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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20230323BHJP
   B60N 2/80 20180101ALI20230323BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20230323BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20230323BHJP
   A61M 21/02 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/80
B60N2/64
A47C7/62 Z
A61M21/02 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021089561
(22)【出願日】2021-05-27
(62)【分割の表示】P 2016224460の分割
【原出願日】2016-11-17
(65)【公開番号】P2021127118
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】池田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 生佳
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】梶原 永恵
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-136543(JP,A)
【文献】特開2015-097611(JP,A)
【文献】特開2012-110528(JP,A)
【文献】登録実用新案第3181802(JP,U)
【文献】特開2006-006511(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143535(WO,A1)
【文献】特開2008-200486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/62,31/12
A61M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座可能な乗物用シートであって、
前記乗員の生体情報を検知する検知部と、
前記検知部によって検知した生体情報に基づいて、前記乗員の疲労度を推定する疲労度推定部と、
前記乗員の背部を支持するシートバックの一部に、前記背部の一部を押圧可能な押圧部と、
前記乗員を温めるヒーターと、
前記押圧部で前記乗員の背部を押圧することにより前記乗員の呼吸を支援する第1の疲労回復処理と、前記ヒーターで前記乗員を温める処理を行うことにより前記乗員の睡眠を支援する第2の疲労回復処理と、前記疲労度に応じて切り替える制御部と、
を有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
記検知部は、前記乗員の心拍を検知する心拍検知部を備え、
前記疲労度推定部は、前記心拍検知部によって検知された前記乗員の心拍に基づいて前記疲労度を推定することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記制御部は、前記疲労度が第1の閾値以上であって、且つ前記第1の閾値より大きい第2の閾値以下である場合に前記第1の疲労回復処理を実行し、前記疲労度が前記第2の閾値以上である場合に前記第2の疲労回復処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記検知部は、前記乗員の呼吸を検知する呼吸検知部を備え、
前記第1の疲労回復処理では、前記呼吸検知部による検知結果に基づいて、前記制御部は前記乗員が息を吸うタイミングに合わせて前記押圧部により前記背部の前記一部を押圧することを特徴とする請求項2又は3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第1の疲労回復処理では、前記制御部は、前記乗員が息を吐くタイミングに合わせて前記押圧部による押圧を解除することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第2の疲労回復処理は、前記乗員に対し睡眠状態への移行を支援する入眠支援処理と、前記乗員が睡眠状態に移行してから所定時間経過した後に前記乗員に対し覚醒状態への移行を支援する覚醒支援処理と、を有することを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記睡眠状態は、前記心拍検知部により検知された前記乗員の心拍に基づいて判断されることを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記乗員が前記睡眠状態に移行した後に、前記乗員の頭部を両側から支持する頭部支持部を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員の疲労回復機能を備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の乗物において乗員の疲労を回復させるために、例えば下記の特許文献1に記載の発明のように、シートにマッサージ機を搭載し乗員の肉体的疲労を解消しようとするものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-518632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗員の疲労は肉体的疲労に限らず、例えば運転によるストレス等の精神的な疲労も存在するが、上記の従来技術では、こうした精神的な疲労を解消するものではない。
また、乗員がどの程度疲労しているかによっても適切な疲労回復措置も異なるのに対し、従来技術では乗員の疲労度に応じた疲労回復措置を講じることができていなかった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗員の疲労度に応じた適切な疲労回復措置を講じることができる乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、本発明に係る乗物用シートによれば、乗員が着座可能な乗物用シートであって、前記乗員の生体情報を検知する検知部と、前記検知部によって検知した生体情報に基づいて、前記乗員の疲労度を推定する疲労度推定部と、前記乗員の背部を支持するシートバックの一部に、前記背部の一部を押圧可能な押圧部と、前記乗員を温めるヒーターと、前記押圧部で前記乗員の背部を押圧することにより前記乗員の呼吸を支援する第1の疲労回復処理と、前記ヒーターで前記乗員を温める処理を行うことにより前記乗員の睡眠を支援する第2の疲労回復処理と、前記疲労度に応じて切り替える制御部と、を有することにより解決される。
上記の乗物用シートによれば、乗員に対し適切な疲労回復措置を講じることができる。これにより、乗員の疲労を効果的に軽減させることができる。
【0007】
上記の乗物用シートにおいて、前記検知部は、前記乗員の心拍を検知する心拍検知部を備え、前記疲労度推定部は、前記心拍検知部によって検知された前記乗員の心拍に基づいて前記疲労度を推定することとしてもよい。
こうすることで、乗員の心拍に基づいて乗員の疲労度を推定できる。
【0008】
上記の乗物用シートにおいて、前記制御部は、前記疲労度が第1の閾値以上であって、且つ前記第1の閾値より大きい第2の閾値以下である場合に前記第1の疲労回復処理を実行し、前記疲労度が前記第2の閾値以上である場合に前記第2の疲労回復処理を実行することとしてもよい。
こうすることで、乗員の疲労度が低い場合には乗員の呼吸を支援し、乗員の疲労度が高い場合には乗員の睡眠を支援することで、乗員に対し疲労度に合った疲労回復措置を講じることができる。
【0009】
上記の乗物用シートにおいて、前記検知部は、前記乗員の呼吸を検知する呼吸検知部を備え、前記第1の疲労回復処理では、前記呼吸検知部による検知結果に基づいて、前記制御部は前記乗員が息を吸うタイミングに合わせて前記押圧部により前記背部の前記一部を押圧することとしてもよい。
こうすることで、乗員が息を吸うタイミングに合わせて背部を押すことで乗員の胸郭を開かせることができるため、乗員は深い呼吸をしやすくなる。これにより、乗員の呼吸を安定させ、リラックスさせることができる。
【0010】
上記の乗物用シートにおいて、前記第1の疲労回復処理では、前記制御部は、前記乗員が息を吐くタイミングに合わせて前記押圧部による押圧を解除することとしてもよい。
こうすることで、乗員が息を吐くタイミングに合わせて背部の押圧を解くことで、乗員は息を吐きやすくなる。これにより、乗員の呼吸を妨げることを抑制し、乗員の呼吸を安定させ、リラックスさせることができる。
【0011】
上記の乗物用シートにおいて、前記第2の疲労回復処理は、前記乗員に対し睡眠状態への移行を支援する入眠支援処理と、前記乗員が睡眠状態に移行してから所定時間経過した後に前記乗員に対し覚醒状態への移行を支援する覚醒支援処理と、を有することとしてもよい。
こうすることで、乗員の睡眠を支援する場合には、乗員が深い睡眠に入る前に起こすことができる。これにより、短時間の仮眠を実現し、疲労回復効果を高めることができる。

【0012】
上記の乗物用シートにおいて、前記睡眠状態は、前記心拍検知部により検知された前記乗員の心拍に基づいて判断されることとしてもよい。
こうすることで、乗員が入眠したタイミングを検出できる。
【0013】
上記の乗物用シートにおいて、前記乗員が前記睡眠状態に移行した後に、前記乗員の頭部を両側から支持する頭部支持部を有することとしてもよい。
こうすることで、乗員が眠っている間、乗員の頭部の動きを抑制し、睡眠が妨げられないようにできる。これにより、乗員の疲労回復効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乗員の疲労度に応じて、乗員に対し適切な疲労回復措置を講じることができる。
本発明によれば、乗員の心拍に基づいて乗員の疲労度を推定できる。
本発明によれば、乗員の疲労度が低い場合には乗員の呼吸を支援し、乗員の疲労度が高い場合には乗員の睡眠を支援することで、乗員に対し疲労度に合った疲労回復措置を提供できる。
本発明によれば、乗員に深い呼吸を促し、リラックスさせることができる。
本発明によれば、乗員の呼吸を妨げることを抑制し、乗員の呼吸を安定させることができる。
本発明によれば、短時間の仮眠を実現し、疲労回復効果を高めることができる。
本発明によれば、乗員が入眠したタイミングを検出できる。
本発明によれば、乗員が眠っている間、乗員の頭部の動きを抑制し、睡眠が妨げられないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るシートの構成を説明する図である。
図2】シートに乗員が着座した状態を模式的に示す図である。
図3A】頭部支持部が前方に突出していない場合のヘッドレストによる頭部の支持状態を示す図である。
図3B】頭部支持部が前方に突出している場合のヘッドレストによる頭部の支持状態を示す図である。
図4】第1の疲労回復処理におけるシートの動作を説明する図である。
図5】第2の疲労回復処理に係る入眠支援処理におけるシートの動作を説明する図である。
図6】乗員が睡眠状態にある場合のシートの動作を説明する図である。
図7】第2の疲労回復処理に係る覚醒支援処理におけるシートの動作を説明する図である。
図8】ECUに備えられる機能を説明する図である。
図9】ECUにより実行される処理の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1乃至図9を参照しながら、本発明の実施の形態(以下、本実施形態)に係るシートSについて説明する。なお、本実施形態に係るシートSは、本発明を車両用のシートに適用した例であるが、シートSは本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下において、前後、左右、上下の各方向は、シートSの着座者から見た各方向と一致することとする。
【0017】
[1.シートSの構成]
まず、図1及び図2を参照しながら、シートSの構成について説明する。
図1は、シートSの全体構成を示す図であり、図2はシートSと、シートSに着座した乗員20の状態を示す模式図である。
【0018】
図1及び図2に示されるように、シートSは、乗員20の背部を支持するシートバックS1と、乗員20の臀部や大腿部を支持するシートクッションS2と、乗員20の頭部を支持するヘッドレストS3を備える。
【0019】
また、シートSには、心拍センサー1、呼吸センサー2、押圧部3、リクライニング機構4、スピーカー5、ヒーター6、頭部支持部7、振動モーター8、及びECU10が設けられている。
【0020】
ECU10は、CPU11、メモリ12及び入出力IF13(入出力インターフェース)を備え、シートSに着座する乗員の疲労回復機能を制御する制御装置(コンピュータ)である。ECU10は、シートSに内蔵されていてもよいし、シートSの外部装置として設けられてもよい。
【0021】
CPU11は、メモリ12に記憶されるプログラムやデータに基づいて各種の演算処理を実行する中央処理装置である。CPU11は、入出力IF13(入出力インターフェース)を介して心拍センサー1及び呼吸センサー2から入力される乗員20の身体信号に基づく処理結果に応じて、入出力IF13を介して接続される押圧部3、リクライニング機構4、スピーカー5、ヒーター6、頭部支持部7、及び振動モーター8の動作を制御する。
メモリ12は、各種のプログラムやデータを記憶するほか、CPU11のワークメモリとしても機能する。
入出力IF13は、心拍センサー1、呼吸センサー2、押圧部3、リクライニング機構4、スピーカー5、ヒーター6、頭部支持部7、及び振動モーター8と接続し、各デバイスと通信する。
【0022】
心拍センサー1は、容量結合型電極により着座者の心電信号を非接触により計測するセンシングデバイスである。ここで、心電信号とは、着座者の心臓の拍動に伴って生じる活動電位信号のことをいう。
心拍センサー1により検出された心電信号は、入出力IF13を介してECU10に入力される。
本実施形態では、心拍センサー1は、シートバックS1に設けられることとするが、心拍センサー1はシートクッションS2に設けても構わない。
【0023】
呼吸センサー2は、上下に電極を有してシートクッションS2に設けられており、シートSに着座する乗員20の呼吸に応じて変化する電気抵抗を検出する抵抗感圧式のセンサー(圧力センサー)である。
ここで、呼吸センサー2の上面の電極に加えられる圧力によって、上面の電極が下方に変形することで接触抵抗が大きくなると電極間の電気抵抗値が小さくなる。この電気抵抗値に係る電気信号が呼吸センサー2から入出力IF13を介してECU10に入力される。ECU10は、電気抵抗値に係る電気信号に基づいて圧力を演算し、演算した圧力に基づいて呼吸データを得る。
【0024】
押圧部3は、シートクッションS2に設けられ、乗員20側に突出する(張り出す)ことにより、乗員20の背部を部分的に押圧する機構である。例えば、押圧部3は、シートバックS1において、乗員20の第四胸椎と対向する位置に設けられ、乗員20側に張り出した場合に乗員20の第四胸椎を押圧することとしてよい。
一例としては、押圧部3は、エアポンプ、エアポンプとチューブを介して接続されるエアセルにより実現されることとしてよい。この場合には、ECU10からの駆動信号に応じてエアポンプがエアセルに空気を注入することでエアセルが乗員20側に膨出することで乗員20の背部を押圧する。一方で、ECU10は、エアポンプに空気の注入を停止させることで、乗員20からの荷重によりエアセルの空気が抜け、乗員20の背部の押圧状態が解除される。
また、他の一例としては、押圧部3は、ランバーサポート機構により実現されることとしてよい。この場合には、ランバーサポート機構のシート前方側への突出量を増加させることにより、乗員20側にランバーサポート機構を張り出させることで乗員20の背部を押圧する。また、ランバーサポート機構のシート前方側への突出量を減少させることにより、乗員20の背部の押圧を解除する。なお、ランバーサポート機構の動作は、入出力IF13を介して入力されるECU10からの制御信号に基づいて制御されることとしてよい。
【0025】
リクライニング機構4は、シートバックS1と、シートクッションS2とを回動可能に連結する機構である。そして、リクライニング機構4により、シートクッションS2に対するシートバックS1の角度が可変となっている。
リクライニング機構4は、電動の機構としてよく、入出力IF13を介して入力されるECU10からの制御信号に基づいてシートクッションS2に対するシートバックS1の角度(リクライニング角)が制御される。
【0026】
スピーカー5は、入出力IF13を介してECU10から入力される音声信号に基づいて音声を出力する。
本実施形態では、スピーカー5は、シートバックS1の上部に設けられることしているが、これに限られるものではなく、シートクッションS2、ヘッドレストS3に設けられていてもよい。また、スピーカー5はシートSに搭載せずに、車両に装備されるスピーカーを用いても構わない。
【0027】
ヒーター6は、入出力IF13を介してECU10から入力される制御信号に基づいて発熱し、乗員20の脚部20Cを温める装置である。
本実施形態では、ヒーター6は、シートSにおいて乗員20の脚部20Cに対向する位置に設けられることとする。なお、ヒーター6はシートSに搭載せずに、乗員20の脚部20Cを温める機能は、車両に装備される空調機器により実現してもよい。
【0028】
頭部支持部7は、ヘッドレストS3の両サイドに設けられ、入出力IF13を介してECU10から入力される制御信号に基づいて前方に膨出し、乗員20の頭部20Aの両側を支持する部材である。
例えば、頭部支持部7は、押圧部3と同様にエアセルを用いて実現されることとしてもよいし、モーターにより前方に突出させる機構を用いて実現されることとしてもよい。
【0029】
図3A図3Bには、頭部支持部7の状態に応じた、ヘッドレストS3による頭部20Aの支持状態を説明する図である。
図3Aには、頭部支持部7が前方に突出していない状態における、ヘッドレストS3による頭部20Aの支持状態を示した。
また、図3Bには、頭部支持部7が前方に突出した状態における、ヘッドレストS3による頭部20Aの支持状態を示した。
【0030】
図3Aに示されるように、頭部支持部7が前方に突出していない状態においては、頭部20Aの後部が、ヘッドレストS3により支持されているが、頭部20Aの側部は支持されていない。この場合では、頭部20Aの左右のふらつきを抑えることができない。
一方で、図3Bに示されるように、頭部支持部7が前方に突出した状態においては、頭部20Aの側部が頭部支持部7により挟持されることとなるため、頭部20Aが側部と後部の三面で支持されることとなる。これにより、頭部20Aの左右のふらつきを抑え、ヘッドレストS3による頭部20Aの保持の安定性を向上させることができる。
【0031】
振動モーター8は、乗員20に対して振動刺激を与える装置であり、ECU10から受信した制御信号に基づいて駆動と停止が切り替えられる。例えば、振動モーター8には、アンバランスマス型のモーターを用いることしてよい。
本実施形態では、乗員20を睡眠状態から覚醒させる場合に振動モーター8を動作させることで、乗員20に振動刺激を与えることとする。
また、本実施形態では、振動モーター8は、ヘッドレストS3に設けられることとするが、シートバックS1又はシートクッションS2に設けられることとしても構わない。
【0032】
[2.シートSの動作]
次に、図2図4図7に基づいて、シートSの動作について具体的に説明する。
本実施形態では、ECU10が心拍センサー1及び呼吸センサー2から取得する乗員20の身体信号に基づいて乗員20の疲労度を推定し、推定した疲労度に基づいて乗員20の疲労回復処理を実行する。具体的には、ECU10は、乗員20の疲労度が第1のレベル以上であって、且つ第2のレベル(>第1のレベル)未満である場合には第1の疲労回復処理を実行し、第2のレベル以上である場合には第2の疲労回復処理を実行することとする。
【0033】
[2.1.第1の疲労回復処理]
まず、図2及び図4に基づいて、第1の疲労回復処理におけるシートSの動作について説明する。第1の疲労回復処理は、乗員20の深呼吸を支援する処理である。
【0034】
ECU10は、心拍センサー1により検知される心拍の情報、呼吸センサー2により検知される呼吸の情報に基づいて、乗員20の疲労度を判定する。そして、ECU10は、乗員20の疲労度が第1の閾値(L1)以上第2の閾値未満(L2>L1)である場合に、第1の疲労回復処理を実行すると判定する。
【0035】
第1の疲労回復処理を実行すると判定した場合には、ECU10は、呼吸センサー2により検知される乗員20の呼吸タイミングに合わせて押圧部3を動作させる。
具体的には、図4に示すように、乗員20が息を吸うタイミングに合わせて押圧部3により乗員20の背部20Bを押圧して、胸部を開かせ、大きく息を吸い込みやすくする。
一方で、乗員20が息を吐くタイミングでは、図2に示すように、押圧部3による乗員20の背部20Bの押圧を解除して、息を吐き出しやすくする。
このように、ECU10は、乗員20の呼吸タイミングに合わせて押圧部3の押圧を繰り返し、乗員20が深く呼吸をしやすくすることで、乗員20をリラックスさせることができる。これにより、乗員20の精神的疲労を取り除くことができる。
【0036】
[2.2.第2の疲労回復処理]
次に、図5図7に基づいて、第2の疲労回復処理におけるシートSの動作について説明する。第2の疲労回復処理は、乗員20の仮眠を支援する処理である。ここでの仮眠とは、20分程度の睡眠のことをいう。
上述したように、ECU10は、乗員20の疲労度が第2の閾値(L2)である場合に、第2の疲労回復処理を実行すると判定する。
【0037】
[2.2.1.入眠支援処理]
第2の疲労回復処理を実行すると判定した場合には、ECU10は、まず以下に説明する入眠支援処理を実行する。入眠支援処理は、乗員20が睡眠状態に入るまでに実行される処理である。入眠支援処理については図5を参照しながら説明する。
【0038】
図5に示すように、ECU10は、リクライニング機構4を動作させて、シートバックS1を所定の角度まで後傾させる。後傾角度は、乗員20に対して予め設定しておくこととしてよい。
この際、ECU10は、ヒーター6を動作させて、乗員20の脚部20Cを温める。なお、ヒーター6の動作は、脚部20Cの近傍の温度を計測するための図示しない温度計の温度が所定の温度になるように制御することとしてよい。
さらに、ECU10は、スピーカー5から入眠に適した呼吸タイミングを乗員20に報知する音を出力させる。例えば、ECU10は、スピーカー5から息を吸うタイミングを知らせる第1の音と、吐くタイミングを知らせる第2の音を交互に出力する。
そして、ECU10は、入眠に適した呼吸タイミングに合わせて、押圧部3を動作させる。すなわち、ECU10は、乗員20が息を吸うタイミングに合わせて押圧部3により乗員20の背部20Bを押圧して胸部を開かせ、大きく息を吸い込みやすくする。また、乗員20が息を吐くタイミングでは、押圧部3による乗員20の背部20Bの押圧を解除して、息を吐き出しやすくする。
【0039】
ECU10は、以上の入眠支援処理を乗員20が睡眠状態に入るまで継続する。なお、乗員20が睡眠状態に入ったか否かは、心拍センサー1により検知される心拍、呼吸センサー2により検知される呼吸の情報に基づいて判定することとしてよい。
【0040】
[2.2.2.睡眠支援処理]
次に、図6を参照しながら、乗員20が睡眠状態に入った後に行われる処理(睡眠支援処理)について説明する。なお、睡眠支援処理とは、乗員20の睡眠状態を維持するための処理である。
【0041】
図6に示されるように、乗員20が睡眠状態に入ったと判定された後に、ECU10は、図3Bに示されるように、ヘッドレストS3の側部に設けられた左右の頭部支持部7を前方に突出させて、乗員20の頭部20Aの左右及び後部を支持する。
また、ECU10は、脚部20Cの近傍の温度が所定の温度を保つように、ヒーター6を動作させる。
【0042】
ECU10は、以上の睡眠支援処理を、乗員20の入眠後から所定の時間(例えば20分)が経過するまで継続し、その後以下に説明する覚醒支援処理を開始する。
【0043】
[2.2.3.覚醒支援処理]
次に、図7を参照しながら、睡眠状態にある乗員20を覚醒させるための処理(覚醒支援処理)について説明する。
【0044】
図7に示されるように、ECU10は、リクライニング機構4を動作させて、シートバックS1を元の位置(図2に示す位置)まで戻す。
ここで、ECU10は、スピーカー5から覚醒に適した音(音楽やアラーム音等)を出力させるとともに、ヘッドレストS3の内部の振動モーター8を振動させて頭部20Aに振動刺激を付与する。
【0045】
ECU10は、以上の覚醒支援処理を乗員20が覚醒状態に復帰するまで継続する。なお、乗員20が覚醒状態に復帰したか否かは、心拍センサー1により検知される心拍、呼吸センサー2により検知される呼吸の情報に基づいて判定することとしてよい。
【0046】
[3.ECU10の機能]
次に、上述した処理を実現するためにシートS(特にECU10)に備えられる機能について図8を参照しながら説明する。
【0047】
図8に示されるように、ECU10は、機能として検知部100、疲労度推定部110、及び制御部120を備える。
ECU10に備えられる上記各部の機能は、ECU10のCPU11がメモリ12に記憶されるプログラムやデータに基づいて処理を実行することにより実現されるものである。なお、メモリ12に記憶されるプログラムは、情報記憶媒体から読み込まれることとしてもよいし、入出力IF13又は通信部により、他のデバイスから取得することとしてもよい。
【0048】
[3.1.検知部100]
検知部100は、主にCPU11、メモリ12及び入出力IF13により実現される。
検知部100は、シートSに着座する乗員20の生体情報を検知する機能である。生体情報とは、生体が発する生理学的、解剖学的情報であり、例えば心拍、呼吸、脳波、体温等の情報を含む。
本実施形態では、生体情報として乗員20の心拍、呼吸の情報を扱うこととし、そのため、検知部100は、心拍検知部101及び呼吸検知部102を備える。
【0049】
心拍検知部101は、乗員20の心拍の情報を検知する。具体的には、心拍検知部101は、心拍センサー1において検知される心電信号を取得する。
なお、心拍検知部101は、心拍センサー1から取得した心電信号に基づいて、心電信号の波形データ、波形データにおけるピーク(R波)の間隔(RRI)等の各種のデータを算出することとしてよい。
【0050】
呼吸検知部102は、乗員20の呼吸の情報を検知する。具体的には、呼吸検知部102は、呼吸センサー2において検知される圧力信号(電気抵抗値)を取得する。
なお、呼吸検知部102は、呼吸センサー2から取得した圧力信号の波形データ、波形データに基づく呼吸間隔(RI)、RIのばらつきを示すRrMSSD(Respiration root Mean Square Successive Difference)等の各種のデータを算出することとしてよい。
【0051】
なお、本実施形態では、検知部100は、生体情報の一例として心拍、呼吸の情報を検知することとしたが、脳波等の他の情報を検知することとしても構わない。
【0052】
[3.2.疲労度推定部110]
疲労度推定部110は、主にCPU11及びメモリ12により実現される。
疲労度推定部110は、検知部100によって検知した生体情報に基づいて、乗員20の疲労度を推定する。例えば、疲労度推定部110は、心拍検知部101によって検知された乗員20の心拍の情報に基づいて乗員20の疲労度を推定することとしてよい。
【0053】
一例としては、疲労度推定部110は、心拍検知部101によって検知された心拍の情報に基づいて、乗員20の交感神経の活性度を測定する。具体的には、疲労度推定部110は、心拍変動における低周波の変動波(LF)と、高周波の変動波(HF)との比(LF/HF)を上記の交感神経の活性度として得る。そして、疲労度推定部110は、上記の交感神経の活性度(LF/HF)を疲労度とする。
すなわち、上記の指標によれば、交感神経の活動が、副交感神経の活動よりも活発である程、乗員20の疲労度が高いものと推定される。
【0054】
なお、疲労度推定部110による乗員20の疲労度の推定方法は上記の例に限られるものではない。例えば、疲労度推定部110は、呼吸検知部102により検知される呼吸の間隔や、呼吸に基づいて判定される覚醒レベル(少なくとも覚醒状態か低覚醒状態かを示すレベル)に基づいて乗員20の疲労度を判定してもよい。具体的には、乗員20の呼吸の間隔が短いほど、疲労度を高く判定したり、また乗員20の覚醒レベルが低覚醒状態にある場合に、疲労度を高く判定したりすることとしてよい。
【0055】
また、疲労度推定部110は、心拍に基づく交感神経の活性度、呼吸の間隔、覚醒レベルに基づいて判定されるそれぞれの個々の疲労度の合計を、乗員20の総合疲労度として用いてもよい。
【0056】
[3.3.制御部120]
制御部120は、主にCPU11、メモリ12及び入出力IF13により実現される。
制御部120は、乗員20の呼吸を支援する第1の疲労回復処理(第1の処理に相当)と、乗員20の睡眠を支援する第2の疲労回復処理(第2の処理に相当)を、疲労度推定部110により推定される疲労度に応じて切り替えて実行する。
例えば、制御部120は、乗員20の疲労度が第1の閾値(L1)以上であって、且つ第1の閾値より大きい第2の閾値(L2)以下である場合に第1の疲労回復処理を実行する。
また、制御部120は、乗員20の疲労度が第2の閾値(L2)以上である場合には、第2の疲労回復処理を実行する。
なお、上記の第1の閾値及び第2の閾値は、乗員20ごとに設定されることとしてよく、例えば乗員20からの入力に基づいて機械学習した結果に基づいて設定してもよい。例えば、過去において乗員20から第1の疲労回復処理と第2の疲労回復処理が必要とされた場合の疲労度の値に基づいて第1の閾値及び第2の閾値は設定、更新されることとしてよい。
【0057】
[3.3.1.第1の疲労回復処理]
第1の疲労回復処理においては、制御部120は、乗員20の深呼吸を支援し、乗員20の精神的疲労を軽減させる。
例えば、制御部120は、呼吸センサー2により検知される乗員20の呼吸タイミングに合わせて押圧部3を動作させる。
具体的には、制御部120は、乗員20が息を吸うタイミングに合わせて押圧部3により乗員20の背部を押圧して、胸部を開かせ、大きく息を吸い込みやすくする。
また、制御部120は、乗員20が息を吐くタイミングでは、押圧部3による乗員20の背部20Bの押圧を解除して、息を吐き出しやすくする。
【0058】
このように、制御部120は、乗員20の呼吸タイミングに合わせて押圧部3の押圧を繰り返すことにより、乗員20が深く呼吸をしやすくすることで、乗員20をリラックスさせることができる。
以上のように、乗員20の疲労度が第1のレベル以上第2のレベル未満である場合には、第1の疲労回復処理により、乗員20の呼吸を整えリラックスさせることで疲労を回復させることができる。
【0059】
[3.3.2.第2の疲労回復処理]
第2の疲労回復処理においては、制御部120は、乗員20の仮眠を支援し、第1の疲労回復処理に比べて疲労の回復量を大きくする。後述するように、第2の疲労回復処理は、入眠支援処理、睡眠支援処理、覚醒支援処理を有する。以下、各処理の詳細について説明する。
【0060】
[3.3.2(1)入眠支援処理]
まず、制御部120は、乗員20が睡眠状態に入りやすくなるように支援する処理(入眠支援処理)を実行する。
具体的には、制御部120は、リクライニング機構4を動作させて、シートバックS1を所定の角度まで後傾させる。後傾角度は、乗員20に応じて予め設定されることとしてよい。
この際、制御部120は、ヒーター6を動作させて、乗員20の脚部20Cを温める。なお、ヒーター6の動作は、脚部20Cの近傍の温度を計測するための図示しない温度計の温度が所定の温度になるように制御することとしてよい。
さらに、制御部120は、スピーカー5から入眠に適した呼吸タイミングを乗員20に報知する音を出力させる。例えば、ECU10は、スピーカー5から息を吸うタイミングを知らせる第1の音と、吐くタイミングを知らせる第2の音を交互に出力する。
そして、制御部120は、入眠に適した呼吸タイミングに合わせて、押圧部3を動作させる。すなわち、制御部120は、乗員20が息を吸うタイミングに合わせて押圧部3により乗員20の背部20Bを押圧して胸部を開かせ、大きく息を吸い込みやすくする。また、乗員20が息を吐くタイミングでは、押圧部3による乗員20の背部20Bの押圧を解除して、息を吐き出しやすくする。
【0061】
制御部120は、以上の入眠支援処理を乗員20が睡眠状態に入るまで継続する。なお、乗員20が睡眠状態に入ったか否かは、検知部100により検知される乗員20の生体情報に基づいて判定することとしてよい。
一例としては、制御部120は、乗員20の心拍変動に基づいて、副交感神経の活動が交感神経の活動に対して優位になったリラックス状態が継続している場合に、乗員20が睡眠状態にあると判定することとしてよい。
また他の一例としては、制御部120は、乗員20の呼吸の状態に基づいて、乗員20が睡眠状態にあるか否かを判定することとしてよい。
【0062】
[3.3.2(2)睡眠支援処理]
乗員20が睡眠状態に入った後には、制御部120は、乗員20の睡眠を維持するための処理(睡眠支援処理)を実行する。
【0063】
具体的には、制御部120は、ヘッドレストS3の側部に設けられた左右の頭部支持部7を前方に膨出させて、乗員20の頭部20Aの左右及び後部を支持し、頭部20Aの支持を安定させる。
また、制御部120は、脚部20Cの近傍の温度が所定の温度を保つように、ヒーター6を動作させる。
【0064】
制御部120は、以上の睡眠支援処理を、乗員20の入眠後から所定の時間(例えば20分)が経過するまで継続する。
【0065】
[3.3.2(3)覚醒支援処理]
乗員20の入眠後から所定の時間(例えば20分)が経過した後には、制御部120は、睡眠状態にある乗員20を覚醒させるための処理(覚醒支援処理)を実行する。
【0066】
具体的には、制御部120は、リクライニング機構4を動作させて、シートバックS1を起立させる。シートバックS1の起立角度は乗員20ごとに予め定めておくこととしてよい。
さらに、制御部120は、スピーカー5から覚醒に適した音(音楽やアラーム音等)を出力させるとともに、ヘッドレストS3の内部の振動モーター8を振動させて頭部20Aに振動刺激を付与する。こうすることで、乗員20を睡眠状態から覚醒させやすくする。
【0067】
制御部120は、以上の覚醒支援処理を乗員20が覚醒状態に復帰するまで継続する。なお、乗員20が覚醒状態に復帰したか否かは、検知部100により検知される乗員20の生体情報に基づいて判定することとしてよい。
【0068】
以上のように、乗員20の疲労度が第2のレベル以上である場合には、第2の疲労回復処理により、乗員20に仮眠を取らせることで、疲労から回復させることができる。また、入眠から所定時間(20分程度)で覚醒させるようにすることで、深い睡眠に入ることを抑止し、乗員20のその後の活動を阻害することがない。
【0069】
[4.ECU10により実行される処理の説明]
次に、図9に基づいて、ECU10により実行される疲労回復処理の流れについて説明する。
【0070】
図9に示されるように、ECU10は、シートSに着座した乗員20の心拍を心拍センサー1により検知する(S11)。また、ECU10は、乗員20の呼吸を呼吸センサー2により検知する(S21)。なお、S11及びS12の処理は、検知部100により実行されるものである。
【0071】
次に、ECU10は、乗員20の心拍と呼吸の少なくとも一方に基づいて乗員20の疲労度を推定する(S13)。なお、S13の処理は、疲労度推定部110により実行されるものである。
【0072】
ECU10は、S13で推定した乗員20の疲労度が第1の閾値(L1)以上、且つ第2の閾値(L2>L1)未満である場合には(S14:Y)、S15に進み、そうでない場合には(S14:N)、S16に進む。
【0073】
S15では、ECU10は、第1の疲労回復処理として、乗員20の深呼吸を支援する呼吸支援処理を実行する(S15)。
具体的には、ECU10は、呼吸センサー2により検知される乗員20の呼吸タイミングに合わせて押圧部3を動作させる。
すなわち、ECU10は、乗員20が息を吸うタイミングに合わせて押圧部3により乗員20の背部を押圧して、胸部を開かせ、大きく息を吸い込みやすくする。
また、ECU10は、乗員20が息を吐くタイミングでは、押圧部3による乗員20の背部20Bの押圧を解除して、息を吐き出しやすくする。
【0074】
S16において、乗員20の疲労度が第2の閾値以上である場合には(S16:Y)、S17に進み、そうでない場合には(S16:N)、S22に進む。
【0075】
ここで、S17~S21においては、ECU10は、第2の疲労回復処理を実行する。
まず、ECU10は、第2の疲労回復処理として、入眠支援処理を実行する(S17)。
具体的には、ECU10は、リクライニング機構4を動作させて、シートバックS1を所定の角度まで後傾させる。
この際、ECU10は、ヒーター6を動作させて、乗員20の脚部20Cを温める。
さらに、ECU10は、スピーカー5から入眠に適した呼吸タイミングを乗員20に報知する音を出力させる。例えば、ECU10は、スピーカー5から息を吸うタイミングを知らせる第1の音と、吐くタイミングを知らせる第2の音を交互に出力する。
そして、ECU10は、入眠に適した呼吸タイミングに合わせて、押圧部3を動作させる。すなわち、ECU10は、乗員20が息を吸うタイミングに合わせて押圧部3により乗員20の背部20Bを押圧して胸部を開かせ、大きく息を吸い込みやすくする。また、乗員20が息を吐くタイミングでは、押圧部3による乗員20の背部20Bの押圧を解除して、息を吐き出しやすくする。
【0076】
次に、ECU10は、乗員20が睡眠状態に入ったか否かを判定し(S18)、睡眠状態に入っていない場合には(S18:N)、S17に戻り、睡眠状態に入った場合には(S18:Y)、S19に進む。
【0077】
S19において、ECU10は、乗員20の睡眠状態の維持を支援する睡眠支援処理を実行する(S19)。
具体的には、ECU10は、ヘッドレストS3の側部に設けられた左右の頭部支持部7を前方に突出させて、乗員20の頭部20Aの左右及び後部を支持する。
また、ECU10は、脚部20Cの近傍の温度が所定の温度を保つように、ヒーター6を動作させる。
【0078】
ECU10は、乗員20の入眠後から所定時間(例えば20分)が経過したか否かを判定し(S20)、所定時間が経過していない場合には(S20:N)、S19の処理を継続し、所定時間が経過した場合には(S20:Y)、S21に進む。
【0079】
S21において、ECU10は、睡眠状態にある乗員20を覚醒させるための覚醒支援処理を実行する(S21)。
具体的には、ECU10は、リクライニング機構4を動作させて、後傾していたシートバックS1を前傾させて元の位置まで戻す。
さらに、ECU10は、スピーカー5から乗員20を覚醒させるための音(音楽やアラーム音等)を出力させるとともに、ヘッドレストS3の内部の振動モーター8を振動させて乗員20の頭部20Aに振動刺激を付与する。
【0080】
S15の後、乗員20の疲労度がL1未満である場合、そしてS21の後において、処理を終了しない場合には(S22:N)、S11に戻り、処理を終了する場合には(S22:Y)、処理を終える。
【0081】
以上説明した本実施形態に係るシートSによれば、乗員20の疲労度に応じた適切な疲労回復措置を乗員20に提供することができる。これにより、乗員20に対し過不足ない疲労回復措置を提供でき、疲労回復効果を高めることができる。
また、本実施形態に係るシートSによれば、乗員20の心拍に基づいて乗員20の疲労度を推定できる。
また、本実施形態に係るシートSによれば、乗員20の疲労度が低い場合には乗員20の深呼吸を支援し、乗員20の疲労度が高い場合には乗員20の仮眠を支援することで、乗員20に疲労度に合った疲労回復措置を提供できる。
また、本実施形態に係るシートSによれば、第1の疲労回復処理においては、乗員20が息を吸うタイミングに合わせて乗員20の背部20Bを押すことで乗員20の胸郭を開かせることができるため、乗員20は深呼吸をしやすくなる。これにより、乗員の呼吸が安定し、リラックスしやすくなる。
また、本実施形態に係るシートSによれば、第1の疲労回復処理においては、乗員20が息を吐くタイミングに合わせて乗員20の背部20Bの押圧を解くことで、乗員20は息を吐きやすくなる。これにより、乗員20の呼吸を妨げることがないため乗員20の呼吸が安定し、リラックスしやすくなる。
また、本実施形態に係るシートSによれば、第2の疲労回復処理においては、乗員20が深い睡眠に入らないようにすることで、仮眠による疲労回復効果を高めることができる。
また、本実施形態に係るシートSによれば、乗員20が入眠したタイミングを検出できる。
また、本実施形態に係るシートSによれば、乗員20が眠っている間、乗員20の頭部20Aを安定して保持することで、頭部20Aのふらつきを防止し、乗員20の睡眠が妨げられないようにできる。これにより、乗員20の睡眠の質を高め、仮眠による疲労回復効果を高めることができる。
【0082】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明に係る乗物用シートは車両に限られず、航空機、車両、船舶等の乗物のシートについても適用可能である。
また例えば、上記の実施形態において、シートSのクッション硬度は可変としてもよく、第1の疲労回復処理と第2の疲労回復処理とにおいてクッション硬度を変えてもよい。
【符号の説明】
【0083】
S シート
S1 シートバック
S2 シートクッション
S3 ヘッドレスト
1 心拍センサー
2 呼吸センサー
3 押圧部
4 リクライニング機構
5 スピーカー
6 ヒーター
7 頭部支持部
8 振動モーター
10 ECU
11 CPU
12 メモリ
13 入出力IF
20 乗員
20A 頭部
20B 背部
20C 脚部
100 検知部
101 心拍検知部
102 呼吸検知部
110 疲労度推定部
120 制御部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9