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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/26 20060101AFI20230323BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20230323BHJP
   B21D 24/00 20060101ALI20230323BHJP
   B21D 37/08 20060101ALI20230323BHJP
   B62D 25/00 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B21D22/26 C
B21D22/20 H
B21D24/00 A
B21D37/08
B62D25/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021554428
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 JP2019043192
(87)【国際公開番号】W WO2021090350
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】大塚 研一郎
(72)【発明者】
【氏名】東 昌史
(72)【発明者】
【氏名】森 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 浩二郎
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/012603(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/26
B21D 22/20
B21D 24/00
B21D 37/08
B62D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品の製造方法であって、
長手方向に延びる天板部と、
前記天板部の幅方向両縁から下方に延びる縦壁部と、
前記縦壁部の下端から外側に向けて延びるフランジ部と、
前記天板部の前記幅方向両から外側に向けて延びる部位と、前記縦壁部の上端から前記外側に向けて延びる部位とが互いに重なり合うことで前記天板部の前記長手方向の一部に形成された突出部と、
を含み、
前記成形品の長手方向において、前記突出部が設けられた領域を突出領域と定義し、前記突出部が設けられていない領域を非突出領域と定義したとき、前記突出領域における前記成形品の長手方向に垂直な断面の断面周長が、前記非突出領域における前記成形品の長手方向に垂直な断面の断面周長よりも長い、1枚の鋼板で形成された長尺の成形品の製造方法であって、
素材鋼板を変形させることによって変形鋼板を得る工程であって、
前記変形鋼板は長尺形状を有し、
前記2つの縦壁部となる2つの縦壁部相当部、
前記天板部となる天板部相当部、および
前記突出部となる突出部相当部、
を含みかつ、
前記変形鋼板の長手方向において、前記突出領域に成形される第1領域における断面の断面周長が前記非突出領域に成形される第2領域における断面の断面周長よりも長くなるように前記素材鋼板を変形させる、第1工程と、
前記変形鋼板を成形して前記成形品を形成する第2工程と、を含み、
前記第2工程において、前記突出部相当部の少なくとも一部を重ね合わせることによって前記突出部を形成し、
前記第1工程では、前記突出領域における前記天板部相当部が、前記非突出領域における前記天板部相当部よりも、外側にせり出すように前記素材鋼板を変形させる
成形品の製造方法。
【請求項2】
前記突出領域における断面の断面周長が前記非突出領域における断面の断面周長よりも5%以上長い、
請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程の後かつ、前記第2工程の前に、前記変形鋼板を加熱する加熱工程をさらに含み、
前記第2工程においては、上型と、凸部を有する下型とを含むプレス型と2つのカム型によってホットプレス成形が行われ、
前記第1領域において、前記下型の前記凸部と前記変形鋼板の少なくとも一部とが接しない状態で前記変形鋼板を配置する工程と、
(a)前記天板部相当部を前記上型と前記下型によってプレスする工程と、
(b)前記2つの縦壁部相当部を、前記下型と前記2つのカム型とによってプレスする工程と、を含む、
請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
前記上型と前記下型との間に前記変形鋼板を配置する工程が終了した時の前記変形鋼板の前記第1領域の温度が700℃以上であり、
前記変形鋼板を配置する工程の終了時から、
前記(a)の工程において前記変形鋼板と前記上型とが接触するまでの時間、又は
前記(b)の工程において前記変形鋼板と前記2つのカム型とが接触するまでの時間が、3秒以内である、
請求項に記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程においては、上型と凸部を有する下型とを含むプレス型と2つのカム型によってプレス成形が行われ、
(a)前記天板部相当部を前記上型と前記下型によってプレスする工程と、
(b)前記2つの縦壁部相当部を、前記下型と前記2つのカム型とによってプレスする工程と、を含む、
請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
前記成形品の断面視において、前記天板部と前記突出部とがなす角度が90°以上135°以下であり、
前記第2工程において、前記(a)の工程が完了した後に前記(b)の工程を完了させる、
請求項3から5のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項7】
前記成形品の断面視において、前記天板部と前記突出部とがなす角度が135°以上180°以下であり、
前記第2工程において、前記(b)の工程が完了した後に前記(a)の工程を完了させる、
請求項3から5のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項8】
前記成形品を成形する工程の後に前記フランジ部を切断する工程を更に含む
請求項1からのいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の構造部材(特に長尺部材)では、衝突安全性能を高めるため、三点曲げ試験における特性が高いことが求められている。そのため、従来から、様々な提案がなされてきた。
【0003】
特許文献1および特許文献2の図には、鋼板が3重に折り重ねられた部分を含む衝撃吸収部材が開示されている。
【0004】
特許文献3は、断面略ハット形状の部材の壁部に凹部を形成する方法を開示している。この方法では、壁部を給電ローラで押圧することによって凹部を形成する。そのため、この方法では、凹部を形成する前の壁部から突出する部分は形成されない。
【0005】
特許文献4は、縦壁部と天壁部との連結領域が外方に張り出している中空柱状部品を開示している。断面における稜線の数を増やすため、その張り出した部分は折り重ねられていない。
【0006】
特許文献5は、縦壁部に、長手方向に沿って溝状のビード部が形成されている断面ハット状部品の製造方法を開示している。
【0007】
特許文献6は、天壁部と縦壁部との連結部に形成された補強部を有するフレーム部品を開示している。この補強部は、半筒状に丸められた重ね合わせ部からなる(同文献の段落[0015])。
【0008】
特許文献7は、コーナー部分を長円形の凹形状又は凸形状に形成した接合構造部材を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】日本国特開2008-265609号公報
【文献】日本国特開2008-155749号公報
【文献】日本国特開2010-242168号公報
【文献】日本国特開2011-67841号公報
【文献】日本国特開2011-83807号公報
【文献】日本国特開2013-27894号公報
【文献】日本国特開平9-249155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1から7に記載された技術では、従来のハット形状の構造部材と比べて、衝撃特性や圧縮特性の向上を図っている。しかし現在では、サイドシル等の自動車の構造部材として、衝突安全性能をより高めることができる構造部材が求められている。換言すれば、より高強度かつ三点曲げ試験における特性がより高いプレス成形品が求められている。
【0011】
また、上記特許文献1から7に記載された構造部材では、構造部材の長手方向の全長にわたり衝撃吸収部材等が設けられているため、自由な設計を阻害するという問題がある。たとえば、限られた空間内に、上記特許文献1から7に記載された構造部材を適用させる場合、さらに加工を施したり、他の部材と接合させたりする等のさらなる改良や工夫を必要とする。
【0012】
このような状況に鑑みてなされた、本発明の目的の1つは、高強度かつ三点曲げ試験における特性が高く、設計の自由度が高い成形品の製造方法、成形品、およびそれを用いた構造部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明の第一の態様は、成形品の製造方法であって、長手方向に延びる天板部と、前記天板部の幅方向両縁から下方に延びる縦壁部と、前記縦壁部の下端から外側に向けて延びるフランジ部と、前記天板部の前記幅方向両から外側に向けて延びる部位と、前記縦壁部の上端から前記外側に向けて延びる部位とが互いに重なり合うことで前記天板部の前記長手方向の一部に形成された突出部と、を含み、前記成形品の長手方向において、前記突出部が設けられた領域を突出領域と定義し、前記突出部が設けられていない領域を非突出領域と定義したとき、前記突出領域における前記成形品の長手方向に垂直な断面の断面周長が、前記非突出領域における前記成形品の長手方向に垂直な断面の断面周長よりも長い、1枚の鋼板で形成された長尺の成形品の製造方法であって、素材鋼板を変形させることによって変形鋼板を得る工程であって、前記変形鋼板は長尺形状を有し、前記2つの縦壁部となる2つの縦壁部相当部、前記天板部となる天板部相当部、および前記突出部となる突出部相当部、を含みかつ、前記変形鋼板の長手方向において、前記突出領域に成形される第1領域における断面の断面周長が前記非突出領域に成形される第2領域における断面の断面周長よりも長くなるように前記素材鋼板を変形させる、第1工程と、前記変形鋼板を成形して前記成形品を形成する第2工程と、を含み、前記第2工程において、前記突出部相当部の少なくとも一部を重ね合わせることによって前記突出部を形成し、前記第1工程では、前記突出領域における前記天板部相当部が、前記非突出領域における前記天板部相当部よりも、外側にせり出すように前記素材鋼板を変形させる、成形品の製造方法である。
(2)上記(1)に記載の成形品の製造方法では、前記突出領域における断面の断面周長が前記非突出領域における断面の断面周長よりも5%以上長くてもよい。
)上記(1)に記載の成形品の製造方法では、前記第1工程の後かつ、前記第2工程の前に、前記変形鋼板を加熱する加熱工程をさらに含み、前記第2工程においては、上型と、凸部を有する下型とを含むプレス型と2つのカム型によってホットプレス成形が行われ、前記第1領域において、前記下型の前記凸部と前記変形鋼板の少なくとも一部とが接しない状態で前記変形鋼板を配置する工程と、(a)前記天板部相当部を前記上型と前記下型によってプレスする工程と、(b)前記2つの縦壁部相当部を、前記下型と前記2つのカム型とによってプレスする工程と、を含んでもよい。
)上記()に記載の成形品の製造方法では、前記上型と前記下型との間に前記変形鋼板を配置する工程が終了した時の前記変形鋼板の前記第1領域の温度が700℃以上であり、前記変形鋼板を配置する工程の終了時から、前記(a)の工程において前記変形鋼板と前記上型とが接触するまでの時間、又は前記(b)の工程において前記変形鋼板と前記2つのカム型とが接触するまでの時間が、3秒以内であってもよい。
)上記(1)に記載の成形品の製造方法では、前記第2工程においては、上型と凸部を有する下型とを含むプレス型と2つのカム型によってプレス成形が行われ、(a)前記天板部相当部を前記上型と前記下型によってプレスする工程と、(b)前記2つの縦壁部相当部を、前記下型と前記2つのカム型とによってプレスする工程と、を含んでもよい。
)上記()から()のいずれか一項に記載の成形品の製造方法では、前記成形品の断面視において、前記天板部と前記突出部とがなす角度が90°以上135°以下であり、前記第2工程において、前記(a)の工程が完了した後に前記(b)の工程を完了させてもよい。
)上記()から()のいずれか一項に記載の成形品の製造方法では、前記成形品の断面視において、前記天板部と前記突出部とがなす角度が135°以上180°以下であり、前記第2工程において、前記(b)の工程が完了した後に前記(a)の工程を完了させてもよい。
)上記(1)から()のいずれか一項に記載の成形品の製造方法では、前記成形品を成形する工程の後に前記フランジ部を切断する工程を更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高強度かつ三点曲げ試験における特性が高く、設計の自由度が高い成形品、およびそれを用いた構造部材が得られる。さらに、本発明に係る製造方法によれば、当該成形品を容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るプレス成形品100を模式的に示す斜視図である。
図2A図2Aは、プレス成形品100のA-A’断面における断面形状を模式的に示す断面図である。
図2B図2Bは、プレス成形品100のB-B’断面における断面形状を模式的に示す断面図である。
図3図3は、突出部の接合領域を説明するための模式的な断面図である。
図4A図4Aは、角度Xが145°とされた場合を模式的に示す断面図である。
図4B図4Bは、プレス成形品100の突出部を説明するための、模式的な断面図である。
図5図5は、変形例に係るプレス成形品100Aを模式的に示す斜視図である。
図6図6は、センターピラーとして適用されたプレス成形品100’を模式的に示す斜視図である。
図7A図7Aは、本発明の一実施形態に係る構造部材200の一例を模式的に示す断面図である。
図7B図7Bは、本発明の一実施形態に係る構造部材200の他の一例を模式的に示す断面図である。
図7C図7Cは、本発明の一実施形態に係る構造部材200の他の一例を模式的に示す断面図である。
図7D図7Dは、本発明の一実施形態に係る構造部材200の他の一例を模式的に示す断面図である。
図7E図7Eは、本発明の一実施形態に係る構造部材200の他の一例を模式的に示す断面図である。
図7F図7Fは、プレス成形品100を構造部品として用いる場合の一例を模式的に示す断面図である。
図8A図8Aは、構造部材200に対し、補助部材601を接合した状態の一例を模式的に示す断面図である。
図8B図8Bは、構造部材200に対し、補助部材601を接合した状態の他の一例を模式的に示す断面図である。
図8C図8Cは、構造部材200に対し、補助部材601を接合した状態の他の一例を模式的に示す断面図である。
図8D図8Dは、構造部材200に対し、補助部材601を接合した状態の他の一例を模式的に示す断面図である。
図9A図9Aは、構造部材200に対し、変形例としての補助部材701を接合した状態の一例を模式的に示す断面図である。
図9B図9Bは、構造部材200に対し、変形例としての補助部材701を接合した状態の他の一例を模式的に示す断面図である。
図10図10は、本発明の一実施形態に係る製造方法で用いる予備成形品301の一例を模式的に示す斜視図である。
図11図11は、予備成形品301の一例を模式的に示す斜視図である。
図12図12は、予備成形品301の一例を模式的に示す斜視図である。
図13図13は、予備成形品301の一例を模式的に示す断面図である。
図14A図14Aは、本実施形態の製造方法の一例における第2工程中の一工程を模式的に示す断面図であり、予備成形品301の第1領域における断面図である。
図14B図14Bは、本実施形態の製造方法の一例における第2工程中の一工程を模式的に示す断面図であり、予備成形品301の第2領域における断面図である。
図14C図14Cは、図14Aの工程に続く一工程を模式的に示す、予備成形品301の第1領域における断面図である。
図14D図14Dは、図14Bの工程に続く一工程を模式的に示す、予備成形品301の第2領域における断面図である。
図14E図14Eは、図14Cの工程に続く一工程を模式的に示す、予備成形品301の第1領域における断面図である。
図14F図14Fは、図14Dの工程に続く一工程を模式的に示す、予備成形品301の第2領域における断面図である。
図14G図14Gは、図14Eの工程に続く一工程を模式的に示す、プレス成形品100に成形された予備成形品301の第1領域における断面図である。
図14H図14Hは、図14Fの工程に続く一工程を模式的に示す、プレス成形品100に成形された予備成形品301の第2領域における断面図である。
図15A図15Aは、本実施形態の製造方法の他の一例における第2工程中の一工程を模式的に示す断面図であり、予備成形品301の第1領域における断面図である。
図15B図15Bは、本実施形態の製造方法の他の一例における第2工程中の一工程を模式的に示す断面図であり、予備成形品301の第2領域における断面図である。
図15C図15Cは、図15Aの工程に続く一工程を模式的に示す、予備成形品301の第1領域における断面図である。
図15D図15Dは、図15Bの工程に続く一工程を模式的に示す、予備成形品301の第2領域における断面図である。
図15E図15Eは、図15Cの工程に続く一工程を模式的に示す、予備成形品301の第1領域における断面図である。
図15F図15Fは、図15Dの工程に続く一工程を模式的に示す、予備成形品301の第2領域における断面図である。
図15G図15Gは、図15Eの工程に続く一工程を模式的に示す、プレス成形品100に成形された予備成形品301の第1領域における断面図である。
図15H図15Hは、図15Fの工程に続く一工程を模式的に示す、プレス成形品100に成形された予備成形品301の第2領域における断面図である。
図16A図16Aは、本実施形態の製造方法の一例における第2工程中の一工程を模式的に示す断面図であり、予備成形品301の第1領域における断面図である。
図16B図16Bは、図16Aの工程に続く一工程を模式的に示す、予備成形品301の第1領域における断面図である。
図16C図16Cは、図16Bの工程に続く一工程を模式的に示す、予備成形品301の第1領域における断面図である。
図16D図16Dは、図16Cの工程に続く一工程を模式的に示す、プレス成形品100に成形された予備成形品301の第1領域における断面図である。
図17A図17Aは、本実施形態の製造方法の一例における第2工程中の一工程を模式的に示す断面図であり、予備成形品301の第1領域における断面図である。
図17B図17Bは、図17Aの工程に続く一工程を模式的に示す、予備成形品301の第1領域における断面図である。
図17C図17Cは、図17Bの工程に続く一工程を模式的に示す、予備成形品301の第1領域における断面図である。
図17D図17Dは、図17Cの工程に続く一工程を模式的に示す、プレス成形品100に成形された予備成形品301の第1領域における断面図である。
図18図18は、本実施形態の製造方法に用いることができる装置の一例を模式的に示す断面図である。
図19A図19Aは、実施例1で用いたサンプル1の第1領域における形状を模式的に示す断面図である。
図19B図19Bは、実施例1で用いたサンプル2の形状を模式的に示す断面図である。
図19C図19Cは、実施例1で用いたサンプル3の形状を模式的に示す断面図である。
図20図20は、実施例でシミュレーションを行った三点曲げ試験を模式的に示す図である。
図21A図21Aは、実施例1のシミュレーションにおけるサンプル1の形状変化の一例を模式的に示す断面図である。
図21B図21Bは、実施例1のシミュレーションにおけるサンプル2の形状変化の一例を模式的に示す断面図である。
図21C図21Cは、実施例1のシミュレーションにおけるサンプル3の形状変化の一例を模式的に示す断面図である。
図21D図21Dは、実施例1のシミュレーションにおけるサンプル4の形状変化の一例を模式的に示す断面図である。
図22A図22Aは、実施例1のシミュレーションにおける各サンプルのエネルギ吸収量の一例を模式的に示すグラフである。
図22B図22Bは、実施例1のシミュレーションにおける各サンプルのエネルギ吸収量の他の一例を模式的に示すグラフである。
図23A図23Aは、実施例2のシミュレーションにおける各サンプルのエネルギ吸収量の一例を模式的に示すグラフである。
図23B図23Bは、実施例2のシミュレーションにおける各サンプルのエネルギ吸収量の他の一例を模式的に示すグラフである。
図24A図24Aは、実施例2のシミュレーションにおけるサンプルの形状変化の一例を模式的に示す断面図である。
図24B図24Bは、実施例2のシミュレーションにおけるサンプルの形状変化の他の一例を模式的に示す断面図である。
図25A図25Aは、実施例2のシミュレーションにおけるサンプルの形状変化の他の一例を模式的に示す断面図である。
図25B図25Bは、実施例2のシミュレーションにおけるサンプルの形状変化の他の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、設計の自由度が高い成形品でありながらも、高強度かつ三点曲げ試験における特性が高い成形品を得るべく、鋭意検討した結果、特定の製造方法により得られる特定の構造によって衝突に対する特性が向上することを新たに見出した。
【0019】
以下、上記の新たな知見に立脚してなされた本発明について具体的な実施形態に基づき説明する。なお、以下の説明では本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されないことは自明である。
以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るプレス成形品100について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係るプレス成形品100の斜視図を模式的に示している。この図1に示すように、本実施形態に係るプレス成形品100は、天板部111と、2つの縦壁部113と、2つの突出部115と、2つのフランジ部117とを有する。
尚、天板部は、2つの縦壁部を連結する横壁部である。そのため、この明細書において、天板部を横壁部と読み替えることが可能である。横壁部(天板部)を下方に向けてプレス成形品を配置した場合、横壁部を底板部と呼ぶことも可能である。しかし、以下の説明では、横壁部を上方に配置した場合を基準として、横壁部を天板部と称する。
また、以下の説明では、プレス成形品100の材軸方向を長手方向と呼称し、この長手方向に垂直且つ天板部111に沿った方向を幅方向と呼称する場合がある。また、長手方向と幅方向に垂直な方向のうち、天板部側を上方と呼称し、フランジ部側を下方と呼称する場合がある。
また、以下の説明では、天板部111と、2つの縦壁部113と、2つの縦壁部113の下端部同士を結ぶ仮想の面と、天板部111とによって囲まれた領域を「プレス成形品の内側」と呼称し、天板部111と縦壁部113を挟んで当該内側とは反対側の領域を「プレス成形品100の外側」と称する場合がある。
【0022】
プレス成形品100は、1枚の鋼板101(素材鋼板)を変形することによって形成されている。具体的には後述するが、1枚の素材鋼板をプレス成形することによって製造される。
【0023】
本実施形態のプレス成形品100を構成する鋼板としては、TRIP鋼、複合組織鋼、ホットスタンプ用鋼板、析出強化鋼等を用いることができる。
プレス成形品100の引張強度は、590MPa以上であってもよく、780MPa以上であってもよく、980MPa以上であってもよく、又は1200MPa以上であってもよい。プレス成形品100の引張強度の上限は特に限定されるものではないが、たとえば2500MPaである。後述する製造方法の第2工程をホットスタンピングによって行う場合、プレス成形品100の引張強度を、材料である鋼板(ブランク)の引張強度よりも高くすることができる。
【0024】
なお、プレス成形品100の引張強度が上記の値以上であることは、換言すれば、プレス成形品100の金属組織において、マルテンサイト組織が体積率で20%以上、プレス成形品100の引張強度が1310MPa以上の場合やホットスタンピングされた場合は90%以上を占める金属組織である。
プレス成形品100は、たとえば、引張強度が1500MPa以上であり、マルテンサイト組織が体積率で90%以上である場合、突出部115のビッカース硬度が454以上となってもよい。また、このときの縦壁部111におけるビッカース硬度に対する突出部115におけるビッカース硬度の比が0.95以上となってもよい。
【0025】
尚、プレス成形品100のうち、突出部115におけるビッカース硬度が最大であることが、衝突特性を高める観点から好ましい。特に、突出部115のうち、後述する先端部115tにおけるビッカース硬度が最大であることが、衝突特性を高める観点から好ましい。
より具体的には、突出部115におけるビッカース硬度の最大値は、プレス成形品100におけるビッカース硬度の最低値の1.1倍以上であることが好ましい。換言すれば、突出部115における最大硬さAと、成形品100における最低硬さBとの比であるA/Bの値が1.1以上であることが好ましい。
A/Bの値が1.1以上である構成は、後述する製造方法の第2工程においてホットプレスを採用する場合には得ることができず、冷間プレスを採用する場合により得ることができる。
【0026】
図1に示すように、プレス成形品100は、天板部111、縦壁部113、突出部115、及びフランジ部117がいずれも長手方向に沿って延びた長尺形状を有している。このうち、天板部111、縦壁部113、及び、フランジ部117はそれぞれ長手方向の全長に亘り平板状に延びている。突出部115は、長手方向の一部のみに平板状に延びている。
以下の説明では、プレス成形品100の長手方向において、突出部115が設けられた領域を突出領域P1と定義し、突出部115が設けられていない領域を非突出領域P2と定義する。
【0027】
ここで、図2Aは、図1のA-A’断面図であり、突出領域P1におけるプレス成形品100の長手方向に垂直な面の断面を模式的に示している。また、図2Bは、図1のB-B’断面図であり、非突出領域P2におけるプレス成形品100の長手方向に垂直な面の断面を模式的に示している。
【0028】
突出領域P1の長手方向の長さは、プレス成形品100の長手方向の全長の30%以上であってもよい。プレス成形品100の長手方向における突出領域P1の長さを、プレス成形品100の長手方向の全長の30%以上とすることで、プレス成形品100の全長にわたり突出部115を設けずとも、高強度かつ三点曲げ試験における特性が高いという効果を得ることができる。
プレス成形品100の長手方向における突出領域P1の長さが、プレス成形品100の長手方向の全長の50%以上であることが、強度の観点からはより好ましい。
【0029】
以下に、突出領域P1におけるプレス成形品100の断面形状について説明する。
図2Aに示すように、突出領域P1において長手方向に垂直な面を断面視した場合、プレス成形品100は、天板部111、縦壁部113、突出部115、及びフランジ部117を有する。突出部115は、天板部111と縦壁部113とを結ぶコーナー部分の境界部112から外側に向かって突出した形状を有する。突出部115を除いたプレス成形品100の断面(長手方向に垂直な断面)は、ハット状である。
【0030】
図2Aに示すように、突出部115は、天板部111の長手方向の一部と縦壁部113の長手方向の一部からそれぞれ突出した鋼板が先端部115tで折り曲げられて形成される。突出部115のうち少なくとも先端部115t側には、重ね合わせ部115dが存在する。本実施形態においては、「重ね合わせ部115d」とは、突出部115において鋼板が二重に重ね合わされている部分とする。重ね合わせ部115dは、全体として板状の形状を有する。
より詳細には、突出部115は、図2Aに示すように、天板部111の幅方向両端部から外側に向けて延びる部位115aと、縦壁部113の上端から外側に向けて延びる部位115bとが互いに重なり合って構成されている。
図2Aに示す構成においては、部位115aは、天板部111の幅方向両端部から天板部111と同一面内で外側に向けて延びることにより形成されている。部位115bは、縦壁部113の上端から外側に湾曲して外側に向けて延びることにより形成されている。
部位115aおよび部位115bはそれぞれ、鋼板101の一部である。部位115aは、先端部115tにおいて逆方向に曲げられて部位115bとなっている。
【0031】
突出部115は、先端部115t以外の領域において、突出部115を構成する鋼板の一部はカーブしているが折り曲げられていない。すなわち、先端部115tを除いて突出部115には、突出部115の外側に向かって突出する稜線部がない。従って、プレス成形品100は、特許文献4および5に記載の部品とは異なる。
また、重ね合わせ部115dは筒状に丸められておらず、突出部115は、特許文献6の図6に記載の筒状に丸められた補強部とは異なる。
更に、突出部115は、特許文献7の図1および図2に記載の長円形の凹形状又は凸形状に形成されたコーナー部分とは異なる形状となる。
【0032】
突出部115では、部位115aと部位115bとが、重ね合わされて密着していてもよい。このように構成することで、突出部115の強度をより向上させることができる。部位115aと部位115bが密着した構造は、後述する製造方法によって得ることができる。
【0033】
突出部115は、部位115aと部位115bとが、接合手段によって固定されていてもよい。たとえば、重ね合わせ部115dで重なっている部位115aと部位115b同士が、抵抗スポット溶接やレーザー溶接によって溶接されていてもよい。また、突出部115の下端側(天板部および縦壁部と、突出部との境界)においては、部位115aと部位115bとがアーク溶接(隅肉溶接)されていてもよい。接合手段は、接着剤、ろう付け、リベット、ボルト締め、および、摩擦攪拌接合のいずれかであってもよい。たとえば、図3に示す領域Aおよび/又は領域Bが接合されていてもよい。図3に示す領域Aは、突出部115の端部ではない領域であり、抵抗スポット溶接又はレーザー溶接で接合されてもよい。突出部115と他の部分との境界にある領域Bの溶接(隅肉溶接)は、アーク溶接で行ってもよい。
【0034】
図2Aに示すように、本実施形態に係るプレス成形品100では、突出領域P1において長手方向に垂直な面を断面視した場合、天板部111と縦壁部113とがなす角度Yが90°~100°程度とされている。角度Yは90°未満であってもよいが、90°以上であることが好ましく、特に好ましくは90°から150°の範囲である。天板部111と、それぞれの縦壁部113とが成す2つの角度Yは、異なっていてもよいが、両者の差が10°以内であることが好ましく、同じ角度であることが特に好ましい。
【0035】
図2A又は図2Bには、縦壁部111と天板部112とがなす角度Yが90°より大きい場合の一例を示している。ここで、角度Yは、図2Aに示す角度、すなわち、プレス成形品100の内側において、天板部111と縦壁部113とがなす角度である。
【0036】
図2Aに示すように、本実施形態に係るプレス成形品100は、天板部111と突出部115とがなす角度が180°とされている。角度Xは、天板部111の外側表面111sを含む面と、突出部115の一部である重ね合わせ部115dの表面115ds(重ね合わせ部115dにおける部位115の表面)を含む面とがなす角度をいう。なお、天板部111に例えば微小な凹凸が形成されて天板部111の一部が平板状ではない場合、天板部111全体として平板とみなして天板部111の角度を決定する。
ただし、平板状の天板部111の一部に大きな凹凸、例えば縦壁部113の高さの15%以上の凹凸が形成されている場合(第2実施形態で説明する図7Dおよび図7Eの例等)には、当該凹凸を除いた部分を天板部111とみなして天板部111の角度を決定する。
本実施形態に係るプレス成形品100は、図1および図2Aに示すように、角度Xが180°であるため、天板部111と突出部115とは平行である。角度Xが180°である場合の好ましい一例では、天板部111から延びる部位115aと天板部111との間に段差がない。
【0037】
角度Xは180°に限定されず、90°以上180°以下の範囲、例えば105°、135°などで設定されればよい。すなわち、プレス成形品100の変形例の断面図である図4Aに示すように角度Xが例えば145°であってもよい。角度Xが90°より大きい場合、天板部111の上方から天板部111の板面に垂直な方向に沿ってプレス成形品100を見たときに、突出部115を構成する部位115bが部位115aによって見えなくなっている。このような部分は、負角部と呼ばれることがある。別の観点では、負角部は、上型および下型のみでプレス成形しようとしたときに、逆勾配となる部分である。
【0038】
本実施形態のプレス成形品100を構造部材として用いる場合、天板部111とフランジ部117とがそれぞれ他の部材の一部に固定されて利用される場合がある。その場合、図2Aに示すように角度Xが180°であることが好ましい場合がある。角度Xが180°でかつ天板部111の表面と突出部115の表面とが面一になっていることによって、天板部111側を他の部材に固定しやすくなる場合がある。また、天板部111側から荷重が加えられたときに、天板部111および突出部115の全体で荷重を支えやすくなる。
【0039】
なお、突出部115は天板部111の両端からそれぞれ突出しているが、それぞれの突出部115と天板部111とが成す2つの角度Xの差は10°以内であることが好ましく、同じで角度であることが特に好ましい。また、それぞれの突出部115の長手方向における垂直な断面におけるそれらの形状は線対称でなくともよいが、線対称に形成されていることが好ましい。
【0040】
図4Bに示すように、本実施形態においては、長手方向に垂直な断面における突出部115の長さを「長さD」と定義する。すなわち、プレス成形品100の長手方向に垂直な面を断面視した場合、図4Bに示すような、天板部111と縦壁部113のそれぞれの延長線が交差する境界点112pから突出部115の先端部115tまでの長さを「長さD」と定義する。
【0041】
長さDは剛性確保の観点から3mm以上であることが好ましい。長さDが3mm未満であると、縦壁部113が内側に倒れ込もうとする力が小さくなりすぎ、プレス成形品100の剛性が不十分となるため好ましくない。長さDは鋼板の厚さやプレス成形品100の大きさに応じて適宜設定可能であり、たとえば5mm以上、10mm以上、15mm以上等、適宜設定可能である。当該長さの上限に特に限定はないが、たとえば25mm以下であってもよい。プレス成形品が2つの突出部115を含む場合、2つの突出部115の長さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
図4Bに示すように、長手方向に垂直な断面における重ね合わせ部115dの長さD1は、突出部115の長さDの0.1~1倍の範囲であればよく、0.5~1倍の範囲であることが好ましい。突出部115の長さDの0.1~1倍の範囲であることにより、プレス成形品100に加わる応力が重ね合わせ部115dに集まり、プレス成形品100の剛性が十分に保たれる。重ね合わせ部115dの長さD1は具体的にはたとえば、突出部115の長さDの0.3倍や0.8倍など、その製造条件に応じて適宜設定しても良い。
【0043】
突出部115における部位115bと縦壁部113との境界のコーナー部は、プレス成形品100の長手方向に垂直な面を断面視した場合、曲面であることが好ましい。当該コーナー部を曲面とすることによって、当該コーナー部で座屈することを抑制できる。
長手方向に垂直な面における当該コーナー部の曲率半径は、長さDの0.1から1倍の範囲(たとえば0.2から0.8倍の範囲や、0.2から0.5倍の範囲)にあってもよい。たとえば、角度Xが180°より小さい場合、突出部115の部位115aと天板部111との境界のコーナー部が曲面であってもよい。
【0044】
図2Bの断面図に示すように、非突出領域P2におけるプレス成形品100の断面(長手方向に垂直な断面)は、略ハット状である。
上述の突出領域P1においては、図2Aに示すように、天板部111は、2つの突出部115を介して、天板部111に隣接する2つの縦壁部113を結んでいる。一方、非突出領域P2においては、図2Bに示すように、突出部115が設けられていないため、天板部111はその両端から直接、隣接する2つの縦壁部113が下方へ延びている。
【0045】
図1のプレス成形品100では、長手方向における両端の非突出領域P2に突出部115が形成されておらず、長手方向の中央の突出領域P1に突出部115が形成されている。このように構成することで、プレス成形品100を他の部材と組み合わせて構造部材とした場合に、他の部材が形状の制約を受けることなく、かつ所望の衝突安全性能を得ることができる。
なお、後述する「二工程による製造方法」によって、図1に示すような、長手方向の一部のみに突出部115が形成されているプレス成形品100を一枚の素材鋼板から製造することができる。
【0046】
図2A及び図2Bの断面図に示すように、突出領域P1及び非突出領域P2では、縦壁部113とフランジ部117とを結ぶコーナー部116は、丸められた形状を有することが好ましい。コーナー部116が丸められた形状を有することによって、コーナー部116で座屈することを抑制できる。
【0047】
本実施形態においては、プレス成形品100の長手方向に垂直な断面を断面視した場合、図2Aに示す突出領域P1における断面の断面周長は、図2Bに示す非突出領域P2における断面の断面周長よりも長い。
【0048】
「突出領域P1における断面の断面周長」とは、突出領域P1の長手方向中心位置の断面における、フランジ部117を含まない、天板部111と縦壁部113と突出部115の断面周長の合計の長さを意味する。
「非突出領域P2における断面の断面周長」とは、非突出領域P2の長手方向中心位置の断面における、天板部111と縦壁部113の断面周長の合計の長さを意味する。
また、「断面周長」とは、プレス成形品100の外側の板面上における長さを意味する。
「突出領域P1における断面の断面周長が非突出領域P2における断面の断面周長よりも長い」とは、両者の差が、非突出領域P2における断面の断面周長の5%以上であることを意味する。
また、突出領域P1における断面の断面周長と非突出領域P2における断面の断面周長との差は、非突出領域P2における断面の断面周長の20%以内であることが、成形性の観点からは好ましい。
【0049】
上述のように、本実施形態に係るプレス成形品100は、長手方向に垂直な断面を断面視した場合、突出領域P1における断面の断面周長は、非突出領域P2における断面の断面周長よりも長い。
【0050】
このような構成によれば、突出領域P1をプレス成形品100の全長に亘って形成せずとも、高強度かつ三点曲げ試験における特性が高いという効果を得ることができる。
【0051】
図5に、角度Xが90°かつ角度Yが90°である変形例としてのプレス成形品100Aの一例を示す。このプレス成形品100Aは、角度Xが90°かつ角度Yが90°である以外の構成は、図1のプレス成形品100と同様である。このような変形例としてのプレス成形品100Aも、後述する「二工程による製造方法」によって一枚の素材鋼板101から製造することができる。
【0052】
また、センターピラーとして適用したプレス成形品100’の斜視図を図6に模式的に示す。図6において、突出部115の外縁を太線で示す。このプレス成形品100’でも、長手方向の一部の領域のみに突出部115が形成されており、他の領域には突出部115が形成されていない。
【0053】
突出領域P1と非突出領域P2との境界には、遷移領域(図示せず)が設けられていてもよい。この遷移領域では、突出領域P1側から非突出領域P2側に向かい、境界点112pから突出部115の先端部115tまでの長さが、漸次小さくなってもよい。
なお、成形性の観点から、プレス成形品の長手方向における遷移領域の長さを、成形品100の長手方向の全長の20%程度設けてもよい。又は、成形品100の設計を考慮して、遷移領域が極めて小さくなるように設計してもよい。
【0054】
本実施形態に係るプレス成形品100は、高強度かつ三点曲げ試験における特性が高く、設計の自由度が高い。そのため、本実施形態のプレス成形品は、様々な用途に利用できる。たとえば、各種の移動手段(自動車、二輪車、鉄道車両、船舶、航空機)の構造部材や、各種機械の構造部材に用いることができる。自動車の構造部材の例には、サイドシル、ピラー(フロントピラー、フロントピラーロア、センターピラー等)、ルーフレール、ルーフアーチ、バンパー、ベルトラインレインフォースメント、およびドアインパクトビームが含まれ、これら以外の構造部材であってもよい。
【0055】
尚、本実施形態に係るプレス成形品100は、図2Aに示すように、2つのフランジ部117が、2つの縦壁部113の下端部から、外側に向かって水平に延びている。すなわち、フランジ部117は、天板部111と平行である。
ただし、プレス成形品100は、フランジ部117が切断されることにより、フランジ部117を含まない形状とされてもよい。すなわち、プレス成形品100は、天板部111と縦壁部113と突出部115から構成される成形品であってもよい。
【0056】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係る構造部材200について図7A図9Bを参照しながら説明する。
上記の第1実施形態で説明したプレス成形品100は、図7A図7Eに示すように、鋼板部材201と組み合わせて閉断面を形成することで自動車部品やその他の用途の構造部材200として用いることができ、また、図7Fに示すように、そのまま構造部品として用いることが可能である。
【0057】
図7A図7Cは、構造部材200の具体例としての構造部材200a,200b,200cを示す図であり、突出領域P1における長手方向に垂直な断面を模式的に示す図である。プレス成形品100の天板部111と縦壁部113とがなす角度Yは、説明の簡略化のために90°としている。
【0058】
構造部材200a,200b,200cでは、第1実施形態で説明したプレス成形品100と、鋼板部材201とを組み合わせて閉断面を形成するように構成される。すなわち、プレス成形品100と鋼板部材201とは、中空体を構成する。
【0059】
図7Aに示す構造部材200aでは、鋼板部材201として裏板(鋼板)201aが用いられる。裏板201aは、プレス成形品100の2つのフランジ部117に溶接されている。
図7Bに示す構造部材200bでは、鋼板部材201としてハット状の断面を有するプレス成形品201bが用いられる。プレス成形品100とプレス成形品201bとは、それぞれの内側領域が対向するように配置され、プレス成形品100のフランジ部117とプレス成形品201bのフランジ部217とが溶接されている。
図7Cに示す構造部材200cでは、鋼板部材201としてプレス成形品100と縦壁部の寸法のみが異なるプレス成形品201cが用いられる。プレス成形品100とプレス成形品201cとは、それぞれの内側領域が対向するように配置され、プレス成形品100のフランジ部117とプレス成形品201cのフランジ部217とが溶接されている。
このように、鋼板部材201は、プレス成形品100の2つのフランジ部117を結ぶように当該2つのフランジ部117に固定される。鋼板部材201は、上述の例示に限定されるものではなく、その他の成形品が含まれてもよい。
【0060】
また、図7D図7Eは、構造部材200の具体例としての構造部材200d,200eを示す図であり、突出領域P1における長手方向に垂直な断面を模式的に示す図である。これらの構造部材200d,200eでは、第1実施形態で説明したプレス成形品100の変形例であるプレス成形品100B,100Cを鋼板部材201と組み合わせて構造部材としている。
図7Dに示す構造部材200dで用いられているプレス成形品100Bは、縦壁部113の高さとほぼ同じ深さの凹部111’が天板部111に形成されている点においてプレス成形品100と異なっている。
図7Eに示す構造部材200eで用いられているプレス成形品100Cは、縦壁部113の高さの半分程の深さの凹部111’’が天板部111に形成されている点においてプレス成形品100と異なっている。
凹部111’,111’’は、構造部品200の長手方向の全体にわたって形成されてもよく、たとえば突出領域P1を含むように、構造部品200の長手方向の一部のみに形成されてもよい。
【0061】
プレス成形品100がフランジ部117を含まない場合、鋼板部材201は、閉断面を構成するようにプレス成形品100の縦壁部113に固定されてもよい。たとえば、鋼板部材201の端部にフランジ部を設け、このフランジ部とプレス成形品100の縦壁部113とを固定してもよい。
【0062】
プレス成形品100と鋼板部材201との固定方法に特に限定はなく、状況に応じて適切な固定方法を選択すればよい。固定方法の例には、溶接、接着剤、ろう付け、リベット、ボルト締め、および、摩擦攪拌接合からなる群より選ばれる少なくとも1つが含まれる。これらの中でも、溶接は実施が容易である。溶接の例には、抵抗スポット溶接およびレーザー溶接が含まれる。
【0063】
更に、本実施形態に係る構造部材200は、図8A図8Dに示すように、接合部602を介して接合された補助部材601を含んでも良い。図8A図8Dは、構造部材200に対し、長手方向に垂直な断面の断面視形状がコの字型である補助部材601をそれぞれ異なる接合部602で接合した状態を示す図である。接合部602は、溶接、接着剤、ろう付け、リベット、ボルト締め、および、摩擦攪拌接合のいずれかによって構成されてもよい。
補助部材601は、長尺上の部材であり、プレス成形品100の長手方向と補助部材601の長手方向とが平行に配置されている。
【0064】
図8Aに示す例では、補助部材601は、天板部111と2つの縦壁部113のそれぞれに設けられた接合部602を介して構造部材200に接合されている。
図8Bに示す例では、補助部材601は、2つの縦壁部113のそれぞれに設けられた接合部602を介して構造部材200に接合されている。天板部111と補助部材601との間には、接合部602は設けられていない。天板部111と補助部材601とは互いに密着するように配置されてもよく、隙間が生じるように配置されてもよい。
図8Cに示す例では、補助部材601は、天板部111に設けられた接合部602を介して構造部材200に接合されている。2つの縦壁部113と補助部材601との間には、接合部602は設けられていない。縦壁部113と補助部材601とは互いに密着するように配置されてもよく、隙間が生じるように配置されてもよい。
図8Dに示す例では、補助部材601は、2つの縦壁部113のそれぞれに設けられた接合部602を介して構造部材200に接合されている。天板部111と補助部材601の上面との間に空間が設けられている。
【0065】
このような構造部品は、フランジ部117の全体を他の鋼板部材に接合してもよいし、フランジ部113の一部のみを他の鋼板部材に接合してもよい。フランジ部113の一部のみを他の鋼板部材に接合する場合、その接合部分は、プレス成形品100の長手方向の両端部近傍のみであってもよい。
【0066】
更に、図9Aおよび図9Bは、補助部材601の変形例としての補助部材701を用いる場合を説明するための図であり、突出領域P1における構造部材200の長手方向に垂直な断面を模式的に示す図である。図9Aおよび図9Bに示すように、補助部材601に代えて、長手方向に垂直な断面の断面視形状がL字型である補助部材701を用いることができる。補助部材701は、長尺状の部材であり、プレス成形品100の長手方向と補助部材701の長手方向とが平行に配置されてもよい。
【0067】
図9Aに示す例では、天板部111と2つの縦壁部113のそれぞれに2つの補助部材701が接合部702を介して接合されている。
図9Bに示す例では、天板部111に2つの補助部材701が接合部702を介して接合されている。2つの縦壁部113と補助部材701との間には、接合部702は設けられていない。縦壁部113と補助部材701とを密着させて配置してもよく、隙間が生じるように配置してもよい。
接合部702は、溶接、接着剤、ろう付け、リベット、ボルト締め、および、摩擦攪拌接合のいずれかによって構成されてもよい。
【0068】
上述した補助部材601又は補助部材701は、構造部材200の長手方向の全体にわたって配置されてもよく、たとえば突出領域P1を含むように、プレス成形品100の長手方向の一部のみに配置されてもよい。あるいは、非突出領域P2を含むようにプレス成形品100の長手方向の一部に配置されてもよい。
【0069】
本実施形態に係る構造部材200は、長手方向の一部にのみ突出領域P1を有するプレス成形品100と、鋼板部材201とを合わせて閉断面を構成するため、高強度かつ三点曲げ試験における特性が高く、設計の自由度が高い。
また、補助部材601又は701をさらに備える場合には、衝突特性がさらに向上する。
より詳細には、構造部材200においては、衝突時にはプレス成形品100の縦壁部113が内側に移動するように倒れこむため、補助部材601,701を追加することで、この倒れこみの抑制が可能となり、衝突特性がさらに向上する。
なお、補助部材601又は701の強度は高いことが好ましいが、上述したような内側への倒れこみの抑制に寄与するのであれば、補助部材601又は701の素材は、ポリマー材料や発泡樹脂等の非金属であってもよい。
また、従来のプレス成形品では縦壁が外側に倒れ込むため、プレス成形品と補助部材との間の接合部において破断し易い。しかし、第1実施形態で説明したプレス成形品100は縦壁部113が内側へ倒れ込むため、図8A図8Dに示すような補助部材601の接合部602において破断が生じ難い。
【0070】
尚、本実施形態に係る構造部材200では、プレス成形品100のフランジ部117の一部のみが鋼板部材201に固定されていてもよい。その場合、フランジ部117の他の部分は他の鋼板部材201に固定されていない。たとえば、プレス成形品100のフランジ部117のうち長手方向の両端部付近のフランジ部117のみが鋼板部材201に固定され、それ以外のフランジ部117は鋼板部材201に固定されていなくてもよい。
【0071】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態に係るプレス成形品の製造方法(以下、本実施形態の製造方法と記載する場合がある)について説明する。本実施形態に係る製造方法では、第1実施形態で説明したプレス成形品100(及びその変形例)を製造することができる。上述した実施形態で説明した事項は以下に説明する製造方法に適用できるため、重複する説明を省略する場合がある。また、以下の製造方法について説明する事項は、上述した実施形態のプレス成形品に適用できる。
【0072】
以下の実施形態の製造方法は、第1工程と第2工程とを含む。
第1工程は、素材鋼板を変形させることによって変形鋼板を得る工程である。第1工程では、変形鋼板は長尺形状を有し、2つの縦壁部となる2つの縦壁部相当部、天板部となる天板部相当部、および突出部となる突出部相当部、を含む。この変形鋼板の長手方向においては、突出領域P1に成形される第1領域における断面の断面周長が、非突出領域P2に成形される第2領域における断面の断面周長よりも長い。
【0073】
第2工程は、変形鋼板をプレス成形することによって、プレス成形品を形成する工程である。第2工程において、突出部相当部の少なくとも一部を重ね合わせることによって突出部を形成する。
【0074】
変形鋼板において、縦壁部相当部、天板部相当部、および突出部相当部の間には、明確な境界はない。しかし、それらの間に何らかの境界があってもよい。
【0075】
変形鋼板は、荷重を除いたときに変形が解消される弾性変形の状態にあってもよいし、荷重を除いても変形が解消されない塑性変形の状態にあってもよい。すなわち、変形鋼板は、塑性変形の状態又は弾性変形の状態にあってもよい。塑性変形の状態にある変形鋼板を、以下では「予備成形品」と称する場合がある。
【0076】
第1工程に特に限定はなく、公知のプレス成形によって行ってもよい。第2工程での成形は、ホットプレス成形、冷間プレス成形のいずれでもよいが、ホットプレス成形を利用することがより好ましい。第2工程によって得られたプレス成形品は、さらに後処理されてもよい。第2工程によって得られた(又はその後の後処理によって得られた)プレス成形品は、そのまま用いられてもよいし、他の部材と組み合わせて用いられてもよい。
【0077】
以下では、出発材料である鋼板(素材鋼板)を「ブランク」と称する場合がある。ブランクは平板状の鋼板であり、製造されるプレス成形品の形状に応じた平面形状を有する。ブランクの厚さおよび物性は、プレス成形品に求められる特性に応じて選択される。たとえば、プレス成形品100が自動車用の構造部材である場合には、それに応じたブランクが選択される。ブランクの厚さは、たとえば0.4mmから4.0mmの範囲にあってもよく、0.8mmから2.0mmの範囲にあってもよい。
プレス成形品100の肉厚は、ブランクの厚さと加工工程とによって決まり、ここで例示したブランクの厚さの範囲にあってもよい。
【0078】
ブランクは、第2工程でホットプレス成形を行う場合、引張強度が340MPa以上(たとえば、引張強度が500~800MPa、490MPa以上、590MPa以上、780MPa以上、980MPa以上、又は1200MPa以上)の高張力鋼板(ハイテン材)であることが好ましい。構造部材としての強度を保ちつつ軽量化を図るためには、成形品の引張強度が高いことが好ましく、590MPa以上(たとえば、780MPa以上、980MPa以上、又は1180MPa以上)のブランクが用いられることがより好ましい。ブランクの引張強度の上限に限定はなく、一例では2500MPa以下である。本実施形態の製造方法で製造されるプレス成形品の引張強度は、ブランクの引張強度と同等かそれよりも高く、ここで例示した範囲にあってもよい。
【0079】
素材鋼板(ブランク)の引張強度が590MPa以上である場合、ブランクと同等以上のプレス成形品を得るためには、第2工程がホットプレス成形(ホットスタンピング、熱間プレスとも称する)によって行われることが好ましい。引張強度が590MPa未満のブランクを用いる場合でも、第2工程をホットスタンピングによって行ってもよい。ホットスタンピングを行う場合、それに適した公知の組成を有するブランクを用いてもよい。
【0080】
ブランクの引張強度が590MPa以上で肉厚が1.4mm以上の場合には、延性が低いブランクであっても突出部で割れが生じることを抑制するために、第2工程をホットスタンピングで行うことが特に好ましい。
同様の理由で、ブランクの引張強度が780MPa以上で肉厚が0.8mm以上である場合には、第2工程をホットスタンピングで行うことが特に好ましい。加熱した鋼板は延性が高くなるため、第2工程をホットスタンピングで行う場合、ブランクの肉厚が3.2mmであっても割れが生じることが少ない。
【0081】
ブランクの引張強度が高い場合、冷間プレスでは突出部の先端部で割れが生じやすくなる。そのため、成形後の鋼板の引張強度が1200MPa以上(たとえば1500MPa以上又は1800MPa以上)となる場合には、第2工程をホットスタンピングによって行うことがより好ましい。成形後の鋼板の引張強度が1200MPa未満となる場合でも、第2工程をホットスタンピングによって行ってもよい。
また、ブランクの引張強度が780MPa以上である場合、冷間プレスによって、上記の実施形態のプレス成形品の形状とすると、突出部等にしわや割れが生じる場合がある。しかし、本願発明のプレス成形品の製造方法において、第2工程をホットスタンピングによって行うことで、ブランクの引張強度が780MPa以上であっても、上記の実施形態のプレス成形品の形状を得ることができる。つまり、第2工程をホットスタンピングによって行うことで、引張強度が780MPa以上のプレス成形品を製造することができる。
【0082】
上記のように、引張強度が590MPa以上であるプレス成形品を得るためには、第2工程をホットスタンピングによって行うことが好ましい。
なお、ホットスタンピングにおいて、所望の強度を確保するため、ブランクの化学組成として、C量は0.09~0.40質量%であることが好ましい。また、Mnも同様に1.0~5.0質量%であることが好ましい。また、Bも同様に0.0005~0.0500質量%であることが好ましい。
焼き入れ後の引張強度1500MPa以上となるブランクの代表的な化学組成は、特に限定されないが、C:0.19~0.23質量%、Si:0.18~0.22質量%、Mn:1.1~1.5質量%、Al:0.02~0.04質量%、Ti:0.015~0.030質量%、B:0.0010~0.0020質量%であることが好ましく、例えば、C:0.20質量%、Si:0.20質量%、Mn:1.3質量%、Al:0.03質量%、Ti:0.020質量%、B:0.0015質量%である。
【0083】
以下に、第1工程で得られる予備成形品301の具体例について説明する。第1工程では、図10等に示すように、予備成形品301の長手方向においては、上記第1実施形態のプレス成形品100の突出領域P1に成形される第1領域S1における断面の断面周長が、非突出領域P2に成形される第2領域S2における断面の断面周長よりも長くなるように変形を行う。
【0084】
図10に示す予備成形品301(301A)では、第1領域S1における2つの縦壁部相当部301awが、第2領域S2における2つの縦壁部相当部301awよりも、外側に向けて(プレス成形品100の外側と同じ方向に向けて)せり出している。天板部相当部301atについては、第1領域S1における天板部相当部301atの板面と第2領域S2における天板部相当部301atの板面とが同じ面内にある。すなわち、図10に示す予備成形品301では、予備成形品301の長手方向において、プレス成形品100の突出領域P1に成形される第1領域S1における断面の断面周長が、プレス成形品100の非突出領域P2に成形される第2領域S2における断面の断面周長よりも長い。
第1領域S1と第2領域S2において天板部相当部301at等の板面が同じ面内にあるとは、たとえばこの部分の外側又は内側の板面が略同一の面内に存在することを意味する。
【0085】
第1工程で得られる予備成形品301の他の具体例を図11に示す。図11に示す予備成形品301(301B)では、第1領域S1における天板部相当部301atが、第2領域S2における天板部相当部301atよりも、外側にせり出している。縦壁部相当部301awについては、第1領域S1における2つの縦壁部相当部301awの板面と第2領域S2における2つの縦壁部相当部301awの板面とが同じ面内にある。
すなわち、図11に示す予備成形品301では、予備成形品301の長手方向において、プレス成形品100の突出領域P1に成形される第1領域S1における断面の断面周長が、プレス成形品100の非突出領域P2に成形される第2領域S2における断面の断面周長よりも長い。
このような予備成形品301を用いる場合、プレス軸方向に突出した形状であるため、加工をしやすく特に成形中にしわが発生しにくく、突出領域P1をより簡便に得ることが可能である点で好ましい。
【0086】
また、第1工程で得られる予備成形品301の他の具体例を図12に示す。図12に示す予備成形品301(301C)では、第1領域S1における天板部相当部301atが、第2領域S2における天板部相当部301atよりも、外側にせり出している。また、第1領域S1における2つの縦壁部相当部301awが、第2領域S2における2つの縦壁部相当部301awよりも、外側にせり出している。
よって、図10および図11に示す予備成形品301と同様に、図12に示す予備成形品301では、予備成形品301の長手方向において、プレス成形品100の突出領域P1に成形される第1領域S1における断面の断面周長が、プレス成形品100の非突出領域P2に成形される第2領域S2における断面の断面周長よりも長い。
【0087】
上記の第1工程における素材鋼板(図示せず)から予備成形品301への変形は、曲げ加工、プレス加工、絞り加工、又はこれらの組み合わせによって行うことができる。第1工程での変形は、ブランクの引張強度とは無関係に、冷間加工(たとえば冷間プレス)で行うことができるとの利点を有する。この場合、ホットスタンプよりも低コストで成形することができる。ただし、必要に応じて第1工程を熱間加工(たとえば熱間プレス)で行ってもよい。一例では、第1工程を冷間加工で行い、第2工程をホットスタンピングで行う。
【0088】
なお、矩形状の素材鋼板を変形することで、図10から図12に示すような予備成形品301を作製してもよい。矩形状の素材鋼板を用いた場合、たとえば、矩形状の素材鋼板から上記のような予備成形品301を作製する場合、第1領域S1の板厚が、第2領域S2の板厚よりも薄くなる場合がある。また、プレス成形品100の長手方向に垂直な方向に相当する素材鋼板の幅について、第1領域S1に相当する箇所を第2領域S2に相当する箇所よりも大きな幅とした素材鋼板を用いてもよい。このような形状の素材鋼板を用いた場合、予備成形品301の全体にわたりほぼ均一な板厚とすることができる。
図10から図12の予備成形品301の例示では、第1領域S1と第2領域S2との間の遷移領域において、予備成形品301の長手方向に沿った断面形状が直線的に変化しているが、遷移領域において予備成形品301の長手方向に沿った断面形状が曲線形状を含むように滑らかに変化してもよい。
【0089】
次に、第2工程で利用される成形の一例について以下に説明する。
第2工程においてホットスタンピングを行う場合、まず、被加工物(予備成形品)を所定の焼入れ温度まで加熱する。焼入れ温度は、被加工物がオーステナイト化するA3変態点(より具体的にはAc3変態点)よりも高い温度であり、たとえば910℃以上であってもよい。予備成形品301の加熱は、たとえば、予備成形品301を加熱炉等の加熱装置内で加熱する手法や、予備成形品301に通電を行い加熱する手法を用いることができる。加熱温度の範囲は、オーステナイト単層を得てかつオーステナイト層の分解を抑制するため、Ac3変態点以上(Ac3変態点+150℃)以下の範囲が好ましい。鋼板中の炭化物を溶解させるため、加熱温度保持時間は1秒以上300秒以下が好ましい。なお、焼き入れ性の良いMn、Mo、Cr等の元素を追加した場合には短時間での保持が可能となる。
【0090】
次に、加熱した被加工物を、プレス装置でプレスする。被加工物は加熱されているため、大きく変形させても割れが生じにくい。プレスを開始する時の被加工物(予備成形品)の温度は、上記加熱温度の範囲内でマルテンサイト単層を得るため、Ms点以上(Ac3変態点+150℃)以下が好ましい。また、生産性を確保しかつGA鋼板の場合にZnの消失を抑制するため、昇温速度は5℃/秒以上500℃/秒以下が好ましい。
被加工物をプレスする際に被加工物を急冷する。この急冷によって、プレス加工の際に被加工物が焼入れされる。被加工物の急冷は、金型内部に水冷管を設けてを冷却したり、金型から被加工物に向けて水を噴出させたりすることによって実施できる。プレス装置によって被加工物を急冷するときの冷却速度は、製造コストを抑えてかつマルテンサイト単層を得るため、20℃/秒以上200℃/秒以下が好ましい。たとえば、30℃/秒以上がより好ましい。
ホットスタンピングの手順(加熱およびプレス等)およびそれに用いられる装置に特に限定はなく、公知の手順および装置を用いてもよい。
【0091】
予備成形品301(変形鋼板)は、長手方向に垂直な断面がU字状であるU字状部を含んでもよい。このU字状部が、2つの縦壁部相当部、天板部相当部、および突出部相当部を含み、成形品における2つ縦壁部、天板部、および突出部となる。U字状部の端部には、フランジ部となる部分がつながっていてもよい。
以下の説明において、「断面」という語句は、原則として予備成形品等の部材の長手方向に垂直な断面を意味する。また、本実施形態において、変形鋼板における断面周長とは、フランジ部となる部分を含まない、2つの縦壁部相当部および天板部相当部、又は、2つの縦壁部相当部、天板部相当部、および突出部相当部の断面周長の合計の長さを意味する。
【0092】
上述した第1工程および第2工程を含み、これらの工程を異なる装置又は金型によって実施するプレス成形品の製造方法(二工程によるプレス成形品の製造方法)の一例について以下に説明する。
【0093】
第2工程においてホットスタンピングを行う場合、第1工程の後かつ、第2工程の前に、第1工程で素材鋼板を加工して得られた予備成形品301を加熱する加熱工程を含み、第2工程においては、上型と下型とを含むプレス型と2つのカム型によってホットプレス成形が行われる。下型は凸部を有し、下型の凸部と変形鋼板の少なくとも一部とが接しない状態で配置する工程を有する。
また第2工程においては、(a)天板部相当部を上型と下型によってプレスする工程と、(b)2つの縦壁部相当部を、下型と2つのカム型とによってプレスする工程と、を含む。
【0094】
以下に説明する製造方法において、第2工程は、以下の工程(a)および工程(b)を含んでもよい。この第2工程は、変形鋼板が、塑性変形している予備成形品である場合に好ましく用いられる。
【0095】
工程(a)では、天板部相当部を、対をなす上型と下型とを含むプレス型によってプレスする。工程(b)では、2つの縦壁部相当部を、下型と2つのカム型とによってプレスする。以下の実施形態の製造方法では、工程(a)および工程(b)の両方が完了したときに突出部が形成されるような金型を用いてもよい。カム型は、主に、プレス方向に対して垂直な方向(水平方向)に移動する。典型的な一例では、カム型は水平方向にのみ移動する。
【0096】
工程(a)および工程(b)を行うタイミングは、状況に応じて選択でき、いずれかを先に完了させてもよいし、両者を同時に完了させてもよい。また、工程(a)および工程(b)のいずれかを先に開始してもよいし、両者を同時に開始してもよい。工程(a)および工程(b)の完了のタイミングが異なる第1から第3の例について以下に説明する。
【0097】
第2工程の第1の例では、工程(a)が完了した後に工程(b)を完了させる。第1の例は、天板部と突出部とがなす角度Xが90°以上135°以下である場合に好ましく行われる。
なお、工程(a)が完了した後に工程(b)を完了させる限り、工程(a)が完了する前に工程(b)におけるカム型の移動を開始してもよい。
【0098】
第2工程の第2の例では、工程(b)が完了した後に工程(a)を完了させる。第2の例は、天板部と突出部とがなす角度Xが135°以上180°以下である場合に好ましく行われる。
なお、工程(b)が完了した後に工程(a)を完了させる限り、工程(b)が完了する前に工程(a)におけるプレス型の移動を開始してもよい。
【0099】
第2工程の第3の例では、工程(a)および工程(b)を同時に完了させる。工程(a)と工程(b)とが同時に完了する限り、工程(a)におけるプレス型の移動開始時期と、工程(b)におけるカム型の移動開始時期に限定はない。
【0100】
本実施形態では、第2工程をホットスタンピングによって行う一例について説明する。
しかし、第2工程を冷間プレスによって行う場合であっても、本実施形態の工程を用いることができる。この場合、突出部115における最大硬さAと、成形品100における最低硬さBとの比であるA/Bの値を1.1以上とすることができ、衝突特性を高めることができる点で好ましい。
【0101】
本実施形態では、塑性変形している予備成形品301を変形鋼板として用いる場合について説明する。
【0102】
まず、第1工程では、素材鋼板を変形させることによって、天板部111となる部分(天板部相当部)、2つの縦壁部113となる部分(2つの縦壁部相当部)、および突出部115となる部分(突出部相当部)を少なくとも含む予備成形品301(変形鋼板)を形成する。第1工程は、上述した方法(たとえばプレス加工)によって行うことができる。第1工程で形成される予備成形品301の一例の断面(第1領域S1における長手方向に垂直な断面)を、図13に模式的に示す。
【0103】
図13に示すように、予備成形品301は、U字状部301aと、フランジ部117となる平坦部301b(フランジ部相当部)とを含む。U字状部301aは、2つの縦壁部相当部301awおよび天板部相当部301atを含み、さらに、突出部相当部301aeを含む。予備成形品301では、天板部相当部301atに対して2つの縦壁部相当部301awが同じ方向に曲がっている状態にある。すなわち、2つの縦壁部相当部301awは共に、天板部相当部301atの一方の主面側に曲がっている。
【0104】
予備成形品301の断面は、ハット状である。また、U字状部301aの断面は、U字状である。予備成形品301は塑性変形しており、荷重が加わっていない状態において、図13の形状を維持する。
【0105】
U字状部301aの長さ(断面長さ)をLuとする。さらに、プレス成形品100において、縦壁部の高さをHb(図19AのHb1に相当)とし、2つの縦壁部間の幅をWb(図19AのWb1に相当)とする。U字状部301aは、縦壁部相当部301awおよび天板部相当部301atに加えて、第2工程によって突出部115となる突出部相当部301aeを含む。そのため、長さLu、幅Wb、および高さHbは、Wb+2Hb<Luの関係を満たす。さらに、U字状部301aの幅をWaとし高さをHaとする。通常、Wb≦Waの関係とWb+2Hb<Wa+2Haの関係とが満たされる。
なお、図13に示す予備成形品301のU字状部301aでは、突出部相当部301aeと他の部分との間には明確な境界がない。
【0106】
予備成形品301の平坦部301bの端部は下方(天板部111から離れる方向)に下がっていてもよい。以下に説明する図14Aから図14Hでは、平坦部301bの端部が下がっていない予備成形品301を用いて第2工程を行う一例について説明する。図15Aから図15Hに示すように、平坦部301bの端部が下がっている予備成形品301でも同様に成形が可能である。
【0107】
第2工程をホットスタンピングによって行う場合、予め、予備成形品301を、Ac3変態点以上の温度(たとえばAc3変態点より80℃以上高い温度)にまで加熱する。
【0108】
次に、加熱された予備成形品301をプレス装置40aによってプレス加工する。プレス加工に用いられるプレス型の構成の一例を図14A等に示す。プレス装置40aは、プレス型10、プレート13、伸縮機構14、カム押圧型15、およびカム型(スライド型)21を含む。
プレス型10は、対となる上型11と下型12とを含む。下型12は、凸面が上型11の方向を向く凸部12aを含む。カム押圧型15およびカム型21はそれぞれ、カム機構として働く傾斜面15aおよび21aを有する。カム押圧型15は、伸縮可能な伸縮機構14を介してプレート13に固定されている。伸縮機構には、バネおよび油圧シリンダ等の公知の伸縮機構を用いることができる。
【0109】
プレート13の下降に伴って、上型11およびカム押圧型15が下降する。カム押圧型15の下降に伴い、カム型21がカム押圧型15に押されて下型12の凸部12a側に移動する。よく知られているように、カム型21の移動のタイミングは、傾斜面15aおよび21aの位置および形状を変化させることによって調整できる。すなわち、それらの調整によって、上述した工程(a)の完了および工程(b)の完了のタイミングを調整できる。
【0110】
上記の例では、カム機構によってカム型21を移動させている。しかし、カム機構を用いずに、油圧シリンダ等によってカム型21が、他の型の移動に依存せずに、独立して移動するような構成としてもよい。
【0111】
本実施形態では、上型11とカム押圧型15とがプレート13を介してプレス機の同じスライドに取り付けられている一例について例示している。しかし、上型11とカム押圧型15とをプレス機の別々のスライドに取り付け、それらを個別に動作させてもよい。
【0112】
また、本実施形態では、カム押圧型15が押し当てられることによってカム型21が移動する一例について例示している。しかし、カム型21に直接取り付けた駆動装置によって、カム型21を上型11に対して独立して移動させてもよい。
【0113】
プレス型10およびカム型21は、冷却機能を有する。たとえば、プレス型10およびカム型21は、それらの内部を冷却水が循環するように構成されてもよい。冷却された金型を用いてプレスを行うことによって、加熱された予備成形品301が成形および冷却される。その結果、プレス成形と焼入れとが行われる。なお、金型から水を噴出させることによって冷却を行ってもよい。
【0114】
以下に、図14Aの装置を用いてプレス成形する工程の一例について説明する。図14Aから図14Hに、上述した第2の例の方法で第2工程を行う場合の一例を模式的に示す。図14Aから図14Hでは、図12に示す予備成形品301(変形鋼板)を用いて説明する。
この第2の例の方法は、成形品100の角度Xが135°から180°の範囲にある場合に好ましく用いられる。
【0115】
図14A図14C図14Eおよび図14Gは、予備成形品301(変形鋼板)の第1領域S1に相当する断面における断面図を示す。また、図14B図14D図14Fおよび図14Hは、予備成形品301(変形鋼板)の第2領域S2に相当する断面における断面図を示す。すなわち、図14A図14B図14C図14D図14E図14F、並びに図14G図14Hは、それぞれ、同じ時刻における第1領域S1と第2領域S2における予備成形品301およびプレス型10等の断面を示すものである。これは、後述する図15Aから図15Hについても同様である。
【0116】
まず、図14Aおよび図14Bに示すように、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する。このとき、下型12の凸部12aと予備成形品301の少なくとも一部とが接しない状態で配置することが好ましい。図14Aの例では、下型12の凸部12aと予備成形品301は接していない。
【0117】
上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する際に、予備成形品301のU字状部301a(天板部111となる部分(天板部相当部)、2つの縦壁部113となる部分(2つの縦壁部相当部)、および突出部115となる部分(突出部相当部)を含む領域)、が下型12の凸部12aと接した状態であると、予備成形品301において下型12の凸部12aと接している個所は下型12によって冷却される。この場合、プレス成形時に、ホットプレスに必要な鋼板温度を維持できなくなる。このため、プレス成形品に割れやしわが生じる虞があり、所望の強度を得ることができなくなる。また、焼入れに必要な冷却速度を得ることができず。所望の強度を得ることができなくなる。
特に、予備成形品301突出部115となる部分(突出部相当部)とその近傍においては、割れやしわが生じやすいため、下型12の凸部12aと接しない状態で、予備成形品301を配置することが重要である。
【0118】
第2工程をホットスタンピングによって行う場合、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する工程が終了した時点の予備成形品301の第1領域S1の温度が700℃以上であり、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する工程が終了した時点から、予備成形品301と上型11とが接触するまでの時間、又は、予備成形品301とカム型21とが接触するまでの時間を3秒以内とすることが好ましく、2秒以内とすることが突出部115となる部分(突出部相当部)とその近傍における割れやしわの抑制といった観点からより好ましい。
【0119】
図14Aに示す例では、予備成形品301と下型12が接触していないため、突出部115となる部分(突出部相当部)とその近傍における割れやしわを抑制することができる。
しかし、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置した際に、下型12の凸部12aと予備成形品301の一部が接触する場合でも、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する工程が終了した時点から、予備成形品301と上型11とが接触するまでの時間、又は、予備成形品301とカム型21とが接触するまでの時間を3秒以内とすることで、突出部115となる部分(突出部相当部)とその近傍における割れやしわを抑制することができる。
【0120】
また、第2工程をホットスタンピングによって行う場合、予備成形品301と上型11、又は、予備成形品301とカム型21とが接触した時の予備成形品301の第1領域S1の温度が700℃以上であることが好ましい。予備成形品301の温度は、赤外線を用いた非接触の温度計や金型に組み込んだ温度計で計測することができる。
【0121】
次に、プレート13を下降させる。カム型21は、プレート13に伴って下降するカム押圧型15に押され、凸部12a側にスライドする。その結果、図14Cおよび図14Dに示すように、下型12(凸部12a)とカム型21とが、縦壁部111となる部分をプレスして拘束する。このようにして、工程(b)が完了する。
【0122】
次に、図14Eおよび図14Fに示すように、プレート13をさらに下降させ、それによって天板部となる部分のプレスを開始する。このとき、伸縮機構14が縮む。予備成形品301は、第1領域S1において突出部相当部を有するため、その突出部相当部がカム型21側に張り出す。
次に、図14Gおよび図14Hに示すように、上型11を下死点まで下降させ、天板部となる部分を上型11と下型12(凸部12a)とでプレスして拘束する。このようにして、工程(a)が完了する。
【0123】
以上のようにして、プレス成形が完了する。第1領域S1の突出部相当部は、上型11とカム型21との間で折り重ねられて、プレス成形品100の突出領域P1において、重ね合わせ部115dを有する突出部115となる。このようにして、プレス成形品100が得られる。
【0124】
ホットスタンピングを行う際に、突出部の焼き入れ性を確保するため、すなわちプレス成形品の突出部の引張強度をホットスタンピングの所定の狙い強度とするためには、成形時の冷却速度を低下させないで成形する必要がある。この観点からすると、突出部以外においては、鋼板の両面が金型と接触するため、両面から材料が冷却されて所定の冷却速度を確保することができる。
一方、突出部では、鋼板の片面(プレス成形品の外側)からしか冷却されないため、冷却速度が低下して所望の引張強度が得られない場合がある。そのため、プレス成形品100の突出部の角度Xが135°から180°の範囲にある場合には、カム型21で縦壁部を成形した後に上型11で天板部を成形することが好ましい。
【0125】
次に、上述した第1の例の方法で第2工程を行う場合の一例について説明する。図15Aから図15Dに、各工程を模式的に示す。この第1の例の方法は、角度Xが90°以上135°以下である場合に好ましく用いられる。図15Aから図15Hでは、図12に示す予備成形品301(変形鋼板)を用いて説明する。
【0126】
図15Aから図15Hでは、フランジ部117となる平坦部301b(図13参照)の端部が下方に曲がっており、プレス装置40bにおいて、下型12がそれに対応する形状を有する場合について示す。このような構成によれば、平坦部301bの端部を、カム型21の下面と下型12との間に入れることが容易になる。なお、図14Aから図14Hに示すように、平坦部301bの端部が下方に曲がっていなくてもよい。フランジ部となる部分の端部が下方に曲がっている場合、それに対応する凹部が下型に形成されていてもよい。
【0127】
図15A等に示すプレス装置40bでは、伸縮可能な伸縮機構14を介して上型11がプレート13に固定されている。一方、カム押圧型15は、伸縮機構14を介さずにプレート13に固定されている。
【0128】
第2工程では、まず、図15Aおよび図15Bに示すように、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する。このとき、下型12の凸部12aと予備成形品301の少なくとも一部とが接しない状態で配置することが好ましい。図15Aの例では、下型12の凸部12aと予備成形品301は接していない。
次に、図15Cおよび図15Dに示すように、プレート13を下降させ、上型11と下型12(凸部12a)とによって、天板部となる部分をプレスして拘束する。このようにして、工程(a)が完了する。
【0129】
次に、伸縮機構14を収縮させながらプレート13をさらに下降させる。これによって、図15Eおよび図15Fに示すように、カム型21を凸部12a側にスライドさせる。予備成形品301は、第1領域S1において突出部相当部を有するため、その突出部相当部が上方に張り出す。
【0130】
次に、図15Gおよび図15Hに示すように、プレート13を下死点まで下降させ、カム型21と下型12(凸部12a)とによって縦壁部となる部分をプレスして拘束する。このとき、突出部相当部は、上型11とカム型21との間で折り重ねられて突出部115となる。このようにして、工程(b)が完了する。以上のようにしてプレス成形が完了し、プレス成形品100が得られる。
【0131】
プレス成形品100の突出部の角度Xが90°以上135°以下である場合、プレス成形品100の突出部の冷却速度を高めて狙いの強度を得るためには、上型11で天板部を成形した後にカム型21で縦壁部を成形することが好ましい。
【0132】
なお、第2工程の第3の例として上述したように、第2工程において、工程(a)および工程(b)を同時に完了させてもよい。金型の形状および配置を調整することによって、工程(a)および工程(b)を同時に完了させることができる。
【0133】
ホットスタンピングによって第2工程を行う場合、第2工程において適正な焼入れを行うために、金型(プレス型10およびカム型21)の移動が完了した時点で、それらの金型とプレス成形品100とが密着していることが好ましい。第2工程で得られたプレス成形品100は、必要に応じて後処理がなされる。得られた成形品は、必要に応じて他の部品と組み合わされて用いられる。
【0134】
以下に、図10に示す予備成形品301(301A)を、プレス成形する工程の一例について説明する。以下の説明では、予備成形品301の形状が図10のものであることを除き、プレス装置40aの構成は図14A等に示すものと同様である。
【0135】
図16A図16B図16Cおよび図16Dは、予備成形品301(変形鋼板)の第1領域S1に相当する断面における断面図を示す。なお、予備成形品301(変形鋼板)の第2領域S2に相当する断面での挙動は、上述した図14B図14D図14Fおよび図14Hと同様なのでここでは省略する。
【0136】
まず、図16Aに示すように、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する。このとき、下型12の凸部12aの上面と予備成形品301の天板部相当部301atとは、接しているか、間にわずかな隙間ができる状態となる。一方、下型12の凸部12aの側面と予備成形品301の縦板部相当部301awとは、接しない状態で配置される。
【0137】
たとえば、図16Aに示すように、下型12の凸部12aの上面と予備成形品301の天板部相当部301atとが接している状態で配置されたとしても、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する工程が終了した時点の予備成形品301の第1領域S1の温度が700℃以上であり、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する工程が終了した時点から、予備成形品301と上型11とが接触するまでの時間、又は、予備成形品301とカム型21とが接触するまでの時間を3秒以内とすることで、突出部115となる部分(突出部相当部)とその近傍における割れやしわを抑制することができる。
【0138】
次に、プレート13を下降させる。カム型21は、プレート13に伴って下降するカム押圧型15に押され、凸部12a側にスライドする。その結果、図16Bに示すように、下型12(凸部12a)とカム型21とが、縦壁部111となる部分をプレスして拘束する。このようにして、工程(b)が完了する。
次に、図16Cに示すように、プレート13をさらに下降させ、それによって天板部となる部分のプレスを開始する。このとき、伸縮機構14が縮む。予備成形品301は、第1領域S1において突出部相当部を有するため、その突出部相当部がカム型21側に張り出す。
次に、図16Dに示すように、上型11を下死点まで下降させ、天板部となる部分を上型11と下型12(凸部12a)とでプレスして拘束する。このようにして、工程(a)が完了する。
【0139】
以上のようにして、プレス成形が完了する。第1領域S1の突出部相当部は、上型11とカム型21との間で折り重ねられて、プレス成形品100の突出領域P1において、重ね合わせ部115dを有する突出部115となる。
【0140】
また、図11に示す予備成形品301を、プレス成形する工程の一例について説明する。以下の説明では、予備成形品301の形状が図11のものであることを除き、プレス装置40aの構成は図14A等に示すものと同様である。
【0141】
図17A図17B図17Cおよび図17Dは、予備成形品301(変形鋼板)の第1領域S1に相当する断面における断面図を示す。なお、予備成形品301(変形鋼板)の第2領域S2に相当する断面での挙動は、上述した図14B図14D図14Fおよび図14Hと同様なのでここでは省略する。
【0142】
まず、図17Aに示すように、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する。このとき、下型12の凸部12aの上面と予備成形品301の天板部相当部301atとは、接しない状態となる。一方、下型12の凸部12aの側面と予備成形品301の縦板部相当部301awとは、接しているか、間にわずかな隙間ができる状態として配置される。
図17Aに示すように、下型12の凸部12aの側面と予備成形品301の縦板部相当部301awとが接している状態で配置されたとしても、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する工程が終了した時点の予備成形品301の第1領域S1の温度が700℃以上であり、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する工程が終了した時点から、予備成形品301と上型11とが接触するまでの時間、又は、予備成形品301とカム型21とが接触するまでの時間を3秒以内とすることで、突出部115となる部分(突出部相当部)とその近傍における割れやしわを抑制することができる。
【0143】
その後の工程は、上述の、図14C図14E図14Gと同様である。
【0144】
第2工程は、プレス型の上型および下型の少なくとも一方から突出するピンを含むプレス型を用いて行ってもよい(他の実施形態においても同様である)。そのような第2工程の一例を、図18に模式的に示す。図18のプレス型は、図14A等に示すプレス型と類似のものであるが、下型12の凸部12aから突出するピン16を含む。上型11には、上型11が下降したときにピン16が挿入される穴11hが形成されている。ピン16は、予備成形品301に形成された貫通孔に挿入される。その状態で第2工程のプレス成形を行うことによって、突出部を精度よく形成できる。なお、プレス型は、ピン16が上方から押圧されたときにピン16の少なくとも一部が下型12内に収納される機構を有してもよい。
【0145】
また、第1領域S1をプレスする金型(上型11又はカム型21)と第2領域S2をプレスする金型(上型11又はカム型21)が、予備成形品301の長手方向において分割されており、それぞれが独立して稼働するように構成されていてもよい。
【0146】
上型11と下型12との間に予備成形品301を配置した際に、第2領域S2では、予備成形品301が下型12の凸部12aと接触する場合がある。この場合、上型11又はカム型21が予備成形品301の長手方向において分割された構成として、第1領域S1のプレス成形に先んじて、第2領域S2のプレスを行うことで、第2領域においても焼入れに必要な冷却速度を得ることができる。上型11又はカム型21、又は上型11およびカム型21の双方を分割された金型とすることで、成形品100の全体について適切な強度や硬度を確保することができる。
【0147】
たとえば、第2領域S2についてのみ、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する工程が終了した時点の予備成形品301の第2領域S2の温度が700℃以上であり、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する工程が終了した時点から、予備成形品301と上型11とが接触するまでの時間、又は、予備成形品301とカム型21とが接触するまでの時間を3秒以内としてもよい。
その後の第1領域S1のプレスは、上述した温度および時間の範囲で行ってもよい。言い換えれば、第1領域S1のプレスと第2領域S2のプレスが、異なる時刻に行われてもよい。
【0148】
上記の実施形態に係る製造方法においては、第2工程でホットプレスを行う場合について説明したが、第2工程を冷間プレスで行うことも可能である。第2工程を冷間プレスで行う場合、上型11と下型12との間に予備成形品301を配置する工程が終了した時点から、予備成形品301と上型11とが接触するまでの時間、又は、予備成形品301とカム型21とが接触するまでの時間を考慮する必要がないという利点がある。また、突出部115における最大硬さAと、成形品100における最低硬さBとの比であるA/Bの値を1.1以上とすることができ、衝突特性を高めることができる利点もある。
【0149】
なお、590MPa級の素材鋼板(厚さ1.4mm)から、ホットスタンピングを用いずにプレス成形品を製造したところ、第2工程でホットプレスを行ったホットプレス成形品と同様の形状の成形品を製造できた。これは、素材鋼板(ブランク)の延性が高いためである。590MPa級の素材鋼板を、ホットスタンピングを用いずに成形しようとすると、延性の高い鋼板の場合は加工できるが、鋼板の延性が低い場合には割れが発生して加工できない場合がある。素材鋼板の延性は、ゲージ長50mmの引張り試験において35%以上であることが好ましい。素材鋼板の延性がこの範囲であれば、所望の形状の突出部を成形するための密着曲げが可能となる。
【実施例
【0150】
本発明について、次の実施例によって、より詳細に説明する。
(実施例1)
実施例1では、上記実施形態のプレス成形品(成形品)と従来品とを用いた構造部材について、三点曲げ試験のシミュレーションを行った。シミュレーションには、汎用のFEM(有限要素法)ソフト(LIVERMORE SOFTWARE TECHNOLOGY社製、商品名LS‐DYNA)を用いた。
【0151】
上記実施形態に係る構造部材としてシミュレーションに用いたサンプル1の突出領域における断面図を、図19Aに模式的に示す。図19Aの構造部材は、上記実施形態のプレス成形品100と、そのフランジ部117に溶接された裏板201aとからなる。図19Aに示したサンプル1のサイズは以下の通りである。ただし、以下のサイズにおいては鋼板の厚さは考慮していない。
【0152】
・角度X:180°
・角度Y:90°
・突出部の長さD:10mm
・縦壁部の高さHb1:60mm
・2つの突出部の先端部間の幅Wt1:80mm
・2つの縦壁部間の距離(天板部の幅)Wb1:60mm(80-2D)
・裏板の幅Wp1:100mm(120-2D)
・コーナー部RaおよびRbにおける曲率半径:5mm
・長手方向の長さ:1000mm
・長手方向における突出領域の長さ:700mm
【0153】
また、従来例の構造部材としてシミュレーションに用いたサンプル2およびサンプル3の断面図を図19Bおよび図19Cに模式的に示す。図19Bに示すサンプル2は、断面がハット型のプレス成形品1と、そのフランジ部1cに溶接された裏板2とからなる。プレス成形品1は、天板部1a、縦壁部1b、およびフランジ部1cからなる。図19Bに示したサンプル2のサイズは以下の通りである。
【0154】
・天板部1aの幅:60mm
・縦壁部1bの高さ:60mm
・裏板2の幅:100mm
・コーナー部における曲率半径:5mm
・長手方向の長さ:1000mm
【0155】
サンプル2とサンプル3とは、全く同じ構造を有し、配置のみが異なる。具体的には、サンプル2は、裏板2側が上方(インパクタ側)に配置されており、サンプル3は天板部1a側が上方(インパクタ側)に配置されている。以下では、裏板側が上方にある配置(サンプル2の配置)を逆ハットの配置と称する。さらに、天板部側が上方にある配置(サンプル3の配置)を正ハットの配置と称する。
後述するように、実際の構造部材で起きる衝突は、主に正ハットの配置で起きる。そのため、上記実施形態のサンプル1(本発明例)の比較例となるのは、正ハット配置のサンプル3であり、逆ハット配置のサンプル2は参考例として記載している。なお、サンプル2とサンプル3は、長手方向の全長において同一の断面形状である。
【0156】
また、長手方向の全長において図19Aに示す断面形状を有するものをサンプル4とした。サンプル4は、長手方向の全長において同一の断面形状であることを除き、他の構成はサンプル1と同様である。
【0157】
サンプル1~4は、厚さが1.4mmで引張強度が1500MPaである鋼板からなるものであると仮定した。プレス成形品のフランジ部と裏板とは、40mmのピッチでスポット溶接して固定したと仮定した。サンプル2~4は、長手方向における単位長さあたりの質量が同じになるように設計した。
【0158】
シミュレーションで用いた三点曲げ試験の方法を図20に模式的に示す。三点曲げ試験は、2つの支点5にサンプルを載せ、インパクタ6によって上方からサンプルを押すことによって行った。実施例1の試験において、2つの支点5の間の距離Sは400mm又は700mmとした。支点5の曲率半径は30mmとした。インパクタ6の曲率半径は150mmとした。インパクタ6の衝突速度は7.5km/hとした。
【0159】
三点曲げ試験では、各サンプルの上方からインパクタ6を衝突させた。インパクタ6の衝突方向を、図19A図19C中の矢印で示す。
【0160】
サンプル1~4について、支点間距離Sが400mmの場合の、変位量が70mmのときの各サンプルの斜視図を、それぞれ図21A図21Dに模式的に示す。それらの図に示されるように、長手方向の一部に突出部を有するサンプル1、逆ハット配置のサンプル2、長手方向の全長にわたり突出部を有するサンプル4では、縦壁部が長い範囲で曲がっている。それに対し、正ハット配置のサンプル3では、縦壁部の一部が局所的に座屈している。
【0161】
サンプル1~4について、変位量が100mmのときの、各サンプルのエネルギ吸収量を求めた。その結果を、図22Aおよび図22Bに示す。図22Aは支点間距離Sが400mmの結果を示し、図22Bは支点間距離Sが700mmの結果を示す。エネルギ吸収量が大きい自動車構造部品は、衝突に対する乗員の安全性が高いことを意味する。
【0162】
図22Aおよび図22Bに示すように、突出部を有する本発明のサンプルはいずれも、正ハット配置のサンプル3(比較例)よりもエネルギ吸収量が大きかった。さらに、本発明による長手方向の一部に突出部を有するサンプル1は、ほとんどの場合で長手方向の全長にわたり突出部を有するサンプル4よりも高い特性を示した。
【0163】
図22Aおよび図22Bに示されるように、サンプル2(逆ハット配置)の結果において、鋼板およびスポット溶接の割れを考慮した場合のエネルギ吸収量は、それらを考慮しない場合のエネルギ吸収量よりも大きく低下した。この結果は、裏板側からインパクタ6が衝突した場合、割れ(たとえばスポット溶接部分における割れ)が生じやすいことを示唆している。
【0164】
断面がハット状のプレス成形品を自動車その他の構造部材として用いる場合、天板部側がボディーの外側に向けて配置されることが多い。そのため、事故時の衝突は、裏板側からではなく天板部側から生じることを想定する必要がある。その点で、逆ハット配置のサンプル2の特性が良好であったとしても、実際に構造部材として適用する場合には意味がない場合が多い。そのため、天板部側からの衝突に対する特性が重要である。天板部側からの衝突で比較した場合、本発明のサンプル1は、正ハット配置のサンプル3又は長手方向の全長にわたり突出部を有するサンプル4に対して非常に優れた特性を示した。そのため、本発明のサンプル1は、構造部材として非常に有用であり、長手方向の一部にのみ突出部を有するため、設計の自由度が高いという利点がある。
【0165】
本発明によるサンプル1では、少なくとも突出部を有する領域において天板部側からの衝突に対して、逆ハット配置のサンプル2と同様に縦壁部が内側に倒れる。そのため、サンプル1は、正ハット配置のサンプル3に比べて、衝突時のエネルギ吸収量が大きい。さらに、サンプル1では、裏板とフランジ部との溶接部分が、想定される衝突側にない。そのため、サンプル1は、逆ハット配置のサンプル2に比べて、溶接部分の割れによる特性低下が小さい。このように、本発明によるサンプル1は、逆ハット配置の利点と正ハット配置の利点の両方を有すると考えられる。
【0166】
また、本発明のサンプル1は、長手方向の全長にわたり突出部を有するサンプル4と同等以上の特性を有する。
(実施例2)
実施例2では、サンプル1の角度Xのみを変化させたサンプルについて、実施例1と同様に三点曲げ試験のシミュレーションを行った。角度Xは、105°、120°、135°、および180°とした。変位量が100mmのときの各サンプルのエネルギ吸収量を、シミュレーションによって求めた。支点間距離Sが400mmである場合の結果を図23Aに示す。支点間距離Sが700mmである場合の結果を図23Bに示す。なお、実施例2のシミュレーションでは、鋼板の割れおよびスポット溶接部分の割れを考慮しなかった。
角度Xが105°および120°の各サンプルについて、支点間距離Sが400mmで変位量が10mmのときの断面形状をシミュレーションした結果を、図24Aおよび図24Bに示す。さらに、角度Xが105°および120°の各サンプルについて、支点間距離Sが700mmで変位量が10mmのときの断面形状をシミュレーションした結果を、図25Aおよび図25Bに示す。
図23Aおよび図23Bに示されるように、角度Xが変化しても、本発明によるサンプルは正ハット配置のサンプル3よりも良好な特性を示した。図23Aに示されるように、支点間距離Sが400mmの場合には、角度Xが大きいほどエネルギ吸収量が大きかった。一方、図23Bに示されるように、支点間距離Sが700mmの場合には、角度Xが小さいほどエネルギ吸収量が大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明は、成形品およびそれを用いた構造部材、ならびに成形品の製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0168】
10:プレス型
11:上型(プレス型)
12:下型(プレス型)
40a、40b:プレス装置
100:プレス成形品
101:鋼板
111:天板部
112:境界部
112:境界部
112p:境界点
113:縦壁部
115:突出部
115d:重ね合わせ部
117:フランジ部
200、200a、200b、200c:構造部材(自動車部品)
201:鋼板部材
301:予備成形品(変形鋼板)
301at:天板部相当部
301aw:縦壁部相当部
301ae:突出部相当部
P1:突出領域
P2:非突出領域
S1:第1領域
S2:第2領域
D:突出部の長さであって境界部から突出する長さ
X:天板部と突出部とがなす角度
Y:天板部と縦壁部とがなす角度
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図14H
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F
図15G
図15H
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C
図17D
図18
図19A
図19B
図19C
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図22A
図22B
図23A
図23B
図24A
図24B
図25A
図25B