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  • 特許-養生シート 図1
  • 特許-養生シート 図2
  • 特許-養生シート 図3
  • 特許-養生シート 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】養生シート
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/24 20060101AFI20230323BHJP
【FI】
E04G21/24 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018210143
(22)【出願日】2018-11-08
(65)【公開番号】P2020076247
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】521413936
【氏名又は名称】藤本貴昭株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135220
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 祥二
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴昭
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-104474(JP,U)
【文献】特開平11-223023(JP,A)
【文献】特開2009-197519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床や壁等の被養生物を保護するべく、所定幅を有して且つロール状に巻かれて搬送又は保管されることが多い長尺ものの養生シートであって、
厚さが0.4mm~0.7mmで重さが120gf/m2~180gf/m2の紙製の芯材と、当該芯材の表裏両面にそれぞれ一体に貼着されたノンスリップフィルムとを有する養生シートであり、
かかる養生シートが、少なくとも両側部の一部を残して厚み方向に凹凸のあるエンボス加工がなされており、前記紙製の芯材の剛性あるいは弾性によって、また前記ノンスリップフィルムの張力により、外力が作用し無い状態で、スプリングバックにより実質上平面状になることを特徴とする養生シート。
【請求項2】
前記ノンスリップフィルムが前記芯材の幅方向両側から外方にはみ出すように設けられている請求項1記載の養生シート。
【請求項3】
前記ノンスリップフィルムに表面コロナ加工されていることを特徴とする請求項1又は2記載の養生シート。
【請求項4】
前記ノンスリップフィルムがリニアローデンシティポリエチレンフィルムで構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1の項に記載の養生シート


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物やそれに類する建築物やその他の構造物等(建築物等という)の床や壁面等の表面を傷や汚れから保護するための、養生シートに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物等を建築する際やリフォーム工事をする際に、あるいは引っ越ししたりする際に、壁面や床面に傷を付けたり汚したりするのを防止するべく、床や壁面等を、養生シート等を用いて養生することがしばしばおこなわれる。
このため、従来から種々の養生シート等が使用されている。 このような養生シートに関する先行技術として、以下の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-87524
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記養生シートは、所定幅(例えば100cm幅)を有するものを所定長さ(例えば50m長さ)だけロール状に巻いた形態で販売され、前記形態で保管され、必要な際には使用する現場まで搬送されている。 そして、例えば床の養生に用いられる場合には、ロール状のものを必要な長さだけ平面状に解いて床の表面を被うようにする。
しかしながら、製造時にロール状に巻き取られた養生シートは、所謂「巻き癖」がついてしまい、床の表面にぴったり沿うような状態とはならない。つまり、床表面上で上下に波打った状態となっている。
このため、床表面と養生シートとの間に隙間が生じている箇所では、それらの隙間に砂やゴミ等が侵入し、当該養生シートを作業員が移動したり養生シート上を歩いたりすると、砂等により床表面を傷付けたり汚したりしてしまうことになる。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みておこなわれたもので、前記「巻き癖」が無い、しかも砂等のゴミが間に侵入しても床面等の被養生物を汚したり傷付けることの無い、且つスリップし難い構成の、養生シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる養生シートは、床や壁等の被養生物を保護するべく、所定幅を有して且つロール状に巻かれて搬送又は保管されることが多い長尺ものの養生シートであって、
厚さが0.4mm~0.7mmで重さが120gf/m2~180gf/m2の紙製の芯材と、当該芯材の表裏両面にそれぞれ一体に貼着されたノンスリップフィルムとを有する養生シートであり、
かかる養生シートが、少なくとも両側部の一部を残して厚み方向に凹凸のあるエンボス加工がなされており、
前記紙製の芯材は、外力が作用し無い状態で、スプリングバックにより実質上平面状になることを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる養生シートによれば、ロール状に巻かれた状態から平面状にして床面上に敷設される場合、例えば床面に敷設される場合にも、「巻き癖」が実質上無いため、床面に養生シートがほぼ密接した状態で敷設することができる。
また、養生シート上を作業員等が歩くような場合にも、前記エンボス加工により又ノンスリップフィルムを用いたことにより滑り止め効果を得ることができる。さらに、前記エンボス加工により、クッション性を得ることができる。
また、前記一部エンボス加工が施されていない両側部を接着テープ等を使用して、床面や壁面等と簡単に且つ確実に接着することができる。また、エンボス加工が施されていない部分同士を接着テープにより他の養生シートと簡単に且つ強固に接続することができ、広い場所を簡単に養生することができる。かかる接着に際し、前述のようにエンボス加工がなされていない両側部でおこなうため、接着力がそれほど強くない接着テープで確実に接続することができる。
【0008】
前記養生シートにおいて、前記ノンスリップフィルムが前記芯材の幅方向両側から外方にはみ出すように設けられていると、このはみ出している部分(はみ出し部分ともいう)が、芯材が存在しないことに起因して、容易に屈曲し易い。 このことから、例えば床面とそれから立設されている壁面に沿った状態で配設することも容易で、ゴミ等の養生シート下への侵入を防止することができる。さらに、両端部分は、芯材が存在しない「はみ出し部分」のみであるため、かかる「はみ出し部分」が破れ難い材質の素材で構成されていると、「破れ難い」養生シートとなる。
【0009】
前記養生シートにおいて、前記ノンスリップフィルムに表面コロナ加工(コロナ加工)されていると、静電気を防止できる上で、また表面にインク等で印刷し易くなる点において、好ましい構成となる。前記表面がコロナ加工にかえてプラズマ処理をおこなってもよい。
【0010】
前記養生シートにおいて、前記ノンスリップフィルムがリニアローデンシティポリエチレンフィルムであると、前記表面コロナ加工をおこなう上で、また高い強度を得る点で、さらには防水性能の点で、好ましい構成となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、前記「巻き癖」が無い、しかも砂等のゴミが間に侵入しても床面等の被養生物を無用に傷付けることが無い、且つスリップし難い構成の、養生シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の1つの実施形態にかかる一部巻いた状態の養生シートを表した全体の概略の構成を示す斜視図である。
図2図1に示す養生シートのエンボス加工の状態とその表裏方にそれぞれノンスリップフィルムを貼着した状態を示す、図1のa-a矢視又はb-b矢視での断面図である。
図3図1に示す養生シートの幅方向の両側部において、芯材からノンスリップフィルムがはみ出すように設けられている状態を示す、当該養生シートの一部の平面図である。
図4図1に示す養生シート同士を、エンボス加工のされていない箇所を用いて、接着テープで接着している状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態にかかる養生シートを図面を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
図1において、Aは本実施形態にかかる養生シートで、かかる養生シートAは、図2で示すように、厚み方向中央に、厚さが0.4mm~0.7mmで重さが120gf/m2~180gf/m2の紙製の芯材1が配設されている。 特に、この実施形態では、厚み方向中央に、厚さが0.6mmで重さが160gf/m2の硬質の紙製の芯材1のものが使用されている。 また、この実施形態では、前記養生シートAは、全幅が1020mmで長さが30mとなっている。
【0015】
そして、前記芯材1の表裏両面にそれぞれ芯材1と一体にノンスリップフィルム2a,2bが貼着されている。かかる貼着は、この実施形態の場合、「サンドポリ方式と呼ばれる手法(接着剤として「ポリエチレン接着樹脂4a,4b」を介して接着する手法)により、おこなわれている。しかし、他の溶着、例えば、熱による前記ノンスリップフィルム2a,2bの一部あるいは全部を前記芯材1に溶着することによって、おこなってもよい。また、他の接着剤によって接着してもよい。
【0016】
また、前記芯材1と、その表裏両面のノンスリップフィルム2a,2bは、貼着されて一体となった状態でプレス加工によるエンボス加工が、この養生シートAの前記両側部3a,3bを除いて施されている。図1図3図4においてエンボス加工されている部分をグレーの色を付して表している。前記エンボス加工が施されていない両側部3a,3bは、表面がフラットの状態となっており、かかるフラットの状態が長手方向L(幅方向wに直交する方向)に沿って形成されている。
【0017】
また、前記ノンスリップフィルム2a,2bは、表面に表面コロナ加工が施され、静電気を防止できるよう構成されている。また、かかる表面コロナ加工がなされていると、表面に商標を印字したり模様等を印刷し易くなる利点が生じる。
この実施形態では、前記ノンスリップフィルム2a,2bは、リニアローデンシティポリエチレンフィルムで構成されているが、同様の機能を有する他の種類のフィルムを用いてもよい。特に、表面コロナ加工をしない場合には、他の種類のフィルムを使用することができる。
【0018】
この実施形態では、前記芯材1の表裏両面に前記ノンスリップフィルム2a,2bが表面コロナ加工によっても貼着(溶着)されているが、これに代えて、種々の接着剤のみによる接着によって一体に貼着されてもよい。
【0019】
そして、本実施形態にかかる養生シートAは、前記エンボス加工よって、高さ的に0.2mm程度の上下の凹凸(上下合わせて0.4mm程度)が生じるような、前記エンボス加工がなされている。 しかし、かかるエンボス加工の高さについては、必要に応じて、例えば、より大きなクッション性を得たい場合には、より高い凹凸を形成すればよい。
【0020】
このように構成された本実施形態にかかる養生シートAによれば、芯材1の剛性あるいは弾性によって、また、両面に一体に貼着されたノンスリップフィルム2a,2bの張力により、スプリングバック機能が生じ、搬送や保管時にロール状に巻かれたものを解いて床面に延ばすと、かかる養生シートAは実質上平面状になるよう構成されている。つまり、殆ど巻き癖による波打ち状態がない状態となる。
このため、養生シートAと床面との間に無用な隙間が生じることがなく、かかる隙間に、砂やゴミ等が侵入することがない。
【0021】
また、本養生シートAによれば、両面に貼られたノンスリップフィルム2a,2bにより、防水機能を有し、液体等を誤って零すことのようなことが生じても、床面自体を湿らしたり汚すようなことはない。
また、本実施形態にかかるノンスリップフィルム2a,2bは、高い強度(引っ張り強度や破断強度)を有する。 このため、芯材1の強度と相まって、床に敷くような場合にも破損するようなことはない。
【0022】
また、本養生シートAによれば、図1図3に図示するように、芯材1の両側方へ前記ノンスリップフィルム2a,2bがはみ出すよう構成されているので、養生シートAを平面的に並べて配設する場合にも、図4に図示するように、前記はみ出し部分5a,5b同士を並べて前記両端部3a,3bを接着テープTで二つの養生シートAを接続すれば、高い接続強度を保って、接続することができる。また、前記はみ出し部分(両端部)は、芯材が存在しないノンスリップフィルム2a,2bのみであるため、且つかかる「はみ出し部分」が破れ難い材質の素材で構成されているため、「破れ難い」養生シートとなる。また、かかる接続部分から、砂やゴミ等が侵入し難くなり、且つ接着テープ自体に強度の高いものを使用しておけば、かかる接続部分で破損(破断)することもない。また、前記接続テープ自体が防水性を有するものを使用すれば、かかる接続部分で液が床を湿らしたり汚すようなこともない。
【0023】
なお、前記実施形態は、本発明の単なる1つの実施形態であって、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、種々の形態で実施できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明にかかる養生シートは、建設やリフォームあるいは引っ越しの各分野等において、利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
A … 養生シート
1 … 芯材
2a,2b …ノンスリップフィルム
3a,3b …両側部
W … 幅方向
L … 長手方向
図1
図2
図3
図4