(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】穀物乾燥機の点検用梯子
(51)【国際特許分類】
F26B 17/14 20060101AFI20230323BHJP
F26B 25/08 20060101ALI20230323BHJP
E06C 9/02 20060101ALI20230323BHJP
E06C 1/36 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
F26B17/14 P
F26B25/08 A
E06C9/02
E06C1/36
(21)【出願番号】P 2019102926
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(72)【発明者】
【氏名】今井 健美
(72)【発明者】
【氏名】山本 寛起
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-53884(JP,A)
【文献】実開平6-45921(JP,U)
【文献】実開昭57-164000(JP,U)
【文献】実開昭52-163574(JP,U)
【文献】特開2001-41656(JP,A)
【文献】実開昭59-43899(JP,U)
【文献】中国実用新案第203105479(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/14
F26B 25/08
E06C 9/02
E06C 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に熱風室、排風室及び乾燥室を備えた乾燥機本体の前面に前記熱風室に乾燥用熱風を供給するためのバーナボックスを、同背面に前記排風室の排風を吸引排出するファンを装着するファンボックスをそれぞれ設け、前記乾燥機本体に載置する穀物貯留タンクと前記乾燥室から排出される穀物を前記穀物貯留タンクに還流するための揚穀機を立設してなる穀物乾燥機において、
前記穀物貯留タンク上部に立て掛け可能な点検用梯子であって、前記点検用梯子を上半分の固定梯子と下半分の掛け梯子とに分割し、前記固定梯子は前記穀物貯留タンクの前後左右のいずれかの面に固定可能とする一方、前記固定梯子の下端と前記掛け梯子の上端とを係合すべく前記固定梯子の下端と前記掛け梯子の上端にそれぞれ係止手段を設け、さらに、前記バーナボックスと前記ファンボックスの各上端には前記掛け梯子上端の係止手段と係合する係止手段を設けたことを特徴とする穀物乾燥機における点検用梯子。
【請求項2】
前記掛け梯子の上端部にはステップ板を設け、前記ステップ板の端部に前記固定梯子下端の係止手段と係合する係止手段を設けてなる請求項1の穀物乾燥機における点検用梯子。
【請求項3】
前記ステップ板の端部を下方へ折曲して係止手段としてなる請求項2の穀物乾燥機における点検用梯子。
【請求項4】
前記固定梯子は、固定用金具を介して前記穀物貯留タンクを形成する複数のタンクプレート各のフランジ部に固定してなる請求項1乃至3いずれかの穀物乾燥機における点検用梯子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米麦等の穀物を機体内で循環しながら熱風により乾燥させる穀物乾燥機に係り、特に、穀物乾燥機における点検用梯子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の穀物乾燥機において、各部の点検、特に、高所の点検用に梯子が備えられている。この梯子は、該穀物乾燥機の天板部を点検可能な長さに形成されるが、該穀物乾燥機が大型機種の場合は、前記天板までの高さは5m以上になり、点検用梯子もそれだけ長尺になるため、必要に応じて、該穀物乾燥機の側面、前面又は背面と点検用梯子を掛け替える際の作業性が悪く、かつ、危険でもあった。さらに、該穀物乾燥機本体の前面にはバーナボックスが、背面には排風ダクトを備える排風機と該排風機を取り付けるファンボックスがそれぞれ該穀物乾燥機本体から突出して設けられるため、これら前面及び背面に点検用梯子を立て掛けることは困難であった。
【0003】
ところで、前記点検用梯子を上半分と下半分とに二分割し、上半分を穀物乾燥機の本体に上載する穀物貯留タンクの側板に固定する一方、下半分を持ち運び移動可能となし、該下半分の梯子を前記上半分の梯子の下端部に立て掛けて使用するものが、特許文献1に開示されるが、この場合も、前述したバーナボックスのある前面及びファンボックス等のある背面に前記下半分の梯子を立て掛けるのは困難であった。
【0004】
また、穀物乾燥機の側面に張り出してステップを設け、該ステップ上に前記上半分の梯子を固定して設け、前記下半分の梯子を前記ステップに着脱自在としたものが特許文献2に記載されている。しかし、この場合は、別途前記ステップを設ける必要があり、しかも、該穀物乾燥機の前面及び背面に前記下半分の梯子を立て掛けるためには、前記ステップを前記バーナボックス及びファンボックスよりも突出して設けなければならず、比較的狭い農家の作業場に設置されることの多い該穀物乾燥機においては現実的な選択とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-41656号公報
【文献】特開平9-53884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、従来の穀物乾燥機の点検用梯子は、該穀物乾燥機のバーナボックスのある前面及びファンボックスのある背面には使い辛いものであった。
そこで、本発明は、前記バーナボックス又はファンボックスを備える面であっても点検用梯子を容易に使用することができる穀物乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、内部に熱風室、排風室及び乾燥室を備えた乾燥機本体の前面に前記熱風室に乾燥用熱風を供給するためのバーナボックスを、同背面に前記排風室の排風を吸引排出するファンを装着するファンボックスをそれぞれ設け、前記乾燥機本体に載置する穀物貯留タンクと前記乾燥室から排出される穀物を前記穀物貯留タンクに還流するための揚穀機を立設してなる穀物乾燥機において、
前記穀物貯留タンク上部に立て掛け可能な点検用梯子であって、前記点検用梯子を上半分の固定梯子と下半分の掛け梯子とに分割し、前記固定梯子は前記穀物貯留タンクの前後左右のいずれかの面に固定可能とする一方、前記固定梯子の下端と前記掛け梯子の上端とを係合すべく前記固定梯子の下端と前記掛け梯子の上端にそれぞれ係止手段を設け、さらに、前記バーナボックスと前記ファンボックスの各上端には前記掛け梯子上端の係止手段と係合する係止手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
前記掛け梯子の上端部にはステップ板を設け、前記ステップ板の端部に前記固定梯子下端の係止手段と係合する係止手段を設けることが好ましい。
【0009】
前記ステップ板の端部を下方へ折曲して係止手段とすることができる。
【0010】
前記固定梯子は、固定用金具を介して前記穀物貯留タンクを形成する複数のタンクプレートの各フランジ部に固定するとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、穀物貯留タンクのいずれかの面に固定梯子を固定する一方、前記固定梯子下端の係止手段と掛け梯子上端の係止手段とを係合してこれら固定梯子と掛け梯子とを接続可能とするとともに、前記バーナボックス及びファンボックスの各上端にも前記掛け梯子上端の係止手段と係合する係止手段を設けたので、従来、点検用梯子が掛けられなかった該穀物乾燥機の前面及び背面であっても点検用梯子による点検作業が可能となった。しかも、前記掛け梯子を前記バーナボックス又はファンボックスの上端に立て掛けることにより、これらバーナボックス又はファンボックスが中継足場として利用でき、点検作業がより安全となる。
【0012】
また、前記掛け梯子上端にステップ板を設けることとすれば、傾斜状の掛け梯子から垂直状の固定梯子への乗り移りが容易、かつ、安全となる。
【0013】
さらに、前記固定梯子を固定用金具を介して複数のタンクプレートのフランジ部に固定することとすれば、前記固定梯子が前記強固なフランジ部によって支持されるので前記点検用梯子が揺らぐことなく固定され、安全である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の穀物乾燥機において、固定梯子を側面に設けた場合の全体斜視図。
【
図2】本発明の穀物乾燥機において、固定梯子を前面に設けた場合の全体斜視図。
【
図3】本発明の穀物乾燥機において、固定梯子を背面に設けた場合の全体斜視図。
【
図4】本発明の固定梯子と掛け梯子を表す拡大斜視図。
【
図5】本発明の固定梯子と掛け梯子を表わし、
図4の拡大斜視図の一部を更に拡大した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の穀物乾燥機の点検用梯子の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
本発明の実施の形態における穀物乾燥機は、上部に、穀物を貯留する穀物貯留タンク、下部に、前記穀物貯留タンクから流下する穀物に熱風を通風して乾燥させる通風乾燥部を有する乾燥機本体を有し、前記乾燥機本体において乾燥作用を受けた穀物を前記穀物タンクに還流させるための揚穀機を付設した周知のものである。
【0017】
本発明の実施の形態における穀物乾燥機1の全体構成を
図1を用いて説明すると、外観が略直方体の穀物乾燥機1の機体上部は穀物を貯蔵する穀物貯留タンク2に、その下部は乾燥機本体3に形成し、該乾燥機本体3には前記穀物貯留タンク2から流下する穀物を通風乾燥するための、縦断面が略V字形状に配設された一対の穀物乾燥室(図示せず)を、該乾燥機本体の機体長手方向(前後方向)にわたって設ける。前記一対の穀物乾燥室は、多数のスリットを備えた通風可能な多孔壁鋼板により形成され、該一対の穀物乾燥室で囲繞される内側空間を熱風室(図示せず)に形成する一方、前記一対の穀物乾燥室の外側の各空間を排風室(図示せず)に形成し、前記各排風室の長手方向一端側(背面側)には排風口(図示せず)を開口するとともに、これら排風口を覆うファンボックス4を設け、該ファンボックス4には吸引ファンからなる排風機5及びファンモータ6を装着する(
図3参照)。
【0018】
前記乾燥機本体3の機体長手方向にわたって形成される前記熱風室の、前記排風ファン5と対向する側である前面の一端部に熱風生成用のバーナ(図示せず)を臨ませるとともに該バーナを格納するバーナボックス7を設ける。
【0019】
さらに、前記断面V字状の穀物乾燥室の下端合流部には、前記穀物乾燥室内の穀物を間欠的に流下させるための長尺かつ円筒状のロータリーバルブ(図示せず)が、前記一対の穀物乾燥室下端部の全長にわたって横設される。前記ロータリーバルブは、バルブ用モータ(図示せず)によって間欠的又は連続的に正・逆回転するよう構成される。
【0020】
前記ロータリーバルブの下方には、前記排風室の底部を形成するホッパ状の集穀板(図示せず)を設け、該集穀板のホッパ底部には前記ロータリバルブから排出される穀物を搬送する下部スクリューコンベア11を横設し、該下部スクリューコンベア11の搬送終端部はバケット式の揚穀機8に接続される。該揚穀機8上部の吐出部は、前記穀物貯留タンク2の天板部に横設した上部スクリューコンベア9に接続され、該上部スクリューコンベア9の搬送終端部には搬送された穀物を前記穀物貯留タンク2内に投入する分散盤(図示せず)が前記天板部から垂設される。前記揚穀機8、上部スクリューコンベア9及び分散盤を駆動する揚穀機用モータ10を前記揚穀機8上部に添設する一方、前記乾燥機本体3の底部には、前記下部スクリューコンベアを駆動する本機モータ(図示せず)を配設する。
【0021】
次に、
図4及び
図5も参照しながら固定梯子12について説明する。前記固定梯子12は、前記穀物貯留タンク2の高さ寸法と略同じ長さとなし、一対の縦木部121と多数の横木部122とかならる。前記横木部122は丸棒状の鋼材で形成されるが、最下段の横木部124は断面コ字状等の鋼材からなり、その水平面124aには、後述する掛け梯子13上端の係止手段133bと係合する切欠部124bを形成して係止手段となす。
【0022】
前記固定梯子12は複数の取付用金具123によって前記穀物貯留タンク2の側面に固定される。すなわち、両端部を末広がり状に折曲した取付用金具123の両端部を前記一対の縦木部121にボルト止めするとともに、前記取付用金具123の中央部を前記穀物貯留タンク2を形成するタンクプレート201のフランジ部202にボルト・ナットによる螺着することによって固定する。
なお、大型の穀物乾燥機1の場合、前記一対の縦木部121には前記取付用金具123と対向するように安全用の複数の背籠126を設けることがある。
【0023】
一方、掛け梯子13は前記乾燥機本体3の高さ寸法よりもやや大きい長さとなし、前記固定梯子12の縦木部121及び横木部122と同様に、一対の縦木部131及び複数の横木部132からなる。前記掛け梯子13の上端にはステップ板133が設けられる。前記ステップ板133は、例えば、1枚の鋼板の周縁を下方へ折曲して形成され、その両側の折曲面133aと前記一対の縦木部131上端部とをボルト等で固定するとともに、その端部の折曲部133bを係止手段となす。前記折曲部133bは、前記固定梯子12の最下段の横木部124に形成した係止手段である切欠部124bに嵌入して係合し合うように下方に折曲して形成される。
なお、前記切欠部124bを設けない場合は、前記ステップ板133端部の係止手段である前記折曲部133bの幅を係合する相手の係止手段である最下段の横木部124の水平面124aの長さと略同一長さとすることにより、前記係止手段どうしがずれることがない。また、前記ステップ板133端部の係止手段である折曲部133bは、単に下方へ折曲するだけでなく、更に曲げ戻して鉤(かぎ)状に形成することにより、その先端部が固定梯子12下端の係止手段である断面コ字状の横木部124内に挿通されて、より強固な係合効果を奏する。
加えて、前記一対の縦木部131の下端部は、滑り止め用のゴム材134で覆われるとよい。
【0024】
図2は、前記固定梯子12を穀物乾燥機1の前面の穀物貯留タンク2に固定した場合を示す。前記固定梯子12は、
図1に示す穀物乾燥機1の側面の穀物貯留タンク2に固定した場合と同様に、取付用金具123を介してタンクプレート201のフランジ部202にボルト止めされる。該穀物乾燥機の前面一側寄りには前記バーナボックス7に近接して前記揚穀機8が立設されるので、前記固定梯子12は該穀物乾燥機1の前面他側寄りに固定される。
【0025】
前記バーナボックス7の上端周縁部には、断面U字状の鋼材等からなる溝部701が形成されて係止手段となしている。前述したように、掛け梯子13の上端には、ステップ板133の端部を折曲した折曲部133bからなる係止部が設けられており、該折曲部133bと前記溝部701とが係合し合うように前記掛け梯子13を前記バーナボックス7の上端に立て掛ける。前記バーナボックス7は必要に応じて補強が施されることにより、その上面が足場として利用可能である。前記溝部701は、断面U字状に形成したが、掛け梯子13上端の係止手段と確実に係合されるのであれば前記断面U字状に限らない。
【0026】
図3は、前記固定梯子12を穀物乾燥機1の背面の穀物貯留タンク2に固定した場合を示す。前記固定梯子12は、
図1に示す穀物乾燥機1の側面の穀物貯留タンク2に固定した場合と同様に、取付用金具123を介してタンクプレート201のフランジ部202にボルト止めされる。該穀物乾燥機の背面の略中央には前記ファンボックス4装着したされるので、前記固定梯子12は該穀物乾燥機1の背面の両側いずれか寄りに固定されるとよい。前記ファンボックス4の上端縁部には前記バーナボックス7の溝部701と同様の溝部401を形成して係止手段となし、該溝部401と前記掛け梯子13のプレート板133端部の係止部である折曲部133bとが係合し合うように前記掛け梯子13を前記ファンボックス4の上端に立て掛ける。
なお、この実施態様の場合、該穀物乾燥機1が小型機種で機高が比較的低いので、前記固定梯子12には前記背籠126を備えていない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の穀物乾燥機の点検用梯子は、作業場の広さ・入口、排風方向、穀物の張込み・排出方向等の制約によって決まる穀物乾燥機の据付箇所に応じていずれの面にも設けることができ、これに対応して掛け梯子も、両側面は言うまでもなく、バーナーボックスを備える前面やファンボックスを備える背面であっても立て掛けることが可能となり、極めて利用価値が高い。
【符号の説明】
【0028】
1 穀物乾燥機
2 穀物貯留タンク
201 タンクプレート
202 フランジ部
3 乾燥機本体
4 ファンボックス
401 溝部(係止手段)
5 排風機
6 ファンモータ
7 バーナボックス
701 溝部(係止手段)
8 揚穀機
9 上部スクリューコンベア
10 揚穀機用モータ
11 下部スクリューコンベア
12 固定梯子
121 縦木部
122 横木部
123 取付用金具
124 横木部(最下段)
124a 水平面
124b 切欠部(係止手段)
13 掛け梯子
131 縦木部
132 横木部
133 ステップ板
133a 折曲面
133b 折曲部(係止手段)