介して配置される表皮15と、第1クッション層11の下面に、接着層12としての第1接着層12aを介して配置される基材13と、を備える。
【0021】
第1クッション層11は、例えば、厚さが2~15[mm]程度で、密度が20~35[kg/m3]のポリウレタンフォームとすることができる。第1クッション層11は、本体部11aと、開口部としての第1開口部11cと、を有する。
【0022】
第1開口部11cは、第1クッション層11の厚さ方向に貫通する開口として形成される。第1開口部11cの幅は、第1クッション層11の厚さの70%以上とすることができる。例えば、第1クッション層11の厚さが5mmである場合、第1開口部11cの幅は、7mmとすることができる。また、第1クッション層11の厚さが10mmである場合、第1開口部11cの幅は、10mmとすることができる。
【0023】
表皮15は、例えば、本革とすることができる。表皮15の厚さは、例えば、1~1.4[mm]程度とすることができる。なお、表皮15は、合成皮革や、人工皮革や、PVC(polyvinyl chloride)や、布等にすることもできる。表皮15には、表皮15の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔15aが形成される。
【0024】
基材13は、例えば、ナイロンとすることができる。なお、基材13は、不織布等にすることもできる。基材13は、メッシュ状に形成されてもよい。
【0025】
第1クッション層11の本体部11aと表皮15との間には、第2接着層12bが介在する。第1クッション層11の本体部11aと基材13との間には、第1接着層12aが介在する。第1クッション層11の第1開口部11cにおいては、表皮15は、第2接着層12bを介して、基材13に接合されることで、積層成形体10に凹凸を形成する。
【0026】
[積層成形体の製造方法]
図3は、実施例1の裁断工程で裁断された第1クッション層11を示す平面図である。
図4は、実施例1の基材取付工程を説明する断面図である。
図5は、実施例1の断熱材載置工程を説明する断面図である。
図6は、実施例1の断熱材載置工程で使用する断熱材を示す平面図である。
図7は、実施例1の第1熱圧着工程を説明する断面図である。
図8は、実施例1の剥離工程を説明する説明図である。
図9は、実施例1の剥離工程で裁断部が剥離された第1積層体を示す平面図である。
図10は、実施例1の表皮積層工程を説明する断面図である。
図11は、実施例1の第2熱圧着工程を説明する断面図である。以下、実施例1の積層成形体10の製造方法を説明する。
【0027】
(裁断工程)
図3に示すように、裁断工程では、第1開口部11c(
図9参照)を形成するように矩形の板状の第1クッション層11を裁断して、複数のひし形状の本体部11aと、裁断部11bと、を形成する。
【0028】
第1クッション層11から裁断部11bを剥離する(切り離す)ことで、本体部11a間に第1開口部11cが形成されることになる。なお、裁断工程では、裁断部11bは、第1クッション層11から剥離されていない状態とする。
【0029】
(基材積層工程)
図4に示すように、基材積層工程では、裁断工程で裁断された第1クッション層11の下面に、接着シートとしての第1接着シート12Aを介して、基材13を配置して、第1積層体10Aを形成する。すなわち、本体部11aと裁断部11bの下面に、第1接着シート12Aを介して、基材13を配置して、第1積層体10Aを形成する。
【0030】
第1接着シート12Aは、加熱することで、溶解して接着力を有する熱可塑性シート、例えば、ポリアミド系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系のホットメルト接着剤を用いることができる。ホットメルト接着剤のホットメルトが溶解する温度(溶融範囲)は、90~115℃とすることができる。第1接着シート12Aは、例えば、ウェブ状(クモの巣状)のものや、ネット状(網目状)のものや、フィルム状のものを使用することができるが、通気性の観点から、ウェブ状又はネット状のものが好ましい。
【0031】
第1接着シート12Aは、加熱することで、溶解して、接着層12としての第1接着層12aを形成する。
【0032】
(断熱材載置工程)
図5に示すように、断熱材載置工程では、第1積層体10Aの裁断部11bの上面に、断熱材16を載置する。断熱材16は、例えば、表皮15と同じ厚さの同じ材料を3枚程度貼り合わせたものを使用することもできる。
【0033】
断熱材16は、
図5及び
図6に示すように、幅方向において、裁断部11bと略同じ大きさに形成される。すなわち、断熱材16は、本体部11aを取り囲むような形状に形成される。
【0034】
(第1熱圧着工程)
図7に示すように、第1熱圧着工程では、断熱材16が取り付けられた第1積層体10Aを、金型50にセットして、熱圧着する。金型50は、上型51と下型52とから構成される。上型51は、ヒータ機能を有する。上型51及び下型52の分割面(パーティング面)は、略平坦に形成されている。第1熱圧着工程では、例えば、温度が120~140℃で、圧力0.1~0.8MPaで、5~40秒間程の熱圧着を行う。
【0035】
第1熱圧着工程で第1積層体10Aが熱圧着されると、断熱材16が取り付けられていない本体部11aに隣接する第1接着シート12Aの部分は、溶解して、接着力を有する第1接着層12aを形成する。これにより、本体部11aは、基材13に接合される。
【0036】
一方、断熱材16が取り付けられた裁断部11bに隣接する第1接着シート12Aの部分は、断熱材16により、溶解せず、接着力を発揮しない第1接着シート12Aのままである。これにより、裁断部11bは、基材13に接合されない。
【0037】
(剥離工程)
図8に示すように、剥離工程では、第1熱圧着工程で熱圧着された第1積層体10Aから、断熱材16が取り付けられた裁断部11bを剥離する。この際、裁断部11bに隣接する第1接着シート12Aも剥離する。なお、裁断部11bに隣接する第1接着シート12Aは、剥離されずに基材13に残ってもよい。
【0038】
これにより、第1クッション層11には、
図8及び
図9に示すように、本体部11a間に第1開口部11cが形成される。
【0039】
(表皮積層工程)
図10に示すように、表皮積層工程では、裁断部11bが剥離された第1積層体10Aの上面に、接着シートとしての第2接着シート12Bを介して表皮15を配置して、第2積層体10Bを形成する。第2接着シート12Bは、加熱することで、溶解して接着力を有する、接着層12としての第2接着層12bを形成する。
【0040】
(第2熱圧着工程)
図11に示すように、第2熱圧着工程では、第2積層体10Bを、金型50にセットして、熱圧着する。第2熱圧着工程では、例えば、温度が140~160℃で、圧力が0.5~1.2MPaで、10~40秒間程の熱圧着を行う。
【0041】
第2熱圧着工程で第2積層体10Bが熱圧着されると、本体部11aに隣接する第2接着シート12Bの部分は、溶解して接着力を有する第2接着層12bを形成する。これにより、本体部11aは、表皮15に接合される。
【0042】
また、第1開口部11cに隣接する第2接着シート12Bの部分も、溶解して接着力を有する第2接着層12bを形成する。これにより、表皮15は、
図2に示すように、第1開口部11cにおいて、第1開口部11cを有する第1クッション層11の下層に配置される、下層材である基材13に接合される。
【0043】
このような工程を経て、積層成形体10が製造される。
【0044】
[積層成形体の作用]
以下、実施例1の積層成形体10の作用を説明する。実施例1の積層成形体10の製造方法は、開口部(第1開口部11c)を形成するようにクッション層(第1クッション層11)を裁断して裁断部11bを形成する裁断工程と、裁断工程で裁断されたクッション層(第1クッション層11)の下面に、加熱によって接着力を有する接着シート(第1接着シート12A)を介して、基材13を配置して、第1積層体10Aを形成する基材積層工程と、第1積層体10Aの裁断部11bに断熱材16を取り付ける断熱材載置工程と、断熱材16が取り付けられた第1積層体10Aを熱圧着する第1熱圧着工程と、第1熱圧着工程で熱圧着された第1積層体10Aから、裁断部11bを剥離して(第1開口部11c)を形成する剥離工程と、裁断部11bが剥離された第1積層体10Aの上面に、加熱によって接着力を有する接着シート(第2接着シート12B)を介して、表皮15を配置して、第2積層体10Bを形成する表皮積層工程と、第2積層体10Bを熱圧着して、表皮15を、開口部(第1開口部11c)において、開口部(第1開口部11c)を有するクッション層(第1クッション層11)の下層に配置される下層材(基材13)に接合する第2熱圧着工程と、を含む(
図2~
図11)。
【0045】
表皮15は、開口部(第1開口部11c)において、開口部(第1開口部11c)を有するクッション層(第1クッション層11)の下層に配置される下層材(基材13)に接合されることで、積層成形体10に凹凸を形成することができる。そのため、表皮15の表面を傷付けることなく、柔らかい感じの凹凸のある積層成形体10を形成することができる。そのため、積層成形体10の美観を向上させることができる。
【0046】
また、裁断されたクッション層(第1クッション層11)の裏面に接着剤を塗布するような面倒な作業をすることなく、凹凸のある積層成形体10を製造することができる。また、作業に時間のかかるキルティング加工をすることなく、凹凸のある積層成形体10を製造することができる。そのため、積層成形体10の製造時間を短縮することができる。
【0047】
実施例1の積層成形体10の製造方法において、第2熱圧着工程では、分割面が平坦な金型を使用し、開口部は、クッション層の厚さの70%以上の幅を有している(
図11)。
【0048】
第2熱圧着工程において、分割面が平坦な金型を使用して、表皮を下層材に接合する際に、クッション層が押し潰されて、開口部にはみ出したとしても、開口部を全部塞いでしまうことを防止することができる。そのため、第2熱圧着工程において、分割面が平坦な金型を使用して、表皮を下層材にしっかりと接合することができる。
【0049】
実施例1の積層成形体10は、クッション層と、クッション層の上面に接合される表皮と、クッション層の下面に接合される基材と、を備え、クッション層は、開口部を備え、表皮は、開口部において、基材に接合され、クッション層は、厚さが2~15mmで、密度が20~35kg/m
3のポリウレタンフォームで形成されている(
図2)。
【0050】
ところで、クッション層の厚さが2~15mmで密度が20kg/m3より小さいポリウレタンフォームの場合、クッション層に形成された開口部を介して、表皮が基材に接合されると、表皮と基材に挟まれているクッション層は、押し潰されてしまい、表皮の表面に凹凸が形成されなくなってしまうという問題がある。
【0051】
一方、実施例1では、クッション層の厚さが2~15mmでクッション層の密度が20kg/m3以上のポリウレタンフォームを使用しているため、表皮が開口部を介して基材に接合されると、表皮と基材に挟まれているクッション層は、ある程度の反発力を有するため、多少押し潰されるに留まる。そのため、表皮の表面になだらかな凹凸を形成することができる。
【0052】
また、クッション層の厚さが2~15mmで密度が35kg/m3より大きいポリウレタンフォームの場合、クッション層に形成された開口部を介して、表皮が基材に接合されたとしても、クッション層は大きな反発力を有するため、表皮が基材から剥離してしまい、表皮の表面に凹凸が形成されなくなってしまうという問題がある。
【0053】
一方、実施例1では、クッション層の厚さが2~15mmで密度が35kg/m3以下のポリウレタンフォームを使用しているため、表皮が開口部を介して基材に接合された場合、クッション層の反発力を低下させることができ、表皮が基材から剥離してしまうことを防止することができる。そのため、表皮の表面になだらかな凹凸を形成することができる。
【0054】
すなわち、作業に時間のかかるキルティング加工をすることなく、簡易な構成で、表皮の表面になだらかな凹凸を形成し、柔らかい感じの意匠とすることができる。また、テンプレートを使用せず、分割面が平坦な金型を使用して熱圧着を行うため、表皮15の表面を損傷するおそれがない。そのため、積層成形体の美観を向上させると共に、製造時間を短縮することができる。
【実施例2】
【0055】
実施例2の積層成形体は、クッション層の構成が異なる点で、実施例1の積層成形体と相違する。
【0056】
[積層成形体の構成]
図12は、実施例2の積層成形体の配列を示す断面図である。
図13は、実施例2の積層成形体を示す断面図である。以下、実施例2の積層成形体の構成を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0057】
図12に示すように、実施例2の積層成形体110は、クッション層としての第1クッション層11と、第1クッション層11の上面に、接着シートとしての第2接着シート12Bを介して配置される表皮15と、第1クッション層11の下面に、接着シートとしての第1接着シート12Aを介して配置されるクッション層としての第2クッション層111と、第2クッション層111の下面に、接着シートとしての第3接着シート12Cを介して配置される基材13と、を備える。
【0058】
第1クッション層11は、実施例1の第1クッション層11と同様の構成であり、第1開口部11cを有する。
【0059】
第2クッション層111は、例えば、矩形の板状のポリウレタンフォームとすることができる。第2クッション層111は、例えば、厚さが2~15[mm]程度で、密度が20~35[kg/m3]のポリウレタンフォームとすることができる。
【0060】
表皮15には、表皮15の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔15aが形成されてもよい。複数の貫通孔15aは、パフォーレーションホールとして構成される。基材13は、メッシュ状に形成されてもよい。
【0061】
このように配列された積層成形体110は、金型50にセットして、熱圧着することで、
図13に示すように、表皮15と第1クッション層11の本体部11aは、第2接着層12bを介して、接合される。また、表皮15は、第1クッション層11の第1開口部11cにおいて、第2接着層12bを介して、第2クッション層111に接合される。第1クッション層11と第2クッション層111は、第1接着層12aを介して、接合される。第2クッション層111と基材13は、第3接着層12cを介して、接合される。
【0062】
[積層成形体の作用]
以下、実施例2の積層成形体110の作用を説明する。実施例2の積層成形体110は、クッション層と、クッション層の上面に接合される表皮15と、クッション層の下面に接合される基材13と、を備え、クッション層は、第1クッション層11と、第1クッション層の下面に配置される第2クッション層111と、を備え、第1クッション層11は、第1開口部11cを備える(
図3)。
【0063】
第1クッション層11が第1開口部11cを備えることで、作業に時間のかかるキルティング加工をすることなく、簡易な構成で、表皮15の表面に凹凸を容易に形成することができる。また、第2クッション層111を有することで、積層成形体110のクッション性を向上させることができる。そのため、簡易な構成で、クッション性を向上させた柔らかい感じの凹凸のある積層成形体110とすることができる。その結果、積層成形体110の美観を向上させると共に、製造時間を短縮することができる。
【0064】
実施例2の積層成形体110において、表皮15は、第1開口部11cにおいて、第2クッション層111に接合される。
【0065】
表皮15は、第1開口部11cにおいて、第2クッション層111に接合されることで、簡易な構成で、表皮15の表面に凹凸を形成することができる。また、第2クッション層111を有することで、積層成形体110のクッション性を向上させることができる。そのため、簡易な構成で、クッション性を向上させた凹凸のある積層成形体110とすることができる。
【0066】
ところで、積層成形体に凹凸を形成する場合、積層成形体にキルティング加工を施すことが考えられる。しかし、キルティング加工には、多くの作業時間を必要とするという問題がある。
【0067】
一方、実施例1の積層成形体110では、表皮15は、第1開口部11cにおいて、第2クッション層111に接合されるため、キルティング加工をすることなく、積層成形体110に凹凸を形成することができる。そのため、凹凸のある積層成形体110の製造時間を短縮することができる。
【0068】
また、キルティング加工をした積層成形体では、ステッチの近傍のウレタンは、2枚の不織布とステッチとによって圧縮されて、積層成形体の弾力性が損なわれる。特に、キルティング加工をした積層成形体では、クッション層と表皮との間に、不織布を介在させているため、積層成形体の弾力性が損なわれる。そのため、積層成形体の柔らかい風合いを損なってしまうという問題がある。
【0069】
一方、実施例1の積層成形体110では、キルティング加工をすることもなく、クッション層と表皮15との間に不織布を介在させることもない。そのため、積層成形体110の柔らかい風合いを出すことができる。
【0070】
また、2枚の不織布で挟んだクッション層にキルティング加工を施し、その上面に表皮を接合した場合、ステッチの跡が表皮の表面に形成されてしまうという問題がある。
【0071】
一方、実施例1の積層成形体110は、キルティング加工をすることがないため、表皮15の表面にステッチの跡が形成されることもない。そのため、積層成形体110のデザイン性を向上させることができる。
【0072】
また、2枚の不織布で挟んだクッション層にキルティング加工を施し、その上面に表皮を接合した場合、クッション層と表皮との間に、不織布を介在させているため、積層成形体の通気性が良くないという問題がある。
【0073】
一方、実施例1の積層成形体110では、クッション層と表皮15との間に不織布を介在させることもない。そのため、積層成形体110の通気性を向上させることができる。
【0074】
実施例2の積層成形体110において、基材13は、メッシュ状に形成されている。
【0075】
基材13がメッシュ状に形成されることにより、積層成形体110の通気性を向上させることができる。
【0076】
実施例2の積層成形体110において、表皮15は、複数の貫通孔15aが形成されている。
【0077】
表皮15に複数の貫通孔15aが形成されることにより、積層成形体110の通気性を向上させることができる。
【0078】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0079】
実施例3の積層成形体は、クッション層の構成が異なる点で、実施例1及び2の積層成形体と相違する。
【0080】
[積層成形体の構成]
図14は、実施例3の積層成形体の配列を概略的に示す断面図である。
図15は、実施例3の積層成形体を概略的に示す断面図である。以下、実施例3の積層成形体の構成を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0081】
図14に示すように、実施例3の積層成形体210は、クッション層としての第1クッション層11と、クッション層としての第2クッション層211と、を備える。
【0082】
第1クッション層11は、実施例1の第1クッション層11と同様の構成であり、第1開口部11cを有する。
【0083】
第2クッション層211は、本体部211aと、第2開口部211cと、を有する。第2クッション層211の厚さ方向に直交する幅方向において、第1開口部11cの中心位置と、第2開口部211cの中心位置とは、同じ位置に形成される。第2クッション層211の第2開口部211cの幅W2は、第1クッション層11の第1開口部11cの幅W1より小さく形成される。
【0084】
第2クッション層211の厚さは、第1クッション層11の厚さと略同じ厚さ(例えば、2~15[mm]程度)とすることができる。第2クッション層211は、例えば、厚さが2~15[mm]程度で、密度が20~35[kg/m3]のポリウレタンフォームとすることができる。
【0085】
このように配列された積層成形体210は、金型50にセットして、熱圧着することで、
図15に示すように、表皮15は、第1クッション層11の第1開口部11cにおいて、接着層12を介して、第2クッション層211に接合される。また、表皮15は、第2クッション層211の第2開口部211cにおいて、接着層12を介して、基材13に接合される。
【0086】
[積層成形体の作用]
以下、実施例3の積層成形体210の作用を説明する。実施例3の積層成形体210において、第2クッション層211は、第1開口部11cと同じ位置に、第1開口部11cの幅より小さい第2開口部211cを備える(
図15)。
【0087】
表皮15が第2クッション層211に接合されることで形成される、第1開口部11cに形成される段差と、表皮15が基材13に接合されることで形成される、第2開口部211cに形成される段差とで、2段の段差を形成することができる。そのため、積層成形体210のデザイン性を向上させることができる。
【0088】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例4】
【0089】
実施例4の積層成形体は、クッション層の構成が異なる点で、実施例1乃至3の積層成形体と相違する。
【0090】
[積層成形体の構成]
図16は、実施例4の積層成形体の配列を概略的に示す断面図である。
図17は、実施例4の積層成形体を概略的に示す断面図である。以下、実施例4の積層成形体の構成を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0091】
図16に示すように、実施例4の積層成形体310、クッション層としての第1クッション層11と、クッション層としての第2クッション層311と、を備える。
【0092】
第1クッション層11は、実施例1の第1クッション層11と同様の構成であり、第1開口部11cを有する。
【0093】
第2クッション層311の厚さは、第1クッション層11の厚さと略同じ厚さ(例えば、2~15[mm]程度)とすることができる。第2クッション層311は、例えば、厚さが2~15[mm]程度で、密度が20~35[kg/m3]のポリウレタンフォームとすることができる。
【0094】
第2クッション層311は、本体部311aと、第2クッション層311の厚さ方向に直交する幅方向において、第1クッション層11の開口部と異なる位置に形成される第2開口部311cと、を備える。
【0095】
第1クッション層11の第1開口部11cの幅W1は、第2クッション層311の第2開口部311cの幅W3と略同じ大きさにすることができる。
【0096】
このように配列された積層成形体310は、金型50にセットして、熱圧着することで、
図17に示すように、表皮15は、第1開口部11cにおいて、接着層12を介して、第2クッション層311に接合される。第1クッション層11は、第2開口部311cにおいて、接着層12を介して、基材13に接合される。
【0097】
[積層成形体の作用]
以下、実施例4の積層成形体310の作用を説明する。実施例4の積層成形体310は、第2クッション層311は、第1開口部11cと異なる位置に、第2開口部311cを備え、表皮15は、第1開口部11cにおいて、第2クッション層311に接合され、かつ、第1クッション層11は、第2開口部311cにおいて、基材13に接合される(
図17)。
【0098】
表皮15が、第1開口部11cにおいて、第2クッション層311に接合されることで、表皮15の表面に形成される凹凸の形状と、第1クッション層11が、第2開口部311cにおいて、基材13に接合されることで、表皮15の表面に形成される凹凸の形状と、を変えることができる。そのため、積層成形体310のデザイン性を向上させることができる。
【0099】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0100】
以上、本発明の積層成形体を実施例1~4に基づき説明した。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更、追加、各実施例の組み合わせ等は許容される。
【0101】
実施例1~4では、第1クッション層及び第2クッション層は、ひし形の本体部を形成するように開口部が形成される例を示した。しかし、
図18に示すように、開口部411cは、孔であってもよい。また、
図19に示すように、開口部511cは、星形であってもよいし、円形や、四角形や、三角形であってもよい。
【0102】
実施例1~4では、第1クッション層と第2クッション層をポリウレタンフォームとする例を示した。しかし、第1クッション層と第2クッション層は、この態様に限定されず、ポリエチレンフォーム又はポリエステルフォーム等の樹脂フォームや、不織布を用いることができる。
【0103】
実施例2~4では、第1クッション層と第2クッション層の厚さを略同じとする例を示した。しかし、第1クッション層の厚さを、第2クッション層の厚さより厚くしてもよいし、第2クッション層の厚さを、第1クッション層の厚さより厚くしてもよい。これにより、積層成形体の凹凸をバリエーションに富んだデザインで表現することができる。
【0104】
実施例2では、第1クッション層11に第1開口部11cを形成する例を示した。しかし、第1開口部は、第2クッション層に形成されてもよい。
【0105】
実施例3では、第2開口部211cの幅W2は、第1開口部11cの幅W1より小さく形成される例を示した。しかし、第2開口部の幅は、第1開口部の幅より大きく形成されてもよい。
【0106】
実施例4では、第1クッション層11の第1開口部11cの幅W1は、第2クッション層311の第2開口部311cの幅W3と略同じ大きさにする例を示した。しかし、第1クッション層の開口部の幅と、第2クッション層の開口部の幅とを異ならせることもできる。これにより、積層成形体の凹凸をバリエーションに富んだデザインで表現することができる。
【0107】
実施例3では、第1開口部11cと第2開口部211cは、同じ位置に形成される例を示した。また、実施例4では、第1開口部11cと第2開口部311cは、異なる位置に形成される例を示した。しかし、第1開口部と第2開口部は、一部のみ重なるように形成されてもよい。
【0108】
実施例1~4では、本発明の積層成形体を車両のシートの車両幅方向において中央部に適用する例を示した。しかし、本発明の積層成形体は、車両のシートの周縁部に適用することもできる。また、本発明の積層成形体は、車両のドアトリムや、車両のセンターコンソールや、家具等に適用することもできる。
【関連出願の相互参照】
【0109】
本出願は、2019年11月21日に日本国特許庁に出願された特願2019-210771に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。