(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E05F 3/22 20060101AFI20230322BHJP
【FI】
E05F3/22 D
(21)【出願番号】P 2022130611
(22)【出願日】2022-08-18
(62)【分割の表示】P 2019022802の分割
【原出願日】2019-02-12
【審査請求日】2022-09-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 則良
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 浩佑
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】実開平2-47374(JP,U)
【文献】米国特許第03161909(US,A)
【文献】特開2010-255393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 3/00- 3/22
E05F 5/00
E05C 17/00-17/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動部材と、係止部材と、作動停止機構とを備え、作動部材は、戸の開閉に連動して作動するものであり、係止部材は、作動部材の一方向の作動を許可し、戸を任意の開き位置で止めたときに作動部材を係止し、他方向の作動を阻止するものであり、作動停止機構は、
戸が開くときに係止部材の動きを止めており、戸の任意の開閉位置で操作することで係止部材の動きを自由にし、戸の閉じ側
への移動を許可することを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
ドア(建具)には、開いたドアを自動的に閉じるためのドアクローザーが取り付けられていることが一般的である。
図14に示すように、高齢者(a)、車椅子を押す介護者(b)やベビーカーを押すお母さん(c)や小さな子供(d)等がドア(建具)をあけて通過する際、扉(戸)5がドアクローザー7の作用により閉じようとする力が働くため、扉を押さえながら通過する必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、扉を手で押えながら通過するのは高齢者等には困難であり、使い勝手が悪かった為、使い勝手の良いものが求められていた。
【0004】
そこで、本発明は、使い勝手の良い建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、作動部材と、係止部材と、作動停止機構とを備え、作動部材は、戸の開閉に連動して作動するものであり、係止部材は、作動部材の一方向の作動を許可し、戸を任意の開き位置で止めたときに作動部材を係止し、他方向の作動を阻止するものであり、作動停止機構は、戸が開くときに係止部材の動きを止めており、戸の任意の開閉位置で操作することで係止部材の動きを自由にし、戸の閉じ側への移動を許可することを特徴とする建具である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、戸を任意の位置で戸の閉じ側への移動を規制することで、戸の開き状態を保持できるから、戸を開いて通るときに、戸を押えながら通過しなくて済むから、使い勝手が良い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態にかかる建具の移動規制装置の図であり、(a)は戸が閉じた状態にあるときの平面図、(b)は戸を所定角度開いた状態の正面図である。
【
図2】第1実施形態にかかる建具の移動規制装置の動作を示す平面図であり、(a)は戸の全閉状態であり、(b)は戸を所定の開き位置で止めたとき、(c)は戸の閉じ動作中、(d)は戸の全閉状態の手前である。
【
図3】作動部材の図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【
図4】係止部材の図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図である。
【
図5】第1実施形態にかかる戸の開閉動作を示す建具の横断面図である。
【
図6】係止解除機構の室内側操作及び室外側操作部の操作を示す縦断面図であり、(a)は操作前の状態、(b)は室内側操作部を操作した状態、(c)は室外側操作部を操作した状態である。
【
図7】第1実施形態にかかる建具の図であり、(a)は室内側から見た正面図であり、(b)は室外側から見た正面図である。
【
図8】第2実施形態にかかる移動規制装置の図であり、(a)は戸が所定の開き位置から閉じ動作中のときの横断面図、(b)は(a)に示すA-A断面図である。
【
図9】第2実施形態にかかる移動規制装置の動作を示す図であり、(A-1)は戸の全閉状態の作動停止機構を抜き出して示す平面図、(A-2)は(A-1)の状態のときの作動部材と係止部材とを抜き出して示す平面図、(B-1)は戸が所定の開き位置にあるときの作動停止機構を抜き出して示す平面図、(B-2)は(B-1)の状態のときの作動部材と係止部材とを抜き出して示す平面図、(C-1)は停止解除位置にある作動停止機構を抜き出して示す平面図、(C-2)は(C-1)の状態のときの作動部材と係止部材とを抜き出して示す平面図、(D-1)は戸が全閉位置になったときの作動停止機構を抜き出して示す平面図、(D-2)は(D-1)の状態のときの作動部材と係止部材とを抜き出して示す平面図である。
【
図10】
図8に示す作動部材の図であり、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【
図11】
図8に示す係止部材の図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【
図12】第2実施形態にかかる戸の開閉動作を示す建具の横断面図である。
【
図13】第2実施形態にかかる建具を室内側から見た正面図である。
【
図14】従来の建具を通過するときの各シーンを概略的に示す斜視図であり、(a)は高齢者の場合、(b)は車椅子を押す介護者の場合、(c)はベビーカーを押すお母さんの場合、(d)は小さな子供の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面の
図1~
図7を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
図7に示すように、第1実施形態にかかる建具1は、ドアであり、枠3と戸(扉)5とを備えている。
図7(a)に示すように、建具1の室内側には、建具1の上部において、戸5と枠3の間にドアクローザー7が設けてあり、ドアクローザー7の下方には移動規制装置9が設けてある。移動規制装置9は、吊元側縦枠3aに固定されている。
図1(a)に示すように、移動規制装置9は、戸5(
図5参照)を開くときに任意の位置で戸5の閉じ側への移動を規制するものであり、作動部材11と、係止部材13と、係止解除機構15とを備えている。
【0010】
図1(a)(b)に示すように、作動部材11は、戸5の開閉に連動して作動するものである。作動部材11は外周に歯12が形成された歯車であり、作動部材11の中心軸10には戸連動アーム17の一端17aがマシンキー19を介して連結されている。
図1(a)に示すように、作動部材11の歯12は、戸の閉じ方向側(他方向F側)の歯面12aは、ピッチ円14aの接線14bに対して略直角を成しており、戸の開き方向側(一方向E側)の歯面12bは、ピッチ円14aの接線14bに対して鋭角で傾斜している。
図5に示すように、戸連動アーム17の他端17bは、戸5に取り付けた中継アーム21の一端21aに連結されており、中継アーム21の他端21bは戸5に連結されている。戸連動アーム17と中継アーム21との連結により、戸5の回動に連動して、作動部材11が戸連動アーム17を介して回転する。
【0011】
図1(a)に示すように、係止部材13は、作動部材11の一方向Eの作動を許可し、他方向Fの作動を阻止するものであり、本実施の形態では一方向Eは戸5の開き方向であり、他方向Fは戸5の閉じ方向である。
図1(a)及び
図4に示すように、係止部材13は、基端部13aを中心に回動自在であり、先端部には作動部材11の歯12に係止可能な歯25が形成されている。係止部材13は、付勢部材39により歯25を作動部材11の歯12に向けて係合する方向に常時付勢されている。
係止部材13の歯25の一方向側の歯面25aは作動部材11の一方向E側の歯面12bと同様な傾斜面としてあり、他方向側の歯面25bは作動部材11の他方向F側の歯面12aと同様な略直角面としてある。
上述した作動部材11の歯12と係止部材13の歯25の関係により、作動部材11が一方向E(戸の開き方向)に回転したときには、係止部材13の歯25は作動部材11の歯12を乗り越えて戸5の移動を許容し、作動部材11が他方向F(戸の閉じ方向)に回転しようとしたときには、係止部材13の歯25は作動部材11の歯12に係止して、他方向への回転を阻止することで、戸5の閉じ側への移動を阻止する。
【0012】
図1(a)に示すように、係止解除機構15は、作動部材11と係止部材13との係止を解除するものであり、係止解除アーム29と、連動ワイヤー31と、係止解除操作部33(
図6参照)とを備えている。
係止解除アーム29は、係止部材13の基端部13aに一体に形成されており、基端部13aを中心に回動可能である。
連動ワイヤー31は、一端31aが係止解除アーム29に連結されており、
図7に示すように、連動ワイヤー31の他端31bは、係止解除操作部33に連結されている。連動ワイヤー31は、係止解除操作部33の操作に連動して係止解除アーム29を介して係止部材13を係止位置と非係止位置とに動かすものである。
【0013】
図6及び
図7に示すように、係止解除操作部33は、建具1において、その室内側に設けた室内側操作部33aと室外に設けた室外側操作部33bとで構成されている。室内側操作部33aは枠3の外周壁部2に取付けてあり、室外側操作部33bは縦枠3bの室外側面に取付けてある。
以下に、室内側操作部33aと室外側操作部33bとの構成を説明するが、室内側操作部33aと室外側操作部33bは略同じ構成である為、室内側操作部33aについて説明し、室外側操作部33bでは、室内側操作部33aと同一の作用効果を奏する部分には、同一の符号を付してその部分の詳細な説明を省略する。
図6(a)に示すように、室内側操作部33aは、基部35と、操作ボタン37と、付勢部材38、揺動部材41と、連結ワイヤー43とを備えている。
基部35は、室内側の外周壁部2に取付けてある。操作ボタン37はその上端部を基部35の水平軸35aに対して回動自在に取付けてある。操作ボタン37には、揺動部材41に向けて突設する突出部37aが設けてある。
付勢部材38は基部35と操作ボタン37の間に設けた圧縮コイルバネである。
揺動部材41は、基部35から室外側に突設する支持部35bの先端に設けた水平軸40に対して、上部41aと下部41bとが揺動自在に支持されている。
揺動部材41の上部41aには、上述した連動ワイヤー31の他端31bが連結されており、揺動部材41の下部41bには、連結ワイヤー43の一端43aが連結されている。
【0014】
一方、室外側操作部33bは、水平軸35aは基部35の下端側に設けてあり、操作ボタン37はその上側が回動自在としてあり、揺動部材41の下部41bに連結ワイヤー43の他端43bが連結されている。
係止解除操作部33の構成により、
図6(b)に示すように、室内側操作部33aの操作ボタン37を押したときに、突出部37aが揺動部材41の下部41bを押して、上部41aに連結されている連動ワイヤー31の他端31bが室内側に引かれる。
また、
図6(c)に示すように、室外側操作部33bの操作ボタン37を押したときには、揺動部材41の上部41aが突出部37aに押されて室内側に揺動し、下部41bが室外側に引かれることにより、連結ワイヤー43が室内側操作部33aの揺動部材41の下部41bを室外側に引き込むことで、室内側操作部33aでは、揺動部材41の上部41aを室内側へ揺動して、連動ワイヤー31を室内側に引く。
【0015】
次に、係止解除維持機構45について説明する。
図1(a)に示すように、係止解除維持機構45は、係止部材13が作動部材11との係止を解除した状態を維持するための機構であり、スタートアーム23と、保持部材47と、付勢部材49とを備えている。
スタートアーム23は、その基端部23aを戸連動アーム17の一端17aに固定しており、作動部材11の回転に連動して戸連動アーム17と共に回転する。スタートアーム23の先端部23bは作動部材11の外周側に位置しており、先端部23bには回転軸を垂直にした車輪24が設けてある。
図2(a)に示すように、上述した係止解除機構15の係止解除アーム29には、その先端に係合部29bが設けてあり、保持部材47は、係止解除アーム29の係合部29bと係合可能な被係合部47cが設けてある。
保持部材47は、一端部47aが回動軸50を中心に回動自在であり、他端部47bを係止解除アーム29に近づく位置と離れる位置とに回動する。
付勢部材49は、保持部材47を係止解除アーム29に向けて付勢している圧縮コイルバネである。保持部材47の他端部47bには、スタートアーム23の先端部23bに設けた車輪24の受部52としてある。
【0016】
この係止解除維持機構45によれば、
図2(c)に示すように、連動ワイヤー31に引かれて係止解除アーム29が回動して作動部材11と係止部材13との係止が解除されたときに、係止解除アーム29の係合部29bが保持部材47の被係合部47cを乗り越えた後、保持部材47の被係合部47cに係合することで、係止部材13の係止解除状態を保持する。
その後、戸5(
図5参照)の閉じ方向の移動に連動して作動部材11が回転した後、
図2(d)に示すように、作動部材11の回転に連動してスタートアーム23の車輪24が保持部材47の受部52に当接して、保持部材47を係止解除アーム29から離すことで、係止解除アーム29の係合部29bと保持部材47の被係合部47cとの係合が解除される。そして、係止部材13は、付勢部材39の付勢力により、歯25を作動部材11の歯12、12間に挿入する。
【0017】
次に、本実施の形態にかかる建具1の開閉操作及び動作について説明する。
まず、室内側から室外側へ建具1をあけて通る場合について説明する。
図5に示すように、戸5の閉状態から戸5を開くが、戸5の閉状態では、移動規制装置9は、
図2(a)に示すように、係止部材13は付勢部材39に付勢されており、係止部材13の歯25は、作動部材11の歯12、12間に位置している。この状態では、作動部材11が一方向E側に回転する場合には、係止部材13の歯25は一方向側の歯面12bを乗り越えるので、戸5の開動作に伴って、作動部材11は、一方向Eに回転する。
次に、
図5に示す任意の位置Aまで戸5を開き、その位置で戸5の開きを止める。これにより、
図2(b)に示すように、戸5はドアクローザー7により、閉じ方向の力を受けるので、作動部材11は他方向(矢印F)に回転しようとするが、係止部材13の歯25が作動部材11の他方向側の歯面12aと当接して、作動部材11の他方向Fへの作動を阻止し、戸連動アーム17を介して戸5の閉じ側への移動を規制する。係止部材13は、付勢部材39により歯25を作動部材11に向けて付勢しており、作動部材11との係止状態を保持する。
これにより、戸5を手で押えなくても戸5の開状態が保持されるので、建具1を通る人は、戸5を手で押えることなく、建具1を通ることができる。
尚、戸5を
図5に示す位置Aで一度止めた後、更に開いてその位置で戸5止めても良い。この場合でも、
図2(b)に示す状態と同様にして、係止部材13を作動部材11に係止状態とすることができる。
【0018】
建具1を通った後、建具1の室外側面に設けた室外側操作部33b(
図7(b)参照)を、
図6(c)に矢印Pで示すように、押し操作すると、室内側操作部33aにおいて、連結ワイヤー43が室外側操作部33b側に引かれる。これにより、室内側操作部33aの下部41bが室外側に移動し、上部41aが室内側へ移動することで、連動ワイヤー31が室内側操作部33a側に引かれて、
図2(c)に示すように、係止部材13と作動部材11との係止状態が解除される。この係止解除状態では、作動部材11は、戸5の開き方向Eと閉じ方向Fのいずれの方向にも回動できるから、戸5も開き方向と閉じ方向のいずれの方向にも開閉可能である。
一方、係止解除アーム29の係合部29bは、連動ワイヤー31が引き操作されたときに、保持部材47の被係合部47cを乗り越えると共に保持部材47は付勢部材49により作動部材11側へ付勢されているので、係止解除アーム29の係合部29bは保持部材47の被係合部47cに係合すると共に係合状態のままに保持される。したがって、係止解除維持機構45により、係止部材13と作動部材11との係止解除状態が維持される。係止部材13と作動部材11との係止解除状態が維持されることにより、戸5はドアクローザー7(
図7(a)参照)の作用により閉じられる。
図2(d)に示すように、戸5が閉じられていくと、スタートアーム23の車輪24が保持部材47の受部52に向けて移動する。
そして、戸5が全閉状態になると(
図5参照)、
図2(a)に示すように、スタートアーム23の車輪24が保持部材47の受部52に当接して、付勢部材49の付勢力に抗して、保持部材47を押し下げ、係止解除アーム29が自由状態になると共に、係止部材13は付勢部材39に付勢されて、係止部材13の歯25が作動部材11の歯12、12間に挿入した状態に保持される。したがって、戸5が全閉状態になったときには、係止解除維持機構45の係止解除維持状態が解除される。
【0019】
次に、室外側から室内側へ建具1を通る場合について説明する。この場合、戸5の開動作は上述した室内側から室外側へ建具1を通る場合と同じであるから、その説明は省略する。
室外側から室内側へ建具1を通る場合は、建具1を通った後に室内側操作部33aを操作する点が、室内側から室外側へ建具1を通る場合と異なっているから、以下に室内側操作部33aの操作について説明する。
室外側から室内側へ建具1を通った後、建具1の室内側面に設けた室内側操作部33a(
図7(a)参照)において、
図6(b)に矢印Pで示すように、操作ボタン37を押し操作すると、操作ボタン37の突出部37aが揺動部材41の下部41bを押すことで、上部41aが室内側に揺動し、連動ワイヤー31が室内側操作部33a側に引き操作される。これにより、
図2(c)に示すように、係止解除アーム29と共に係止部材13が作動部材11から離れるように回動し、係止部材13の歯25が作動部材11から離れる。作動部材11は、戸5がドアクローザー7によりの閉方向の力を受けて戸連動アーム17と共に矢印F方向に回動する。
尚、
図6(b)に示すように、室内側操作部33aの操作ボタン37を押し操作したときは、連結ワイヤー43は室外側操作部33bの揺動部材41の下部41bを室外側へ移動させるが、揺動部材41が揺動するだけで、他の部分には影響しない。
【0020】
第1実施の形態にかかる建具1の作用、効果について説明する。
図2(b)に示すように、第1実施の形態によれば、戸5を任意の位置A(
図5参照)で戸5の閉じ側への移動を規制することで、戸5の開き状態を保持できるから、戸5をあけて通るときに、戸5を押えながら通過しなくて済むから、使い勝手が良い。
【0021】
図2(c)に示すように、係止解除維持機構45を備えており、戸を開けて通った後に、係止解除操作部33を押して、係止解除維持機構45を作動することにより、係止部材13と作動部材11との係止解除状態を維持でき、係止解除操作部33を長押しなくとも、係止解除ができるので利便性が良い。
図6に示すように、係止解除操作部33は、室内側操作部33aと室外側操作部33bとで構成し、室内側操作部33aと室外側操作部33bとのいずれでも係止解除維持機構45を作動できるから、室内側又は室外側のいずれから建具1を通過するときにも、係止解除維持機構45の作動が容易にできる。
図2(d)に示すように、戸5が全閉状態になると(
図5参照)、スタートアーム23が保持部材47を押し下げ、係止部材13の歯25が作動部材11の歯12、12間に挿入した状態になることで、自動的に係止解除維持状態が解除されるから、この点においても利便性が良い。
【0022】
以下に本発明の他の実施の形態を説明するが、以下に説明する実施の形態において、上述した第1実施の形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することによりその部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では第1実施の形態と主に異なる点を説明する。
図8~
図13に、本発明の第2実施の形態にかかる建具1を示す。
図8に示すように、この建具1は、作動部材11と、係止部材13と、作動停止機構53とを備えている。
図10に示すように、作動部材11は、戸連動アーム17に一体に取付けてあり、中央には中央孔54が形成されており、第1実施の形態における中心軸10は備えていない。
【0023】
図8に示すように、係止部材13は、作動部材11の一方向の作動を許可し、戸5の開き位置で止めたときに作動部材11を係止し、他方向の作動を阻止するものであり、作動部材11を収納する収納体55と、収納体55の内側に突設して形成された係止部56とを一体に備えている。
係止部56は、作動部材11の歯12の一方向側の歯面12bに沿って延出しており、先端を作動部材11の歯12、12間に配置している。これにより、第1実施の形態の係止部材13と同様に、作動部材11が一方向E(戸の開き方向)に回転したときには、係止部56の先端は作動部材11の歯12を乗り越えて戸5の移動を許容し、作動部材11が他方向F(戸の閉じ方向)に回転しようとしたときには、係止部材13の先端は作動部材11の歯12に係止して、係止部材13に対する作動部材11の相対的な他方向Fへの回転を阻止する。
【0024】
図11に示すように、収納体55には中心に軸部57を突設して形成してある。軸部57は作動部材11の中央孔54(
図10参照)に回動自在に挿入されている。
収納体55の下部には、軸部57と一体の被係合部59が下方に突設されている。被係合部59は外周が平面視角形状を成しており、本実施の形態では、平面視6角形状である。
尚、
図8(a)(b)に示すように、収納体55はケース61内に回動自在に収納されている。
【0025】
作動停止機構53は、係止部材13の動きを止めて戸の閉じ側への移動を規制するものであり、連動ワイヤー31の一端31aに連結された係合部材63を備えている。
係合部材63は、被係合部59に係合する位置と、係合を解除する位置とに移動自在に設けてあり、係合部材63の移動は案内部65に案内されている。係合部材63は、付勢部材67により被係合部59との係合位置に常時付勢されている。
連動ワイヤー31を操作する室内側操作部33aと室外側操作部33bとの構成は、上述した第1実施の形態と略同様であるから、その詳細な説明を省略する。
【0026】
次に、第2実施の形態にかかる建具1の開閉操作及び動作について説明する。
図9(A-1)及び(A-2)に示すように、戸5が閉状態にあるときには、移動規制装置9では、付勢部材67により係合部材63を被係合部59との係合位置に付勢している。このとき、係止部材13は、係合部材63によりその回転が阻止されているので、作動部材11は一方向Eの回動(戸5の開き方向の回動)のみが可能となっている。
図9(B-1)及び(B-2)に示すように、戸5の開き動作に伴って、戸連動アーム17に連結している作動部材11が一方向Eに回転する。作動部材11が一方向E側に回転する場合には、係止部56が一方向側の歯面12bを乗り越えて回転する。
次に、
図12に示す任意の位置Aまで戸5を開き、その位置で戸5の開きを止める。これにより、戸5はドアクローザー7(
図13参照)により、閉じ方向の力を受けるので、作動部材11は他方向(矢印F)に回転しようとするが、係止部材13の係止部56が作動部材11の他方向側の歯面12aと当接して、作動部材11の他方向Fへの作動を阻止し、戸連動アーム17を介して戸5の閉じ側への移動を規制する。
これにより、戸5を手で押えなくても戸5の開状態が保持されるので、建具1を通る人は、戸5を手で押えることなく、建具1を通過できる。
尚、戸5を
図12に示す位置Aで一度止めた後、更に開いてその位置で戸5止めることもできる。この場合でも、
図9(B-1)及び(B-2)に示す状態と同様にして、係止部材13と作動部材11は係止状態とすることができる。
【0027】
建具1を通過後、室内側操作部33a又は室外側操作部33bの操作ボタン37を押し操作すると(
図6(b)(c)参照)、
図9(C-1)に示すように、係合部材63が付勢部材67の付勢力に抗して連動ワイヤー31に引かれて、被係合部59との係合が解除される。これにより、係止部材13は回転が自由になり、
図9(C-2)に示すように、戸5はドアクローザー7により閉じ方向の力を受けるので、戸5と共に戸連動アーム17が戸5の閉じ方向に回転し、作動部材11の歯12が係止部56に係止した状態のまま他方向F側に回動する。
そして、
図9(D-1)及び(D-2)で示すように、戸5が閉状態となる。この閉状態では、
図9(D-1)に示すように、係合部材63と被係合部59との係合は解除された状態にある。
その後、操作ボタン37を操作することで、
図9(A-1)で示すように、係合部材63を係止部材13の被係合部59に係止し、係止部材13の回動を阻止した状態になる。
【0028】
第2実施の形態にかかる建具1の作用、効果について説明する。
図9(B-1)(B-2)に示すように、第2実施の形態によれば、戸5を任意の位置A(
図5参照)で戸5の閉じ側への移動を規制することで、戸5の開き状態を保持できるから、戸5をあけて通るときに、戸5を押えながら通過しなくて済むから、使い勝手が良い。
【0029】
図6に示すように、係止解除操作部33は、室内側操作部33aと室外側操作部33bとで構成し、室内側操作部33aと室外側操作部33bとのいずれでも被係合部59に対する係合部材63の係合解除ができるから、室内側又は室外側のいずれから建具1を通過するときにも、係合解除が容易にできる。
第2実施形態では、第1実施形態の係止解除維持機構45を設けていないので、第1実施の形態に比較して構成が簡易である。
【0030】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、建具1が引戸の場合、作動部材11は、例えば、障子の移動に連動するラックで直線状に移動する構成としても良い。
第1実施形態にかかる建具1において、室内側操作部33aと室外側操作部33bは、連結ワイヤー43で連結しないで、個別に係止解除アーム29に連動する連動ワイヤー31を設けて、個別に操作する構成としても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 建具
5 戸
11 作動部材
13 係止部材
15 係止解除機構
53 作動停止機構