(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】複層塗膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20230322BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
B05D1/36 B
B05D5/06 101A
(21)【出願番号】P 2022208741
(22)【出願日】2022-12-26
【審査請求日】2023-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 由依
(72)【発明者】
【氏名】坪根 良平
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/099150(WO,A1)
【文献】特開2014-147918(JP,A)
【文献】特表2009-505807(JP,A)
【文献】特開2014-4552(JP,A)
【文献】特開2016-185527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
C09D 1/00-201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物上に、水性第1ベース塗料組成物を塗装して、第1ベース塗装膜を形成する第1ベース塗装膜形成工程と、
前記第1ベース塗装膜の上に水性第2ベース塗料組成物を塗装して、第2ベース塗装膜を形成する第2ベース塗装膜形成工程と、
少なくとも、前記第1ベース塗装膜及び第2ベース塗装膜を同時に加熱硬化させて、第1ベース塗膜と第2ベース塗膜とを含む複層塗膜を形成する加熱硬化工程と、
を含む複層塗膜の製造方法であって、
前記水性第1ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A1)及び硬化剤(B1)を含み、
前記水性第2ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A2)、硬化剤(B2)及び光輝性顔料(C2)を含み、
前記水性第1ベース塗料組成物の固形分濃度は、15質量%以上40質量%以下であり、
前記水性第2ベース塗料組成物の固形分濃度は、5質量%以上20質量%以下であり、
水性第2ベース塗料組成物における固形分濃度に対する、前記水性第1ベース塗料組成物における固形分濃度の比は、質量基準で、1.1以上8以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の平均粒子径(D50)は、17μm以上30μm以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の平均厚みは、0.3μm以上6.0μm以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の水面拡散面積(WCA)は、1.4m
2/g以下であり、
前記水性第2ベース塗料組成物における、前記光輝性顔料(C2)の顔料質量濃度は、2質量%以上40質量%以下である、
複層塗膜の製造方法。
【請求項2】
前記水性第1ベース塗料組成物の塗装及び前記水性第2ベース塗料組成物の塗装は、前記第1ベース塗膜の乾燥膜厚t
1と前記第2ベース塗膜の乾燥膜厚t
2との比t
1/t
2が、1.6以上7以下となるように実施される、請求項1に記載の複層塗膜の製造方法。
【請求項3】
前記複層塗膜の粒状性値(G値)は、9以上18以下である、請求項1に記載の複層塗膜の製造方法。
【請求項4】
前記水性第2ベース塗料組成物は、粘性調整剤(D)を更に含み、
前記粘性調整剤(D)は、無機系層状化合物(D-1)を含む、請求項1に記載の複層塗膜の製造方法。
【請求項5】
前記塗膜形成樹脂(A2)は、アクリル樹脂水分散体(A11)を含む、請求項1に記載の複層塗膜の製造方法。
【請求項6】
前記硬化剤(B2)は、アミノ樹脂(B11)を含む、請求項1に記載の複層塗膜の製造方法。
【請求項7】
前記第2ベース塗装膜の上にクリヤー塗料を塗装して、クリヤー塗装膜を形成するクリヤー塗装膜形成工程を更に含み、
前記加熱硬化工程において、前記第1ベース塗装膜、前記第2ベース塗装膜及び前記クリヤー塗装膜を同時に加熱硬化させて複層塗膜を形成する、請求項1~6のいずれか1項に記載の複層塗膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複層塗膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体等の被塗物の表面には、種々の役割を持つ複数の塗膜(複層塗膜)を順次形成して、被塗物を保護すると同時に美しい外観及び優れた意匠を付与している。このような複層塗膜の形成方法としては、導電性に優れた被塗物上に電着塗膜等の下塗り塗膜を形成し、その上に、必要に応じて中塗り塗膜、そして上塗り塗膜を順次形成する方法が一般的である。これらの塗膜において、特に塗膜の外観及び意匠を大きく左右するのは、ベース塗膜とクリヤー塗膜とからなる上塗り塗膜である。特に自動車において、車体上に形成されるベース塗膜とクリヤー塗膜とからなる上塗り塗膜の外観及び意匠は、極めて重要である。
【0003】
ベース塗膜は、所謂ソリッドカラーといわれる、鱗片状顔料を含まない塗膜と、光輝感を有する、所謂メタリックカラーといわれる、鱗片状顔料を含む塗膜とに大別することができる。光輝感を有する塗膜に含まれる鱗片状顔料の代表的な1例として、鱗片状アルミニウム顔料が挙げられる。ベース塗膜に鱗片状アルミニウム顔料を含めることによって、金属調光沢(メタリック感)を発現させることができる。
自動車に形成された塗膜の外観は、その自動車の高級感等といった外観価値に大きく関与する。また自動車を購入する顧客(消費者)は、意匠性に優れた塗膜を有する自動車を求める傾向にある。このような消費者の好みの多様化及び独自性志向により、より独特な意匠が求められている。
【0004】
金属調光沢(メタリック感)を有する塗膜の製造方法に関して、特許文献1には、水性第1ベース光輝性塗料を塗装し、第1ベース塗膜を形成する工程と、前記第1ベース塗膜上に水性第2ベース光輝性塗料を塗装し、第2ベース塗膜を形成する工程と、前記第2ベース塗膜上にクリヤー塗料を塗装し、クリヤー塗膜を形成する工程と、全ての未硬化の塗膜を一度に加熱硬化する工程とを含む光輝性塗膜形成方法が記載され、水性第1ベース光輝性塗料中の塗料固形分が1~45質量%、水性第2ベース光輝性塗料中の塗料固形分が1~40質量%であること、水性第1ベース光輝性塗料と水性第2ベース光輝性塗料との塗料固形分比率が、(1.1/4)~(4/1)であること等が記載されている。
【0005】
特許文献2には、鱗片状光輝性顔料を含む水性ベースコート塗料の塗装方法において、塗料中の固形分が20~40質量%になるように調整された水性ベースコート塗料を乾燥膜厚で1~15μmとなるように被塗物に塗装した後、未硬化の塗膜の上に、塗料中の固形分が2~15質量%になるように調整された水性ベースコート塗料を乾燥膜厚で0.1~5μmとなるように塗装することが記載されている。
【0006】
特許文献3には、被塗物上に着色顔料及び光輝性顔料を含有する水性第1着色塗料を塗装して第1着色塗膜を形成する工程、前記第1着色塗膜上に、粘性調整剤、着色顔料及び光輝性顔料を含有する水性第2着色塗料を塗装して第2着色塗膜を形成する工程、前記第2着色塗膜上に、クリヤ塗料を塗装してクリヤ塗膜を形成する工程、及び、前記第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤ塗膜を同時に加熱することにより、硬化させる工程を含む複層塗膜形成方法が記載され、前記第2着色塗料の固形分含有率が0.1~6質量%であり、第2着色塗膜の乾燥膜厚が0.2~3.0μmであり、第2着色塗膜の波長400~700nmの光線透過率の平均値が1%以下であり、第1着色塗膜の波長400~700nmの光線反射率(110°)の平均値と、前記複層塗膜の波長400~700nmの光線反射率(110°)の平均値との差が5%以下であること等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-351389号公報
【文献】特許2006-95522号公報
【文献】特許7005823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、金属調光沢(メタリック感)に加えて、粒子感の高い(ギラギラした)外観を有する塗膜が求められる場合がある。本発明者らの検討によれば、粒子感のある光沢は、粒子径が大きく、厚い光輝性顔料を用いることで、発現し得るが、かかる光輝性顔料を用いると、得られる塗膜において、平滑性が劣り、且つメタリックムラ(光輝性顔料が均一に配向せず、まだらな外観になること)が発生しやすくなる傾向がある。すなわち、粒子感の高い外観と、塗膜の平滑性及びメタリックムラの抑制とは、排反事象であるともいえる。従来から知られる特許文献1~3に記載の塗膜形成方法では、粒子感が十分でないか、粒子感が得られたとしても、塗膜の平滑性及び均一性(メタリックムラの発生抑制)が十分に満足できるものではなかった。
【0009】
本開示は、前記事情に鑑みたものであり、粒子感が高く、メタリックムラが抑制され、平滑な塗膜を実現可能な塗膜の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 被塗物上に、水性第1ベース塗料組成物を塗装して、第1ベース塗装膜を形成する第1ベース塗装膜形成工程と、
前記第1ベース塗装膜の上に水性第2ベース塗料組成物を塗装して、第2ベース塗装膜を形成する第2ベース塗装膜形成工程と、
少なくとも、前記第1ベース塗装膜及び第2ベース塗装膜を同時に加熱硬化させて、第1ベース塗膜と第2ベース塗膜とを含む複層塗膜を形成する加熱硬化工程と、
を含む複層塗膜の製造方法であって、
前記水性第1ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A1)及び硬化剤(B1)を含み、
前記水性第2ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A2)、硬化剤(B2)及び光輝性顔料(C2)を含み、
前記水性第1ベース塗料組成物の固形分濃度は、15質量%以上40質量%以下であり、
前記水性第2ベース塗料組成物の固形分濃度は、5質量%以上20質量%以下であり、
水性第2ベース塗料組成物における固形分濃度に対する、前記水性第1ベース塗料組成物における固形分濃度の比は、質量基準で、1.1以上8以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の平均粒子径(D50)は、17μm以上30μm以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の平均厚みは、0.3μm以上6.0μm以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の水面拡散面積(WCA)は、1.4m2/g以下であり、
前記水性第2ベース塗料組成物における、前記光輝性顔料(C2)の顔料質量濃度は、2質量%以上40質量%以下である、
複層塗膜の製造方法。
[2] 前記水性第1ベース塗料組成物の塗装及び前記水性第2ベース塗料組成物の塗装は、前記第1ベース塗膜の乾燥膜厚t1と前記第2ベース塗膜の乾燥膜厚t2との比t1/t2が、1.6以上7以下となるように実施される、[1]に記載の複層塗膜の製造方法。
[3] 前記複層塗膜の粒状性値(G値)は、9以上18以下である、[1]又は2に記載の複層塗膜の製造方法。
[4] 前記水性第2ベース塗料組成物は、粘性調整剤(D)を更に含み、
前記粘性調整剤(D)は、無機系層状化合物(D-1)を含む、[1]~[3]のいずれか1つに記載の複層塗膜の製造方法。
[5] 前記塗膜形成樹脂(A2)は、アクリル樹脂水分散体(A11)を含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の複層塗膜の製造方法。
[6] 前記硬化剤(B2)は、アミノ樹脂(B11)を含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の複層塗膜の製造方法。
[7] 前記第2ベース塗装膜の上にクリヤー塗料を塗装して、クリヤー塗装膜を形成するクリヤー塗装膜形成工程を更に含み、
前記加熱硬化工程において、前記第1ベース塗装膜、前記第2ベース塗装膜及び前記クリヤー塗装膜を同時に加熱硬化させて複層塗膜を形成する、[1]~[6]のいずれか1つに記載の複層塗膜の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示の製造方法によれば、粒子感が高く、メタリックムラが抑制され、平滑な塗膜を実現し得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の複層塗膜の製造方法は、
被塗物上に、水性第1ベース塗料組成物を塗装して、第1ベース塗装膜を形成する第1ベース塗装膜形成工程と、
前記第1ベース塗装膜の上に水性第2ベース塗料組成物を塗装して、第2ベース塗装膜を形成する第2ベース塗装膜形成工程と、
少なくとも、前記第1ベース塗装膜及び第2ベース塗装膜を同時に加熱硬化させて、第1ベース塗膜と第2ベース塗膜とを含む複層塗膜を形成する加熱硬化工程と、
を含む複層塗膜の製造方法であって、
前記水性第1ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A1)及び硬化剤(B1)を含み、
前記水性第2ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A2)、硬化剤(B2)及び光輝性顔料(C2)を含み、
前記水性第1ベース塗料組成物の固形分濃度は、15質量%以上40質量%以下であり、
前記水性第2ベース塗料組成物の固形分濃度は、5質量%以上20質量%以下であり、
水性第2ベース塗料組成物における固形分濃度に対する、前記水性第1ベース塗料組成物における固形分濃度の比は、1.1以上8以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の平均粒子径(D50)は、17μm以上30μm以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の平均厚みは、0.3μm以上6.0μm以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の水面拡散面積(WCA)は、1.4m2/g以下であり、
前記水性第2ベース塗料組成物における、前記光輝性顔料(C2)の顔料質量濃度は、2質量%以上40質量%以下である。
【0013】
本開示の複層塗膜の製造方法によれば、粒子感が高く、メタリックムラが抑制され、平滑な塗膜を実現し得る。本開示は、特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、本開示の製造方法が、前記効果を奏し得る原因は、以下のように考えられる。
【0014】
すなわち、本開示の光輝性顔料(C2)は厚さが厚いため、可視光線が透過しにくく、表面で反射されやすい。通常、厚さの厚い光輝性顔料(C2)は、塗膜形成過程において、均一に配向し難いため、光輝感を発現し難い場合や、メタリックムラを生じる場合があり得る。本開示の製造方法では、特定の光輝性顔料(C2)を用い、該光輝性顔料(C2)を含む第2ベース塗料組成物の固形分濃度を第1ベース塗料組成物の固形分濃度より低い範囲とし、第1ベース塗料組成物に含まれる固形分の量と、第2ベース塗料組成物に含まれる固形分の量との比を所定範囲としたうえで、光輝性顔料(C2)の顔料質量濃度を所定範囲としている。そのため、加熱硬化の際、第2ベース塗装膜の乾燥及び硬化に加えて、第2ベース塗装膜から第1ベース塗装膜への溶媒の移動が起こりやすくなると考えられ、効果的に体積収縮が生じることにより、光輝性顔料(C2)が配向しやすくなると考えられる。
【0015】
<水性第1ベース塗料組成物及び水性第2ベース塗料組成物>
前記水性第1ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A1)及び硬化剤(B1)を含む。一態様において、前記水性第1ベース塗料組成物は、光輝性顔料(C1)を更に含み、別の態様において、前記水性第1ベース塗料組成物は、光輝性顔料(C1)を含まない。
前記水性第2ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A2)、硬化剤(B2)及び光輝性顔料(C2)を含む。
以下、水性第1ベース塗料組成物又は水性第2ベース塗料組成物を「水性ベース塗料組成物」という場合があり、塗膜形成樹脂(A1)又は塗膜形成樹脂(A2)を「塗膜形成樹脂(A)」という場合があり、前記硬化剤(B1)又は硬化剤(B2)「硬化剤(B)」という場合があり、前記光輝性顔料(C1)又は光輝性顔料(C2)を「光輝性顔料(C)」という場合がある。
【0016】
(塗膜形成樹脂(A))
前記塗膜形成樹脂(A)は、後述する硬化剤(B)と反応することにより、塗膜を形成しうる樹脂であり、アクリル樹脂、ポリオール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂から選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましく、アクリル樹脂、ポリオール樹脂及びポリエステル樹脂から選ばれる1種又は2種以上を含むことがより好ましい。前記塗膜形成樹脂(A)は、水酸基を有することが好ましい。
【0017】
前記塗膜形成樹脂(A)は、水性樹脂を含むことが好ましい。水性樹脂は、水性媒体に分散している樹脂であり、エマルション又はディスパージョンであってよい。かかる水性樹脂としては、アクリル樹脂水分散体、ポリエステル樹脂水分散体、ポリウレタン樹脂水分散体、エポキシ樹脂水分散体が挙げられる。
塗膜形成樹脂(A1)の樹脂組成と塗膜形成樹脂(A2)の樹脂組成とは、同一であっても、異なっていてもよい。
【0018】
一態様において、前記塗膜形成樹脂(A2)は、アクリル樹脂を含むことが好ましく、アクリル樹脂水分散体(A11)を含むことが好ましい。塗膜形成樹脂(A2)がアクリル樹脂を含むことで、得られる塗料組成物の貯蔵安定性や、得られる塗膜の耐水性、耐候性等の諸物性が良好となり得る。また、前記塗膜形成樹脂(A1)は、アクリル樹脂を含むことが好ましく、アクリル樹脂水分散体(A11)を含むことが好ましい。塗膜形成樹脂(A1)及び塗膜形成樹脂(A2)アクリル樹脂を含むことで、第1ベース塗膜と第2ベース塗膜の密着性が良好になり得る。アクリル樹脂水分散体(A11)は、アクリル樹脂エマルション及びアクリル樹脂ディスパージョンのいずれであってもよく、アクリル樹脂エマルションであることが好ましい。アクリル樹脂水分散体に含まれるアクリル樹脂は、水性媒体中において、粒子状であってよい。
【0019】
代表的には、前記アクリル樹脂は、(メタ)アクリルモノマーを含むモノマー混合物の重合体として得られ、アクリル樹脂水分散体(A11)は、前記モノマー混合物を乳化重合することにより得られる。前記モノマー混合物は、水酸基含有モノマーを含むことが好ましく、酸基含有モノマー及びその他のモノマーを更に含んでいてよい。一態様において、前記モノマー混合物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、水酸基含有モノマー及び酸基含有モノマーを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、水酸基含有モノマー、酸基含有モノマー及びスチレン系モノマーを含むことがより好ましい。
なお、本開示において、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸を表す。
【0020】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、酸基及び水酸基を有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。前記モノマー混合物が(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことで、アクリル樹脂の主骨格を良好に構成できる。
【0021】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
水酸基含有モノマーとしては、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーが挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ε-カプロラクトン変性(メタ)アクリルモノマー等が挙げられる。
【0023】
ε-カプロラクトン変性(メタ)アクリルモノマーとしては、市販品を用いてよく、該市販品としては、例えば、プラクセルFA-1、プラクセルFA-2、プラクセルFA-3、プラクセルFA-4、プラクセルFA-5、プラクセルFM-1、プラクセルFM-2、プラクセルFM-3、プラクセルFM-4及びプラクセルFM-5(いずれもダイセル化学工業社製)等が挙げられる。水酸基含有モノマーとして1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記モノマー混合物が水酸基含有モノマーを含むことによって、得られるアクリル樹脂に親水性が付与されるとともに、アクリル樹脂と後述する硬化剤(B)との硬化反応性を高めることができる。
【0025】
酸基含有モノマーは、酸基を有する(メタ)アクリルモノマーであってよく、かかる酸基は、カルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基であってよく、分散安定性向上及び硬化反応促進機能の観点から、好ましくはカルボキシル基である。前記モノマー混合物が、酸基含有モノマーを含むことで、得られるアクリル樹脂の保存安定性、機械的安定性、凍結に対する安定性等の諸安定性を向上させることができ、塗膜形成時におけるアクリル樹脂と硬化剤(B)との硬化反応を促進させることができる。
【0026】
酸基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸及びフマル酸等のカルボキシル基含有モノマー;p-ビニルベンゼンスルホン酸、p-アクリルアミドプロパンスルホン酸、t-ブチルアクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルのリン酸モノエステル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルのリン酸モノエステル等のリン酸基含有モノマー等が挙げられる。酸基含有モノマーとして1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン系モノマー、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー等が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。他のモノマーは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記モノマー混合物は、カルボニル基含有モノマー、加水分解性シリル基含有モノマー、種々の多官能ビニルモノマー等の架橋性モノマーを更に含んでいてもよい。モノマー混合物が架橋性モノマーを含むことによって、得られるアクリル樹脂に対して自己架橋性を付与することができる。架橋性モノマーは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記カルボニル基含有モノマーとしては、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチル、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するアルキルビニルケトン(例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン)等のケト基を含有するモノマーが挙げられる。
【0030】
前記加水分解性シリル基含有モノマーとしては、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
前記多官能ビニルモノマーは、分子内に2つ以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和基を有する化合物である。多官能ビニルモノマーの具体例として、例えば、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸アリル、ジ(メタ)アクリル酸1,4-ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸1,6-ヘキサン、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等の多官能ビニル化合物;トリアリルシアヌレート、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ヘキサ(メタ)アクリル酸ジペンタエリスリトール等の多官能モノマー等が挙げられる。
【0032】
架橋性モノマーは、1種のみを用いてもよく、2種又はそれ以上を併用してもよい。好ましい架橋性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコールジ及びジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの架橋性モノマーを用いることによって、得られるアクリル樹脂水分散体(A11)に含まれるアクリル樹脂の平均粒子径を100nm以下に好適に制御することができる利点がある。
【0033】
架橋性モノマーの量は、モノマー混合物の総量に基づいて0.2~20質量%であるのが好ましく、0.5~20質量%であるのがより好ましい。モノマー混合物が、架橋性モノマーを上記範囲で含むことによって、調製されるアクリル樹脂水分散体(A11)に含まれるアクリル樹脂の平均粒子径を100nm以下に好適に制御することができる利点がある。
【0034】
アクリル樹脂水分散体(A11)に含まれるアクリル樹脂は粒子状であってよく、かかる粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上1.0μm以下である。
なお、本開示において、平均粒子径は、動的光散乱法によって決定される体積平均粒子径であり、具体的には、電気泳動光散乱光度計ELSZシリーズ(大塚電子社製)等を使用して測定することができる。
【0035】
アクリル樹脂水分散体(A11)に含まれるアクリル樹脂は、コア-シェル型粒子であってよい。
【0036】
アクリル樹脂水分散体(A11)に含まれるアクリル樹脂の酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上80mgKOH/g以下、より好ましくは2mgKOH/g以上70mgKOH/g以下、更に好ましくは3mgKOH/g以上60mgKOH/g以下である。
【0037】
アクリル樹脂水分散体(A11)に含まれるアクリル樹脂の水酸基価は、好ましくは30mgKOH/g以上120mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である。前記範囲内であることで、硬化反応が十分に進行し、得られる塗膜の硬度が良好になるという利点がある。
なお、本開示において、酸価及び水酸基価は、いずれも固形分換算値であり、JIS K 0070に準拠した方法により測定される。
【0038】
アクリル樹脂水分散体(A11)に含まれるアクリル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは50,000以上5,000,000以下、より好ましくは50,000以上1,000,000以下である。前記範囲内であることで、得られる塗膜の硬度、密着性、耐水性等の諸性能が良好となるという利点がある。
なお、本開示において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)の測定結果を、ポリスチレン標準として換算した値である。
【0039】
前記塗膜形成樹脂(A1)の固形分中、アクリル樹脂水分散体(A11)の固形分の含有率は、好ましくは30質量%以上90質量%以下、より好ましくは40質量%以上85質量%以下、更に好ましくは50質量%以上80質量%以下である。前記範囲内であることで、硬化反応が十分に進行し、得られる塗膜の硬度が良好になるという利点がある。
前記塗膜形成樹脂(A2)の固形分中、アクリル樹脂水分散体(A11)の固形分の含有率は、好ましくは20質量%以上90質量%以下、より好ましくは25質量%以上85質量%以下、更に好ましくは30質量%以上80質量%以下である。前記範囲内であることで、硬化反応が十分に進行し、得られる塗膜の硬度が良好になるという利点がある。
なお、本開示において、各成分及び組成物に含まれる固形分は、JIS K 5601-1-2:2008に定義される加熱残分を意味し、105℃で60分間加熱した後の残差の質量の、元の質量に対する百分率を測定することにより算出される。
【0040】
アクリル樹脂水分散体(A11)は、前記モノマー混合物を、水性媒体中、ラジカル重合開始剤及び乳化剤の存在下、かくはんしながら加熱して、乳化重合することによって製造できる。反応温度は例えば30~100℃程度であってよい。反応時間は、反応スケール及び反応温度に応じて適宜選択することができ、例えば1~10時間程度であってよい。乳化重合では、例えば、水と乳化剤とを仕込んだ反応容器に対して、モノマー混合物又はモノマープレ乳化液を、一括で加えてもよく、また暫時滴下してもよい。このような手順を適宜選択することによって、反応温度を調節することができる。前記モノマープレ乳化液は、モノマー混合物と、水及び乳化剤の少なくとも一部とを乳化させることにより調製できる。
【0041】
前記ラジカル重合開始剤としては、アクリル樹脂の乳化重合で用いられる公知の開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤は、好ましくは水溶性のラジカル重合開始剤であり、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩を、水溶液の状態で用いることができる。また、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の酸化剤と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤とが組み合わされた、いわゆるレドックス系開始剤を、水溶液の状態で用いることもできる。
ラジカル重合開始剤として1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
前記乳化剤としては、例えば、炭素数が6以上の炭化水素基と、カルボン酸塩、スルホン酸塩又は硫酸塩部分エステル等の親水性部分とを同一分子中に有するミセル化合物から選ばれるアニオン系又は非イオン系の乳化剤を用いることができる。アニオン乳化剤としては、アルキルフェノール類又は高級アルコール類の硫酸半エステルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;アルキル又はアリルスルホナートのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアリルエーテルの硫酸半エステルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩等が挙げられる。非イオン系の乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアリルエーテル等が挙げられる。また、乳化剤の他の例として、分子内にラジカル重合性の不飽和二重結合を有する、(メタ)アクリル系、プロペニル系、アリル系、アリルエーテル系、マレイン酸系等の基を有する各種アニオン系、ノニオン系反応性乳化剤が挙げられる。
【0043】
乳化剤は、市販品を用いてもよい。市販品の例として、例えば、アントックス(Antox)MS-60(日本乳化剤社製)、エレミノールJS-2(三洋化成工業社製)、アデカリアソープSR-10(ADEKA社製)、アクアロンHS-10(第一工業製薬社製)等が挙げられる。
乳化剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
乳化重合において、メルカプタン系化合物や低級アルコール等の分子量調節のための助剤(連鎖移動剤)を、必要に応じて用いることができる。これらの助剤を用いることによって、乳化重合を好適に進行させることができ、また、塗膜の円滑かつ均一な形成を促進して塗膜の被塗物に対する密着性を向上させることができる。
【0045】
乳化重合としては、一段連続モノマー均一滴下法、多段モノマーフィード法であるコアシェル重合法、重合中にフィードするモノマー組成を連続的に変化させるパワーフィード重合法等、いずれの重合法も適宜選択することができる。
【0046】
得られたアクリル樹脂水分散体(A11)に対して中和剤を添加して、アクリル樹脂に含まれうる酸基の少なくとも一部を中和してもよい。中和によって、アクリル樹脂水分散体(A11)の安定性を向上させることができる。中和剤としては、塩基性化合物が挙げられる。塩基性化合物としては、例えば、アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジメチルエタノールアミン(ジメチルアミノエタノール)等の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等の無機塩基が挙げられる。中和剤として1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記ポリオール樹脂は、分子中に2以上の水酸基を有する樹脂であり、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。前記ポリオール樹脂としては、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールが好ましい。
【0048】
前記第1ベース塗料組成物中、前記ポリオール樹脂の固形分の含有量は、前記アクリル樹脂水分散体(A11)の固形分の合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上70質量部以下、より好ましくは5質量部以上50質量部以下、更に好ましくは10質量部以上30質量部以下であり得る。
前記第2ベース塗料組成物中、前記ポリオール樹脂の固形分の含有量は、前記アクリル樹脂水分散体(A11)の固形分の合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上90質量部以下、より好ましくは10質量部以上70質量部以下、更に好ましくは30質量部以上50質量部以下であり得る。
【0049】
ポリエステル樹脂水分散体は、例えば、多価アルコール成分と多塩基酸成分とを縮合し、塩基性化合物で水中に分散することにより、調製することができる。ポリウレタン樹脂水分散体は、例えば、ポリオール化合物と、分子内に活性水素基と親水基を有する化合物と、有機ポリイソシアネートとを、必要により鎖伸長剤および重合停止剤を用いてポリマー化し、得られたポリマーを水中に分散することによって、調製することができる。
【0050】
塗膜形成樹脂(A)の水酸基価は、好ましくは30mgKOH/g以上120mgKOH/g以下、より好ましくは35mgKOH/g以上100mgKOH/g以下である。前記範囲内であることで、硬化反応が十分に進行し、得られる塗膜の硬度が良好になるという利点がある。
【0051】
前記第1ベース塗料組成物中、前記ポリエステル樹脂水分散体の固形分の含有量は、前記アクリル樹脂水分散体(A11)の固形分の合計100質量部に対して、好ましくは10質量部以上90質量部以下、より好ましくは20質量部以上80質量部以下、更に好ましくは30質量部以上70質量部以下であり得る。
前記第2ベース塗料組成物中、前記ポリエステル樹脂水分散体の固形分の含有量は、前記アクリル樹脂水分散体(A11)の固形分の合計100質量部に対して、好ましくは20質量部以上80質量部以下、より好ましくは30質量部以上70質量部以下、更に好ましくは40質量部以上65質量部以下であり得る。
【0052】
前記塗膜形成樹脂(A1)の固形分の含有率は、水性第1ベース塗料組成物の固形分100質量%中、好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは15質量%以上85質量%以下、更に好ましく20質量%以上80質量%以下であり得る。
前記塗膜形成樹脂(A2)の固形分の含有率は、水性第2ベース塗料組成物の固形分100質量%中、好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは15質量%以上85質量%以下、更に好ましくは20質量%以上80質量%以下であり得る。
【0053】
(硬化剤(B))
前記硬化剤(B)は、塗膜形成樹脂(A)と反応し得る基を1分子中に2個以上有する化合物であり得、塗膜形成樹脂(A)とともに、塗膜形成成分に該当する。前記硬化剤(B)として、アミノ樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等)、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物及び金属イオンから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
硬化剤(B1)と、硬化剤(B2)とは、同一であっても、異なっていてもよい。
【0054】
一態様において、前記硬化剤(B)は、アミノ樹脂を含むことが好ましく、メラミン樹脂(B11)を含むことがより好ましい。メラミン樹脂(B11)を含むことで、メラミン樹脂(B11)の自己重合及びメラミン樹脂(B11)に含まれるアミノ基と塗膜形成樹脂(A)に含まれ得る水酸基との反応により、塗膜を形成することができる。
【0055】
メラミン樹脂(B11)は、メラミン等のアミノ化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド化合物との縮合体を、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールを用いて変性させることによって得られる。メラミン樹脂(B11)は、トリアジン核1分子中に反応性官能基として、以下の式で表される反応性官能基を3つ有する化合物又はその重縮合体であることが好ましい。
-NX1X2
[X1、X2は、それぞれ独立に、水素原子、メチロール基又は-CH2-OR1を表す。
R1は、炭素数1~8のアルキル基、好ましくは炭素数1~8の直鎖状又は分枝鎖状アルキル基を表す。
同一分子中に複数の-CH2-OR1が含まれる場合、複数のR1は、同一であっても異なっていてもよい。]
【0056】
メラミン樹脂としては、反応性官能基として-N(CH2OR1)2のみを含むフルアルキル型;反応性官能基として-N(CH2OR1)(CH2OH)を含むメチロール基型;反応性官能基として-N(CH2OR1)(H)を含むイミノ基型;反応性官能基として、-N(CH2OR1)(CH2OH)と-N(CH2OR1)(H)とを含む、又は、-N(CH2OH)(H)を含むメチロール/イミノ基型の4種類を例示することができる。前記フルアルキル型、メチロール基型、イミノ基型又はメチロール/イミノ基型メラミン樹脂において、R1は、炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、メチル基、n-ブチル基又はイソブチル基であることが好ましく、一態様において、メチル基とブチル基が混合していてもよく、別の態様においてメチル基のみであってよく、更に別の態様においてブチル基のみであってよい。
【0057】
メラミン樹脂として市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、サイメル202等のメチロール基・イミノ型メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂;サイメル204、サイメル211、サイメル250、サイメル254、マイコート212、マイコート518、マイコート525等のイミノ型メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂;サイメル350等の完全アルキル型メチル化メラミン樹脂;サイメル325、サイメル327、サイメル385、サイメル701、サイメル712、マイコート723、マイコート776等のイミノ基型メチル化メラミン樹脂;マイコート508等のイミノ基型ブチル化メラミン樹脂、サイメル370等のメチロール基型メチル化メラミン樹脂、マイコート2677等のメチロール基型メチル/イソブチル混合エーテル化メラミン樹脂(以上、オルネクスジャパン社製)等が挙げられる。
【0058】
前記メラミン樹脂(B11)の固形分の含有率は、前記硬化剤(B1)の固形分の総量100質量%中、0質量%であってもよく、好ましくは80質量%以上100質量%以下、より好ましくは90質量%以上100質量%以下、更に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。
前記メラミン樹脂(B11)の固形分の含有率は、前記硬化剤(B2)の固形分の総量100質量%中、0質量%であってもよく、好ましくは80質量%以上100質量%以下、より好ましくは90質量%以上100質量%以下、更に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。
【0059】
前記メラミン樹脂(B11)の含有量は、前記塗膜形成樹脂(A1)の固形分及び硬化剤(B1)の固形分の合計100質量部中、0質量部であってもよく、好ましくは10質量部以上90質量部以下、更に30質量部以上80質量部以下であってよい。これにより、得られる塗膜の硬度、密着性、耐水性等の諸物性が良好になるという利点がある。
前記メラミン樹脂(B11)の含有量は、前記塗膜形成樹脂(A2)の固形分及び硬化剤(B2)の固形分の合計100質量部中、0質量部であってもよく、好ましくは10質量部以上80質量部以下、更に30質量部以上70質量部以下であってよい。これにより、得られる塗膜の硬度、密着性、耐水性等の諸物性が良好になるという利点がある。
【0060】
ブロックイソシアネート化合物は、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等からなるポリイソシアネートに、活性水素を有するブロック剤を付加させることによって、調製することができる。このようなブロックイソシアネート樹脂は、加熱によりブロック剤が解離してイソシアネート基が発生し、前記樹脂成分中の官能基と反応して硬化する。
【0061】
水性第1ベース塗料組成物における硬化剤(B1)の固形分の含有率は、塗膜形成性樹脂(A1)の固形分及び硬化剤(B1)の固形分の合計100質量%中、好ましくは20質量%以上50質量%以下、より好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0062】
水性第2ベース塗料組成物における硬化剤(B2)の固形分の含有率は、塗膜形成性樹脂(A2)の固形分及び硬化剤(B2)の固形分の合計100質量%中、好ましくは20質量%以上50質量%以下、より好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0063】
(光輝性顔料(C))
光輝性顔料として、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム及びこれらの合金等の金属製光輝性顔料、そして、干渉マイカ顔料、ホワイトマイカ顔料、グラファイト顔料、ガラスフレーク顔料等が挙げられる。本開示の水性ベース塗料組成物においては、得られる複層塗膜の意匠性の観点から、前記光輝性顔料は、アルミニウム顔料を含むことが好ましい。
水性第1ベース塗料組成物に含まれる光輝性顔料(C1)と、水性第2ベース塗料組成物に含まれる光輝性顔料(C2)とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0064】
前記光輝性顔料(C1)の平均粒子径は、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは5μm以上25μm以下であり得る。前記光輝性顔料(C1)の平均厚さは、好ましくは0.01μm以上6μm以下、より好ましくは0.1μm以上5μm以下であり得る。
光輝性顔料(C1)の平均粒子径及び平均厚さが前記条件を満たすことによって、第1ベース塗膜に光輝性が付与され得る。
【0065】
前記光輝性顔料(C2)の平均粒子径は、17μm以上30μm以下、より好ましくは19μm以上25μm以下であり得る。前記光輝性顔料(C2)の平均厚さは、0.3μm以上6μm以下であり、好ましくは0.35μm以上6μm以下、より好ましくは0.5μm以上6μm以下、更に好ましくは0.5μm以上5μm以下、一層好ましくは0.5μm以上3μm以下である。
光輝性顔料(C2)の平均粒子径及び平均厚さが前記条件を満たすことによって、第2ベース塗膜、更には複層塗膜に粒子感の高い外観が付与され得る。
【0066】
本開示において、光輝性顔料(C)の平均粒子径は、平均長径を意味する。平均粒子径の測定は、光輝性顔料を、形状解析レーザーマイクロスコープ(例えばキーエンス社製 VK-X 250等)を用いて観察し、任意に選択した100個の顔料の最大長さ(長径)の数平均値を求めることによって測定することができる。
【0067】
また、本開示において、前記光輝性顔料の平均厚さtは、光輝性顔料1g当たりの水面拡散面積(WCA:m2/g)に基づき、以下の式により算出できる。
t(μm)=0.4/[WCA(m2/g)]
本開示において、水面拡散面積は、JIS K 5906に準拠して測定できる。
【0068】
前記光輝性顔料(C1)の水面拡散面積(WCA)は、好ましくは0.06m2/g以上40m2/g以下、より好ましくは0.08m2/g以上4m2/g以下であり得る。
前記光輝性顔料(C2)の水面拡散面積(WCA)は、1.4m2/g以下であり、好ましくは0.06m2/g以上1.1m2/g以下、より好ましくは0.08m2/g以上1m2/g以下、更に好ましくは0.08m2/g以上0.8m2/g以下であり得る。光輝性顔料(C2)の水面拡散面積が前記範囲にあることで、得られる塗膜により粒子感の高い外観が得られる。
【0069】
前記光輝性顔料(C)がアルミニウム顔料である場合は、必要に応じて表面処理が施されていてもよい。アルミニウム顔料に施すことができる表面処理として、例えば、金属酸化物系化合物を用いた表面処理、リン化合物を用いた表面処理、アミン化合物を用いた表面処理、シラン化合物を用いた表面処理等が挙げられる。
【0070】
前記金属酸化物系化合物として、例えば、構成金属として少なくとも遷移金属元素を含む金属酸化物及びそのアルカリ金属塩並びにそのアンモニウム塩等が挙げられる。具体的には、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アルカリ金属塩、モリブデン酸アンモニウム塩、バナジン酸、バナジン酸アルカリ金属塩、バナジン酸アンモニウム塩等が挙げられる。なお、前記アルカリ金属としては、特に限定されるものではないが、例えばナトリウム、カリウム等が挙げられる。中でも、前記金属酸化物系化合物としては、モリブデン酸、モリブデン酸アルカリ金属塩、モリブデン酸アンモニウム塩、バナジン酸、バナジン酸アルカリ金属塩及びバナジン酸アンモニウム塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属酸化物系化合物が用いられるのが好ましい。
【0071】
前記リン化合物として、例えば、有機リン酸エステル、有機亜リン酸エステル、有機ホスホン酸、及びこれらの化合物のアミン塩等が挙げられる。これらのリン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種又はそれ以上を併用してもよい。
【0072】
前記アミン化合物として、例えば、直鎖状又は分枝状一級アミン、直鎖状又は分枝状二級アミン、直鎖状又は分枝状三級アミン、脂環式一級アミン、脂環式二級アミン、脂環式三級アミン、芳香族基含有一級アミン、芳香族基含有二級アミン、芳香族基含有三級アミン等が挙げられる。これらのアミン化合物は、必要に応じて置換基(例えば水酸基等)を有してもよい。これらのアミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種又はそれ以上を併用してもよい。
【0073】
前記シラン化合物として、例えば、アルコキシシシラン化合物、ビニル基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、スチリル基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤、ウレイド基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤、酸無水物基含有シランカップリング剤、及びこれらの部分縮合物等が挙げられる。これらのシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種又はそれ以上を併用してもよい。
【0074】
前記表面処理は、当業者において通常用いられる処理条件により行うことができる。前記表面処理は1種のみを行ってもよく、2種又はそれ以上を併用してもよい。
【0075】
好ましい態様において、前記水性第1ベース塗料組成物に含まれ得る光輝性顔料(C1)がアルミニウム顔料であり、その平均粒子径が1~30μm、特に5~25μmであって、前記表面処理が施されている場合、形成される複層塗膜の塗膜外観を損なうことなく、水性第1ベース塗料組成物の安定性がより良好となる等の利点がある。
好ましい態様において、前記水性第2ベース塗料組成物に含まれ得る光輝性顔料(C2)がアルミニウム顔料であり、その平均粒子径が17~30μm、特に19~25μmであって、前記表面処理が施されている場合、形成される複層塗膜の塗膜外観を損なうことなく、水性第1ベース塗料組成物の安定性がより良好となる等の利点がある。
【0076】
前記光輝性顔料として市販品を用いてもよい。市販品として例えば、
アルペースト93-0647、06-0672、TCR-2020、MG1000等(いずれも東洋アルミニウム社製)、アルミペーストMH-9901等(旭化成社製)等が挙げられる。
【0077】
前記光輝性顔料(C1)は、塗膜形成樹脂(A1)の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上45質量部以下、より好ましくは2質量部以上35質量部以下であり得る。水性第1ベース塗料組成物における、前記光輝性顔料(C1)の顔料質量濃度は、好ましくは2質量%以上40質量%以下、より好ましくは2.5質量%以上35質量%、更に好ましくは3質量%以上30質量%以下であり得る。
なお、前記水性第1ベース塗料組成物は、光輝性顔料(C1)を含まなくともよく、一の態様において、前記水性第1ベース塗料組成物における光輝性顔料(C1)の顔料質量濃度は、0質量%であり得る。
【0078】
前記光輝性顔料(C2)は、塗膜形成樹脂(A2)の樹脂固形分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上50質量部以下、より好ましくは5質量部以上45質量部以下であり得る。水性第2ベース塗料組成物における、前記光輝性顔料(C2)の顔料質量濃度は、2質量%以上40質量%以下であり、好ましくは3質量%以上35質量%以下、より好ましくは4質量%以上30質量%、更に好ましくは4質量%以上25質量%以下であり得る。前記範囲にあることで、粒子感及び均一性の高い塗膜が得られるという利点がある。
【0079】
本開示の水性ベース塗料組成物は、水性媒体を含む。本開示における水性媒体は、水;親水性溶媒;水と親水性溶媒との混合物であってよい。前記親水性溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、等のグリコールエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶剤;アセトン等のケトン系溶剤;N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0080】
(その他の成分)
水性ベース塗料組成物は、前記成分に加えて、塗膜性能及び塗膜外観に影響を及ぼさない範囲で、当業者において通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。前記添加剤としては、例えば、体質顔料、着色顔料、防錆顔料等の顔料;タレ止め・沈降防止剤;硬化触媒(有機金属触媒);色分かれ防止剤;分散剤;消泡・ワキ防止剤;表面調整剤;粘性調整剤;増粘剤;レベリング剤;ツヤ消し剤;酸化防止剤;紫外線防止剤;可塑剤;造膜助剤;消泡剤;リン酸基含有有機化合物等が挙げられる。
【0081】
(粘性調整剤(D)
本開示の水性ベース塗料組成物は、粘性調整剤(D)を含むことが好ましい。粘性調整剤を含むことで、水性ベース塗料組成物にチクソトロピー性が付与され、塗装作業性が良好になり、得られる複層塗膜の外観が良好になり得る。
【0082】
粘性調整剤としては、有機系粘性調整剤及び無機系粘性調整剤が挙げられ、有機系粘性調整剤としては、例えば、架橋あるいは非架橋の樹脂粒子;脂肪酸アマイドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノアマイドのリン酸塩等のポリアマイド系粘性調整剤;酸化ポリエチレンのコロイド状膨潤分散体等のポリエチレン系粘性調整剤が挙げられる。無機系粘性調整剤としては、有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイト等の有機ベントナイト粘性調整剤等が挙げられる。
【0083】
粘性調整剤(D)は、無機系粘性調整剤を含むことがより好ましく、無機系層状化合物(D-1)を含むことがより好ましい。前記無機系層状化合物(D-1)は、無機結晶層が多数積み重なった積層構造を有する層状物であることが好ましい。特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、このように層状構造を有する無機系層状化合物(D-1)は、塗料組成物中で膨潤し、塗料組成物中においてカードハウス構造を形成すると考えられる。そのため、塗料組成物に適度な粘度をもたらし、優れた塗膜強度をもたらすばかりでなく、第1ベース塗膜又は第2ベース塗膜形成の際、光輝性顔料(C)の沈降を抑制するとともに、配向を補助し、より粒子感の高い外観を塗膜に付与し得ると考えられる。
【0084】
無機系層状化合物(D-1)の一次粒子の形状としては、円盤状、板状、球状、粒状、立方状、針状、棒状及び無定形等が挙げられ、円盤状又は板状のものが好ましい。
【0085】
本開示における無機系層状化合物(D-1)は、層状シリケート(ケイ酸塩鉱物)、ハロゲン化鉱物、酸化鉱物、炭酸塩鉱物、ホウ酸塩鉱物、硫酸塩鉱物、モリブデン酸塩鉱物、タングステン酸塩鉱物、リン酸塩鉱物、ヒ酸塩鉱物、バナジン酸塩鉱物等が含まれる。塗料組成物に適度な粘度及び優れた塗膜強度をもたらし得ることから、層状シリケートが好ましい。
【0086】
層状シリケートの具体例には、天然又は合成の、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、ハイデライト、モンモリロナイト、ノントライト、ベントナイト等のスメクタイト属粘土鉱物や、Na型テトラシリシックフッ素雲母、Li型テトラシリシックフッ素雲母、Na型フッ素テニオライト、Li型フッ素テニオライト等の膨潤性雲母属粘土鉱物及びバーミキュラライトやカオリナイト、又はこれらの混合物が含まれる。
【0087】
無機系層状化合物(D-1)の市販品の例には、ラポナイトXLG(合成ヘクトライト類似物質、BYK社製)、ラポナイトRD(合成ヘクトライト類似物質、BYK社製)、ラポナイトEP(合成ヘクトライト類似物質、BYK社製)、オプティゲルWX(Na置換型ベントナイト、BYK社製)、サーマビス(合成ヘクトライト類似物質、ヘンケル社製)、スメクトンSA-1(サポナイト類似物質、クニミネ工業社製)、ベンゲル(天然ベントナイト、ホージュン社製)、クニビアF(天然モンモリロナイト、クニミネ工業社製)、ビーガム(天然ヘクトライト、バンダービルド社製)、ダイモナイト(合成膨潤性雲母、トピー工業社製)、ソマシフ(合成膨潤性雲母、コープケミカル社製)、SWN(合成スメクタイト、コープケミカル社製)、SWF(合成スメクタイト、コープケミカル社製)等が含まれる。
【0088】
本開示の水性第1ベース塗料組成物における無機系層状化合物(D-1)の含有量は、塗膜形成樹脂(A1)の固形分と硬化剤(B1)の固形分の合計(以下、塗膜形成樹脂(A1)の固形分と硬化剤(B1)の固形分の合計を、「水性第1ベース塗料組成物の樹脂固形分」ともいう)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上7質量部以下、より好ましくは2質量部以上7質量部以下、更に好ましくは2質量部以上5質量部以下であり得る。無機系層状化合物(D1)の含有量が前記範囲にあることで、塗料組成物の粘性挙動がより適切であり、得られる塗膜において、より均一性の高い、すなわちメタリックムラの抑制された外観が得られやすいと考えられる。
【0089】
本開示の水性第2ベース塗料組成物における無機系層状化合物(D-1)の含有量は、塗膜形成樹脂(A2)の固形分と硬化剤(B2)の固形分の合計(以下、塗膜形成樹脂(A2)の固形分と硬化剤(B2)の固形分の合計を、「水性第2ベース塗料組成物の樹脂固形分」ともいう)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上10質量部以下、より好ましくは2質量部以上8質量部以下、更に好ましくは2質量部以上6質量部以下であり得る。無機系層状化合物(D-1)の含有量が前記範囲にあることで、塗料組成物の粘度がより良好であり、得られる塗膜において、より均一性の高い、すなわちメタリックムラの抑制された外観が得られやすいと考えられる。
【0090】
前記着色顔料としては、特に限定されず、例えば、アゾキレート系顔料、アゾメチンアゾ系顔料、アゾレーキ顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、モノアゾ系顔料、インダンスロン系顔料、ジスアゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリノン系顔料、ナフトール系顔料、ピラゾロン系顔料、アンサンスロン系顔料、アントラキノン系顔料、アンソラピリミジン系顔料、金属錯体顔料等の有機系着色顔料;黄鉛、酸化鉄、黄色酸化鉄、透明酸化鉄、鉄黒(アイアンブラック)、鉄クロム、ビスマスマンガン、ビスマスバナデート、酸化クロム、モリブデートオレンジ、ベンガラ、チタンイエロー、亜鉛華、亜鉛黄(ジンクイエロー)、オーカー、カーボンブラック、二酸化チタン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、コバルトバイオレット等の無機系着色顔料;グラファイト顔料、その他の着色、有色偏平顔料等が挙げられる。
前記着色顔料は、有彩色であっても無彩色であってもよく、赤、青、黄、緑、紫、茶、白、黒、グレー等の色であり得る。
前記体質顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、珪酸マグネシウム、クレー、タルク、シリカ、焼成カオリン等が挙げられる。
【0091】
前記顔料としては、耐候性を向上させ、且つ隠蔽性を確保する点から、着色顔料であることが好ましい。特に二酸化チタンは着色隠蔽性に優れ、しかも安価であることから、より好ましい。また顔料として、カーボンブラックと二酸化チタンとを主要顔料とした標準的なグレーの塗料組成物であってもよい。他にも、水性第2ベース塗料組成物と明度又は色相等を合わせた塗料組成物及び各種の着色顔料を組み合わせた塗料組成物であってもよい。本開示の水性第1ベース塗料組成物は、第2ベース塗料組成物を塗装する際のプライマーとして作用し得、着色顔料を含むことで、カラーベースとしても作用し得る。
【0092】
前記光輝性顔料(C)及び前記顔料は、顔料分散ペーストとしたうえで、水性ベース塗料組成物の調製に用いられてもよい。顔料分散ペーストは、顔料と顔料分散剤と必要に応じて用いる塗膜形成樹脂(A)の一部とを少量の水性媒体に予め分散して得られる。顔料分散剤は、顔料親和部分及び親水性部分を含む構造を有する樹脂であってよい。顔料親和部分及び親水性部分としては、例えば、ノニオン性、カチオン性及びアニオン性の官能基を挙げることができる。顔料分散剤は、1分子中に前記官能基を2種類以上有していてもよい。
【0093】
ノニオン性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、ポリオキシアルキレン基等が挙げられる。カチオン性官能基としては、例えば、アミノ基、イミノ基、ヒドラジノ基等が挙げられる。また、アニオン性官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられる。このような顔料分散剤は、当業者にとってよく知られた方法によって製造することができる。
【0094】
顔料分散剤は、その固形分中に揮発性の塩基性物質を含まないか、又は3質量%以下の含有量であるものであれば特に限定されないが、少量の顔料分散剤によって効率的に顔料を分散することができるものが好ましい。顔料分散剤は、市販品を用いてもよい。市販品の例として、例えば、アニオン・ノニオン系分散剤であるDisperbyk-180、Disperbyk-190(いずれもビックケミー社製)、EFKAPOLYMER4550(BASF社製)、EFKAPOLYMER4585(BASF社製)、ノニオン系分散剤であるソルスパース27000(アビシア社製)、アニオン系分散剤であるソルスパース41000、ソルスパース53095(いずれもアビシア社製)、高分子共重合物としてDisperbyk-2015(いずれもビックケミー社製)等を挙げることができる。
【0095】
顔料分散剤の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上100,000以下、より好ましくは2,000以上100,000以下、更に好ましくは、4,000以上50,000以下である。
【0096】
顔料分散ペーストは、顔料分散剤と顔料と必要に応じて用いる塗膜形成樹脂(A1)の一部とを公知の方法に従って混合分散することによって調製することができる。顔料分散ペースト製造時の顔料分散剤の割合は、顔料分散ペーストの固形分に対して、1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。顔料分散剤の割合が前記範囲内であることによって、顔料分散安定性及び得られる塗膜物性をより良好な範囲に保つことができる。顔料分散剤の前記割合は、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0097】
水性ベース塗料組成物において、前記顔料の顔料質量濃度(水性第1ベース塗料組成物又は水性第2ベース塗料組成物の樹脂固形分と顔料との合計質量に対する顔料の質量の比(PWC))は、10質量%以上60質量%以下であることが好ましい。PWCを10質量%とすることにより、隠蔽性を高めることがより容易となる。PWCを60質量%以下とすることにより、硬化時の粘性増大をより容易に抑制できるため、フロー性を確保して良好な塗膜外観を得ることがより容易となる。
【0098】
前記増粘剤としては、例えば、会合型ノニオン系ウレタン増粘剤、アルカリ膨潤型増粘剤、無機系の層間化合物であるベントナイト等が挙げられる。
【0099】
水性第1ベース塗料組成物において、固形分濃度(固形分の合計の含有率)は、15質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは18質量%以上35質量%以下、より好ましくは20質量%以上30質量%以下である。
水性第2ベース塗料組成物において、固形分濃度は、5質量%以上20質量%以下であり、好ましくは8質量%以上18質量%以下、より好ましくは10質量%以上15質量%以下である。水性第2ベース塗料組成物の固形濃度は、水性第1塗料組成物の固形分の合計の含有率よりも小さいことが好ましい。
【0100】
また、水性第2ベース塗料組成物における固形分濃度に対する、前記水性第1ベース塗料組成物における固形分濃度の比は(水性第1ベース塗料組成物の固形分含有率/水性第2ベース塗料組成物の固形分含有率)は、質量基準で、1超であり、好ましくは1.1以上8以下、より好ましくは1.2以上6以下、更に好ましくは1.5以上5以下、一層好ましくは2以上4以下である。水性第1ベース塗料組成物及び水性第2ベース塗料組成物に含まれる固形分濃度の比が前記範囲にあることで、光輝性顔料(C2)の配向性が良好になり得、粒子感の高い外観と平滑性とを両立した複層塗膜を得ることができる。
【0101】
<水性第1ベース塗料組成物又は水性第2ベース塗料組成物の製造方法>
前記水性第1ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A1)及び硬化剤(B1)と、必要に応じて用いる光輝性顔料(C1)、他の成分及び添加剤等とを、ディスパー、ホモジナイザー、ニーダー等を用いて混練・分散する等の当業者において通常用いられる方法で製造することができる。
また、前記水性第2ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A1)、硬化剤(B1)及び光輝性顔料(C1)と、必要に応じて用いる他の成分及び添加剤等とを、ディスパー、ホモジナイザー、ニーダー等を用いて混練・分散する等の当業者において通常用いられる方法で製造することができる。
前記製造方法において、例えば、光輝性顔料(C)及び必要に応じた顔料分散剤を含むペーストを予め調製し、混合するのが好ましい。顔料分散剤として、前記の市販の顔料分散剤等を用いることができる。
【0102】
<複層塗膜>
本開示の複層塗膜は、被塗物上に順次形成された、第1ベース塗膜と第2ベース塗膜とを有し、第2ベース塗膜上に形成されたクリヤー塗膜を更に有していてもよい。
なお、本開示において、未硬化の膜を塗装膜ともいい、硬化後の膜と塗膜ともいう。すなわち、未硬化の第1又は第2ベース塗装膜を硬化させることで、第1又は第2ベース塗膜を得ることができる。
【0103】
本開示の複層塗膜の粒状性値(G値)は、好ましくは9以上15以下、より好ましくは9.5以上14以下、更に好ましくは10以上13以下であり得る。本開示の複層塗膜において、粒状性値(G値)が9以上15以下であることによって、塗膜形成樹脂及び鱗片状顔料を含む塗料組成物を用いて硬化塗膜を形成する場合において、従来の塗膜と比較して輝度の粒状感が高く、独特な意匠を有する塗膜が形成されることが示されることとなる。また、複層塗膜の粒状性値(G値)が高い場合、メタリックムラが発生しやすくなり、複層塗膜表面の平滑性が低下する傾向にあるが、本開示の製造方法によれば、高い粒状性値(G値)を有し、且つ、平滑性が良好な複層塗膜を得ることができる。
【0104】
粒状性値(G値)は、拡散照明測定により粒状性を数値化した値である。粒状性値(G値)は、白色塗装された半球内の拡散照明の下でCCDチップにより画像を習得し、習得された画像を明るさレベルのヒストグラムを用いて分析し、明暗領域の均一性を1つの粒状性を示す値として示す数値である。粒状性値(G値)は0~30の範囲で表され、数値が小さいほど微細であり、大きいほど粒状であることを示す。
【0105】
前記粒状性値(G値)は、光輝感測定機を用いて測定することができる。これらを測定することができる光輝感測定機として、例えばBYK-mac i(BYK Gardner社製)等が挙げられる。
【0106】
複層塗膜のMe値は、11~24mmのモットルサイズについて、好ましくは7以下、より好ましくは6以下であり、1以上であってもよい。
【0107】
Me値は、光輝性顔料(C)の配向が十分に均一でないことや、ベースコートの塗膜厚さが均一でないこと等に起因して、色調やコントラストが不均一なまだら模様が発生する現象(モットリング)を評価するための指標である。モットリングの評価は、試料表面を、10cmから100cmの間の距離でスキャンし、各地点において、試料の表面に対して垂直な方向から15°の角度で白色LED光を照射し、正反射光からの角度が15°、45°及び60°の観察角度において、明度を検出することにより実施される。各観察角度における明度変化のプロファイルを波長分割し、異なる6つのモットルサイズ(Md:6~13mm、Me:11~24mm、Mf:19~42mm、Mg:33~72mm、Mh:57~126mm、Mi:100~200mm)について、0~10のMe値を算出する。Me値が大きいほど、そのモットルサイズの領域のまだら模様が目立ちやすいことを意味する。メタリックムラと相関の高いモットルサイズは、11~24mmであり、本開示では、かかるモットルサイズについて、Me値を評価することとした。
【0108】
<複層塗膜の製造方法>
本開示の複層塗膜の製造方法は、
被塗物上に、水性第1ベース塗料組成物を塗装して、第1ベース塗装膜を形成する第1ベース塗装膜形成工程と、
前記第1ベース塗装膜の上に水性第2ベース塗料組成物を塗装して、第2ベース塗装膜を形成する第2ベース塗装膜形成工程と、
少なくとも、前記第1ベース塗装膜及び第2ベース塗装膜を同時に加熱硬化させて複層塗膜を形成する加熱硬化工程と、を含む。
【0109】
本開示の複層塗膜の製造方法では、水性第1ベース塗料組成物を塗装し、第1ベース塗装膜が未硬化の状態で、水性第2ベース塗料組成物をウェットオンウェットで塗装し、第2ベース塗装膜を形成し、次いで、未硬化の第1ベース塗装膜及び第2ベース塗装膜を同時に加熱硬化させる。ウェットオンウェット塗装を実施することにより、第2ベース塗装膜に含まれる水性媒体の一部が第1ベース塗装膜に移動することにより体積収縮が促されて、光輝性顔料(C2)の配向が良好になると考えられ、粒子感の高い外観と平滑性とを有する塗膜が得られる。前記ウェットオンウェット塗装においては、塗装間、すなわち第1ベース塗装膜形成工程と第2ベース塗装膜形成工程との間、或いは、第2ベース塗装膜形成工程と加熱硬化工程との間に、必要に応じてプレヒート及び/又は常温乾燥を行ってもよい。
【0110】
(被塗物)
複層塗膜の形成において用いられる被塗物としては、種々の基材、例えば金属成型品、プラスチック成型品、発泡体等に用いることができる。本開示の水性ベース塗料組成物は、自動車車体、自動車部品等の、自動車外板塗装において好適に用いることができる。金属成型品として、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等、及びこれらの金属を含む合金による板、成型物を挙げることができ、具体的には、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体及び部品を挙げることができる。
【0111】
上記金属成型品は、予めリン酸塩、ジルコニウム塩、クロム酸塩等で化成処理され、次いで電着塗膜が形成されていてもよい。電着塗膜の形成に用いることができる電着塗料組成物として、カチオン電着塗料組成物及びアニオン電着塗料組成物を挙げることができる。
【0112】
上記プラスチック成型品として、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等の板及び成型物等を挙げることができる。プラスチック成型品の具体例として、スポイラー、バンパー、ミラーカバー、グリル、ドアノブ等の自動車部品等を挙げることができる。これらのプラスチック成型品は、静電塗装を可能にするためのプライマー塗装が施されていてもよい。
【0113】
上記被塗物上には更に必要に応じて、中塗り塗膜が形成されていてもよい。中塗り塗膜の形成には中塗り塗料組成物が用いられる。中塗り塗料組成物として、例えば、塗膜形成性樹脂、硬化剤、有機計及び/又は無機系の各種着色成分及び体質顔料等を含む塗料組成物を用いることができる。塗膜形成性樹脂及び硬化剤は、特に限定されるものではなく、具体的には、上記水性塗料組成物で挙げた塗膜形成性樹脂及び硬化剤等を用いることができる。中塗り塗料組成物の塗膜形成樹脂として、得られる中塗り塗膜の諸性能等の観点から、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂と、アミノ樹脂及び/又はイソシアネートとの組み合わせが好適に用いられる。
【0114】
前記第1塗料組成物及び第2塗料組成物は、塗料分野において一般的に用いられる手法によって、被塗物に対して塗装することができる。塗装方法として例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電スプレー塗装、エアー静電スプレー塗装による多ステージ塗装(好ましくは2ステージ塗装)、エアー静電スプレー塗装と回転霧化式の静電塗装機とを組み合わせた塗装等が挙げられる。
【0115】
前記第1塗料組成物、第2塗料組成物を塗装して加熱硬化させる場合における加熱温度及び時間は、塗料組成物の組成(水性又は溶剤型)及び被塗物の種類に応じて適宜選択することができる。加熱温度は例えば80~180℃の範囲、好ましくは100~160℃の範囲等で適宜選択することができる。加熱時間は、例えば5分~60分、好ましくは10分~30分の範囲等で適宜選択することができる。
第1ベース塗装膜、或いは、第2ベース塗装膜をプレヒートする際の温度は、例えば30~80℃であってよく、プレヒートの時間は、例えば1分~60分であってよい。
【0116】
前記第1塗料組成物は、硬化後の第1ベース塗膜の乾燥膜厚t1が8~20μmの範囲内となるように塗装するのが好ましく、10~14μmとなるように塗装するのがより好ましい。また第2塗料組成物は、硬化後の第2ベース塗膜t2の乾燥膜厚が0.1~8μmの範囲内となるように塗装するのが好ましい。
【0117】
また、前記水性第1ベース塗料組成物の塗装及び前記水性第2ベース塗料組成物の塗装は、前記第1ベース塗膜の乾燥膜厚t1と前記第2ベース塗膜の乾燥膜厚t2との比t1/t2が、1.6以上7以下となるように実施されることが好ましく、1.8以上6以下となるように実施されることがより好ましい。前記比t1/t2が前記範囲にあることで、光輝性顔料(C2)の配向性が良好になり得、より粒子感が高く、より平滑な複層塗膜を得ることが容易となる。
【0118】
本開示の複層塗膜の製造方法は、第2ベース塗装膜形成工程と加熱硬化工程との間に、第2ベース塗装膜の上にクリヤー塗料を塗装して、クリヤー塗装膜を形成する、クリヤー塗装膜形成工程を更に含んでいてもよい。すなわち、未硬化の第2ベース塗装膜を加熱硬化させることなくその上にクリヤー塗料をウェットオンウェットで塗装して、未硬化のクリヤー塗装膜を形成する。クリヤー塗装膜形成工程を含む場合、加熱硬化工程では、未硬化の第1ベース塗装膜、第2ベース塗装膜及びクリヤー塗装膜を同時に加熱硬化させて、複層塗膜を形成する。クリヤー塗膜を形成することで、ベース塗装膜に起因する凹凸等を平滑にし、保護し、更に美観を与え得る。
【0119】
クリヤー塗装膜を形成するためのクリヤー塗料は、特に限定されず、塗膜形成性樹脂及び硬化剤等を含有するクリヤー塗料を利用できる。下地の意匠性を妨げない程度で有れば着色成分を更に含有することもできる。また、所望のツヤ(光沢値、例えば、フルグロスからフルマット)の塗膜を得るためにツヤ消し剤を含有することもできる。クリヤー塗料の形態としては、溶剤型、水性型及び粉体型が挙げられる。本開示の複層塗膜の製造方法では、光輝性顔料(C)の配向性が良好であり、マットな(ツヤ消し剤を含む)クリヤー塗料を用いた場合でも、粒子感の高い外観を有する複層塗膜が得られる。
【0120】
溶剤型クリヤー塗料の好ましい例としては、透明性あるいは耐酸エッチング性等の観点から、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂と、アミノ樹脂及び/又はイソシアネートとの組み合わせ、あるいはカルボン酸/エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0121】
水性型クリヤー塗料の例としては、前記溶剤型クリヤー塗料の例として挙げたものに含有される塗膜形成性樹脂を、塩基で中和して水性化した樹脂を含有するものが挙げられる。この中和は、重合の前又は後に、ジメチルエタノールアミン及びトリエチルアミンのような3級アミンを添加することにより行うことができる。
【0122】
粉体型クリヤー塗料としては、熱可塑性及び熱硬化性粉体塗料のような通常の粉体塗料を用い得ることができる。良好な物性の塗膜が得られるため、熱硬化性粉体塗料が好ましい。熱硬化性粉体塗料の具体的なものとしては、エポキシ系、アクリル系及びポリエステル系の粉体クリヤー塗料等が挙げられるが、耐候性が良好なアクリル系粉体クリヤー塗料が特に好ましい。
【0123】
クリヤー塗料には、塗装作業性を確保するために、粘性制御剤が添加されていることが好ましい。粘性制御剤は、一般にチクソトロピー性を示すものを使用できる。このようなものとして、例えば、従来から公知のものを使用することができる。クリヤー塗料は、必要により、硬化触媒、表面調整剤等を含むことができる。
【0124】
第2ベース塗膜上に、クリヤー塗料を塗装する方法としては、マイクロマイクロベル、マイクロベルと呼ばれる回転霧化式の静電塗装機による塗装方法が挙げられる。
【0125】
前記クリヤー塗料は、乾燥膜厚が、例えば10μm以上80μm以下、好ましくは20μm以上60μmとなるように塗装することが好ましい。前記乾燥膜厚が10μm以上であると下地の凹凸を十分に隠蔽することができ、80μm以下であると塗装時のワキあるいはタレ等の不具合を抑制できる。
【0126】
クリヤー塗塗装膜形成工程を含む場合、加熱硬化工程における加熱硬化温度は、硬化性及び得られる複層塗膜の物性の観点から、80~180℃であることが好ましく、120~160℃であることがより好ましい。加熱硬化時間は前記温度に応じて任意に設定することができ、加熱硬化温度80℃~160℃で時間が10~30分であることが適当である。
【0127】
本開示では、未硬化の第1ベース塗装膜、未硬化の第2ベース塗装膜及び必要に応じて形成される未硬化のクリヤー塗膜を形成し、少なくとも、第1ベース塗装膜及び第2ベース塗装膜を同時に加熱硬化させているが、本開示の製造方法に用いられる水性第1ベース塗料組成物及び水性第2ベース塗料組成物は、かかる製造方法に限定されず用いることができ、例えば、以下の1~2の態様で用いられてもよい。
(態様1)
被塗物上に、水性第1ベース塗料組成物を塗装して第1ベース塗装膜を形成した後、前記第1ベース塗装膜を加熱硬化して第1ベース塗膜とする。次いで、第1ベース塗膜上に、水性第2ベース塗料組成物を塗装して、第2ベース塗装膜を形成した後、前記第1ベース塗装膜を加熱硬化して、第2ベース塗膜とする。かかる態様において、第1ベース塗装膜及び/又は第2ベース塗装膜を常温乾燥させてもよい。
(態様2)
被塗物上に、水性第1ベース塗料組成物を塗装して第1ベース塗装膜を形成した後、前記第1ベース塗装膜を加熱硬化して第1ベース塗膜とする。次いで、第1ベース塗膜上に、水性第2ベース塗料組成物を塗装して、第2ベース塗装膜を形成した後、前記第1ベース塗装膜を加熱硬化して、第2ベース塗膜とする。更に、第2ベース塗膜上に、クリヤー塗料組成物を塗装して、クリヤー塗装膜を形成した後、前記クリヤー塗装膜を加熱乾燥して、クリヤー塗膜とする。かかる態様において、第1ベース塗装膜及び/又は第2ベース塗装膜を常温乾燥させてもよい。
【実施例】
【0128】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0129】
<製造例1:アクリル樹脂水分散体(A11-1)の調製>
ステンレス容器に、第1モノマーとしてスチレン20.0質量部、メタクリル酸メチル30.0質量部、アクリル酸エチル10.7質量部、メタクリル酸エチル10.0質量部、メタクリル酸i-ブチル10.0質量部、メタクリル酸n-ブチル10.0質量部及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル9.3質量部をかくはん混合後、乳化剤としてアクアロンHS-10 25.0質量部、アデカリアソープNE-20 5.0質量部と脱イオン水80.0質量部を添加し、ホモミキサーを用いて、室温で15分間かくはんし、第1モノマー乳化混合物190.0質量部を得た。
【0130】
別のステンレス容器に、第2モノマーとしてメタクリル酸メチル12.7質量部、アクリル酸エチル40.0質量部、メタクリル酸i-ブチル30.0質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル5.0質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル2.1質量部及びアクリル酸10.3質量部をかくはん混合後、乳化剤としてアクアロンHS-10 2.0質量部と脱イオン水50.0質量部を添加し、ホモミキサーを用いて、室温で15分間かくはんし、第2モノマー乳化混合物152.0質量部を得た。
【0131】
かくはん機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を取り付けた反応容器に、脱イオン水126.6質量部を入れ、窒素気流中で混合かくはんしながら反応容器中の温度を80℃に昇温した。次いで、前記第1モノマー乳化混合物950.0質量部と、反応開始剤として過硫酸アンモニウム1.20質量部及び脱イオン水500.0質量部からなる開始剤溶液を別々の滴下ロートから、同時に1.5時間かけて滴下した。滴下が終了してから反応容器中の温度を80℃で1時間維持した。
更に、前記第2モノマー乳化混合物152.0質量部と、反応開始剤として過硫酸アンモニウム0.6質量部及び脱イオン水20.0質量部からなる開始剤溶液を別々の滴下ロートから、同時に1.5時間かけて滴下した。滴下が終了してから反応容器中の温度を80℃で2時間維持した。
その後、40℃まで冷却し、400メッシュフィルターで濾過した後、脱イオン水20.0質量部及びジメチルアミノエタノール0.3質量部を加えpH6.5に調整し、アクリル樹脂水分散体(A11-1)を得た(コアシェル型、平均粒子径:100nm、固形分酸価:40mgKOH/g、固形分水酸基価:25mgKOH/g、固形分濃度:30質量%)。
【0132】
<製造例2:アクリル樹脂水分散体(A11-3)の調製>
ステンレス容器に、モノマーとしてスチレン24.0質量部、メタクリル酸メチル40.0質量部、メタクリル酸n-ブチル16.0質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル70.0質量部、メタクリル酸2-エチルヘキシル30.9質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル16.6質量部及びアクリル酸2.6質量部をかくはん混合後、乳化剤としてアデカリアソープSR-10(ポリオキシエチレン-1-アルコキシメチル-2-(2-プロペニルオキシ)エチルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ADEKA社製)2.2質量部と脱イオン水160.0質量部を添加し、ホモミキサーを用いて、室温で15分間かくはんし、モノマー乳化混合物362.2質量部を得た。
【0133】
かくはん機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に、脱イオン水253.0質量部を入れ、窒素気流中で混合かくはんしながら反応容器中の温度を80℃に昇温した。次いで、前記モノマー乳化混合物362.2質量部と、反応開始剤として過硫酸アンモニウム0.6質量部及び脱イオン水20.0質量部からなる開始剤溶液を別々の滴下ロートから、同時に2時間かけて滴下した。滴下が終了してから反応容器中の温度を80℃で2時間維持した後、40℃まで冷却し、400メッシュフィルターで濾過した後、脱イオン水40.0質量部及びジメチルアミノエタノール0.6質量部を加えpH6.5に調整し、アクリル樹脂水分散体(A11-3)を得た(単層、平均粒子径:150nm、固形分酸価:10mgKOH/g、固形分水酸基価:40mgKOH/g、固形分濃度:30質量%)。
【0134】
<製造例3:アクリル樹脂水分散体(A11-2)の調製>
第1モノマー及び第2モノマー配合量を表1に記載の量に変更したこと以外は製造例1と同様にして、アクリル樹脂水分散体(A11-2)を得た(コアシェル型、平均粒子径:150nm、固形分酸価:10mgKOH/g、固形分水酸基価:40mgKOH/g、固形分濃度:30質量%)。
【0135】
<製造例4:アクリル樹脂水分散体(A11-4)の調製>
モノマー配合量を表1に記載の量に変更したこと以外は製造例2と同様にして、アクリル樹脂水分散体(A11-4)を得た(単層型、平均粒子径:200nm、固形分酸価:40mgKOH/g、固形分水酸基価:0mgKOH/g、固形分濃度:30質量%)。
【0136】
【0137】
<製造例:リン酸基含有有機化合物の調製>
かくはん機、温度調整器、冷却管を備えた反応容器にエトキシプロパノール40質量部を仕込み、これにスチレン4質量部、n-ブチルアクリレート35.96質量部、エチルヘキシルメタアクリレート18.45質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート13.92質量部、メタクリル酸7.67質量部、エトキシプロパノール20質量部に、ホスマーPP(ユニケミカル社製アシッドホスホオキシヘキサ(オキシプロピレン)モノメタクリレート)20質量部を溶解した溶液40質量部、及びアゾビスイソブチロニトリル1.7質量部からなるモノマー溶液121.7質量部を120℃で3時間滴下した後、1時間更にかくはんを継続した。得られたリン酸基含有有機化合物は、酸価105mgKOH/g、うちリン酸基価55mgKOH/g、水酸基価60mgKOH/g、数平均分子量6,000、不揮発分が63%であった。
また本開示において、リン酸基含有有機化合物の酸価及びリン酸基価の算出は、JIS K5601 2-1の酸価の定義(試料(不揮発物)1g中の遊離酸を中和するのに要する、水酸化カリウム(KOH)のmg数)に基づいて計算を行って求めた。また水酸基価の算出は、JIS K 0070の水酸基価の定義(試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数)に基づいて計算を行って求めた。
【0138】
<水性ベース塗料組成物の調製>
<製造例:着色顔料分散ペーストの調製>
着色顔料であるシャニンブルーG314 16質量部、顔料分散剤であるDispex Ultra PA 4550(BASF社製) 39質量部、イオン交換水44質量部、消泡剤であるBYK-011 0.9質量部を、ディスパーを用いて予備混合した後、SGミル(分散媒:ジルコンビーズ)を用いて、3,000rpmで5時間分散処理を行い、ジルコンビーズを濾別し、着色顔料ペースト(顔料質量濃度(PWC):44質量%、固形分濃度:36質量%)を得た。
【0139】
<水性第1ベース塗料組成物の調製>
製造例1のアクリル樹脂水分散体(A11-1)35質量部、ポリオール樹脂(A12)5質量部、ポリエステル樹脂(A13)15質量部、ジメチルアミノエタノール2質量部、硬化剤(B11-1)40質量部、硬化剤(B11-2)5質量部、前記着色顔料分散ペースト20質量部、光輝性顔料(C1-1)3質量部、製造例2のリン酸基含有有機化合物5質量部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4質量部、ブチルセロソルブ50質量部、ノイゲンEA-207D(両親媒性化合物、第一工業製薬社製、数平均分子量4,200、固形分55%) 5.5質量部(固形分換算で3質量部)、リノール酸(キシダ化学社製)3質量部を均一分散してpHが8.1となるようジメチルアミノエタノールを添加し、脱イオン水で希釈して、水性第1ベース塗料組成物(固形分濃度:30.0質量%)を調製した。
【0140】
<水性第2ベース塗料組成物の調製>
製造例1のアクリル樹脂エマルション(A11-1)30質量部、ポリオール樹脂(A12)10質量部、ポリエステル樹脂(A13)15質量部、ジメチルアミノエタノール2質量部、硬化剤(B11-1)45質量部、前記水性第1ベース塗料組成物の調製において調製した着色顔料分散ペースト 5質量部、光輝性性顔料(C1-1)30質量部、製造例2のリン酸基含有有機化合物5質量部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4質量部、ブチルセロソルブ50質量部、ノイゲンEA-207D(両親媒性化合物、第一工業製薬社製、数平均分子量4,200、固形分55%) 5.5質量部(固形分換算で3質量部)、リノール酸(キシダ化学社製)3質量部を均一分散してpHが8.1となるようジメチルアミノエタノールを添加し、脱イオン水で希釈して、水性第2ベース塗料組成物(固形分濃度:10質量%)を調製した。
【0141】
<複層塗膜の形成方法>
リン酸亜鉛処理した厚み0.8mm、縦30cm、横40cmのダル鋼板に、カチオン電着塗料組成物である「パワートップU-50)」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間焼き付けた塗板に、中塗り塗料組成物「OP-200 ダークグレー」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製、ポリエステル・メラミン系塗料、25秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に予め希釈)を、アネスト岩田製エアスプレーガンW-101-132Gを用いて乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、次いで140℃で30分間焼き付け硬化させ、硬化中塗り塗膜を形成した。
次いで、水性第1ベース塗料組成物を、室温23℃、湿度68%の条件下で乾燥膜厚12μmになるようにエアスプレー塗装した。2.5分間のセッティングを行った後、水性第2ベース塗料組成物を、室温23℃、湿度68%の条件下で乾燥膜厚4μmになるように、ウェットオンウェットでエアスプレー塗装した。1.5分間のセッティングを行った後、80℃で3分間のプレヒートを行った。
水性第2ベース塗料組成物塗装後のプレヒート後に、塗装板を室温まで放冷し、クリヤー塗料としてマックフロー-O-2100(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製溶剤型クリヤー塗料)を、乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、7分間セッティングした。ついで、塗装板を乾燥機で140℃、30分間焼き付けを行うことにより、複層塗膜を有する塗装試験板を得た。
【0142】
(実施例2~34、比較例1~7)
各成分の種類及び量を、下記表に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして水性ベース塗料組成物を調製した。用いた原材料の詳細を以下に記載する。なお、下記表における成分量は、いずれも固形分の量を示す。
【0143】
塗膜形成樹脂(A)
塗膜形成樹脂(A12):プライムポールPX-1000(三洋化成工業社製、ポリオール樹脂)、固形分濃度:100質量%
塗膜形成樹脂(A13):バイロナールNC-6210(東洋紡社製、ポリエステル樹脂、固形分濃度:33質量%)
硬化剤(B):
硬化剤(B11-1)サイメル327(完全アルキル化型メラミン樹脂、オルネクスジャパン社製)、固形分濃度:90質量%
硬化剤(B11-2):サイメル250(イミノ型メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、オルネクスジャパン社製)、固形分濃度:70質量%
硬化剤(B12)WM44-L70G(活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物、旭化成社製)、固形分濃度:70.7質量%
光輝性顔料(C):
光輝性顔料(C1-1):TCR-2020(アルミニウム顔料、東洋アルミニウム社製)、平均粒子径:22μm、平均厚さ:2μm、水面拡散面積:0.2m2/g、有効成分濃度:78質量%
光輝性顔料(C1-2):93-0647(アルミニウム顔料、東洋アルミニウム社製)、平均粒子径:20μm、平均厚さ:0.36μm、水面拡散面積:1.1m2/g、有効成分濃度:71質量%
光輝性顔料(C1-3):06-0672(アルミニウム顔料、東洋アルミニウム社製)、平均粒子径:17μm、平均厚さ:0.5μm、水面拡散面積:0.8m2/g、有効成分濃度:71質量%
光輝性顔料(c2-1):MH-8801(アルミニウム顔料、旭化成社製)、平均粒子径:15μm、平均厚さ0.2μm、水面拡散面積:2.4m2/g、有効成分濃度:64質量%
その他の材料
(D1-1)ラポナイトEP(BYK社製、合成ヘクトライト類似物質)
(D1-2)オプティゲルWX(BYK社製、Na置換型ベントナイト)
(D1-3)ダイモナイト(トピー工業製、合成膨潤性雲母)
【0144】
実施例5は、クリヤー塗料としてR2550-3(SEMIGLOSS)クリヤー(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製溶剤型クリヤー塗料)を用いた以外は実施例1と同様にして、複層塗膜を有する塗装試験板を得た。
【0145】
<評価項目>
1)塗膜外観評価(粒子感)
前記実施例及び比較例で得られた複層塗膜について、分光測色計BYK-mac i(BYK Gardner社製)を用いて、入射角45°における粒状性値(G値)を測定し、複層塗膜の粒子感を評価した。粒状性値(G値)は0~30の範囲で表され、数値が小さいほど微細であり、大きいほど粒状であることを示す。
【0146】
2)塗膜外観評価(ムラ)
前記実施例及び比較例で得られた複層塗膜の外観(ムラ)を、クラウドランナー(BYK-Gardner社製)を用いて、Me値(Mottle Size:11~24mm)を測定し、塗膜のムラを評価した。
なお、前記装置により測定されるMe値は、数値が大きいほど、塗膜のムラ(斑模様)が大きく目立ちやすいことを意味する。Me値7未満を合格とした。
【0147】
3)塗膜外観評価(鮮明性)
実施例及び比較例で得られた評価用途板の複層塗膜の外観を、micro wave scan-T(BYK Gardner社製)を用いて、SW値(測定波長:300~1,200nm)を測定し、塗膜表面の平滑性及び鮮明性を評価した。
なお、前記装置により測定されるSW値は、数値が小さい程、塗膜表面の平滑性が高く鮮明性が高いことを示す。SW値15未満を合格とした。
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
実施例1~34は、本開示の実施例であり、粒子感が高く、メタリックムラが抑制された平滑な複層塗膜が得られた。
なお、実施例7は、クリヤー塗料として、光沢度の低い(マット調の)塗膜が得られるクリヤー塗料を用いている。そのため、実施例7の複層塗膜は、鮮明性の評価はできないものの、粒状性値(G値)は大きくなっている。このことからも、本開示の製造方法によれば、粒子感が高い複層塗膜を形成し得ることがわかる。
【0153】
比較例1は、光輝性顔料(C2)の特数値が本発明の要件を満たさない例であり、得られた複層塗膜のG値が小さく、粒子感が劣った。
比較例2は、水性第1ベース塗料組成物の固形分濃度が15質量%に満たない例であり、水性第1ベース塗料組成物の塗装時に著しいタレが発生し、複層塗膜が形成できなかった。
比較例3は、水性第2ベース塗料組成物の固形分濃度が20質量%を超える例であり、得られた複層塗膜のSW値及びMe値が大きく、複層塗膜の平滑性が劣るため鮮明性が劣り、且つメタリックムラが大きくまだらな外観となった。
比較例4は、水性第2ベース塗料組成物の固形分濃度が5質量%に満たない例であり、水性第2ベース塗料組成物の塗装時に著しいタレが発生し、複層塗膜が形成できなかった。
比較例5は、水性第1ベース塗料組成物に含まれる固形分の量が、水性第2ベース塗料組成物に含まれる固形分1質量部に対して1.1に満たない例であり、得られた複層塗膜のSW値及びMe値が大きく、複層塗膜の平滑性が劣るため鮮明性が劣り、且つメタリックムラが大きくまだらな外観となった。
比較例6は、水性第2ベース塗料組成物における光輝性顔料(C2)の顔料質量濃度が2質量%に満たない例であり、得られた複層塗膜のG値が小さく、粒子感が劣った。
比較例7は、水性第2ベース塗料組成物における光輝性顔料(C2)の顔料質量濃度が40質量%を超える例であり、得られた複層塗膜のSW値が大きく、平滑性が劣るため鮮明性が劣った。
【要約】
【課題】本開示は、粒子感が高く、メタリックムラが抑制され、平滑な塗膜を実現可能な塗膜の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本開示の複層塗膜の製造方法は、
被塗物上に、水性第1ベース塗料組成物を塗装して、第1ベース塗装膜を形成する第1ベース塗装膜形成工程と、
前記第1ベース塗装膜の上に水性第2ベース塗料組成物を塗装して、第2ベース塗装膜を形成する第2ベース塗装膜形成工程と、
少なくとも、前記第1ベース塗装膜及び第2ベース塗装膜を同時に加熱硬化させて、第1ベース塗膜と第2ベース塗膜とを含む複層塗膜を形成する加熱硬化工程と、
を含む複層塗膜の製造方法であって、
前記水性第1ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A1)及び硬化剤(B1)を含み、
前記水性第2ベース塗料組成物は、塗膜形成樹脂(A2)、硬化剤(B2)及び光輝性顔料(C2)を含み、
前記水性第1ベース塗料組成物の固形分濃度は、15質量%以上40質量%以下であり、
前記水性第2ベース塗料組成物の固形分濃度は、5質量%以上20質量%以下であり、
水性第2ベース塗料組成物における固形分濃度に対する、前記水性第1ベース塗料組成物における固形分濃度の比は、質量基準で、1.1以上8以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の平均粒子径(D50)は、17μm以上30μm以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の平均厚みは、0.3μm以上6.0μm以下であり、
前記光輝性顔料(C2)の水面拡散面積(WCA)は、1.4m2/g以下であり、
前記水性第2ベース塗料組成物における、前記光輝性顔料(C2)の顔料質量濃度は、2質量%以上40質量%以下である。
【選択図】なし