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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-22
(45)【発行日】2023-03-30
(54)【発明の名称】プラスチック複合製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/10 20060101AFI20230323BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20230323BHJP
【FI】
B29C39/10
B29C39/24
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018230262
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020090074
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】515171802
【氏名又は名称】萱野工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 利幸
(72)【発明者】
【氏名】服部 哲豊
(72)【発明者】
【氏名】大塚 輝道
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007100(JP,A)
【文献】特開平07-068590(JP,A)
【文献】特開2006-095104(JP,A)
【文献】特開2014-156055(JP,A)
【文献】特開平01-099815(JP,A)
【文献】特開平11-213792(JP,A)
【文献】特開2018-000225(JP,A)
【文献】特開平11-224561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/00-39/44
B29C 33/00-33/76
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘弾性を有するウレタン系成形体であるゲル体と、
所定の三次元形状を有する軟質アクリル系成形体であって、前記ゲル体の少なくとも一部を収容するキャビティを有する外皮と、
を備え、
前記外皮は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)をAブロックとし、ポリn-ブチルアクリレート(PnBA)をBブロックとする、A-B-Aタイプブロック共重合体又はA-Bタイプブロック共重合体と、非ハロゲン縮合リン酸エステル系難燃剤と、を含有する難燃性外皮であり、
前記ゲル体は、前記ゲル体の外表面に備える粘着性によって前記キャビティの内表面に当接して前記外皮の前記キャビティと一体化される第1の面と、前記キャビティの前記内表面に当接しない面であってエーテル系ウレタン樹脂被膜を備える第2の面とを有し、前記外皮に対する外力の印加に伴い、前記ゲル体が前記第2の面に向けて変形する、プラスチック複合製品。
【請求項2】
前記ゲル体は、前記第2の面の少なくとも一部で規定される内部キャビティを有する、請求項1に記載のプラスチック複合製品。
【請求項3】
前記内部キャビティには、前記ゲル体の変形に伴って変形する弾性部材又は前記ゲル体の変形に伴って変位する部材を備える、請求項に記載のプラスチック複合製品。
【請求項4】
前記外皮は透光性を有し、前記内表面に1又は2以上の可視要素を備える、請求項1~3のいずれかに記載のプラスチック複合製品。
【請求項5】
前記ウレタン系成形体は、エーテル系ウレタン樹脂成形体である、請求項1~のいずれかに記載のプラスチック複合製品。
【請求項6】
前記ゲル体及び前記外皮は、透光性を有し、前記ゲル体の前記第2の面の少なくとも一部を介して光を透過させる光照射デバイスを備える、請求項1~のいずれかに記載のプラスチック複合製品。
【請求項7】
前記外皮の内部であって、前記ゲル体の下方には、前記光照射デバイスを配置するための別のキャビティを備える、請求項に記載のプラスチック複合製品。
【請求項8】
前記外皮は操作者が意思表示のために前記外力を印加できる外形形状を備えており、
前記外力による前記ゲル体の変形を前記操作者の意思表示のためのプロセスに適用する意思表示関連製品である、請求項1~のいずれかに記載のプラスチック複合製品。
【請求項9】
防振・免震部材、衝撃吸収部材、クッション部材、吸音・防音部材である、請求項1~のいずれかに記載のプラスチック複合製品。
【請求項10】
プラスチック複合製品の製造方法であって、
軟質アクリル系樹脂材料を用いて、凹状に開放されたキャビティを備える所定の三次元形状を備える成形体を成形して外皮を取得する工程と、
前記外皮の前記キャビティに対し、ウレタン系樹脂材料を供給して前記ウレタン系樹脂材料を硬化させて前記外皮の前記キャビティの少なくとも一部を充填するようにウレタン系樹脂のゲル体を一体化する工程と、
を備え、
前記軟質アクリル系樹脂材料は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)をAブロックとし、ポリn-ブチルアクリレート(PnBA)をBブロックとする、A-B-Aタイプブロック共重合体又はA-Bタイプブロック共重合体と、非ハロゲン縮合リン酸エステル系難燃剤と、を含有し、
前記複合製品は、前記ゲル体が前記ゲル体の外表面に備える粘着性によって前記キャビティの内表面に当接して前記外皮の前記キャビティと一体化される第1の面と、前記キャビティの前記内表面に当接しない面であって、エーテル系ウレタン樹脂被膜を有する第2の面と、を有し、前記外皮に対する外力の印加に伴い、前記ゲル体が前記第2の面に向けて変形する、製造方法。
【請求項11】
前記外皮は透光性であり、前記一体化する工程に先立って、前記外皮の前記内表面に1又は2以上の可視要素を付与する工程を備える、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、異なるプラスチック材料の複合製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒトなどの動物個体の一部を、その意思表示のために接触させる接触部位を備える意思表示関連製品がある。かかる意思表示関連製品としては、例えば、スイッチ、ボタン、レバー、キーボード、ディスプレイパネル等が挙げられる。このような部材は、一般には、プラスチック材料等から構成されており、その接触に基づく圧力、温度、形状、位置等の変化を検知して、電気的信号に変換するなどして、意思表示に基づくプロセスを開始できるようになっている。
【0003】
また、こうした意思表示関連製品のほか、意図的及び/又は非意図的に動物個体の少なくとも一部が接触することが予定される被接触部位を備える製品(以下、他製品ともいう。)もある。かかる製品としては、例えば、家具、医療機器、介護機器、ロボット、玩具、パソコン周辺機器、文具、オフィス用品、日用品、電化製品、車両の内装材等など様々であるが、こうした製品の被接触部位において、プラスチック材料が用いられることも多くなってきている。
【0004】
意思表示関連製品にあっては、意思表示のために接触される手足などの個体の一部が繰り返し触れるのに適した耐衝撃性が求められる。このため、比較的硬質で剛性を備えるプラスチック材料で構成されたり、あるいは用途によっては、逆に柔軟であっても強度と耐汚染性を備えるシリコン樹脂材料などで構成されたりしている。また、他製品にあっては、その被接触部位の果たすべき機能性によって様々な特性(例えば、硬度、弾性、柔軟性等)が、プラスチック材料によって実現されるようになっている。例えば、遊技機の分野においては、視覚的に斬新な演出効果を得ることができる押圧操作可能なボタンカバーが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-000225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、意思表示関連製品は、ヒトが接触する部材である以上、耐衝撃性や耐汚染性などのほか、従来にない意思表示性能や触感、操作感等が求められる場合もある。例えば、意思表示のための手足が接触する際の押圧力によって意思表示レベルの変化を付与が可能な粘弾性を有することや、接触する方向性に関わらず、意思表示の入力が可能であるとか、従来にない感触や動作で意思表示が可能であるとか等が挙げられる。
【0007】
また、他製品においても、例えば、適切な粘弾性や耐衝撃性を有しつつ、適切な表面特性、すなわち、非粘着性、透明性、耐汚染性など、動物個体に接触時の接触時に不快感を与えないような表面特性を備えることも要請されるようになっている。また、特許文献1に開示されるボタンカバーは、適切な粘弾性の発現は困難であった。
【0008】
現在までのところ、耐衝撃性と意図した粘弾性を有しつつ好適な表面特性を備える一体成形体が提供されていない。
【0009】
本明細書は、かかる課題に鑑み、耐衝撃性、粘弾性特性及び好適な表面特性を備えるプラスチック複合製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、粘弾性特性を有するゲルと、その粘弾性に追従しかつ適切な表面特性を発揮できるプラスチック外皮を種々検討したところ、ウレタンゲルの粘弾性と軟質アクリル樹脂外皮の表面特性との組合せが好適であることを見出した。また、本発明者らはウレタンゲルと軟質アクリル樹脂外皮とを一体成形することで、耐衝撃性、粘弾性及び好適な表面特性を発揮できるプラスチック複合製品を提供できることを見出した。本明細書は、これらの知見に基づき以下の手段を提供する。
【0011】
(1)粘弾性を有するウレタン系成形体であるゲル体と、
所定の三次元形状を有し軟質アクリル系成形体であって前記ゲル体の少なくとも一部を収容するように開放されるキャビティを備える外皮と、
を備え、
前記ゲル体は前記キャビティの少なくとも一部を充填するように備えられ、
前記ゲル体の前記キャビティの内表面に当接する第1の面は、前記ゲル体の粘着性により前記内表面に一体化されており、
前記ゲル体の前記キャビティの前記内表面に当接しない第2の面は、ウレタン系被膜を備え、
前記外皮に対する外力の印加に伴い前記外皮とともに前記ゲル体が変形するように構成されている、プラスチック複合製品。
(2)前記ゲル体の前記第2の面の少なくとも一部によって規定されるとともに前記ゲル体の外方に開放された内部キャビティを備える、(1)に記載の複合製品。
(3)前記内部キャビティには、前記ゲル体の変形に伴って弾性変形する弾性部材を備える、(2)に記載の複合製品。
(4)前記弾性部材は、弾性変形可能なプラスチック成形体である、(3)に記載の複合製品。
(5)前記外皮は透光性を有し、前記外皮の内表面に印刷層を備える、(1)~(4)のいずれかに記載の複合製品。
(6)前記ゲル体及び前記外皮は透光性を有する、(1)~(5)のいずれかに記載の複合製品。
(7)さらに、前記ゲル体の前記第2の面の少なくとも一部を介して光を透過させる光照射デバイスを備える、(1)~(6)のいずれかに記載の複合製品。
(8)前記ウレタン系成形体は、エーテル系ウレタン樹脂成形体である、(1)~(7)のいずれかに記載の複合製品。
(9)前記ウレタン系被膜は、エーテル系ウレタン樹脂被膜である、(1)~(8)のいずれかに記載の複合製品。
(10)プラスチック複合製品の製造方法であって、
軟質アクリル系成形体である外皮であって開放されたキャビティを備える外皮の前記キャビティに対し、ウレタン系樹脂材料を供給して前記ウレタン系樹脂材料を硬化させて前記外皮の前記キャビティの少なくとも一部を充填するようにウレタン系樹脂のゲル体を一体化する工程と、
前記ゲル体の前記キャビティの内表面に当接しない面にウレタン系被膜を形成する工程と、
を備える、製造方法。
(11)前記外皮は透光性であり、前記一体化工程に先立って、前記外皮の前記内表面に1又は2以上の可視要素を付与する工程を備える、(10)に記載の製造方法。
(12)前記一体化工程は、前記キャビティに供給されたウレタン系樹脂材料に入れ子を配置して、前記ゲル体の前記キャビティの前記内表面に当接しない面の少なくとも一部によって規定されるとともに前記ゲル体の外方に開放された内部キャビティを形成する工程である、(10)又は11に記載の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本明細書に開示されるプラスチック複合製品の一例を示す図である。
図2図1に示すプラスチック複合製品の各部材を示す図である。
図3図1に示すプラスチック複合製品に外力を付加した状態の一例を示す図である。
図4図1に示すプラスチック複合製品に外力を付加した状態の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書の開示は、プラスチック複合製品及びその製造方法に関する。本明細書に開示される複合製品は、意図した粘弾性を有する内部部材と好適な表面特性を有する外皮部材とを組みあわせた一体成形により、意思表示関連製品としても他製品としても耐衝撃性、粘弾性及び表面特性を備えるプラスチック複合製品となっている。かかる複合製品は、意思表示関連製品として従来にない操作性と感触を備えることができるほか、他製品としても、耐衝撃性と粘弾性と表面特性を一挙に発揮できる。また複合製品は、外皮に対する外力の印加に伴い、ゲル体が変形するように構成されるため、この変形を意思表示プロセスに適用したり、動物個体の少なくとも一部を保持し、保護等するように適用することができる。さらに、本複合製品は、外皮によってゲル本体が一体性良く被覆されているため、ゲル本体の粘弾性を高い自由度で設定することができる。以下、本明細書の開示について適宜図面を参照しながら説明する。
【0014】
なお、本明細書において、「意思表示関連製品」としては、家具、住宅設備、医療機器、介護機器、ロボット、玩具、パソコン周辺機器、文具、オフィス用品、日用品、電化製品、車両等の輸送体の内装設備等などにおけるボタン、スイッチ、キー、レバー、ハンドル等の被接触部材(ただし、後述するアミューズメント機器における被接触部材を除く。)が挙げられる。
【0015】
また、他の意思表示関連製品としては、パチンコ、ゲーム機器などのアミューズメント機器におけるボタン、スイッチ、キー、レバー、ハンドル等の被接触部材が挙げられる。
【0016】
また、本明細書において、「他製品」としては、上記した意思表示に関連しない、家具、住宅設備、医療機器、介護機器、ロボット、玩具、パソコン周辺機器、文具、オフィス用品、日用品、電化製品、車両等の輸送体の内装設備等などにおける接触部材が挙げられる。
【0017】
(プラスチック複合製品)
図1及び図2に例示するように、本明細書に開示されるプラスチック複合製品(以下、本複合製品ともいう。)2は、所定の三次元形状を有し粘弾性を有するウレタン系成形体であるゲル体10と、軟質アクリル系成形体であって前記ゲル体10の少なくとも一部を収容するように開放されるキャビティ60を備える外皮40と、を備えている。本複合製品2において、外皮40が、ヒトなどの動物個体の少なくとも一部によって接触される被接触部位を構成する。
【0018】
(ゲル体)
本複合製品2においては、例えば、図1及び図2に示すように、ゲル体10は、所定の三次元形状を有している。かかる三次元形状については限定するものではないが、意思表示関連製品及び他製品において用途に応じた三次元形状を備えることができる。例えば、スイッチ、ボタン等には、直方体状、立方体状、半球状等の公知のこうした部材の形状を備えることができる。ゲル体10の三次元形状は、本複合製品の三次元形状に相似するか本複合製品の主要な一部を構成することができる。
【0019】
ゲル体10は、所望の粘弾性を備えることができる。ゲル体10が備える粘弾性は、意思表示関連製品及び他製品において用途に応じて適宜設定することができる。例えば、一般的に低反発とされる特性を発揮するように粘弾性を調整することもできる。
【0020】
ゲル体10は、ウレタン系成形体であり、ウレタン系樹脂材料を硬化して得られる硬化物。ウレタン系成形体であるゲル体10は、通常、表面は粘着性を示し、組成等の選択により、意図した粘弾性、例えば低反発性や高反発性などの特性を発揮させるようにすることができる。以下、ゲル体10の原料としてのウレタン系樹脂材料について説明する。
【0021】
(ウレタン系樹脂材料)
ウレタン系樹脂材料としては、特に限定されるものではなく、ゲル体10を得られるように調製された材料を用いることができる。ウレタン系樹脂材料は、例えば、ポリオール、ポリイソシアネート及び触媒を混合したエーテル系ウレタン樹脂材料などを挙げることができる。こうしたウレタン系樹脂材料は、可塑剤を含むことができる。
【0022】
(ポリオール)
ポリオールは、1つの分子に2個以上の水酸基を有する化合物であり、通常のウレタン系樹脂の製造に使用されるものであればよく、特に限定されない。例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられ、好適には、ポリエーテルポリオールを用いることができる。ポリエーテルポリオールを用いることで、好適な粘弾性が得られた易くなる。
【0023】
ポリエステルポリオールとしては、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合反応により得られるものがある。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上併用して用いることが可能である。多価カルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられ、これらを1種又は2種以上併用して用いることが可能である。さらに、カプロラクトン、メチルバレロラクトン等を開環縮合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0024】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール等の多価アルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド等のオキサイドを付加重合させたものが挙げられ、これらを1種又は2種以上併用して用いることが可能である。
【0025】
なお、ポリオールの重量平均分子量、官能基数及び水酸基価は、良好なウレタン系樹脂を製造することが可能な数値であればよく、特に限定されるものではない。例えば、重量平均分子量であれば、3000~7000であることが好ましく、官能基数であれば、2~4であることが好ましく、水酸基価であれば、27~56であることが好ましい。
【0026】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートは、1つの分子に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、通常のウレタン系樹脂の製造に使用されるものであればよく、特に限定されない。例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート等が挙げられ、好適には、脂肪族イソシアネートを用いることができる。
【0027】
芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族イソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添MDI等が挙げられる。好適には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を用いることができる。これら種々のポリイソシアネートのうちの1種又は2種以上を併用したものを用いることが可能である。なお、これらポリイソシアネートから得られるイソシアネートプレポリマーを用いることも可能である。
【0028】
ウレタン系樹脂材料におけるポリオールとポリイソシアネートとの配合量の比率は、ポリオール中の全活性水素基濃度に対する、ポリイソシアネート中のイソシアネート基濃度の当量比の百分率、いわゆる、イソシアネートインデックスによって示すことができる。ウレタン系樹脂材料のイソシアネートインデックスは、特に限定されるものではなく、目的に応じて選択することができる。
【0029】
例えば、ウレタンゲルを成形する場合のウレタン系樹脂材料のイソシアネートインデックスにおいては、低すぎるとゲル状に成形されず、高すぎると良好な応力分散性が得られないため、65以上、かつ85以下とすることが好ましい。さらに言えば、70以上、かつ75以下とすることが好ましい。
【0030】
また、例えば、エッチ・アンド・ケー株式会社製のハイキャスト3423を用いる場合には、ポリオールを主成分とするA剤100質量部に対して、ポリイソシアネートを主成分とするB剤を5~30質量部とすることができ、さらに好ましくは5~25質量部とすることができる。ポリオールとポリイソシアネートとは、これらの配合量の比率又はこれらと同程度のイソシアネートインデックスとなる配合量の比率で用いることが好ましい。
【0031】
(触媒)
触媒は、通常のウレタン系樹脂の製造に使用されるものであればよく、特に限定されない。例えば、アミン系触媒、有機金属系触媒等が挙げられる。アミン系触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモノフォリン、N-エチルモルホリン等が挙げられる。有機金属系触媒としては、例えば、スターナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、オクテン酸鉛、オクチル酸カリウム等が挙げられる。これら種々の触媒のうちの1種又は2種以上を併用したものを用いることが可能である。なお、触媒の配合量は、例えば、ウレタン系樹脂材料でのポリオールの合計量を100質量部とした場合に、0.05~3質量部であることが好ましい。
【0032】
(可塑剤)
可塑剤は、ウレタンゲルの材料として通常使用されるものであればよく、特に限定されない。例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル等が挙げられる。なお、可塑剤の配合量は、例えば、ウレタンゲルの材料でのポリオールの合計量を100質量部とした場合に、50~200質量部であることが好ましい。
【0033】
ウレタン系樹脂材料には、その他の成分を添加することができ、目的に応じて適宜選択することができる。その他の成分としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、鎖延長剤、充填剤等を挙げることができる。
【0034】
ウレタン系樹脂材料の調製方法は、特に限定されるものではなく、通常のウレタン系樹脂材料の製造に用いられるものであればよい。例えば、材料を一度に混合する方法である、いわゆる、ワンショット法や、ポリイソシアネートから得られるイソシアネートプレポリマーを用いる方法、いわゆる、プレポリマー法等の種々の方法を用いることが可能である。ウレタン系成形体であるゲル体の製造については、後段にて説明する。
【0035】
(外皮)
図1に例示するように、本複合製品2において、外皮40は、所定の三次元形状を有している。かかる三次元形状については限定するものではないが、意思表示関連製品及び他製品において用途に応じた三次元形状を備えることができる。例えば、スイッチ、ボタン等には、既述のとおりの公知のこうした部材の形状を備えることができる。外皮40の三次元形状は、本複合製品の三次元形状に相似するか本複合製品の主要な一部を構成することができる。また、外皮40は、ゲル体10の少なくとも一部を収容するように開放されるキャビティ60を備えることができる。すなわち、外皮40は、ゲル体10の少なくとも一部を囲繞するようなシェル状形態を備えることができる。したがって、外皮40の形状は、ゲル体10の形状及びその被収容部位形状に依存する場合がある。
【0036】
外皮40は、軟質アクリル系樹脂材料の成形体(軟質アクリル系成形体)である。軟質アクリル系成形体の特性ある耐衝撃性、柔軟性のほか、透明性(透光性)等を発揮しつつ、ゲル体10を保護し良く追従して全体として粘弾性と耐衝撃性と好適な表面特性を発揮させることができる。軟質アクリル系樹脂材料からなる外皮40の表面は、好適な平滑性、摩耗性、触感が得られるように成形し、あるいは塗装することで、好適な表面特性を発揮させることができる。以下、外皮40を構成する軟質アクリル系樹脂材料について説明する。
【0037】
(軟質アクリル系樹脂材料)
軟質アクリル系樹脂材料(以下、単に、アクリル系樹脂材料ともいう。)は、アクリル系樹脂を必須として含む組成物を、ゲル化して得られる透明で柔軟な樹脂材料である。
【0038】
アクリル系樹脂材料におけるアクリル系樹脂としては、特に限定するものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類を主構成モノマーとして重合されたものを用いることができ、これらの単独重合体、およびこれらと共重合可能なモノマーとの共重合体が例示され、これら単独重合体及び共重合体から選ばれる1種、または2種以上を併用して用いることができる。(メタ)アクリル酸エステル類としては、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が好ましく用いられる。(メタ)アクリル酸エステル類と共重合可能なモノマーには特に限定は無いが、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びこれらのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、スルホン酸ビニル、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸などのスルホン酸系モノマー、(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル類、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類、エチレン及びプロピレン等のα-オレフィン類、塩化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等の含ハロゲンα、β-不飽和モノマー類、(メタ)アクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル等のグリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ポリシロキサン基含有(メタ)アクリレート類などから、適宜選択して用いることができる。ここで、アクリル系樹脂として共重合体樹脂のみを用いる場合、或いは、(メタ)アクリル酸エステル類の単独重合体と共重合体とを併用して用いる場合、アクリル系樹脂を構成するモノマーの内、(メタ)アクリル酸エステル類モノマーが50mol%以上であることが好ましく、60mol%以上であることがより好ましく、70mol%以上であることがさらに好ましく、80mol%以上であることがなお好ましく、90mol%以上であることが一層好ましく、99mol%以上であることがより一層好ましく、100mol%であってもよい。
【0039】
アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)をAブロックとし、ポリn-ブチルアクリレート(PnBA)をBブロックとする、A-B-Aタイプ又はA-Bタイプブロック共重合体を用いることができる。かかる共重合体は、リビングアニオン重合法によって合成することができる。アクリル系樹脂としては、このようなブロック共重合体を好適な粘弾性を発揮するように1種又は2種以上を組みあわせて用いることができる。このようなブロック共重合体としては、LA2330、LA2250、LA2270、LA2140、LA1892等のアクリル樹脂(いずれも、株式会社クラレ製)を挙げることができる。なかでも、LA2250及びLA2140を挙げることができ、これらをLA2250:LA2140を、例えば、90質量部~60質量部:10質量部~40質量部、また例えば、80質量部~60質量部:20質量部~40質量部、また例えば、75質量部~65質量部:25質量部~35質量部、また例えば、70質量部:30質量部で混合して用いることができる。
【0040】
アクリル系樹脂材料は、微粒子状の粉末又はペレット状等とすることができる。
【0041】
アクリル系樹脂材料は、必要に応じて上記したアクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むことができる。アクリル系樹脂と相溶性を有する樹脂であれば特に限定されず、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル系共重合体樹脂、ポリ塩化ビニリデン系共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン系共重合体樹脂などを例示することができ、これらの熱可塑性樹脂から、1種あるいは2種以上選択して用いることができる。
【0042】
アクリル系樹脂材料は、必要に応じて、難燃剤を含むことができる。難燃剤としては、特に限定するものではないが、リン酸エステル系難燃剤を用いることができる。かかる難燃剤としては、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸ジクレジルフェニル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチルなどの非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤、芳香族縮合リン酸エステルなどの非ハロゲン縮合リン酸エステル系難燃剤、リン酸トリスクロロエチル、リン酸トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)などのハロゲン含有リン酸エステル系難燃剤等が挙げられる。なかでも、非ハロゲン縮合リン酸エステル系難燃剤を好ましく用いることができる。例えば、非ハロゲン縮合リン酸エステル系難燃剤としては、大八化学株式会社製のPX-200が挙げられる。かかる難燃剤は、上記したPMMA-PnBA-PMMA-PMMAタイプブロック共重合体やPMMA-PnBAタイプブロック共重合体との相溶性等が良好であり、意図した難燃性を発揮できるからである。このような難燃剤は、上記したアクリル樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以上10質量部以下含むことができ、また例えば、3質量部以上8質量部以下、また例えば、4質量部以上6質量部以下を含むことができる。難燃剤の含有量は、用いるアクリル樹脂や意図する難燃性等によって当業者であれば適宜設定することができる。
【0043】
アクリル系樹脂材料は、さらに可塑剤を含むことができる。可塑剤としては、アクリル系樹脂と相溶性を有する可塑剤であれば特に限定は無く、フタル酸エステル系可塑剤、安息香酸エステル系可塑剤、シクロヘキサンジカルボン酸系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、塩素化パラフィン可塑剤など、従来公知の可塑剤から1種、または2種以上選択して用いることができる。軟質アクリル樹脂層に可塑剤を含む場合、リン酸エステル化合物と可塑剤の合計量に対して、可塑剤の量が3~40質量%(複数種の可塑剤を含む場合はそれらを合わせて)であることが好ましい。可塑剤の量が3質量%未満では、添加による効果がほとんど得られないことがあり、40質量%を超えると、ゲル体10が劣化する場合がある。
【0044】
アクリル系樹脂材料はまた、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、粘着剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、抗菌剤、防黴剤、帯電防止剤などの添加剤を含んでもよい。
【0045】
(ゲル体と外皮との複合形態)
図1及び図2に例示するように、本複合製品2においては、ゲル体10は外皮40のキャビティ60の少なくとも一部を充填するように備えられている。ゲル体10が、キャビティ60のうちどの程度を充填するかは、本複合製品2の用途や機能等に応じて適宜決定される。外皮40が、ゲル体10を被覆して、全体としての粘弾性、耐衝撃性及び表面特性を確保できればよい。
【0046】
ゲル体10は、外皮40のキャビティ60の内表面に当接する第1の面12を備えている。第1の面12は、ゲル体10の粘着性により内表面に複合化(一体化)されている。かかる複合形態は、後段で説明するように、成形された外皮40のキャビティ60にウレタン系樹脂材料を充填し硬化することによって得られるものであることが好ましい。硬化したゲル体10は、硬化とともに、外皮40のキャビティ60の内表面に一体化される。
【0047】
ゲル体10の外皮40のキャビティ60の内表面に当接しない第2の面14を備えている。第2の面14は、例えば、図1及び図2に例示するように、ゲル体10の開放された内部キャビティ20の開放部分を縁取る周縁部の端面(底面)であってもよいし、ゲル体10が備える内部キャビティ20の内表面であってもよい。また、図1及び図2には例示しないが、外皮40に収容されないゲル体10の外表面であってもよい。
【0048】
第2の面14には、ウレタン系被膜30を備えることができる。第2の面14は、ゲル体10が備える粘着性を有しており、概して、かかる粘着性自体は、本複合製品2を取り扱う場合において、避けることが好ましい。ウレタン系被膜30は、ゲル体10との密着性及び被覆性が良好である。かかるウレタン系被膜30としては、ゲル体10の第2の面14を被覆することができれば特に限定されないが、ウレタン系樹脂材料のみからなることが好ましい。例えば、ゲル体10を構成するウレタン系樹脂材料又はその同系統の材料を用いることが好ましい。例えばゲル体を構成するウレタン系樹脂材料が、エーテル系ウレタン樹脂である場合、ウレタン系被膜もエーテル系ウレタン樹脂材料であることが好ましい。かかるウレタン系被膜30を形成できるコーティング剤は、種々のものが販売されており、例えば、エーテル系ウレタン樹脂材料のコーティング剤としては、エッチ・アンド・ケー株式会社製のハイ-メックス6504を用いることができる。
【0049】
本複合製品2は、ゲル体10と外皮40とこうした複合形態を備える複合体であることから、粘弾性、耐衝撃性及び優れた表面特性を兼ね備え、外皮40に対するヒトなどの動物個体の一部による外力の印加に伴い外皮40とともにゲル体10が変形するように構成される製品を提供できる。かかる複合製品は、意思表示関連製品としても他製品としても、有用である。意思表示関連製品においては、かかる外力によるゲル体10の変形が、例えば意思表示動作として機能することができる。また、他製品においては、ゲル体10の変形により、動物個体の一部を保持したり、保護したり、好適な反発感を提供することができる。
【0050】
例えば、図1及び図2に例示する本複合製品2は、略立方体形状等で、ヒトの手指で把持できる程度の立体形状を備えるように形成されている。このため、本複合製品2を、その上部から下方に向けて外力を付与してもよいし、手指で上部から把持するようにしてもよいし、手指で側方から把持するようにしてもゲル体10は、外皮40によって拘束されない面方向に向けて変形する。したがって、ゲル体10の予測される変形方向にかかる変形により押圧される部材を配置することで、全方向性でしかも操作動作が限定されない意思表示関連製品として構成できる。
【0051】
また例えば、ウレタン系樹脂の弾性、軟質性、緩衝性、衝撃吸収性等の特性を利用して、防振・免震部材、衝撃吸収部材、クッション部材、吸音・防音部材等の用途に用いることができる。
【0052】
(本複合製品の各種態様)
本複合製品2は、種々の態様を採ることができる。例えば、図1に例示するように、ゲル体10の第2の面14の少なくとも一部によって規定されるとともにゲル体10の外方に開放された内部キャビティ20を備えることができる。内部キャビティ20を備えることで、当該キャビティ20に、意図する用途や機能に応じた部材を収容しあるいは一体化したりすることができるほか、本複合製品2が備える粘弾性、触感、たわみ量等を調整したりすることができる。内部キャビティ20の形状や大きさは、内部キャビティ20によって複合製品2に対して付与することを意図する機能に応じて適宜決定される。
【0053】
例えば、図1及び図2に例示するように、内部キャビティ20には、ゲル体10の変形に伴って変形する弾性部材50を備えることができる。弾性部材50を備えることで、本複合製品2が発揮する粘弾性を調整することができる。また、弾性部材50を備えることで、当該部材50を、電気的接触を可能とするスイッチング部材として用いることができる。例えば、図1及び図2に例示する本複合製品2によれば、図3及び図4に示すように、多様な動作で外皮40に外力を印加しても、内部キャビティ20内にある弾性部材50を、確実に、弾性部材50を下方に引き下げることができるため、弾性部材50を有効にスイッチング部材などとして機能させることができる。弾性部材50の形状、大きさ及びその弾性等は特に限定しないが、内部キャビティ20の形状や大きさや、弾性部材50によって複合製品2に付与したい機能に基づいて適宜決定される。
【0054】
弾性部材50は、弾性変形可能なプラスチック成形体であってもよい。かかるプラスチック成形体は、発泡体であってもよい。発泡体などの成形体であれば、ゲル体10の種々の変形を受け止めて変形して有効なスイッチング部材として機能させることができる。
【0055】
なお、内部キャビティ20には、弾性部材50でなく、ゲル体10の変形に伴って変位する部材を備えていればよい。かかる部材でも、その変位を利用した意思表示関連製品を構成できる。また、内部キャビティ20には、その他、複合製品2に付与することを意図する機能に応じた部材を備えることができる。
【0056】
また、本複合製品2は、外皮40が透光性を有するように構成してもよい。アクリル系樹脂材料は、種々のレベルで透光性を発揮することができる。外皮40が透光性を有する場合、外皮40の内表面に可視要素を含む印刷層を備えることができる。こうすることで、必要な表示や装飾が可能な本複合製品2を提供できる。また、かかる印刷層は、外皮40で保護されるため、その表示性や装飾性が維持される。
【0057】
また、本複合製品2は、ゲル体10及び外皮40が透光性を有するように構成してもよい。ウレタン系樹脂材料の組成等を調節して、ゲル体10の透光性とすることは容易である。こうすることで、従来にない外観態様をさらに備える複合製品を提供することができる。また、ゲル体10の第2の面14の少なくとも一部を介して光を透過させる光照射デバイスを備えるようにすることで、光透過による表示や装飾が可能な本複合製品2を提供できる。光照射デバイスは、公知の光源等を有し、任意のパターンで配置される。光照射デバイスは、図1等に例示する形態において、ゲル体10の第2の面14のうち下面に相当する表面に配置されてもよいし、内部キャビティ20の内表面に相当する面に配置されてもよい。
【0058】
また、本複合製品2は、外皮40の大きさが、ゲル体10の全体を囲繞するものとし、外皮40の開放側の周縁に他部材に取り付けるためのブラケット部70を設けることができる。また、本複合製品2では、外皮40がゲル体10に対して十分に大きくして、外皮40内であってゲル体10が充填されないゲル体10の下方側などにおいて光照射デバイスなどを配置できるゲル外部キャビティ80を構成するようにしてもよい。
【0059】
このほか、本複合製品2は、種々の態様を採ることができる。図1等に例示する形態は、立方体状の外形を備える外皮40内の半球状のキャビィ60に充填されるゲル体10で構成したが、これに限定するものではなく、円柱状の外形を有する外皮40内の円柱状のキャビティ60に充填されるゲル体10で構成されていてもよい。
【0060】
また、図1等に例示する形態では、ゲル体10の大きさを超えて外皮40を構成するものとしたが、これに限定するものではない。外皮40の大きさを超えてゲル体10を備える形態も排除するものではない。
【0061】
(本複合製品の製造方法)
本複合製品の製造方法は、軟質アクリル系成形体である外皮であって開放されたキャビティを備える外皮の前記キャビティに対し、ウレタン系樹脂材料を供給して前記ウレタン系樹脂材料を硬化させて前記外皮の前記キャビティの少なくとも一部を充填するようにウレタン系樹脂のゲル体を一体化する工程と、前記ゲル体の前記キャビティの内表面に当接しない面にウレタン系被膜を形成する工程と、を備えることができる。本製造方法によれば、本複合製品を、外皮とゲル体との一体性よく製造することができる。
【0062】
本製造方法は、既に説明した本複合製品を製造するための種々の態様を採ることができる。例えば、外皮40の内表面に印刷層を形成する場合には、ウレタン系樹脂材料を供給するのに先だって、外皮40の内表面に1又は2以上の可視要素を付与する(印刷する)工程を備えることができる。また、ゲル体10に内部キャビティ20を形成する場合には、キャビティ60に供給されたウレタン系樹脂材料の硬化前に入れ子を配置後に硬化させるようにする。こうすることで、ゲル体10のキャビティ60の内表面に当接しない面の少なくとも一部によって規定されるとともにゲル体10の外方に開放された内部キャビティ20を形成することができる。
【0063】
軟質アクリル系成形体である外皮40であって開放されたキャビティ60を備える外皮40は、既述のアクリル系樹脂材料を用いて公知の方法で製造することができる。
【0064】
ウレタン系樹脂材料の硬化及び一体化工程においては、公知の樹脂材料の成形方法を採用できるが、例えば、インジェクション成形を用いることができる。成形型としては、特に限定されないが、例えば、金型や樹脂型等の成形型を用いることができる。
【0065】
ウレタン系樹脂材料を硬化させる形態は、特に限定されない。例えば、加熱による硬化であってもよいし、光硬化又は自然硬化等であってもよい。また、成形型を用いる場合においては、例えば、型内で硬化反応を完結させてから取り出してもよいし、ある程度硬化した時点で型から取り出し、その後さらに硬化させてもよい。ウレタン系樹脂材料を硬化させるゲル化させる条件は、ウレタン系樹脂材料の組成や意図する粘弾性に応じて適宜設定することができる。
【0066】
本製造方法によれば、硬化前のウレタン系樹脂材料を、外皮40のキャビティ60に対して供給するため、ウレタン系樹脂材料は外皮40のキャビティ60の内表面に一体となった状態で硬化する。すなわち、ゲル体10の第1の面12は、キャビティ60の内表面に密着ないし一体化した状態で硬化する。両者は異種材料ではあるが、ゲル体10の粘着性により隙間なく密着することができ、外皮40はゲル体10の粘着性を抑制して良好な表面特性を付与する。
【0067】
ゲル体10の内部キャビティ20の内表面に当接しない面(第2の面14)にウレタン系被膜を形成する工程においては、既述のウレタン系被膜を形成するためのコーティング剤を供給してウレタン系被膜を形成する。こうすることで、ゲル体10の粘着性を抑制して、好適な表面特性を第2の面14においても発揮させることができる。
【実施例
【0068】
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
図1及び図2に示す形状を備える軟質アクリル樹脂製の外皮状成形体を製造した。この外皮状成形体は、ヒトの手の略拳状の大きさを有し、立方体状の外形を有している。この成形体は、株式会社クラレ製のアクリル樹脂LA2250及び同LA2140を70質量部:30質量部の比率で混合し、さらに、これらの混合物100質量部に対して大八化学株式会社製の芳香族縮合リン酸エステル系難燃剤であるPX-200を5質量部含むアクリル樹脂材料組成物の成形体である。当該成形体は、軟質アクリル樹脂材料組成物を用いた公知の方法で製造されたものであった。
【0069】
軟質アクリル樹脂の成形体を、当該成形体の外形形状に一致するキャビティを有する成形型に配置して、A液としてエッチ・アンド・ケー株式会社製のハイキャストW3423A、B液として同ハイキャストW3423Bとを、100:15.2の質量比で混合して調製及びして原液を、外皮状成形体のキャビティの8分目あたりまで注入した。その後、図1及び図2に示す、ゲル体に半球状の内部キャビティを形成するための入れ子を充填した原液内に配置して型を閉じた後、約50℃で約60分間硬化させた。
【0070】
その後、ウレタン系被膜材料としてのエッチ・アンド・ケー株式会社製のハイメックス6504WHITEを同量の水で希釈したコーティング液を調製し、このコーティング液をスプレーガンを用いて、入れ子を除去した後において露出されたゲル体表面に均一に塗布し、室温で2時間乾燥した。
【0071】
乾燥後、内部キャビティの奥部に接着剤を塗布して、弾性部材として内部キャビティの形状の概ね倣った形状を備えるスポンジ体を接着して、図1及び図2に示す複合製品を得た。
【0072】
得られた複合製品は、全体として光透過性を有する半透明な略立方体であり、外皮の立方体状部分のそのキャビティの内部には、低反発性のゲル体を含んでおり、図3及び図4に示すようにして外皮を押圧することで、一体性よく、変形するとともに意図して低反発性を示した。また、内部に備えたスポンジ体は、外皮の押圧に伴って変形又は変位して内部キャビティから下方に押し出された。
【0073】
また、得られた複合製品は、手等による打撃に抵抗できる十分な耐衝撃性を有するとともに、好適な触感を備えていた。
【符号の説明】
【0074】
2 複合製品、10 ゲル体、12 第1の面、14 第2の面、20 内部キャビティ、30 ウレタン系被膜、40 外皮、50 弾性部材、60 キャビティ、70 ブラケット部、80 ゲル外部キャビティ
図1
図2
図3
図4