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特許7248848可動部位置検出方法、基板処理方法、基板処理装置および基板処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】可動部位置検出方法、基板処理方法、基板処理装置および基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20230322BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
G01B11/00 H
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022092730
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2018159546の分割
【原出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2022118052
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】沖田 有史
(72)【発明者】
【氏名】猶原 英司
(72)【発明者】
【氏名】角間 央章
(72)【発明者】
【氏名】増井 達哉
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-28496(JP,A)
【文献】特開2012-93118(JP,A)
【文献】特開2015-68733(JP,A)
【文献】国際公開第2012/169592(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00ー11/30
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内の処理空間を移動する可動部の位置を検出する可動部位置検出方法であって、
(a)第1チャンバ内に配された第1可動部および第1指標部を第1カメラで撮像することによって第1画像を取得する工程と、
(b)第2チャンバ内に配された第2可動部および第2指標部を第2カメラで撮像することによって第2画像を取得する工程と、
(c)前記第1画像における前記第1指標部の位置と、前記第2画像における前記第2指標部の位置と、の位置的差異を算出する工程と、
(d)前記第1画像における前記第1可動部の位置、および、前記位置的差異に基づいて、前記第2画像において前記第2可動部の位置を検出するための判定領域を設定する工程と、
を含む、可動部位置検出方法。
【請求項2】
請求項1の可動部位置検出方法であって、
前記第1指標部が前記第1チャンバの複数箇所に分散して設けられている、可動部位置検出方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2の可動部位置検出方法であって、
前記第1指標部が、基板を水平姿勢で保持する基板保持部である、可動部位置検出方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項の可動部位置検出方法であって、
前記(d)工程は、
(d-1) 前記第1画像において前記第1可動部を含む基準判定領域を設定する工程と、
(d-2) 前記第2画像において、前記基準判定領域を適用するとともに、前記位置的差異に応じて位置を補正することによって、前記判定領域を設定する工程と、
を含む、可動部位置検出方法。
【請求項5】
チャンバ内の処理空間を移動する可動部を用いて基板を処理する基板処理方法であって、
(A)第1チャンバ内に配された第1可動部および第1指標部を第1カメラで撮像することによって、第1画像を取得する工程と、
(B)第2チャンバ内に配された第2可動部および第2指標部を第2カメラで撮像することによって、第2画像を取得する工程と、
(C)前記第1画像における前記第1指標部の位置と、前記第2画像における前記第2指標部の位置と、の位置的差異を算出する工程と、
(D)前記第1画像における前記第1可動部の位置、および、前記位置的差異に基づいて、前記第2画像において前記第2可動部の位置を検出するための判定領域を設定する工程と、
を含む、基板処理方法。
【請求項6】
チャンバ内の処理空間を移動する可動部を用いて基板を処理する基板処理装置であって、
第1チャンバ、前記第1チャンバ内の処理空間内で移動する第1可動部および前記第1チャンバ内に設けられた第1指標部を含む第1処理ユニットと、
第2チャンバ、前記第2チャンバ内の処理空間内で移動する第2可動部および前記第2チャンバ内に設けられた第2指標部を含む第2処理ユニットと、
前記第1可動部および前記第1指標部を撮影して第1画像を取得する第1カメラと、
前記第2可動部および前記第2指標部を撮影して第2画像を取得する第2カメラと、
前記第1画像における前記第1指標部の位置と、前記第2画像における前記第2指標部の位置と、の位置的差異を求める差異演算部と、
前記第1画像における前記第1可動部の位置、および、前記位置的差異に基づいて、前記第2画像において前記第2可動部の位置を検出するための判定領域を設定する判定領域設定部と、
を備える、基板処理装置。
【請求項7】
基板処理システムであって、
第1基板処理装置と、
第2基板処理装置と、
前記第1および前記第2基板処理装置と情報通信可能に接続された情報処理部と、
を備え、
前記第1基板処理装置は、
第1チャンバ、前記第1チャンバ内の処理空間内で移動する第1可動部および前記第1チャンバ内に設けられた第1指標部を含む第1処理ユニットと、
前記第1可動部および前記第1指標部を撮影して第1画像を取得する第1カメラと、
を備え、
前記第2基板処理装置は、
第2チャンバ、前記第2チャンバ内の処理空間内で移動する第2可動部および前記第2チャンバ内に設けられた第2指標部を含む第2処理ユニットと、
前記第2可動部および前記第2指標部を撮影して第2画像を取得する第2カメラと、
を備え、
前記情報処理部は、
前記第1画像における前記第1指標部の位置と、前記第2画像における前記第2指標部の位置と、の位置的差異を求める差異演算部と、
前記第1画像における前記第1可動部の位置、および、前記位置的差異に基づいて、前記第2画像において前記第2可動部の位置を検出するための判定領域を設定する判定領域設定部と、
を備える、基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板処理装置内で移動する可動部を用いて基板を処理する技術に関し、特に可動部の位置を検出する技術に関する。処理対象となる基板には、例えば、半導体基板、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板、プリント基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの製造工程においては、基板に対して純水、フォトレジスト液、エッチング液などの種々の処理液を供給して洗浄処理やレジスト塗布処理などの基板処理が行われる。これらの処理液を使用した液処理を行う装置として、基板を回転させつつ、その基板の表面にノズルから処理液を吐出する基板処理装置が用いられる場合がある。
【0003】
基板に対して処理を実行する処理ユニットにおいて、既定の位置に移動して処理を行う可動部が用いられる場合がある。このような可動部としては、既定の処理位置で基板に向けて処理液又はエアなどを吐出するノズル、および、基板の既定の位置に接触して物理洗浄などの処理を行うブラシなどが含まれる。基板の処理精度の向上及び均一化を図るためには、可動部が配置される位置の精度を高めることが望ましい。
【0004】
可動部が既定の位置が適正か否かを判定する目的で、処理空間内が撮像される場合がある。この場合、画像処理によって可動部の位置検出を行うことによって、可動部の位置が適正であるか否かを判定することが行われる。しかしながら、このような撮像を行うカメラ等の撮像手段自体の設置位置がずれている場合もあり得るため、このような場合に対応するための技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
特許文献1では、1つのチャンバ内において、撮像によって得られた原画像から、複数のアライメントマーク(基準部位)と可動部を検出する画像処理によってそれらの位置情報が取得される。それらの位置情報から、処理空間における可動部の位置を特定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-70693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常の基板処理装置は、基板に対して同一処理を行うチャンバが複数台備えられている場合がある。この場合、チャンバ間でカメラの設置状態が必ずしも一致しない。このため、チャンバ毎に可動部の位置検出を精度良く行うための事前設定を行う必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、各チャンバにおいて可動部の位置検出を行うための事前設定を効率的に行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1態様は、チャンバ内の処理空間を移動する可動部の位置を検出する可動部位置検出方法であって、(a)第1チャンバ内に配された第1可動部および第1指標部を第1カメラで撮像することによって第1画像を取得する工程と、(b)第2チャンバ内に配された第2可動部および第2指標部を第2カメラで撮像することによって第2画像を取得する工程と、(c)前記第1画像における前記第1指標部の位置と、前記第2画像における前記第2指標部の位置と、の位置的差異を算出する工程と、(d)前記第1画像における前記第1可動部の位置、および、前記位置的差異に基づいて、前記第2画像において前記第2可動部の位置を検出するための判定領域を設定する工程とを含む。
【0010】
第2態様は、第1態様の可動部位置検出方法であって、前記第1指標部が前記第1チャンバの複数箇所に分散して設けられている。
【0011】
第3態様は、第1態様または第2態様の可動部位置検出方法であって、前記第1指標部が、基板を水平姿勢で保持する基板保持部である。
【0012】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか1つの可動部位置検出方法であって、前記(d)工程は、(d-1)前記第1画像において前記第1可動部を含む基準判定領域を設定する工程と、(d-2)前記第2画像において、前記基準判定領域を適用するとともに、前記位置的差異に応じて位置を補正することによって、前記判定領域を設定する工程とを含む。
【0013】
第5態様は、チャンバ内の処理空間を移動する可動部を用いて基板を処理する基板処理方法であって、(A)第1チャンバ内に配された第1可動部および第1指標部を第1カメラで撮像することによって、第1画像を取得する工程と、(B)第2チャンバ内に配された第2可動部および第2指標部を第2カメラで撮像することによって、第2画像を取得する工程と、(C)前記第1画像における前記第1指標部の位置と、前記第2画像における前記第2指標部の位置と、の位置的差異を算出する工程と、(D)前記第1画像における前記第1可動部の位置、および、前記位置的差異に基づいて、前記第2画像において前記第2可動部の位置を検出するための判定領域を設定する工程とを含む。
【0014】
第6態様は、チャンバ内の処理空間を移動する可動部を用いて基板を処理する基板処理装置であって、第1チャンバ、前記第1チャンバ内の処理空間内で移動する第1可動部および前記第1チャンバ内に設けられた第1指標部を含む第1処理ユニットと、第2チャンバ、前記第2チャンバ内の処理空間内で移動する第2可動部および前記第2チャンバ内に設けられた第2指標部を含む第2処理ユニットと、前記第1可動部および前記第1指標部を撮影して第1画像を取得する第1カメラと、前記第2可動部および前記第2指標部を撮影して第2画像を取得する第2カメラと、前記第1画像における前記第1指標部の位置と、前記第2画像における前記第2指標部の位置と、の位置的差異を求める差異演算部と、前記第1画像における前記第1可動部の位置、および、前記位置的差異に基づいて、前記第2画像において前記第2可動部の位置を検出するための判定領域を設定する判定領域設定部とを備える。
【0015】
第7態様は、基板処理システムであって、第1基板処理装置と、第2基板処理装置と、前記第1および前記第2基板処理装置と情報通信可能に接続された情報処理部と、を備え、前記第1基板処理装置は、第1チャンバ、前記第1チャンバ内の処理空間内で移動する第1可動部および前記第1チャンバ内に設けられた第1指標部を含む第1処理ユニットと、前記第1可動部および前記第1指標部を撮影して第1画像を取得する第1カメラと、を備え、前記第2基板処理装置は、第2チャンバ、前記第2チャンバ内の処理空間内で移動する第2可動部および前記2チャンバ内に設けられた第2指標部を含む第2処理ユニットと、前記第2可動部および前記第2指標部を撮影して第2画像を取得する第2カメラと、を備え、前記情報処理部は、前記第1画像における前記第1指標部の位置と、前記第2画像における前記第2指標部の位置と、の位置的差異を求める差異演算部と、前記第1画像における前記第1可動部の位置、および、前記位置的差異に基づいて、前記第2画像において前記第2可動部の位置を検出するための判定領域を設定する判定領域設定部とを備える。
【発明の効果】
【0016】
第1態様の可動部位置検出方法によると、第1画像における第1指標部の位置と第2画像における第2指標部の位置の位置的差異から、第2カメラの第1カメラに対する視野位置の誤差を求めることができる。このため、第1画像における第1可動部の位置および指標部の位置的差異から、第2画像における第2可動部の位置を適切に予測できる。したがって、第2画像において第2可動部の位置を検出するための判定領域を適切に設定できる。また、1つのチャンバを基準として、他のチャンバにおいて判定領域を設定できるため、各チャンバにおいて可動部の位置検出を行うための事前設定を効率的に行うことができる。
【0017】
第2態様の可動部位置検出方法によると、分散した複数の箇所各々の位置情報が取得される。これにより、第1カメラに対する第2カメラの視野位置の誤差を精度良く求めることができる。
【0018】
第3態様の可動部位置検出方法によると、基板保持部の位置情報から、視野位置の誤差を求めることができる。
【0019】
第4態様の可動部位置検出方法によると、第1画像において設定された基準判定領域を第2画像に適用することによって、第2画像において判定領域を迅速に設定できる。また、基準判定領域の位置を、指標部の位置的差異に応じて補正することによって、第2画像において判定領域を適正な位置に設定できる。
【0020】
第5態様の基板処理方法によると、第1画像における第1指標部の位置と第2画像における第2指標部の位置の位置的差異から、第2カメラの第1カメラに対する視野位置の誤差を求めることができる。このため、第1画像における第1可動部の位置および指標部の位置的差異から、第2画像における第2可動部の位置を適切に予測できる。したがって、第2画像において第2可動部の位置を検出するための判定領域を適切に設定できる。また、1つのチャンバを基準として、他のチャンバにおいて判定領域を設定できるため、各チャンバにおいて可動部の位置検出を行うための事前設定を効率的に行うことができる。
【0021】
第6態様の基板処理装置によると、第1画像における第1指標部の位置と第2画像における第2指標部の位置の位置的差異から、第2カメラの第1カメラに対する視野位置の誤差を求めることができる。このため、第1画像における第1可動部の位置および指標部の位置的差異から、第2画像における第2可動部の位置を適切に予測できる。したがって、第2画像において第2可動部の位置を検出するための判定領域を適切に設定できる。また、1つのチャンバを基準として、他のチャンバにおいて判定領域を設定できるため、各チャンバにおいて可動部の位置検出を行うための事前設定を効率的に行うことができる。
【0022】
第7態様の基板処理システムによると、第1画像における第1指標部の位置と第2画像における第2指標部の位置の位置的差異から、第2カメラの第1カメラに対する視野位置の誤差を求めることができる。このため、第1画像における第1可動部の位置および指標部の位置的差異から、第2画像における第2可動部の位置を適切に予測できる。したがって、第2画像において第2可動部の位置を検出するための判定領域を適切に設定できる。また、1つの基板処理装置における1つのチャンバ10を基準として、他の基板処理装置のチャンバにおいて判定領域を設定できるため、各チャンバにおいて可動部の位置検出を行うための事前設定を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態の基板処理装置100の全体構成を示す図である。
図2】第1実施形態の洗浄処理ユニット1の概略平面図である。
図3】第1実施形態の洗浄処理ユニット1の概略縦断面図である。
図4】カメラ70と可動部であるノズル30との位置関係を示す図である。
図5】カメラ70および制御部9のブロック図である。
図6】ノズル30の位置検出処理のための事前準備の手順を示すフローチャートである。
図7】基準画像80の一例を示す図である。
図8】対象画像82の一例を示す図である。
図9】指標部の位置的差異の算出過程を概念的に示す図である。
図10】対象画像82に設定される判定領域DRを示す図である。
図11】基板処理の手順を示すフローチャートである。
図12】第2実施形態の基板処理システム1000を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0025】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」等)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」等)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」等)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取り等を有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「~の上」とは、特に断らない限り、2つの要素が接している場合のほか、2つの要素が離れている場合も含む。
【0026】
<1.第1実施形態>
図1は、第1実施形態の基板処理装置100の全体構成を示す図である。基板処理装置100は、処理対象である基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。基板処理装置100は、円形薄板状であるシリコン基板である基板Wに対して、薬液および純水などのリンス液を用いて洗浄処理を行った後、乾燥処理を行う。薬液としては、例えばSC1(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(hydrochloric hydrogen peroxide mixed water solution:塩酸過酸化水素水混合水溶液)、DHF液(希フッ酸)などが用いられる。以下の説明では、処理液とは薬液とリンス液を総称して「処理液」とする。なお、基板処理装置100は、洗浄処理ではなく、成膜処理のためのフォトレジスト液などの塗布液、不要な膜を除去するための薬液、エッチングのための薬液を供給して基板を湿式処理するように構成されていてもよい。
【0027】
基板処理装置100は、複数の洗浄処理ユニット1、インデクサ102および主搬送ロボット103を備える。
【0028】
インデクサ102は、装置外から受け取った処理対象の基板Wを装置内に搬送するとともに、洗浄処理が完了した処理済みの基板Wを装置外に搬出する。インデクサ102は、複数のキャリア(図示省略)を載置するとともに移送ロボット(図示省略)を備える。キャリアとしては、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(Front Opening Unified Pod)やSMIF(Standard Mecanical InterFace)ポッド、あるいは、基板Wを外気にさらすOC(Open Cassette)を採用してもよい。移送ロボットは、キャリアと主搬送ロボット103との間で基板Wを移送する。
【0029】
洗浄処理ユニット1は、1枚の基板Wに対して液処理および乾燥処理を行う。基板処理装置100には、12個の洗浄処理ユニット1が配置されている。具体的には、各々が鉛直方向に積層された3個の洗浄処理ユニット1を含む4つのタワーが、主搬送ロボット103の周囲を取り囲むようにして配置されている。図1では、3段に重ねられた洗浄処理ユニット1の1つを概略的に示している。なお、基板処理装置100における洗浄処理ユニット1の数量は、12個に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0030】
主搬送ロボット103は、洗浄処理ユニット1を積層した4個のタワーの中央に設置されている。主搬送ロボット103は、インデクサ102から受け取った処理対象の基板Wを各洗浄処理ユニット1に搬入する。また、主搬送ロボット103は、各洗浄処理ユニット1から処理済みの基板Wを搬出してインデクサ102に渡す。
【0031】
<洗浄処理ユニット1>
以下、基板処理装置100に搭載された12個の洗浄処理ユニット1のうちの1つに説明するが、他の洗浄処理ユニット1についても、ノズル30,60,65の配置関係が異なる以外は、同一の構成を有する。
【0032】
図2は、第1実施形態の洗浄処理ユニット1の概略平面図である。図3は、第1実施形態の洗浄処理ユニット1の概略縦断面図である。図2はスピンチャック20に基板Wが保持されていない状態を示しており、図3はスピンチャック20に基板Wが保持されている状態を示している。
【0033】
洗浄処理ユニット1は、チャンバ10内に、基板Wを水平姿勢(基板Wの表面の法線が鉛直方向に沿う姿勢)に保持するスピンチャック20と、スピンチャック20に保持された基板Wの上面に処理液を供給するための3つのノズル30,60,65と、スピンチャック20の周囲を取り囲む処理カップ40と、スピンチャック20の上方空間を撮像するカメラ70とを備える。また、チャンバ10内における処理カップ40の周囲には、チャンバ10の内側空間を上下に仕切る仕切板15が設けられている。
【0034】
チャンバ10は、鉛直方向に沿うとともに四方を取り囲む側壁11と、側壁11の上側を閉塞する天井壁12、側壁11の下側を閉塞する床壁13を備える。側壁11、天井壁12および床壁13によって囲まれた空間が基板Wの処理空間となる。また、チャンバ10の側壁11の一部には、チャンバ10に対して主搬送ロボット103が基板Wを搬出入するための搬出入口およびその搬出入口(いずれも図示省略)を開閉するシャッターが設けられている。
【0035】
チャンバ10の天井壁12には、基板処理装置100が設置されているクリーンルーム内の空気をさらに清浄化してチャンバ10内の処理空間に供給するためのファンフィルタユニット(FFU)14が取り付けられている。FFU14は、クリーンルーム内の空気を取り込んでチャンバ10内に送り出すためのファンおよびフィルタ(例えばHEPAフィルタ)を備えている。FFU14は、チャンバ10内の処理空間に清浄空気のダウンフローを形成する。FFU14から供給された清浄空気を均一に分散するために、多数の吹出し孔を穿設したパンチングプレートを天井壁12の直下に設けるようにしてもよい。
【0036】
スピンチャック20は、スピンベース21、スピンモータ22、カバー部材23および回転軸24を備える。スピンベース21は、円板形状を有しており、鉛直方向に沿って延びる回転軸24の上端に水平姿勢で固定されている。スピンモータ22は、スピンベース21の下方に設けられており、回転軸24を回転させる。スピンモータ22は、回転軸24を介してスピンベース21を水平面内にて回転させる。カバー部材23は、スピンモータ22および回転軸24の周囲を取り囲む筒状を有する。
【0037】
円板形状のスピンベース21の外径は、スピンチャック20に保持される円形の基板Wの径よりも若干大きい。よって、スピンベース21は、保持すべき基板Wの下面の全面と対向する保持面21aを有する。
【0038】
スピンベース21の保持面21aの周縁部には複数(本実施形態では4本)のチャックピン26が立設されている。各チャックピン26は、円形の基板Wの外周円の外径に対応する円周上に沿って均等な間隔をあけて配置されている。本実施形態では、4個のチャックピン26が90°間隔で設けられている。各チャックピン26は、スピンベース21内に収容された図示省略のリンク機構によって連動して駆動される。スピンチャック20は、各チャックピン26のそれぞれを基板Wの外周端に当接させて基板Wを把持することにより、当該基板Wをスピンベース21の上方で保持面21aに近接した水平姿勢にて保持する(図3参照)。また、スピンチャック20は、各チャックピン26のそれぞれを基板Wの外周端から離間させることによって、基板Wの把持を解除する。各チャックピン26は、基板Wを水平姿勢で保持する基板保持部である。
【0039】
スピンモータ22を覆うカバー部材23は、その下端がチャンバ10の床壁13に固定され、上端がスピンベース21の直下にまで到達している。カバー部材23の上端部には、カバー部材23から外方へほぼ水平に張り出し、さらに下方に屈曲して延びる鍔状部材25が設けられている。複数のチャックピン26による把持によってスピンチャック20が基板Wを保持した状態にて、スピンモータ22が回転軸24を回転させることにより、基板Wの中心を通る鉛直方向に沿った回転軸線CXまわりに基板Wを回転させることができる。なお、スピンモータ22の駆動は制御部9によって制御される。
【0040】
ノズル30は、ノズルアーム32の先端に吐出ヘッド31を取り付けて構成されている。ノズルアーム32の基端側はノズル基台33に固定して連結されている。ノズル基台33に設けられたモータ332(ノズル移動部)によって鉛直方向に沿った軸のまわりで回動可能とされている。
【0041】
ノズル基台33が回動することにより、図2中の矢印AR34にて示すように、ノズル30は、スピンチャック20の上方の位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で水平方向に沿って円弧状に移動させる。ノズル基台33の回動によって、ノズル30はスピンベース21の保持面21aの上方にて揺動する。詳細には、スピンベース21よりも上方において、水平方向に延びる既定の処理位置TP1に移動する。なお、ノズル30を処理位置TP1移動させるとは、ノズル30の先端部の吐出ヘッド31を処理位置TP1に移動させることと同意である。
【0042】
ノズル30には、複数種の処理液(少なくとも純水を含む)が供給されるように構成されており、吐出ヘッド31から複数種の処理液が吐出可能である。なお、ノズル30の先端に複数の吐出ヘッド31を設けて、それぞれから個別に同一または異なる処理液が吐出されてもよい。ノズル30(詳細には吐出ヘッド31)は、処理位置TP1にて停止して、処理液を吐出する。ノズル30から吐出された処理液は、スピンチャック20に保持された基板Wの上面に着液する。
【0043】
本実施形態の洗浄処理ユニット1には、上記のノズル30に加えてさらに2つのノズル60,65が設けられている。本実施形態のノズル60,65は、上記のノズル30と同一または類似の構成を備える。すなわち、ノズル60は、ノズルアーム62の先端に吐出ヘッドを取り付けて構成され、ノズルアーム62の基端側に連結されたノズル基台63によって、矢印AR64にて示すようにスピンチャック20の上方の処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で円弧状に移動する。ノズル65は、ノズルアーム67の先端に吐出ヘッドを取り付けて構成され、ノズルアーム67の基端側に連結されたノズル基台68によって、矢印AR69にて示すようにスピンチャック20の上方の処理位置と処理カップ40よりも外側の待機位置との間で円弧状に移動する。
【0044】
ノズル60,65にも、少なくとも純水を含む複数種の処理液が供給されるように構成されており、処理位置にてスピンチャック20に保持された基板Wの上面に処理液を吐出する。なお、ノズル60,65の少なくとも一方は、純水などの洗浄液と加圧した気体とを混合して液滴を生成し、その液滴と気体との混合流体を基板Wに噴射する二流体ノズルであってもよい。また、洗浄処理ユニット1に設けられるノズル数は3本に限定されるものではなく、1本以上であればよい。
【0045】
ノズル30,60,65各々を、円弧状に移動させることは必須ではない。例えば、直道駆動部を設けることによって、ノズルを直線移動させてもよい。
【0046】
回転軸24の内側を挿通するようにして鉛直方向に沿って下面処理液ノズル28が設けられている。下面処理液ノズル28の上端開口は、スピンチャック20に保持された基板Wの下面中央に対向する位置に形成されている。下面処理液ノズル28にも複数種の処理液が供給されるように構成されている。下面処理液ノズル28から吐出された処理液はスピンチャック20に保持された基板Wの下面に着液する。
【0047】
スピンチャック20を取り囲む処理カップ40は、互いに独立して昇降可能な内カップ41、中カップ42および外カップ43を備えている。内カップ41は、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有する。この内カップ41は、平面視円環状の底部44と、底部44の内周縁から上方に立ち上がる円筒状の内壁部45と、底部44の外周縁から上方に立ち上がる円筒状の外壁部46と、内壁部45と外壁部46との間から立ち上がり、上端部が滑らかな円弧を描きつつ中心側(スピンチャック20に保持される基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる第1案内部47と、第1案内部47と外壁部46との間から上方に立ち上がる円筒状の中壁部48とを一体的に備えている。
【0048】
内壁部45は、内カップ41が最も上昇した状態で、カバー部材23と鍔状部材25との間に適当な隙間を保って収容される。中壁部48は、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、中カップ42の後述する第2案内部52と処理液分離壁53との間に適当な隙間を保って収容される。
【0049】
第1案内部47は、滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部47bを有する。また、内壁部45と第1案内部47との間は、使用済みの処理液を集めて廃棄するための廃棄溝49とされている。第1案内部47と中壁部48との間は、使用済みの処理液を集めて回収するための円環状の内側回収溝50とされている。さらに、中壁部48と外壁部46との間は、内側回収溝50とは種類の異なる処理液を集めて回収するための円環状の外側回収溝51とされている。
【0050】
廃棄溝49には、この廃棄溝49に集められた処理液を排出するとともに、廃棄溝49内を強制的に排気するための図示省略の排気液機構が接続されている。排気液機構は、例えば、廃棄溝49の周方向に沿って等間隔で4つ設けられている。また、内側回収溝50および外側回収溝51には、内側回収溝50および外側回収溝51にそれぞれ集められた処理液を基板処理装置100の外部に設けられた回収タンクに回収するための回収機構(いずれも図示省略)が接続されている。なお、内側回収溝50および外側回収溝51の底部は、水平方向に対して微少角度だけ傾斜しており、その最も低くなる位置に回収機構が接続されている。これにより、内側回収溝50および外側回収溝51に流れ込んだ処理液が円滑に回収される。
【0051】
中カップ42は、スピンチャック20の周囲を取り囲み、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有する。この中カップ42は、第2案内部52と、この第2案内部52に連結された円筒状の処理液分離壁53とを有する。
【0052】
第2案内部52は、内カップ41の第1案内部47の外側において、第1案内部47の下端部と同軸円筒状である下端部52aと、下端部52aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部52bと、上端部52bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部52cとを有する。下端部52aは、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、第1案内部47と中壁部48との間に適当な隙間を保って内側回収溝50内に収容される。また、上端部52bは、内カップ41の第1案内部47の上端部47bと上下方向に重なるように設けられ、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、第1案内部47の上端部47bに対してごく微小な間隔を保って近接する。折返し部52cは、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、折返し部52cが第1案内部47の上端部47bの先端と水平方向に重なる。
【0053】
第2案内部52の上端部52bは、下方ほど肉厚が厚くなるように形成されている。処理液分離壁53は、上端部52bの下端外周縁部から下方に延びるように設けられた円筒形状を有する。処理液分離壁53は、内カップ41と中カップ42とが最も近接した状態で、中壁部48と外カップ43との間に適当な隙間を保って外側回収溝51内に収容される。
【0054】
外カップ43は、スピンチャック20に保持された基板Wの中心を通る回転軸線CXに対してほぼ回転対称となる形状を有する。外カップ43は、中カップ42の第2案内部52の外側において、スピンチャック20を取り囲む。この外カップ43は、第3案内部としての機能を有する。外カップ43は、第2案内部52の下端部52aと同軸円筒状をなす下端部43aと、下端部43aの上端から滑らかな円弧を描きつつ中心側(基板Wの回転軸線CXに近づく方向)斜め上方に延びる上端部43bと、上端部43bの先端部を下方に折り返して形成される折返し部43cとを有する。
【0055】
下端部43aは、内カップ41と外カップ43とが最も近接した状態で、中カップ42の処理液分離壁53と内カップ41の外壁部46との間に適当な隙間を保って外側回収溝51内に収容される。上端部43bは、中カップ42の第2案内部52と上下方向に重なるように設けられ、中カップ42と外カップ43とが最も近接した状態で、第2案内部52の上端部52bに対してごく微小な間隔を保って近接する。中カップ42と外カップ43とが最も近接した状態で、折返し部43cが第2案内部52の折返し部52cと水平方向に重なる。
【0056】
内カップ41、中カップ42および外カップ43は互いに独立して昇降可能とされている。すなわち、内カップ41、中カップ42および外カップ43各々には個別に昇降機構(図示省略)が設けられており、それによって別個独立して昇降される。このような昇降機構としては、例えばボールネジ機構やエアシリンダなどの公知の種々の機構を採用することができる。
【0057】
仕切板15は、処理カップ40の周囲においてチャンバ10の内側空間を上下に仕切るように設けられている。仕切板15は、処理カップ40を取り囲む1枚の板状部材であってもよいし、複数の板状部材をつなぎ合わせたものであってもよい。また、仕切板15には、厚さ方向に貫通する貫通孔や切り欠きが形成されていても良く、本実施形態ではノズル30,60,65のノズル基台33,63,68を支持するための支持軸を通すための貫通穴が形成されている。
【0058】
仕切板15の外周端はチャンバ10の側壁11に連結されている。また、仕切板15の処理カップ40を取り囲む端縁部は外カップ43の外径よりも大きな径の円形状となるように形成されている。よって、仕切板15が外カップ43の昇降の障害となることはない。
【0059】
また、チャンバ10の側壁11の一部であって、床壁13の近傍には排気ダクト18が設けられている。排気ダクト18は図示省略の排気機構に連通接続されている。ファンフィルタユニット14から供給されてチャンバ10内を流下した清浄空気のうち、処理カップ40と仕切板15と間を通過した空気は排気ダクト18から装置外に排出される。
【0060】
図4は、カメラ70と可動部であるノズル30との位置関係を示す図である。カメラ70は、鉛直方向において基板Wよりも鉛直方向上側に設けられている。カメラ70は、例えば固体撮像素子のひとつであるCCDと、電子シャッター、レンズなどの光学系とを備える。カメラ70の撮像方向(すなわち、撮像光学系の光軸方向)は、基板Wの上面を撮像するため、基板W上面の回転中心(またはその近傍)に向かって斜め下向きに設定されている。カメラ70は、スピンチャック20によって保持された基板Wの上面全体をその視野に包含する。例えば、水平方向については、図2において破線で囲まれた範囲がカメラ70の視野に含まれる。
【0061】
カメラ70は、その撮像視野に少なくとも処理位置TP1におけるノズル30の先端が含まれるように、つまり吐出ヘッド31の近傍が含まれる位置に設置されている。本実施形態では、図4に示すように、処理位置TP1におけるノズル30を前方上方から撮像する位置にカメラ70が設置される。よって、カメラ70は、処理位置TP1におけるノズル30の先端を含む撮像領域PAを撮像できる。同様に、カメラ70は、ノズル60,65が、スピンチャック20に保持された基板Wに対して処理を行うときの処理位置にあるときの、各先端を含む撮像領域PAを撮像する。カメラ70が図2および図4に示す位置に設置されている場合には、ノズル30,60はカメラ70の撮像視野内で横方向に移動するため、各処理位置の各ノズル30,60の先端を適切に撮像できるが、ノズル65についてはカメラ70の視野内で奥行き方向に移動するため、その処理位置近傍での移動を適切に撮像できないおそれもある。この場合、カメラ70とは別にノズル65を撮像するカメラを設けてもよい。
【0062】
ノズル30は、ノズル基台33の駆動によって、スピンチャック20に保持された基板Wの上方の処理位置TP1(図4において破線で示される位置)と処理カップ40よりも外側の待機位置(図4の実線位置)との間で往復移動される。処理位置TP1は、ノズル30からスピンチャック20に保持された基板Wの上面に処理液を吐出して洗浄処理を行う位置である。処理位置TP1は、スピンチャック20に保持された基板Wにおける中心よりも縁部寄りの位置である。待機位置は、ノズル30が洗浄処理を行わないときに処理液の吐出を停止して待機する位置である。待機位置は、スピンベース21の上方から外れた位置であって、水平面内において処理カップ40の外側の位置である。待機位置には、ノズル30の吐出ヘッド31を収容する待機ポッドが設けられていてもよい。
【0063】
なお、処理位置TP1は、基板Wの中心など、任意の位置であってもよく、さらには、処理位置TP1は、基板Wの上方から外れた位置であってもよい。後者の場合、ノズル30から吐出された処理液が、基板Wの外方から基板Wの上面に飛散させるとよい。また、ノズル30を処理位置TP1に停止させた状態で、ノズル30から処理液を吐出させることは必須ではない。例えば、ノズル30から処理液を吐出させながら、処理位置TP1を一方端とし、基板Wの上方において水平方向に延びる既定の処理区間内で、ノズル30を移動させてもよい。
【0064】
図3に示すように、チャンバ10内であって仕切板15よりも上方の位置に、照明部71が設けられている。照明部71は、例えばLEDランプを光源として含む。照明部71は、カメラ70がチャンバ10内を撮像するために必要とされる照明光を処理空間に供給する。チャンバ10内が暗室である場合、カメラ70が撮像を行う際に照明部71がノズル30,60,65に光を照射するよう、制御部9が照明部71を制御してもよい。
【0065】
図5は、カメラ70および制御部9のブロック図である。基板処理装置100に設けられた制御部9のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同一である。すなわち、制御部9は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェア(プログラム)やデータなどを記憶しておく磁気ディスクなどを備えている。制御部9のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって、基板処理装置100の各要素の動作が制御部9によって制御され、基板処理装置100における処理が進行する。
【0066】
図5に示す画像処理部91、差異演算部92、位置検出部93は、制御部9のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって制御部9内に実現される機能処理部である。
【0067】
画像処理部91は、カメラ70によって取得された撮影画像に対し、補正処理及びパターンマッチング処理などの画像処理を行う。画像処理部91は、カメラ70によって取得された撮影画像において、ノズル30,60,65を検出する。また、画像処理部91は、カメラ70によって取得された撮影画像において、指標部の位置を特定する。
【0068】
指標部は、チャンバ10内に配された要素であって、撮影画像となる撮像領域PAの処理空間における位置を決定するための指標となる要素である。指標部は、予め処理空間における位置が既知の要素である。指標部は、例えば複数(具体的には3つ)のチャックピン26である。各チャックピン26は、スピンベース21の回転が停止した状態では、既定の位置に配置される。撮影画像における各チャックピン26を検出することによって、処理空間における撮像領域PAの位置が特定される。
【0069】
指標部は、画像処理によって容易に検出可能である部材であることが好ましく、例えば、撮影画像において、背景に対する明るさの比が大きいことが好ましい。チャックピン26は、スピンベース21に対してコントラスト比が高いため、画像処理によってチャックピン26の位置を特定することが容易である。撮影画像における各チャックピン26の位置は、例えば検出された各チャックピンの重心位置などの代表点の位置としてもよい。指標部として、チャックピン26以外の要素(例えば、スピンベース21、ノズル基台33など)が採用されてもよい。また、チャンバ10内に所定形状の模様を有する複数のマークを設けてもよい。例えば、複数の直線が交差する交差点を含むマーク(十字など)を指標部として採用した場合、撮影画像において比較的検出が容易な交差点を当該マークの位置とするとよい。
【0070】
差異演算部92は、基準のチャンバ10において取得される撮影画像(基準画像80)における指標部(チャックピン26)の位置と、設定対象のチャンバ10において取得される撮影画像(対象画像82)における指標部(チャックピン26)の位置との差異である位置的差異を算出する(図7図8参照)。この指標部の位置的差異は、設定対象のチャンバ10を撮像するカメラ70の、基準のチャンバー10を撮像するカメラ70に対する視野位置の誤差に対応している。カメラ70の視野位置は、各処理空間におけるカメラ70の撮像領域PAの位置である。
【0071】
位置検出部93は、撮影画像上において、ノズル30,60,65の位置を検出する。位置検出部93は、ノズル30,60,65の位置を検出するための基準判定領域SDR(図7参照)および判定領域DR(図10参照)を設定する判定領域設定部932を備える。判定領域設定部932は、基準のチャンバ-10において取得された撮影画像(基準画像80)において、ノズル30,60,65の位置に基づき、基準判定領域SDRを設定する。また、判定領域設定部932は、設定対象である他のチャンバ10において取得された撮影画像(対象画像82)に判定領域DRを設定する。
【0072】
各チャンバ10に対する各カメラ70の取り付け位置は、適正位置からずれることがある。すなわち、各洗浄処理ユニット1毎に、カメラ70の視野位置(処理空間におけるカメラ70の撮像領域PAの位置)が異なる場合がある。そこで、判定領域設定部932は、設定対象のカメラ70の視野位置の誤差に対応する指標部の位置的差異に応じて基準判定領域SDRの位置を補正することによって、判定領域DRを設定する。これにより、各カメラ70の視野位置に誤差が存在する場合にも、適正に対応できる。
【0073】
位置検出部93は、検出対象であるノズル30,60,65を含んだ判定領域DR内の画像と、基準の洗浄処理ユニット1において得られたノズル30,60,65の基準判定領域SDR内の画像(基準判定領域画像)との間で公知のパターンマッチングを行い、一致度を示すマッチングスコアを算出する。検出対象のノズル30が適正な処理位置TP1にある場合マッチングスコアは大きくなり、処理位置TP1から位置ずれしている場合マッチングスコアが小さくなる。マッチングスコアについて適当な閾値がオペレータによって予め設定され、その閾値との比較によって得られた判定結果を、出力部に出力させてもよい。出力部は、例えば、表示部97、プリンター、警報ランプまたはスピーカーなどである。
【0074】
制御部9は、上記のRAMまたは磁気ディクスを含む記憶部96を備えている。記憶部96は、カメラ70によって撮像された画像のデータやオペレータの入力値などを記憶する。記憶部96は、各洗浄処理ユニット1のチャンバ10毎に、差異演算部92によって算出された指標部の位置的差異を示すデータ、判定領域設定部932によって設定された判定領域DRの撮影画像上の位置を示すデータを記憶する。
【0075】
制御部9には、表示部97および入力部98が接続されている。表示部97は、制御部9からの画像信号に応じて各種情報を表示する。入力部98は、制御部9に接続されたキーボードおよびマウスなどの入力デバイスで構成されており、操作者が制御部9に対して行う入力操作を受け付ける。
【0076】
<動作説明>
基板処理装置100における基板Wの通常の処理は、順に、主搬送ロボット103がインデクサ102から受け取った処理対象の基板Wを各洗浄処理ユニット1に搬入する工程、当該洗浄処理ユニット1が基板Wに洗浄処理を行う工程、主搬送ロボット103が当該洗浄処理ユニット1から処理済みの基板Wを搬出してインデクサ102に戻す工程を含む。各洗浄処理ユニット1における典型的な基板Wの洗浄処理手順の概略は、基板Wの表面に薬液を供給して所定の薬液処理を行った後、純水を供給して純水リンス処理を行い、その後に基板Wを高速回転させることによって純水を振り切り、もって基板Wを乾燥処理する。
【0077】
洗浄処理ユニット1が基板Wの処理を行う際、スピンチャック20に基板Wを保持するとともに、処理カップ40が昇降動作を行う。洗浄処理ユニット1が薬液処理を行う場合、例えば外カップ43のみが上昇し、外カップ43の上端部43bと中カップ42の第2案内部52の上端部52bとの間に、スピンチャック20に保持された基板Wの周囲を取り囲む開口が形成される。この状態にて基板Wがスピンチャック20とともに回転され、ノズル30および下面処理液ノズル28から基板Wの上面および下面に薬液が供給される。供給された薬液は基板Wの回転による遠心力によって基板Wの上面および下面に沿って流れ、やがて基板Wの端縁部から側方に向けて飛散される。これにより、基板Wの薬液処理が進行する。回転する基板Wの端縁部から飛散した薬液は外カップ43の上端部43bによって受け止められ、外カップ43の内面を伝って流下し、外側回収溝51に回収される。
【0078】
洗浄処理ユニット1が純水リンス処理を行う場合、例えば、内カップ41、中カップ42および外カップ43の全てが上昇し、スピンチャック20に保持された基板Wの周囲が内カップ41の第1案内部47によって取り囲まれる。この状態にて基板Wがスピンチャック20とともに回転され、ノズル30および下面処理液ノズル28から基板Wの上面および下面に純水が供給される。供給された純水は基板Wの回転による遠心力によって基板Wの上面および下面に沿って流れ、やがて基板Wの端縁部から側方に向けて飛散される。これにより、基板Wの純水リンス処理が進行する。回転する基板Wの端縁部から飛散した純水は第1案内部47の内壁を伝って流下し、廃棄溝49から排出される。なお、純水を薬液とは別経路にて回収する場合には、中カップ42および外カップ43を上昇させ、中カップ42の第2案内部52の上端部52bと内カップ41の第1案内部47の上端部47bとの間に、スピンチャック20に保持された基板Wの周囲を取り囲む開口を形成するようにしてもよい。
【0079】
洗浄処理ユニット1が振り切り乾燥処理を行う場合、内カップ41、中カップ42および外カップ43の全てが下降し、内カップ41の第1案内部47の上端部47b、中カップ42の第2案内部52の上端部52bおよび外カップ43の上端部43bのいずれもがスピンチャック20に保持された基板Wよりも下方に位置する。この状態にて基板Wがスピンチャック20とともに高速回転され、基板Wに付着していた水滴が遠心力によって振り切られ、乾燥処理が行われる。
【0080】
本実施形態においては、ノズル30から基板Wの上面に処理液を吐出するとき、カメラ70が処理位置TP1に停止したノズル30を撮像する。そして、位置検出部93が、撮像によって得られた撮影画像(対象画像82)の判定領域DR内の画像と、予め取得された基準の撮影画像(基準画像80)の基準判定領域SDR内の画像(基準判定領域画像960)とを比較することによって、ノズル30の位置異常を検出する。以下、その技術について詳細に説明する。なお、以下ではノズル30の位置を検出する技術について説明するが、他のノズル60,65についても適用可能である。
【0081】
図6は、ノズル30の位置検出処理のための事前準備の手順を示すフローチャートである。図6に手順を示す事前準備は実際の処理対象となる基板Wの処理プロセスに先立って実施されるものであり、例えば基板処理装置100の立ち上げ時、あるいは、メンテナンス作業時に実施されてもよい。図6に示す各工程は、特に断らない限り、制御部9の制御下で行われるものとする。
【0082】
事前準備では、制御部9が、各洗浄処理ユニット1について、判定領域DRの設定を行う。まず、制御部9は、各洗浄処理ユニット1の中の1つを基準の洗浄処理ユニット1として、その洗浄処理ユニット1が備えるカメラ70(第1カメラ)でチャンバ10(第1チャンバ)内を撮像する(図6:ステップS11)。このステップS11によって、基準の撮影画像である基準画像80(第1画像)が取得される。
【0083】
図7は、基準画像80の一例を示す図である。図7に示す例では、基準画像80は、4つのチャックピン26とともに、処理位置TP1に正しく配置されているノズル30(第1可動部)を含んでいる。基準の洗浄処理ユニット1は、例えばカメラ70の取付位置および撮像方向が適正であることが確認されているものであることが望ましい。この場合、適正な視野位置のカメラ70によって撮像されたチャンバ10内の撮影画像が、基準画像80として取得される。また、基準の洗浄処理ユニット1は、ノズル30の処理位置TP1が適正であることが確認されているものであることが望ましい。この場合、処理位置TP1に正しく配されたノズル30の撮影画像が、基準画像80として取得される。
【0084】
基準画像80が取得されると、制御部9は、ステップS11で得られた基準画像80内において指標部(第1指標部)である各チャックピン26の位置が特定される(図6:ステップS12)。具体的には、画像処理部91が、基準画像80において、パターンマッチング処理により、各チャックピン26を検出する。すなわち、画像処理部91は、基準画像80において、各チャックピン26に対応する予め準備されたパターンに一致する部分を探索する。そして、画像処理部91は、検出された各チャックピン26の重心などの代表点を、各指標部の位置として特定する。ステップS12では、図7に示す基準画像80において、4つのチャックピン26のうち3つのチャックピン26の位置((ax,ay),(ax,ay),(ax,ay))が特定される。
【0085】
各チャックピン26は、チャンバ10の複数箇所に分散して設けられている。このため、各チャックピン26の位置を求めることによって、カメラ70の視野位置を特定できる。また、各チャックピン26は左右非対称な形状を有する。このため、各チャックピン26は、カメラ70から見て異なる形状を有する。したがって、パターンマッチングにより、各チャックピン26を容易に識別できる。また、指標部とされるチャックピン26は、検出対象の位置である処理位置TP1に移動した可動部であるノズル30とは、撮影画像上において重ならないことが好ましい。
【0086】
続いて、制御部9は、基準画像80において、ノズル30の位置を検出するための基準判定領域SDRを設定する(ステップS13)。基準画像80における基準判定領域SDRは、例えば、オペレータの指定に基づいて設定されてもよい。この場合、表示部97に基準画像80を表示しておき、オペレータが、その基準画像80上で、ノズル30(第1可動部)の一部(例えば先端部)を囲む操作を入力部98に対して行うとよい。そして、判定領域設定部932が、その囲まれた範囲を、基準判定領域SDRに設定するとよい。なお、基準画像80における基準判定領域SDRの設定は、自動で行われてもよい。例えば、画像処理部91がパターンマッチング処理によってノズル30の一部(例えば先端部)を検出する。そして、判定領域設定部932が、その検出されたノズル30の一部を含む広さの領域を、基準判定領域SDRに設定するとよい。
【0087】
図7に示す例では、ステップS13において、処理位置TP1にあるノズル30の先端部に基準判定領域SDRが設定されている。基準判定領域SDRは、撮影画像よりも小さい寸法であって、撮影画像上において、検出対象であるノズル30,60,65各々の先端部よりも水平方向に大きい幅寸法を有するとよい。図7に示すように、基準判定領域SDRは、ノズル30の先端部の水平方向中心部が基準判定領域SDRの中心に一致するように設定されることが好ましい。
【0088】
基準画像80から基準判定領域SDRを切り出すことによって得られる画像は、基準判定領域画像960として記憶部96に保存される。この基準判定領域画像960は、図7に示すステップS24において、ノズル30の位置を検出する際の比較対象として使用される。
【0089】
また、基準画像80において設定された基準判定領域SDRの位置及び大きさを示す情報は、基準判定領域情報962として記憶部96に保存される。この基準判定領域情報962は、設定対象であるチャンバ10の撮影画像(対象画像82)において、判定領域設定部932が判定領域DRを設定する際に適宜読み出される。
【0090】
続いて、制御部9は、設定対象の洗浄処理ユニット1のチャンバ10(第2チャンバ)内を、カメラ70(第2カメラ)で撮像する(図6:ステップS14)。このステップS13によって、設定対象の撮影画像である対象画像が取得される。対象画像は、「第2画像」の一例である。
【0091】
図8は、対象画像82の一例を示す図である。図8に示すように、対象画像82は、図7に示す基準画像80と同様に、4つのチャックピン26とともに、処理位置TP1に対応する位置に配置されているノズル30を含んでいる。なお、ステップS14において、対象画像82を取得する段階では、ノズル30が検出対象の処理位置TP1に移動していることは必須ではない。例えばノズル30が待機位置などの他の位置にあってもよい。ただし、撮影画像上において、ノズル30は、指標部である各チャックピン26とは重ならない位置にあること(すなわち、カメラ70の撮像方向においてノズル30とチャックピン26とが重ならないこと)が好ましい。
【0092】
設定対象の洗浄処理ユニット1は、基準の洗浄処理ユニット1と、可動部であるノズル30および指標部である各チャックピン26の位置関係が同一である。例えば、図1に示す例では、図1に示す4つのタワーのうち、紙面斜め方向に対向する2つのタワーに属する各洗浄処理ユニット1では、ノズル30および各チャックピン26の位置関係が同一である。したがって、対向する2つのタワーに属する各洗浄処理ユニット1のうち、1つが基準の洗浄処理ユニット1の候補とされ、残余のいずれかが設定対象の洗浄処理ユニット1となる。
【0093】
なお、設定対象の洗浄処理ユニット1と基準の洗浄処理ユニット1とは、可動部であるノズル30および指標部である各チャックピン26の位置が同一、もしくは、左右対称の関係にある。例えば、図1に示す4つのタワーのうち、紙面斜め方向に対向する2つのタワーに属する各洗浄処理ユニット1間では、ノズル30および各チャックピン26の位置が同一の関係にある。したがって、対向する2つのタワーに属する各洗浄処理ユニット1のうち、1つが基準の洗浄処理ユニット1の候補とされ、残余のいずれかが設定対象の洗浄処理ユニット1となる。また、図1に示す4つのタワーのうち、紙面上下方向または左右方向に隣接する2つのタワー間では、ノズル30及び各チャックピン26の位置が左右対称の関係にある。この隣接する2つのタワーのうち、一方のタワーに属する洗浄処理ユニット1を基準とし、他方のタワーに属する洗浄処理ユニット1を設定対象とすることも妨げられない。この場合、基準の撮影画像(基準画像)、または、設定対象の撮影画像(対象画像)を左右反転させることによって、各撮影画像におけるノズル30およびチャックピン26の位置を見かけ上一致させることができる。もちろん、どちらかの撮影画像を左右反転させることは必須ではなく、左右反転させた場合における、各チャックピン26の位置情報。および、判定領域DRの位置情報を演算によって求めてもよい。
【0094】
図6に戻って、制御部9は、ステップS13で得られた対象画像において、指標部(第2指標部)である各チャックピン26の位置を特定する(図6:ステップS15)。詳細には、画像処理部91が、対象画像において、パターンマッチング処理により、各チャックピン26を検出する。そして、画像処理部91は、検出された各チャックピン26の重心を、各指標部の位置として特定する。
【0095】
例えば図8に示す例では、ステップS15にて、指標部とされている3つのチャックピン26の対象画像82における位置((bx,by),(bx,by),(bx,by))が特定される。対象画像82における3つのチャックピン26の位置は、基準画像80における3つのチャックピン26の位置からずれている。これは、主たる原因として、設定対象のカメラ70の視野位置が基準の視野位置からずれているためである。
【0096】
図6に戻って、制御部9は、指標部(各チャックピン26)の位置的差異を算出する(図6:ステップS16)。詳細には、差異演算部92が、ステップS12で特定された基準画像における各指標部(3つのチャックピン26)の位置、及び、ステップS15で特定された設定画像における各指標部(3つのチャックピン26)の位置から、各チャックピン26の位置的差異を算出する。
【0097】
図9は、指標部の位置的差異の算出過程を概念的に示す図である。差異演算部92は、対象画像82における各指標部の座標の、基準画像80における各指標部の座標に対する差異(相違量)の平均値を、指標部の位置的差異として算出する。例えば、図9に示す例では、水平方向の位置的差異Cxが式(1)で求められ、垂直方向の位置的差異Cyが式(2)で求められる。これらの位置的差異は、上述したように、カメラ70の視野位置の誤差を示している。
【0098】
Cx = { ( a1x - b1x ) + ( a2x - b2x ) + ( a3x - b3x ) } / 3・・・式(1)
Cy = { ( a1y - b1y ) + ( a2y - b2y ) + ( a3y - b3y ) } / 3・・・式(2)
【0099】
図6に戻って、制御部9は、指標部の位置的差異を算出すると、対象画像82において判定領域DRを設定する(ステップS17)。具体的には、判定領域設定部932が、ステップS13にて基準画像80に設定された基準判定領域SDRの位置および大きさを示すパラメータ(基準判定領域情報962)を対象画像82に適用するとともに、指標部の位置的差異に応じて位置を補正して、判定領域DRを設定する。
【0100】
図10は、対象画像82に設定される判定領域DRを示す図である。図10に示すように、判定領域設定部932は、まず、基準画像80において設定した基準判定領域SDRと同一パラメータの判定領域DRを適用する。これにより、破線で示す位置(基準判定領域SDRと同一位置)に仮の判定領域DRが準備される。続いて、判定領域設定部932は、その仮の判定領域DRの位置を位置的差異(Cx,Cy)だけ補正することによって、実線で示すように、判定領域DRを対象画像82に対して設定する。このようにして対象画像82に設定された判定領域DRでは、処理位置TP1に配されたノズル30の先端部が判定領域DRのほぼ中央に配されている。すなわち、対象画像82の判定領域DRにおけるノズル30の位置および形状が、基準画像80の基準判定領域SDRにおけるノズル30の位置および形状に近づけられる。
【0101】
図6に戻って、制御部9は、設定対象の洗浄処理ユニット1を管理する管理データを適宜参照することによって、設定対象であるすべての洗浄処理ユニット1について、判定領域DRの設定が完了したか否かを判定する(図6:ステップS18)。すべての設定対象の洗浄処理ユニット1について設定が完了した場合(ステップS18においてYes)、制御部9は、事前準備である判定領域DRの設定処理を終了する。未設定の洗浄処理ユニット1が存在している場合(ステップS18においてNo)、制御部9は、ステップS14に戻って、その未設定の洗浄処理ユニット1について、判定領域DRの設定処理を行う。
【0102】
次に、図6に示した事前準備が行われた後に、処理対象となる基板Wの処理を行うときの手順について説明する。図11は、基板処理の手順を示すフローチャートである。図11に示す各動作は、特に断らない限り、制御部9の制御下において行われるものとする。
【0103】
主搬送ロボット103は、処理対象となる基板Wを特定の洗浄処理ユニット1に搬入する(ステップS21)。搬入された基板Wはスピンチャック20によって水平姿勢で保持される。また、処理カップ40は、所定の高さ位置に到達するように昇降動作を行う。
【0104】
スピンチャック20が基板Wを保持した後、ノズル30が待機位置から処理位置TP1に移動する(ステップS22)。ノズル30の移動は、予め設定されたレシピ(基板Wの処理手順および条件を記述したもの)に従って制御部9がノズル基台33を制御することにより行われる。
【0105】
ノズル30が処理位置TP1に移動すると、カメラ70がチャンバ10内を撮影する(ステップS23)。これによって、処理位置TP1に移動したノズル30の撮影画像が取得される。なお、カメラ70は、常時撮像領域PAを連続撮像してよい。連続撮像とは、撮像領域PAを一定間隔で連続して撮像することをいい、例えば33ミリ秒間隔で連続撮像を行うとよい。あるいは、ノズル30が待機位置から処理位置TP1に向けて移動を開始したときなど、適宜のタイミングで撮像を開始してもよい。
【0106】
続いて、制御部9は、ノズル30の位置を検出する(ステップS24)。詳細には、位置検出部93が、ステップS23によって得られた撮影画像のうち、図6に示す事前準備によって設定された判定領域DR内において、ノズル30の位置を検出する。ここで、「ノズル30の位置を検出する」とは、処理空間におけるノズル30の位置を算出すること、基準となる位置からのずれ量を算出すること、または、基準の位置などからずれていることを閾値に基づいて判定することなどを含む。
【0107】
ここでは、ステップS24において、位置検出部93が、基準判定領域画像960(基準画像80における基準判定領域SDR内の画像)と、ステップS23で得られた撮影画像における事前準備で設定された判定領域DR内の画像とのマッチングスコア(一致度)が算出される。そして、位置検出部93は、判定領域DR内の画像とのマッチング座標を基準画像の場合と比較し、所定の閾値以上の差があれば、ノズル30の位置異常が発生していると判定する。判定結果は、所定の出力部から出力される。なお、ノズル30の位置異常が発生していると判定された場合、制御部9が、その異常が発生している洗浄処理ユニット1における基板処理を停止するようにしてもよい。
【0108】
続いて、ノズル30が基板Wに向けて処理液を吐出することによって、基板Wを洗浄処理する(ステップS25)。説明を省略するが、この液処理の後、制御部9が、レシピにしたがって、他の処理(例えば、ノズル60,65から処理液を吐出する処理、スピンドライ処理など)を行ってもよい。
【0109】
ステップS25の洗浄処理の後、スピンチャック20が基板Wの保持を解除する。また、処理カップ40は、スピンベース21から基板Wの搬出が可能となるように、所定の高さ位置に下降する。そして、主搬送ロボット103が、処理済の基板Wを洗浄処理ユニット1から搬出する(ステップS26)。
【0110】
<効果>
第1実施形態の基板処理装置100では、基準画像80におけるノズル30の位置に基づき、対象画像82において判定領域DRが設定される。このため、基準画像82における判定領域DRを迅速に設定できる。この場合、設定対象の処理ユニット1が増大しても、容易に対応できる。
【0111】
また、基準画像80におけるノズル30の位置と、基準のチャンバ10及び設定対象のチャンバ10間における指標部の位置的差異とから、対象画像82におけるノズル30の位置を予測できる。したがって、ノズル30の位置を検出するための判定領域DRを適正な位置に設定できる。
【0112】
対象画像82に判定領域DRが設定される際、基準画像80におけるノズル30の位置に応じて設定された基準判定領域SDRが適用されるとともに、指標部の位置的差異に応じて位置が補正される。これにより、第2画像において判定領域を迅速かつ適正な位置に設定できる。
【0113】
なお、本実施形態では、差異演算部92が、各画像80,82間における指標部の位置的差異として、各チャックピン26の平行移動量の平均値を算出している。しかしながら、差異演算部92は、指標部の位置的差異として、拡大率または回転量を求めてもよい。すなわち、差異演算部92は、各画像80,82における各チャックピン26の位置から、各画像80,82間における拡大率および回転量を算出してもよい。この場合、判定領域設定部932が、差異演算部92が算出した拡大率および回転量に応じて基準判定領域情報962を補正することによって、対象画像82に判定領域DRを設定するとよい。
【0114】
なお、本実施形態では、可動部が処理液を供給するノズル30である場合について主に説明したが、ブラシなどを検出対象の可動部とする場合にも、本発明は有効である。
【0115】
<2.第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以降の説明において、既に説明した要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号又はアルファベット文字を追加した符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
【0116】
図12は、第2実施形態の基板処理システム1000を示す図である。基板処理システム1000は、複数の基板処理装置100A,100Bと、情報処理部104とを備えている。基板処理装置100A,100B各々は、基板処理装置100と同様に、インデクサ102、主搬送ロボット103、および、複数の洗浄処理ユニット1を備えている。情報処理部104は、複数の基板処理装置100A,100Bの制御部(不図示)と通信線などを介してデータ通信可能に接続されている。
【0117】
基板処理装置100A,100Bの各洗浄処理ユニット1におけるノズル30の位置検出を行うにあたって、情報処理部104が各洗浄処理ユニット1毎に判定領域DRを設定する。このため、情報処理部104は、判定領域DRを設定するための構成として、画像処理部91、差異演算部92、位置検出部93を備えている。
【0118】
第2実施形態では、基板処理装置100Aが備える複数の洗浄処理ユニット1のうち1つが基準の洗浄処理ユニット1とされて、その洗浄処理ユニット1において、基準画像80(図7参照)が取得される。そして、基板処理装置100Aの残余の洗浄処理ユニット1及び基板処理装置100Bが備える複数の洗浄処理ユニット1が設定対象の洗浄処理ユニット1とされて、これらの各洗浄処理ユニット1において、対象画像82(図8参照)が取得される。各洗浄処理ユニット1についての判定領域DRの設定手順は、制御部9の代わりに情報処理部104が行うことを除いて、第1実施形態にて説明した手順と同一である。
【0119】
第2実施形態の基板処理システム1000によると、複数の基板処理装置100A,100Bのうち1つの基板処理装置100Aが備える洗浄処理ユニット1を基準として、他の基板処理装置100Bの洗浄処理ユニット1における判定領域DRを適切に設定できる。この態様においても、判定領域DRが指標部の位置的差異に応じて位置が補正されて設定される。このため、各洗浄処理ユニット1において、可動部であるノズル30の位置を精度良く検出できる。
【0120】
第2実施形態の基板処理システム1000は、情報処理部104が、2つの基板処理装置100A,100Bに接続されているが、3つ以上の基板処理装置に接続されていてもよい。そして、特定の基板処理装置における1つの洗浄処理ユニット1を基準として、他の各基板処理装置が備える各洗浄処理ユニット1について、判定領域DRが設定されてもよい。
【0121】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせられてもよいし、あるいは、省略されてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1000 基板処理システム
100,100A,100B 基板処理装置
1 洗浄処理ユニット
9 制御部
10 チャンバ
20 スピンチャック
21 スピンベース
22 スピンモータ
24 回転軸
26 チャックピン(指標部)
30,60,65 ノズル
31 吐出ヘッド
32 ノズルアーム
33 ノズル基台
70 カメラ
71 照明部
80 基準画像
82 対象画像
91 画像処理部
92 差異演算部
93 位置検出部
932 判定領域設定部
96 記憶部
960 基準判定領域画像
962 基準判定領域情報
97 表示部
98 入力部
104 情報処理部
DR 判定領域
SDR 基準判定領域
PA 撮像領域
TP1 処理位置
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12