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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】攪拌型調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/046 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
A47J43/046
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019003103
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020110324
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】舩橋 昂広
(72)【発明者】
【氏名】小林 美緒
【審査官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-116932(JP,U)
【文献】特開昭60-193422(JP,A)
【文献】実開昭50-088581(JP,U)
【文献】実開昭60-070253(JP,U)
【文献】特開2005-087571(JP,A)
【文献】特開2013-066580(JP,A)
【文献】特開平10-165055(JP,A)
【文献】特開2003-153813(JP,A)
【文献】特開2003-230491(JP,A)
【文献】登録実用新案第3093774(JP,U)
【文献】特開昭50-089576(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0097351(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0263419(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00 - 27/13
A47J 27/20 - 29/06
A47J 33/00 - 36/42
A47J 42/00 - 44/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器内の内容物の攪拌を駆動するモータと、
前記モータが過負荷状態となったときに前記モータへの通電を遮断するモータ保護部と、
前記モータと前記モータ保護部との間に配置され、前記モータからの排気熱を前記モータ保護部へ送出する送出機構とを備えており、
前記送出機構は、前記モータからの排気熱を外部へ送出する排出口を有しており、
前記モータ保護部は、前記排気熱の送出経路において、前記排出口よりも下流側に前記排出口に隣接して配置されており、
前記モータは、高速回転モードと低速回転モードという少なくとも2つの回転モードでの動作が可能であり、
前記モータ保護部は、前記高速回転モードにおける前記モータの過負荷状態を検知する第1検知部と、前記低速回転モードにおける前記モータの過負荷状態を検知する第2検知部とを有しており、
前記第1検知部と前記第2検知部のうち、前記モータの過負荷状態の検知により大きな負荷を要する検知部が、前記排出口により近い位置に配置されている、
攪拌型調理器。
【請求項2】
容器と、
前記容器内の内容物の攪拌を駆動するモータと、
前記モータが過負荷状態となったときに前記モータへの通電を遮断するモータ保護部と、
前記モータと前記モータ保護部との間に配置され、前記モータからの排気熱を前記モータ保護部へ送出する送出機構とを備えており、
前記モータ、前記モータ保護部、および前記送出機構を収容している本体部と、
前記モータ保護部によって遮断された通電を復帰させるリセットボタンと、
をさらに備えており、
前記リセットボタンは、前記本体部の底面に配置されており、
前記モータ保護部は、高速回転モードにおける前記モータの過負荷状態を検知する第1検知部と、低速回転モードにおける前記モータの過負荷状態を検知する第2検知部とを有しており、
前記リセットボタンは、1回の押圧動作で前記第1検知部および前記第2検知部の両方を復帰させるように構成されている、
攪拌型調理器。
【請求項3】
容器と、
前記容器内の内容物の攪拌を駆動するモータと、
前記モータが過負荷状態となったときに前記モータへの通電を遮断するモータ保護部と、
前記モータと前記モータ保護部との間に配置され、前記モータからの排気熱を前記モータ保護部へ送出する送出機構とを備えており、
前記送出機構は、前記モータからの排気熱を外部へ送出する排出口を有しており、
前記モータ保護部は、前記排気熱の送出経路において、前記排出口よりも下流側に前記排出口に隣接して配置されており、かつ、前記排出口よりも下方に位置している、
拌型調理器。
【請求項4】
前記モータ、前記モータ保護部、および前記送出機構を収容している本体部と、
前記モータ保護部によって遮断された通電を復帰させるリセットボタンと
をさらに備えており、
前記リセットボタンは、前記本体部の底面に配置されている、
請求項1または3に記載の攪拌型調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌型調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
ミキサー、フードプロセッサーなどの攪拌型調理器は、野菜や果物などを用いてジュースやスープを作ったり、野菜、果物、食肉などの食品を粉砕混合したりするのに好適に用いられる。このような攪拌型調理器では、使用中に材料を入れた容器(カップ)内で材料がうまく対流せずカッターがロック状態になった場合などに、モータに過剰な負荷がかかることがある。この状態でモータへの通電が継続されるとモータが焼損するおそれがある。そのため、攪拌型調理器には、モータに過剰な負荷がかかった場合に強制的にモータへの通電を遮断する保護装置が内蔵されているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、モータを内蔵する本体と、該本体に内蔵され前記モータを停止、駆動する操作ボタンを有するスイッチと、前記操作ボタンを押圧状態に保持するロック手段と、前記本体に内蔵されモータが過負荷状態になった際に通電を遮断するブレーカと、前記本体に内蔵され、ブレーカを復帰させるリセットボタンとを備えている調理器が開示されている。この調理器に備えられているブレーカは、調理中にミキサーボトル内で材料がうまく対流せずカッターがロック状態になった場合など、モータに負荷がかかった状態が所定時間以上継続した際に作動して、強制的に通電を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-153813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、モータの過負荷を防ぐための別の保護装置として、モータに過電流が流れたときの自己発熱による温度上昇を検知して通電を遮断するサーキットプロテクタを備えている攪拌型調理器もある。しかし、サーキットプロテクタは、周囲の温度などの外部環境によって動作に誤差が生じる可能性があり、モータの運転状態を適切に反映した動作ができない場合がある。
【0006】
そこで、本発明では、過負荷状態でのモータの運転をより適切に検知してモータへの通電を遮断することのできる攪拌型調理器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面にかかる攪拌型調理器は、容器と、前記容器内の内容物の攪拌を駆動するモータと、前記モータが過負荷状態となったときに前記モータへの通電を遮断するモータ保護部と、前記モータと前記モータ保護部との間に配置され、前記モータからの排気熱を前記モータ保護部へ送出する送出機構とを備えており、前記送出機構は、前記モータからの排気熱を外部へ送出する排出口を有しており、前記モータ保護部は、前記排気熱の送出経路において、前記排出口よりも下流側に前記排出口に隣接して配置されており、前記モータは、高速回転モードと低速回転モードという少なくとも2つの回転モードでの動作が可能であり、前記モータ保護部は、前記高速回転モードにおける前記モータの過負荷状態を検知する第1検知部と、前記低速回転モードにおける前記モータの過負荷状態を検知する第2検知部とを有しており、前記第1検知部と前記第2検知部のうち、前記モータの過負荷状態の検知により大きな負荷を要する検知部が、前記排出口により近い位置に配置されている。
【0008】
上記の構成によれば、モータからの排気熱をモータ保護部へ送出する送出機構を備えていることでモータ保護部の周囲の温度が低下することを抑えることができる。これにより、モータ保護部の動作速度の低下を抑えることができる。そのため、攪拌型調理器において、過負荷状態でのモータの運転をより適切に検知してモータへの通電を遮断することができる。また、上記の構成によれば、第1検知部と第2検知部のうち、モータの過負荷状態の検知により大きな負荷を要する検知部に対して優先的に排気熱を付与することができる。
【0009】
本発明の第二局面にかかる攪拌型調理器は、容器と、前記容器内の内容物の攪拌を駆動するモータと、前記モータが過負荷状態となったときに前記モータへの通電を遮断するモータ保護部と、前記モータと前記モータ保護部との間に配置され、前記モータからの排気熱を前記モータ保護部へ送出する送出機構とを備えており、前記モータ、前記モータ保護部、および前記送出機構を収容している本体部と、前記モータ保護部によって遮断された通電を復帰させるリセットボタンとをさらに備えており、前記リセットボタンは、前記本体部の底面に配置されており、前記モータ保護部は、高速回転モードにおける前記モータの過負荷状態を検知する第1検知部と、低速回転モードにおける前記モータの過負荷状態を検知する第2検知部とを有しており、前記リセットボタンは、1回の押圧動作で前記第1検知部および前記第2検知部の両方を復帰させるように構成されている。
【0010】
上記の構成によれば、使用者が第1検知部および第2検知部のどちらのリセットボタンを復帰させるべきかを考える必要なく、1回の押圧動作で該当する検知部側の電気回路を復帰させることができる。
【0011】
本発明の第三局面にかかる攪拌型調理器は、容器と、前記容器内の内容物の攪拌を駆動するモータと、前記モータが過負荷状態となったときに前記モータへの通電を遮断するモータ保護部と、前記モータと前記モータ保護部との間に配置され、前記モータからの排気熱を前記モータ保護部へ送出する送出機構とを備えており、前記送出機構は、前記モータからの排気熱を外部へ送出する排気口を有しており、前記モータ保護部は、前記排気熱の送出経路において、前記排出口よりも下流側に前記排出口に隣接して配置されており、かつ、排出口よりも下方に位置している。
【0012】
上記の構成によれば、排出口から送出される排気熱をモータ保護部により確実に付与することができる。
【0013】
本発明の第一局面または第三局面にかかる攪拌型調理器は、前記モータ、前記モータ保護部、および前記送出機構を収容している本体部と、前記モータ保護部によって遮断された通電を復帰させるリセットボタンとをさらに備えており、前記リセットボタンは、前記本体部の底面に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の一局面にかかる攪拌型調理器は、モータ保護部と、前記モータからの排気熱を前記モータ保護部へ送出する送出機構とを備えている。この構成によれば、過負荷状態でのモータの運転をより適切に検知してモータへの通電を遮断することのできる攪拌型調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかるミキサーの外観構成を示す斜視図である。
図2図1に示すミキサーの本体部の外観構成を示す側面図である。
図3図2に示す本体部の内部構成を示す断面図である。
図4】ミキサーの本体部内に備えられているインナーケースの外観を示す斜視図である。
図5】ミキサーの本体部の底面部分を示す平面図である。
図6】ミキサーの本体部内に備えられているインナーケースおよびモータケースを示す断面図である。
図7】ミキサーの本体部内に備えられているインナーケースの外観を示す斜視図である。
図8】ミキサーの本体部内に備えられているモータケースの外観を示す斜視図である。
図9】ミキサーの本体部内に備えられているサーキットプロテクタの構成を示す断面図である。
図10】ミキサーの本体部内に備えられているサーキットプロテクタ周辺の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0017】
本実施形態では、攪拌型調理器の一例であるミキサー1を例に挙げて説明する。但し、本発明にかかる攪拌型調理器は、ミキサーに限定されず、フードプロセッサーなどであってもよい。
【0018】
(ミキサーの全体構成)
まず、本実施の形態にかかるミキサー1の全体構成について説明する。図1には、ミキサー1の外観を示す。ミキサー1は、主として、本体部11と、カップ部(容器)12とで構成されている。本実施の形態においては、本体部11に対してカップ部12が着脱可能に構成されている。
【0019】
図2には、カップ部12が取り外された状態の本体部11の外観を示す。図3には、本体部11の内部構成を示す。図3は、図2に示す本体部11のA-A線部分の断面図である。本体部11の外面は、主に、本体カバー31、土台部32、および透明カバー33で構成されている。
【0020】
本体カバー31は、略角錐台形状を有している。本体カバー31の一側面には、操作部34が設けられている。使用者が操作部34を操作することで、ミキサー1の攪拌動作を開始させたり停止させたりすることができる。また、本実施形態では、ミキサー1は、通常運転モード(低速回転モード)とパワフル運転モード(高速回転モード)という、モータの回転速度が異なる2つのモードでの運転が可能である。使用者は、操作部34を操作することで各運転モードに設定することができる。
【0021】
土台部32は、本体カバー31の下に位置している。土台部32は、ミキサー1の底面部分を構成している。
【0022】
土台部32の一側面には、吸気口37が設けられている。吸気口37から本体部11の内部へ空気が送り込まれ、この空気によって、内部のモータ50(図3参照)が冷却される。土台部32の吸気口37が形成されている箇所には、底面カバー36が取り付けられている。また、吸気口37の形成位置には、モータ50への通電を復帰させるためのリセットボタン45が配置されている。
【0023】
また、土台部32内には、電源コード35が引き出し可能な状態で収容されている。電源コード35が土台部32の内部に収容されている状態では、図1に示すように、電源コード35の先端のプラグ部分のみが、土台部32の一端部から露出している。
【0024】
透明カバー33は、本体カバー31の上に配置されている。透明カバー33は、略円錐台形状を有している。透明カバー33の内側に、意匠性が高い金属や樹脂などのシート状部材を配置することで、ミキサー1の美観を向上させることができる。なお、別の実施態様では、透明カバー33は、設けられていなくてもよい。この場合は、本体カバー31によって本体部11の側面全体が構成される。
【0025】
透明カバー33の内側には、モータ50の駆動力をカップ部12側のカッターへ伝達するための係合部材56が配置されている(図3参照)。ミキサー1を使用する際には、カップ部12の底部を透明カバー33の内側に嵌め込み、カップ部12側の係合部材(図示せず)を、本体部11側の係合部材56と連結させる。
【0026】
カップ部12は、略円筒形状の容器である。カップ部12の本体部分は、プラスチック樹脂、ガラスなどで形成されている。カップ部12の本体部分は、透明の材料で形成されていることが好ましい。
【0027】
カップ部12の内部の底面には、カッター(図示せず)が設けられている。カッターは、カップ部12の底面を貫通するシャフトに連結されており、シャフトの回転に連動して回転する。これにより、カップ部12内の内容物を攪拌したり、粉砕したり、混合したりすることができる。シャフトは、カップ部12および本体部11にそれぞれ設けられた係合部材を介して、本体部11内のモータ50の回転軸53と接続される。
【0028】
カップ部12は、取っ手21を有している。本実施形態では、取っ手21は、片持ちタイプであって、取っ手21の上部がカップ部12の上部と一体的に繋がっている。
【0029】
カップ部12の上面には、蓋22が取り外し可能な状態で取り付けられる。
【0030】
(本体部の内部構成)
続いて、本体部11の内部の構成について説明する。
【0031】
本体部11内には、主として、モータ50、モータケース(第1のケース)61、インナーケース(第2のケース)71、およびサーキットプロテクタ(モータ保護部)40などが備えられている。
【0032】
モータ50は、カップ部12内の内容物を攪拌、粉砕などするためのカッターの回転動作を駆動する。モータ50は、ステータ51、回転軸53、およびロータ54などを有している。
【0033】
ステータ51は、モータ50の外側部分に設けられている。ステータ51には、巻線が取り付けられている。本実施形態では、パワフル運転時に通電される高速回転用巻線と、通常運転時に通電される低速回転用巻線とを有している。これにより、モータ50は、通常運転モード(低速回転モード)とパワフル運転モード(高速回転モード)という、2種類の回転速度で動作可能となっている。
【0034】
本実施形態では、回転軸53を中心として互いに対向する2つの位置に巻線が取り付けられている。これら2つの位置の巻線のうち、一方の側(図3では右側)を第1巻線部51aと呼び、他方の側(図3では左側)を第2巻線部51bと呼ぶ。
【0035】
回転軸53およびロータ54は、ステータ51の内側に設けられている。高速回転用巻線または低速回転用巻線に電流が流れると、ロータ54は、回転軸53を中心に回転する。回転軸53の上方端部には、モータ50の駆動力をカップ部12側へ伝達するための係合部材56が取り付けられている。
【0036】
モータケース61は、モータ50を収容している。モータケース61は、例えば、プラスチック樹脂で形成されている。図8には、モータケース61の外観を示す。モータケース61は、略円筒形状の容器の開口部を下方に向けた状態で土台部32に対して取り付けられている。これにより、土台部32に形成された吸気口37から本体部11内に入った空気は、図3中矢印で示すように、モータケース61内に流入し、上昇する。モータケース61内に流入した空気によって、モータケース61内のモータ50は冷却される。
【0037】
モータケース61の側面には、モータケース61内の空気を外部へ排出する第1排出口62が形成されている。第1排出口62は、モータケース61の上方であって、モータ50の設置位置に対応する箇所に形成されている。本実施形態では、第1排出口62は、第1巻線部51aが配置されている側に形成されている。これは、モータ50の作動時に第1巻線部51aの方が第2巻線部51bよりも温度が低くなるからである。
【0038】
このような第1排出口62が設けられていることで、モータ50の冷却に使用された空気をモータケース61の外部(具体的には、インナーケース71の内部)へ排出させることができる。これにより、吸気口37からモータケース61内に流入した空気を効率的に利用してモータ50の冷却を行うことができる。また、モータ50を冷却したことによって温められた空気を第1排出口62から外部へ排出させることができる。
【0039】
なお、第2巻線部51bが配置されている側のモータケース61には、開口部は形成されておらず、壁部61aとなっている。これにより、モータ50の作動時に第1巻線部51aよりも温度の高い第2巻線部51b側からは、モータケース61内の空気が外部へ排出されることなく、一旦第2巻線部51b周辺で空気が滞留する。その後、第1巻線部51a側の第1排出口62から外部へ空気が排出される。そのため、より温度の高い第2巻線部51bをより効率的に冷却することができると考えられる。
【0040】
インナーケース71は、モータケース61を外側から覆うように配置されている。インナーケース71は、例えば、プラスチック樹脂で形成されている。図4および図7には、インナーケース71の外観を示す。インナーケース71は、容器の開口部を下方に向けた状態で土台部32に対して取り付けられている。
【0041】
上記の構成により、モータケース61の外側には、インナーケース71で囲われた空間が形成される。すなわち、本体部11内には、モータケース61およびインナーケース71の二重構造が形成され(図6参照)、この二重構造のケースの内部にモータ50が収容される(図3参照)。これにより、モータ50の動作音が外部へ漏れることを抑えることができる。したがって、静音性に優れたミキサー1を提供することができる。
【0042】
モータケース61の第1排出口62から排出された空気は、このインナーケース71で囲われた空間(すなわち、第1ケースと第2ケースとの間に形成される空間)内に流入する。なお、モータケース61の第1排出口62から排出された空気は、モータケース61の外周面に形成されている第1リブ63によって、その流れの方向が変更される(図8参照)。
【0043】
インナーケース71の側面には、第2排出口72aおよび72bが形成されている。本実施形態では、第2排出口は2つ設けられている。但し、第2排出口の数は、2個に限定されない。第1排出口62からインナーケース71で囲われた空間内に流入した空気は、第2排出口72aおよび72bからインナーケース71の外側へ排出される。
【0044】
また、インナーケース71の側面には、さらなる空気の排出口として、温風排出口75が形成されている(図4参照)。温風排出口75は、後述するように、モータからの排気熱をサーキットプロテクタ40へ向けて排出するための開口部である。
【0045】
インナーケース71の外側へ排出された空気は、第2リブ73aおよび73bによって流れの方向が変更され、本体カバー31内の空間を通り下方へ流れる。そして、本体部11の下方の土台部32の底面に形成されている最終排気口38から本体部11の外へ排出される。図5に示すように、最終排気口38は、土台部32の底面の外周に沿って、約半周にわたって複数個形成されている。
【0046】
このようにして、モータ50の作動中に、本体部11内に外部からの空気を取り込み、モータケース61内でモータ50の周囲を通過させた後、インナーケース71および本体カバー31の内部を通って、本体部11外へ空気を排出させるという空気の流れが形成される。このような空気の流れが形成されることで、比較的温度の低い外部の空気を本体部11内へ取り込み、この空気を用いてモータ50を冷却してモータ50の温度上昇を抑えることができる。
【0047】
なお、モータ50を冷却することによって、モータ50から発生した熱は、モータ50の周囲の空気に伝達される。これにより、モータ50の周囲の空気は温められる。この温められた空気を、モータ50の排気熱と呼ぶ。
【0048】
サーキットプロテクタ40は、モータ50が過負荷状態となったときにモータ50への通電を遮断し、モータ50が故障することを防止するモータ保護部の役割を果たしている。モータ50は、例えば、カップ部12内に被調理物を入れすぎたり、氷などの硬い被調理物をカップ部12内に入れたりした状態でモータ50を作動させたときに、カップ部12内のカッターの回転が阻害された場合などに発生する。
【0049】
サーキットプロテクタ40は、モータ50が回転不能になった際に、モータ50に流れる過電流に起因する自己発熱(温度上昇)を検知して、検知温度が所定温度よりも高くなったときに、モータ50への通電を遮断する。
【0050】
なお、本発明の別の実施態様では、モータ保護部をワンショットサーモスタットで構成することもできる。ワンショットサーモスタットは、モータに過電流が流れたことが原因となって発生するモータそのものの温度上昇を検知して、検知温度が所定温度よりも高くなったときに、モータへの通電を遮断する。
【0051】
図4に示すように、サーキットプロテクタ40は、本体部11内の土台部32上に配置されている。サーキットプロテクタ40は、インナーケース71の外側のモータ50からの排気熱が及ぶ場所に配置されている。言い換えると、サーキットプロテクタ40は、モータ50からの熱を排出するための空気の送出経路内に配置されている。
【0052】
本実施形態では、サーキットプロテクタ40は、温風排出口75の近傍に配置されている。サーキットプロテクタ40は、吸気口37から本体部11内へ流入し、最終排気口38から流出する空気の流れにおいて、温風排出口75のすぐ下流側に配置されていると言うこともできる。
【0053】
これにより、モータ50の周囲を通過することで温められた空気を、サーキットプロテクタ40へ向けて吹き出すことができる。このように、温風排出口75は、モータ50からの排気熱をサーキットプロテクタ40(すなわち、モータ保護部)へ送出する送出機構の一例である。
【0054】
サーキットプロテクタ40が温風排出口75のすぐ下流側に配置されていることで、モータ50によって温められた後にインナーケース71内を通った空気を、サーキットプロテクタ40へ排出させることができる。これにより、モータ50からの排気熱によって、ミキサー1が稼働している間のサーキットプロテクタ40の周辺の温度を30~40℃程度に保持することができる。
【0055】
サーキットプロテクタ40が自己発熱による温度の上限値を検知してモータ50の通電を遮断するまでの時間は、サーキットプロテクタ40の周囲の温度によって変動する可能性がある。本実施形態では、運転中のモータ50から排出される熱を用いてサーキットプロテクタ40周辺の温度を上昇させておくことで、モータ50の運転状態にかかわらず(すなわち、正常運転か異常運転(過負荷状態の運転)かによらず)、サーキットプロテクタ40周辺の温度変化を小さくすることができる。
【0056】
これにより、自己発熱によってモータ50の過負荷状態を検知するサーキットプロテクタ40の検知性能を適度な状態に維持し、サーキットプロテクタ40の検知精度の低下を抑えることができる。したがって、サーキットプロテクタ40の動作を安定させることができる。
【0057】
(サーキットプロテクタの構成)
ここで、サーキットプロテクタ40の具体的な構成について説明する。図9は、図3に示す本体部11の断面図中のサーキットプロテクタ40周辺部分を拡大して示す図である。図10には、サーキットプロテクタ40を構成する端子部分および温風排出口75の位置関係を示す。
【0058】
サーキットプロテクタ40は、パワフル運転モード(高速回転モード)におけるモータ50の異常(すなわち、過負荷)を検知する第1検知部41と、通常運転モード(低速回転モード)におけるモータ50の異常を検知する第2検知部42とを有している。第1検知部41は、その上方に2つの端子部41aを有している。第2検知部42も、その上方に2つの端子部42aを有している。
【0059】
第1検知部41および第2検知部42の内部には、感熱スイッチであるバイメタルが備えられている。第1検知部41内のバイメタルと、第2検知部42内のバイメタルとは、動作温度が互いに異なっている。
【0060】
図4および図9に示すように、第1検知部41と第2検知部42とは、温風排出口75の前に前後に並んで配置されている。本実施形態では、パワフル運転モードのときのモータ50の異常を検知する第1検知部41を、通常運転モードのときのモータ50の異常を検知する第2検知部42よりも、温風排出口75の近くに配置している。
【0061】
これは、第1検知部41内のバイメタルと第2検知部42内のバイメタルとで、モータの過負荷状態を検知する感度に差があるためである。そして、第1検知部41と第2検知部42のうち、モータ50の過負荷状態の検知により大きな負荷を要する検知部を、モータ50の排気熱を優先的に受ける温風排出口75のより近くに配置する。
【0062】
具体的には、第1検知部41の動作電流値とパワフル運転モードにおけるモータ50の設定電流値との差と、第2検知部42の動作電流値と通常運転モードにおけるモータ50の設定電流値との差を比較して、より差の大きい方が、モータ50の過負荷状態を検知するためにより大きな負荷を要する検知部となる。
【0063】
例えば、本実施形態では、第1検知部41の動作電流値が3.15Aであり、第2検知部42の動作電流値が2.5Aである場合、第1検知部41の方がモータ50の過負荷状態を検知するためにより大きな負荷を要する。そこで、第1検知部41の端子部41aを、第2検知部42の端子部42aよりも温風排出口75の近くに配置している。ここで、検知部の動作電流値が3.15Aであるとは、3.15Aの電流を所定時間(例えば、1時間)以上流した場合にサーキットプロテクタが動作して回路を遮断することを意味する。
【0064】
なお、上述の例は本発明の一例であり、第1検知部41および第2検知部42の配置位置はこれに限定されない。もし、第2検知部42の方が第1検知部41と比較して、各検知部に対応した運転モードにおけるモータの過負荷状態の検知により大きな負荷を要する場合には、第2検知部42を温風排出口75のより近くに配置する。
【0065】
また、サーキットプロテクタ40には、各検知部41および42に対するリセットスイッチ46および47が設けられている。
【0066】
第1検知部41に対する第1リセットスイッチ46は、第1検知部41の下部に設けられている。第1リセットスイッチ46は、第1検知部41が動作してモータ50の通電が遮断されたときに、その電気回路を復帰させるためのスイッチである。
【0067】
第2検知部42に対する第2リセットスイッチ47は、第2検知部42の下部に設けられている。第2リセットスイッチ47は、第2検知部42が動作してモータ50の通電が遮断されたときに、その電気回路を復帰させるためのスイッチである。
【0068】
各リセットスイッチ46および47の下方には、両方のリセットスイッチに作用するリセットボタン45が設けられている。図9に示すように、リセットボタン45の押圧部は、土台部32の底面から下方に向かって露出している。また、図2に示すように、リセットボタン45の押圧部は、本体部11の底面に形成された吸気口37の形成空間に配置されている。これにより、使用者の指をリセットボタン45の押圧部に容易に到達させることができる。
【0069】
リセットボタン45は、ゴム材料、シリコン樹脂材料などの弾力性を有する材料で形成されている。そして、リセットボタン45の押圧部を上方へ押すと、両方のリセットスイッチ46および47に作用するような構成となっている。これにより、モータ50が通常運転モードおよびパワフル運転モードの何れの運転状態であった場合にも、モータへの通電が遮断されたときに1つのリセットスイッチ46を用いて遮断された方の回路を復帰させることができる。
【0070】
また、図10に示すように、サーキットプロテクタ40の各端子部41aおよび42aの上端が、温風排出口75の開口部の上端よりも下方に位置するように、温風排出口75の開口部の大きさおよび各端子部41aおよび42aの位置が規定されている。これにより、温風排出口75から吹き出される温風(モータ50の排気熱)を確実に各端子部41aおよび42aに当てることができる。
【0071】
なお、サーキットプロテクタ40の過度な温度上昇を抑えるために、温風排出口75の開口面積は、インナーケース71に形成されている他の排出口(すなわち、第2排出口72aおよび72b)の開口面積よりも小さくすることが好ましい。また、モータ50が配置されているモータケース61内から最終排気口38までに空気の送出経路において、温風排出口75は、第2排出口72aおよび72bよりも下流側に配置されていることが好ましい。これにより、サーキットプロテクタ40に対して適度な量の温風を送ることができる。
【0072】
温風排出口75からサーキットプロテクタ40の方へ排出された空気は、第2排出口72aおよび72bから排出された空気と同様に、土台部32の底面に形成されている最終排気口38から本体部11の外部へ排出される。
【0073】
(まとめ)
ミキサー1の運転中、モータ50の排気熱は、モータ50の近傍において、例えば約50℃となる。本実施形態にかかる構成では、ミキサー1の運転中に、モータ50の排気熱が、モータケース61内の空気の排出経路を通って、温風排出口75からサーキットプロテクタ40へ排出される。このようにして、モータ50の排気熱をサーキットプロテクタ40へ付与することができる。これにより、モータ50の稼働中、サーキットプロテクタ40の周辺温度を、約30℃から約40℃の間でほぼ一定に保つことができる。
【0074】
例えば、モータ50の負荷が小さく電流値も低い場合には、サーキットプロテクタ40の自己発熱が小さいため、モータ50の排気熱でモータ50は温められる。一方、モータ50の負荷が大きく電流値が上昇した場合には、サーキットプロテクタ40の自己発熱が大きくなり、モータ50を通過した空気によってサーキットプロテクタ40は冷却される。
【0075】
このようにすることで、モータ50が正常に運転しているときのサーキットプロテクタ40の温度を、サーキットプロテクタ40が作動する温度(すなわち、モータ50に過電流が流れたことを検知するときの温度)に近づけることができる。したがって、モータ50の回転がロックされた場合など、モータ50が過負荷状態となったときに、サーキットプロテクタ40の温度を作動温度にまで短時間で上昇させることができ、モータ50への通電をすばやく遮断することができる。これにより、モータ50の過負荷状態での運転時間を短縮させることができ、ミキサー1の製品寿命期間中のモータ50の故障回数を低減させることができる。
【0076】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1 :ミキサー(攪拌型調理器)
11 :本体部
12 :カップ部(容器)
31 :本体カバー
32 :土台部
40 :サーキットプロテクタ(モータ保護部)
41 :(サーキットプロテクタの)第1検知部
42 :(サーキットプロテクタの)第2検知部
45 :リセットボタン
50 :モータ
61 :モータケース
62 :第1排出口
71 :インナーケース
72a :第2排出口
72b :第2排出口
75 :温風排出口(送出機構、排出口)
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8
図9
図10