(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】紙製バリア材料
(51)【国際特許分類】
D21H 19/82 20060101AFI20230322BHJP
D21H 19/38 20060101ALI20230322BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230322BHJP
D21H 19/60 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
D21H19/82
D21H19/38
B65D65/40 D
D21H19/60
(21)【出願番号】P 2022541578
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2021028867
(87)【国際公開番号】W WO2022030519
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2020132229
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健太
(72)【発明者】
【氏名】福永 正明
(72)【発明者】
【氏名】津田 悟司
(72)【発明者】
【氏名】大木 孝将
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰弘
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/069788(WO,A1)
【文献】特開2008-240235(JP,A)
【文献】特開2007-216592(JP,A)
【文献】特開2020-196259(JP,A)
【文献】特開2012-206472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D65/00-65/46
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材上に、隣接して積層された複数のガスバリア層と、
前記紙基材と、前記複数のガスバリア層との間に、水蒸気バリア性樹脂
と、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料とを含有する水蒸気バリア層を有し、
最上部に位置するガスバリア層が、水溶性高分子を含有し、顔料の含有率が乾燥重量で15重量%以下であり、
他のガスバリア層のうち少なくとも一層が、水溶性高分子と顔料を含有し、前記最上部に位置するガスバリア層よりも顔料の含有率が高く、
前記最上部に位置するガスバリア層の塗工量が、複数のガスバリア層のうち最も小さく、
前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とする紙製バリア材料(ただし、紙基材と複数のガスバリア層との間に、カチオン性樹脂を含有する水蒸気バリア層を有するものを除く)。
【請求項2】
前記顔料が、扁平顔料であることを特徴とする請求項1に記載の紙製バリア材料。
【請求項3】
前記最上部に位置するガスバリア層の塗工量が、乾燥重量で0.1g/m
2以上5.0g/m
2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製バリア材料。
【請求項4】
前記紙基材の坪量が、30g/m
2以上110g/m
2以下であることを特徴とする請
求項1~3のいずれかに記載の紙製バリア材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の紙製バリア材料からなる軟包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製バリア材料に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製の材料、特に紙製の包装材料にガスバリア性(特に、酸素バリア性)を付与することは、包装される各種製品をガスによる劣化、例えば酸素による酸化などから守るために重要である。
従来から、紙製の包装材料へのガスバリア性の付与には、紙基材上にガスバリア層として、アルミニウム等の金属からなる金属箔や金属蒸着フィルム、ポリビニルアルコールやエチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂フィルム、あるいはこれらの樹脂をコーティングしたフィルム、さらに酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着したセラミック蒸着フィルム等を紙基材に押し出しラミネートする、または貼合する方法が主に用いられてきた。
【0003】
上記以外のガスバリア性を付与した紙製の包装材料としては、水溶性高分子と無機層状化合物からなるガスバリア層を有する紙製のガスバリア材料(特許文献1、特許文献2)が開示されている。また、紙製の包装材料に耐水性(特に、水蒸気バリア性)を付与することも、包装される各種製品を水蒸気による劣化から守るために重要である。ガスバリア性と水蒸気バリア性を備えた紙製の包装材料として、紙基材上に、水蒸気バリア性樹脂と顔料を含む水蒸気バリア層と、ポリビニルアルコール系樹脂と顔料を含むガスバリア層を有する紙製バリア包装材料が開示されている(特許文献3)。
【0004】
このような紙製バリア材料において、屈曲した際にバリア性が大きく低下する場合がある。本発明者らが調査したところ、屈曲によるバリア性の低下は、屈曲により剛直な顔料周辺で層が破壊されてしまい、ガスが通りやすくなるためであることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-184138号公報
【文献】特開2003-094574号公報
【文献】特許第5331265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐屈曲性に優れた紙製バリア材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.紙基材上に、隣接して積層された複数のガスバリア層を有し、
最上部に位置するガスバリア層が、水溶性高分子を含有し、顔料の含有率が乾燥重量で15重量%以下であり、
他のガスバリア層のうち少なくとも一層が、水溶性高分子と顔料を含有し、前記最上部に位置するガスバリア層よりも顔料の含有率が高いことを特徴とする紙製バリア材料。
2.前記最上部に位置するガスバリア層における顔料の含有率が、乾燥重量で5重量%以下であることを特徴とする1.に記載の紙製バリア材料。
3.前記顔料が、扁平顔料であることを特徴とする1.または2.に記載の紙製バリア材料。
4.前記紙基材と、前記複数のガスバリア層との間に、水蒸気バリア性樹脂を含有する水蒸気バリア層を有することを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の紙製バリア材料。
5.前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の紙製バリア材料。
6.前記最上部に位置するガスバリア層の塗工量が、複数のガスバリア層のうち最も小さいことを特徴とする1.~5.のいずれかに記載の紙製バリア材料。
7.前記最上部に位置するガスバリア層の塗工量が、乾燥重量で0.1g/m2以上5.0g/m2以下であることを特徴とする1.~6.のいずれかに記載の紙製バリア材料。
8.前記紙基材の坪量が、30g/m2以上110g/m2以下であることを特徴とする1.~7.のいずれかに記載の紙製バリア材料。
9.1.~8.のいずれかに記載の紙製バリア材料からなる軟包装袋。
【0008】
また、本発明の課題を解決するための別の手段は、以下のとおりである。
11.紙基材上に、第一のガスバリア層と、該第一のガスバリア層の上に形成された第二のガスバリア層と、を有し、
前記第一のガスバリア層が、水溶性高分子と顔料を含有し、
前記第二のガスバリア層が、水溶性高分子を含有し、
前記第二のガスバリア層における顔料の含有率が、乾燥重量で1重量%以下であることを特徴とする紙製バリア材料。
12.前記顔料が、扁平顔料であることを特徴とする11.に記載の紙製バリア材料。
13.前記紙基材と、前記第一のガスバリア層との間に、水蒸気バリア性樹脂を含有する水蒸気バリア層を有することを特徴とする11.または12.に記載の紙製バリア材料。
14.前記第一および第二のガスバリア層が含む水溶性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とする11.~13.のいずれかに記載の紙製バリア材料。
15.前記第二のガスバリア層の塗工量が、前記第一のガスバリア層の塗工量以下であることを特徴とする11.~14.のいずれかに記載の紙製バリア材料。
16.前記第二のガスバリア層の塗工量が、乾燥重量で0.1g/m2以上5.0g/m2以下であることを特徴とする11.~15.のいずれかに記載の紙製バリア材料。
17.前記紙基材の坪量が、30g/m2以上110g/m2以下であることを特徴とする11.~16.のいずれかに記載の紙製バリア材料。
18.11.~17.のいずれかに記載の紙製バリア材料からなる軟包装袋。
【発明の効果】
【0009】
本発明の紙製バリア材料は、耐屈曲性に優れており、屈曲時のバリア性の低下が小さい。本発明の紙製バリア材料は、柔軟なため屈曲が起こりやすい軟包装袋に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、紙基材上に、隣接して積層された複数のガスバリア層を有し、
最上部に位置するガスバリア層が、水溶性高分子を含有し、顔料の含有率が乾燥重量で15重量%以下であり、
他のガスバリア層のうち少なくとも一層が、水溶性高分子と顔料を含有し、前記最上部に位置するガスバリア層よりも顔料の含有率が高いことを特徴とする紙製バリア材料に関する。
以下、複数のガスバリア層のうち、紙基材から近い順に、第一のガスバリア層、第二のガスバリア層、第三の・・・、という。
【0011】
(紙基材)
本発明において紙基材とは、パルプ、填料、各種助剤からなるシートである。
パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未漂白パルプ(NUKP)、サルファイトパルプなどの化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプなどの機械パルプ、脱墨パルプ、古紙パルプなどの木材繊維、ケナフ、竹、麻などから得られた非木材繊維などを用いることができ、適宜配合して用いることが可能である。これらの中でも、紙基材中への異物混入が発生し難いこと、使用後の紙容器を古紙原料に供してリサイクル使用する際に経時変色が発生し難いこと、高い白色度を有するため印刷時の面感が良好となり、特に包装材料として使用した場合の使用価値が高くなることなどの理由から、木材繊維の化学パルプ、機械パルプを用いることが好ましく、化学パルプを用いることがより好ましい。
【0012】
填料としては、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができる。また、硫酸バンドや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性あるいは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤や内添サイズ剤等の抄紙用内添助剤を必要に応じて使用することができる。さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。
【0013】
紙基材の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して紙基材を製造することができる。また、紙基材は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
さらに、紙基材の表面を各種薬剤で処理することが可能である。使用される薬剤としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤などを例示することができ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。さらに、これらの各種薬剤と顔料を併用してもよい。顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
【0014】
紙基材の表面処理の方法は特に限定されるものではないが、ロッドメタリングサイズプレス、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなど公知の塗工装置を用いることができる。
この様にして得られる紙基材としては、上質紙、中質紙、塗工紙、片艶紙、クラフト紙、片艶クラフト紙、晒クラフト紙、グラシン紙、板紙、白板紙、ライナーなどの各種公知のものが例示可能である。
【0015】
また、紙基材の坪量は、紙製バリア材料に所望される各種品質や取り扱い性等により適宜選択可能であるが、通常は20g/m2以上500g/m2以下程度のものが好ましい。食品などの包装材、容器、カップなど、包装用途に使用する紙製バリア材料の場合は、25g/m2以上400g/m2以下のものがより好ましく、特に後述する軟包装袋用途に使用する紙製バリア材料の場合は、30g/m2以上110g/m2以下のものがより好ましい。
【0016】
(ガスバリア層)
本発明の紙製バリア材料は、紙基材上に、隣接して積層された複数のガスバリア層を有する。ガスバリア層の層数は特に制限されないが、多くなるほど製造コストが大きくなるため、4層以下であることが好ましく、3層以下であることがより好ましく、2層であることがさらに好ましい。
本発明において、ガスバリア層に使用される水溶性高分子としては、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系樹脂、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどを例示することができる。これらの中では、ガスバリア性の点から、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース誘導体が好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂がさらに好ましい。
【0017】
ガスバリア層に使用される顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。顔料としては、体積50%平均粒子径(D50)(以下、「平均粒子径」とも言う。)が3μm以上且つアスペクト比が10以上の扁平顔料であることが好ましく、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が30以上の扁平顔料であることがより好ましい。
ガスバリア層に顔料、特に扁平顔料を含有させた場合、酸素などのガスは顔料を迂回して通過する。このため、顔料を含有するガスバリア層は、顔料を含有しないガスバリア層と比較して、ガスバリア性に優れ、特に高湿度雰囲気下で優れたガスバリア性を有する。
【0018】
最上部に位置するガスバリア層は、水溶性高分子を含有し、顔料の含有率が乾燥重量で15重量%以下である。最上部に位置するガスバリア層において、顔料の含有率は少ないほうが好ましく、5重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましく、0.5重量%以下であることがさらに好ましく、0.3重量%以下であることがよりさらに好ましく、0.1重量%以下であることがよりさらに好ましく、含まない(0重量%)ことが最も好ましい。
【0019】
複数のガスバリア層のうち、最上部に位置するガスバリア層以外の他のガスバリア層は、少なくとも一層が、水溶性高分子と顔料を含有し、最上部に位置するガスバリア層よりも顔料の含有率が高い。
本発明において、他のガスバリア層の少なくとも一層である、水溶性高分子と顔料を含有し、最上部に位置するガスバリア層よりも顔料の含有率が高い層は、顔料と水溶性高分子の配合比率(顔料/水溶性高分子)が、乾燥重量で、10/100~1000/100であることが好ましい。顔料の比率が上記範囲より少ないと、ガスバリア性の改善効果が小さくなることがあるとともに、屈曲によるバリア性の低下がそもそも小さいことがある。顔料の比率が上記範囲より多いと、水溶性樹脂が顔料間の隙間を埋めきれなくなり、ガスバリア性の改善効果が小さくなることがある。
なお、本発明において、顔料を水溶性高分子中に配合する際に、顔料がスラリー化したものを添加し混合することが好ましい。
【0020】
本発明において、ガスバリア層に多価金属塩などに代表される架橋剤を添加することができる。架橋剤はガスバリア層に含有される水溶性高分子と架橋反応を起こすため、ガスバリア層内の結合の数(架橋点)が増加する。つまり、ガスバリア層が緻密な構造となり、良好なガスバリア性を発現することができる。
本発明において、架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、ガスバリア層に含有される水溶性高分子の種類に合わせて、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸など適宜選択して使用することが可能である。なお、架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
架橋剤の配合量については、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができるが、好ましくは顔料100重量部に対して、架橋剤が1重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは3重量部以上5重量部以下である。1重量部未満であると架橋剤の添加効果が十分に得られないことがある。また、10重量部より多いと塗料の粘度上昇が著しくなり、塗工が困難となることがある。
【0021】
(水蒸気バリア層)
本発明の紙製バリア材料は、紙基材と第一のガスバリア層との間に水蒸気バリア層を有することができる。水蒸気バリア層の上に第一のガスバリア層を設ける場合、水蒸気バリア層との密着性の観点より、第一のガスバリア層中に界面活性剤を含有することが好ましい。そして、ガスバリア層が界面活性剤を含有する場合、密着性の観点より、その上面に設けられるガスバリア層も界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤のイオン性は制限されるものはなく、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤のいずれの種類でもよく、単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、具体的な種類としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アルコール系界面活性剤、アセチレン基を有するアセチレン系界面活性剤、アセチレン基と2つの水酸基を有するアセチレンジオール系界面活性剤、アルキル基とスルホン酸を有するアルキルスルホン酸系界面活性剤、エステル系界面活性剤、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、アルキルエーテル系界面活性剤、フェニルエーテル系界面活性剤、硫酸エステル系界面活性剤、フェノール系界面活性剤などを例示することができる。これらの中では塗料のレベリング性の向上効果が大きい、アセチレンジオール系界面活性剤を使用することが好ましい。なお、塗料のレベリング性が向上すると、ガスバリア層の均一性が向上するため、ガスバリア性が向上する。
水蒸気バリア層の上に第一のガスバリア層を設ける場合、水蒸気バリア層との密着性の観点から、第一のガスバリア層用塗料の表面張力を、10mN/m以上60mN/m以下に調整することが好ましく、15mN/m以上50mN/m以下に調整することがより好ましい。また、水蒸気バリア層表面の濡れ張力に対して、第一のガスバリア層用塗料の表面張力を±20mN/mとすることが、水蒸気バリア層と第一のガスバリア層との密着性の観点から好ましい。さらに、下層の濡れ張力に対して、上層用塗料の表面張力を±20mN/mとすることが、隣接する層間の密着性の観点から好ましい。
【0022】
本発明において、ガスバリア層には、上記した水溶性高分子、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0023】
本発明において、水蒸気バリア層に含有させる水蒸気バリア性樹脂としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、パラフィン(WAX)系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤、またはそれらのパラフィン(WAX)配合合成接着剤等を単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。これらの中では、水蒸気バリア性の点からスチレン・ブタジエン系合成接着剤を使用することが好ましい。
本発明においてスチレン・ブタジエン系合成接着剤とは、スチレンとブタジエンを主構成モノマーとし、これに変性を目的とする各種のコモノマーを組み合わせ、乳化重合したものである。コモノマーの例として、メチルメタクリルレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレートや、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸などの不飽和カルボン酸などが挙げられる。また、乳化剤としては、オレイン酸ナトリウム、ロジン酸石鹸、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤を単独、またはノニオン性界面活性剤と組み合わせて用いることができる。目的によっては、両性またはカチオン性界面活性剤を用いても良い。
【0024】
なお、水蒸気バリア性に問題がない程度であれば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、エチレン共重合ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆タンパク、合成タンパクなどのタンパク質類、酸化澱粉、カチオン化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどの水溶性高分子を、上記水蒸気バリア性樹脂と併用することも可能である。
【0025】
本発明において、水蒸気バリア層に顔料を含有させることは、水蒸気バリア層とガスバリア層を有する構成において、水蒸気バリア層とガスバリア層の密着性の点から好ましい。
顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。
これらの顔料の中でも、水蒸気バリア性の向上と、ガスバリア層の浸透抑制の両方の観点から、形状が扁平なカオリン、マイカ、タルクなどの無機顔料が好ましく、カオリンがより好ましい。また、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料を単独または2種類以上混合して使用することが好ましい。使用する無機顔料の平均粒子径またはアスペクト比が上記範囲より小さいと、水蒸気バリア層中を水蒸気が迂回する回数が減少し、移動する距離が短くなるため、結果として水蒸気バリア性の改善効果が小さくなることがある。
【0026】
本発明において、水蒸気バリア性の向上、及びガスバリア層との密着性の点から、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料を含有する水蒸気バリア層に、さらに平均粒子径が5μm以下の顔料を含有させることが好ましい。平均粒子径が5μm以下の顔料を併用することにより、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料により形成された水蒸気バリア層中の空隙を減少させることができるため、さらに優れた水蒸気バリア性が発現する。つまり、水蒸気バリア層に平均粒子径の異なる顔料を含有させた場合、水蒸気バリア層中で大きな平均粒子径の無機顔料により形成される空隙に小さな平均粒子径の顔料が充填された状態となり、水蒸気は顔料を迂回して通過するため、異なる平均粒子径の顔料を含有していない水蒸気バリア層と比較して、高い水蒸気バリア性を有するものと推測される。
本発明において、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料と、平均粒子径が5μm以下の顔料を併用する場合、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料と、平均粒子径が5μm以下の顔料の配合比率(平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料/平均粒子径が5μm以下の顔料)は、乾燥重量で、50/50~99/1であることが好ましい。平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料の配合比率が上記範囲より少ないと、水蒸気が水蒸気バリア層中を迂回する回数が減少し、移動する距離が短くなるため、水蒸気バリア性の改善効果が小さくなることがある。一方、上記範囲より多いと、水蒸気バリア層中の大きな平均粒子径の無機顔料が形成する空隙を平均粒子径が5μm以下の顔料で十分に埋めることができないため、水蒸気バリア性のさらなる向上は見られない。
【0027】
本発明において、平均粒子径が5μm以上且つアスペクト比が10以上の無機顔料と併用する平均粒子径が5μm以下の顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料および密実型、中空型、またはコア-シェル型などの有機顔料などを単独または2種類以上混合して使用することができる。これらの顔料の中では、重質炭酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0028】
水蒸気バリア層に顔料を含有させる場合、顔料の配合量は、乾燥重量で顔料100重量部に対して、水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計で5重量部以上200重量部以下の範囲で使用されることが好ましく、より好ましくは水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計で10重量部以上150重量部以下である。
また、水蒸気バリア層には、上記した水蒸気バリア性樹脂、水溶性高分子、顔料の他、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、染料、蛍光染料等の通常使用される各種助剤を使用することができる。
【0029】
本発明において、水蒸気バリア層に多価金属塩などに代表される架橋剤を添加することができる。架橋剤は水蒸気バリア層に含有される水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子と架橋反応を起こすため、水蒸気バリア層内の結合の数(架橋点)が増加する。つまり、水蒸気バリア層が緻密な構造となり、良好な水蒸気バリア性を発現することができる。
本発明において、架橋剤の種類としては特に限定されるものではなく、水蒸気バリア層に含有される水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子の種類に合わせて、多価金属塩(銅、亜鉛、銀、鉄、カリウム、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、チタンなどの多価金属と、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、燐酸イオン、珪酸イオン、窒素酸化物、ホウ素酸化物などのイオン性物質が結合した化合物)、アミン化合物、アミド化合物、アルデヒド化合物、ヒドロキシ酸など適宜選択して使用することが可能である。
水蒸気バリア性に優れた効果を発現するスチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系などのスチレン系の水蒸気バリア性樹脂を用いた場合、架橋効果発現の観点から、多価金属塩を使用することが好ましく、カリウムミョウバンを使用することがより好ましい。
架橋剤の配合量については、塗工可能な塗料濃度や塗料粘度の範囲内であれば特に限定されることなく配合することができるが、好ましくは顔料100重量部に対して、架橋剤が1重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは3重量部以上5重量部以下である。1重量部未満であると架橋剤の添加効果が十分に得られないことがある。また、10重量部より多いと塗料の粘度上昇が著しくなり、塗工が困難となることがある。
【0030】
本発明において、水蒸気バリア層用塗料に架橋剤を添加する場合、アンモニアなどの極性溶媒に架橋剤を溶解させてから塗料へ添加することが好ましい。架橋剤を極性溶媒に溶解させると、架橋剤と極性溶媒が結合を作るため、塗料へ添加しても直ちには水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子との架橋反応が起こらず、塗料の増粘を抑制することができる。その場合、紙基材への塗工後に乾燥することにより極性溶媒成分が揮発し、水蒸気バリア性樹脂や水溶性高分子との架橋反応が起こり、緻密な水蒸気バリア層が形成されると推測される。
【0031】
本発明において、水蒸気バリア性向上の観点から、水蒸気バリア層に撥水剤を含有させることが好ましい。撥水剤としては、アルカン化合物を主体とするパラフィン系撥水剤、カルナバやラノリンなどの動植物由来の天然油脂系撥水剤、シリコーンまたはシリコーン化合物を含有するシリコーン含有系撥水剤、フッ素化合物を含有するフッ素含有系撥水剤など例示することができる。これらの中では、水蒸気バリア性能発現の観点からパラフィン系撥水剤を使用することが好ましい。また、これらの撥水剤を単独あるいは2種類以上混合して使用することができる。
【0032】
本発明において、撥水剤の配合量は特に限定されるものではないが、撥水剤の配合量は、乾燥重量で水蒸気バリア性樹脂と水溶性高分子の合計100重量部に対して、撥水剤が1重量部以上100重量部以下であることが好ましい。撥水剤の配合量が1重量部未満であると、水蒸気バリア性の向上効果が十分に得られない可能性がある。一方、100重量部を超えた場合には、水蒸気バリア層上にガスバリア層を設ける場合にガスバリア層が均一に形成し難くなるため、ガスバリア性が低下する可能性がある。
また、本発明において、水蒸気バリア性の向上、及びガスバリア層との密着性から、水蒸気バリア層表面の濡れ張力としては10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、15mN/m以上50mN/m以下であることがより好ましい。
【0033】
(水蒸気バリア層、ガスバリア層の塗工)
本発明において、水蒸気バリア層、ガスバリア層の塗工方法については特に限定されるものではなく、公知の塗工装置及び塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーターなどが挙げられる。また、塗工系としては、水等の溶媒を使用した水系塗工、有機溶剤等の溶媒を使用した溶剤系塗工などが挙げられる。
水蒸気バリア層、ガスバリア層を乾燥させる手法としては、例えば、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤー等の通常の方法が用いられる。
【0034】
本発明において、水蒸気バリア層を設ける場合、その塗工量は、乾燥重量で3g/m2以上50g/m2以下とすることが好ましく、5g/m2以上40g/m2以下とすることがより好ましく、7g/m2以上30g/m2以下とすることがさらに好ましい。水蒸気バリア層の塗工量が3g/m2未満であると、水蒸気バリア性の向上がほとんど見込めない場合がある。一方、50g/m2より多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。
なお、本発明において、水蒸気バリア層は任意であるが、その層数は1層であってもよく、2層以上の多層で構成してもよい。水蒸気バリア層を2層以上の多層で構成する場合は、全ての水蒸気バリア層を合計した塗工量を上記範囲とすることが好ましい。
【0035】
本発明において、ガスバリア層(複数のガスバリア層の合計)の塗工量は、乾燥重量で0.2g/m2以上20g/m2以下とすることが好ましい。ガスバリア層の塗工量が0.2/m2未満であると、均一なガスバリア層を形成することが困難であるため、十分なガスバリア性が得られなくなることがある。一方、20g/m2より多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなる。
本発明において、最上部に位置するガスバリア層の塗工量が、複数のガスバリア層のうち最も小さいことが好ましく、他のガスバリア層の塗工量の合計100重量部に対し、最上部に位置するガスバリア層の塗工量の塗工量が1重量部以上100重量部以下であることがより好ましい。この最上部に位置するガスバリア層の塗工量が1重量部未満では、耐屈曲性が十分に発揮できない場合がある。また、この最上部に位置するガスバリア層の塗工量が100重量部を超えると、ガスバリア層全体における顔料の含有率が低くなり、ガスバリア性、特に高湿度でのガスバリア性が低下する場合がある。
また、最上部に位置するガスバリア層の塗工量の上限は、乾燥重量で5g/m2以下とすることが好ましく、4g/m2以下とすることがより好ましい。また、最上部に位置するガスバリア層の塗工量の下限は、乾燥重量で0.1g/m2以上であることが好ましく、0.2g/m2以上であることがより好ましく、0.3g/m2以上であることがさらに好ましい。最上部に位置するガスバリア層の塗工量が5g/m2より多いと、巻取り時のブロッキングが起こる場合がある。一方、0.1g/m2未満であると、耐屈曲性が十分に発揮できない場合がある。
【0036】
(保護層)
本発明の紙製バリア材料は、少なくとも一方の面上に保護層を有することができる。以下、保護層を有する紙製バリア材料における、紙基材、水蒸気バリア層(任意)、隣接して積層された複数のガスバリア層を有する積層体を、紙製バリア原紙という。
保護層は、空気中の水分などによる紙製バリア原紙の水蒸気バリア層、ガスバリア層の劣化を防ぐと共に、紙製バリア原紙に更なる水蒸気バリア性、ガスバリア性を付与する、あるいは耐油性、耐溶剤性、耐熱性、耐摩耗性、耐衝撃性、耐光性などを付与することができる。また、保護層が樹脂層である場合は、ヒートシール性を付与することもできる。保護層は、紙製バリア原紙の両面に設けることもできるが、少なくともガスバリア層を有する側の面上に有することが好ましい。
保護層としては、樹脂層、紙層、金属箔等が挙げられ、これらの中で樹脂層が好ましい。
【0037】
(樹脂層)
樹脂層の樹脂としては、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、アクリロニトリル・スチレン、ポリメチルメタアクリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド(ナイロン)、ポリアセタール、ポリカーボネート等の化石資源由来樹脂、ポリ乳酸(PLA)、エステル化澱粉、酢酸セルロース、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、バイオポリエチレン、バイオポリエチレンテレフタレート、バイオポリウレタン等の生物由来樹脂を含むことができる。
なお、生物由来樹脂とは、原料として再生可能な有機資源由来の物質を含み、化学的または生物学的に合成することにより得られる、数平均分子量(Mn)1,000以上の高分子材料をいう。
また、化石資源由来樹脂、および、生物由来樹脂として、ポリ乳酸(PLA)、エステル化澱粉、酢酸セルロース、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)等の生分解性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド(ナイロン)、バイオポリエチレン等の生分解性を有さない樹脂のいずれを用いることができる。なお、生分解性樹脂とは、微生物の働きにより、分子レベルまで分解され、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質の樹脂をいう。
【0038】
本発明において、樹脂層としては樹脂ラミネート層が好ましい。樹脂ラミネート層としては、押し出しラミネート層や、バリアフィルム、蒸着フィルム等のフィルム貼合層を挙げることができる。
樹脂ラミネート層が押し出しラミネート層の場合は、紙製バリア原紙の少なくとも一方の面上に、上記した各種樹脂を押し出しラミネート法により樹脂ラミネート層として積層する。また、樹脂ラミネート層がフィルム貼合層の場合は、紙製バリア原紙の少なくとも一方の面上に、上記した各種樹脂製のフィルムをドライラミネート法、サンドラミネート法等により樹脂ラミネート層として貼合する。樹脂層は、紙製バリア原紙の両面に設けることもできるが、少なくともガスバリア層を有する側の面上に有することが好ましい。さらに、紙製バリア原紙のガスバリア層上に、樹脂層を有することが好ましい。
【0039】
本発明において、フィルム貼合層に使用するフィルムとしては、上記した各種樹脂製のフィルムが挙げられる。これらのフィルムの中では、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂を主成分としたフィルム、上記した各種樹脂製のフィルムにこれらポリビニルアルコール等の樹脂をコーティングしたフィルム、上記した各種樹脂製のフィルムにアルミニウム等の各種金属からなる金属箔を貼合したフィルム、上記した各種樹脂製のフィルムにアルミニウム等の各種金属、または酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着させた蒸着フィルム等のバリアフィルムが好ましく、蒸着フィルムがより好ましい。目的に応じてこれらのフィルムを1層または複数層を貼合して使用することができる。
【0040】
本発明の紙製バリア材料は、紙製バリア材料のまま、または各種樹脂等と積層する、各種汎用フィルム、バリアフィルム、アルミ箔等と貼合するなどして、食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられる紙製バリア包装材料、または産業用資材などに用いられる積層体とすることが可能である。これらの中で、本発明の紙製バリア材料は、食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられる紙製バリア包装材料として好適に使用することができ、食品などの軟包装袋として特に好適に使用することができる。なお、軟包装袋とは、構成としては、柔軟性に富む材料で構成されている包装材であり、一般には紙、フィルム、アルミ箔等の薄く柔軟性のある材料を、単体あるいは貼り合せた包装材を指す。軟包装袋の形状としては、特に制限されず、縦ピロー包装袋、横ピロー包装袋、サイドシール袋、二方シール袋、三方シール袋、ガゼット袋、底ガゼット袋、スタンド袋などが挙げられる。
【0041】
本発明の紙製バリア材料を食品などの包装材、特に軟包装袋として用いる場合は、ヒートシール性を有する樹脂と積層することにより、包装材料としての密閉性を高め、内容物を酸素による酸化や湿気などによる劣化などから守り、保存期間の延長を可能にすることができる。また、軟包装材は、薄く柔軟であるため、製造時、運搬時、保管時、販売時等に屈曲が生じやすいが、本発明の紙製バリア材料は、耐屈曲性に優れ、屈曲が生じてもバリア性の低下が抑えられているため、予期せぬ屈曲により、内容物の品質が損なわれることを防ぐことができる。
また、産業用資材などに用いられる積層体として使用する場合においても、酸素や湿気の侵入を抑えることで、腐敗、劣化を防止できるほか、溶剤の臭気が漏れ出るのを防止するフレーバーバリア性などの効果が期待される。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部及び%は、それぞれ重量部、重量%を示す。
得られた紙製バリア基材について、以下に示す様な評価法に基づいて試験を行った。
【0043】
(評価方法)
(1)酸素透過度
MOCON社製、OX-TRAN2/21を使用し、23℃―0%RH条件(乾燥下)および23℃―85%RH条件(高湿度下)にて測定した。
測定は、シートサンプルそのまま(折り目なし)と、ガスバリア層を外側として折り曲げたシートサンプルに対し、約400gのゴム製ローラーを5往復転がして十字の折り目をつけたサンプル(折り目あり)について行い、折り目ありのサンプルは、その十字が治具の中央に位置するようにして測定した。
(2)ブロッキング
最上部に位置するガスバリア層塗工時の乾燥が不十分な場合、巻取において重なり合う層同士が貼りつく現象であるブロッキングが生じる。巻取中の層同士の貼りつきの有無を確認することにより、塗工後巻取のブロッキングの有無を評価した。
〔評価基準〕
〇:ブロッキング無
×:ブロッキング有
【0044】
[実施例1]
(紙基材の作製)
カナダ式標準ろ水度(CSF)500mlの広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)とCSF530mlの針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)を80/20の重量比で配合して、原料パルプとした。
原料パルプに、乾燥紙力増強剤として分子量250万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.1%、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を対絶乾パルプ重量あたり0.35%、湿潤紙力増強剤としてポリアミドエピクロロヒドリン(PAEH)系樹脂を対絶乾パルプ重量あたり0.15%、さらに歩留剤として分子量1000万のポリアクリルアミド(PAM)を対絶乾パルプ重量あたり0.08%添加した後、デュオフォーマーFM型抄紙機にて300m/minの速度で抄紙し、坪量59g/m2の紙を得た。
次いで、得られた紙に固形分濃度2%に調製したポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)をロッドメタリングサイズプレスで、両面合計で1.0g/m2塗工、乾燥し、坪量60g/m2の原紙を得た。得られた原紙に、チルドカレンダーを用いて、速度300min/m、線圧50kgf/cm、1パスにて平滑処理を行い、紙基材を得た。
【0045】
(ガスバリア層用塗工液1の調製)
エンジニアードカオリン(イメリス社製、バリサーフHX、平均粒子径90μm、アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対顔料0.2%)、セリエミキサーで分散して固形分濃度55%のカオリンスラリーを調製した。ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)水溶液を固形分濃度10%となるように調製し、PVA水溶液を得た。得られたカオリンスラリーと、PVA水溶液を固形分で顔料:PVA=100:100として固形分濃度が10%となるように混合し、ガスバリア層用塗工液1を得た。
【0046】
(ガスバリア層用塗工液2の調製)
ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA117)水溶液を固形分濃度10%となるように調製し、ガスバリア層用塗工液2を得た。
【0047】
(紙製バリア材料の作製)
得られた紙基材上に、ガスバリア層用塗工液1を乾燥重量で塗工量5.0g/m2となるように片面塗工、乾燥した後、その上にガスバリア層用塗工液2を乾燥重量で0.5g/m2となるよう片面塗工し、紙製バリア材料を得た。
【0048】
[実施例2]
ガスバリア層用塗工液2を乾燥重量で2.0g/m2となるよう塗工した以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。
[実施例3]
ガスバリア層用塗工液2を乾燥重量で4.0g/m2となるよう塗工した以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。
[実施例4]
ガスバリア層用塗工液2を乾燥重量で0.2g/m2となるよう塗工した以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。
【0049】
[実施例5]
(水蒸気バリア層用塗工液の調製)
エンジニアードカオリン(イメリス社製、バリサーフHX、平均粒子径90μm、アスペクト比80-100)に分散剤としてポリアクリル酸ソーダを添加し(対顔料0.2%)、セリエミキサーで分散して固形分濃度60%のカオリンスラリーを調製した。得られたカオリンスラリー中に、顔料100部(固形分)に対し水蒸気バリア性樹脂としてスチレン・アクリル系共重合体エマルジョン(サイデン化学社製、X-511-374E)を100部(固形分)となるように配合し、固形分濃度45%の水蒸気バリア層用塗工液を得た。
第一のガスバリア層用塗工液の塗工前に、水蒸気バリア層用塗工液を乾燥重量で15g/m2となるよう片面塗工、乾燥した以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。
【0050】
[比較例1]
ガスバリア層用塗工液2を塗工しないこと以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。
[比較例2]
第一のガスバリア層として、ガスバリア層用塗工液1に代えてガスバリア層用塗工液2を塗工した以外は、実施例2と同様にして、紙製バリア材料を得た。
[比較例3]
ガスバリア用塗工液2をポリエステル樹脂水溶液(互応化学工業社製、プラスコートZ-561、高硬度ポリエステル、ガスバリア性なし)としたこと以外は、実施例2と同様にして、紙製バリア材料を得た。
[参考例1]
ガスバリア層用塗工液2を乾燥重量で6.0g/m2となるよう塗工した以外は、実施例1と同様にして、紙製バリア材料を得た。
【0051】
【0052】
本発明である実施例1~5で得られた紙製バリア材料は、耐屈曲性に優れ、折り目が存在しても高い酸素バリア性を維持することができた。特に、実施例1~3、5で得られた紙製バリア材料は高湿度下での折り目あり/折り目なしでの酸素透過度の比率が1.5倍以下であり、さらに実施例2、3で得られた紙製バリア材料は乾燥下での折り目あり/折り目なしでの酸素透過度の比率が10倍以下であった。
それに対し、比較例1、3で得られた紙製バリア材料は、耐屈曲性に劣り、折り目が存在すると酸素バリア性が顕著に低下し、乾燥下での折り目あり/折り目なしでの酸素透過度の比率が100倍以上であった。
第1のガスバリア層が顔料を含まない比較例2で得られた紙製バリア材料は、そもそも折り目なしでの高湿度下での酸素バリア性に劣っていた。
参考例1で得られた紙製バリア材料は、製造後の巻取り時にブロッキングが生じた。この巻取りから紙製バリア材料を引き出す際に、第二のガスバリア層の剥離が生じたため、ガスバリア性の評価は行わなかった。参考例1は、乾燥条件等を調製し、ブロッキングを防げば、比較例1より耐屈曲性に優れた紙製バリア材料が得られたと推測される。
【0053】
[実施例6]
(ガスバリア層用塗工液3の調製)
エチレン共重合ポリビニルアルコール(クラレ社製、RS-4104)水溶液を固形分濃度13%となるよう調製し、PVA水溶液を得た。得られたPVA水溶液に、マイカスラリー(トピー工業社製、製品名:NTS-10、アスペクト比:1500、固形分濃度10%)を、固形分で100:15となるように混合し、ガスバリア層用塗工液3を得た。
【0054】
(紙製バリア材料の作製)
得られた紙基材上に、ガスバリア層用塗工液1を乾燥重量で塗工量5.0g/m2となるように片面塗工、乾燥した後、その上にガスバリア層用塗工液3を乾燥重量で3.0g/m2となるよう片面塗工し、紙製バリア材料を得た。
【0055】
[実施例7]
(ガスバリア層用塗工液4の調製)
エチレン共重合ポリビニルアルコール(クラレ社製、エクセバールHR3010)水溶液を固形分濃度が10%となるよう調製し、ガスバリア層用塗工液4を得た。
(紙製バリア材料の作製)
実施例6で得た紙製バリア材料の第二のガスバリア層の上に、ガスバリア層用塗工液4を乾燥重量で3.0g/m2となるよう片面塗工し、紙製バリア材料を得た。
【0056】
[実施例8]
得られた紙基材上に、水蒸気バリア層用塗工液を乾燥重量で15g/m2となるように片面塗工、乾燥した後、その上にガスバリア層用塗工液3を乾燥重量で3.0g/m2となるよう片面塗工、乾燥し、さらにその上にガスバリア層用塗工液4を乾燥重量で3.0g/m2となるよう片面塗工し、紙製バリア材料を得た。
【0057】
[比較例4]
紙基材上に、ガスバリア層用塗工液3を乾燥重量で3.0g/m2となるように片面塗工し、紙製バリア材料を得た。
【0058】
【0059】
本発明である実施例6~8で得られた紙製バリア材料は、耐屈曲性に優れ、折り目が存在しても高い酸素バリア性を維持することができた。特に、実施例7、8で得られた紙製バリア材料は折り目ありでの乾燥下での酸素透過度が5ml/m2・day・atm以下、高湿度下での酸素透過度が2.9ml/m2・day・atm以下であり、折り目が存在しても非常に高い酸素バリア性を維持することができた。
それに対し、比較例4で得られた紙製バリア材料は、折り目なしでの酸素バリア性に劣り、また、折り目が存在すると酸素バリア性が低下した。