(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】バケットコンベアの制御装置
(51)【国際特許分類】
B65G 43/00 20060101AFI20230323BHJP
B65G 43/02 20060101ALI20230323BHJP
B65G 17/12 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B65G43/00 D
B65G43/02 Z
B65G17/12 A
(21)【出願番号】P 2018214830
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】末永 匡史
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-045628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/00
B65G 43/02
B65G 17/12
B65G 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を複数のバケットに充填して上下プーリー間で回動させて搬送するバケットコンベアの制御装置において、
搬送中の持ち上げ側バケットの搬送量を常時計測する搬送量計測部と、
搬送中の持ち上げ側バケットコンベアの無負荷又は低負荷の検出値に基づいて前記バケットを駆動する駆動部へ減速する制御を行う制御部
と、
前記無負荷又は低負荷の検出値から所定時間を計測する荷切れタイマを備え、
前記制御部は、前記搬送量計測部の検出値が所定搬送量未満であって、前記荷切れタイマによる前記無負荷又は低負荷の検出値から所定時間経過後に減速する制御を行うことを特徴とするバケットコンベアの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたバケットコンベアの制御装置であって、
前記荷切れタイマは、定格速度で搬送運転中に荷切れが生じた場合、荷切れ状態の任意設定時間を計測し、
前記制御部は、前記搬送量計測部の検出値が所定搬送量
以上のとき定格速度で搬送運転中に荷切れが生じた場合、前記荷切れタイマによる荷切れ状態の任意設定時間経過後に減速する制御を行うことを特徴とするバケットコンベアの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は石炭粉、石膏粉、木粉などの粉粒体を連続的に運搬することができる揚上式バケットコンベアの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭粉、石膏粉、木粉などの粉粒体を搬送する装置のうち、上下(垂直)方向に搬送可能なバケットコンベア(バケットエレベータともいう)がある(例えば特許文献1に開示)。この装置は、上下に一対のプーリーを備え、プーリーの周囲にチェーン(又は無端ベルト)を取り付けて、チェーンに複数のバケットを取り付けている。このような構成により、粉粒体を充填したバケットを上下方向に周回移動させて搬送できる。
【0003】
搬送対象物となる粉粒体のうち特に石膏、石炭粉などはバケット本体ばかりでなく、舞い上がってバケット周囲に付着し易い。そうするとバケットの重量が増加してしまう。さらに粉粒体と摺動するバケット本体が局部摩耗することによってバケットコンベアの回動負荷のアンバランスが生じてしまう。
ここでバケットコンベアを回動させる動力は、上部プーリー前後の張力差分をチェーン張力として与え回動させている。バケット本体に粉粒体を充填した状態においては、バケットを持ち上げる側のチェーン張力が常に作用しているため(前述のアンバランス負荷以上の張力が作用)、回動させる駆動装置の出力軸トルクは常に同一の方向に作用する。
【表1】
表1は、バケットコンベアのコンベアに付着する粉粒体の有無と、無負荷または負荷時における力行又は回生状態を示している。
図6は表1のA-Dのインバータ波形の説明図である。同図の縦軸は負荷率を示し、定常運転時を基準値(点線)とし、横軸は時間tを示す(以下
図4,5も同じ)。
【0004】
[負荷時]
バケットに搬送物を充填した負荷状態では、バケット持ち上げ側のチェーン張力が常に作用しているので、換言すると前述のアンバランス負荷以上の張力が作用しているので回動させる駆動部の出力軸トルクは常に同一の方向に作用する。このため、駆動部に回生力は生じない。
このときバケット等に搬送物が付着なし又は付着ありにかかわらず力行状態となる(表1中のAとB、
図6(1)参照)。
【0005】
[無負荷時]
バケットに搬送物を充填していない無負荷では、
持ち上げ側は持ち上げ側のバケット重量が生じるため持ち上げ力が減少する。一方、上部プーリーを回動したリターン側では
バケットの自重が加算されてリターン側のチェーン張力が大きくなる。そうすると駆動部のインバータ内ではカ行状態から回生状態となる。この回生力は粉粒体の付着が増えるほど、または回動速度が速いほど大きくなる(表1中のD、
図6(3)参照)。なおバケット等に粉粒体の付着がない場合、瞬間的に回生状態となるが、ほぼ力行状態を維持している(表1中のC、
図6(2)参照)。
この回生力が一定値を超えた場合、中間直流回路電圧が上昇してインバータの保護機能停止となり荷役搬送に支障が生じることがある。従来、この回生エネルギーを消費(解消)するため、別途コンバータを設けて、コンバータによる電源回生や制動抵抗器における熱エネルギーへ変換するなどしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、無負荷運転時の回生状態に起因するコンベア停止を防止して安定したコンベア搬送が可能なバケットコンベアの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、搬送物を複数のバケットに充填して上下プーリー間で回動させて搬送するバケットコンベアの制御装置において、
搬送中の持ち上げ側バケットの搬送量を常時計測する搬送量計測部と、
搬送中の持ち上げ側バケットコンベアの無負荷又は低負荷の検出値に基づいて前記バケットを駆動する駆動部へ減速する制御を行う制御部と、
前記無負荷又は低負荷の検出値から所定時間を計測する荷切れタイマを備え、
前記制御部は、前記搬送量計測部の検出値が所定搬送量未満であって、前記荷切れタイマによる前記無負荷又は低負荷の検出値から所定時間経過後に減速する制御を行うことを特徴とするバケットコンベアの制御装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、コンバータや制御抵抗器等により回生エネルギーを消費することなく、回生エネルギーの発生を抑制できる。また搬送量の測定で容易、かつ精度良い無負荷の検知が実現できる。また設備コストの経費抑制が行える。このため、より効率的な機器運用が継続可能となり、生産性が向上する。荷切れのばらつきによる無負荷又は低負荷の認識を防止できる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、
前記荷切れタイマは、定格速度で搬送運転中に荷切れが生じた場合、荷切れ状態の任意設定時間を計測し、
前記制御部は、前記搬送量計測部の検出値が所定搬送量以上のとき定格速度で搬送運転中に荷切れが生じた場合、前記荷切れタイマによる荷切れ状態の任意設定時間経過後に減速する制御を行うことを特徴とするバケットコンベアの制御装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、回生エネルギーを起因とする過電圧トリップを回避できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンバータや制御抵抗器等により回生エネルギーを消費することなく、回生エネルギーの発生を抑制できる。
また、無負荷時に速度を抑制(減速)することで、バケットなどの機械摩耗の抑制が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のバケットコンベアの制御装置のブロック図である。
【
図2】本発明のバケットコンベアの制御装置の処理フロー図である。
【
図3】本発明のバケットコンベアの制御装置のタイミングチャートである。
【
図4】本発明のバケットコンベアの制御装置によるインバータ波形の説明図である。
【
図5】荷切れ時のインバータ波形の説明図である(負荷率の時間の関係を示す)。
【
図6】表1のA-Dのインバータ波形の説明図である(負荷率の時間の関係を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のバケットコンベアの制御装置の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
バケットコンベアは、ケーシングの上下に一対のプーリーが配置され、プーリーの周囲にチェーン(または無端ベルト)が環状に取り付けられている。チェーンには、複数のバケットが等間隔で取り付けられている。上部プーリーに直結する駆動部(例えば駆動モーターなど)により上下プーリーを回転させ、一対のチェーンが上下方向に回動し、バケットもプーリーの回転方向に回動する。このような構成により、粉粒体などの搬送物をケーシングの下部から上方向へ移動するバケット内に充填し、バケットの移動によって搬送物を上方へ搬送できる。
【0014】
図1は、バケットコンベアの制御装置のブロック図である。
本発明のバケットコンベアの制御装置10は、バケットコンベアの持ち上げ側(搬送物を受け入れる側、以下同じ)の搬送量を計測可能な搬送量計測部20と、駆動部の速度制御を行う制御部30と、荷切れタイマ40を備え、バケットコンベアの負荷状況を計測し、リターン側(搬送物を払い出す側、以下同じ)のバケットの負荷が無負荷又は低負荷になる場合、バケットコンベアの運転速度を減速し低速にする制御を行っている。
搬送量計測部20は、搬送中のバケットコンベアの持ち上げ側のバケットの搬送物の重量を常時計測可能な計測器である。搬送量計測部20は後述する制御部30と電気的に接続し計測値を送信可能に構成している。
【0015】
制御部30は、搬送量計測部20の計測値に基づいて、バケットコンベアの持ち上げ側の搬送量を常時監視して、リターン側のバケットの搬送物が充填されていない無負荷、又は搬送物の充填量が少ない低負荷になることを事前に認識している。
また制御部30は、後述する荷切れタイマ40と電気的に接続している。荷切れタイマ40は、計測値によってリターン側バケットが無負荷又は低負荷になったとき(荷切れともいう)、任意設定時間(例えば10秒以上など)をカウントし、任意設定時間の経過後は荷切れ状態が継続していると判断し、制御部30へアナウンスする。荷切れタイマ40の任意設定時間により、搬送量のばらつきに基づく誤った荷切れの判断を回避できる。
そして制御部30は、駆動部50と電気的に接続し、荷切れ状態が継続していると、駆動部50に対してバケットコンベアの運転速度を減速し低速にする制御を行う。
なお搬送量計測部20に代えて持ち上げ側コンベアの電流値を検出可能な電流計を設置し、制御部30は、持ち上げ側コンベアの電流値に基づいて無負荷又は低負荷を検知するように構成しても良い。
【0016】
[作用]
上記構成による本発明のバケットコンベアの制御装置の作用について以下説明する。
図2は本発明のバケットコンベアの制御装置の処理フロー図である。
図3は本発明のバケットコンベアの制御装置のタイミングチャートである。
図4は本発明のバケットコンベアの制御装置によるインバータ波形の説明図である。
図5は荷切れ時のインバータ波形の説明図である。
【0017】
[ステップ1]搬送量計測
バケットコンベアによる搬送物の搬送中、持ち上げ側バケットに充填された搬送物の重量を搬送量計側部20で常時計測する。このとき搬送量のわずかなばらつきは平均化した後に搬送量とする。バケットの容量に応じた計測値を受信した制御部30は、搬送量をあらかじめ設定しておき(所定搬送量、例えば15TON/h)、計測値が所定搬送量以上又は未満の判断を行う。
[ステップ2]荷切れタイマ 任意設定時間
ステップ1で所定搬送量未満のとき、すなわち
図3の搬送量の定格負荷から無負荷に移行したとき、荷切れタイマ40が作動して、荷切れ状態の任意設定時間(
図3中のT、例えば10秒など)を計測する。
【0018】
[ステップ3]搬送速度の減速
任意設定時間が経過すると制御部30にその旨伝達され、制御部30は、駆動部50に対してバケットコンベアの運転速度を減速し低速にする制御を行う(
図3の回動速度参照)。
図5は搬送量の低下を検知して減速している。これにより回生状態を抑制できる。
その後、ステップ1の搬送量計測を繰り返す。
[ステップ4]定格速度で搬送運転
ステップ1で所定搬送量以上の場合、定格速度で搬送運転を行う。
図4は、ステップ3で無負荷時に低速として回生分を抑制した後、負荷検知して定格速度としたインバータ波形であり、回生エネルギーを起因とする過電圧トリップを回避できる。
[ステップ5]荷切れタイマ 任意設定時間
ステップ4による定格速度で搬送運転中に荷切れが生じた場合、荷切れタイマ40が作動して、荷切れ状態の任意設定時間(
図3中のT、例えば10秒など)を計測する。
[ステップ6]搬送速度の減速
ステップ5で任意設定時間が経過すると制御部30にその旨伝達され、制御部30は、駆動部50に対してバケットコンベアの運転速度を減速し低速にする制御を行う。
その後、ステップ1の搬送量計測を繰り返す。
[ステップ7]搬送物の有無
搬送物が残っている場合には、ステップ1の搬送量計測を繰り返す。一方、搬送物がなくなった場合には終了する。
【0019】
このような本発明によれば、コンバータや制御抵抗器等により回生エネルギーを消費することなく、回生エネルギーの発生を抑制できる。
また搬送量の測定で容易、精度良い無負荷の検知が実現できる。また設備コストの経費制御が行える。このため、より効率的な機器運用が継続可能となり、生産性が向上する。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のバケットコンベアの制御装置は、特に工業製品生産設備、建築土木設備の運搬装置において産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0021】
10 バケットコンベアの制御装置
20 搬送量計測部
30 制御部
40 荷切れタイマ
50 駆動部