(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】スピーカ端子接続構造及びそれを備えた携帯無線通信機器
(51)【国際特許分類】
H04R 1/06 20060101AFI20230323BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
H04R1/06 310
H04R1/02 102Z
(21)【出願番号】P 2018195984
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 耕平
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 武志
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-298789(JP,A)
【文献】特開2007-235740(JP,A)
【文献】特開2005-260771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/06
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカ端子と回路基板とを接続するスピーカ端子接続構造であって、
前記スピーカの+極端子及び-極端子であるスピーカ側接続端子と、
前記回路基板の、前記スピーカ側接続端子の各々と対向する位置に配置され、前記スピーカ側接続端子と接触される回路基板側接続端子と、を備え、
前記スピーカ側接続端子及び
前記回路基板側接続端子の
いずれか一方が、方向性を有するバネ材接続端子で成り
、他方の接続端子の+極端子及び-極端子の各々に対して少なくとも2つずつ設けられ、その2つは互いに
60度~120度の範囲で所定の角度回転した位置関係に配置されていることを特徴とするスピーカ端子接続構造。
【請求項2】
前記バネ材接続端子は、各々が独立した板バネ材から成ることを特徴とする請求項1
に記載のスピーカ端子接続構造。
【請求項3】
前記スピーカ側接続端子及び回路基板側接続端子のいずれか一方が
前記バネ材接続端子で成り、他方が接点端子であることを特徴とする請求項1
に記載のスピーカ端子接続構造。
【請求項4】
前記
バネ材接続端子の+極端子及び-極端子の各々が、それらの間を挟んで線対称に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のスピーカ端子接続構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項
3のいずれか一項に記載のスピーカ端子接続構造を備えた携帯無線通信機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ端子と回路基板とを接続する端子接続構造及びその接続構造を備えた携帯無線通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スピーカ端子と回路基板との接続は、リード線の半田付けによって行われていた。リード線の半田付けは、接触不良や断線に対しては有利ではあるが、ロボットによる生産には不適であって生産効率が良くない。そこで、半田付けを行わず、生産自動化への対応のために、回路基板のスピーカ接続用回路座とスピーカの裏面に設けた板バネ端子とを対向圧接させる接続構造が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、同じく自動実装対応を図った、板ばね端子を用いた接続構造において、スピーカの軸方向に可動可能な一対の板ばね状端子の接点が、スピーカから略同じ距離にある一対の音響機器の音声出力端子と接続される構成とし、振動による接点不良に起因した瞬断等の防止を図ったものがある(例えば特許文献2参照)。また、コイルスプリングでプランジャーを付勢して成るプランジャータイプの接続端子が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平02-057695号公報
【文献】特許第3783369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるような接続構造では、振動による接触不良が発生し易く、音声出力の瞬断や音声が出力されない問題を招く虞がある。また、特許文献2に示されるような接続構造は、一対の可動接点を、スピーカのヨークの両外側のフレーム外周に配置しているため、接続構造が大型化し、ハンディトランシーバのような小型の携帯機器に適用することは困難である。
【0006】
また、特許文献2には、可動接点を2つ設けることで、接点故障率の低減を図ることも開示されているが、これら可動接点は互いに平行する板ばね状端子に設けられているため、同じ方向の振動には弱いため、2つの接点が同時に接触不良を起こす虞がある。また、プランジャータイプの接続端子を用いると高価となる。
【0007】
本発明は、上記問題を解消するものであり、振動や衝撃による接続不良や瞬間的な接続断を防止することができる、スピーカ端子と回路基板との端子接続構造及びそれを備えた携帯無線通信機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、スピーカ端子と回路基板とを接続するスピーカ端子接続構造であって、前記スピーカの+極端子及び-極端子であるスピーカ側接続端子と、前記回路基板の、前記スピーカ側接続端子の各々と対向する位置に配置され、前記スピーカ側接続端子と接触される回路基板側接続端子と、を備え、前記スピーカ側接続端子及び前記回路基板側接続端子のいずれか一方が、方向性を有するバネ材接続端子で成り、他方の接続端子の+極端子及び-極端子の各々に対して少なくとも2つずつ設けられ、その2つは互いに60度~120度の範囲で所定の角度回転した位置関係に配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、上記接続構造において、バネ材接続端子は、各々が独立した板バネ材から成ることが望ましい。また、スピーカ側接続端子及び回路基板側接続端子のいずれか一方がバネ材接続端子で成り、他方が接点端子であってもよい。
【0010】
また、上記接続構造において、バネ材接続端子の+極端子及び-極端子の各々が、それらの間を挟んで線対称に配置されていることが望ましい。
【0011】
また、本発明は、上記のスピーカ端子接続構造を備えた携帯無線通信機器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スピーカ側接続端子及び回路基板側接続端子のいずれか一方が、方向性を有するバネ材接続端子で成り、他方の接続端子の+極端子及び-極端子の各々に対して少なくとも2つずつ設けられ、その2つは互いに60度~120度の範囲で所定の角度回転した位置関係に配置されているので、接続工数を削減しつつ安価に、振動や衝撃に強いスピーカ端子接続構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスピーカ端子接続構造を備えた携帯無線通信機器の外観図。
【
図2】同携帯無線通信機器においてフロントパネルを外して回路基板が収納されているリアパネル内面を示す平面図。
【
図3】同携帯無線通信機器なにおいてリアパネルを外してスピーカが収納されているフロントパネル内面を示す斜視図。
【
図5】前記回路基板上に設けられた接続端子の拡大斜視図。
【
図6】前記回路基板の接続端子が前記スピーカの接続端子に接続される状況を、回路基板を透視して示した拡大斜視図。
【
図7】前記回路基板の接続端子とスピーカ接続端子との接続部の、接続前後の状態を示す部分側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るスピーカ端子接続構造及びそれを備えた携帯無線通信機器について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るスピーカ端子接続構造を備えた携帯無線通信機器1を示す。携帯無線通信機器1は、フロントパネル2及びリアパネル3により構成されるハウジングを備え、フロントパネル2とリアパネル3とは、互いの開口端縁同士を突き合わせて結合される。フロントパネル2には、内装されたスピーカの音声出力用孔4、表示用のLCD5、操作ボタン6等が設けられている。リアパネル3には、回路基板等が内装されている。携帯無線通信機器1は、前記両パネル2,3の開口端縁同士が突き合わせ結合されることにより、互いに接触、接続されるスピーカ側接続端子と回路基板側接続端子を内装している。
【0015】
図2は、携帯無線通信機器1のリアパネル3に収納された回路基板7側を示す。
図3は、携帯無線通信機器1のフロントパネル2に収納されたスピーカ10側を示す。
図3では、スピーカ10の背面側のフレームやヨーク、接続端子9等が見えている。これらの図において、スピーカ10はフロントパネル2に対して、また、回路基板7はリアパネル3に対して、それぞれ所定位置及び所定高さ位置に固定される。回路基板7は、リアパネル3の内面にネジ等により固定され、回路基板側接続端子8を備える。回路基板側接続端子8は、スピーカ側接続端子9と接触されるものであり、導電性のバネ材を用いた接続端子81,82から成る。この回路基板側接続端子8は、リアパネル3とフロントパネル2とが分離された状態でのリアパネル3の開口に面する回路基板7上の所定位置に設けられる。
【0016】
スピーカ10は、フロントパネル2の前面にある音声出力用孔4から音声出力できるようにフロントパネル2にネジ等により固定され、回路基板側接続端子8と接触されるスピーカ側接続端子9を備える。スピーカ側接続端子9は、スピーカ10の背面に備えられた+極端子及び-極端子である導電材で成る接続端子91,92から成る。前記回路基板側接続端子8の接続端子81,82は、リアパネル3とフロントパネル2とが結合されたとき、回路基板7上の、スピーカ側接続端子9の接続端子91,91の各々と対向する位置に配置されている。接続端子81,82は、接続の確実化を図るため、+極端子及び-極端子である接続端子91,91の各々に対して少なくとも2つずつ設けられている(この詳細は後述)。
【0017】
このように構成された、リアパネル3(
図2)とフロントパネル2(
図3)との開口端縁同士を突き合わせて固定することで、回路基板側接続端子8(81,82)とスピーカ側接続端子9(91,92)とが圧接接触し、電気的に接続される。
【0018】
上記実施形態では、一方の回路基板側接続端子8にバネ材端子を用いて、他方のスピーカ側接続端子9には通常の接点端子(電極)を用いたものを示したが、スピーカ側接続端子9及び回路基板側接続端子8の両者にバネ材を用いたものであってもよい。一方に通常の接点端子(電極)を用いた場合、安価で低コスト化が図れる。また、両者にバネ材を用いた端子の場合は、接触の追従性が向上するため、接続のより高度な確実性が図れる。
【0019】
次に、
図4乃至
図6を参照して、回路基板側接続端子8及びスピーカ側接続端子9の配置の詳細を説明する。
【0020】
図4及び
図5は、回路基板7上に設けられた回路基板側接続端子8の接続端子81,82を示す。接続端子81は、バネ材端子81A,81Bから成り、接続端子82は、バネ材端子82A,82Bから成る。これらバネ材端子81A,81B,82A,82Bは、金属板を折り曲げることにより形成されたものを用いればよい。
【0021】
バネ材端子81Aとバネ材端子81Bは、互いに所定の角度、例えば略90度回転した位置関係(L字状)に配置され、同様に、バネ材端子82Aとバネ材端子82Bも、互いに所定の角度、例えば略90度回転した位置関係(L字状)に配置されている。これら互いに所定の角度、例えば略90度回転した位置関係のものが、1対の接続端子となる。ここに、略90度回転した位置関係とは、バネ材端子は、通常、応力が加わると撓む板バネ材を用いた構造であるため、端子自身に方向性を有していることに因る。また、バネ材端子81A,81Bとバネ材端子82A,82Bとは、それらの間(
図5の一点鎖線CL)を挟んで線対称に配置されている。
【0022】
図6は、フロントパネル2に固定されたスピーカ10側に設けられた接続端子91,92を示す。同図では、回路基板側の接続端子81,82がスピーカ側の接続端子91,92(電極)に接続される状況を、回路基板7を透視して示している。一方の接続端子91は、スピーカの+極端子であり、他方の接続端子92は、スピーカの-極端子である。接続端子91と接続端子92とは、両者間を挟んで線対称に配置されている。+極端子と-極端子とは逆であってもよい。接続端子91には、接続端子81のバネ材端子81A,81Bが接続され、接続端子92には、接続端子82のバネ材端子82A,82Bが接続される。
【0023】
なお、本実施形態では、スピーカ10側の接続端子91,92として接点端子(電極)を用いたものを示したが、これらの接続端子91,92にも、バネ材端子を用いてもよい。その場合、接続端子91,92の各々において、少なくとも2つのバネ材端子は、互いに所定の角度、例えば略90度回転した位置関係に配置され、又は、L字状に繋げた形状とすればよい。また、スピーカ側の接続端子91,92の大きさを、回路基板側の接続端子81,82の大きさより大きくしておくことが望ましい。また、スピーカ側の接続端子の各々において、少なくとも2つのバネ材端子とした場合、これらと回路基板側の2つの接続端子81,82とを接続した状態において、スピーカ側の接続端子と回路基板側の接続端子が所定の角度(例えば両者が直交する角度)をなすように配置してもよい。この場合、スピーカ側の接続端子91,92の大きさを回路基板側の接続端子81,82の大きさより必ずしも大きくしておく必要はない。また、スピーカ側の接続端子91,92としては、回路基板側の2つの接続端子81,82が接続できる面積の天面を有した直方体や立方体等を用いることもできる。このように回路基板側とスピーカ側の両者の接続端子にバネ材端子を用いる形態は、回路基板7とスピーカ10との距離が離れている場合に好適である。
【0024】
図7は、回路基板7側の接続端子81の一つであるバネ材端子81Aと、スピーカ10側の接続端子9の一つである接点端子91との接続部を示し、接続前と接続後の状態を示している。接続後には、バネ材端子81Aが接点端子91に押圧力をもって当接され、バネ材端子81Aが撓んだ状態となり、接触接続は確実なものとなる。他の接続部も同様である。このようにして、携帯無線通信機器1として、リアパネル3とフロントパネル2とが固定された状態では、回路基板7側のバネ材端子81A,81Bは、スピーカ10側の接点端子91にそれぞれ接触接続され、また、回路基板7側のバネ材端子82A,82Bは、スピーカ10側の接点端子92にそれぞれ接触接続される。
【0025】
上記のように構成された本実施形態の端子接続構造の作用効果を説明する。携帯無線通信機器1に振動が加わったとき、互いに接触している接続端子81と接続端子91、接続端子82と接続端子92の各々にズレが生じることがある。そのとき、各々所定の角度、例えば略90度回転した位置関係にある1対の接続端子を用いているため、ズレの方向が1対の接続端子のそれぞれで異なる。このため、一対のうちの、一方の接続端子(バネ材端子、接点端子)が接触不良や断線を起こしたとしても、他方の接続端子(バネ材端子、接点端子)は接続を維持することができる。従って、振動や衝撃による接続不良を防止し、回避することができる。
【0026】
上記のように、1対の接点端子が、互いに所定の角度、例えば略90度回転した位置関係にあるのは、振動が加わったときに接触位置にズレが生じても接触不良が生じないようにするためであって、位置関係は、上記作用効果が得られる範囲内であれば、例えば60度~120の範囲であっても構わない。本請求の範囲でいう「所定の角度回転」は、そのような場合をも含む。
【0027】
また、バネ材端子81A、81Bとバネ材端子82A,82Bとが線対称に配置され、また、接点端子91と接点端子92とが線対称に配置されているので、対称軸の左右でバランスが取れ、接触圧を均等にすることが容易となる。
【0028】
また、上記構成により、半田付けを行わず、生産自動化への対応が可能で、生産工数が少なく、さらには、高価なプランジャータイプの接続端子を用いる必要がなくなり、安価な接続構造を提供することができる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、スピーカ10側の接続端子91,92として接点端子(電極)を用い、回路基板7側の接続端子81,82として、バネ材端子81A,81B,82A,82Bを用いたものを示したが、これとは逆に、前者にバネ材端子、後者に接点端子(電極)を用いてもよい。また、バネ材端子81A、81Bとバネ材端子82A,82Bとが線対称に配置され、接点端子91と接点端子92とが線対称に配置されているものを示したが、必ずしも、線対称でなくてもよい。また、上記実施形態では、互いに所定の角度、例えば略90度回転した位置関係の1対の接続端子や接点端子の配置が、L字状になっているが、これに限られるものではなく、例えば逆L字状、T字状等、2つの方向性を持つもの、さらには、スター状の3つの方向性を持つものあっても構わない。
【符号の説明】
【0030】
1 携帯無線通信機器
2 フロントパネル
3 リアパネル
7 回路基板
8 回路基板側接続端子
81,82 接続端子
81A,81B,82A,82B バネ材端子
9 スピーカ側接続端子
91,92 接続端子
10 スピーカ