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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】作業機械の保守部品の選定システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20230323BHJP
【FI】
G06Q10/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018239829
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020102009
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 聡志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智宏
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和久
(72)【発明者】
【氏名】奥 信一
(72)【発明者】
【氏名】高見 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】角谷 有司
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-120564(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163561(WO,A1)
【文献】特開2018-092259(JP,A)
【文献】特開2011-170724(JP,A)
【文献】特開2002-258733(JP,A)
【文献】特開2012-014297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械であって点検対象となる点検対象機械に関する保守部品の選定情報を、通信回線を介して端末に提供するサーバを有する作業機械の保守部品の選定システムにおいて、
前記サーバは、
前記作業機械から送信される稼働データを受信して稼働データ履歴テーブルとして保存する稼動データ保存処理部と、
稼働データ履歴テーブルの前記稼働データに基づき、保守部品毎に経時的に発生する故障を複数に種類分けして表す種別とその種別に応じたリスクの程度の数値を含む故障リスクを算出し、故障リスクデータテーブルに保存する故障リスク算出部と、
前記作業機械の点検項目と前記作業機械の主要な保守部品である主要部品とが対応付けられた点検項目・主要部品対応テーブルと、
前記端末から受信する前記点検対象機械の情報に基づき、前記点検対象機械の点検項目リストを取得する点検項目リスト取得部と、
前記点検項目・主要部品対応テーブルに基づき、前記点検対象機械の点検項目に対応付けて前記保守部品を羅列した主要部品リストを取得する主要部品リスト取得部と、を有し、
前記主要部品リスト取得部は、取得した前記主要部品リストを前記保守部品の前記選定情報とするともに、前記故障リスクデータテーブルから取得した前記主要部品リストに羅列された前記保守部品のそれぞれの前記故障リスクを前記選定情報に含めて前記端末に前記通信回線を介して送信することを特徴とする作業機械の保守部品の選定システム。
【請求項2】
前記サーバは、
前記作業機械の前記主要部品と付帯部品とが対応付けられた主要部品・付帯部品対応テーブルと、
前記主要部品・付帯部品対応テーブルに基づき、前記点検対象機械の前記主要部品に対応付けて前記付帯部品を羅列した付帯部品リストを取得する付帯部品リスト取得部と、を更に有し、
前記付帯部品リスト取得部は、取得した前記付帯部品リストを前記保守部品の前記選定情報として前記端末に前記通信回線を介して送信することを特徴とする請求項1に記載の作業機械の保守部品の選定システム。
【請求項3】
前記サーバは、
過去の点検結果から前記点検項目と前記主要部品とが対応して出現する頻度を解析し、解析結果に応じて前記点検項目・主要部品対応テーブルを更新する解析部を更に有することを特徴とする請求項1に記載の作業機械の保守部品の選定システム。
【請求項4】
前記端末には、表示部を備え、前記表示部には、前記点検項目と前記故障リスクに関して数値化された前記リスクとが表示されることを特徴とする請求項1に記載の作業機械の保守部品の選定システム。
【請求項5】
前記端末には、表示部を備え、前記表示部には前記点検項目と、前記点検項目に対応付けられた主要部品と、前記故障リスクに関して数値化された前記リスクとが表示されることを特徴とする請求項1に記載の作業機械の保守部品の選定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木施工現場等において各種の作業を行う運搬機及び積込機等の作業機械の保守部品の選定システムであって、特に当該作業機械の点検結果に基づいて部品交換を行う際に、交換すべき部品の選定を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等に代表される作業機械は土木建設の他、資源開発、建物や自動車の解体、産業廃棄物の分別等、例えばアタッチメントを交換することで同一機種でも様々な場所や場面で汎用的に運用され得る。こうした運用上の特殊性から、同一機種であっても、負荷状況は様々で故障の原因となる事象は多岐に渡ることになる。また、実際に分解等の作業をしてみないと補修に必要な部品がよく分からない場合も多い。加えて、作業機械の稼働停止期間は稼働現場の作業の遅れに直結するため、作業機械の故障対応には迅速性が強く求められる。そのため、故障状況の見当が凡そついたら余計に補修部品を取り寄せて補修作業を遂行し、使用しなかった部品を返却するようなことがしばしば行われる。
【0003】
このような不要な部品の取り寄せ及び返却に要する無駄な時間や手間は、メンテナンス業務の効率低下に繋がる。そして、不要部品の取り寄せ及び返却の工程が常態化すれば、故障対応の迅速性に影響しかねない。しかしながら、復旧に必要な補修用の部品の選択には、膨大な情報に分散した必要部品を1つ1つ見つけ出す必要があるため、当該選択は豊富な経験が要求される難度の高い作業であり、場合によっては数週間という長期間を要する。
【0004】
このような問題を解決するために、作業機械の保守に必要な交換部品を選択すると、当該交換部品に関連する部品も合わせて発注できる、作業機械の補修部品の選択支援システムが、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-92259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のシステムにおいては、作業機械の点検結果に基づいて部品の交換を行う際に、作業機械の保守に必要な交換部品の選択については、当該点検結果等を考慮して保守員が自ら判断する必要があり、当該作業者のノウハウに依存することになる。このため、当該作業機械の保守員の経験等に影響して、発注すべき部品に過不足が発生する虞があった。また、経験の浅い保守員では、作業機械の保守に必要な交換部品の選択自体も困難になる。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、保守員のノウハウに依存することなく、作業機械の保守部品の選択の妥当性を高め、これらの部品を過不足なく発注可能にして、作業機械の保守業務の迅速性を向上することができる作業機械の保守部品の選定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明の作業機械の保守部品の選定システムは、作機械であって点検対象となる点検対象機械に関する保守部品の選定情報を、通信回線を介して端末に提供するサーバを有する作業機械の保守部品の選定システムにおいて、前記サーバは、前記作業機械から送信される稼働データを受信して稼働データ履歴テーブルとして保存する稼動データ保存処理部と、稼働データ履歴テーブルの前記稼働データに基づき、保守部品毎に経時的に発生する故障を複数に種類分けして表す種別とその種別に応じたリスクの程度の数値を含む故障リスクを算出し、故障リスクデータテーブルに保存する故障リスク算出部と、前記作業機械の点検項目と前記作業機械の主要な保守部品である主要部品とが対応付けられた点検項目・主要部品対応テーブルと、前記端末から受信する前記点検対象機械の情報に基づき、前記点検対象機械の点検項目リストを取得する点検項目リスト取得部と、前記点検項目・主要部品対応テーブルに基づき、前記点検対象機械の点検項目に対応付けて前記保守部品を羅列した主要部品リストを取得する主要部品リスト取得部と、を有し、前記主要部品リスト取得部は、取得した前記主要部品リストを前記保守部品の前記選定情報とするともに、前記故障リスクデータテーブルから取得した前記主要部品リストに羅列された前記保守部品のそれぞれの前記故障リスクを前記選定情報に含めて前記端末に前記通信回線を介して送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る作業機械の保守部品の選定システムによれば、保守員のノウハウに依存することなく、作業機械の保守部品及び当該保守部品に関連する関連部品の選択の妥当性を高め、これらの部品を過不足なく発注可能にして、作業機械の保守業務の迅速性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係る作業機械の保守部品の選定システムを用いた点検システムの全体構成を示す概略図である。
図2】本発明の実施例に係る作業機械の保守部品の選定システム、及びこれを用いた点検システムの概略を示すブロック図である。
図3】本発明の実施例に係る選定システムの故障リスクデータテーブルに保存されている故障リスクデータである。
図4】本発明の実施例に係る選定システムの点検項目データテーブルに保存されている点検項目リストである。
図5】本発明の実施例に係る選定システムの点検項目・主要部品対応テーブルに保存されている点検項目・主要部品対応表である。
図6】本発明の実施例に係る選定システムの主要部品・付帯部品対応テーブルに保存されている主要部品・付帯部品対応表である。
図7】本発明の実施例に係る選定システムの主要部品マスタテーブルに保存されている主要部品マスタリストである。
図8】本発明の実施例に係る選定システムの提案書履歴テーブルに保存されている提案書履歴リスト点検項目・主要部品対応表である。
図9】携帯端末の点検項目画面に表示される点検項目情報である。
図10】携帯端末の主要部品リスト画面に表示される主要部品リスト情報である。
図11】携帯端末の付帯部品リスト画面に表示される付帯部品リスト情報である。
図12】固定端末の対応表保守画面に表示される対応表保守情報である。
図13】本発明の実施例における稼働データ取得フローである。係る施工管理システムの機能ブロック図である。
図14】本発明の実施例における故障リスク算出フローである。
図15】本発明の実施例における携帯端末の点検項目画面に点検項目が表示されるまでの処理フローである。
図16】本発明の実施例において作業者が重機の点検時に行う処理フローである。
図17】本発明の実施例において作業者の点検後にサーバ側で行う処理フローである。
図18】本発明の実施例に係る選定システムにおける提案書履歴の作成方法に関する処理フロー図である。
図19】本発明の実施例に係る選定システムにおける提案書履歴の別な作成方法に関する処理フロー図である。
図20】本発明の実施例に係る選定システムにおける点検項目・主要部品対応表の具体的な保守処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明による作業機械の保守部品の選定システムの実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施例で用いる様々な数値は、いずれも一例を示すものであり、必要に応じて様々に変更することが可能である。
【0012】
以下において、図1乃至図12を参照しつつ、本実施例に係る作業機械の保守部品の選定システム、及びこれを用いた点検システムの全体構成について説明する。ここで、図1は、本実施例に係る作業機械の保守部品の選定システムを用いた点検システムの全体構成を示す概略図である。また、図2は、本実施例に係る作業機械の保守部品の選定システム、及びこれを用いた点検システムの概略を示すブロック図である。
【0013】
更に、図3は本実施例に係る選定システムの故障リスクデータテーブルに保存されている故障リスクデータであり、図4は本実施例に係る選定システムの点検項目データテーブルに保存されている点検項目リストであり、図5は本実施例に係る選定システムの点検項目・主要部品対応テーブルに保存されている点検項目・主要部品対応表であり、図6は本実施例に係る選定システムの主要部品・付帯部品対応テーブルに保存されている主要部品・付帯部品対応表である。
【0014】
また、図7は本実施例に係る選定システムの主要部品マスタテーブルに保存されている主要部品マスタリストであり、図8は本実施例に係る選定システムの提案書履歴テーブルに保存されている提案書履歴リスト点検項目・主要部品対応表である。
【0015】
そして、図9は携帯端末の点検項目画面に表示される点検項目情報であり、図10は携帯端末の主要部品リスト画面に表示される主要部品リスト情報であり、図11は携帯端末の付帯部品リスト画面に表示される付帯部品リスト情報であり、図12は固定端末の対応表保守画面に表示される対応表保守情報である。
【0016】
図1に示すように、本実施例における点検システム1は、作業機械である重機2の各種データを記憶及び処理するサーバ3を備える作業機械の保守部品の選定システム、作業者Wが操作する携帯端末4、サーバ3と携帯端末4とを通信可能に接続するための通信回線5を有している。また、点検システム1は、複数の重機2における稼働データ(作業情報及び位置情報等も含む)を、通信回線5を介してサーバ3に送信可能にするための通信衛星6、及び通信衛星6からの各種データを受信するための基地局7を有している。更に、点検システム1は、サーバ3に蓄積されたデータに外部からアクセス及び更新等の作業をするための固定端末8を有している。
【0017】
このような構成により、本実施例における点検システム1においては、重機2の稼働データを通信衛星6、基地局7、及び通信回線5を介してサーバ3に送信し、サーバ3において当該稼働データを保存する。作業者Wは、携帯端末4を利用して、作業機械のうち点検対象機械となる重機2Aに関する情報を入手し、点検作業及び交換部品の提案等を行う。更に、固定端末8の使用者は、サーバ3に記憶された各種データを必要に応じて、処理及び更新することが可能となる。
【0018】
本実施例において、重機2とは、積込作業を行う油圧ショベルを想定しているが、これに限定されることはない。重機2としては、例えば、運搬機であるダンプ、各種のローラ機械、及びホイルローダ等であってもよい。更に、作業機械としては、重機2に限定されることなく、土木施工現場において使用される各種の装置が含まれることになる。また、図2に示すように、重機2は、稼働データを収集するための稼働データ収集部2bを備えている。なお、重機2は、稼働データ以外のデータを収集するための各種の取集部、及び各種の作業部を備えているが、説明の便宜上のため、本実施例に関連のある稼働データ収集部2bのみを図示し、以下において説明することにする。
【0019】
稼働データ収集部2bは、重機2の稼働データとして、重機2のセンサ(図示せず)が検出したセンサ情報、及び位置衛星(図示せず)から受信する位置情報を収集する。また、稼働データ収集部2bは、収集した重機2の当該稼働データを、通信衛星6及び基地局7を経由させ、通信回線5を介してサーバ3に送信する。
【0020】
図2に示すように、サーバ3は、処理部3a及び記憶部3bを備えている。処理部3aは、例えば、各種の演算処理を行う中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)から構成され、サーバ3における各種の処理を実行するための装置である。記憶部3bは、例えば、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM:Dynamic Random Access Memory)から構成され、外部から供給される各種データを記憶するための装置である。
【0021】
また、図2に示すように、処理部3aは、稼働データ保存処理部11、故障リスク算出部12、故障リスク取得部13、点検項目リスト取得部14、主要部品リスト取得部15、付帯部品リスト取得部16、提案書電子化処理部17、提案書保存処理部18、及び提案書解析部19を含んでいる。記憶部3bは、稼働データ履歴テーブル21、故障リスクデータテーブル22、点検項目データテーブル23、点検項目・主要部品対応テーブル24、主要部品・付帯部品対応テーブル25、既存提案書データテーブル26、主要部品マスタテーブル27、及び提案書履歴テーブル28を含んでいる。
【0022】
稼働データ保存処理部11は、複数の重機2から送信された各稼働データを受信し、稼働データ履歴テーブル21に所定のフォーマットに適合する形で保存する。すなわち、稼働データ保存処理部11は、受信した重機2の稼働データを整理し、稼働データ履歴テーブル21の所定の格納場所に各データを保存する。稼働データ履歴テーブル21に記録される稼働データリストは、例えば、各重機2の作業日、作業時間、作業場所、作業内容等の一般的な情報が含まれている。
【0023】
故障リスク算出部12は、稼働データ履歴テーブル21に記憶された稼働データリストを参照し、重機2の機種ごとに故障リスクを算出する。例えば、故障リスク算出部12は、予め定義された所定の故障率算出関数を用い、更に当該稼働データを使用して、故障リスクを算出してもよい。なお、故障リスク算出部12は、重機2のメンテンナンス情報を取得し、故障リスクの算出する際に、当該メンテナンス情報を利用してもよい。
【0024】
また、故障リスク算出部12は、算出した各重機2の故障リスクを故障リスクデータテーブル22に故障リスクデータとして保存する。ここで、当該故障リスクデータは、例えば、図3に示すように、「機種」、「号機」、「主要部品」、「種別」、及び「リスク」の欄から構成されている。機種は重機2の製品名であり、号機は各機種に対して登録されている番号であり、主要部品は各重機2を構成する主要の保守部品の名称である。例えば、主要部品としてターボ、アームシリンダ、バケットシリンダ等の油圧ショベルにおいて必須となる部品が記載されている。また、種別は故障の3つの種類にわけられ、「総合」、「摩耗」、及び「突発」を含んでいる。摩耗は経時的な劣化等の故障を表わし、突発は経時的では突如発生する故障を表わし、総合はこれらを含めた総合的な故障を表わす。更に、リスクは、稼働データリストに基づいて故障リスク算出部12が算出した故障リスクである。なお、当該リスクは、その値が大きいほど、故障リスクが高いものとなっている。
【0025】
故障リスク取得部13は、故障リスクデータテーブル22に記憶された故障リスクデータを読み出し、通信回線5を介して当該故障リスクデータを携帯端末4に送信する。また、点検項目リスト取得部14は、携帯端末4から送信される重機2Aの点検項目を点検項目データテーブル23に点検項目データとして保存し、更には点検項目データテーブル23に記憶された点検項目データを更新する。そして、点検項目リスト取得部14は、点検項目データテーブル23に記憶された点検項目を読み出し、通信回線5を介して携帯端末4に送信することもできる。
【0026】
点検項目データテーブル23に記憶された点検項目データは、図4に示すように、「機種」の欄及び「点検項目」の欄から構成されている。そして、各機種(重機2ごと)に所定の点検項目が規定されている。例えば、図4に示すように、「排気管、マフラ取付部のゆるみ、損傷」、「過給機の作動、異音、油もれ」、「燃料フィルタの汚れ、ドレン」、「ブーム、アーム、リンクのき裂、変形、損傷」、「油圧シリンダの損傷、ロッドの傷、変形、油もれ」の点検項目が機種ごとに定められている。また、各機種に特有の点検項目も当然に規定されている。そして、当該点検項目は、必要に応じて更新(追加及び削除)されることもある。
【0027】
主要部品リスト取得部15は、点検項目・主要部品対応テーブル24に記憶されたデータから主要部品に関する情報を取得してリスト化する。ここで、点検項目・主要部品対応テーブル24に記憶されているデータは、図5に示すように、「機種」、「点検項目」、及び「主要部品」の欄から構成されている。そして、各機種の点検項目に対応させ、点検すべき主要部品が規定されている。具体的には、「排気管、マフラ取付部のゆるみ、損傷」については「マフラ」が対応づけられ、「過給機の作動、異音、油もれ」については「ターボ」が対応づけられ、「燃料フィルタの汚れ、ドレン」については「ファンベルト・エアコンベルト」が対応づけられ、「ブーム、アーム、リンクのき裂、変形、損傷」については「ブーム」及び「アーム」が対応づけられ、「油圧シリンダの損傷、ロッドの傷、変形、油もれ」については「バケットシリンダ」、「アームシリンダ」、及び「ブームシリンダ」が対応づけられている。このようなテーブルの構成から、主要部品リスト取得部15は、点検項目を実施するにあたり、重要となる主要部品の名称を取得することができる。
【0028】
付帯部品リスト取得部16は、主要部品・付帯部品対応テーブル25に記憶されたデータから付帯部品に関する情報を取得してリスト化する。ここで、主要部品・付帯部品対応テーブル25に記憶されているデータは、図6に示すように、「機種」、「主要部品」、「付帯部品」、「数量」、及び「単価」の欄から構成されている。付帯部品とは、主要部品自体も含み、更には当該主要部品に関連する保守部品である。具体的に、主要部品のターボは、主要部品自体である「ターボ」、当該ターボの関連部品となる「ガスケット」、「ホースバンド」、及び「ボルト」が対応付けられている。同様に、図6においては、主要部品のアームシリンダは、主要部品自体である「アームシリンダ」、当該アームシリンダの関連部品となる「Oリング」、「クリップバンド」、及び「作業油(ペール缶)」が対応付けられている。
【0029】
また、図6における数量とは、1つの主要部品に関連する各付帯部品の数量である。更に、図6における単価とは、付帯部品自体の単価である。なお、これらのデータについては、更新及び修正を適宜行うことが可能である。そして、付帯部品リスト取得部16は、例えば、主要部品としてターボが選択されると、2つのガスケット、2つのホースバンド、及び8つのボルトを、関連する付帯部品としての情報として取得することになる。
【0030】
提案書電子化処理部17は、後述する作業者Wの重機2Aの点検結果に応じて、交換必要な部品の提案を行うための書類を作成する機能を有している。例えば、当該提案書には、修理の提案書の項目として、点検内容を含めた経緯、並びに主要部品及び付帯部品を含めた発注すべき部品及び金額等が記載されている。
【0031】
また、提案書電子化処理部17は、既存提案書データテーブル26に保存された既存提案書データから、付帯部品リスト及び点検項目を抽出する。更に、提案書電子化処理部17は、主要部品マスタテーブル27に保存されている主要部品マスタリストに基づいて、主要部品を特定する。すなわち、提案書電子化処理部17は、既存提案書データには主要部品及び付帯部品が記載されたデータとなっているため、当該データ内から主要部品を容易に抽出する。ここで、主要部品マスタテーブル27に記憶された主要部品マスタリストは、図7に示すように、「機種」の欄、及び「主要部品」の欄から構成されている。そして、各機種に対する主要部品が対応づけて記載されている。本実施例においては、油圧ショベルとしての主要部品として、「マフラ」、「ターボ」、「ファンベルト・エアコンベルト」、「ブーム」、「アーム」、「バケットシリンダ」、「アームシリンダ」、及び「ブームシリンダ」が列挙されている。
【0032】
提案書保存処理部18は、提案書電子化処理部17によって作成された提案書を、既存提案書データテーブル26に保存する。また、提案書保存処理部18は、提案書電子化処理部17において抽出された主要部品、残りの部品である付帯部品、点検項目、及び点検に関する他の情報(機種、号機、日付)を提案書履歴テーブル28に、提案書履歴リストとして保存する。図8に示すように、提案書履歴リストは、「機種」、「号機」、「日付」、「点検項目」、「部品」、及び「種別」の欄から構成されている。提案書履歴リストを参照することにより、重機2Aに対して、いつどのような点検が実施され、当該点検結果に基づいてどのような部品が提案されたかを確認することができる。なお、「種別」とは、主要部品であるか、付帯部品であるかを分類する欄である。
【0033】
提案書解析部19は、提案書履歴テーブル28に記憶された過去の点検結果である提案書履歴リストを参照し、当該リストの「点検項目」と「主要部品」とが対応して出現する頻度を解析する。例えば、図8において、点検項目が「油圧シリンダの損傷、ロッドの傷、変形、油もれ」であって、部品が「アームシリンダ」となっている提案書の累積数を算出することになる。そして、提案書解析部19は、当該算出した累積数である出現頻度が、所定期間内において所定回数よりも少ない場合には、点検項目・主要部品対応テーブル24を更新し、該当する「点検項目」と「主要部品」との対応関係を解消することになる。なお、当該解消に関する処理は、自動的に行われてもよく、或いは固定端末8に当該更新の処理を推薦する案内を送信し、サーバ3の管理者に対応させてもよい。
【0034】
図2に示すように、携帯端末4は、各種の演算及び処理を実行する演算処理部31、各種のデータを保存する記憶部32、及び表示部33を備えている。携帯端末4は、点検システム1で使用される専用端末であってもよく、又は一般的なスマートフォンであってもよい。また、携帯端末4は、表示部33において表示する、点検項目画面34、主要部品リスト画面35、及び付帯部品リスト画面36を含んでいる。なお、携帯端末4は、上記構成以外にも、各種の構成部品(通信装置、センサ等)を含んでいるが、説明の便宜上のため、本実施例に特に関連のある部材等のみを図示し、以下において説明することにする。
【0035】
演算処理部31は、携帯端末4を構成する各種の部品及びプログラムを統括して制御する機能を有している。演算処理部31は、例えば、各種の演算処理を行う中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)から構成され、携帯端末4における各種の処理を実行するための装置である。記憶部32は、例えば、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM:Dynamic Random Access Memory)から構成され、外部から供給される各種データ及び携帯端末4で実行する各種のプログラムを記憶した装置である。
【0036】
点検項目画面34には、図9に示すような点検項目情報が表示される。具体的には、本実施例の重機2である油圧ショベルを対象として、「排気管、マフラ取付部のゆるみ、損傷」、「過給機の作動、異音、油もれ」、「燃料フィルタの汚れ、ドレン」、「ブーム、アーム、リンクのき裂、変形、損傷」、及び「油圧シリンダの損傷、ロッドの傷、変形、油もれ」が表示される。また、図9に示すように、各点検項目に対して故障リスクが算出済みであって且つ当該故障リスクが所定値以上である場合には、故障リスクに関する数値が点検項目の記載の隣に表示される。作業者Wは、当該故障リスクに関する数値を参考とし、当該数値が高いものから点検を行うことができ、点検自体を効率よく行うことが可能になる。
【0037】
主要部品リスト画面35には、図10に示すような保守部品である主要部品を羅列した主要部品リスト情報が表示される。具体的には、点検項目、及び当該点検項目に対応付けられた主要部品が表示されることになる。また、図10に示すように、各主要部品に対して故障リスクが算出済みであって且つ当該故障リスクが所定値以上である場合には、故障リスクに関する数値が主要部品の名称と隣に表示される。作業者Wは、当該故障リスクに関する数値を参考とし、当該数値が高いものから点検を行うことができ、点検自体を効率よく行うことが可能になる。
【0038】
付帯部品リスト画面36には、図11に示すような保守部品である付帯部品を羅列した付帯部品リスト情報が表示される。具体的には、点検項目、並びに当該点検項目に対応付けられた主要部品及び付帯部品が表示されることになる。特に本実施例においては、部品のリストを表示する部分に、「選択」、「主要」、「部品名称」、「数量」、「単価」、及び「小計」の欄が設けられている。「選択」の欄は、作業者Wが表示された部品を交換部品として提案するか否かを選択するためのチェックボックスである。「主要」の欄は、主要部品であるか否を判別するためのチェックボックスであり、当該欄にチェックがある部品は主要部品となり、チェックが無い部品は付帯部品となる。「数量」及び「単価」の欄については、作業者Wが数値を入力して変更することも可能になっている。
【0039】
点検項目については、選択が可能となっており、項目の表示の右側の欄によって、他の点検項目を選択することが可能になっている。そして、点検項目と部品のリストを表示する部分との間には、発注される部品の合計金額が表示されている。
【0040】
図2に示すように、固定端末8は、演算処理部41、及び表示部42を備えている。また、固定端末8は、表示部42において表示する対応表保守画面43を含んでいる。なお、固定端末8は、上記構成以外にも、各種の構成部品(記憶部、通信装置、センサ等)を含んでいるが、説明の便宜上のため、本実施例に特に関連のある部材等のみを図示し、以下において説明することにする。
【0041】
演算処理部41は、固定端末8を構成する各種の部品及びプログラムを統括して制御する機能を有している。演算処理部41は、例えば、各種の演算処理を行う中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)から構成され、携帯端末4における各種の処理を実行するための装置である。
【0042】
対応表保守画面43には、図12に示すような対応表保守情報が表示される。具体的には、対応表保守情報として、点検項目、及び部品に関する情報が表示される。部品に関する情報の部分は、「主要」、「部品名称」、及び「提案」の欄から構成されている。そして、提案内容を実行して情報を更新するか否かのボタン(更新ボタン及び取消ボタン)が、部品関する情報の部分の隣に表示される。例えば、図12においては、点検項目として「油圧シリンダの損傷、ロッドの傷、変形、油もれ」については、主要部品であるブームシリンダを削除し、付帯部品であるシールキットを追加する提案がなされていることになる。当該提案は、上述した提案書解析部19の解析結果に基づいて表示されている。固定端末8の使用者(サーバ3の管理者)が更新を選択すれば、点検項目・主要部品対応テーブル24に記憶されているデータが更新されることになる。これにより、点検項目と主要部品との対応関係をより適切なものに修正することができ、点検項目から主要部品を抽出する適格性を向上させることができる。
【0043】
次に、重機2の稼働データの収集に関するフローを図13を参照しつつ、説明する。図13は、本実施例における稼働データ取得フローである。
【0044】
先ず、ステップS11において、重機2の稼働データ収集部2bは、重機2に搭載された各種センサからセンサ情報を取得し、重機2の稼働データを収集する。その後、重機2の稼働データ収集部2bは、収集した稼働データを通信衛星6、基地局7及び通信回線5を介して、サーバ3に送信する。
【0045】
次に、ステップS12において、サーバ3の稼働データ保存処理部11は、受信した稼働データを稼働データ履歴テーブル21に保存する。稼働データ履歴テーブル21において保存される稼働データは、重機2の機種及び号機ごとの作業内容、日時、及び場所等が含まれている。
【0046】
次に、重機2の故障リスクの算出に関するフローを図14を参照しつつ、説明する。図14は、本実施例における故障リスク算出フローである。故障リスク算出フローにおいては、故障リスク算出部12が稼働データ履歴テーブル21に記憶された稼働データリストを参照して分析し、故障リスクを算出することになる(ステップS21)。その後、故障リスク算出部12が算出した故障リスクは、故障リスクデータテーブルに22に保存されることになる。
【0047】
作業者Wが重機2Aを点検する際に、携帯端末4側で実施する作業及び表示される内容、並びにサーバ3側における処理について、図15乃至図17を参照しつつ説明する。図15は、携帯端末4の点検項目画面34に点検項目が表示されるまでの処理フローである。図16は、作業者Wが重機2Aの点検時に行う処理フローである。図17は、作業者Wの点検後にサーバ3側で行う処理フローである。
【0048】
先ず、点検項目リスト取得部14が、点検対象機械である重機2Aの点検項目リストを取得する。具体的には、作業者Wが携帯端末4を操作し、記憶部32に記憶された点検項目リストから重機2Aの点検項目を選択し、重機2Aの点検項目リストを取得する(ステップS31)。
【0049】
次に、複数の点検項目について、点検項目ごとにステップS31の処理が繰り返される(ステップS32)。すなわち、点検項目ごとに、以下の処理(ステップS33~S43)が行われる。
【0050】
先ず、作業者Wが携帯端末4を操作し、通信回線5を介して重機2Aに関する点検項目を点検項目リスト取得部14に送信する(ステップS33)。なお、携帯端末4側において点検項目リストが存在しない場合には、点検項目に代えて重機2Aの機種又は号機の情報を、通信回線5を介して点検項目リスト取得部14に送信する。この場合に、点検項目リスト取得部14は、点検項目データテーブル23を参照し、受信した情報に対応する点検項項目リストを取得することになる。
【0051】
次に、主要部品リスト取得部15は、点検項目・主要部品対応テーブル24を参照し、点検項目リスト取得部14から供給される重機2Aの点検項目に対応する主要部品リストを取得する(ステップS34)。例えば、図4における「油圧シリンダの損傷、ロッドの傷、変形、油もれ」が点検項目として受信された場合には、図5に示す点検項目・主要部品対応表から「バケットシリンダ」、「アームシリンダ」、及び「ブームシリンダ」が主要部品として抽出される。
【0052】
次に、複数の主要部品リストについて、主要部品ごとにステップS34の処理が繰り返される(ステップS35)。すなわち、主要部品ごとに、以下の処理(ステップS36~S37)が行われる。
【0053】
具体的に、ステップS34において取得された主要部品ごとに故障リスクが取得される(ステップS36)。すなわち、故障リスク取得部13が、故障リスクデータテーブル22を参照し、主要部品リスト取得部15から供給される主要部品の故障リスクを取得することになる。例えば、「バケットシリンダ」、「アームシリンダ」、及び「ブームシリンダ」が主要部品として取得されている場合には、図3における「アームシリンダ」に関する3つのリスク「総合:8」、「摩耗:3」、「突発:8」が取得され、「バケットシリンダ」」に関する3つのリスク「総合:6」、「摩耗:6」、「突発:2」が取得される。なお、「ブームシリンダ」について、故障リスクが記憶されていない場合には、「ブームシリンダ」の故障リスクは取得されないことになる。
【0054】
次に、ステップS34において取得した全ての主要部品の故障リスク取得が完了し、当該繰り返し処理が終了すると(ステップS37)、主要部品リスト取得部15は、取得した主要部品と、故障リスク取得部13から供給される故障リスクとを紐づけ、紐づけた情報(主要部品リスト)を通信回線5を介して携帯端末4に送信する(ステップS38)。すなわち、主要部品リスト取得部15は、図3における主要部品、種別、及びリスクに関する情報を、携帯端末4に送信することになる。
【0055】
次に、携帯端末4の演算処理部31は、受信した情報(主要部品リストと故障リスクが紐づけられた情報)を利用して、携帯端末4からサーバ3に送信した点検項目ごとの故障リスクを算出する(ステップS39)。具体的には、「油圧シリンダの損傷、ロッドの傷、変形、油もれ」の点検項目に対して、主要部品として「バケットシリンダ」、「アームシリンダ」、及び「ブームシリンダ」を受信し、且つ「アームシリンダ」について「総合:8」、「摩耗:3」、「突発:8」のリスクが紐づけられ、「バケットシリンダ」」について「総合:6」、「摩耗:6」、「突発:2」のリスクが紐づけされている場合には、最もリスクの数値が大きい「8」が当該点検項目の故障リスクとして算出される。
いずれの主要部品にリスクが紐づけられていない場合には、その点検項目については故障リスクがない又は不明として扱われる。なお、算出したリスクを記憶部32に保存し、他の処理において当該保存したリスクを読み出して利用するようにしてもよい。
【0056】
次に、携帯端末4の演算処理部31は、各点検項目にたいして、ステップS39において算出した故障リスクが存在し、且つ当該故障リスクが閾値以上のであるか否かを判定する(ステップS40)。ステップS40においてYesの場合には、点検項目画面34において、該当する点検項目を算出した故障リスクとともに表示し(ステップS41)、ステップS40においてNoの場合には、点検項目画面34において、該当する点検項目のみを表示する(ステップS42)。具体的には、図9に示すように、所定閾値を「5」と設定した場合、この閾値5以上の故障リスクが算出されなかった「排気管、マフラ取付部のゆるみ、損傷」、「過給機の作動、異音、油もれ」(リスク3)、「燃料フィルタの汚れ、ドレン」、及び「ブーム、アーム、リンクのき裂、変形、損傷」の点検項目については、故障リスクが表示されず、閾値5以上の故障リスクが算出された「油圧シリンダの損傷、ロッドの傷、変形、油もれ」(リスク8)の点検項目については、故障リスクが表示されることになる。
【0057】
そして、ステップS31において取得された全ての点検項目について上記処理が行われると、当該繰り返し処理が終了(ステップS43)、本フローが終了することになる。
【0058】
次に、作業者Wは、重機2Aの点検を行う際に、携帯端末4の点検項目画面34に表示された点検項目情報を参考にする。例えば、作業者Wは、図9に示された点検項目の中から、故障リスクが最も高い点検項目が「油圧シリンダの損傷、ロッドの傷、変形、油もれ」であると把握すると、「油圧シリンダの損傷、ロッドの傷、変形、油もれ」に関連する部材の点検を開始し、故障が生じやすい項目から効率良く点検を行うことになる。
【0059】
その後、当該点検の結果において、問題があると判断される部品が見つかると、作業者Wは、当該点検項目を選択する(ステップS51)。例えば、「油圧シリンダの損傷、ロッドの傷、変形、油もれ」に関連する部材に不具合の可能性があるものを見つければ、当該点検項目を選択することになる。一方、点検の結果において問題がないと判断される場合には、他の点検項目に関する部材の点検を行い、問題がある部品を発見したら当該点検項目を選択する。
【0060】
次に、問題があると判断される点検項目が選択されると、主要部品リスト画面35には、選択した点検項目に関する主要部品が点検部位として表示される。例えば、ステップS51において、図9の「油圧シリンダの損傷、ロッドの傷、変形、油もれ」を選択すると、図10に示すように、当該点検項目に対応した点検部位として、「ブームシリンダ」、「アームシリンダ」、及び「バケットシリンダ」が表示される。ここで、点検部位である主要部品には、故障リスクが存在すれば、最も高い故障リスクが表示されることになる。なお、故障リスクが所定の閾値(例えば、閾値5)未満である場合には、当該故障リスクを表示しなくてもよい。
【0061】
そして、作業者Wは、主要部品リスト画面35に表示された点検部位を参考にし、更になる詳細な点検を行う。すなわち、作業者Wは、当該点検部位の中から故障リスクの高い主要部品を優先的に点検することになる。これにより、作業効率の向上が図られることになる。例えば、作業者Wは、図10に示された「ブームシリンダ」、「アームシリンダ」、及び「バケットシリンダ」のなかから、故障リスクの最も高い「アームシリンダ」から優先的に点検を行うことになる。そして、作業者Wは、当該検査により問題があった部品を点検部位として最終的に選択することになる(ステップS52)。
【0062】
なお、作業者Wは、ステップS51において点検項目を選択する前に、点検項目に関連する部品がわからない場合には、当該点検項目を先に選択し、主要部品リスト画面35に表示される点検部位を参考にして、重機2Aの点検を開始してもよい。
【0063】
次に、作業者Wが重機2Aの点検後において、問題のある主要部品(点検項目)を選択すると(図16:ステップS52、図17:ステップS61)、携帯端末4の演算処理部31は、当該主要部品の情報を通信回線5を介して、サーバ3に送信する(ステップS62)。サーバ3の付帯部品リスト取得部16は、当該主要部品の情報を受信すると、主要部品・付帯部品対応テーブル25を参照し、当該主要部品に対応する付帯部品リストを取得する(ステップS63)。
【0064】
その後、付帯部品リスト取得部16は、取得した付帯部品リストを通信回線5を介して、携帯端末4に送信する。そして、携帯端末4の演算処理部31は、受信した付帯部品
リストから、交換を提案する主要部品と付帯部品の合計金額を算出する(ステップS64)。続いて、携帯端末4の演算処理部31は、付帯部品リストとともに、当該付帯部品の名称、数量、単価、合計等の所望の情報を付帯部品リスト画面36に表示する(ステップS65)。ここで、作業者Wは、付帯部品リスト画面36に表示された内容を検討し、必要がない部品を選択から外したり、数量の変更を行い、提案書の作成を行うことになる。
【0065】
当該提案書は、作業者Wが携帯端末4の提案書作成ボタンを押すことにより、当該提案書作成に必要なデータがサーバ3に送信され、サーバ3の提案書電子化処理部17が作成することになる。そして、提案書電子化処理部17が作成した提案書は、携帯端末4に送信されるとともに、既存提案書データテーブル26に保存されることになる。
【0066】
次に、点検項目・主要部品対応表の保守支援に関する処理フローを、図18乃至図20を参照しつつ説明する。ここで、図18は、サーバ3における提案書履歴の作成方法に関する処理フロー図である。また、図19は、サーバ3における提案書履歴の別な作成方法に関する処理フロー図である。図20は、サーバ3における点検項目・主要部品対応表の具体的な保守処理フローである。
【0067】
先ず、作業者Wの上述した処理によって付帯部品リスト画面36に表示された点検項目及びこれに関連する情報を利用して提案書を作成するか否かによって携帯端末4における処理が異なる。作業者Wの上述した処理によって付帯部品リスト画面36に表示された点検項目を利用しない場合(ステップS71:No)、演算処理部31は記憶部32又はサーバ3の点検項目データテーブル23から点検項目リストを取得する(ステップS72)。その後、取得された点検項目リストが携帯端末4の付帯部品リスト画面36に表示され、作業者Wが所望の点検項目を選択することになる(ステップS73)。
【0068】
作業者Wの上述した処理によって付帯部品リスト画面36に表示された点検項目及びこれに関連する情報を利用して提案書を作成する場合(ステップS71:Yes)、及びステップS72及びS73を経て点検項目が選択された場合、図8に示すように、提案書保存処理部18は、付帯部品リスト(主用部品リストを含む)を点検項目、機種、号機、及び日付とともに提案書履歴テーブル28に保存する(ステップS74)。なお、当該提案書履歴の保存とともに、提案書自体の作成もなされることになる。
【0069】
一方、既存提案書データテーブル26に存在する提案書から復元して処理する場合には、提案書電子化処理部17が既存提案書データテーブル26に存在する提案書を電子化する(ステップS81)。その後、電子化された提案書内に点検項目が無い場合(ステップS82:No)、提案書電子化処理部17が関連する点検結果等を電子化する処理が行われる(ステップS83)。
【0070】
次に、ステップS82において点検項目が提案書内に存在する場合(ステップS82:Yes)、及びステップS83を処理した場合、当該提案書内に付帯部品リストがあるか否が判定される(ステップS84)。当該提案書内に付帯部品リストが存在しない場合(ステップS85)、関連する明細書等を電子化する処理が行われる(ステップS85)。
【0071】
次に、ステップS84において付帯部品リストが提案書内に存在する場合(ステップS84:Yes)、及びステップS85を処理した場合、提案書保存処理部18が主要部品マスタテーブル27を参照し、当該提案書の点検項目に関連する主要部品を特定する(ステップS86)。その後、提案書保存処理部18は、付帯部品リストを点検項目とともに、提案書履歴テーブル28に保存することになる(ステップS87)。
【0072】
そして、提案書解析部19は、提案書履歴テーブル28に記憶された提案書履歴リストを解析する(ステップS91)。具体的には、提案書解析部19は、当該リストの「点検項目」と「主要部品」とが対応して出現する頻度を解析する。更に、提案書解析部19は、点検項目・主要部品対応テーブル24に記憶された既存の提案書履歴リストにおいて、過不足があるか否かを判定する(ステップS92)。すなわち、提案書解析部19は、当該算出した出現頻度が、所定期間内において所定回数よりも少ないか、多いかを判定する。
【0073】
当該判定後に、提案書解析部19は、判定結果に基づいて、既存の提案書履歴リストを修正する(ステップS93)。具体的には、提案書解析部19は、ステップS92において算出した出現頻度が、所定期間内において所定回数よりも少ない場合には、点検項目・主要部品対応テーブル24を更新し、該当する「点検項目」と「主要部品」との対応関係を解消することになる。一方で、既存の提案書履歴リストにおいて、所定の点検項目に対して、対応づけて記載されておらず且つ当該出現頻度が多い部品については、主要部品に追加する修正を行うことになる。
【0074】
なお、上述した修正を行う場合には、固定端末8の対応表保守画面43に図12に示す情報を表示し、固定端末8の使用者に情報の更新可否を選択するようにしてもよい。
【0075】
以上のように、本実施例に係る選定システムであるサーバ3は、重機2の点検項目と重機2の保守部品である主要部品とが対応付けられた点検項目・主要部品対応テーブル24と、携帯端末4から受信する重機2Aの情報から重機2Aの点検項目リストを取得する点検項目リスト取得部14と、点検項目・主要部品対応テーブル24に記憶された情報を基に、重機2Aの点検項目に対応付けて主要部品を羅列した主要部品リストを取得する主要部品リスト取得部15とを有している。また、主要部品リスト取得部15は、取得した当該主要部品リストを主要部品の選定情報として携帯端末4に通信回線5を介して送信することになる。
【0076】
このため、作業者Wが重機2の点検作業を行う際に、点検作業をサーバ3に送信するだけで、サーバ3が最適な主要部品の候補を選定情報として、作業者Wに提供することができる。そして、当該選定情報を得た作業者Wは、自身のノウハウに依存することなく、当該選定情報に従って点検作業を行うことで、容易に点検を行うことができ、主要部品の発注を的確に行うことが可能になる。すなわち、本実施例に係るサーバ3は、作業員Wのノウハウに依存することなく、重機2の保守部品の選択の妥当性を高め、これらの部品を過不足なく発注可能にして、重機2の保守業務の迅速性を向上することができる。
【0077】
また、本実施例に係る選定システムであるサーバ3は、重機2の故障リスクを算出し、当該故障リスクを主要部品と関連づけて、当該選定情報として携帯端末4に供給している。このため、作業者Wは、重機2の点検を行う際に、当該故障リスクを参照することで、重機2の保守業務の迅速性をより一層向上することができる。
【0078】
更に、本実施例に係る選定システムであるサーバ3は、重機2Aの保守部品の情報として、主要部品に加えて付帯部品の情報も当該選定情報に含めて送信している。このため、作業者Wは、重機2の保守部品の選択の妥当性を高めに必要な追加の情報を容易に得ることができるため、自身のノウハウに依存することなく、保守部品の選定をより確実に行うことが可能になる。
【0079】
そして、本実施例に係る選定システムであるサーバ3は、過去の点検結果に応じて、点検項目・主要部品対応テーブル24に記憶された情報を更新する解析部を更に有している。このため、本実施例に係る選定システムであるサーバ3は、点検項目と主要部品とのより関連精度が高まった情報を提供することができ、作業者Wによる重機2の保守部品の選択の妥当性をより一層高めることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 点検システム
2 重機(作業機械)
2A 重機(点検対象機械)
2b 稼働データ収集部
3 サーバ
3a 処理部
3b 記憶部
4 携帯端末
5 通信回線
6 通信衛星
7 基地局
8 固定端末
11 稼働データ保存処理部
12 故障リスク算出部
13 故障リスク取得部
14 点検項目リスト取得部
15 主要部品リスト取得部
16 付帯部品リスト取得部
17 提案書電子化処理部
18 提案書保存処理部
19 提案書解析部
21 稼働データ履歴テーブル
22 故障リスクデータテーブル
23 点検項目データテーブル
24 点検項目・主要部品対応テーブル
25 主要部品・付帯部品対応テーブル
26 既存提案書データテーブル
27 主要部品マスタテーブル
28 提案書履歴テーブル
31 演算処理部
32 記憶部
33 表示部
34 点検項目画面
35 主要部品リスト画面
36 付帯部品リスト画面
41 演算処理部
42 表示部
43 対応表保守画面
W 作業者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20