(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】引戸の両方向引込み装置
(51)【国際特許分類】
E05F 1/16 20060101AFI20230323BHJP
E05F 3/10 20060101ALI20230323BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
E05F1/16 B
E05F3/10 Z
E05D15/06 118
(21)【出願番号】P 2018165987
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000155207
【氏名又は名称】株式会社明工
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】中山 孝
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-190275(JP,A)
【文献】特開2012-112101(JP,A)
【文献】特開2010-275804(JP,A)
【文献】特開2008-215052(JP,A)
【文献】特開2006-161468(JP,A)
【文献】特開2008-297861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00-17/00
E05D 3/00
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側壁にスライド案内溝が形成されるとともに、前記スライド案内溝の両端部にそれぞれ屈曲状案内溝からなる仮停止部が形成されたケース内に、ピストン式ダンパーが配設され、このピストン式ダンパーのピストン先端部とシリンダ基端部とにそれぞれ、前記スライド案内溝又は仮停止部に係合する係合突部を有し、且つ上端部が前記ケースから突出状態で設けられ戸枠又はレール側に設けられた係合ピンと係脱する関係にあるスライダーが回動可能に連結され、且つ前記左右一対のスライダーが引込み方向の付勢力を与えるスプリング部材によって連結され、少なくとも一方側のスライダーが前記ケースの仮停止部に係止されている引戸の両方向引込み装置において、
前記ケースが、スライド案内溝が形成されたケース中間部と、スライド案内溝の端部とこれに連続する仮停止部が形成された左右のケース端部とからなる3部品の組立てによって構成されるとともに、前記ケース中間部のみについて長さの異なる複数種が用意され、
前記ケース中間部の端部は、側面視でL字状を成し下側の突出片部分に通孔が形成され、側壁の高さ方向中間には、内側に開口を向けた溝型断面の前記スライド案内溝が形成され、その上部及び下部にそれぞれ板状の被挟持部が形成され、
前記ケース端部は、前記ケース中間部との接続側に、前記ケース中間部の被挟持部を挟み込みできる隙間を有する挟持部を有し、下部に前記ケース中間部の突出片が嵌合状態で組み合わされる嵌合支持部を有するとともに、該嵌合支持部に通孔を有し、
前記ケース中間部とケース端部とは、両者が突合わされるように嵌合されるとともに、前記通孔にリベット又はネジが通されて連結されており、
少なくとも前記ピストン式ダンパー及びスプリング部材が前記ケース中間部の長さに対応して長さの異なる複数種が用意され、
前記ケース中間部の長さ変更及び前記ピストン式ダンパー及びスプリング部材の長さ変更によって両方向引込み装置の長さ寸法を変更可能とし、引戸の幅寸法の違いに対応可能としたことを特徴とする引戸の両方向引込み装置。
【請求項2】
前記ケース端部のそれぞれに吊り車型ランナ装置又はローラが連結され、吊り引戸に対応可能としてある請求項1記載の引戸の両方向引込み装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸の閉操作時と引戸の開操作時にそれぞれ引戸全閉位置と引戸全開位置とに引戸を引き込み可能とした引戸の両方向引込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、引戸の上端部に固定された吊り車型ランナ装置が戸枠の鴨居に固設されたガイドレールに沿って走行案内される吊戸(吊り引戸)や、引戸の下端部に固定された戸車が戸車用ガイドレールに沿って走行案内される引戸では、開き状態から所定の位置まで閉めた後は、閉まり位置まで自動的に引き込んで閉止させる引戸の引込み装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、
図10に示されるように、ケース50内を引戸の開閉方向に沿ってスライド可能に設けられるとともに、前記ケース50に形成されたスライド案内溝51aに係合する係合突部52aを有し、且つ上端部が前記ケース50から突出状態で設けられ前記係合ピン55と係脱する関係にあるスライダー52と、ピストン先端が前記スライダー52に連結された状態で前記ケース50内に設けられるピストン式ダンパー53と、一端が前記スライダー52に係止されるとともに他端が前記ケース50に係止され、前記スライダー52に引戸の引込み方向の付勢力を与えるスプリング部材54とから構成され、
前記スライド案内溝51aの引戸端部側には、前記スライド案内溝51aから連続して屈曲状案内溝51bからなる仮停止部Kが形成され、
前記スライダー52には、引戸の開操作に伴い前記係合ピン55に係合して該スライダー52を前記スプリング部材54の付勢力に抗して引戸端部側に移動させるとともに、スライド案内溝51aの引戸端部側においてスライダー52の係合突部52aが前記屈曲状案内溝51b側に案内されることにより該スライダー52を揺動させて仮停止状態とし、これに伴い前記係合ピン55との係合が解除される先端側係合片52bと、引戸の閉操作に伴い前記係合ピン55に係合して前記仮停止状態にあるスライダー52を揺動動作させ仮停止状態を解除することにより前記先端側係合片52bと係合ピン55とを係合させる基端側係合片52cとが備えられ、前記引戸の閉操作時に、前記ピストン式ダンパー53による制動力を受けながら前記スプリング部材54の付勢力により引戸を閉まり位置まで引き込むようにした引込み装置本体が開示されている。
【0004】
上記引込み装置は、引戸を閉まり側方向に引き込むものであるが、片引き戸などでは、引戸を閉まり側方向と開き側方向とに夫々引込み可能とした引戸の両方向引込み装置が提案されている。
【0005】
例えば、下記特許文献2には、長手方向の両端側に係止溝を有する棒状ケーシングと、シリンダ部とピストンロッドとからなる緩衝ダンパと、前記シリンダ部の基部端及び前記ピストンロッド先端にそれぞれ軸支したフック部材と、対向する両フック部材間に設けられた引張り弾性体と、前記緩衝ダンパ,前記フック部材及び前記引張り弾性体の幅方向両側付近を覆うと共に前記フック部材の移動範囲に対応して上面が開口されてなるカバー部材とからなり、前記カバー部材は前記棒状ケーシングに装着され、少なくとも一方側の前記フック部材が前記棒状ケーシングの係止溝に係止されてなる戸閉具が開示されている。
【0006】
上記特許文献2に係る引込み装置によれば、引戸を閉まり側方向と開き側方向とにそれぞれ引込み装置を必要とした従来型に対して、1つの引込み装置で閉まり側方向と開き側方向との両方向に引き込みが行えるため、装置がコンパクト化できる、僅かのスペースに容易に装着できる、簡単な構成で済むため安価に提供できるなどの利点をもたらすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-149438号公報
【文献】特開2009-287355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記両方向引込み装置の場合は、引戸の閉まり側方向に引き込む際の係合ピンの最適位置と、引戸の開き側方向に引き込む際の係合ピンの最適位置とが存在する一方で、引戸の幅寸法が一定ではなく複数種存在する。そのため、引戸の幅寸法に応じて、両方向引込み装置の長さが異なる複数種のものを予め準備しておく必要があった。その結果、部品数が多くなる、在庫管理が煩雑になる、製品コストが増大するなどの問題が生じていた。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、引戸の幅寸法の違いに柔軟に対応可能としながら、部品の共通化によって部品数の低減を図るとともに、在庫管理の簡素化、製品コストの低廉化を図った引戸の両方向引込み装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、両側壁にスライド案内溝が形成されるとともに、前記スライド案内溝の両端部にそれぞれ屈曲状案内溝からなる仮停止部が形成されたケース内に、ピストン式ダンパーが配設され、このピストン式ダンパーのピストン先端部とシリンダ基端部とにそれぞれ、前記スライド案内溝又は仮停止部に係合する係合突部を有し、且つ上端部が前記ケースから突出状態で設けられ戸枠又はレール側に設けられた係合ピンと係脱する関係にあるスライダーが回動可能に連結され、且つ前記左右一対のスライダーが引込み方向の付勢力を与えるスプリング部材によって連結され、少なくとも一方側のスライダーが前記ケースの仮停止部に係止されている引戸の両方向引込み装置において、
前記ケースが、スライド案内溝が形成されたケース中間部と、スライド案内溝の端部とこれに連続する仮停止部が形成された左右のケース端部とからなる3部品の組立てによって構成されるとともに、前記ケース中間部のみについて長さの異なる複数種が用意され、
前記ケース中間部の端部は、側面視でL字状を成し下側の突出片部分に通孔が形成され、側壁の高さ方向中間には、内側に開口を向けた溝型断面の前記スライド案内溝が形成され、その上部及び下部にそれぞれ板状の被挟持部が形成され、
前記ケース端部は、前記ケース中間部との接続側に、前記ケース中間部の被挟持部を挟み込みできる隙間を有する挟持部を有し、下部に前記ケース中間部の突出片が嵌合状態で組み合わされる嵌合支持部を有するとともに、該嵌合支持部に通孔を有し、
前記ケース中間部とケース端部とは、両者が突合わされるように嵌合されるとともに、前記通孔にリベット又はネジが通されて連結されており、
少なくとも前記ピストン式ダンパー及びスプリング部材が前記ケース中間部の長さに対応して長さの異なる複数種が用意され、
前記ケース中間部の長さ変更及び前記ピストン式ダンパー及びスプリング部材の長さ変更によって両方向引込み装置の長さ寸法を変更可能とし、引戸の幅寸法の違いに対応可能としたことを特徴とする引戸の両方向引込み装置が提供される。
【0011】
上記請求項1記載の発明では、引戸の両方向引込み装置において、ケースが、スライド案内溝が形成されたケース中間部と、スライド案内溝の端部とこれに連続する仮停止部が形成された左右のケース端部とからなる3部品の組立てによって構成され、前記ケース中間部の端部は、側面視でL字状を成し下側の突出片部分に通孔が形成され、側壁の高さ方向中間には、内側に開口を向けた溝型断面の前記スライド案内溝が形成され、その上部及び下部にそれぞれ板状の被挟持部が形成され、前記ケース端部は、前記ケース中間部との接続側に、前記ケース中間部の被挟持部を挟み込みできる隙間を有する挟持部を有し、下部に前記ケース中間部の突出片が嵌合状態で組み合わされる嵌合支持部を有するとともに、該嵌合支持部に通孔を有し、前記ケース中間部とケース端部とは、両者が突合わされるように嵌合されるとともに、前記通孔にリベット又はネジが通されて連結されており、前記ケース中間部のみについて長さの異なる複数種が用意されるとともに、少なくとも前記ピストン式ダンパー及びスプリング部材が前記ケース中間部の長さに対応して長さの異なる複数種が用意される。
【0012】
そして、前記ケース中間部の長さ変更及び前記ピストン式ダンパー及びスプリング部材の長さ変更によって両方向引込み装置の長さを変更可能とし、引戸の幅寸法に対応可能としている。従って、引戸の幅寸法の違いに柔軟に対応可能としながら、部品の共通化によって部品数の低減を図るとともに、在庫管理の簡素化、製品コストの低廉化を図れるようになる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記ケース端部のそれぞれに吊り車型ランナ装置又はローラが連結され、吊り引戸に対応可能としてある請求項1記載の引戸の両方向引込み装置が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明は、吊り引戸に対応するための構成を規定したものである。
【発明の効果】
【0015】
以上詳説のとおり本発明によれば、引戸の幅寸法の違いに柔軟に対応可能としながら、部品の共通化によって部品数の低減を図るとともに、在庫管理の簡素化、製品コストの低廉化を図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る両方向引込み装置1を適用した吊り引戸2の正面図である。
【
図2】両方向引込み装置1及び吊り車型ランナ装置7、8の分解図である。
【
図7】ケース中間部11と戸先側ケース端部12との連結要領を示す斜視図である。
【
図8】ケース中間部11と戸尻側ケース端部13との連結要領を示す斜視図である。
【
図9】引込み要領(A)~(D)を示す手順図である。
【
図10】従来の引込み装置を示す要部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0018】
〔両方向引込み装置1の構造〕
図1に示される引戸2は、上レール3、側枠5A、5B及び下レール6によって開口枠が設けられるとともに、前記上レール3内を走行する吊り車型ランナ装置7,8が配設され、これら吊り車型ランナ装置7,8によって吊持されることによって、前記上レール3に沿って移動自在とされた吊り引戸である。吊り引戸2は、走行時に引戸下端が揺れないように下ピボット29が下レール6に沿って走行するようになっている。
【0019】
図2に示されるように、引戸2の上部両端部には、正面視でU字状の切欠き2a、2bが設けられ、この切欠き2a、2b内に固定用台座28が嵌合されビス30によって固定されている。
【0020】
前記固定用台座28に対して、吊り車型ランナ装置7、8がワンタッチ式で取り付けられる。吊り車型ランナ装置7(8)は、ランナ本体7A(8A)とランナ取付具7B(8B)とからなり、これらが縦方向配向の軸部材によって連結されている。前記ランナ本体7A(8A)は、ローラ支持体31の両側に夫々2個づつ、ローラ支軸によって支持されたローラ32を備え、これらローラ32、32…が上レール3の走行溝3b、3bを転動することにより前記上レール3に沿って移動自在となっている。
【0021】
前記上レール3としては、一般の引戸に用いられるガイドレールをそのまま使用することができ、特別なレールは不要である。前記上レール2は、
図2に示されるように、下面中央にスリットが形成されるとともに、このスリットの両側にローラ32、32…が転動可能な走行溝3b、3bが形成される。この上レール2は、天井面に設けられた複数の通孔に挿通される固定ねじによって戸枠の鴨居に固設されている。また、上レール3の天井面には、所定箇所に、引戸2の閉操作時に両方向引き込み装置1が係合するための係合ピン4Aが配置されるとともに、引戸2の開操作時に両方向引込み装置1が係合するための係合ピン4Bが配置される。
【0022】
前記2つの吊り車型ランナ装置7、8の内、戸先側となる吊り車型ランナ装置7のランナ本体7Aに連結して両方向引込み装置1が設けられている。この両方向引込み装置1の他端側にはローラ33が設けられており、前記引戸2と一体的に上レール3を移動するようになっている。そして、前記引戸2の閉操作時及び引戸2の開操作時に、引戸2を全閉位置又は全開位置まで自動的に引き込むようになっている。
【0023】
以下、前記両方向引込み装置1について詳述する。
【0024】
前記両方向引込み装置1は、
図3及び
図4に示されるように、両側壁にスライド案内溝10aが形成されるとともに、前記スライド案内溝10aの両端部に連続してそれぞれ、屈曲状案内溝10bからなる仮停止部Kが形成されたケース10内に、ピストン式ダンパー14が配設され、このピストン式ダンパー14のピストン15の先端部とシリンダ16の基端部とにそれぞれ、前記スライド案内溝10a及び仮停止部Kに係合する係合突部18a、19aを有し、且つ上端部が前記ケース10から突出状態で設けられ戸枠又はレール側に設けられた係合ピン4A(4B)と係脱する関係にあるスライダー18、19が回動可能に連結され、且つ前記左右一対のスライダー18,19が引込み方向の付勢力を与えるスプリング部材17によって連結され、少なくとも一方側のスライダー18(19)が前記ケース10の仮停止部Kに係止されているものである。
【0025】
本発明では特に、前記ケース10が、スライド案内溝10aが形成されたケース中間部11と、スライド案内溝10bの端部とこれに連続する仮停止部Kが形成された左右のケース端部12,13とからなる3部品の組立てによって構成されるとともに、前記ケース中間部11のみについて長さの異なる複数種が用意される。また、前記ピストン式ダンパー14及びスプリング部材17についても前記ケース中間部11の長さに対応して長さの異なる複数種が用意され、前記ケース中間部11の長さ変更及び前記ピストン式ダンパー14及びスプリング部材17の長さ変更によって両方向引込み装置1の長さを変更可能とし、引戸2の幅寸法DWに対応可能としたものである。
【0026】
更に、具体的に詳述すると、
前記ケース10は、両側壁にスライド案内溝10aが形成されるとともに、前記スライド案内溝10aの両端部にそれぞれ連続して、下側方向にL字状に屈曲する屈曲状案内溝10bからなる仮停止部Kが形成されている。
【0027】
前記ケース10は、
図4に示されるように、両側壁にスライド案内溝10aが形成されたケース中間部11と、スライド案内溝10aの端部とこれに連続する仮停止部Kが形成された左右のケース端部12、13とからなる3部品の組立てによって構成されるとともに、前記ケース中間部11のみについて長さの異なる複数種が用意されている。
【0028】
前記ケース中間部11の端部(戸先側)は、側面視でL字状を成し下側の突出片11a部分に通孔11bが形成されている。側壁の高さ方向中間には、内側に開口を向けた溝型断面のスライド案内溝10aが形成され、その上部及び下部にそれぞれ板状の被挟持部11cが形成されている。
【0029】
一方、前記ケース端部12には、スライド案内溝10aの端部とこれに連続する仮停止部Kが形成されているとともに、前記ケース中間部11との接続側には、
図7にも示されるように、ケース中間部11の被挟持部11cを挟み込みできる隙間を有する挟持部12aを有し、下部に前記ケース中間部11の突出片11aが嵌合状態で組み合わされる嵌合支持部12bを有するとともに、該嵌合支持部12bに通孔12cを有する。
【0030】
そして、前記ケース中間部11とケース端部12とは、
図7に示されるように、両者を突合わせるようにしながら嵌合したならば、リベット34(又はネジ)を前記通孔11b、12cに通して両者を堅固に連結する。
【0031】
前記ケース中間部11と戸尻側のケース端部13との連結についても、全く同様の構造となっており、
図8に示されるように、両者を突合わせるようにしながら嵌合したならば、リベット34(又はネジ)を前記通孔11d、13cに通して両者を堅固に連結する。
【0032】
前記ケース中間部11と左右のケース端部12,13との3部材によって構成されるケース10の内、前記ケース中間部11のみについて長さの異なる複数種が用意しておけば、部品の共通化を図りながら、ケース10の長さを変更することが可能となる。
【0033】
前記ケース10には、
図5及び
図6に示されるように、ピストン式ダンパー14のピストン15の先端部とシリンダ16の基端部とにそれぞれ、前記スライド案内溝10a及び仮停止部Kに係合する係合突部18a、19aを有し、且つ上端部が前記ケース10から突出状態で設けられ戸枠又はレール側に設けられた係合ピン4A、4Bと係脱する関係にあるスライダー18、19が回動可能に連結され、且つ前記左右一対のスライダー18,19が引込み方向の付勢力を与えるスプリング部材17によって連結された引込み装置ユニット9が内設される。
【0034】
前記ピストン式ダンパー14は、ピストン15とシリンダ16とで構成され、前記シリンダ16内部に粘性体(シリコンオイル等)が密封封入されており、ピストン15がシリンダ16内部を移動する際に、前記粘性体の移動により移動速度に応じた抵抗力(減衰力)が発生してエネルギーを吸収する構造となっているものである。
【0035】
前記スライダー18は、
図5及び
図6に示されるように、側面部に前記スライド案内溝10a及び仮停止部Kに係合する係合突部18aを有するとともに、基端部に連結軸部18bを有し、上部にピン係合部18cを有し、下部にスプリング連結部18dを有する部材である。なお、戸尻側のスライダー19も線対称的に全く同様の構造となっている。従って、符号のみをスライダー18に倣って付し説明を省略する。
【0036】
前記スライダー18と前記ピストン15先端との連結は、中間連結具20を介して行われる。中間連結具20は、ブロック状の本体20aの基端側(ピストン側)にピストン先端が嵌入される凹孔20bを有するとともに、先端側に前記スライダー18が連結される連結軸部20cを有し、側面部に前記スライド案内溝10aに対する係合突起20dを有する部材である。スライダー18との連結は、
図6に示されるように、軸部材24を前記連結軸部18b、20cに通してカシメることによって行われる。従って、前記スライダー18は水平軸回りに回動自在にピストン15に対して連結される。
【0037】
一方、前記スライダー19と前記シリンダ16基端との連結は、シリンダ後端保持具21を介して行われる。前記シリンダ後端保持具21は、ブロック状の本体21aの基端側(シリンダ側)にシリンダ後端嵌合部21bを有するとともに、先端側に前記スライダー19が連結される連結軸部21cを有し、側面部に前記スライド案内溝10aに対する係合突起21dを有する部材である。スライダー19との連結は、
図6に示されるように、軸部材25を前記連結軸部19b、21cに通してカシメることによって行われる。従って、前記スライダー19は水平軸回りに回動自在にシリンダ16に対して連結される。
【0038】
シリンダ16に対する取付けは、シリンダ16の先端に嵌合されるシリンダ先端保持具22と連結板23とによって行われる。前記シリンダ先端保持具22は、ブロック状の本体22aの基端側(シリンダ側)にシリンダ先端嵌合部22bを有し、側面部に前記スライド案内溝10aに対する係合突起22cを有する部材である。中央部は、ピストン15の挿通部となっている。
【0039】
取付けは、シリンダ16の後端に前記シリンダ後端保持具21を取付けるとともに、シリンダ16の先端に前記シリンダ先端保持具22を取付け、前記シリンダ後端保持具21と前記シリンダ先端保持具22とを連結板23によって連結することにより行う。なお、前記シリンダ後端保持具21を単独でシリンダ16の後端に接続可能な構造とした場合には、前記シリンダ先端保持具22と連結板23は省略することが可能である。
【0040】
前記スライダー18とスライダー19とは、スプリング連結部18dとスプリング連結部19dとの間に掛け渡されたスプリング部材17によって連結されている。
【0041】
前記引込み装置ユニット9においても、ケース10の長さ変更に応じて長さが変更可能とされる。具体的には、前記ピストン式ダンパー14及びスプリング部材17(及び連結板23)が前記ケース10の長さに対応して長さ寸法の異なる複数種が用意され、前記ケース中間部11の長さ変更及び前記ピストン式ダンパー14及びスプリング部材17の長さ変更によって両方向引込み装置1の長さを変更可能としている。
【0042】
従って、引戸2の幅寸法DWの違いに柔軟に対応可能となる一方で、部品の共通化によって部品数の低減を図るとともに、在庫管理の簡素化、製品コストの低廉化を図ることが可能となる。
【0043】
〔両方向引込み装置1の作動説明〕
(引戸2の閉操作時)
図9(A)に示されるように、引戸2が全開状態の場合は、前記スライダー19が係合ピン4Bに係合し、引戸2は戸尻側方向に付勢されている。
【0044】
この全開状態から引戸2の閉操作を行うと、
図9(B)に示されるように、係合ピン4Bと係合しているスライダー19がスプリング部材17の付勢力に抗して戸尻側に移動される。そして、同
図9(B)に示されるように、スライダー19の係合突部19aが屈曲状案内溝10bまで案内されるとスライダー19が揺動し仮停止位置Kに係止した状態となる。これに伴いスライダー19と係合ピン4Bとの係合が解除される。
【0045】
その後、
図9(C)に示されるように、閉操作を続けると、仮停止状態にあるスライダー18が係合ピン4Aに衝突し、スライダー18を揺動動作させて仮停止状態が解除される。これによりスライダー18に係合ピン4Aが係合した状態となる。そして、前記ピストン式ダンパー14による制動力を受けながらスプリング部材17の付勢力によって、引戸2が全閉位置まで引き込まれるようになる(
図9(D))。
【0046】
(引戸2の開操作時)
次に、引戸2を全閉状態から開操作する時の作動状態について説明する。この動作は前記閉操作の逆動作(
図9(D)から
図9(A)の順)となる。
【0047】
引戸2を全閉した状態(
図9(D))から開操作を行うと、
図9(C)に示されるように、係合ピン4Aと係合しているスライダー18がスプリング部材17の付勢力に抗して戸先側に移動される。そして、
図9(B)に示されるように、スライダー18の係合突部18aが屈曲状案内溝10bまで案内されるとスライダー18が揺動し仮停止位置Kに係止した状態となる。これに伴いスライダー18と係合ピン4Aとの係合が解除される。
【0048】
その後、
図9(B)に示されるように、開操作を続けると、仮停止状態にあるスライダー19が係合ピン4Bに衝突し、スライダー19を揺動動作させて仮停止状態が解除される。これによりスライダー19に係合ピン4Bが係合した状態となる。そして、前記ピストン式ダンパー14による制動力を受けながらスプリング部材17の付勢力によって、引戸2が全開位置まで引き込まれるようになる(
図9(A))。
【0049】
上記説明から分かるように、両方向引込み装置1では、左右一対のスライダー18,19の内、少なくとも一方側のスライダー18(19)が前記ケース10の仮停止部Kに係止されている状態となる。具体的には、スライダー18、19が共に係合ピン4A、4Bの間に位置する操作途中状態(引込み未作動状態)ではスライダー18,19の両方が仮停止部Kに係止されている状態となり、スライダー18、19の一方が係合ピン4A(4B)に係止し、全閉側又は全開側に引き込みしている状態ではスライダー18,19の内の片方が仮停止部Kに係止されている状態となる。
【0050】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、上レール3内を走行する吊り車型ランナ装置7、8によって引戸2が吊持された吊り引戸の例を示したが、引戸の下面に設けた戸車によって移動自在とされる引戸の場合は、両方向引込み装置1に一体的に連結された吊り車型ランナ装置7やローラ33、更に他端側の吊り車型ランナ装置8などは不要となる。
【符号の説明】
【0051】
1…両方向引込み装置、2…引戸、3…上レール、4A・4B…係合ピン、5A・5B…側枠、6…下レール、7・8…吊り車型ランナ装置、9…引込み装置ユニット、10…ケース、11…ケース中間部、12・13…ケース端部、14…ピストン式ダンパー、15…ピストン、16…シリンダ、17…スプリング部材、18・19…スライダー、20…中間連結具、21…シリンダ後端保持具、22…シリンダ先端保持具、23…連結板