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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】三次元造形装置及び三次元造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20230323BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230323BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230323BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20230323BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20230323BHJP
   B29C 64/245 20170101ALI20230323BHJP
   B29C 64/227 20170101ALI20230323BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20230323BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y10/00
B29C64/112
B33Y50/00
B29C64/245
B29C64/227
B29C64/386
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018237131
(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2020097196
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】307015301
【氏名又は名称】武藤工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】當間 隆司
(72)【発明者】
【氏名】田沼 千秋
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-201560(JP,A)
【文献】特開2006-130864(JP,A)
【文献】特開2018-069545(JP,A)
【文献】特開2016-035430(JP,A)
【文献】特開2018-149778(JP,A)
【文献】特開2007-253088(JP,A)
【文献】特表2014-516841(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0229119(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材料を吐出する吐出部と、
前記造形材料に光又は熱を与えて前記造形材料を硬化させる硬化手段と、
前記造形材料を吐出する造形面を有する基材を保持するための造形テーブルと、
前記吐出部に対する前記造形テーブルの三次元空間の相対的な位置を調整する位置調整機構と、
前記吐出部、前記硬化手段、及び前記位置調整機構を制御する制御部と、
前記造形面の形状データに基づき前記造形材料の三次元データをスライスデータに分割するスライスデータ生成部と
を備え、
前記制御部は、前記吐出部を前記造形テーブルに対し静止させた状態で、前記造形材料を連続して複数回吐出して前記造形材料の積層体を形成し、その複数回の吐出後、前記硬化手段により前記積層体を硬化させるよう動作し、
前記位置調整機構は、前記造形テーブルの傾斜角を調整可能に構成され、
前記制御部は、前記造形材料の吐出方向と前記基材の造形面の法線が略一致するよう前記位置調整機構を制御する
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
前記制御部は、吐出パスに沿って前記吐出部を前記造形テーブルに対し相対的に移動させるよう構成された、請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記吐出パスに沿った前記吐出部の移動、前記吐出部による前記造形材料の吐出、及び前記硬化手段による前記造形材料の硬化を、前記吐出パスの終点まで繰り返すよう構成された、請求項に記載の三次元造形装置。
【請求項4】
目標造形物を形成するための造形材料を吐出する吐出部を、基材を載置した造形テーブルに対し静止させた状態で、前記造形材料を連続して複数回吐出して造形材料の積層体を形成するステップと、
前記造形材料の積層体に対し、光又は熱を照射して前記積層体を硬化させるステップと、
前記吐出部を吐出パスに沿って移動させるステップと
前記造形テーブルの傾斜角を調整するステップと、
前記造形材料を吐出する造形面の形状データに基づき前記造形材料の三次元データをスライスデータに分割するステップと
を備え、
前記造形テーブルの傾斜角は、前記造形材料の吐出方向と前記基材の造形面の法線が略一致するように調整される、三次元造形方法。
【請求項5】
前記吐出部を吐出パスに沿って移動させるステップは、前記吐出パスに沿って前記吐出部を前記造形テーブルに対し相対的に移動させるものである、
請求項4に記載の三次元造形方法。
【請求項6】
前記吐出パスに沿った前記吐出部の移動、前記吐出部による前記造形材料の吐出、及び前記造形材料の硬化を、前記吐出パスの終点まで繰り返す、請求項5に記載の三次元造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置及び三次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材上に三次元造形物を追加的に造形するための三次元造形装置が広く用いられている。基材上の造形面は、平面には限られず、曲面である場合もあり、このような曲面の造形面にも、三次元造形物を高精度に形成することが求められている。
【0003】
三次元造形方法には様々な方式が知られており、そのうちの1つとしてインクジェット方式が広く知られている。インクジェット方式は、例えば光又は熱硬化型のインクを走査線に沿って吐出した後、造形面に吐出されたインクに光(例えば紫外線)又は熱を照射して硬化させる。このような走査、インク吐出、及び硬化を繰り返すことにより、所望の形状の三次元造形物を形成することができる。
【0004】
このようなインクジェット方式において、益々高精度な造形が求められており、一例として直径が0.3mm程度の構造物の造形や真円度の高い柱状の造形が求められている。このような高精度な造形は、上記のような従来のインクジェット方式では困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-205670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、インクジェット方式において、より高精度な三次元造形物の造形が可能とする三次元造形装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る三次元造形装置は、造形材料を吐出する吐出部と、前記造形材料に光又は熱を与えて前記造形材料を硬化させる硬化手段と、前記造形材料を吐出する造形面を有する基材を保持するための造形テーブルと、前記吐出部に対する前記造形テーブルの三次元空間の相対的な位置を調整する位置調整機構と、前記吐出部、前記硬化手段、前記位置調整機構を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記吐出部を前記造形テーブルに対し静止させた状態で、前記造形材料を連続して複数回吐出して造形材料の積層体を形成し、その複数回の吐出後、前記硬化手段により前記積層体を硬化させるよう動作することを特徴とする。
【0008】
この三次元造形装置において、前記位置調整機構は、前記造形テーブルの傾斜角を調整可能に構成されることができる。加えて、前記制御部は、前記造形材料の吐出方向と前記基材の法線が略一致するよう前記位置調整機構を制御するよう構成することができる。
【0009】
また、この三次元造形装置において、前記造形面の曲面形状データに基づき前記造形材料の三次元データをスライスデータに分割するスライスデータ生成部を更に備えることができる。また、前記制御部は、吐出パスに沿って前記吐出部を前記造形テーブルに対し相対的に移動させるよう構成されることができる。また、前記制御部は、前記吐出パスに沿った前記吐出部の移動、前記吐出部による前記造形材料の吐出、及び前記硬化手段による前記造形材料の硬化を、前記吐出パスの終点まで繰り返すよう構成されることができる。
【0010】
また、本発明に係る三次元造形方法は、目標造形物を形成するための造形材料を吐出する吐出部を、基材を載置した造形テーブルに対し静止させた状態で、前記造形材料を連続して複数回吐出して造形材料の積層体を形成するステップと、前記造形材料の積層体に対し、光又は熱を照射して前記積層体を硬化させるステップと、前記吐出部を吐出パスに沿って移動させるステップとを備える。
【0011】
この三次元造形方法において、前記造形テーブルの傾斜角を調整するステップを更に備えることができる。この場合、前記造形テーブルの傾斜角は、前記造形材料の吐出方向と前記基材の法線が略一致するように調整され得る。また、この方法において、前記造形面の曲面形状データに基づき前記造形材料の三次元データをスライスデータに分割するステップを更に備えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インクジェット方式において、より高精度な三次元造形物の造形が可能とする三次元造形装置及び方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施の形態の3Dプリンタ100の全体構成を示す概略斜視図である。
図2】位置/傾斜角調整機構15の具体的な構成の一例を示す斜視図である。
図3】第1の実施の形態の3Dプリンタ100において目標造形物ASを基材BE上に形成する場合の基本的な手順を説明する概略図である。
図4】第1の実施の形態の3Dプリンタ100の制御部200の詳細な構成の一例を説明するブロック図である。
図5】基材BEの造形面の形状が曲面である場合における、目標造形物ASの三次元データ、及びスライスデータSiの生成を説明する概略図である。
図6】第1の実施の形態の3Dプリンタ100を用いた三次元造形方法の手順を説明するフローチャートである。
図7】位置/傾斜角調整機構15による造形テーブル16の傾斜角の調整の様子を説明する概略図である。
図8】制御用CPU202から出力される駆動信号Ssh、Sij、Smcの波形の一例を示すタイミングチャートである。
図9】第2の実施の形態の3Dプリンタ100の全体構成を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本実施形態について説明する。添付図面では、機能的に同じ要素は同じ番号で表示される場合もある。なお、添付図面は本開示の原理に則った実施形態と実装例を示しているが、これらは本開示の理解のためのものであり、決して本開示を限定的に解釈するために用いられるものではない。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味においても限定するものではない。
【0015】
本実施形態では、当業者が本開示を実施するのに十分詳細にその説明がなされているが、他の実装・形態も可能で、本開示の技術的思想の範囲と精神を逸脱することなく構成・構造の変更や多様な要素の置き換えが可能であることを理解する必要がある。従って、以降の記述をこれに限定して解釈してはならない。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の3Dプリンタ100の全体構成を示す概略斜視図である。この3Dプリンタ100は、フレーム11、Zガントリ12、Yガントリ13、X方向レール14、位置/傾斜角調整機構15、造形テーブル16、インクタンク17、インクジェットヘッド18(吐出部)、硬化ヘッド19(硬化手段)、及び昇降装置20A、20Bを備える。また、3Dプリンタ100内の各部の制御のため、制御部200が設けられている。
【0017】
フレーム11は、矩形形状の骨組を有しており、後述するZガントリ12等を内部に収納する。また、Zガントリ12は、フレーム11の内部において、昇降装置20A、20Bにより図1のZ方向に移動可能に構成されている。
【0018】
Yガントリ13は、Zガントリ12の表面を、図1のY方向に沿って摺動可能に構成されている。また、Yガントリ13の内壁には、X方向を長手方向として延びるX方向レール14が接続されており、このX方向レール14に沿って位置/傾斜角調整機構15が移動可能に配置されている。位置/傾斜角調整機構15は、造形テーブル16を保持し、造形テーブル16の載置面の傾斜方向を調整可能に構成されている。造形テーブル16は、目標造形物を形成するための基材を載置するための基台である。
【0019】
位置/傾斜角調整機構15は、例えば図2に一例として示すような6軸パラレルリンク機構を有する調整機構とすることができる。この図2の機構は、X方向レール14に沿って摺動可能にされた基台151と、基台151の表面に放射状に配置されるスライダ152と、スライダ152においてその下端が摺動可能に保持され且つ上端が造形テーブル16の底面にユニバーサルジョイント等(図示せず)を介して接続される摺動バー153とを備えている。
【0020】
この位置/傾斜角調整機構15(位置調整機構)は、Zガントリ12、Yガントリ13、及びX方向レール14によりXYZの3方向(三次元方向、三次元空間)に造形テーブル16を移動可能とされると共に、摺動バー153の下端の位置を調整することにより、造形テーブル16の傾斜角を調整することができる。この構成によれば、傾斜角を3方向に調整することができる。すなわち、Zガントリ12、Yガントリ13、X方向レール14、及び位置/傾斜角調整機構15により、XYZ方向も含め6軸方向の調整が可能になる。なお、Zガントリ12、Yガントリ13、及び位置/傾斜角調整機構15は、後述する駆動検知機構208-1~6内のアクチュエータにより駆動されるとともに、その位置及び傾斜角(回転量)は駆動検知機構208-1~6内のセンサにより検知される。
【0021】
位置/傾斜角調整機構15は、インク吐出による造形動作の間、インクジェットヘッド18からのインクの吐出方向が、基材の造形面の法線と略一致するよう、その傾斜角が調整される。なお、基材が平面形状(板材等)である場合、この位置/傾斜角調整機構15は省略することもできる。
【0022】
Zガントリ12、Yガントリ13、及び位置/傾斜角調整機構15の以上のような動作により、造形テーブル16上は、X方向、Y方向、Z方向の3方向に移動可能とされる。更に、位置/傾斜角調整機構15による傾斜角の調整により、造形テーブル16の傾斜角が調整可能とされる。造形テーブル16上の基材の造形平面の傾斜角が調整されることにより、造形平面が曲面である基材上にも容易に且つ高精度に追加的な造形を行うことが可能になる。
【0023】
図1の装置では、インクタンク17、インクジェットヘッド18、及び硬化ヘッド19は、造形テーブル16の上方のフレーム11に固定的に保持されている。このインクジェットヘッド18に対し造形テーブル16が相対的に移動することにより、造形工程が実行され得る。必要に応じ、インクタンク17、インクジェットヘッド18、及び硬化ヘッド19を、フレーム11に対し移動可能なよう、移動調整機構を設けても良い。なお、造形テーブル16の移動制御においては、造形テーブル16上に載置された基材BE、又は目標造形物ASと、インクジェットヘッド18との間の距離が所定のクリアランス距離を維持するように制御がなされるのが好ましい。この制御は、光センサ等の距離センサにより計測し、その計測結果に基づいてもよいし、基材BEのCADデータに基づいて行ってもよい。
【0024】
インクタンク17は、インクジェットヘッド18から吐出するインクを保持している。そして、インクジェットヘッド18は、このインクを重力方向(Z方向)に沿って吐出して三次元造形物を形成する。この3Dプリンタ100では、インクジェットヘッド18は、フレーム11及び造形テーブル16に対し静止した状態でインクを吐出するよう構成されている。インクジェットヘッド18によるインクの吐出中は、造形テーブル16も静止状態としてインクを吐出する。このため、インクジェットヘッド18からのインクは、吐出目標位置に対して鉛直方向(Z方向)に沿って吐出される。
【0025】
なお、インクとしては、紫外線が照射されることによって硬化する紫外線硬化型インクを用いることができる。紫外線以外にも、加熱や電子ビームの照射により硬化する硬化型インクも使用可能である。以下では一例として紫外線硬化型インクを使用した例について主に説明する。
【0026】
この第1の実施の形態の3Dプリンタ100は、後述するように造形材料を形成する位置に沿ってインクジェットヘッド18を移動させて三次元造形物を形成するベクタースキャン方式を採用している。すなわち、造形領域の全体を複数の平行な走査線に沿って走査して造形物を形成するラスタスキャン方式とは異なり、ベクタースキャン方式においては、インクジェットヘッド18が造形材料を形成すべき位置のみを通過するよう吐出パスがコンピュータにより生成され、この吐出パスに沿ってインクジェットヘッド18が造形テーブル16に対し相対的に移動する。
【0027】
更に、この3Dプリンタ100では、ベクタースキャン方式を実行しつつ、図3に示すように、同一箇所においてインクジェットヘッド18を静止させた状態で、基材BEに対し複数回インクの吐出を繰り返し((1))、その複数回のインク吐出後、紫外線照射等による硬化処理を行い((2))、インクの積層物を形成し、目標造形物ASを基材BE上に形成する。一例として、インクジェットヘッド18は、1回当たり5~20pl程度のインクを吐出し、この吐出を同一箇所で数十回~数千回程度繰り返し、その後硬化処理を行う。前述のように、インクジェットヘッド18は、フレーム11及び造形テーブル16に対し静止した状態でインクを吐出するよう構成されている。これにより、インクの吐出回数に応じた高さを有する柱状の造形物を形成することができる。インクジェットヘッドが走査方向に移動しながらインクを吐出する場合、インクはインクジェットヘッドの移動方向のベクトルとインク吐出方向のべクトルとの和の方向である斜め方向に飛翔する。このため、図3のような柱状の造形物を形成することはできない。本実施の形態のように、インクジェットヘッド18を造形テーブル16に対し静止させた状態で連続してインクを複数回吐出し、その後硬化することにより、このような柱状の造形物の形成が可能になる。
【0028】
所定回数の吐出と硬化処理が完了したら、インクジェットヘッド18は、定められた吐出パスに沿って移動し((3))、以下、上記の処理(1)(2)が繰り返される。同一箇所での吐出の回数は、1回当たりのインクの吐出量、インクの各種性状(粘度を含む)、環境温度、基材の性状(材料、表面粗さ、曲率等)に依存する。
【0029】
なお、この第1の実施の形態におけるベクタースキャン方式は、造形テーブル16に対しインクジェットヘッド18が相対的に移動すればよく、移動対象は造形テーブル16であってもよいし、インクジェットヘッド18であってもよい。ただし、いずれの場合にも、インク吐出時においては、インクジェットヘッド18は造形テーブル16に対し静止した状態に維持される。以下の実施の形態では、主に前者の方式について説明するが、これに限定されるものではない。
【0030】
インクを連続的に吐出して図2に示すような柱状の造形物を形成するため、吐出するインクは、所定値以上の粘度を有するインクであることが好適である。一例として、紫外線硬化型インクが重合型モノマー等を材料として形成される場合、インクの粘度は20mPa・s以下とすることができる。ただし、インクの積層物が形成可能である限り、インクの材料、粘度、混合物の有無は不問である。インクの材料、混合物の材料若しくは比率、造形時の環境温度、1回当たりの吐出量、その他の条件により、求められる粘度の値は異なると想定される。なお、紫外線硬化型インクは、無溶剤型のものであってもよいし、溶剤型(溶剤を基材として含む)であってもよい。
【0031】
3Dプリンタ100は、制御部200からの各種制御信号により制御される。図4に、この制御部200の詳細な構成の一例を示す。制御部200は、インクジェットヘッド18、硬化ヘッド19、及び駆動検知機構208-1~6を制御するための構成として、ホストPC201、制御用CPU202、ヘッド制御部203、硬化ヘッドドライバ204、インクジェットヘッドドライバ205、機構制御部206、及び機構ドライバ207を備えている。駆動検知機構208-1~6は、それぞれ、内蔵するアクチュエータにより、造形テーブル16のXYZ方向への移動、及び傾斜角の調整のためZガントリ12、Yガントリ13、及び位置/傾斜角調整機構15を駆動するとともに、内蔵するセンサにより、その位置や傾斜角を検知する。
【0032】
ホストPC201は、目標造形物ASの三次元データに基づいて、当該三次元データを積層方向に並ぶ複数の曲面データであるスライスデータSiに分解する。すなわち、ホストPC201は、三次元データをスライスデータに分割するスライスデータ生成部として機能する。スライスデータSiは、目標造形物ASが形成される基材BEの造形面の形状に合致する形状を与えられる。例えば、基材BEの造形面の形状が平面であれば、スライスデータSiも平面形状とされ得る。一方、基材BEの造形面の形状が曲面である場合には、図5に示すように、目標造形物ASの三次元データもこの曲面形状に沿った形状を与えられるのが好適である。また、スライスデータSiも、基材BEの造形面の形状に合わせた曲面形状を有するのが好適である。スライスデータSiの各々は、複数回のインクの吐出に相当する厚さを有している。なお、積層方向の複数のスライスデータSiは、全て均一の厚さを有する必要はなく、厚さは互いに異なっていても良い。
【0033】
図4に戻って説明を続ける。ホストPC201は更に、生成されたスライスデータに基づき、インクジェットヘッド18、硬化ヘッド19及び駆動検知機構208-1~6を制御するための制御データを生成する。ホストPC201は、CAMツールを用いて、制御データに基づきインクジェットヘッド18の相対的な移動経路を示す吐出パスデータを設定可能に構成されている。設定された吐出パスは、目標造形物ASの三次元データ、装置の動作環境、インクの性状データ、その他造形環境に関する各種データ(温度、湿度等を含む)に従いホストPC201において事前検証され、必要な修正が適用される。事前検証が不要であれば、CAMツールは省略して、スライスデータのみに基づいて吐出パスデータを生成することもできる。
【0034】
制御用CPU202は、ホストPC201から出力された吐出パスのデータに基づき、インクジェットヘッド18及び硬化ヘッド19を制御するためのインク吐出・硬化制御データと、駆動検知機構208-1~6を制御するための駆動制御データを生成する。
【0035】
ヘッド制御部203は、吐出・硬化制御データに従い、硬化ヘッドドライバ204に対し、硬化ヘッド19から硬化のために照射される紫外線の照射の開始タイミング、照射時間、照射量等を示す駆動信号Smcを出力する。硬化ヘッドドライバ204は、この駆動信号Smcに従い硬化ヘッド19を駆動する。
【0036】
また、ヘッド制御部203は、インク吐出・硬化制御データに従い、インクジェットヘッドドライバ205に対し、インクジェットヘッド18から吐出されるインクの吐出の開始タイミング、吐出回数、及び1回当たりの吐出量等を示す駆動信号Sijを出力する。インクジェットヘッドドライバ205は、この駆動信号Sijに従ってインクジェットヘッド18を駆動する。
【0037】
機構制御部206は、駆動制御データに従い、機構ドライバ207に対し、駆動検知機構208-1~6における駆動開始タイミング、及び駆動量を示す駆動信号Sshを出力する。機構ドライバ207は、この駆動信号Sshに基づいて駆動検知機構208-1~6を駆動する。
【0038】
次に、図1の装置を使用した三次元造形方法の実行手順について、図6のフローチャートを参照して説明する。まず、ホストPC201は、目標造形物ASが形成される基材BEの造形面の曲面形状データを取得する(ステップS11)。造形面の曲面形状データは、実際に基材BEの造形面をカメラ(図示せず)で撮影して取得してもよいし、基材BEのCADデータを外部から受信することで取得することも可能である。
【0039】
次に、造形物データ、及びステップS11で得られた造形面の曲面形状データから、目標造形物ASの三次元データのスライスデータSiを生成する(ステップS12)。図5で説明したように、造形面の曲面形状データとスライスデータSiの形状が略一致するよう、目標造形物の三次元データがスライスされる。
【0040】
スライスデータSiが生成されると、このスライスデータSiに基づいて、インクジェットヘッド18が相対的に移動する吐出パスがホストPC201において生成される(ステップS13)。ホストPC201は、N番目のスライスデータS内の造形領域に対する吐出を完了した後、N+1番目のスライスデータSN+1内の造形領域に対する吐出に移行する、という手順で吐出が実行されるよう、吐出パスを生成する。吐出パスが生成されると、前述したように、この吐出パスに従って、インク吐出・硬化制御データ及び駆動制御データが生成される(ステップS14、S15)。
【0041】
その後、駆動検知機構208-1~6を駆動させて造形テーブル16を吐出パスの初期位置まで移動させ、且つ造形テーブル16の傾斜角を、造形面の曲面形状データに従って調整する(ステップS16)。XYZ方向の移動は、Zガントリ12、Yガントリ13、及びX方向レール14に沿った位置/傾斜角調整機構15の移動により行われる。また、図7に示すように、6本の摺動バー153の移動量を調整することで、3方向の傾斜角を調整することが可能になる。これにより、造形面SFのインク吐出位置の法線を、Z方向と略平行にすることができる。
【0042】
造形テーブル16の位置及び傾斜角の調整が完了したことが検知されると(ステップS17)、その位置で、造形テーブル16とインクジェットヘッド18とを相対的に静止させた状態で、定められた回数nだけインクジェットヘッド18からのインクの吐出が繰り返される(ステップS18)。同一箇所においてn回のインクの吐出が完了すると、硬化ヘッド19から紫外線が吐出されたインクに向けて照射され、紫外線によるインクの硬化が行われる(ステップS19)。以降、吐出パスに沿った移動により、インクジェットヘッド18が吐出パスの終点に達し、吐出パスに沿った造形が完了するまで、ステップS16~S19の動作が繰り返される(ステップS20)。
【0043】
図8に、制御用CPU202から出力される駆動信号Ssh、Sij、Smcの波形の一例を示す。駆動検知機構Sshが立ち上がると、信号Sshに含まれる情報に従って造形テーブル16の位置及び傾斜角が制御される。所望の位置及び傾斜角が得られたことがセンサにより検知されると、駆動信号Sijが立ち上がる。駆動信号Sijは、インクジェットヘッド18から連続的にインクを吐出するため、図8に示すような連続パルス信号とすることができ、1つのパルスごとにインクジェットヘッド18からインクが吐出される。
【0044】
インクの吐出が終わると、駆動信号Smcが立ち上がり、これにより硬化ヘッド19から紫外線がインクの積層体に向けて照射され、積層体のインクが硬化する。以上の信号が、吐出パスの終点まで順次繰り返される。
【0045】
以上説明したように、この第1の実施の形態に係る三次元造形装置によれば、生成された吐出パスに沿って、インクジェットヘッド18が、造形テーブル16に対し静止した状態で連続的にインクを吐出し、その後紫外線照射等により積層されたインクの造形物を硬化される。この動作により、造形面上に、吐出されるインクの幅に相当する幅を有する柱状の造形物を形成することができる。この連続的なインクの吐出、紫外線硬化、及び吐出パスに沿ったインクジェットヘッド18の移動が繰り返されることで、基材上に追加的な造形を高精度に実行することができる。
【0046】
また、この第1の実施の形態では、位置/傾斜角調整機構15により、造形テーブル16の傾斜角を調整し、インクジェットヘッド18からのインクの吐出方向と、基材BEの造形面の法線方向とを略一致させることができる。両者が一致することにより、上記のような柱状の造形物をより高精度に形成することが可能になる。
【0047】
[第2の実施の形態]
次に、図9を参照して、第2の実施の形態に係る三次元造形装置を説明する。図9において、図1と同一の構成要素については同一の参照符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0048】
この第2の実施の形態の三次元造形装置は、位置/傾斜角調整機構15の構造が、第1の実施の形態とは異なっている。この第1の実施の形態の位置/傾斜角調整機構15は、6軸パラレルリンク機構を有することにより、XYZ方向の3方向に加え、更に3方向に傾斜角を調整可能な構成を備える。これに対し、この第2の実施の形態の位置/傾斜角調整機構15は、2方向にのみ傾斜角を調整可能で、XYZ方向を含め5方向に調整が可能に構成されている。
【0049】
第2の実施の形態の位置/傾斜角調整機構15は、一例として図9に示すように、回転摺動部154と、基台155と、回転軸156と、シャフト157とを備えている。回転摺動部154は、X方向レール14に沿って直線状に移動可能にされているとともに、X方向レール14の径方向に沿って回転可能にも構成されている。基台155の底面は、この回転摺動部154の上端と接続されている。
【0050】
基台155は、そのY方向の両端においてZ方向に立ち上がる側壁を有しており、この2つの側壁の間に回転軸156が取り付けられている。回転軸156は、Y方向を長手方向として取り付けられるとともに、基台155の側壁に対しその径方向に回動可能に構成されている。
【0051】
回転軸156には、シャフト157の下端が取り付けられており、シャフト157の上端には、造形テーブル16が接続されている。この構成によれば、回転摺動部154及び回転軸156の回転により、造形テーブル16を2方向に回動させ、その傾斜角を2方向において調整することができる。
【0052】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0053】
例えば、上記の実施の形態では、ベクタースキャン方式を実行する例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。インクジェットヘッド18を造形テーブル16に対し静止させた状態で、インクを連続して複数回吐出してインクの積層体を形成し、その複数回の吐出後、硬化ヘッド19により積層体を硬化させるよう動作する限りにおいて、ラスタスキャン又はそれに近似する方式が採用されてもよい。ラスタスキャン方式が採用される場合におけるインクジェットヘッドの構造は、ラインヘッドであってもよいし、シャトルヘッドであってもよい。その場合のインクジェットヘッドには複数のノズル(吐出口)が設けられており、そのノズル列を複数列並べて設ければ、インクジェットヘッド18と造形テーブル16の法線方向の位置関係が維持されている平坦範囲内にある多数のノズルを使用して効率よく積層する事もできる。
【符号の説明】
【0054】
11…フレーム、 12…Zガントリ、 13…Yガントリ、 14…X方向レール、 15…位置/傾斜角調整機構、 16…造形テーブル、 17…インクタンク、 18…インクジェットヘッド、 19…硬化ヘッド、 20A、20B…昇降装置、 100…3Dプリンタ、 151…基台、 152…スライダ、 153…摺動バー、 200…制御部、 201…ホストPC、 202…制御用CPU、 203…ヘッド制御部、 204…硬化ヘッドドライバ、 205…インクジェットヘッドドライバ、 206…機構制御部、 207…機構ドライバ、 208-1~6…駆動検知機構、 AS…目標造形物、 BE…基材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9